"500 in One" Electronic Lab Educational Electronics Projects Kit |
学研マイキット150
や
電子ブロックEX-150
は結局のところ復刻版で、
1970年代中盤以降に普及したロジックICやオペアンプによる回路や実験は楽しめません。
そのため私のテクノロジも
2石レフレックス
から進歩していなかったのです。
これではさすがにまずいなあと考えていて、実に楽しそうなキットが目にとまりました。
その後ずいぶん長い間買うべきか迷っていたのですが、今回とうとう思い切って購入してしまいました。
500回路もできる、デジタルICとマイクロコンピュータも搭載したトレーニング・キット、
Maxitronix社 500 in One Electronic Lab
です。 このキットはRamsey社を含むいくつかの相手先ブランドで販売されており、 米国での販売価格は170ドル前後。 しかしパッケージがずいぶん重そうなので、航空便で買うとしたら結構な運賃がかかるでしょう。 カタリスト社 から発売されている日本語マニュアルつきのものは価格はかなり高くなりますが、 航空運賃を考えたらさほどの価格差でもなさそう。 そこで日本語版を買いました。 届いたパッケージは確かに大きく、迫力があります。 本体はご覧のようにラップトップ・コンピュータのように開くシェルケースになっており、 その重量感もなかなか。 しかし開けてみると、上下のパネルに取り付けられたコンポーネントとスプリングターミナルはずいぶん間隔があり、 パネルはどことなく間延びした感があります。 この凝縮感の無さは70年代のアメ車を見ているよう。 ベージュ色のケースのデザインはどことなく1980年代。 なお私はこの製品の開発企画がどこの国で行われたかの確証を持っていませんが、 トランジスタが2SC品番であることを考えると、アメリカではなさそうです。 本稿では以降、本機をEL500と呼ぶことにします。 |
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EL500は、マイキットのようにパネルに取り付けられた部品はスプリングターミナルを使って配線しますが、
パネル中央に取り付けられたブレッドボードが作業の中心になります。
使われている
Elenco
のプレッドボードは実は私はすでに持っているので、
なにも高いお金を払ってここまでのものを買わなくても・・・と一瞬思ってしまいましたが。
本機の最大の特徴は、内蔵マイクロコンピュータによりコンピュータ制御の実験ができること。 上側パネルの中央にはLCDキャラクタディスプレイがあり、下側パネル右側にはキーボードがあります。 このマイクロコンピュータには8ビットの出力ポートと4ビットの入力ポートを有しています。 付属してくるデバイスはトランジスタ、ダイオードのほかオーディオパワーアンプ、汎用オペアンプ、 カウンタ、555タイマ、TTLロジック類で、抵抗やキャパシタの種類も多く、かなり高度なことができそうです。 注文時に一番不安だったのは、日本語版マニュアルの出来具合。 意味不明のヘボ翻訳だったり、 オリジナルマニュアルにペラ紙の訳が付属しているといったふうでは興ざめだなあと思っていました。 実際製品が到着して中身を見てみると、付属しているパーツ類が収まったビニール袋に入れられた内容物を示す紙には 「トテンジスター」とか書かれていたので、予感的中かと気分が落ち込みました。 しかし、大判3分冊のマニュアルの日本語訳はとても出来のよいもので、違和感無く読み進めることができますし、 レイアウトや印字品質も良好。 これなら高い差額を払った価値があり、またオリジナルマニュアルがなくても全く問題がありません。 いい仕事振りです。 それとこれは日本語訳の問題ではありませんが、 本体組み込みのオーディオ出力トランス部の化粧パネルには "POWER TRANS" と表示されています。 これはヘンだなあ。 Power Transformerといえば電源トランスのことを指すと思うのですが・・・ "OUTPUT TRANSFORMER"としてもらいたいところです。 |
デジタルICとマイクロコンピュータが主体のキットですが、
ラジオ小僧としてはどうしてもどんなラジオができるかを真っ先に調べたくなってしまいます。 マニュアルはハードウェア編が基礎と応用の2冊、ソフトウェア編が一冊。 プロジェクトの掲載順序は、電子工学の項目をひとつずつ取り上げながらスパイラルアップしていくもののため、 「ラジオ回路」でまとまっているわけではありません。 「ラジオ回路」は応用編にも出てきますが、トランスミッタだけで、受信機はなし。 結局、示されている500回路のうちラジオ受信機はわずかに以下のものだけです。
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トランスミッタ回路はどのようなものがあるでしょうか?
このプロジェクトのトライ結果は こちら。 FMワイヤレスマイクがある反面、どうしたわけかAMワイヤレスマイクはありません。 この辺、やはりなにか理由があるのでしょうかね? |
トランジスタ増幅回路 | Transistor Amplifiers |
EL500のマニュアルには意外なことに、トランジスタ オーディオアンプ、
つまりトランジスタで外部からのオーディオ信号を増幅してスピーカを鳴らすという回路がないのです。
これは外部機器からオーディオ信号を入れるという趣向のものがほとんど取り上げられていないためです。
少ない例外は で、ごくシンプルな1石のトランジスタアンプ。 コレクタ抵抗の両端電圧をセラミックイヤホンで聞きます。 スピーカ式ではありません。 もうひとつは で、こちらは外部機器からの信号を増幅してスピーカを鳴らしますが、 オーディオ パワーアンプによるもので、 トランジスタ式ではありません。 トランジスタ2石によるオーディオアンプとしては、 があります。 この2プロジェクトは入力パスコンやバイアスの掛け方が少し違うだけでほぼ同一の回路で、 EL500本体のスピーカをマイクロホンとして使い、 セラミックイヤホンでその音を聞く、というものです。 NPNトランジスタとPNPトランジスタが使われています。 |
奮発して装備したDelica D:5のロックフォード・フォズゲート オーディオシステムはいい音で大満足なのですが、
細かな不満がないわけではありません。
走行中は音楽ではなくて
Toshiba X01T Windows Mobile6 Professional
で再生したポッドキャストを聞くことが多いのですが、ここで問題。
X01Tのヘッドフォン出力をセンター コンソール背面に用意されているAV入力につなぎますが、
X01Tの音量を最大にしてもライン入力レベルには不足で、
ロックフォード・フォズゲートのボリュームを最大近くまで上げてやる必要があるのです。
そうすると、走行中に交通情報を聞こうとしてうっかりそのまま切り替えると、
車内に総合出力800Wのパワーでハイウェイラジオが炸裂してしまうのです。
また、X01Tのヘッドフォン端子は
ジャックセンシング
を行っており、
アンプの入力端子につないだだけではヘッドフォンがつながれたとは判定されず、内蔵スピーカからの音が切れません。 そこで今回、上記2点の問題を解決するプリ ブースタ アンプをつくることにしました。 入力端子直後が10kΩ程度の抵抗でシャントされていて、10倍程度の電圧利得を持ってラインレベルを出し、実用に耐える音質のヘッドアンプ。 電源は車両のDC12V。 小ぶりの基板一枚でつくれば、AV接続パネルの裏側、センターコンソールボックスの中に仕込めて、外からは見えないようにできるでしょう。 回路方式はどうしよう。手軽にクワッドオペアンプ1個で構成するのが一番普通かな。 12AX7Aとか6AQ8を一本使って真空管プリアンプと言うのも面白いかも。 まあ今回は、ある意味とてもオーソドックスにディスクリートトランジスタ1石でつくってみましょう。 回路は右。ごく正統な、電流帰還バイアス方式のエミッタ共通低周波増幅回路です。 エミッタバイパスキャパシタに直列に抵抗R7を入れ、低周波数領域でもNFBを利かせます。 今回は参考書をみながらバイアス回路を計算し、E24系列から抵抗値を決めましたが、あれ、 EL500のオリジナルパッケージにはE24系列の全部がそろっているわけではありません。 し、なかには27kΩのように1本しか入っていないものもあって、 同じ回路を2つ並べてステレオにしようとすると困ってしまうものもあります。 今回はEL500の部品だけでつくれるよう当初設計値から素子定数を変えました。 回路図中のカッコ内は2本直列で1個の抵抗値を得ていることを示しています。 コレクタ抵抗R5は設計では3.6kΩにしようと思ったのですが、EL500には3.6kΩがないし、 新品のアルカリ単2電池6本を使って電源電圧が9.6V近くになっているので、4.7kΩとしました。 |
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EL500でバラックを組み、シリコンプレーヤのヘッドフォン出力を入れ、
本プリブースター出力を
山水AU-7700プリメインアンプ
のAUX-2に入れ、プリアウトにつないだ
LM386アンプ
でJBL4305Hを鳴らしてみると、ほどよいゲインが得られていることがわかりました。
ストレートだとAU-7700のボリュームを相当に上げなくてはなりませんが、
このプリアンプを入れれば普通のラインレベル機器と同程度のボリューム位置で再生できます。 音質はとても良好。EL500ブレッドボード上のバラック回路を通っているとは思えないほどです。 残留ノイズはほとんど気になりません。 ましてや車のエンジンを止めて大音量でじっくり音楽を聴き込むという使い方ではないので、実用上まったく問題ないでしょう。 このアンプで一晩ゆっくり音楽を楽しみました。 2012-01-26 トランジスタ ステレオ オーディオ プリ ブースタ 回路設計はうまくいったので、次はユニバーサル基板に実装して、いよいよ実用化します。 この作業は こちら。 |
オーディオ パワー アンプ | Audio Power Amplifiers |
実験用キットとはいえこんなひどい音ではいやなので、
スピーカを交換してしまいましょう。
EL500の上側パネルのうち、スピーカの部分だけはどういうわけか別体になっていて、
4つのスクリューでサブパネルを簡単に取り外すことができます。
こんな感じで別の部分も作られていたら、改造が簡単にできるのにな。 この状態で鳴らしてみても音はやはりひどいものです。 使われているスピーカのフレーム外径はφ56mm。 2個の取付金具でマウントされており、 さらにフレーム外周はビビリ音が出ないよう酢酸ゴム系の接着剤でサブパネルに接着されています。 この取り付けは実際しっかりできていて、音の悪さは取り付けのガタに起因するものではありません。 |
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ラボを見回してみると、
100円ショップで売っていた100円トランジスタラジオに、同一外径のスピーカが使われていました。
この赤い、というか朱色の、ひどくキッチュな外観を持つ100円ポケットラジオはれっきとした6石スーパーヘテロダインで、
ポゴ
のおもちゃとして使っていました。
あまり気に入っていたふうでもないので、
部品取りにしてしまおう。
でも調子よく鳴っている新品ラジオから部品を剥ぎ取るというのは実に抵抗がありますが、
ここは心を鬼にして・・・。 スピーカ交換後はもちろん、EL500は通常期待される音質・音量になりました。 もともとEL500についていたスピーカを単体で鳴らしてみると、 あれ不思議、顕著な歪などなく普通に鳴っています。 |
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実はこのスピーカ、フレームに強度がなく、手でフレームをゆがめる方向に力を入れるとコーン
(もしくはボイスコイル部)の自然な動きが阻害され、聞くに堪えない音になってしまうことがわかりました。
EL500ではスピーカのバッフルへの取り付けは対角ではない2箇所で金具でクランプされますが、
この取り付けのときにスピーカフレームをゆがめる力がかかってしまっていたか、
