NoobowSystems Lab.

Radio Restoration Projects

Hammarlund HQ-170

Amateur Band Shortwave Communications Receiver (1958)


時計付きラジオ

    いま思い出したのですが、数年前に無線局免許を再取得して無線機を買いに行ったその日もヨメは風邪で寝込んでいたのです。 安いハンディ機でもと思って出かけたのですが、大奮発の6メーターオールモード機を買ってしまったのです。

    「おはよう。結構いい雨が降ってるよ。どうする?」 「行きたいのはやまやまだけど、そんな雨じゃ風邪悪くしそうだし。行ってくれば?」
    強い雨のリバモアはやはりバイヤーもセラーも本当に少なく、10分もするとひととおり見終わってしまいました。 しかしバイヤーが少ない分、出物があれば案外安く手に入るかも。 ますます強くなる雨に早くも片付け終わりかけていたセラーのところに戻り、「あれ、もう売れた?」

    「ただいま。」と、まだ寝ているヨメのところへ。 「おかえり。なに買ったの?」 「時計付きラジオと、スペア用の真空管をいくつか。」 「また時計付き?」

    長いこと使われていなかったと思われるHQ-170は、 スイッチ、ポテンショメータあるいは酸化してしまったアンテナターミナルの接触不良などで最初ぐずっていましたが、 いじっているうちに14MHz帯のQSOを受信し始めました。 感度はかなりよさそうです。 時計もきちんと動いています。 まずはしばらく使ってみて、調子を見ましょう。 そこへ起きてきたヨメが。 「まあ、ず〜〜〜〜いっっぶん大きな時計付きラジオだことねえ? 一人で行くと楽しいでしょう? えっ? 」

    仕掛かりプロジェクトに新たに加わった、巨大なラジオ。 今後が楽しみです。

Hammarlund HQ-170

    ハマーランドHQ-170は、短波帯アマチュア無線バンド専用の真空管式受信機です。 1958年発売、定価は369ドルで17球トリプルスーパーヘテロダイン方式。 ±3kHzで微調できるバーニア・チューニング、USB/LSB切り替え、可変式BFO、可変式ノイズ・リミッタ、 選択度切り替え、AVC応答速度切り替え、アンテナトリマ、内蔵クリスタル・キャリブレータとダイヤル指針調整、 そして特徴的な可変スロット・フィルターなどたくさんのコントロールを持ち、まさに操作しがいのある大型受信機です。 HF帯のほかに50MHz帯が受信できるのも特徴。 生産は1962年まで続きました。

    1962年にはオプション装着で2m帯も受信でき、ケース上面にヒンジ式ドアをもつHQ-170Aへとマイナーチェンジされます。 ダイヤル盤のロギング・スケールは2m帯の目盛りに変わり、電源整流管5U4Gはシリコン整流器に置き換えられ、 アクセサリ・ソケットと送受信コントロール・ソケットが追加されました。 HQ-170Aは1968年まで生産されました。 ラックマウント・モデルもあり、これはHQ-170ARCの呼称を持ちます。

    1964年から1967年にはHQ-170A-VHFというモデルもあり、 これにはニュービスタを4本使った6mと2mのコンバータを内蔵していました。

    HQ-170は途中2回のランニング・チェンジを受けているようです。 私のモデルにはシャーシ背面に1960の打刻があり、初期型であることを示しています。
汚い!

    14MHz帯以上のバンドでダイヤルに50kHz以上の狂いがあったり、 信号の強度に応じて周波数がわずかにドリフトしたりする以外には、 基本動作に致命的な問題は見られません。 素性は良さそうで一安心。 フロントパネルはけっこう汚れていますから、石鹸洗いをすることになるでしょう。

    それではケースを開けて内部を観察することにします。 パンチング・メタルで作られたケースを外すには、背面のスクリューを2本外すだけ。 とはいっても重量級マシンですからコツをつかむまではそれなりに大変。 さあ、ケースが外れました。

    フロントパネルとシャーシはボルトで固定されており、いったんケースを開ければ整備性は良さそう。 あれ、中は意外とシンプルな作りだなあ。 向きを変えるためにシャーシに指をかけると、ちょっと変な感触。う、これは・・・ 汚い!



    シャーシ上は実に見事な一面の堆積物。 まるでミルクココアパウダーをまぶしたケーキのようです。 軽くブラシでこすってみると、汚れはほとんどが埃。こびりついているようすはなく、すぐシャーシ表面が見えます(写真)。 ですが地金も多少痛んでいるようで、新品同様にするにはかなりの努力が必要なようです。 そういえばこの受信機を買ったとき、セラーのオヤジは 「いい買い物だぜこいつは、坊や。きれいにすりゃ、すぐに3倍の値はつくぜ。」と言ってたっけ。

    ほとんどの真空管にはシールドケースが被されていますが、いずれも赤く錆びています。 見かけを気にするなら新品に換えたいところ。埃は全ての真空管の頭に一様に堆積しています。 ということは最近交換されたものはない、ということでもあります。 ひょっとすると全てオリジナルかも。
均一なパウダー状の埃はまた、保管中に内部に雨などの水滴が入り込んだことはないことをも示しています。 良いことだとしましょう。


    シャーシ内部を見てみるとこれは朗報。 ほとんど汚れがありません。 シャーシ表面もきれいなまま。 電源トランスのケーブルなどに劣化の兆候が見られますが、問題ないでしょう。 ざっと見た限りユーザの手による改造もなさそうです。

    配線はきれいな仕上がりです。 写真上側に見える、サイドバンドと選択度切り替えの長大なロータリースイッチ周辺が一番混雑しています。
AFゲインのポテンショメータはごく普通のパネルマウントタイプ。 保守部品の入手は楽でしょう。RFゲインはスイッチ付きの2連。これはどうでしょうか。

    メイン チューニングのシャフトにフライホイールが取り付けられているのが見えます。 VERNIER TUNING と書かれているつまみは同軸減速でミゼットバリコンを回すだけ。 機械構造的には極めてシンプルです。
    写真下側に見える長いシャフトは ANTENNA と書かれたコントロール。 シャフトの途中にプーリーがあり、シャーシ中心部に取り付けられた小型バリコンを糸掛け駆動しています。 構造は単純ながらも、まじめな作りに思えます。


    まず最初の作業はおもにシャーシ上面とダイヤル機構の清掃になるでしょう。 それなりに時間がかかりそうです。 それが一段落したら、14MHz帯以上のバンドのダイヤル再調整。
    現在までに判明している問題点、すなわち信号強度に比例したわずかな受信周波数変動や、 50MHz帯での感度不良などの改善は第3段階ということになるでしょうか。

