Hallicrafters SX-96
General Coverage Shortwave Communications Receiver
(1955) |
私のSX-96はリバモアのスワップミートで前のオーナーから直接買いました。
SX-96にはマイナーチェンジが入っています。私のモデルはMARK1A。
欠品はなく、外観は年代相当の疲れが見えるものの保存自体は良好で、
オリジナルのマニュアルとオーナーの動作保証付き。
オーナーはまた施した改造の内容についても説明してくれ、内容を記録したメモをつけてくれました。
真空管全盛の時代の高性能受信機が欲しかったもののコリンズはあまりに高価、
ハマーランドはいかにも大きくて手におえなさそうに思っていましたので、
端正なマスクで程度の良いSX-96は私にとってベストバイです。 ラボで動作させてみると全ての機能が正常に動作し、当然のことながら S-38C などの入門者用ラジオでは全く聞こえない信号が見事に受信できます。 安定度も十分。 しかしその後、どうやらこのSX-96は完調ではないように思えてきました。 感度・選択度・安定性は大変良いものの、どうにも音質がいまひとつなのです。 SSB受信ではさほど気にならないのですが、AM受信の音質がかなり悪いことがわかりました。 ラボで使用するとすぐそばのコンピュータのノイズも強烈に入ってしまい、 どうにも国際放送をゆっくり聴く雰囲気になれません。 やがてSX-96はリビングルームのスチールラックに移され、 いずれは手を入れてやろうと考えつつも単に部屋の飾りとしての存在になってしまっていました。 以来ラジオはローカル・国際放送のいずれも、ほとんど エコーフォンEC-1A を使うようになってしまいました。 2年間が経ち、 SBE SB-34トランシーバ の受信部分の修理が一段落しベンチを片づけたのを機に、 ようやく思い立ってSX-96の音質改善プロジェクトを開始することにしました。 しばらくぶりに電源を入れ、状態を再確認。 AM受信時の音質がひどく、これは強烈なローカル放送だけではなくて通常の国際放送でも発生します。 音質を除いた他の性能に問題はなさそうです。 まずはケースを開け、マニュアルを読み返し、また前オーナーの改造内容を確認することから始めました。 |
|
前のオーナーの作業メモに記録されていた変更内容は、通常のメインテナンスに加えて、検波段をSX-101相当にするものでした。 第1局部発振回路調整用トリマキャパシタ変更 第1局部発振回路の調整用トリマのC52を25-125pFに、パラに入っているC51を100pFマイカに変更。 オリジナルのC52が壊れてしまったため。 これは音質劣化に影響するとは思えません。 すでに40年を経過した受信機ですので各部のキャパシタの劣化は当然です。 前オーナーはすでにいくつかを交換しています。
ノイズリミッタ改造 変更点数は少ないながら、ノイズリミッタ周りの回路を大きく変更しています。 メモにはSX101に近づけるためとありますが、大きな疑問符つきの改造です。 前オーナーはSSBあるいはCW受信が専門でAM音質に関しては気にしなかった、という可能性もあります。 BFO出力取り出し方法変更 BFOは双3極管 6SC7 (V8) の第2セクションで発振され、 カップリングキャパシタC93 (300pF)を介してトリプル2極管6BJ7 (V7) の第2セクションで構成される検波段のグリッドに印加されます。 ノーマルではBFO出力は 6SC7のグリッド(3番ピン)から取り出されていますが、 これをプレート(2番ピン)から取り出すように変更されています。 前オーナーのメモにはSX-101MkUと同等にするためと書かれており、またこれによってより安定した動作になる、とあります。 この改造の妥当性は検証する必要がありそうですが、音声の歪はもっぱらAM受信時に顕著なので、 ひとまずは忘れて良いと思われます。 以上の回路変更のほか、ケース上部のボンネット内側に小型スピーカが取り付けられていたり、 電源ケーブルが現代風の3ピンのものに取り替えられています。 前オーナーはまた真空管をテスタでチェックして、エミ減となっていたものを交換しています。 |