あるいは取り付け前から乱暴な取り扱いによりフレームがゆがんでしまっていたのでしょう。
結局、新品100円ラジオに手を下す必要などなく、スピーカの取り付けをやり直すだけでよかったのです。 |
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ラジオをつくろう | Build Your Own Radio |
EL500のマニュアルに掲載されているラジオ回路には大したものがないのは冒頭に書きました。
こういった簡易回路は鉄筋+ノイズだらけの第1研究所では使い物にならないので、
木造の第2研究所にEL500を持ち込み、まずはゲルマラジオを・・・と思いちょいちょいと配線してみました。
ところがどうやってもイヤホンからは全く何も聞こえてきません。
完敗です。 第1研究所に戻り調べてみると、 イヤホン自体の故障 でした。 EL500に付属のイヤホンは高感度なセラミックタイプなので、 イヤホンを耳にあてて2本のリード線をこすり合わせればカリカリ音がするはずなのに、 全く無反応。 リード線の内部断線かと思いましたが、イヤホン本体背面のハンダ付け部までの導通は正常。 すると、本当の故障のようです。 イヤホン駆動型の簡易回路はあきらめましょう。 実用となるラジオを最終的な目標にするなら、スペックは概ね以下の通りでしょう。
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簡単なところでダイオード検波+パワーアンプICの組み合わせはマニュアルにあってもよさそうですが、
なぜか掲載されていません。
ので、まずスピーカ駆動はEL500付属のパワーアンプIC、BA546を使うことにします。
ただしダイオード検波+低周波増幅だけでは限界があるので、
高周波増幅も入れましょう。
ここで、
学研マイキット150
の回路、
この回路はトランジスタ検波式です。 同調回路からの高周波信号は初段トランジスタのベースに加えられますが、 トランジスタのベース-エミッタ間はダイオードになっているので、ここで入力信号の半波だけが取り出され、 かつ増幅されます。 このためAM復調のためのダイオードが不要になっています。 1920年代の古いTRF式受信機はオーディオンと呼ばれる真空管を使ってこの動作(検波と増幅を同時に行う)をさせていました。 そのためその方式はオーディオン回路と呼ばれることがあります。 この回路ではベースのバイアスの掛け具合が微妙なところ。 EL500に付属の2SC1740はシリコントランジスタで、 電圧障壁の関係から感度的には古典的なゲルマニウムトランジスタに比べるとやや不利です。 マイキット150の回路ではトランジスタ検波された信号を次段のトランジスタで低周波増幅してセラミックイヤホンを駆動しています。 今回はこれにオーディオパワーアンプIC BA546を加え、スピーカ駆動とします。 |
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動作させてみると、クエンチングを伴った激しいモーターポーティングに見舞われてしまいました。
感度・音質をなんとか維持しつつ異常発振を止めるために数時間格闘してたどり着いたのが右図の回路。 音量は実用的、音質はわずかな濁りあり、ただし第1研究所の屋外ではバーアンテナだけでの受信は無理で、 アンテナ端子につないだビニール線を地面に這わした状態がベスト。 もちろんAGCはないので、ボリュームを頻繁に調整する必要があります。 異常発振も皆無ではなく、ボリュームを上げていくと動作が不安定になってしまいます。 またTBSの受信は無理でした。 しかし冷静に見てみると、上記の回路では検波をしているのが初段なのか次段なのか怪しいところですね。 このラジオのテストを屋外で行っていたら、 折からの強風にあおられてEL500本体が約60cmの高さからアスファルトの地面に落ちてしまいました!! ヒンジが180度開いてパーツ面を下にして見事に路面にたたきつけられたEL500は、 しかしわずかなかすり傷と金具がすこし曲がってしまったのみで問題なし! 飛び散った電池を入れなおしただけでラジオもそのまま鳴りはじめました。 さすがABS樹脂の筐体です!! |
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EL500にはFETは付属していませんが、
トレーニングカリキュラムとしてはやはり不可欠でしょう。
そこで、上に書いた「付属部品だけでできる」条件には違反してしまいますが、
小信号FETをひとつ追加してラジオを作ってみます。 FETを付属部品に加えるならXN3000のようにデュアルゲートMOS FETを選ぶのが現代流でかつ応用範囲も広いでしょうが、 ここではレトロに2SK30Aを使います。 選定理由は、たまたまラボに在庫があるから・・・ですが。 2SK30Aは高周波用の石ではありませんが、単なる実験としてであれば許されるでしょう。 回路はごく普通に、FETで高周波増幅、ゲルマニウムダイオードでAM復調、 トランジスタで低周波増幅した後にICアンプで低周波出力。 2SK30AはNチャネル接合型FETなので、ソースに対してゲート電圧を負にする必要があります。 ソースに270Ω、ドレインに1kΩの抵抗を入れて、 ソースの電位が0.7V程度になるようにしました。 0.7÷270で、ソース電流(≒ドレイン電流)は約2.5mA流れています。 一方ゲートは1MΩの高抵抗でグラウンドに落としているので、グラウンドに対する直流電位は0V。 したがってゲートはソースよりも0.7Vほど低くなることになり、バイアス電圧が実現できています。 ソース抵抗はキャパシタでパイパスして交流的なゲインを高くしています。 ソース抵抗をもう少し大きくするとゲインが上がりますが、 270Ωではボリュームをフルにしたときに発振ぎみになってしまいます。 電源ラインに470μFを追加してとりあえずしのいでみました。 どの程度まで発振せずゲインを上げられるか、は、全体的な配線の取り回しに影響されてしまいます。 |
回路動作説明入りは
こちら。
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結果はなかなかのもので、
ラボの窓から付属のアンテナ用ビニール線を垂らしておけばNHK東京第一が受信できます。
もうすこしアンテナを工夫すれば、AM放送受信は相当にキツいラボでも実用になるかもしれません。 気をよくして、夜になるのを待ち同調コイルとしてバーアンテナコイルの巻線数の少ないほうを使い、 ベランダのHF用広帯域ホイップアンテナをつないでみたら、ダイヤル一面に北京放送の日本語番組が強烈に飛び込んできました。 AGCがないのでフェーディングの谷ではかろうじて聞こえるだけ、逆にフェーディングの山では近所迷惑になりそうな音量。 北京放送の信号はNHKよりもはるかに強力であることを実感しました。 |
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付属のセラミックイヤホンの不良でゲルマラジオは試せていませんでした。
2008年運営開始した中央研究所は旧第一研究所と異なり、室内で普通にAMラジオを聴くことができます。
ので、千石通商のみのむしクリップつきセラミックイヤホンを使って、シンプルなラジオを試してみます。
ゲルマラジオを組んでみると、付属の緑色ワイヤーアンテナ1本だけでは感度不足で、 かすかに何か聞こえる気がする、という程度。 初受信はラジオ大阪。でも、あれ? NHK第一が聞こえてきません。変だな。 ベンチの機器のシャーシグラウンドをアースにし、緑色ワイヤーを2本つないでアンテナとして天井に這わせれば、 音量は十分とはいえないものの、はっきりとセラミックイヤホンからNHKラジオやKBSが聞こえてきました。 しっかりした屋外アンテナを使えばよいのでしょうが、微弱電界の富岡市で屋内アンテナで済ませようとすると、 音量不足のため最大音量が得られるセッティングを狙わねばなりません。 するとどうしても分離は不足気味となり、ダイヤルの高い側ではみんな一緒に聞こえてしまう、という状態。 ゲルマニウムダイオードの代わりにNPN型トランジスタ2SC1740を使い、 を試みましたが、電界強度不足で全くの無音でした。 ゲルマニウムトランジスタを使うのならばともかく、 シリコントランジスタでは電圧障壁を乗り越えられずにいるようです。 |
ゲルマラジオの出力をトランジスタ2つで低周波増幅し、スピーカを鳴らせるようにしてみました。
構成的には、
Lafayette 80-in-1 / 学研マイキット80
の最高級回路と同等です。
回路は右。 ゲルマラジオだけでは高感度なセラミックイヤホンを使っても小さな音でしかありませんでしたが、 トランジスタ1つで増幅すれば耳に装着しなくても聞こえるほどの音量。 さらにもうひとつのトランジスタで低周波電力増幅すれば、スピーカを鳴らせます。 静かな室内では音が大きすぎることもあるので、ボリュームコントロールもいれました。 感度・選択度は感度優先ゲルマラジオのままなので、実用になるのはNHKがせいぜい。 しばらくラジオ深夜便を楽しみました。 |
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高周波発振回路 | RF Oscillators |
トランスミッタ | Transmitters |
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トランシーバを作って2台のEL500で交信できたら楽しいでしょうね。
コイルや水晶発振子などの部品を追加すれば、QRPアマチュア無線トランシーバも作れそうです。
そのための最初の一歩として、簡単にできるAMラジオ帯の微弱トランスミッタからチャレンジしてみます。 これがうまくいったら、ブレッドボードの上に今度はAMラジオを追加し、 スイッチで送信動作と受信動作を切り替えれば、 性能はともあれ(通信距離は声が届く範囲でしょうけれど)、れっきとしたトランシーバといえます。 全体の構成 一番の基礎として、モールス信号により通信するトランスミッタを作ってみましょう。 受信機は手持ちのラジオが使えるように、変調形式はA2とします。 これは、モールス キーを押しているときも離しているときも電波は出たままで、 キーを下げている間だけキャリアを低周波で変調します。 受信側のラジオでは、信号は常時入感していて、キーダウン時にピー音が出ます。
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キャリア発振 キャリア発振にはまたまたフランクリン型発振回路を使うことにしました。 EL500ではなにしろ安定して動作します。 今回はEL500付属の74HC00 QUAD NANDゲートを使って構成します。 今回は普通なら発振回路の直後に入れるバッファアンプを置かず、 発振回路から直接アンテナ線を取り出します。 簡単に済む代わりに、発振周波数はアンテナ負荷により変動してしまいます。 発振コイルにはEL500内蔵のバーアンテナを使っていますが、 2次巻線からアンテナ線を取り出すことによりアンテナ負荷による発振周波数の変動を小さくしています。 キャリア発振の電源にもスイッチをいれれば当然A1送信機になります。 |
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トーン発振 低周波のトーンはこれまた
トーン波形の歪は、フィードバック部の抵抗値調整をほったらかしにしているため。 きちんと調整すれば正しい正弦波が得られると思います。 EL500の手前に並んだ8つのスイッチはプッシュ スイッチとスライド スイッチを兼ねていて、 プッシュ キーでモールス信号も遅れるし、ワンタッチで連続トーンもできてとても便利。 ただし、スイッチ接点のチャタリングがとてもひどいのが難点。 |
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AM変調 AM変調の方法は、
実際に作ってみると、トラペゾイドは案外にまともです。 |
