AvioSys K01-A
"Happiness" Voice Recording Kit |
50MHz SSBでコンテスト運用すると、定番の必勝ポイントにでも移動しない限り呼ばれまくるということはないので、 必然的にCQを連呼することになります。 1〜2時間程度ならともかく、18時間のフルデュレーションで運用するならボイス キーヤが威力を発揮します。 もちろん市販品もありますが、自作するのも楽しいでしょう。 なにかいい素材はないかな、とアメ横を歩いていたら、ちょうどいいキットが見つかりました。 値段も手ごろ。これにしよう。 |
Aviosys社K01-Aは台湾
Aplus
社APR9600ボイスレコーディングICを使ったキットで、
オンボードのコンデンサマイクロホンとスピーカをもち、1セッション60秒の録音再生が可能。
電池ボックスも付属しており、組み立ててすぐに使うことができます。
基板の四隅に取り付ける足も付属していて、親切。 APR9600は秋月から単品で入手できますし、チップのデータシートも入手できます。 このキットで雰囲気をつかみ、さらに応用したければ、チップを単品で購入しスクラッチビルドすればいいでしょう。 組み立てる時間がないまま夏休みを迎えたものの、 今年の夏の猛暑でラボの室温は生存可能範囲を超えてしまい、 キットビルディングを楽しむどころの騒ぎではありません。 避難先の第2研究所でも空調機の能力を上回る気温。 室内でじっとしていてさえ何もする気にもなれず、 ひたすら耐えることを余儀なくされていました。 しかしこれでせっかくの夏休みをつぶすのももったいない話。 室内にいても暑いのならいっそのこと、と、 第2研究所駐車場の炎天下で日よけパラソルを広げ、 発電機を回してはんだこてに火を入れ、アウトドア キット ビルディングを楽しむことにしました。 鉛フリーのキットの基板は寸法精度も形状安定性もよく、 はんだの乗りもよく、 組み立て中は暑さを忘れて楽しむことができました。 欠品もなく、30分後には一発で動作を開始しました。 |
本機のスピーカはAPR9600のスピーカ出力から直接駆動されていますが、
キットそのままのむきだしスピーカではその音量は不足気味。
APR9600のデータシートを読むと、スピーカ出力はわずか12.5mWとのことですので、
動作は設計どおり、といえます。
同じφ56mmの小型スピーカでも、きちんとエンクロージャに入っているものであれば室内使用に十分な音量が得られます。
スピーカ音量が小さいために音質の良し悪しはよくわかりませんが、 サンプリングクロックに起因するキーンという4kHzのバックグラウンドノイズが含まれています。 スピーカのかわりにヘッドフォンをつないで聴いてみると、 音量は十分ながら高音域がほとんど再生されていないことがわかります。 APR9600にはサンプリングクロックを発生させる発振回路が内蔵されており、 7ピンのOscRピンに取り付ける抵抗で約4kHzから8kHzの間で設定できます。 本機ではこの抵抗はR7で、82kΩが提供されています (ただし組み立てマニュアル中の回路図では24kΩと書かれています)。 このときサンプリング周波数は約4.2kHzで、入力帯域幅はその半分の2.1kHz、 録音再生時間は60秒となります。 さすがに現状の音質ではSSB通信機に使うといえども高音がなく明瞭度が低すぎるので、 マニュアルにもあるとおりR7を24kΩに変え、入力帯域幅を4kHz確保することにします。 録音再生時間は30秒に減りますが、 それだけあればコンテスト運用はもちろん、通常の移動運用のCQ呼び出しにも問題ありません。 8kHzサンプリングでの音質は期待通り良くなり、 またサンプリング由来のキーンというノイズは気にならなくなりました。 ボイス キーヤを作るにあたりいずれ適当なケースに入れて料理するつもりですので、 スピーカは取り外し、別用途に使用しました。 |
本機を使ってボイスキーヤとするために、以下の機能の実装が望まれます。 2008年オールJAコンテストでの実戦投入を目標とします。 まだ半年先ですが、育児に時間を奪われている状況なのでそれでさえチャレンジなのです。 |
コンテストのためのCQ連呼機能を考えてみます。
マイクロコントローラ制御にするのが今風だし、
そのために
PICプログラマボード
を組み立てて、開発ツールは準備完了しています。
が、勉強のためにハードワイヤードでやってみるのも面白いでしょう。
K01-Aで再生するには、オンボードのPLAYスイッチを押します。 再生中は赤色LEDが点灯します。 ということで、 回路を追加してやればいいんじゃないかと思います。 赤色LED、デシグネーションD1は、APR9600の10ピン、/Busy により制御されています。 再生中はこのピンの電圧がローレベルに落ち、LEDが点灯します。 再生させるためのスイッチSW2は、APR9600の1ピン、/M1_MESSAGE に接続されており、 スイッチを押すと/M1_MESSAGEピンがグラウンドに落とされます。 K01-AにおいてAPR9600はテープモード・ノーマルオプションで使用されます。 再生モードになっているとき、/M1_MESSAGEの立下りで再生が開始されます。 再生中に再度/M1_MESSAGEが立ち下がると、再生が停止します。 /M1_MESSAGEをローに保持したままメッセージの再生が終わってしまうと、 その後/M1_MESSAGEのステートが変化したときにAPR9600はワーニングとして2回のビープを鳴らして再生終了保持状態になります。 再生終了保持状態から回復するには、/CEピンをトグルしなくてはなりません (K01-AではリセットボタンSW6を押す)。 (APR9600データシートp7 3.1.3.2B参照) アマチュアはお手軽に、実験しながら回路をつくってみましょう。 こんなときは 500-in-One Electronic Lab が便利。 1日楽しんで、満足のいくものができあがりました。 |