まずは座学

    移転後のラボではこの巨大受信機をつつくためのスペースがありません。 ので、しばらくマニュアルを読んで座学といきましょう。 以下はHQ-170純正マニュアルを和訳したものです。 訳レベルはあえて、比較的直訳に近いものとしてみました。

HQ-170 通信型受信機 技術解説および使用方法

−使用真空管−
記号 形式 真空管 機能
V1 6BZ6 5極管 高周波増幅
V2 6BE6 周波数変換用7極管 第一周波数混合
V3 6BE6 周波数変換用7極管 周波数変換または455キロサイクル中間周波増幅
V4 6BA6 5極管 455キロサイクル中間周波増幅
V5 6BE6 周波数変換用7極管 周波数変換
V6 6BA6 5極管 60キロサイクル中間周波増幅
V7 6BA6 5極管 60キロサイクル中間周波増幅
V8 6BV8 双2極−3極管 60キロサイクル中間周波増幅、AVC、AM検波
V9 12AU7 双3極管 SSBプロダクト検波
V10 6AL5 双2極管 ノイズ・リミッタ
V11 6BZ6 5極管 クリスタル・キャリブレータ
V12 6C4 3極管 高周波発振
V13 12AU7 双3極管 60キロサイクルBFO、Sメーターアンプ
V14 0B2 ガス封入2極管 電圧安定
V15 5U4-GB 双2極管 整流
V16 6AV6 双2極−3極管 第一低周波増幅、ディレイドAVCゲート
V17 6AQ5 5極管 低周波出力

−はじめに−

    全てが新しいHQ-170アマチュアバンド通信型受信機には、 最悪のコンディションのときであってもあなたのハム仲間との信頼できる通信を維持する数々の機能が盛り込まれています。 最低限のメインテナンスで、長年にわたる最高レベルの性能を提供します。 HQ-170は、60サイクル、105から125ボルトのAC電源で動作する電源回路を内蔵しています。 モデルHQ-170Cには、テレクロン自動電気時計が組み込まれています。 輸出用モデルであるHQ-170Eは、50ないし60サイクル、115から230ボルトのAC電源で動作します。 輸出用の電源電圧および周波数のため、このモデルには時計は組み込まれていません。

    HQ-170は17球トリプルスーパーヘテロダイン(160と80メーターバンドではダブルスーパーヘテロダイン)受信機であり、 AM、SSBそしてCWの可能な限りベストな受信ができるよう設計されました。 アマチュア無線用受信機としての重要な特性のほとんどをフロントパネルのつまみによって調整できるようになりました。

    精密なRFチューニングシステムは以下のアマチュア無線バンドをカバーします。

バンド 周波数範囲 バンドスプレッド
160メーターバンド 1.8 〜 2.0 Mc 5キロサイクルきざみで較正済み
80メーターバンド 3.5 〜 4.0 Mc 5キロサイクルきざみで較正済み
40メーターバンド 7.0 〜 7.3 Mc 5キロサイクルきざみで較正済み
20メーターバンド 14.0 〜 14.4 Mc 5キロサイクルきざみで較正済み
15メーターバンド 21.0 〜 21.6 Mc 10キロサイクルきざみで較正済み
10メーターバンド 28.0 〜 30.0 Mc 20キロサイクルきざみで較正済み
6メーターバンド 50.0 〜 50.4 Mc 50キロサイクルきざみで較正済み

    この受信機は0から100までの100分割された補助スケールを持っています。 シングル ノブのメインRFチューニングを補助するためにバーニア チューニング コントロールがあり、 特にSSB受信時のゼロインをとるために極めて有効です。

    内蔵100キロサイクル水晶発振キャリブレータは、ダイヤル較正用として、 全てのバンドで100キロサイクルごとにマーカーシグナルを発生します。 ダイヤル キャリブレーション リセットつまみにより、 どのバンドでも標準信号にダイヤル目盛を合わせることができます。

    アンテナ トリマをもつ高周波同調回路は、微弱な遠距離信号を受信するために必要な最大感度と高いS/N比を提供します。 強力な信号によりオーバーロードしそうな場合は、 マニュアル ゲイン コントロールによって感度を落とすことができます。

    HQ-170の最大の特徴は、選択度とサイドバンドの切り替え機能です。 これにより、劣悪なコンディションの中であっても、受信する電波形式に応じて最適な受信を行うことができます。 パネルのつまみには、メカニカル タイプのもつスカート特性に近い、 固定され正確に決定された帯域幅が表示されています。

    HQ-170の特別な機能のひとつは、カミソリの刃のように鋭く、 調整可能なスロット・フィルターです。 これにより近接周波数の妨害を排除することができます。 ひとつのつまみでフィルターを調整することができ、 10キロサイクルの帯域内での不要な信号を最大40db減衰させることができます。 さらにスロット デプス つまみを使うことにより、 単一の周波数に対してさらに20db排除することができます。

    広い範囲の入力信号強度に対応するため、この受信機はファースト・アタックと、 OFF-SLOW-MEDIUM-FAST切り替えスイッチを持つ調整可能なディケイAVCを装備しています。
妨害のない、最大級のSN比を得るため、CWおよびSSB信号は独立したリニア・プロダクト・ディテクタによって検波されます。

    可変式のオーディオ段ノイズ リミッタにより、正負両方のパルス的ノイズを除去することができます。

    Sメータは、どのAVCポジションにおいても、すべての電波形式のキャリア・レベルを表示します。 このメータはAVCがSLOW/MID/FASTでAM信号を受信する場合に、 相対的な信号強度を正しく表示することができるように調整されています。

    この受信機は必要なゲインに応じて自動的に音声出力帯域幅を広げたり狭めたりする自動レスポンス機能を持っています。 この機能により、強力な信号を受信しているときは高忠実度を提供する一方、 劣悪な受信条件においては通信型受信機が有すべきシャープなカットオフ特性を実現しています。 ハマーランド自動レスポンス機能の二つめの利点は、 スピーカのボイスコイル中のオーディオ・パワーの急激なダンピングであり、 望ましくないスピーカ・ハングオーバーを最低限にできることです。 この受信機はスピーカとヘッドフォンのどちらでも使うことができます。 適切なフィルタリングを施しているので、ACハム音は聞こえません。

    大きくて快適に操作できる各種のコントロールは論理的に配列されており、最も楽な運用を提供しています。 未来的なフロントパネルには各コントロールの機能がはっきりと表示されており、 操作が大変わかりやすくなっています。