|
半田ごてとポンコツオシロに火を入れ、いよいよ内部をいじりだすことにします。 おそらくここは大丈夫だろうと思いながらも、まずは低周波増幅・出力段のチェック。 電源、スピーカ(オーディオ用のコンパクトブックシェルフタイプ)をつなぎ、 CDプレーヤの音声信号を背面パネルのPHONOジャック(RCAジャック)に接続。 そう、この通信機型受信機にはなんとレコードプレーヤをつなぐための用意があるのです。 この時代の高級モデルではさほど珍しくはないようなのですが、それにしても意外。 テストで使うCDは Bob Culbertson の <Cafe San Francisco>。 チャプマン・スティックとよばれる12弦のギターのような楽器をたった一人で演奏しているものです。 パロアルトのアートフェスティバルの日に、 ユニバーシティ・アベニューの路上で演奏しているCulbertson氏のスティックから響くなんともきらびやかでかつ深いその音に感激してCDを買いました。 本人のサイン入りです。 真空管の細いグリッド線に与える音としてまさにふさわしいものです。 スピーカからは短波受信機であることを忘れてしまいそうな美しいスティックの響きが聞こえます。 前オーナーの出力アンプのグリッドバイパスキャパシタ容量変更は問題を起こしていないといえるでしょう。 |
|
検波段に問題があることを立証するため、代わりの検波段を設けてテストしてみました。
パーツボックスから検波用ゲルマニウムダイオード、セラミックキャパシタそれに抵抗1本を取り出し、
ほとんどゲルマラジオのような即席検波回路を組み込みました。
音声出力はそのままボリュームコントロールのホット側に注入してみます。 すると案の定、受信音に歪はありません。 WWVの受信波形も正常な正弦波ですし、短波・中波のどの局もきれいに聞こえます。 すでに記したように、 高周波・中間周波段での飽和を防ぐため適宜SENSITIVITYコントロールを操作する必要がありますが。 |
|
AGCは第2中間周波段の出力を検波して、
その直流分を高周波増幅段と第1中間周波増幅段にフィードバックしています。
ぱっと見る限りここで歪を発生させる可能性は少ないように思われますし、
AGC動作自体は正常に行われているようです。
SX-96のSメータは第1中間周波増幅j管 6BA6 (V4)のプレート電流を計るようになっており、
そしてSメータの動きは正常に思えます。
これは6BA6のコントロール・グリッドに印加されたAGC電圧の振る舞いが正常であることの証でしょう。 これに対して、音声信号の導通・遮断を制御するノイズリミッタはかなり怪しく思われます。 もっとも、問題となっている歪はノイズリミッタスイッチのON-OFFによらず発生していました。 もしノイズリミッタに問題があるとすれば、 前オーナーがおこなったSX-101化改造によって検波段に問題を引き起こしてしまった場合でしょう。 取り外した 6BJ7 はハリクラフターズ社のロゴ入りですので、おそらくオリジナル球でしょう。 念のためヒータを乾電池で点火してみたところ各セクションの計3本とも正常に点火します。 |
|
AGC回路は正常であることを確認するため、6BJ7を元に戻しました。
ただし検波回路のプレートは切り離し、検波はゲルマニウムダイオードによる代替回路のままです。 動作させてみると、音は良好なままです。 今度はSメータが電波の強さに応じて動き、 強力な信号を受信中にSENSITIVITYコントロールをフルにしても受信音は歪みません。 よってAGCは正常に動作しているようです。 ただしここで奇妙なことに気が付きました。 AVCスイッチをOFFにしてもAGCが動作し続けるのです。 AVCスイッチをOFFにするとAGC出力ラインが100Ωの抵抗でグラウンドに落とされ、 高周波増幅・第1中間周波増幅ともフルゲインで動作するようになります。 このとき第1中間周波増幅管のプレート電流は最大となり、 したがってSメータは信号強度によらずS1を示すはずなのですが、 Sメータは依然として信号強度に応じて振れます。 手を加え始めるまではたしか正常にAGCが切れていました。 代替検波段がなにか影響しているのでしょうか? 2024年追記: AGCスイッチが接触不良でONせず状態になっているためでした。 |