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運用 できあがったA2トランスミッタは、微弱でほんの1〜2メートルしか飛ばないし、 信号の純度もよくないし、 ハム混入もあり、 またトーン音も心地よいというにはいまひとつ。 でも確かに電波で離れた受信機に信号を送れます。 A3化は無理 トラペゾイドを見るとこれならA3化して音声を飛ばせるかな、とも思いました。 トーン発振の代わりにCDオーディオの音声信号で変調してみると、 AM-1 と同じような症状。 つまり、受信機のダイヤルを最大感度にあわせると(キャリヤの周波数にぴったりにあわせると)復調される音量が小さくなり、 すこしダイヤルを上下にずらすと音が大きくなります。 またこの傾向は、安物のポケットラジオではあまり気にならず調子良いのですが、 性能の良いきちんとしたラジオでは顕著です。 これはAM変調と同時にFM変調もかかっている証拠。 オシロスコープのトラペゾイドでは、FMがかかってしまっていることはわからないのです。 音声信号に応じてロジック インバータICの電源電圧を変化させているわけですが、 ICへの電源電圧を変化させると発振周波数もそれに応じて変化してしまうわけです。 む。なかなか簡単にはいかないなあ。 |
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電子ブロックやマイキット80/マイキット150復刻版には現れなかった、FMトランスミッタを作ってみましょう。
小さな中波帯AMトランスミッタの実験では、到達距離が波長に対してずっと短いので、近傍界での実験になります。
つまり電波(電磁波)としてうまく放射されていないのです。
し、簡単な回路では安定した深い変調を得ることも困難。
それに対してVHF帯のFMトランスミッタならば、短いリード線だけでそこそこ本物の電波が飛ぷし、
簡単に音質のよい信号が得られますから、実験教材としてはFMトランスミッタのほうが楽しめます。 今回は をそのままつくります。 回路構成はすでに書きましたがもう一度繰り返せば、 本回路はトランジスタ3石によるFMトランスミッタです。 セラミックイヤホンからの微小な音声信号はトランジスタ2石で低周波増幅されます。 3つめのトランジスタはコレクタ同調形の発振回路で、 AM用バーアンテナと10pFのキャパシタを並列につないで共振回路を形成します。 音声信号は発振トランジスタのエミッタに注入されます。 音声信号のレベルに応じてコレクタ・ベース間の電極間容量が変化し、 高周波信号に周波数変調がかかります。 電源は電池6本、DC9Vです。 オリジナル回路 まずは実体配線もそのままにトライします。 オリジナル回路ではセラミックイヤホンをマイクとして使いますが、 ここではシリコンオーディオプレイヤーからヘッドホン出力をつなぎます。 うっかりの誤配線を直したらFMトランスミッタは動作を開始しました。 信号は94MHz付近に出ています。 が、周波数はごくわずかな配線の取り回しや近接容量で簡単に1MHz近く変化します。 し、短いアンテナ線(20cmの青被覆線)をつなぐとそれだけでも大きく変化します。 普通の日本仕様のFMラジオでも聴けるようにと同調キャパシタをいろいろいじってみたり、 コイルを手巻きのものに変えてみたりしました。 同調キャパシタはマニュアルどおりの10pFをつかうと、 計5台のEL500でいずれも送信周波数は92〜94MHzあたりになります。 アメリカのFMラジオならこれでもいいですが、 日本仕様の78〜90MHzをカバーするFMラジオではちっとも聞こえず、失敗だと思ってがっかりする人もいるはず。 送信周波数が大きく変動することもあるので、このプロジェクトのテストをするなら、 クラシックなバリコン式アナログチューナをもつ低価格ラジカセ、 それもTV音声受信可能モデル(76〜108MHzをカバー)を使うべき です。 デジタル式のFMチューナではダイヤルをくるっと回して信号を探すことができず、 非常に苦労します。 かといってホームセンターで吊るされている中国製FMポケットラジオのような安物では、 イメージ混信出まくりのひどいものがあるので、それもダメ。 私が買った2680円かそこらしたANDOブランドの中国製マルチバンドラジオに至っては、 ダイヤルをどこにあわせてもトランスミッタの信号と地元ラジオ局の信号が混ざって聞こえてきます。 こりゃあひどい。 配線しなおし オーディオプレイヤーのヘッドホン出力を入れるなら低周波増幅は1段で十分。 初段増幅段を省き、発振段の書き方を変えてみた回路図を右に示します。 マニュアルにある実体配線は他のプロジェクトに比べればコンパクトに仕上げているものの、 まだ改善の余地はありそう。 そこでいったんすべて分解し、自己流での配線を行いました。 発振トランジスタがバーアンテナコイルに一番近くなるようにブレッドボードの左上に配置し、 他のコンポーネントは可能な限り密集させて配置しました。 音声入力の信号線は同調回路への配線と交差しないようにボード下側から迎えます。 結果、安定度は結構よくなりました。 それでも、電源のワイヤを2つとなりに挿しかえるだけで200kHz以上も周波数が変化しますし、 オーディオ入力ケーブルの取り回しを変えると2MHz近くも動きます。 共振回路のキャパシタはマニュアルどおりの10pFではなく、手持ちの68pFを使用したのに、 まだ92〜94MHzあたりにいます。 100pFをつかってようやく88MHz〜90MHz。 どうやら配線の浮遊容量で大きく影響を受けるようです。 ま、シールドなしの中波用バーアンテナコイルをむりやり使っているので仕方がないのかも。 キャパシタを大きくすると発振兼FM変調トランジスタの電極間容量の影響度が相対的に低くなるので、 変調が浅くなります。適宜オーディオ入力レベルの調整が必要。 アンテナリード線は発振トランジスタのベースから取り出すとどういうわけか高音がこもった音質になります。 取り出すならエミッタから取り出すのが安定しています。 長すぎてもダメで、20cm程度がベスト。 この状態でビエンタの純正ウィンドウプリントアンテナと純正MMCSのFMラジオで受信し、近所を一周走ってみると、 最長200mの位置でもかろうじて受信できました。 これでは現行法規上はおそらくオーバーパワー。 発振波形は観測していないもののおそらく正弦波からはかけ離れていると見えて、 180MHzと450MHzでも強力に受信できました。 出力同調回路もローパスフィルタもなく発振回路から直接出力の簡易回路ですから、これは致し方ないところ。 不要な妨害を起こさないためにも、実験は短時間に、かつアンテナリード線はつながずに運用すべきです。 音質 できあがったFMトランスミッタからの電波を5m離れたFMレシーバで受信して録音したものは こちら。 わずかに低域に濁り感があるものの、トランジスタ2個のブレッドボード配線にしてはなかなかいい音していますね。 モノラルですが、しばらくは音楽を楽しむことができました。 この音声は、 Noobow9100コンピュータのWinAmpでradiokoz.comをプレイしてCoolEdit2000で録音しMP3化。 そのMP3ファイルをサンヨーICR-S280RMに転送し再生、EL500のFMトランスミッタで送信。 FM信号を Kenwood KR-9340 のFMチューナで受信しNoobow7100 工人舎SA5サブノート上のCoolEdit2000で録音したもの。 なんかむちゃくちゃだね。 |
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オペアンプを学ぶ | Learning Operational Amplifiers |
オペアンプの基本、反転増幅回路を試してみます。
EL500のマニュアルには、こういったごく基本的な回路はずばりのものが少なく、
多少の周辺回路が入った応用回路になっています。
たしかに反転増幅器だけ作っても入力も出力もなければ試せませんから、
当然とはいえます。 オペアンプ反転増幅回路は で紹介されています。 このプロジェクトでは正弦波発振回路で生成した低周波信号をオペアンプで増幅し、 オーディオ出力トランスを介してスピーカを駆動します。 今回は外部からのオーディオ信号を使うことにして、 右図のように簡略化します。 LM324は単電源オペアンプで、9Vで動作させています。 オーディオ信号出力を0Vと9Vの間でスイングさせたいので、 4.5Vのバッテリー端子から電圧を取り出し、非反転入力に入れることにより、 出力オフセットを4.5Vとしてそこを中心に上下にスイングするようにしています。 |
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試してみると、パワーが出ない・・・音が大きくはない、のは仕方がないとして、
音が今ひとつ良くありません。 出力トランスの1次側(=オペアンプの出力端子)の電圧を観測してみると、 ご覧のように大きなクロスオーバ歪が出てしまっています。 (注1: このクロスオーバ歪は、 オペアンプ出力を1kΩ程度でグラウンドに落としてオペアンプ内部の出力段を常時電流吐き出し動作にしておけば軽減できます。 LM324の出力は20mAくらいまで流せそうなので470Ω程度でも無理はないと思いますが、試していません。) |
EL500でパワーアンプを作ろうとしても、オーディオ出力トランスが1つしかないため、ステレオにできません。
し、だいたい、オーディオ出力トランスを使うアンプだなんて1970年代を限りに姿を消してしまいましたしね。
スピーカを駆動するのは無理でも、ヘッドフォンアンプなら手軽に実験できます。
そこで、トランジスタでオペアンプの出力電流をブーストし、直接ヘッドフォンを駆動するヘッドフォンアンプをつくってみます。 トランジスタによる電流ブースト回路はいくつか考えられます。 EL500にはコンプリメンタリなNPN型トランジスタとPNP型トランジスタが付属しているので プッシュプル型電流ブースタも可能ですが、 ヘッドフォンを駆動するのならそう大きな電流は必要ではないので、 シングルエンド型電流ブースタにします。 これは要するにトランジスタ1石によるエミッタフォロワで、 無音時もアイドル電流を消費するため低消費電力を最優先するポータブル機器には向きませんが、 部品点数が少なくてシンプルなのは魅力です。 いろいろトライして、右図の回路が簡単で、かついい成績を出せました。 オペアンプの帰還抵抗R2は10kΩ(ゲイン10倍)から100kΩ(ゲイン100倍)程度で適宜選べます。 右図の回路を2組配線して(オペアンプ動作基準電圧のための1/2VccをつくるR4とR5は共通にできます)ステレオ オーディオ信号を入れてみると、 パワーは必要以上、音質はなかなか良好で、十分実用になります。 周波数特性は高域は可聴周波数帯域をはるかに超えてフラット、 下は100Hz程度からすこしゲインが下がり始めますが、 30Hz程度までは出ており、再生機器側でわずかにバスブーストしてあげれば問題はありません。 この回路が完成後、お気に入りのアルバムを2枚ほど、久しぶりに大音量で聴きました。 この回路では出力電流の吐き出しと吸い込みとで動作が必ずしも同一にならないために音質が劣化しているはずだし、 あるいはNFBを追加する等すればもう少し音質をよくできるかもしれませんが、 貧しいオーディオ機器に慣れてしまっている私の耳にはこのままでも十分満足です。 テストに使ったヘッドフォン パイオニア SE-550D はインピーダンスが比較的高いので駆動力の小さいアンプでもよく鳴る、 というのはあるかもしれません。 公称インピーダンスがもっと低いヘッドフォンでは無理がバレてしまうかも。 |
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第3研究所でコントロールアンプとして使っている
サンスイAU-7700
は、中古現状で購入してからすでに5年半が経っています。
1975年モデルですから製造後40年、
あちこちくたびれてきています。
ときたまスピーカ出力保護リレーが入らないことがあるのですが、
パワーアンプは
究極の貧乏アンプ
を使っているので問題なし。
でもAU-7700フロントパネルのヘッドフォンジャックを使ってヘッドフォンで音楽を聴こうとすると、
左チャネルにバサバサと不安定なノイズが入っています。
AU-7700のヘッドフォンジャックはスピーカ出力から抵抗を介して出力しているので、
要するにAU-7700のパワーアンプ部に故障が発生しているということ。