    HQ-170はあなたのことを念頭において設計されました。 どうぞこの本当に素晴らしい通信機を長年にわたって楽しくお使いください。

−設置方法−

−使用方法−

−動作原理−

    HQ-170は6, 10, 15, 20, 40, 80 そして160メーターバンドのアマチュア無線周波数帯をカバーするトリプルスーパーヘテロダイン (160と80メーターバンドではダブルスーパーヘテロダイン)方式の受信機です。 内蔵電源回路のための整流管と電圧安定管を含んで合計17球の真空管が使用されています。 受信機回路は、100キロサイクルのクリスタル・キャリブレータ、サイドバンド選択コントロール、 可変選択度コントロール(0.5から6キロサイクル)、スロット・フィルタとデプス・コントロール、 AVCディケイ時定数可変機構、 効きの良いノイズ・リミッタと極めて正確なバーニア・チューニング・コントロールを含んでいます。

プリセレクション

    アンテナ入力のカップリングと高周波増幅段は、高性能でかつ不要な信号を除去することができるよう、 必要なプリセレクションとゲインを有しています。 周波数混合管(V2)のグリッドの信号レベルが高く設定されているため、 良好なS/N比が得られます。
高周波段のグリッドとプレート回路の両方に同調回路を有しています。 使用するバンドに応じて、それぞれ独立した同調コイルが使用されます。
フロントパネルから調整できるアンテナ補償コンデンサにより、 使用するアンテナに応じて受信機を最適な状態に調整することができます。

周波数変換段

    分離した周波数混合管(6BE6) V2 と、独立した局部発振管 (6C4) V12 を使用することにより、 高度な発振周波数安定性を得ることができました。

    高周波増幅管 V1 の出力信号は、局部高周波発振管 V12 の出力信号とヘテロダインされ、 周波数混合管 V2 の内部で電気的に混合されます。 160メーターバンド(1.8から2.0メガサイクル)と80メーターバンド(3.5から4.0メガサイクル)を受信する場合は、 局部高周波発振周波数は目的の信号より455キロサイクル高く設定されます。 40メーターバンド(7.0から7.3メガサイクル)、20メーターバンド(14から14.4メガサイクル)、 15メーターバンド(21.0から21.6メガサイクル)、そして10メーターバンド(28から30メガサイクル)においては、 局部高周波発振周波数は目標周波数よりも3035キロサイクル高い周波数になります。 6メーターバンド(50から54メガサイクル)では、 局部高周波発振周波数は目標周波数よりも3035キロサイクル低い周波数になります。

    6から40メーターバンドで使用する場合、 3035キロサイクルの差分周波数は2580キロサイクル水晶発振器の出力とヘテロダインされ、 周波数変換管V3 の内部で電気的に混合されて第2中間周波数の455キロサイクルが生成されます。 バンドセレクタが1.8から2.0または3.5から4.0メガサイクルにセットされているとき、 周波数変換管の水晶発振器部は動作を停止し、よって周波数変換管は通常の455キロサイクル中間周波増幅器となります。

    低損失真空管ソケット、低損失セラミックおよびフェノール温度補償コンデンサ、 そして安定な同軸ガラストリマが、発振器の安定性に寄与しています。 発振回路に安定化電源電圧を使用するとともに、高周波発振部全体を堅牢に構成して、さらなる周波数安定性を得ています。

455キロサイクル中間周波数増幅段

    第2周波数混合管 V3 の出力は、一段構成の455キロサイクル中間周波増幅器に入ります。 この段のゲインは、RF(感度)調整コントロールのうち一つのセクションによって調整することができます。
この段 (V4) の出力回路には2つの中間周波トランスT4 と T5 があり、 相互に抵抗、コンデンサ、コイルのネットワークで接続されています。 これがスロット・フィルタを構成しています。 低インピーダンスのネットワークは、バイファイラTトラップとして知られる平衡型ブリッジを構成しています。 スロット・フィルタインダクタ L3 と スロット・チューニング コンデンサ C26 が同調回路を構成しており、 共振周波数の信号に対して極めて高いインピーダンスを持ちます。 抵抗性バランスはスロット デプス ポテンショメータ R26 により調整できます。

第三周波数混合段

    第三周波数混合段は、専用の可変発振器を有します。 バーニア・チューニング コンデンサ C30 が発振器の同調回路に接続されています。 同調回路のC-L比を高くとり、シルバー・マイカ コンデンサを採用したことにより高度な発振安定性を得ています。

60キロサイクル中間周波増幅段

    第三周波数混合段につづく60キロサイクル中間周波増幅段はV6,V7そしてV8の3段構成で、 それぞれ独立にシールドされた静電結合方式の6つの高Q同調回路を有しています。 フェライト・シールドが施された高C同調回路により、長時間安定して動作し、外部電界の影響を皆無にしています。
同調回路の組み合わせは選択度切り替えつまみとサイドバンド切り替えつまみにより設定されます。 各ポジションにおける総合応答特性を図7に示します。

AVCシステム

    オートマチック・ボリューム・コントロールは、高周波増幅管V1、455キロサイクル中間周波増幅管 V4、 第三周波数変換管 V5、そして初段60キロサイクル中間周波増幅管V6 のゲインを制御することにより、 フェーディングと信号強度のばらつきの影響を最小限に抑えます。 この結果、快適な一定の音量が維持されます。 ファースト・アタック(充電)と調整可能なデケイ (SLOW - MEDIUM - FAST) を、受信する3つのタイプの信号にあわせて選ぶことができます。
    高周波増幅管 V1 と455キロサイクル中間周波増幅管 V4 に対するAVC制御電圧は、クランプ・タイプの遅延電圧です。 これにより、極めて微弱な信号に対してAVCが動作してしまうことがなくなり、最大の感度とS/N比が得られています。

"S"メーター (キャリア レベル)

Sメーター(あるいはチューニング・メーター)は、チューニング操作を手助けし、 相対的な信号強度の指示を得るためのものです。 Sメーターは、広く知られていて安定性の良い平衡ブリッジメーター回路に接続されており、 V13(12AU7) の半分を使用した電流増幅を利用しています。 Sメーター回路の入力はV8 (6BV8) の独立したAVC用2極管セクションに接続されており、 全ての電波形式と全てのAVC設定状態において信号強度を示します。 しかしながら、Sメーターの表示値は、AVC切り替えつまみがSLOW - MEDIUM - FAST の位置にあるときだけ有効であり、 OFFの場合は正確ではありません。 ただし、その場合もメーターは動作し、信号強度に応じた指示を行います。

    S9プラス40dBで較正されたメーターは、 おおよそ50マイクロボルトの信号入力のときにS9を指示するよう工場出荷時に調整されています。 各"S"ユニットは、6dBすなわち倍の信号強度変化を示します。 もしメーターの再調整が必要になった場合は、