|
ここまでの作業で私の最大の用途である「国際放送をリラックスして聴く」ことができるようになったわけです。
ここで投げ出してゲルマニウムダイオードを残したままケースを閉じてしまってもいいわけですが、
それではSSB受信ができないままで、
せっかくのUSB/LSB切り替えやアマチュアバンド較正目盛り付きバンドスプレッドの意味がありません。 BFOを動作させ、発振出力をオシロで見てみました。 わずかな歪が見られるもののほぼ正弦波で、発振は安定しています。 |
|
ますますSX-101化改造に問題がありそうに思われてきました。
そこでこの部分の改造をノーマルに戻してみました。
変更は3個所、検波用2極管とノイズリミッタ用2極管のそれぞれのカソードをつなぐあたりで、
抵抗撤去が1つ、キャパシタの撤去・ショートが1個所、そして抵抗値変更が1つ。
代替検波回路を取り外し、変更を終え、期待しつつ電源投入。
すると・・・残念、音はやはり歪んでいます。 シグナル・トレーサがわりの安物PC用アンプ内蔵スピーカ (ハルテッド・エレクトロニクスのアニュアルセールで1ポンド45セントの目方売りで買ったものです。 ざっと1kg100円です) をつないだところ、歪はさらに悪化してしまいました。 このアンプの入力インピーダンスがあまり高くないとはいえ、悪化具合はかなり大きいものです。 ひょっとしたら検波は正常なのに、 その出力をノイズリミッタの周辺回路が変に吸収してしまっているのかも知れません。 |
|
検波管のカソード抵抗を変えたことによって、
ノイズリミッタの動作点が狂ってしまうかもしれませんが、
そもそもこの回路にあまり期待はできないでしょう。
当時ノイズといえば自動車のイグニションノイズ程度だったのでしょうが、
いまでは最大のノイズ源はすぐ近くのコンピュータ。
どのみちこの程度の回路では除去できませんし、
ノイズリミッタスイッチをOFFにすれば検波管の信号はノイズ・リミッタをスルーしますから、
音の劣化も起こり得ません。 さて、低周波増幅段の入力結線も元に戻し、これで完成!と思いきや、なんと音がひどい! ものすごく歪んでいるだけではなくて、レベルもとても小さくなっています。 あわてて検波段にオシロをあてると、そこでは正常。しかし低周波増幅段の入力信号は明らかに異常。 しかもノイズリミッタスイッチをONにしてもOFFにしても音はひどいままです。 いったいどうしてこんなことが起こり得るのか・・・。 回路図をながめ、配線を追いかけてたどり着いた結論を確認するためテスタを当ててみれば−ノイズリミッタスイッチの不良。 頑丈そうなトグルスイッチですが、導通がありません。やれやれ。 やはりカソード抵抗の変更がもとでノイズリミッタに十分なバイアスがかからずに効きっぱなしになっており、 しかもそれをバイパスすることができなかったわけです。 |
|
結局スイッチの位置によらず常時ノイズリミッタをバイパスするようにし、
今回の作業を終了することにしました。
パーフェクトな修理とは行きませんでしたが、私の用途には十分です。
オリジナルと同じトグルスイッチがもし手に入ったら、
今度はノイズリミッタの対策でまた楽しめるでしょう。
SX-96は再びスチールラックに戻されました。今度はいつでも使用できる状態で。 1998-11-12 作業終了 |
|
1999年に日本に帰国して以降、第1研究所ではスチールラックに、
中央研究所では玄関のキャビネットの上に置かれているのみで、
一度も通電されることないまま。
おそらくは通算で26年間、SX-96は無通電のままでした。
作業リストの後ろのほうにあったのは、
以前は正常動作していたからです。 2024年の正月も終わり、 CRV-1/HB第2輪廻 の作業が一段落したので、 つぎにSX-96の整備を行います。 カバーもかけずに置いていただけなのでホコリで汚れてしまいました。 メータの透明カバーは黄変とクラックが進んでしまいましたね。 互換品が手に入るなら交換してしまいたいところです。 2024-02-24 SX-96 整備開始 |