そこで、単品のヘッドフォンアンプが必要になりました。 最近はヘッドフォンオーディオ愛好家がずいぶん増えてきて、 リーズナブルな価格でハイクオリティなヘッドフォンアンプが出回っています。 し、高音質設計あるいはまたマニアの変態ヘッドフォンアンプキットも各種。 手の届かない価格ではないし楽しそうなのでひとつ選んでもいいのですが、 どうせ私の耳は微妙な音の違いを聞き分けられるでもなし。 そうだ、もう10年も前につくったEL500のシンプルなヘッドフォンアンプをボードにこしらえよう。 そう思って2017年新年冬休みの宿題として、再チャレンジ。 EL500は第3研究所においてあるので、ELENCO社のブレッドボードに組み立ててみました。 動作しだしたヘッドフォンアンプは、だけれどいまひとつ。 音量を上げるとなにやらひずみが目立ちます。 とても簡単なアンプですから文句なしの音質ということはないとしても、 以前つくったときはしばらくたっぷり音楽を楽しめるほどだったのに。 前回はあまり音量を上げなかったので気が付かなかったけれど、 今回は爆音ジャズを大音量で聴こうとしているので無理が出ている、 というのはあり得るポイント。 もうひとつは、10年前によく聴いていた曲と、最近聴いている曲の、パワースペクトルの違い。 昔聴いていたのは1970年代の曲がほとんど。当然全アナログ、スタジオでマスターテープ録音のアルバムばかりでした。 しかし最近聴いているのは新しい録音のスムースジャズ〜ジャズロックアレンジ の曲。 もともとウッドベースなどの低音楽器のレベルが高いジャンルの音楽ですし、 DSPデジタル録音で、超低域が阻害されずに豊か。 お気に入りの曲の一つではベースの音が40Hz程度にまで下がります。 さらにいわゆる打ち込み演奏のオーケストラアルバムでは大太鼓の音が20Hz台まで落ちることがあり、 こうなると音というより空気の震えとして感じられます。 10年前に試した回路ではこのあたりの大振幅の信号をうまく取り扱えていない様子。 前回作ったEL500ヘッドフォンアンプは、 オペアンプで電圧増幅した後にエミッタフォロワで電流ブースト、という2つの回路ブロックを単純にキャパシタでつないだものでした。 これはこれで回路の理屈を学ぶにはわかりやすいのですが、 実際に動作させてみると基本動作原理だけでは見えてこない欠点が出てくるというもの。 いろいろトライして、結局たどり着いたのはとてもシンプルなソリューション。 エミッタフォロワを後段ブロックとして追加するのではなく、 オペアンプの一部として一体化する回路です。 これも特殊なものなんかではなくて、オペアンプのデータシートにも載っている、ごく基本的なものです。 今回はそれを実際に試してみました、ということ。 電流ブースト用トランジスタは小信号用ならなんでもよいでしょう。 今回は一番手ごろで安く、ラボに部品在庫がたくさんある2N2222を使いました。 無信号時のエミッタフォロワのベース電圧はオペアンプの出力電圧とイコール、 つまりオペアンプ非反転入力側の電圧とイコール。 なので、電源電圧が変動してもこの電圧は管理する必要があるので、 回路電源は小さな3端子レギュレータで5Vを生成してそれを使います。 回路の全電流は100mA。 これじゃ電池で動作させるにはちょっと辛いですね。 結果として、段間結合のキャパシタが削除でき、エミッタフォロワのベースバイアス抵抗もなくなり、 回路はさらにシンプルに。 そしていちばん重要なのは、大音量時に出ていたひずみがすっきり消えたこと。 帰還抵抗は4.7kΩ固定にしてアンプのゲインは約5倍としました。 入力が-30dBV程度で迫力ある音量、といった感じ。 最大出力は、もうこれ以上では耳が耐えられないというほどの大音量のあたりでそろそろ頭打ちになります。 もうすこしパワーにゆとりがあってほしいところですが、 まあ実用になります。 残留ヒスノイズはほぼなし。こりゃいいや。 テスト曲は、 Logical Emotion [外部リンク] の Pops Arranged Instruments 1から「亡き王女の為のセプテット」。 演奏開始から3分ころの、ピアノソロにつづくベースソロ部、そのあとの超低音部が気持ちよく再生できて、よしOK。 さて、ユニバーサルボードに実装したら、そのあとはどんなふうなパッケージにしようかな。 [2017-01-08] Headphone Amplifier Revision 01, Tested on a breadboard. なかなか重い腰が上がらずボード実装は着手できておらず、いまだにブレッドボードのまま。 今夜はこのヘッドフォンアンプを、お正月にお年玉として買ったオーディオテクニカATH-MSR7で試します。 聴くのは 最近のお気に入りの自作コンピレーション・アルバム。 うーん幸せ。 手製のシンプルなアンプから広がる豊かな音。 この音を、食べられなかった日さえあったほどに貧しかった中学生の頃の自分に聴かせてあげたい。 [2017-03-18] Still on the breadboard. Tested with Audio Technica AT-MSR7, performs nicely. |
Revision 00 headphone amplifier circuit played well 10 years ago. This time, however, that circuit had a distortion problem when large level of signal is handled. In the revision 01 circuit, the emitter follower block is now integrated into the OP amp circuit. Not only eliminted a coupling capacitor and a base bias resistor, the distortion problem is solved. Power output is merginal to play with very loud volume, still practical in ordinaly use. |
どこか別のページでも書きましたが私はいまだにカセットテープに愛着があり、
しばしば古いテープを聴きます。
そこでカセットデッキが市場から完全に消え去る前に、一台 新品のデッキ、
TEAC W-790R
を購入しました。
高級コンポーネントステレオのスタイルをしているものの、このデッキは低価格オーディオの範疇に入るもので、
ドルビーC付きとはいえ機能はごく質素です。
さっそくヘッドフォンを挿し込んで聴いてみたら・・・なんとヘッドフォンボリューム調整がついていない!!!
これにはびっくりしました。
そこでこのデッキを楽しむために、専用のヘッドフォンアンプをつくろうと思ったのです。 笑われそうですが私はたいていの場合、低音をかなりブーストしてドンシャリにしてしまうのが好みなので、 このヘッドフォンアンプには古典的なバス・トレブル独立型のトーン コントロールが欲しいところです。 ウェブを探してみると、テキサス・インスツルメンツのアプリケーション レポート SLOA042 にちょうど使えそうな回路があり、 これを試してみることにします。 これはバクサンドール型のネガティブ フィードバック トーン コントロール回路で、 その原型は真空管の時代までさかのぼります。 EL500の部品で構成でき、また実験を簡略化するために、 オリジナルのアプリケーション レポートの回路に対して以下の変更を入れてあります。 構想はできましたが、まだこの回路は試してみません。 さあ、どんなかな? |
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オーディオLEDバーグラフレベルメータすら見たことがない世代が台頭してきているほどですので、
(↓参照)、オーディオVUメータについて説明するのは虚しいのでやめておきます。
オーディオ機器には絶対にレベルメータがついていなくてはならない・・・仮にそれがいい加減な表示であっても。
とにもかくにも私はそういう世代なのだから仕方ありません。 最初にオーディオレベルメータをつくろうとしたのはたぶん小学5年生のときでした。 ちいさなレベルメータが手に入ったので、 ポンコツ真空管テレビから取り外したオーバルスピーカでつくった手作りの外部スピーカボックスに取り付けようと思ったのです。 スピーカ両端の信号は交流だからそのままつないだのではだめで、 ダイオードを入れて整流してやればよい・・・とまではわかっていたのですが、やってみると大きな音でないと針が振れないし、 それも大きな音のピークで突然針が振れ出すような感じで、 電気屋さんで見るオーディオセットのような自然で優雅な動きにはなりませんでした。 オーディオ信号をダイオードで整流して直接メータを振らせようとしても、 たとえば小信号用シリコンダイオードを使ったとすると、 シリコンの電位障壁の高さ0.6V程度を超えてはじめてダイオードが導通し始めます。 オーディオライン信号のレベルは±1Vp-p程度ですし、 スピーカ両端の電圧もまた高いわけではないので、 大きい音のときだけしかメータが反応しないわけです。これが小学5年生を落胆させた原因でした。 学研マイキット150復刻版でつくったオーディオレベルメータ は、 増幅回路でオーディオ信号の電圧レベルを十分に上げておき、 電位障壁の低いショットキー・バリア・ダイオードを使うことでこの問題を低減しています。 小学5年生に比べればずいぶんマシだな。 で、今回はさらにステップアップして、オペアンプを使ってみます。 といってもオペアンプで電圧増幅してからダイオードで整流するのではなくて、オペアンプに整流を行わせます。 回路は から借用。 EL500マニュアルでのこの回路は複雑で難しそうに見えますが、 回路図の上半分は実験のために周期的に正負に変化する信号を発生する回路であり、今回の用途には不要。 オペアンプの基本回路の一つに、理想ダイオード回路があります。 英語ではpresicion rectifier -精密整流器- と呼ばれるこの回路は、 電位障壁のために実際のダイオードが持つ特性曲線立ち上がり部の電圧ずれがなく、理想的な整流動作が期待できます。 今回作成した回路(右参照)のうちIC1aが反転理想ダイオード回路です。 IC1bは反転増幅回路。 IC1aはIC2bの2倍の利得を持つように構成されています。 この組み合わせが絶対値回路を構成しています。 入力が基準電圧に対して正のサイクルのとき、 理想反転ダイオード回路は入力信号を反転して負極性にし、かつ2倍に増幅します。 この信号が次の反転増幅回路に入ります。 いっぽう反転増幅回路の入力にはもともとの正の入力信号もそのまま足し合わされていますから、 さしひき負の1倍の入力となります。 これが反転増幅されるので、結果として出力はもともとの入力信号と同じです。 入力が基準電圧に対して負のサイクルのときは、反転理想ダイオード回路は何もせず、 信号はIC1bで反転1倍増幅、つまり正極性になって出力されます。 この結果として絶対値回路は、入力信号の絶対値を出力します。 EL500で組み立てた絶対値回路にコントロールアンプからのライン信号を入れ、 出力電圧で手持ちのVUメータを振らしてみました。 小音量から良く応答していていい感じですが、感度は低め。 それに、絶対値回路出力を見ると、メータの負荷のせいとみえて、すこし波形が乱れています。 そこで、バッファとしての意味も兼ねてゲイン2倍の非反転増幅回路を追加しました。 さらに、あとで単電源で動作させることを考え、回路の基準電圧生成にもオペアンプを使いました。 電源電圧を抵抗2本で分圧し、それをオペアンプで電流ブーストします。 正弦波のテスト信号を入れて絶対値回路出力を良くみると、 入力が正のサイクルと負のサイクルとで波形の高さが違います。 これは、IC1aの利得がIC1bの利得の正確に2倍になっていないためです。 EL500のオリジナル回路ではR12(右の回路図でR4に相当)に4.7kΩを使っていますが、 IC1aの利得を2倍にするためにはこれは5kΩであるべきです。 4.7kΩの代わりに10kΩの2本並列を使えばOK。 もっとも、作ろうとしているオーディオレベルメータはそこまでの精度は必要ではありませんけどね。 