1. 受信機をオフにします。必要があれば、小さなマイナス・ドライバーでメーターの針が正しく0を示すようメーターを調整します。
2. 受信機の電源を入れ、30分間ウォームアップします。
3. ファンクション・スイッチをRECEIVEにし、RF(感度調整)つまみを反時計方向に回します。
4. メーター・ゼロ調整用ポテンショメーターR20(シャーシ背面)を回し、メーターが0を示すようにします。
5. RFゲイン調整つまみを最大にし、ダミーアンテナ抵抗を介して50マイクロボルトの信号を入力します。 メーター感度調整ポテンショメータR19を回し、メーターがS9を指示するようにします。 その他のつまみはAM受信の状態にセットしておいてください。( 操作方法のセクションを参照のこと。)

−参考−

工場調整は真空管の変更や経時変化によってごくわずかに変わるだけなので、通常はR19の再調整は必要ではありません。 したがって、R19の再調整はメーターの感度をもっと上げたい場合か、受信機の完全な再調整手順の一環としてのみ行ってください。

検波とノイズ・リミッタ・システム

    V8 (6BV8) の双2極管部分が、2つのAMダイオード検波回路を構成しています。 ひとつはAVCとメーターシステム用で、もうひとつがAM信号の検波用です。 この方式は最もひずみを少なくできます。

    ReceptionスイッチがSSB/CWにセットされた場合、AMダイオード検波器は無効になり、 60キロサイクルの中間周波数信号はV9 (12AU7) プロダクト検波回路に導かれます。 これと同時に、BFO (V13の半分)がオンになり、プロダクト検波管V9 (7番ピン)に接続されます。
SSB信号を検波するためのベストの方法は、3極管を2つ使ったプロダクト検波回路です。 入力信号の強度が大きく変化しても、最小のひずみで音声情報を復調することができます。
真空管 V10 (6AL5) は、順方向・逆方向のパルス性ノイズのクリッピング・リミッタとして動作し、 AM信号のスケルチとしても利用可能です。

ビート周波数発振回路

    ビート周波数発振器コントロール C129 は、60キロサイクル ビート周波数発振器 (12AU7-V13の半分) のチューニングを、ゼロビートからプラス・マイナス2キロサイクルの範囲で変化させます。 BFO回路は広く知られていて安定性の高いクラップ回路に接続されています。

音声増幅回路

Fig.8 Auto-Responce Curve : Click for larger image
    初段の音声増幅段 V16 (6AV6)は、抵抗結合の電圧増幅回路です。 音声出力段 V17 (6AQ5) はビームパワー出力管であり、少なくとも1ワットの、ひずみのない出力を提供します。
オーディオ・システムの特徴は、可変ネガティブ・フィードバック方式が採用されていることです (図8のオーディオ周波数特性を参照)。 オーディオ・ゲイン調整つまみの位置が低い時は最大のフィードバックがかけられ、 強力な信号を受信しているときに高音質を提供します。

    オーディオ・ゲインつまみの位置が高められるにつれフィードバック量は次第に減り、 弱い信号を受信する際にオーディオ段によってさらに選択度が高められます。 この結果、S/N比がさらに向上します。 この方式のもうひとつの利点は、”スピーカー・ハングオーバー”がないことです。 会話や音楽の受信が向上し、受信機のノイズ出力を低減します。 さらにこの方式は、オーディオ・ゲインつまみが低い位置にセットされているときにひずみを低減することができます。

−保守調整手順−
(略)

    ううむ、なんともゴージャスな構成でありませんか! で、このマニュアルにはなぜか記載がないのですが、テレクロンと呼ばれる時計はタイマー機能を持っています。 朝目を覚ますとすでに受信機はウォームアップ完了、というのは早朝のDXハンティングに実に便利であったに違いありません。

仕事場の風景



TUNING (main)

    HQ-170を初めて見ると、二つの扇型ダイヤルと二つの大きいノブが目につきます。 左右どちらかがメイン チューニングで、もう一方がバンド スプレッドだろう、と考えるのはある種当然かもしれません。 実際には左側の大きなノブがメイン チューニングで、 このつまみを回すと左右両方の扇型ダイヤルが同時に回転するのです。 しかも、左右のダイヤルは回転速度が違います。これには正直言って不意打ちを食らった感じでした。

    メイン チューニングつまみのシャフトにはフライホイールが取り付けられていますが、 回転抵抗は小さくはないので慣性で回りつづけるわけではありません。
このシャフトに取り付けられた小さなローラーが、左側の円形ダイヤルの外周を回します。 ダイヤルの中心は6連のメインバリコンに直結されていて、したがってバリコンが回ります。 プラスチック製のダイヤル盤そのものが減速機構になっているのです。 このため左側ダイヤルには180度の範囲に目盛が刻まれています。 全チューニング範囲をチューニングつまみ5回転でカバーします。減速比は1:10。

   右側ダイヤルの中心シャフトは、左側メイン バリコンのシャフト(メイン バリコンのシャフト)と糸掛けで接続されています。 ダイキャスト製のプーリーと金属撚り線でできているこの糸掛けは、いかにも精密な作り。 右側プーリーの左側プーリーよりも小さく、したがって右側ダイヤルは左側ダイヤルよりも早く回転します。 右側ダイヤル盤には約300度にわたって目盛が刻まれています。
    左側ダイヤルには160/80/40そして20メーターバンド用の目盛。 右側には15/10/6メーターバンド用の目盛と、ロギングスケールが刻まれています。 ダイヤル盤は不透明白色で、電源ON時は裏側からランプで照らされ透過照明になっています。

    赤い細い目盛り線は透明な扇型プラスチックに刻まれており、 エスカッション右側の何も表示のない小さなつまみで左右に動かすことができます。 これと内蔵100kHzキャリブレータを使用して周波数の較正を行います。

    ダイヤル エスカッションはダイキャスト製で、光沢のないダークグレーにペイントされています。 このペイントは簡単に剥れてしまうため、レストア済みHQ-170/180ではたいていリペイントされているようです。



VERNIER TUNING

    これは目盛つきのファイン チューニングと呼べるもので、受信周波数を±3kHzの範囲で可変することができます。 つまみは同軸減速でミゼット単バリコンを回します。 このバリコンは第3局部発振周波数を変化させます。このためどのバンドでも周波数変化幅は±3kHzとなっています。

    同軸減速されたシャフト部から赤い指針がつまみのフランジから少しはみ出す形でパネルに出ており、 この指針により周波数変化量を読むことができます。つまみは5回転とすこし回ります。
NOISE LIMITER