|
特に何をしたわけでもないのに、短波が聞こえ始めました。
Sメータも信号強度に反応しはじめ、
そのうちそれなりに元気に受信できるようになってきました。 直ったのは嬉しいけれど、こういうのは困ります。 どこがどう悪くて、それをどうしたから直った、という納得ができないと、 いつまた突然無音になってしまっても不思議ではありませんからね。 いまのところ、 6BJ8のソケットの接触不良で6BJ8のヒータが点火していなかったか、 あるいは加熱が弱すぎた・・・のが、 真空管を刺しなおして復活したというのがスジが通る説明。 ともかくも受信動作し始めたので、整備を続けます。 バンブルビーはさらに2本厄払い。 2本ともリークしていました。 2024-02-27 短波受信動作開始 整備継続 |
|
今日は50.5kHz第2中間周波増幅段の点検と第2中間周波トランスの調整。
感度に変化はありませんが、
SELECTIVITY=0.5KCポジションでの選択度が格段にシャープになりました。
半面、5KCポジションでは通過帯域にニ峰特性が出てしまい、AMの復調音質がわずかに劣化してしまいました。
ラジオタイランド日本語放送を聞く限りは問題とはならなさそうですが。 2024-02-28 第2中間周波トランス調整   バンドCとバンドDでコイルパックのトラッキング調整を行ってみました。 国際短波放送を聞くのに一番よく使うバンドC全域で感度大幅アップ! これはうれしい。   ところがSメータを壊してしまいました!! 今回整備を始めた当初からSメータの針の動きがスムースでなく、 途中で引っかかるような動きだったのです。 AGCの動作不良かもと思いましたが、 受信機が正常と思える動作を初めても針は途中で引っかかる動き。 どうにもダメだったのでピボット調整ネジを緩めたら緩め過ぎてしまい、 コイル枠が外れてしまったのです。 あああ、やっちゃった。 2024-02-29 トラッキング調整ほか / Sメータ損傷 |
|
 
SX-96のAGC電圧発生用2極管はカソードがDC4.5Vでバイアスされており、
第2中間周波信号の振幅がこの電圧を越えて初めてAGC電圧が発生し始めます。
これによりディレイドAGCを実現しています。
入力信号がある一定のレベルに達するまではAGC電圧は発生せず、
受信機はフルゲインで動作するようになっているわけです。   このディレイドAGC回路のため、AGC電圧を測定表示したのではSメータとしてはうまくありません。 ということは、AGC電圧を受けて増幅度が変わる真空管のカソード電圧を表示する方式でも同様にうまくないのでしょう。 そこでSX-96では、第2中間周波増幅管のプレート電流を測定表示する方式を取っています。   第2中間周波増幅管のプレート電流は無信号時に最大で、 信号が強まるにつれてプレート電流は減っていきます。 メータの指示が無信号時に左側で、 強まると右に振れるようにするために、 SX-96のSメータは右端がゼロになっている逆振れタイプが使われています。 壊れたSメータの代替品はそうそう見つかりそうにありません。 普通のメータを使うと、 ナショナル・クーガシリーズ のように、 メータの振れが普通の通信型受信機と左右反対になってしまって、非常によろしくありません。 でもちょっとまって。 第2中間周波増幅管のプレート電流が信号強度に応じて滑らかに変化するのなら、 そのカソード電圧を測ってもいいのでは? 第1中間周波 (1650kHz) 増幅管6BA6のカソード電圧を マルチテスタ のDC2.5Vレンジで測ってみると、 無信号時に1.1V、 強信号時に0.6V を示します。 今度は 外部安定化電源装置 を併用して、テスタの+リードをDC+1.04V固定、 テスタの-リードを6BA6のカソードに接続して、 DC0.5Vレンジで振らせてみると、右のムービーの通り。 メータアンプ新造しなくても、抵抗とトリマポテンショだけで行けるかも。 2024-02-29 代替Sメータ駆動方法を検討 |