規格に忠実に従ったVUメータであれば、応答時間は300msecで作られているはず。 つまりメータそのものが早い変化には応答しません。 そのため、出力に平滑用のキャパシタを入れる必要はありません。 しかしラジカセなど低価格製品用のレベルメータは、ダンピングがほとんど効いていないものもあります。 (まったく平滑しないと、メータがスピーカとして動作し、非常に微かながら音が聞こえることがあります。) そんなメータの場合は、適宜抵抗とキャパシタで時定数をかせぐ工夫が必要。 回路図中のR8とC2がそれです。 いつか自作のアンプにつけようと思って買っておいた、 スタイル最高のパイオニアdBメータを使ってみると、針が振りきれると機械的にひっかかってしまい、 軽く叩かないと戻らなくなってしまいます。あれれ。 リミッタ回路を付け加えるようかな。 もっとも、正しく0VUを調整してあれば、音楽でもトークでも、メータの表示は半分を超えることはあまりないはずです。 VUメータは正弦波でないかぎりピークは表示できない装置なのですから。 ここで問題発見。 メータアンプの電源を入れた瞬間にメータの針が思いっきり振り切れてしまうのです。 すぐに針はゼロに戻って正常動作になるのですが、1個700円もしたパイオニアのメータを焼き切ってしまっては一大事です。 これはおそらく、入力カップリングのキャパシタが電源投入してもすぐにはチャージされず、 絶対値回路の入力が基準電圧に対して負になるからでしょう。 最初このカップリングには10μFを使っていましたが、これを1μFに換えたら、針が振りきれることはなくなりました。 その代わりに超低域でのメータ指示の落ち込みが大きくなってしまいました。 それでも100Hz以上では周波数によらずほぼフラットで、30Hzでマイナス3dBといったところ。 まあこんなところで妥協しましょう。 今となってはとっても貴重なアイワ2軸ピーク&VUメータが手元にありますが、 これを使うためにはピーク指示回路も必要・・・こちらはそのうち元気が出たら、ということで。 さて自作メータアンプはうまく動作しているので、正しく0VUを調整しようと思ったら・・・私は0VUの正しい定義を理解していない! あわてて調べてみたのですがますますこんがらがってしまいました。 きちんと理解できるまでの間、Audio Technica AT-MX33のレベルメータの指示に合わせてお茶を濁しておきます。 2010-10-09 VUメータ この回路はうまく動作しているので ユニバーサル基板に実装してケースに組み込み、 LM386ミニパワーアンプ といっしょにして第3研究所のメインオーディオアンプとして毎晩楽しく使っています。 |
Audio VU meter amplifier employing op-amp precision rectifier circuit. VIDEO: VU Meter Amplifier Test (mpeg 24MB) VIDEO: VU Meter Amplifier Test (Windows Media 3MB) With the original EL500 circuit the absolute amplifier circuit shows unbalance between positive input cycle and negative input cycle. This is because the 4.7kOhm is used as R4 (R12 in EL500 manual). The R4 defines the precision rectifier IC1a's gain which must be exactly the twice in order to cancel the positive input and make it negative with same absolute value (and this is inverted by IC1b, making the both input cycle positive). We used 5kOhm for R4, actually two 10kOhm in parllel. This made the output waveform much more balanced. |
コンパレータ | Comparators |
LM324オペアンプをコンパレータとして使い、
オーディオ用のLEDバーグラフ レベルメータをつくってみます。
このアイデアは から拝借したもの。 LM324は4個入りオペアンプなので、バーグラフ レベルメータをつくろうとすると4点式にしかなりません。 LM324が2つあれば8点式まで作れるのに。 で、1つのコンパレータで2つのLEDを点灯させるニセ8点式にしてみたら、 案外簡単にダマされてしまって、うん、 こりゃいい感じだ。 EL500ではLM324は大活躍しますが、1つしか付属していません。 破損させてしまう危険性もあることだし2つあってもいいのになあ、と思います。 4点の点灯レベルは聴感と数値の切りのよさで適当に決めました。 正確なデシベル表示が欲しければ分圧抵抗を計算しなおす必要があるし、 実用にするためにはせめて基準電圧電源くらいはツェナーダイオード等で安定化させてやる必要があるでしょう。 小さいけれどムービーは こちら (3GPフォーマット 20sec 331KB)。 このプロジェクトなら普段親しみのある装置---音楽にあわせて光が動く---を実現できるので、 エレクトロニクス入門者には格好の教材だ、と思ったのですが・・・ 最近の若い世代はLEDバーグラフメータすら見たことがない!!!! という衝撃の事実に気がついて愕然としました。 確かに、今のオーディオ機器は録音するためにレベル調整を行う必要などないし、 場合によってはパーソナル・コンピュータとシリコン・プレイヤーしか所持しておらずRCAピンプラグを使ったことがない人もいるかも知れません。 技術が進歩するのはいいことだけれど・・・それでいいのか日本!? |
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VOXユニットがついていないから 1970年代の無線機では、電信運用時のセミブレークイン機能はオプションのVOXユニットによって実現されているものがありました。 私の6mオールモード固定機、 TS-600 も IC-551 もそういったタイプですが、残念ながらVOXユニットが装着されていません。 そのため、電信送信を開始するときはフロントパネルの送信スイッチを操作するか、 あるいは外付けの、たとえば足踏み送信スイッチを用意したりする必要があります。 私はVOX機能そのものは必要性を感じませんが、セミブレークインがないと電信運用はかなり不便です。 そこで、汎用のセミブレークインアダプタを考えてみます。 外部キーが押下されたら直ちに無線機のPTTスイッチを入れて送信状態にし、 キーが上がったら所定の時間の後にPTTスイッチを戻せばよいのです。 キーとPTTスイッチ制御するインターフェイスは、接続される無線機によって電圧・電流レベルがまちまちです。 もしかすると今後、プレート電源スタンバイの受信機とカソードキーイングの送信機を制御する必要が出てくるかも(をひ!!)。 そこまで汎用性を考えるなら、送信機のキーも送信スイッチもメカニカルリレーを使う必要があります。 まあ、とりあえずそこまで発展させず、TS-600とIC-551に使えることを目標にしましょう。 IC-502 にも使えたらと思いますが、 IC-502の場合はCW-Tスイッチを外部から切り替えられるように改造する必要がありますのでそのうちいずれ。 トリガが入ってから一定時間待つという回路なら、まずは単安定マルチバイブレータ回路が思い浮かびます。 で、EL500のマニュアルの中から2つほど単安定マルチバイブレータを試してみました。 が、よく考えたらこれじゃダメ。 キーが押されたことをトリガにするのではなくて、キーが離されたことをトリガにして一定時間待つ必要があるからです。 キーが押されている間、またはキーが離されてから一定の時間が経過するまでの間はPTTを押す、 というふうにすれば実現できそうですが、なんか無駄です。 |
もっと簡単にと、スクラッチで考えてみました。
EL500で試しながらできあがった回路は右。
コンパレータを使い、電解キャパシタの放電時間でON期間を延長する回路です。 最初のコンパレータIC1aは、キー操作に応じた矩形電圧を遅延回路に安定して与えるためのキーバッファです。 キーダウン時にIC1a出力はハイレベルになり、キーアップ時にローレベルになります。 この部分はディスクリートトランジスタを使ってもロジックインバータを使ってもよい (事実最初のプロトでは74HC00を使いました) のですが、 後半部ではコンパレータとしてEL500に付属しているLM324汎用オペアンプICを使います。 LM324は4回路入りパッケージなので、もうひとつのオペアンプを使うことにしました。 判定基準はキー電圧の半分にしました。 キーは10kΩでプルアップしてありますから、キー抵抗が10kΩを下回るとキーダウンと判定します。 もう少し下げた方が誤動作が減っていいかも。 IC1aの出力でオープンコレクタのトランジスタ2SC1740を駆動し、無線機のキーイングをおこないます。 確実にオンさせるためかなりのオーバードライブにしました。 TS-600ではキー端子間を指で触っただけでサイドトーンが小さな音で鳴ってしまいますが、 このアダプタを使えばそのようなことはありません。 また、動作確認用にIC1aの出力でキーダウン表示LEDを点灯させています。 キーバッファIC1aの出力は、電解キャパシタの放電時間を利用した遅延回路にはいります。 キーバッファ出力がハイレベルのとき、ダイオードを通じて電解キャパシタを充電するとともに、 ふたつめのコンパレータIC1bの入力もハイレベルになります。 IC1bの比較基準電圧はポテンショメータで調整できるようにしており、 基準電圧を電源電圧のおよそ半分ほどにセットしておきます。 IC1a出力がハイレベルのときは、つまりキーダウンとともに、IC1bがハイレベルを出力します。 IC1bの出力はIC1aと同じ回路でON AIR表示LEDを点灯させているほか、 オープンコレクタのトランジスタ2SC1740でPTTラインをグラウンドに落とし、無線機を送信状態にします。 キーがアップされると、キーバッファIC1aの出力はすぐさまローレベルに落ちますが、 ダイオードが入っているために電解キャパシタの電圧は高いままで、IC1bはONを維持します。 電解キャパシタには並列に抵抗が入っており、この抵抗を通じて電解キャパシタは徐々に放電され、電圧が下がっていきます。 電圧が基準値を下回ると、IC1bがOFFします。これによって、キーアップしてもある程度の時間が経つまではIC1bはONを維持するわけです。 電解キャパシタに直列に入っている小さな抵抗は、 キーバッファIC1aがONした直後に電解キャパシタに大きな充電電流が流れて波形の立ち上がりが鈍ってしまうのを防ぎ、 IC1bをなるべく速くONさせるための工夫です。 これがないと、送信するモールス信号が短点で始まるとき、PTTのONが一瞬遅れてしまい、 最初の短点が送信できなくなってしまう可能性があります。 トリオTS-600のように送受信切り替えをメカニカルリレーで行う無線機の場合、 機械仕掛けゆえどうしても切り替えに遅れがありますから、この問題は気にかけておく必要があります。 キーアップ後の送信状態保持時間は、 で決まります。今回は基準電圧を可変する方法をとりました。 VR1がそれですが、これだけだと、つまみをいっぱいの位置にしたときまったく送信できなかったり、 あるいは送信しっぱなしになってしまいます。 実用性を考えたら、VR1の上下に固定抵抗を入れ、操作調整範囲を狭くするとよいでしょう。 あるいは、キャパシタ放電抵抗を可変してもいいとおもいます。 |
CW Semi Break-In adapter built on the EL500, intended to be used with Trio TS-600 50MHz All Mode Transceiver. TS-600 requires its optional VOX unit to provide CW semi break-in operation but my rig does not have one. This simple circuit can be easily installed into the radio and does a good job. |