    CW/SSB受信時はノイズ リミッタとして、AM受信時はスケルチとして動作します。 このコントロールはOFFポジションをもつポテンショメータで、双2極管6AL5の動作点を調整できます。
    AM時のスケルチ動作はFMトランシーバのように音声信号が明確にON-OFFされるものではなく、 目的信号がないときの外来ノイズが聞こえないほどにつまみの位置を上げてしまうと、 信号が入ってきたときの復調音もかなり小さくなってしまいますし、 また音質の劣化も顕著です。このため実用性には疑問があります。
レベルを最低に絞っておいても、強力な信号の場合は波形のピークが削られる形となり、音質に影響してしまいます。 一方イグニション ノイズのように強烈なパルス性のノイズに対してはかなり良く動作します。
AVC
    OFF-SLOW-MID-FASTのポジションがあり、AGCのディケイ時定数を切り替えます。 またOFFポジションではAGC動作が停止します。4ポジションのロータリー スイッチです。
   
ANTENNA

    アンテナ トリマです。このつまみはシャーシの奥行きと同じ長さのシャフトを回します。 このシャフトの中ほどにプーリーが取り付けられており、 糸掛けでシャーシ中央部に設置されたミゼットバリコンを回します。 つまみには目盛は振られていませんが、約210度にわたって回転します。

SEND-RECEIVE-CAL

    スタンバイ スイッチです。SENDポジションでスタンバイ状態、RECEIVEポジションで通常動作になります。 またCALポジションでは通常動作に加え、100kHzクリスタル キャリブレータが動作します。
    3ポジションのロータリー スイッチによるこのスタンバイ コントロールは、 放電安定管の出力供給をON/OFFすることにより切り替えを行っています。 本機の背面パネルにはACソケットと同じ形状をしたトランシーブ用のコネクタがあり、 2本の線をリレー等で外部からショートすることによって、SENDポジションのままで通常受信動作させることができます。

  SEND RECEIVE CAL
高周波増幅管 スクリーン グリッド
第2周波数変換管 スクリーン グリッド
455kHz中間周波増幅管スクリーン グリッド
Sメータアンプ プレート
OFF ON ON
クリスタル キャリブレータ
プレートおよびスクリーン グリッド
OFF OFF ON
  • 第1周波数変換段(局発・混合とも)、および第3周波数変換段とそれ以降の各段は常時動作しています。
  • 第1局発への安定化B電圧は常時供給されています。
  • 高周波増幅・第2周波数変換・455kHz中間周波増幅管のプレートには、B電圧が常時印加されています。
  • AF

        音量調整です。ごく普通の1MΩのポテンショメータで、ノイズリミッタを通り抜けた音声信号が印加されます。 ワイパーから取り出された信号は6AV6の3極管部で増幅され、ついで6AQ5パワーアンプを駆動します。
        ポテンショメータのグラウンド側には抵抗が入っていて、ここにスピーカからのフィードバックが入ります。

    TUNING RANGE MCS

        バンド切り替えです。ロータリー スイッチにより、7つのアンテナコイル/RFコイル/オシレータコイルを切り替えます。

    RF

        電源スイッチ兼用の、感度調整つまみです。 これは結構特殊で、スイッチつきの10kΩ/1.5kΩの2連ポテンショメータです。 1.5kΩポテンショメータは高周波増幅管6BZ6のカソード抵抗を、 10kΩポテンショメータは455kHz中間周波増幅管6BA6のカソード抵抗を変化させます。 スイッチは電源ON-OFFで、テレクロン電気時計のタイムスイッチと直列に接続されています。 最初この受信機を入手したとき、 このRFつまみでスイッチをいれても電源が入らないので電源トランスが故障しているのかと思い失望しましたが、 テレクロン スイッチがOFFポジションになっていたためでした。
        RFゲイン コントロールは時計方向に回すと感度が上がりますが、 一杯に回し切った位置ではポテンショの接触不良があるとみえて感度が低下します。 すこし戻したあたりで使えば問題はありません。

    SIDE BANDS

        SIDE BANDSつまみは、 第3 (60kHz) 中間周波数段のIFTの接続を切り替えることによりLSBのみ通過/USBのみ通過/LSB・USBともに通過を選択します。 ウエハを8枚持つ、長く複雑なロータリースイッチです。

    SELECT KCS

        60kHz中間周波数段の選択度を切り替えます。これもウエハ4枚からなる複雑なロータリースイッチです。 60kHz中間周波数増幅は6BA6で2段、ついで6BV8で増幅される3段構成です。 このうち、2本の6BA6のゲインはこれら2つのロータリースイッチによって切り替えられます。
        SIDE BANDSスイッチのつまみは純正品ではありません。本来はSELECT KCSスイッチと同じ物がつきます。

    SLOT FREQ

        455kHz中間周波段に設置されたスロット フィルタの同調周波数を調整します。 スロット フィルタはパッシブ型のノッチ フィルタであり、 このつまみは同軸減速されて単連のミゼット バリコンを回します。
        バーニア チューニングつまみと同様に、 シャフト部から赤い指針がつまみのフランジから少しはみ出す形でパネルに出ており、 この指針により周波数変化量を読むことができます。つまみはおよそ3回転半回ります。
        通常の使用時は、スロット周波数はプラスあるいはマイナス5kHzのどちらか目一杯に回しておきます。

    SLOT DEPTH

        ノッチの深さを調整します。このつまみはポテンショメータを回し、同調回路のQを変化させます。 調子が悪いのかどうか、まわしてもほとんど変化がありません。要チェック。

    AM-CW/SSB

        AM受信とCW/SSBの受信を切り替えます。 2ポジション ロータリースイッチによるこの切り替えは、検波回路の出力切り替え、 BFO管とプロダクトディテクタ管の動作ON/OFF、そしてノイズ リミッタ回路の挙動の切り替えを同時に行います。 このスイッチの動作は、AGC動作やサイドバンド選択機能とは独立しています。

      AMポジション CW/SSBポジション
    検波回路出力切り替え ダイオード ディテクタの検波信号がノイズ リミッタ回路に入力される プロダクト ディテクタの検波出力がノイズ リミッタ回路に入力される
    BFO/プロダクトディテクタ動作 BFOとプロダクト ディテクタにはB電源が供給されない BFOとプロダクト ディテクタにB電源が供給される
    ノイズ リミッタ動作 スケルチ回路として動作する パルス性ノイズ リミッタとして動作する

    BFO KCS

        CW/SSB受信時に、BFOの発振周波数を±2kHzの範囲で可変します。 BFOは12AU7 双3極管のAセクションを使っており、中心周波数は60kHzです。 このつまみは180度回転し、BFO同調回路に入っているミゼットバリコンを回します。 BFO出力はグリッドから取り出され、 プロダクト ディテクタを構成している双3極管12AU7(V9)の片側のグリッドに注入されます。

    CARRIER LEVEL

        65mm角のSメーターは、内側からランプで照らされ、白地に黒のシンプルな目盛で読みやすく作られています。
        12AU7双3極管の片側、V13BがSメーターアンプとして働きます。 グリッドにAGC電圧が直接印加され、メーターはカソード・プレート間の電位差をブリッジで表示します。