|
シグナルジェネレータからの信号で強力なCW信号を模してチャープテストをしてみます。 右のムービーでご覧いただけるように、 チャープはほとんどなく、優秀。 とても快適に電信を受信できます。 ただキークリックはちょっと目立ちますね。 2024-03-01 BFO整備 チャープテスト |
|
 
SX-96の自慢、選択度切り替え機構のもっともシャープなポジション、 Selectivity=0.5KC のテストをしてみます。
シグナルジェネレータを使って、
目的信号を模した7.000MHzの信号を短い周期のバースト信号としてつくり、
近接信号を模して7.000.2MHz〜7.003MHzの信号を長い周期のバースト信号としてつくります。
両者の振幅は同一。
この信号をアンテナ端子に入れて7.000MHzを受信します。   結果は右のムービー。 1kHz離れるとかなり弱くなり、 2kHz離れれば聞こえない、 という結果になりました。 メカニカルフィルタやクリスタルフィルタを使わず中間周波トランスだけでこの選択度が出るのは、 さすが第2中間周波数50.5kHzのダブルスーパーヘテロダインですね。 455kHz中間周波トランスでは絶対実現不可能な選択度です。 ところでハリクラフターズ製受信機の型番が SX- なのはクリスタルフィルタ搭載の受信機、 というのが原則なのですが、 SX-96にはクリスタルフィルタは使われていないのです。 クリスタルなら第2局発が水晶発振式で水晶発振子が2つついてるんだからいいじゃない、 細かいこと言わないでよ。 とかいう感じかな? 2024-03-02 0.5KCポジション選択度聴感テスト |
|
|||
選択度切り替えスイッチの各ポジションでのオーディオ出力のレスポンスを見てみました。
RESPONSEスイッチはUPPER SIDEBANDにセットしてテストしましたからオーディオ段でのハイカットも入っています。 確かに帯域幅は確実に変化するし隣接局の混信が厳しいときは強力な武器ですが、 音質も含めた了解度はというと、びっくりするほどには効果がないようにも思えます。 強力な国際放送を聞く時は5KCではちょっと広すぎに感じられます。 これは通過帯域の双峰特性のために復調音は低域が細く高域が伸びてしまっているため。 3KCポジションではリラックスして聴くにはちょっと狭すぎるという感じです。 強力な局を聴くなら5KCポジションでRESPONSE切り替えでTREBLE CUTをいれるのがいちばんよさそう。 2024-03-02 オーディオ出力レスポンス観察 |
|
どうせ交換するのなら、と、Sメータを取り外して、ダメ元で修理を試みることにしました。 SX-96 Sメータ裏側の端子には、硬くて丈夫なボール紙を折り曲げて造られた端子カバーがついています。 Sメータはプレート電流を測っているので端子には最大270ボルトのB電圧がかかっています。 それがむき出しだと、ボンネットを開けてうかつに手を入れると本当に生命にかかわります。 そんな事故をフラグためのカバーなわけです。 メータをフロントパネルから取り外し、目盛盤を取り外し、 ハズキルーペを掛けていろいろ試しながら外れた針を元のピボットに・・・ 神経集中し続け、どのくらいの時間がたったのでしょう、 どうにか・・・直った!!!! テスタでメータが触れることを確認し、 針の曲がりを修正し、 フロントパネルに取り付けて、 配線をつなぎ、 Sメータとしての正常な動作を確認。 すごく疲れた作業でした。 自分で壊したものだけれど、修理成功の満足感に浸ります。 Sメータのゼロ点調整ポテンショはシャシーのリアエプロンに出ていますが、 メータのゲイン調整機構はありません。 このメータは第1中間周波増幅管のプレート電流を測っているわけですから、 いくら入力が強くてもプレート電流がゼロになってしまうだなんてことは起き得ません。 目盛りには右側端に近いS9+80dBまで目盛りが振られていますが、 そこまで触れる (=プレート電流が減る) こともありません。 S9+20dB以上触れることはまれで、 目盛盤には精密なアンテナ入力レベルの目盛りが振られていていかにも正確そうですが、 精度は所詮アマチュア機だったりしますね。 ものすごくかっこいいけれども。 2024-03-02 Sメータ修理完了 |