EL500のプッシュスイッチをキーにして、LEDの表示をみて狙い通りに動作していることがわかりました。
次は実際の無線機-トリオTS-600のPTTとKEYジャックに本機をつなぎ、本機のキー端子に本物のキーをつなぎます。
キーを押すと、即時にTS-600は送信状態になりました。 キー操作を試してPTT保持時間が具合よくなるよう、VR1を調整します。 PTT保持時間を長めにすれば語と語のあいだで送信リレーが受信に戻ってしまうことは避けられますが、 今度は送信終わりのあと相手局が打つ最初の符号の頭を聞き落としてしまいますから、そのへんは妥協点を見いだします。 PTT保持時間をゼロにすればフルブレークイン動作になりますが、メカニカルリレー機ではリレーの寿命を縮めてしまうでしょう。 フルブレークイン機として設計されていないトランシーバでは、受信に戻った瞬間のポップノイズがあったりと、無理があります。 TS-600にダミーロードをつなぎ、実際の送信信号を別の受信機で受信してみると、 とてもシンプルな回路ですが、なかなか調子よし、です。 心配していた送信始めの短点欠落はほとんど感じられません。実用性十分です。 TS-600は、内部の送受信切り替えリレーの駆動コイルをPTTラインで直接ON-OFFします。 このため、PTTラインには送信時に100mAが流れます。 EL500に付属している小信号NPNトランジスタ2SC1740は、データシートによれば最大コレクタ電流は150mA。 定格範囲内ですが、もう少し余裕のあるトランジスタを使うのがよいかもしれません。 リレーコイルの逆起電力対策はTS-600内部に入っているダイオードで用が足りると思いますが、 PTTドライバトランジスタ側にも入れておけば汎用性が増します。 実用機としてこの回路をユニバーサル基板にこしらえてケースに入れるときには、 入出力や電源周りなどに適宜高周波バイパスキャパシタやフェライトビーズなどの対策を盛り込む必要があるでしょう。 このセミブレークインアダプタはDC6V動作です。 LEDを点灯させなければ消費電流はわずかですから、無線機本体から電源をもらうこともじゅうぶん可能と思います。 2009-08-14 コンパレータ式セミブレークインアダプタ |
[MOVIE] Semi Break-In Adapter Test
(320x240 WindowsMedia 2.7MB) |
アクティブ フィルタを試す | Trying Active Filters |
今度はアクティブ フィルタの実験をしてみます。
いつぞや自作SSBトランシーバでオンエア・・・の目標ははるかかなたですが、
ひとつひとつやっていけば着実に近づけるはず。
で、今回はその自作トランシーバに使えるかもしれない、オーディオ ローパス フィルタを作ってみます。 音楽を聴くためのアンプは、可聴周波数域をなるべくフラットなゲインで増幅するものが望まれますが、 無線機、特にSSBの場合は、3kHz以上の信号成分は送受信しないので、 3kHz以上の周波数を増幅しても意味がありません。 むしろ3kHz以上の成分があったとしたら歪やノイズなので、 高い周波数を減衰させるローパス フィルタがあるとよいでしょう。 右図はARRLアマチュア ラジオ ハンドブックに掲載されている、 少ない素子点数で構成できるサレン キー型ローパス フィルタ。 さらにゲインを1として帰還抵抗を省きました。 この定数ではQは高くなく、1kHz付近からダラダラ高域減衰されます。 ヒスノイズは確かに減衰できるけれど、 通信型受信機のオーディオフィルタとしては効きは不十分。 |
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この回路はトランジスタ技術2004年10月号「設計便利帳」にも掲載されているフリーゲ型ローパス フィルタ。 これでも効きは不十分。 |
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こちらはハイパス フィルタ。 ARRLアマチュア ラジオ ハンドブックに掲載されているものをベースに、 素子定数をいじってみました。 数100Hz以下の低域がカットされます。 |
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CW用のフィルタをもたないSSB受信機で7MHzバンドのCWを聞くと、
多くの局が混信してしまい非常に聞き取りにくくなります。
オーディオ出力に特定の周波数のみを通すフィルタを入れれば、ずいぶんと聞き取りやすくなります。
この方式では近接した強力な局のためにAGCが効いて感度が落ちるとか、混変調や抑圧からは逃れられないなど、
中間周波段で所定の選択度を得る本来の方法にはかないませんが、
それでも効果は十分にあります。 オペアンプで作ったアクティブCWフィルタ回路がARRLアマチュア・ラジオ・ハンドブックに掲載されており、 またQST誌 2006年06月号に、同一の回路を使ってMFJ社の7MHzポータブルトランシーバに組み込んだ例が紹介されています。 これを参考にして、EL500で実験してみることにしました。 記事で使われているオペアンプはEL500と同じLM324。 この回路は同一の定数をもつアクティブ バンドパス フィルタを2段直結にしたもので、 各段はパターワース特性を示します。 QST誌2006年06月号の記事は、MFJ-9040トランシーバに組み込むために、 センター周波数700Hz、Q=5、ゲイン=0dBを狙って素子定数計算が行われています。 しかしEL500には記事で紹介されている定数の素子がない (680pFを4個、3.3MΩを2本、など) ので、EL500に付属している素子で構成できるよう、記事の計算式を使って定数計算を行いました。 また電源の配線もEL500向けにアレンジしてあります。 結果は右図。 |
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回路図では非反転入力端子に電解キャパシタが入っていますが、これはなくても動作します。 EL500での配線は右図のごとく。 抵抗やキャパシタのリード線は短く切ってしまったほうがコンパクトに配線できます。 配線し終わった後にはたいてい、もうすこしきれいにできないかなあ・・・と悩みます。 |
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できあがったフィルタをテストします。
WaveGeneを使って正弦波を発生させ、その周波数をスイープさせ、オシロスコープで出力を観測してみました。
右図をクリックするとこの様子がムービーで見られます。
管面上段が入力、下段がフィルタの出力です。
フィルタの共振周波数で出力が大きく、低かったり高かったりすると出力が下がっているのがわかります。
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WaveSpectraで観測した周波数特性はこちら。
ピーク周波数が800Hz(よりちょっとだけ上)にあることがわかります。
50Hzに見えるピークは商用電源のハム、16kHzあたりのはPCオーディオのサンプルによるもの。 このフィルタは2段構成にしてありますが、 CWオーディオフィルタとしてのシャープさはまだ甘いといえます。 もっともオーディオフィルタは前述したような欠点がありますから、 この辺で収めておくのがよいかもしれません。 CW用の狭帯域フィルタを持たない(オプションのパスバンドチューニングユニットも装着されていない)ICOM IC-551にHFトランスバータを組み合わせて7MHzのCWを聞いてみましたが、 ノイズに埋もれそうな信号の了解度は大幅アップ、 効果大! でした。 |
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今日のわれわれの暮らしを快適で便利にしてくれている基本技術のひとつは多重通信であると思います。
一本の通信線や単一チャネル周波数の電波にさまざまな信号を同時に乗せて転送できる多重通信の基礎を、
簡単な実験を通して試みてみましょう。 送信機の回路を右に示します。 この送信機は
右上が信号Aの発生回路で、タイマーIC NE555を使って周波数約1Hz デューティ比50の方形波を生成しています。 信号Aがハイレベルのとき、LED2が点灯します。 左上の部分が信号B用のキャリア発生回路で、約1kHzのキャリアを発振させます。 ここは
左下の部分が信号B生成回路で、ロジック インバータを用いた無安定バイブレータになっています。 ここは
キャリアの断続として表された信号Bは、エミッタ フォロワのバッファQ2を介して信号A発生回路の出力と混合されます。 受信側は、信号Aを取り出す回路と信号Bを取り出す回路の2つを作ります。 いずれも信号を受信するとLEDが点灯するようにします。 信号Aはベースバンド伝送なので、簡単なローパス フィルタを作ればOK。 オペアンプはコンパレータ兼LEDドライバとして使用します。 信号Bは、ハイパスフィルタを作って直流分を取り除いた後、信号の振幅を検出して(検波して)LEDを点灯します。 右に示す信号B復調回路は、最初のオペアンプがアクティブ ハイパスフィルタとして動作し、 2つめのオペアンプがコンパレータとして動作します。 実際の配線は、プレッドボードの左側が送信機、 右側が受信機となるようにしました。 表示LEDも左の2個が送信表示、 右の2個が受信表示です。 送信機回路と受信機回路は、グラウンドおよび電源をのぞくとたった1本のワイヤで結ばれています。 受信LEDの点滅は送信LEDとまったく変わらずに点滅しています。 たった1本のワイヤに、2つの異なる信号を載せて伝送することができました! |
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電源回路を学ぶ | Learning Power Supply Circuits |
ツェナー ダイオードは、順方向の動作は一般のダイオードと同じですが、
逆方向に電圧を印加していくと、最初のうちは電流は流れませんが、ある電圧を境にして電流が急速に流れ始める特性をもっています。
この時の電圧をツェナー電圧と呼びます。 ツェナー ダイオードは、ツェナー電圧がほぼ変化しないという特性を利用して、 各種の基準電圧を得る回路に使用されます。 さまざまなツェナー電圧をもつツェナー ダイオードが製品化されているので、 希望する電圧にいちばん近いツェナー ダイオードを選びます。 EL500にはツェナー電圧約4.7Vのツェナー ダイオード、RD4.7JSが1本付属しています。 右図は、これを使って約6Vの不安定な電池電圧から約4.7Vの安定な電圧を得るものです。 右図の回路では直列抵抗を150Ωに選び、ツェナー ダイオードに約10mAの逆電流が流れるようにしています。 ツェナー電圧はほぼ変化しないといっても、RD4.7のようにツェナー電圧の低いものは流す電流値によってツェナー電圧は変化してしまいます。 電池電圧が5.5Vまで消耗してくると、ツェナー電流が減って、それにあわせてツェナー電圧も下がり、おおむね4.5V程度になります。 この回路では安定した電圧を得ることができますが、 小さな電流しか取り出すことができません。 |
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上記のツェナーダイオードだけではほんの少ない電流しか取り出せないので、実用的な電源回路として使うことはできません。
取り出せる電流を増やすには、トランジスタを1つ使い、電流ブーストします。 回路は右。トランジスタはエミッタフォロワとして動作しています。 入力電力がトランジスタを通って出力電力として出ていることから、この電源回路は直列通過形、つまりシリーズ・パス型電源回路と呼ばれます。 ツェナー動作しているツェナーダイオードの両端の電圧は、安定してはいるものの、よく観察するとノイズが多く乗っていることがわかります。 キャパシタC1は、ツェナー ダイオードが発生するノイズを吸収するためのもの。 またキャパシタC2は、交流的な出力インピーダンスを下げるためのものです。 この回路では出力電流によらず出力電圧が完全に安定している、とまではいきませんが、 数10mA程度の小さな装置の簡易電源として使えます。 |