        シャーシ背面にゲインとゼロ点を調整できるポテンショメータが配置されており、 容易にメーター較正を行うことができます。
        AGC電圧は専用の2極管で発生され、BFO信号の影響を受けません。 このため、メーターの挙動はAM受信時もCW/SSB受信時も変わりません。 さらに、RF GAINコントロールで感度を落としていった場合は、メーターのゼロ点は変動せず、 振れ方が小さくなっていきます。個人的に大変好みの挙動です。
        AGCの時定数をAVCつまみで切り替えた場合にメータの指示が変わらないよう微妙な工夫がなされているのもきめ細やかです。 AVC OFFポジションでは振れ具合はかなりオーバーなものになってしまいますが、 まあそこまでは手が回らなかったというところでしょうか。
    清掃作業を開始

        この厚い堆積物はいったいどのように形成されたものなのか・・・ おそらく小屋とか納屋とか屋根裏部屋におそらく20年以上、ひょっとしたら30年近くも置かれたままだったのでしょう。 ボートアンカーのニュースグループに、積もった埃をみればカリフォルニアで使われていたものなのかアリゾナなのか、 はたまた東のほうかがわかる、との投稿がありましたが。
        ともあれ、まずは絞った濡れ雑巾でざっと拭いて、堆積物をおおむね除去しました。 やはりシャーシの表面は痛みが気になります。 ので、泥沼にはまると知りつつも、スチールウールと金属研磨剤で磨き始めてしまいました。 というのも、磨けば当然きれいにはなりますが、均一に仕上げるのは至難の業です。 案外に、磨かないでおいたほうが違和感がなかったりしますから。 それこそ何十時間もの間ひたすら磨く覚悟でなければなりません。

    も、燃えてる!!!

        昨夜は 2時間以上も磨いたのに、まだ10分の1も終わっていません。 やれやれ大変だなあと思いつつ電源スイッチを入れると、 真空管が動作を開始して音が出だすと同時にパチパチと小さな音がします。 その音はスピーカからだけではなく、受信機そのものからも出ています。 あれっ、と思って覗き込むと、異臭と同時にシャーシの下から もくもくと煙が出はじめました! も、燃えてる!!!

        あわてて電源を切ったときには、 すでにラボから出た異臭はキッチンにもリビング(テレビ部屋と言ったほうがしっくりする)にも漂ってしまいました。 「なにまた燃やしてんのよ!」とヨメの苦情。

        受信機を横倒しにして調べると、燃えたのは第一周波数変換管6BE6の1kΩのプレート抵抗、R9でした。 炭化してしまった小さなソリッド抵抗をつついたら、ポキッと折れてしまいました。 はて、どうしてこれが燃えるのだろう? 6BE6の内部で電極ショートでも起きたのかなと回路図を眺めながら考えます。

        電源を入れていないとき、プレート抵抗が入るべき部分の両端には明確なショートはなく、大電流が流れそうにはありません。 パーツボックスから取り出した1kΩを取り付け、注意しながら再度電源を投入してみます。 と、プレート抵抗はやはり光りだしてしまいました。 あわててスイッチを切ったのですが、その直前、プレート抵抗とは違う場所で青白いスパークが断続して飛ぶのが見えました。 一瞬のことだったのではっきりとは断定できなかったのですが、 スパークが飛んだのはどうやら6BE6のプレート側に入っている中間周波トランスの内部のようです。
    1st IFT and Vicinity

        回路図を参照しながらテスターで周辺の抵抗値を測ってみると、 中間周波トランスの端子の間で、本来は絶縁されているはずの部分に約20kΩの導通があります。 事故後最初の点検で導通がないと思ったのは、アナログ テスタを低抵抗レンジで使ったので針が振れなかったためでした。 しかもそのターミナルをゆすると、抵抗値が変化します。

        いよいよIFT自体が怪しくなってきました。 でもなぜIFTが? 直前まで行っていた作業を考えれば、 スチールウールの断片かアルミの微粉末を含む研磨剤がIFTのケース内に侵入してしまったのだ、とするのが妥当でしょう。 げげ、作業ミスで壊しちゃった!! しかもこのIFT、普通の455kHzのじゃないんだよ! スペア入手はほぼ不可能!

    IFTを分解してみる

        これは数年がかりのプロジェクトになるかもしれないと恐れつつ、問題のIFTを取り外しました。 アルミケースのカシメをこじ開けて中身を取り出すと、プラスチック製のベース部分に見事なスパーク痕が残っています。 でも不思議なことに、スチールウールのかけらとか、研磨剤の残渣物のようなものは見られません。 すべて燃えてしまったのでしょうか。 これを勤務先の材料研究所に持ち込んで元素分析を依頼すれば、あんさんこりゃスチールウールでっせ、 とかなんとかのレポートが手に入るかもしれませんが・・・。

        このIFTは3つのコイルと6つのターミナルを持ち、それぞれのコイル間には接続はありません。 にもかかわらず、3つのうち2つのコイルの間に80kΩの導通があります。 幸い、コイル自体は断線していないようです。 異常導通は、プラスチックベース部分にありそう。 見るとベースは、2つのプラスチック製部品が背中合わせに金属クリップで留められた構造をしています。 合わせ面に研磨剤が入り込んじゃったんだろうか。

    1st IFT Interior

        片側の3本のコイルリードを外し、クリップを外してベースを分解してみました。 すると、2つのプラスチック部品の間には透明な、3枚の雲母のようにも見える透明フィルムがはさまっており、 真中のフィルムには鈍い銀色をした材料がおそらく印刷技術によって塗布されています。 そうか、これがIFT内部のキャパシタを形成しているんだ。 そして、このフィルム電極の一部分が焼けこげています。

        このフィルムは多少は曲がりますが、さほど柔軟性はなく、軽く力を加えたらパリッと折れてしまいました。 どうやら故障の原因は異物混入ではなくて、IFTのケースを磨いたときに、 ケースとベースに加わった力によって脆くなっていた絶縁フィルムにひびが入り、 コイルターミナル間がキャパシタ電極用の銀色材料を介して導通してしまったものではないかと考えられます。
    Burnt film capacitor of the 1st IFT : Click here for larger image

        ここの絶縁が破れれば、回路上は1kΩのプレート抵抗を通ったB電源がフィルム上の電極材料を流れ、 本来絶縁されているはずのターミナルからシャーシグラウンドに落ちます。 この故障モードの場合はコイル自体には電流は流れません。これが、コイル自体は焼け切れなかった理由でしょう。

        さあそうなると・・・。 焼けたフィルムはどうしようもなく、結局全てのフィルムをIFTから取り除いて組み立てなおしました。 コイル間の異常導通はなくなり、3つのコイル自体はおそらく使用可能でしょう。 フィルムが形成していたキャパシタの代わりのものを、シャーシ下面に取り付ければいいことになります。