|
SX-96はメインチューニング・バンドスプレッドともに大型の円形ダイヤルが特徴的ですが、
この円形ダイヤル盤は金属製で、外周にギアの歯が刻まれています。
メインチューニング・バンドスプレッドのつまみのシャフトは、この大型円形ダイヤル盤の外周を回しているのです。
大型円形ダイヤル盤はさらにギアで減速されて、バリコンを180度回転させます。 SX-96のメインダイヤルはオールギアドライブでありかつ大減速比なので、 ダイヤルノブを回す力は何十倍ものトルクでバリコンを回そうとします。 そのためダイヤル端で無理にノブを回すと、 ギアトレインとバリコンを簡単に壊してしまいます。 これを防ぐために、メインダイヤル/バンドスプレッドダイヤルともに、 ダイヤル端でダイヤルノブを回らなくするストッパ機構が設けられています。 2024-03-03 ダイヤルストッパ機構の動きを観察 |
|
 
オリジナルの6BJ7によるAM検波回路を切り離して、
即席のゲルマニウムダイオードAM検波回路を仮組みしてみました。
オリジナルのAM検波回路に比べて音の良さは明らか。
ラジオタイランドの小島秀美さんのアナウンスも、
ニュースの後のタイポップスもずっときれいに聞こえます。   オリジナルのAM検波回路では、変調度40%あたりから早くも歪が出始めていました。 ラジオNikkeiが殊更音が悪かったのは、 他の局よりもコンプレッサを強めにかけて変調を深くしているからとかなのかもしれません。   ゲルマニウムダイオードではなく、 同じ定数で6BJ7の2極管を使ってみたところ、70%までひずみが出ていません。 やはりノイズリミッタを実現するための2極管カソード周りの回路が2極管のAC負荷としては重すぎて、 変調度が大きいときの復調歪をもたらしているということでしょう。   SX-96の作業は、これで、 1998年11月06日にサンノゼのガレージラボで行っていた作業の段階に出戻ったことになります。 26年前の作業の続きを再開、ということです。 2024-03-06 ゲルマニウムダイオード検波を試す |
|
ゲルマニウムダイオード検波の負荷抵抗定数はいくつがいいか実機でテストしました。
歪と検波出力がほどよくバランスとれるところで、
AM変調深度100%でわずかに歪み始めるあたりに調整。
負荷抵抗は上流側220kΩ、下流側1MΩ、RFバイパスを250pF、
AF取り出しは0.01uFにしました。
まあこんなものでいいでしょう。 冒頭のテスト信号は三稜綺想曲 @okatappi2023 さんの 「春の氷精トランペット二重奏」(原曲: 春の氷精)、 その途中に400Hz 変調度100%、 そのあと9.940MHz ラジオタイランド。 2024-03-12 ゲルマニウムダイオード検波回路の定数テスト |
|
増設するゲルマニウムダイオード検波回路とオリジナルの検波回路・ノイズリミッタ回路をどう両立・切り替えるべきかしばらく悩んでいましたが、
結局 モードスイッチを2極双投のものに取り換えて、
AMポジションのときにゲルマニウムダイオード検波でBFOはOFF、
CW-SSBポジションのときにオリジナルの6BJ7 2極管検波+BFO ONとすることにしました。
これだとAM受信時にノイズリミッタが使えないのですが、
まあ実用上困ることはないでしょう。 オリジナルの検波回路・ノイズリミッタ回路の仮配策を配線しなおして、 スイッチを交換し、配線。 狙い通りに動作し始めました。 右のテストムービーでは最初に41メーターバンドのAM国際放送を受信し、 ついでモードスイッチをCW-SSBポジションに切り替えて40メーターバンドのSSB電話とCW電信を受信、 最後にAMポジションに戻してシグナルジェネレータで造ったAMのテスト信号を受信しています。 AMの音質は合格点でしょう。 7MHz電話を聞くときLSBポジションにセットすれば逆サイドバンドはほとんど聞こえないし、 電信の分離もよいですね。 これで、1998年にこの受信機を使い始めたときに感じたAM復調音質不良の問題は、 やや強引な方法で解決。 問題覚知から解決までに26年かかりました。 2024-03-29 MODEスイッチ改造 検波回路再配策 AM復調音質問題解決 |