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上記の電流ブースト電源回路では、負荷電流が変化するとすこし出力電圧が変化してしまいます。
負荷が変化しても出力電圧を安定にするためには、負帰還形電源回路を使います。
この回路では、基準電圧と出力電圧を比較し、誤差分をシリーズ パス トランジスタのベースに戻しています。 右の回路では比較のためにオペアンプを使っています。 オペアンプはツェナー ダイオードをつかった基準電圧と、出力電圧をR1とR2とで分圧した電圧を比較し、 この二つが同じになるようにシリーズ パス トランジスタを制御しています。 R2を取り除き、R1を0Ω(つまりオペアンプの−入力を出力端子に直結)すれば、出力電圧は基準電圧と同じになります。 また、R1とR2を設定することにより、出力電圧を基準電圧以上の任意の電圧にできます。 |
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トランジスタ オーディオ プリブースタ
をデリカD:5にで動作させるための小さな安定化電源回路をつくってみます。
入力は車両のDC12V電源、出力は9V前後、出力電流は10mAとれれば十分。
こういった用途なら3端子レギュレータ1つ使えばそれで完了ですが、
今回は勉強のためにディスクリート トランジスタでつくりましょう。 上の例ではオペアンプで基準電圧と出力電圧を比較しシリーズ パス トランジスタを制御していましたが、 今回の回路ではここではトランジスタQ3のエミッタに接続された基準電圧とベースに接続された出力電圧(の分圧値)が比較され、 シリーズ パス トランジスタを制御しています。 出力電流要求値はわずかに10mAといったところなのですが、安定性を稼ぐためにシリーズ パス トランジスタはダーリントン接続にしました。 キャパシタC1は変化の早い脈流分については分圧抵抗R2をパイパスしてフィードバックがかかりやすくするためのもの。 日章工業NP-101安定化電源装置 はこれとほとんど同じ動作原理であることがわかります。 最初はLEDの順方向電圧(手持ちのもので約1.6V)を基準電圧にしようと思ったのですが、 順方向電圧は電流によってそれなりに変化してしまいます。 今回は車両電源のオルタネータノイズを除去したいと思っているので、もうすこし安定度がほしいです。 そこでやはりツェナー ダイオードを使うことにしました。 ラボにはシリコンダイオードが各種混在100本以上もありますが、Halted Specialitiesのグラブ バッグ セールで手に入れたものなので、 どういったスペックのものなのかまったく不明。 いくつか試して、Vz=5Vのツェナー ダイオードを発見。 入力電圧10V〜16Vの範囲で出力電圧は0.8Vほど変化してしまいますが、要件は充足。 2012-01-29 小型DC9V安定化電源回路 ブレッドボード試作 この電源回路を、トランジスタ オーディオ プリブースタといっしょにユニバーサル基板に実装します。 この作業は こちら。 |
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いまだにスイッチング電源回路の動作原理を理解していないので、
ちょっと試してみることにしました。
EL500のマニュアル中では
まずはパルス波形の生成から。 パルス幅を可変できる回路で実験してみることにしました。 この目的ならタイマーIC NE555を使うのが簡単ですが、 原理を学ぶためにここではコンパレータによる無安定マルチバイブレータを作ってみます。 右図は、 トランジスタ技術 2003年09月号 <弛張発振回路の設計> に載っていた 「発振周波数の変動がなくデューティ比を可変できるフリー・ラン・マルチ」 回路を参考にしたもので、 EL500で作るためにLM324オペアンプをコンパレータとして使っています。 キャパシタを1μFと大きくし、パルスの様子を見えるようにしてみました。 おおむね20Hzで発振しており、デューティをおおよそ5%〜95%程度の範囲で可変できます。 なるほど、この回路ならデューティを変化させる仕組みが理解できます。 |
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発振周波数はほぼ一定のままデューティ比だけ可変できるこの回路の出力を、ダイオードを介して平滑キャパシタに充電し、
スイッチング式DC-DCダウンコンバータにしてみました。
本来はエネルギー ストレージ インダクタとフリーホイール ダイオードを追加して正式なDC-DCダウンコンバータとすべきですが。 R5は電源投入直後最初の充電でオペアンプの出力に無理がかからないように入れたもので、 実用にするためには取り去る必要があります。 |
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はんだこてを使ってユニバーサル基板に小さな回路を作れるようになった小学5年の頃、
トランジスタ1石と山水ドライバトランス1つで作った電子びっくり箱は本当にビリビリし、
誰が一番長く持っていられるか友達の間で競争したりしました。
マイキットや電子ブロック世代のテクノロジーではブロッキング発振と昇圧トランス、というのが定番で、
高圧パルス発生器であり、安定した直流電源ではありません。
そこで、EL500ではもうすこしマトモなDC-DCアップコンバータを作ってみます。
マニュアルでは
今回はパルス生成は上述のコンパレータ式無安定マルチ バイブレータを使い、 インダクタとして手持ちの470μHのインダクタを使ってみました。 C1を0.1μFに小さくし、発振周波数を上げてみます。 平滑キャパシタはEL500付属品では耐圧が不足しているので、 手持ちの470μF 50WV品を使います。 回路は右図のようになりました。 トランジスタがONしている間、電流のエネルギーがインダクタに蓄積されます。 トランジスタをOFFした瞬間にインダクタ両端に大きな誘導電圧が発生し、 これとバッテリの電圧が直列になる形で平滑キャパシタに充電されます。 本当なら整流用のダイオードD3は高速ショットキー・バリア・ダイオードを使いたいところですが、 ここではEL500のシリコンダイオードを使っています。 スイッチングトランジスタもパワーのあるものを使いたいのですが、 これもEL500付属の小信号トランジスタ。 元気よくスイッチしすぎると飛んでしまうかもしれませんので、 ベースに1kΩの抵抗を入れて軽く動作させています。 この回路定数では発振周波数は約250Hzで、 無負荷で50V近くの出力が取り出せました。 無理を承知でベース抵抗を100Ωにまで下げると、 発振周波数が高くなってしまうためもあり、 使っている平滑電解キャパシタの耐電圧を超えて70V以上も出てしまいました。 うわわっ、といいつつ電池を抜き、10kΩの抵抗でキャパシタをディスチャージします。 ここまで来ると、間違いなく感電の危険のあるプロジェクトです。 |
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ロジックで楽しむ | Having Fun with Logic Circuits |
マイキットや電子ブロックではできなかったロジックICをつかってデジタル回路の基礎を学ぶことにします。
とはいってもさすがにNANDゲートやNORゲートを使ったワイヤード・ロジックの組み方の基礎というのは卒業していますので、
ここは本当のロジックIC初心者のためのトレーニング教材を作ってみます。 これは少人数の講習会向けを狙ったもので、講師側のEL500では4本のON/OFF信号を組み合わせて16通りのパターンを送出し、 受講者側では16種類のうち自分に指定された組み合わせの場合にのみランプを点けてブザーを鳴らす、という趣向です。 右図がその回路。 上側が講師用の送信機、 下側は受講者用の受信機です。 講師側送信機は、クロック発生回路とカウンタICからなっています。 クロック発生回路はロジック インバータを使った無安定マルチバイブレータで、 キャパシタを切り替えることにより約2Hzと約20Hzを切り替えられるようにしてあります。 クロック発生回路にはHC04を使っていますが、これはEL500の標準部品ではなくて追加したもの。 受信機のトーン発生にHC00を使っており、さらにデコード回路にもうひとつHC00を使いたいからです。 カウンタにはHC191を使っており、ゲート端子にスイッチを入れて、カウンタのランとストップを切り替えられるようにしています。 複数の受講者側受信機を並列駆動できるよう、出力にはトランジスタを入れてあります。 電圧レベル的にはいい加減なものですが、4〜5台をドライブするならこれでいいでしょう。 受信機側は、与えられた組み合わせのときだけ論理Hを出すよう受講者がデコーダ回路を組みます。 デコーダ出力がハイレベルのとき、それにつづくオーディオトーン発生回路がブザー音を出します。 これは送信側と同じロジック インバータ使用の無安定マルチバイブレータで、出力でトランジスタを駆動し、 出力トランスを介してスピーカを駆動します。 ブザー音は結構大きくなってしまうので、トランジスタのエミッタに抵抗を入れて静かな部屋でもうるさすぎない程度に音量を絞りました。 |
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今回はテスト用に1台のEL500に講師用回路と受講者用回路を組み立てました。
回路図中にもあるように、ここでは4本の信号線(D0〜D3)がすべてハイレベルのときだけLEDとブザーがONするロジックを入れてあります。
動作のムービーは
こちら
。
一番右がクロック、4つ信号線のランプがあり、右から6つめがデコーダ判定LED。
ムービーではランプ点滅が規則正しくないですがこれは低品質ビデオ圧縮のせい。
クロックがFASTのときは、クロックLEDと信号線LEDの点滅は人の目ではほぼ見分けられません。 論理表を書きながら0000から1111までの組み合わせのそれぞれに対応するデコーダを作ってみよう、 というのは初心者にはいい課題です。 EL500に付属しているのはNANDとNORだけですから、なおさらチャレンジ。 ONがひとつもない、ひとつだけ、ふたつだけ、みっつのとき、全部ONのとき、 の4通りを考えておけば、後は入力信号の配線を入れ替えるだけでできる・・・と思いつけるかな? さて実際に4人の受講者を集めてデコーダを組ませてみたところ、問題発生。 受講者は本当の入門者ばかりなので、ある程度経験を積んだ人間には思いもよらない誤配線をします。 入力ピンと出力ピンを直結したり、ICのグラウンド線をつなぎ忘れていたり、 さらにはHC00のつもりがLM324を使っていたり・・・。 さらには、これは講師のミスでしたが、NORゲートICのピン配置はNANDゲートとは異なることを忠告していませんでした。 結果として講師側送信機は誤配線だらけの受講者回路を4台ぶら下げられ、送信機から供給する信号に受信機側からの信号が逆流し、 点灯パターンが乱れたり、「うっすらとLEDが点く」状態になってしまったり。 しかも誰がミスしているのかわからない! 受講者がお互いに足を引っ張り合っているようなものです。 最終的には全員どうにかデコードできるようになったものの、演習時間は予定を大幅にオーバー。 次回は対策を打ちましょう。 受講者同士が干渉しないよう、送信機側にバッファを入れるべきです。 また、この講義のたびごとに上記送信回路を組み立てるのも大変なので、 次回からはEL500のコンピュータを使うようにしましょう。 |
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フリップフロップはもうひとつのデジタル回路の基本。
現在の状態を「記憶」することができるこの回路は、間違いなく現代のエレクトロニクスの土台になっています。
とはいえ、テキストに出てくる説明はたいてい実感がわかず、
なかなか理解しにくいもの。
でも具体的なニーズがあって、どうしたらいいんだろう?