        でも、いったい何pFのキャパシタをつければいいのだろう? IFT内部のキャパシタなので、HQ-170の回路図にはキャパシタのシンボルはあってもその容量は記載されていません。 トリマで試すか、トライ アンド エラーでさまざまな容量のものを試すか? ディップメータやキャパシタンスメータがあれば助かるのかもしれません。
    1st IFT Glitch


    寒いからとにかく17本で暖まろう


        夏は深夜でも居られないほど暑いのに、さすがに12月ともなるとラボも冷え込みます。 問題の中間周波トランスの修理は全く進んでいませんが、とりあえず17本の真空管に火をいれて温まることにします。 中間周波トランスなしでは当然何も聞こえませんので、低周波段のテストでもしましょうか。
        マニュアルの動作原理の項にあるように、HQ-170のオーディオ アンプには可変ネガティブ フィードバック方式が採用されています。 これはオーディオ出力トランスの2次側巻線から信号を取り出して音量調整ポテンショのグラウンド側に戻す方法です。 Radio Designer's Handbook から抜粋した動作原理図をここに示します。

        ボリューム コントロールがフルの場合は6AV6の入力に占めるネガティブ フィードバックの比率が小さくなり、 ボリュームを絞れば絞るほどネガティブ フィードバックの割合が高まる、という方式です。 簡単なので(動特性解析までやるのはアマチュアには荷が重過ぎますが・・・)、既存の受信機にも応用できそうですね。 しかし、トランス2次側の負荷によって動作が影響を受けそうなこと、 また音質調整と音量調整を独立して行うことができないことを考えると、 所詮はチープな方法でしかない、ともいえます。

    Variable Negative Feedback
    可変ネガティブ フィードバック 動作原理図
        CDプレーヤからのオーディオ信号をポテンショメータの上側に注入して試してみると、 可変ネガティブ フィードバックの効果ははっきりわかります。 フル ボリュームの位置ではちょうどバス・トレブル トーン コントロールを両方とも絞りきった感じの音になり、 またミニマム ボリューム付近ではハイハットやシンバルの音もはっきりとした、FMラジオ並の音になります。 しかし小型の出力トランスを使ったHQ-170の6AQ5シングル パワーアンプは、当然のことですが、オーディオ用としては役不足です。 Bob Culbertson の"A Moment In Time"を聴いてみると、思いのほか低周波成分が強く、再生音はかなり濁ったものになってしまいます。 チャプマン スティックでこんな豊かな低音が出るんだなあと逆に感心。
    HQ-170のオーディオ ゲイン コントロールのポテンショメータには軽いガリがありましたが、 例によって Safety Wash を2度ほど吹きかけたら回復しました。 ハムは気にならず、ノイズもありません。

    オーディオ段の総合ゲインはちょっと低いような気がします。 出力管の各ピンの電圧を測定してみました。 プレート回路の抵抗値、たとえば出力トランスの1次側巻線など・・・が少なめのほかは、特に異常は見当たりません。

    V17 6AQ5 Pin 1 2 3 4 5 6 7 8 9
    Audio Power Amplifier Grid Cathode Heater+ Heater- Plate Screen
    N/A N/A
    Voltage Spec 0 15 6.3AC 0 270 250 N/A N/A N/A
    Measured 0.26 15.3 (2) 6.5AC 0 273 259 N/A N/A N/A
    Resistance Spec 470k (3) 430 N/A 0 17k 17k N/A N/A N/A
    Measured 555k 452 N/A 0 14.4k(1) 14.2k(1) N/A N/A N/A
    Measured : Dec.03, 2000 Power Line = 120VAC
    (1) : Measured with Systron Donner Model 7004A Digital Multimeter in 100kOhm range.
    (2) : Meadured 8,3V on Dec.03, 2000. Measured 15.0V on Dec.16, 2000. Why...?
    (3) : Schematic drawing shows 500kΩhere.

        6AQ5のカソードには、430Ω 1Wの抵抗と、それに並列に40μF 25Vのバイパスが入っています。 これはシャーシ上の円筒形ブロック キャパシタのひとつのセクションです。 容量減の可能性をチェックするため、さらに並列に47μFをつないでみました。 出力はほとんど変わらず、よってバイパス キャパシタは正常であるといえます。 この受信機では、電源平滑と音声出力バイパスのためのこのブロック キャパシタを除けば他は全てマイカ キャパシタかセラミックで、 したがってリキャップの必要性はほとんど無いのではないかと思われます。 この受信機とほぼ同時期に製作された CRV-1/HB では大半のキャパシタを交換したのに比べると、あらためて品質の高さがわかります。
        マニュアルの真空管各端子の抵抗値表ではグリッド ピン抵抗値の読みは470kΩですが、 回路図上ではグリッド抵抗は500kΩになっています。 どうもこのマニュアルは細かい誤記、あるいはランチェン時のアップデート漏れのようなものが多いようです。 初段低周波増幅管6AV6のプレート負荷抵抗と出力管6AQ5の段間結合は、 Sprague社製のキャパシタが3個と抵抗2個が一つにまとめられた部品が使用されています。 回路図によればこの一体型部品のうち6AV6のプレートと6AQ5のグリッドをつないでいるキャパシタの等価容量は0.01μFです。 ここに外部でさらに0.01μFを並列につなぐと、やや高音が抑えられるだけで音量は変わりません。

        出力段には目立ったトラブルがなさそうなので、低周波増幅段に移ります。 ここで使われている6AV6、あるいは12AV6といえば、5球スーパーの検波・初段低周波増幅用として大変ポピュラーです。 HQ-170ではAM検波は6BV8のダイオード部分、SSB/CWでは12AU7のプロダクト検波を使います。 6AV6のダイオード部分は、ディレイドAGCゲートとして利用されています。

    V16 6AV6 Pin 1 2 3 4 5 6 7 8 9
    AF Amp & Delayed AGC Gate Grid Cathode Heater+ Heater- Diode Plate 1 Diode
    Plate 2
    Triode Plate N/A N/A
    Voltage Spec -0.95 0 6.3AC 0 -0.68 -0.68 80 N/A N/A
    Measured -0.65 0 6.5AC 0 -0.40 -0.40 76.9 N/A N/A
    Resistance Spec 4.7M 0 N/A 0 2.4M 2.4M 470k (1) N/A N/A
    Measured 5.24M 0 N/A 0 2.6M 2.6M 590k N/A N/A
    Measured : Dec.16, 2000 with Systron Donner Model 7004A Digital Multimeter
    (1) : Schematic drawing shows 500kΩhere.