|
時間は短いものの地域の活動の予定を入れられて遠出はできない週末、
春めいた陽気にもなったので、
かねてから構想していたロングワイヤーアンテナ新設の作業を行います。 まあ何のことはないビニール線を使ったランダムロングワイヤーアンテナですけどね。 いままで使っていたものよりもワイヤー長で3mほど長く、 地上高は2mほど高く。 2008年に 6mヘンテナ をつくったときのアルミパイプを自由端側のマストにして、 ガレージの柱に取り付ける金具を用意するだけの楽しい週末工作です。 近くのホムセンで金物を買い、 だけれど1つ具合が悪いことに気づいて寸法違いで一部買いなおして、 部品代は3400円といったところ。 狙い通りの素人細工で、新9.5mランダムロングワイヤアンテナが完成しました。 2024-04-06 9.5mランダムロングワイヤアンテナ落成 |
|
新アンテナはエレメント長からして8MHzあたりが最適のはず。
試してみると、
SX-96のSメータ読みで受信機入力電圧は前アンテナの倍ほど出ています。
まあ電圧が倍ということはSメータの振れにしてせいぜい1つかそこらの違いでしかありません。
しかし聞こえるかどうかの微弱な信号となるとその差は明らかです。
前アンテナで何か聞こえるといった程度の信号の場合、
新アンテナでは通信内容がはっきりとわかります。
週末工作は効果あり。 SX-96のBFOカソード注入型2極管検波は、 いい感じでSSB電話やファクシミリを復調できています。 なのでしばらく、8MHz帯を楽しみました。 実をいうといままで8MHzはあまり聞いたことがなかったのですが、こりゃ楽しい。 こんな素人のランダムロングワイヤアンテナでも、けっこう聞こえるものですね。 聞こえてきたのはざっとこんな感じ。 8.992MHz USBは短波らしい怪しさたっぷりですね。 8.302MHz XSG Shanghai Weather Faximile 8.412MHz XSQ Guangzhou Weather Faximile 8.743MHz HSW Bangkok Meteorogical Radio 8.761MHz 長崎漁業 8.764MHz National Weather Service Radio via USCG Honolulu NMO 8.785MHz 沖縄漁業 / 宮崎油津漁業 8.879MHz XSG Shanghai Weather Faximile 8.794MHz 釜石漁業 8.828MHz VOLMET 8.849MHz 北京VOLMET 8.870MHz Air Traffic Control Guam 8.992MHZ ATC? 9.165MHz HLL2 Seoul Weather Faximile 2024-04-08 04-09 8MHz帯を楽しむ |
|
そうなるとこれか。
奥まっていて作業がしにくいので後回しにしていた、
たぶん最後のバンブルビー。
C85、0.22uF。
SENSITIVITYポテンショメータの両端に入るACバイパスです。
取り外すにはフロントパネルの全分解が必要で面倒なので、
片側をニッパで切り離し、
新品のポリプロピレンフィルムキャパシタを取り付けました。 2024-04-19 C85交換 |
|
これは先週頃からなのですが、
どうしたわけか短波9MHz帯のバックグラウンドノイズがとても弱くなって、
国際放送が聞きやすい状態が続いています。 もちろんそれはうれしいのですが、 実はけっこうな程度で受信機の感度が落ちてしまっているのではという気がします。 なので本日はコイルパックのアラインメントを取り直し。 感度は確実に上がって、 いままでS1程度だったバックグラウンドノイズがS4程度になりました。 でもなあ、その前はノイズはS7〜S8程度だったから、 受信機のどこかがいまだにヘンなのかもしれません。 いままで本機で中波は聴いていませんでしたが、 調整を取り直したSX-96は中波の感度も十分になりました。 NHK東京第一はとてもいい音で鳴ってくれています。 2024-05-02 コイルパック再調整 |