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だれの助けも借りず自分一人でオートリピート機能を設計し実装できたんだから、
正式なエレクトロニクスの教育を受けたことのないラジオ小僧にしてはよくがんばれたなあと自己満足していました。
ら、CQ誌2008年04月号と05月号でまったく同じ趣向の製作記事が掲載されました。
APR9600を使った秋月電子のキットをベースに開発されています。 JH1OHZ 片倉氏によるこの記事は2回連載で、第1回は無線機とのオーディオインターフェイス関連。 ここは私はまだ着手できていませんから、大いに参考になります。 特に実地運用してみないとわからないEMC対策の方法が記されているのは助かります。 連載第2回はいよいよ自動リピート機能。 PICやH8Tinyなどを使って実現されているのなら全く驚きませんし、 APR9600はもともとマイクロコントローラによって制御されることを前提に設計されたチップなので、 ARM7TDMIコアとリアルタイムOSで処理されていても動じないでしょう。 連続数日間の育児免除の休暇さえあれば(現状それは夢のようなことです・・・)似たようなことができる自信はあります。 が、それがディスクリートのトランジスタあるいは標準CMOSロジックファミリで構成されているなら? 特に、私がDIPのICを2個とトランジスタ2石で実現したのと同等の機能を、 たとえばわずかトランジスタ2石とスイッチングダイオード3本程度でさらっと組まれたとしたら、かなりへこんでしまうでしょう。 ドキドキしながら読んだ連載第2回の回路は、NE555を2個と標準ロジックを2個、トランジスタが2個にダイオード数個。 ふう。BOMで見た直材費は私の勝ち、かな。 でも、私のはまだ完成していませんし、実地検証にも至っていません。QCDのうちQとDは完敗だな・・・。 |
オートリピートボードに録音操作機能と無線機PTT制御用メカニカルリレーを追加してRev.02にしようとしたのですが、
暗礁に乗り上げてしまいました。
ラボに在庫しているはずのDC12V駆動の超小型メカニカルリレーが見つからないのです。
そんなものはRSコンポーネントあたりで手配すれば翌日のうちには手に入りますが、
わがラボの活動においては手持ち品やジャンク品・サルベージ品の有効利用にこそ最高の価値があると信じているので、
どこかに今回のアプリケーションに最適なリレーがしまわれているのを知っていながら新品を買うだなんて絶対にいやです。 しかし、当初の見積もりの20時間を超えても隠れたリレーはいっこうに見つかりません。 数日が経ち、2週間が経ち、まだ見つからず。こりゃだめだ。 ここ数年のラボでの活動は、必要な部品を探す工数が設計や実験の工数をはるかに上回っていました。 これはラボの容積不足が限界を超えていて、なんとか収納はできているものの、実用的に探し出すことができず、 生産的な作業が不可能になっていることを意味しています。 ボイスキーヤプロジェクトを継続させるために、やむなく私はひとつの決断を下しました。 ・・・新研究所を建てよう。 |
決断から2ヵ月後の2008年05月01日、我々は新しい中央研究所に移転しました。
すべてが新しい設備、タワー建設が可能な立地、室内のロッドアンテナで短波放送を楽しめる環境、
車両整備時に水と電力を簡単に供給できるパーキング。従来の不足がほぼすべて解消されました。 収納容積はというと、残念ながら大きくは改善されませんでした。 引っ越し業者も驚いた高密度のラボから2トンロング車2台で家具や機材を運び込んでみると、 たちどころに空きスペースはなくなりました。 さらに困ったのは、第2研究所に隣接している機材保管所からの立ち退きを言い渡されてしまい、 そこにあった6畳2部屋分の機材-4トンショートボディ車1台分-も新研究所に搬入せざるを得なくなったのです。 |
中央研究所は稼働開始しましたが、移転の混乱で行方不明になった機材も多いし、
また設備導入が遅れている部分も多く、じっくり開発作業ができる状態にはなっていません。
し、件の超小型メカニカルリレーも発見できていません。
何のために中央研究所を建てたんだかわからなくなってしまいました。
すでに開発は6ヵ月間停滞しており、ボイスキーヤプロジェクトの開発コストは計画予算の1万5000倍にも膨れあがっています。
ギネスブック級のプロジェクト管理です。 CQ誌の記事より部品点数を削減できていたって、間接費がこんなにかかったのではQCDすべての面で完敗。 |
探しはじめて半年、ついにリレーが見つかりました。
何のことはない、部品整理ビドマのIC類引き出しにしまわれていました。
サイズがDIP ICと同じようなものだったのでそこに入れたのでしょうが、
であればRev.01をつくろうとして78HC00とNE555を探すときに見つけても良さそうなものですが。 これ1個に7ヵ月とうん千万円を費やし、晴れて 主債務者 の社会的ステータスを得ました。 もしこのリレーが何らかの理由でこのプロジェクトには適さないとしたら・・・だれにも話さないでおこう。 |