と考えた結果に見つけたものは、テキストよりもずっと理解できたりします。 今回もそんなパターン。 ボイスレコーダICを使ったキット をアマチュア無線用のボイスキーヤに拡張改造しようとしているとき、 「手動モード」と「自動モード」をモーメンタリスイッチで切り替える必要が出てきました。 EL500のマニュアルを参照し、見つけたのは 今回のニーズにばっちりのソリューションです。 プロジェクトの詳細詳細については AvioSys K01-A "Happiness" Voice Recording Kit のページを参照してください。 |
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無線機用CWセミブレークインアダプタの回路検討の一つとして、ワンショット、つまり単安定マルチバイブレータを試してみました。
結局ワンショットは狙っていたアプリケーションには合わなかったのですが。 トランジスタを2石使った基本的なワンショットマルチです。 平常時はトランジスタQ2がオン状態を維持していて、LEDが消えています。 プッシュスイッチを使ってトランジスタQ1のベースを4.7kΩの抵抗で一瞬プルアップすると、 Q1がオンし、Q2はオフになり、LEDが点灯します。この状態は実測値で4.2〜4.3秒の間続き、その後平常状態に戻ってLEDが消えます。 この回路では、プッシュスイッチを押した瞬間から約4.2秒を測ります。 最後にプッシュスイッチを離したときからではありません。 つまり、プッシュスイッチを押したままにしても、最初に押した瞬間から4.2秒でLEDは消えます。 このプロジェクトにはLEDが2つあり、通常はLED2が点灯しますが、 スイッチS1を押すと約1秒間だけLED2が消灯してかわりにLED1が点灯する、というものです。 トランジスタが4つ使われていますが、うち2つはLEDを点灯させるためのドライバで、 中身は2石の単安定マルチバイブレータです。 プロジェクト30と同様に、スイッチS1が押されてから一定時間を測っており、S1が話されてからの時間ではありません。 S1を押したままでも一定時間後にLED1が消えてしまいます。 遅延時間はスイッチを押している時間や頻度に影響されてしまうようだし、 1つはPNPトランジスタを使い、シリコンダイオードも必要など部品点数も多いので、 実用上プロジェクト30に対してメリットがあるようには思えません。 2009-08-10 プロジェクト30 実験 2009-08-10 プロジェクト54 実験 このほかにもNE555を使った単安定マルチバイブレータとオペアンプを使った単安定マルチバイブレータがあります。 |
コンピュータ | Computers |
EL500は上側パネル中央部にLCDディスプレイ、
下側パネル右下にキーボードを持っています。
この"マイクロコンピュータ"は、
カタログを見たときはTK-80のような古典的なワンボードマイコントレーニングセットだと思い込んでいたのですが、
いやいや、ずいぶん違います。 古典的なワンボード マイコン トレーニング セット、たとえばTK-80 (私はEX-80ユーザでしたが) でプログラムを入力するには、 キーボードでメモリアドレスを指定しマシン語を1バイトずつ入力していきます。 ROMに書かれたモニタ プログラムが、こういったプログラム入力やプログラムの実行・停止を管理しています。 これに対しEL500のコンピュータは、 内蔵モニタ プログラムが 「仮想的なマイコンをエミュレートしている」 のです。 キーボードからのプログラム入力は、仮想アセンブリ言語で行います。 データ転送はMOV命令、分岐はJMP/JC/JNC/JZ/JNZ・・・といった具合で、 ふむふむ、といった感じ。 算術論理演算の結果はゼロフラグとキャリーフラグに反映されます。 データを読み書きできるのは、AからFまでの8ビットレジスタ6本だけ。 このコンピュータには、いわゆる普通のメモリというものは存在していません。 命令長はどの命令も同じで、1ステップを使用し、 プログラムメモリは全64ステップの容量があります。 分岐命令は分岐先ステップ番号を指定する絶対アドレシングのみ。 ただし「縦積み命令」という特殊な命令があり、 これで「配列の要素にアクセスする」動作を簡単に実現しています。 サブルーチンコール機能はありませんが、 指定時間だけ待つタイマーウェイト命令や、 簡単に音を出せるブザー制御命令があり、実験を容易にしています。 右に示したLCDパネルの写真は、プログラム入力モードの表示例。 プログラムステップ0BHに"AND B, #01H" を入力したところ。 このLCDパネルはプログラム入力のほか、 ステップ実行時にメモリA (アキュムレータ)と他1つのメモリの内容を読むことができ、 デバッグの助けとなります。 コンピュータの出力は出力ポートだけで、 プログラムによってこのLCDの表示を制御することはできません。 アーキテクチャの制約とプログラムメモリ容量/データメモリ容量の小ささから高度なプログラミングは不可能ですが、 それは致し方ないこととしましょう。 アセンブリ言語を逐次実行していくこのコンピュータは、 「マイコンもどき」と呼ばれてしまうことは避けられないでしょうが、 実際 わかりやすいし使いやすく、 まったくマイコンプログラミングをしたことがない受講生も大きな支障なく使い始められました。 EL500で雰囲気をつかんだら、 本物のマイコンを積んだシングルボードに進級するなり、 高級言語が使えるワンチップCPUに進むなりすればよいのです。 ひとつ要望させてもらえるとすれば、 メインスイッチをOFFにしてもプログラムが保持されるバッテリーバックアップ機能が欲しいところ。 |
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アセンブリ言語風のインストラクションでキーボードからプログラミングでき、
I/Oポートを制御できるEL500の「コンピュータ」は、ブレッドボードに組んだ回路の応用範囲を格段に広げてくれます。 私はいちおう32ビットRISCプロセッサを積んだ組み込みシステムでマシン語レベルのデバッグをしていたので、 EL500のコンピュータはいまさら学ぶ必要はありません。 しかし簡単にプロセッサの動作を体験できるという点で、EL500のコンピュータはトレーニング教材としては貴重なものだといえます。 マイクロプロセッサ プログラミングの経験が皆無な若手エンジニアのトレーニングとして、 I/Oポートを学んでもらうべく、EL500マニュアル 「ソフトウェア編 基礎・応用」の
ところが課題に取り組んだどの受講生も、マニュアルの通りに動かない、と言ってきました。 そんなはずは・・・とマニュアルのプログラムを読んでみると、 なるほど、こりゃバグだ。 プログラムは、ステップ00からステップ08までが点灯LEDを左方向にシフトしていくもので、 ステップ09からステップ11までが点灯LEDを右方向にシフトしていくものです。 本プログラムのバグは、ステップ11にあります。 「右方向にひとつシフトしたが、まだ点灯LEDは一番右には到達していない」 とき、さらに右方向シフト処理を繰り返すためのジャンプ処理ですが、 この飛び先が 「右方向シフト処理ループを開始するための初期化」の途中であるステップ0Aになってしまっています。 このため、いったん右方向シフト処理に入ると、いつまでたっても一番左から動けずにいるのです。 |
PROJECT 410: ORIGINAL
00 MOV B, #08H 01 MOV A, #01H 02 OUT A 03 TM2 #01H 04 CLC 05 ROL A 06 CMP B,A 07 JZ L08H 08 JNZ L02H 09 MOV B, #01H 0A MOV A, #08H 0B OUT A 0C TM2 #01H 0D CLC 0E ROR A 0F CMP A,B 10 JZ L00H 11 JNZ L0AH |
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修正は簡単で、ステップ11を
11 JNZ L0BHにするだけです。 さらに言うと、ステップ11ではジャンプ・ノン・ゼロ命令を使う意味はなく、 無条件ジャンプで済みます。 よって 11 JMP L0BHが最も適切、といえます。 狙い通りに動き出したプログラムをもう一度読んで自分で理解していくにつれ、 受講生から 「何でステップ07の飛び先がステップ09ではないのか?」 との質問が出てきました。 たしかにその通りで、ステップ07は 07 JZ L09Hであるべきです。 マニュアルに書かれているオリジナルプログラムの場合はひとつ手前のステップに飛んでいますが、 ここの命令がジャンプ・ノン・ゼロ命令であるため、 いちおう思惑通りの動作はします。 しかし正しくは 07 JZ L09H 08 JMP L02Hとすべきですね。 バグを修正したプログラムを右に示します。 |
PROJECT 410: BUG FIXED
00 MOV B, #08H 01 MOV A, #01H 02 OUT A 03 TM2 #01H 04 CLC 05 ROL A 06 CMP B,A 07 JZ L09H 08 JNZ L02H 09 MOV B, #01H 0A MOV A, #08H 0B OUT A 0C TM2 #01H 0D CLC 0E ROR A 0F CMP A,B 10 JZ L00H 11 JMP L0BH |
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ここまでくれば、
07 JNZ L02H 08 NOPでもいいんじゃないか、と考えがつきます。 空いた1ステップを詰めて、さらに均整の取れた思考とするために一番最後の条件判断も 0F JNZ L0BH 10 JMP L00Hとします。 1つ余計な条件分岐命令を削除できました。 マニュアルを読めば、 EL500コンピュータのCMP命令はイミディエートデータをオペランドにとることができることに気がついて、 比較用のBレジスタを使う意味はないことに気がつけるでしょう。 Bレジ代入のMOV命令を2ステップ削除でき、メモリ消費も1バイト減りました。 さらに、前半部から後半部に切り替わるときにはAレジスタはすでに08Hになっているので、 わざわざMOVで08Hを代入しなおす必要はなし。 さらに1ステップ簡略化でき、後半部の初期化は全く不要になりました。 最後に、ウェイト命令のパラメータをいじって速度を調整し、 できあがったのが右に示す改良版プログラム。 合計で4ステップ小さくなりました。 EL500の8つのLEDをすべて使って試すなら、 ステップ05のイミディエートオペランドを#80Hに変更すればOK。 オリジナルプログラムでは2箇所の変更が必要でしたので、保守性も向上しています。 この先さらなる改善は、前半と後半で繰り返されている共通命令・・・OUT命令とタイマーウェイト命令、 それにキャリーフラグクリア命令・・・を共通化することですが、可能であったとして可読性を損なうでしょうから、 ここで打ち止めとします。 あら探しをしているわけではありませんが、 EL500マニュアル 「ソフトウェア編 基礎・応用」の19ページ、 CMP命令の"フォーマット3: CMP mem, #n8"に出てくる使用例1・使用例2はいずれも間違っていると思うのですが。 しかし今回もっとも驚いたのは、 最近の若い世代はナイトライダーを知らない!!!! ということでしたが・・・こりゃ無理もないかな。 |
PROJECT 410: BUG FIXED & OPTIMIZED
00 MOV A, #01H 01 OUT A 02 TM1 #06H 03 CLC 04 ROL A 05 CMP A, #08H 06 JNZ L01H 07 OUT A 08 TM1 #06H 09 CLC 0A ROR A 0B CMP A, #01H 0C JNZ L07H 0D JMP L00H |
前述のロジック・トレーニング教材のための講師用ビットパターン生成回路を、EL500のマイコンで実現しましょう。
仕様は以下の通り。
図では2人ぶんの出力だけ描いてあります。 講師の自分自身用と受講生4名用とするためにはあと3系統のバッファを追加する必要があります。 バッファにはインバータを使っていますので、EL500のコンピュータの出力ポートの出力は負論理とします。 回路図では書いていませんが、出力ポートはプルダウンしておく必要があります。 RUN-STOPスイッチは、スイッチを上にしたときまたはプッシュしたときにラン、とします。 スイッチをONにすると入力ポートは論理0になるので、 論理0でラン、論理1でストップとします。 FAST-SLOWスイッチは、スイッチを上にしたときまたはプッシュしたときにFAST、とします。 スイッチをONにすると入力ポートは論理0になるので、 論理0でFAST、論理1でSLOWとします。 |
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完成したプログラムは右。
現在出力しているビットパターンはメモリCに正論理で保持しており、
ポートに出力するときにXOR命令でビット反転させています。
現在出力しているビットパターンを負論理で保持するようにすればコードもメモリも減らせますが、
判りやすさの面からあえてこうしています。 ラン/ストップの制御プロックはFAST/SLOW制御ブロックの次に入っていますが、 この順番は使い勝手の上で意外と重要です。 この順番が逆だと、スピードをSLOWにしておいてRUN-STOPスイッチのチョイ押しでひとつだけパターンを進めようとしたとき、 スイッチを押してもLEDの状態が変化するまでにひと呼吸入ってしまい、違和感が大。 要するにウェイト中にチョイ押しされたRUNボタンは無視されてしまうのです。 こういった細かいユーザビリティは最初に掲げた程度の荒い要求仕様書では出てきません。
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LOGIC DECORDER TRAINING SET
PATTERN GENERATOR : ==== INITIALIZATION ==== 00 MOV C, #00H : : ==== OUTPUT PATTERN ==== 01 MOV A, C 02 XOR A, #FFH 03 OUT A : : ==== FAST / SLOW CONTROL ==== 04 IN B 05 AND B, #02H 06 CMP B, #02H 07 JC L09H 08 TM1 #29H 09 TM1 #01H : : ==== RUN / STOP CONTROL ==== 0A IN B 0B AND B, #01H 0C CMP B, #01H 0D JNC L0AH : : ==== INCREMENT AND LOOP ==== 0E CMP C, #0FH 0F JZ L00H 10 INC C 11 JMP L01H |
改善要望 | Just an User Feedback |
ひょっとしてEL500の商品開発企画の方がこのページを読んでいらっしゃるとしたら・・・
いくつか改善要望を挙げておいて損はないでしょう。
未来のエンジニアのために、よりよいキットを提案し続けてもらいたいと思いますから。 電源スイッチを装備してください
必要があります。 アナログメータがひとつあれば、配線の手間が減るばかりではなく、 理解しやすさもずいぶん違ってくるはず。 本機を使って実際に入門トレーニングを行う場合は、 安価なポケットテスタを併用する必要があります。
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ICに触るのもはじめての初心者は、ICを抜こうとしてピンをしばしば折ってしまいます。
NoobowSystemsおすすめの、お手軽で確実な方法はこれ。
ICの下のプレッドボードの溝に、つまようじをほぼ水平に押し込みます。
無理にこじらず、奥まで押し込むだけ。
ほら、簡単でしょ?
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メインテナンス | Maintenance |
さすがに私はそんなミスは(今のところ)やらかしていませんが、
エレクトロニクス初心者の教材として使い始めると、誤配線をしてLEDを焼ききってしまう場合がけっこうあります。 使われているLEDはごく普通の赤色LEDです。 交換するには、ドライバでビスを緩めてアッパーパネルを外します。 LEDの取り付け方法は見れば一目瞭然ですからあえて書きません。 LEDの極性に注意して交換すればOKです。 ネジの本数が多いので面倒な作業ですが、難しくはありません。 ラボには色はずばり同じではないものの、ちょうど合う赤色LEDの在庫が大量にあります。 ご希望の方は返信用封筒同封いただければ無料でお分けいたします。 までお知らせください。 |
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