|
カサカサノイズは相変わらず出ていて、だけれどもどこに問題があるのかを絞り切れていません。
第1中間増幅段出力ではすでに出ているようなのでRF段のどこかなのでしょう。
真空管を抜いて試してみると、高周波増幅段で出ているように思えるのですが・・・
いまひとつ確証なし。
カーボン抵抗の劣化か、あるいは真空管の劣化の可能性もあります。 SX-96の高周波増幅段には、シャープカットオフペントード6CB6が使われています。 高周波増幅段にはAGCがかけられているのに使われているのが6CB6シャープカットオフペントードだという理由を私はいまひとつよく分かっていません。 AGC電圧でゲインをコントロールしたいのだから、 ここはリモートカットオフペントードをつかうのが普通じゃないのかなあ。 実際、1950年代中盤以前の受信機では例外なく高周波増幅管はリモートカットオフ管が使われています。 いっぽうで1957年の コリンズ75S-1 も 51S-1 も、使われているのはシャープカットオフペントード。 ハマーランドHQ-170 では6BZ6セミリモートカットオフペントードが使われています。 はて、これはどういう設計トレンドの変化があったのだろう。 受信局のごく近傍に送信局がある場合、 近接周波数に猛烈に強力な信号が入ってきます。 このような状態では、リモートカットオフペントードでは近接信号に応じて高周波増幅管のゲインが変化してしまい、 結果として目的信号に近接周波数による変調がかかってしまいます。 おそらくそれを避けるためにシャープカットオフ管を使うようになった、 ということでしょうか。 6CB6はEg1は-4Vまでしか下げられずその先は急激にカットオフしてしまいます。 ひょっとしたら、SX-96で気になっている「音声波形のピークがクリップしような復調音の歪み」は、 この非線形部分で出ているのではないでしょうか? SX-96の応答の早いAGC時定数が影響しているのかもしれません。 そこで、6CB6と同じ7CMピン配列をもつ6BZ6に差し替えて、しばらく使ってみることにしました。 6BZ6はセミリモートカットオフ管で、 大きくゲインを下げながらコントロールグリッド電圧はマイナス15Vまで下げられます。 聞いてみると、なんとなく音のイガイガっぽさは消えたような気がするけれど・・・プラセボかもしれませんね。 6BZ6で快調に受信できているのは事実です。 さて高周波増幅管にシャープカットオフ管を使うことに関連する言及として、 コリンズ75A-4受信機の登場直後のQST誌1955年07月号に、 コリンズ社のW0DANとW0SYF両氏著による75A-2/75A-3改造記事がありました。 いわく「75A-2/75A-3のフロントエンドは6AK5シャープカットオフ5極管だけれど混変調には弱い。 これを6CB6に置き換えることで混変調に強くなる。 さらに耐混変調特性を考慮された最新の6DC6/6BZ6にすればさらに強くなる。」 と書かれています。 コリンズ75S-1/51S-1に6DC6が使われているのは、 ローノイズかつ混変調にも強い球として選定されていたのですね。 2024-05-03 6BZ6を試す |
|
当初のオーナーによるSX-100化改造は元に戻し、自分が最初にいじったときの不適切な変更もリバートしました。
ゲルマニウムダイオード検波回路を組み込むというちょっとチートっぽい対策を入れることにより、
国際放送も音質良く楽しめるようになりました。
時折発生するカサカサノイズが気になるものの、
国際放送やアマチュア無線通信、
あるいは各種のユーティリティ局の信号は良好に受信できています。 2024年も5月に入って気温も上昇してきたので、 真空管受信機いじりは一休みして、 今回の作業を一段落させることにしました。 カサカサノイズと、なんとなく感度が低下してしまった原因は、 そのうち第3輪廻の作業の課題としましょう。 2024-05-03 作業完了 |
|