        プレート負荷抵抗は前述の一体型パーツに組み込まれた500kΩ。 プレート電圧は5%減でまあ正常なレベルですが、抵抗値はどうも高そうです。 グリッド抵抗もちょっと高め。 ディレイドAGCゲートの電圧は低めですが、入力信号に応じて-1.6V程度まで負に高まります。 ここではとりあえず正常としておきましょう。

    第3周波数変換

        中間周波トランス焼損事故の前の日に測定した結果では、 短波帯での受信機の感度はかなり優秀なものでした。 したがって、中間周波段各部の調整はほとんど狂ってはいないだろうと思われます。 が、まずは第3周波数変換段の局部発振周波数をチェックしてみました。
        第3周波数変換管6BE6(V5)は自励式のコンバータとして動作し、 455kHzの第2中間周波数を60kHzの第3中間周波数に変換します。 局部発振周波数はしたがって395kHz。 この周波数はフロントパネルのバーニア・チューニング ダイヤルで±3kHzの範囲で可変できるようになっています。 このコントロールは単バリコンを同軸減速シャフトでまわすことによって行います。
        この局部発振周波数を周波数カウンタで測定したところ、385kHzでした。 10kHzほど低い値でしたが、これは周波数カウンタを6BE6の第1グリッド、 つまり共振回路に直に接続したために同調点が狂ったためでした。 6BE6のプレートから信号を取りだして周波数を測定してみると、 わずかにずれはあるものの395kHzを中心に発振していました。
        シャーシ上の局発コイルL4を調整し、バーニア・チューニング ダイヤルの指針が0のときに正しく395.0kHzになるよう調整しました。 波形は厳密な正弦波よりも若干丸みを帯びていますが、局発出力は出力レベル、周波数とも十分に安定しています。

    第3中間周波数増幅段

        普段使っているシグナル ジェネレータ --- 目黒MSG-2161とLODESTAR SG-4162AD --- のどちらも、最低周波数は100kHzで、60kHzは出せないことに気がつきました。 別のジェネレータ、岩通SG-4111なら60kHzも出せますが、出力アンプ周辺の故障の修理中で実用できない状態です。 よって455kHzを第3周波数変換管に注入した状態でテストを続けます。
        6BE6の第3グリッドに455kHzを注入してSメータの振れがS9になるためには、 出力を89dbμにもする必要があります。 HQ-170は60kHz中間周波増幅段として3段増幅していますので、これはちょっと感度が低いような気がするのですが。 あるいは、60kHz中間周波増幅段はLSB/USBの切り替えも含めて選択度を確保するのが主目的で、 各段のゲインは低めのセッティングなのではないかとも考えられます。

    第2中間周波数増幅段(455kHz)

        455kHzの中間周波数は定番の6BA6(V4)で増幅されます。 この管はAGC制御されるとともに、カソードに入ったポテンショメータでマニュアル ゲイン コントロールを受けます。 6BA6の出力と次段の第3周波数変換段の間に、スロット フィルタと呼ばれるノッチ フィルタが挿入されています。 SLOT FREQと表示されたつまみは同軸減速されてノッチ同調回路のバリコンを回します。 またSLOT DEPTHと表示されたつまみはポテンショメータで、回路のQを可変するようです。
        スロット フィルタをスルーするスイッチはないので、 通常時はスロット周波数を+5kHzまたは-5kHzのどちらか目一杯に外しておきます。 このことはマニュアルに書かれているのですが、 無線機ショップの店頭で展示機を触ったお客さんがスロット周波数つまみを中央の0kHzに合わせてしまい、 HQ-170は性能が悪いと思いこんでしまう ことも多かったようです。

    V4 6BA6 Pin 1 2 3 4 5 6 7 8 9
    455kHz IF Amplifier Control Grid Suppressor Grid Heater+ Heater- Plate Screen Grid Cathode
    (1)
    N/A N/A
    Voltage Spec -0.67 0 0 6.3AC 245 100 1.9 Gmax
    23 Gmin
    N/A N/A
    Measured -0.41 0 0 6.5AC 253 105.3 1.1 Gmax
    21 Gmin
    N/A N/A
    Resistance Spec 2.5M 0 0 N/A 17k 15k 180 Gmax
    10k Gmin
    N/A N/A
    Measured 2.66M 0 0



    N/A N/A
    Measured : Dec.16, 2000 with Systron Donner Model 7004A Digital Multimeter
    (1) : Gmax = Control at MAX RF Gain, Gmin = Conrol at MIN RF Gain

        6BA6の各ピンの電圧を見るに大きなトラブルはなさそうですが、不思議なことに、 この6BA6のグリッドにシグナル ジェネレータの信号を注入した場合、 同じ出力を得るには後段の第3周波数変換段に注入するよりもパワーを要します。 はて、インピーダンス マッチングの関係かなあ、それとも455kHzの中間周波トランスの調整が狂っているのかなあ? で、試しにトランスの調整をしようとしたら・・・ああっ、違うトランスを回しちゃった!! 間違えて60kHz段の調整をぐちゃぐちゃに狂わせてしまいました。 とほほ。なにしろトランスがたくさんあるもんで・・・。
        とりあえずだいたいの再調整はしましたが、ここはあとでもう一度、じっくり再調整しましょう。 なにしろここでLSB/USB/BOTHのサイドバンド切り替えと、0.5/1/2/3kHzの選択度切り替えが実現されているからです。 感度も選択度も再生音質にも左右する部分。60kHz段の調整はHQ-170のキモのようです。

    第2周波数変換

        第2周波数変換回路は、第1中間周波数3.035MHzを第2中間周波数455kHzに落とします。 ペンタグリッド管6BE6(V3)による自励式のコンバータで、局部発振は2.580MHzの水晶発振子によって行われます。
        受信バンドが1.9MHz帯または3.8MHz帯の場合は第1中間周波数はすでに455kHzなので、2.580MHz局部発振は停止し、 この段は単なる455kHz中間周波増幅段として動作します。

        6BE6の7ピン、第3グリッドに3.035MHzを注入してテストしてみると、 S9を得るのに必要なジェネレータ出力は83dbμ。 また信号が確認できるレベルはAMで35dbμ、SSB/CWで20dbμ程度。 455kHzを1ピン、第1グリッドに注入すると、S9を得るのに必要なジェネレータ出力は78dbμ程度。
    各ピンの電圧をチェックしてみると、あれ、第1グリッドの電圧が低い。 どうしてだろう。3.035MHz注入で受信できているのだから、2.580MHzの局部発振は動作しているはずです。

        調べてみると、ここも回路図との差異があり、 第1グリッドに入っている抵抗の値が異なっている(回路図で22kΩに対して実機では47kΩ) ほか、 実機ではカソードとRFチョークの間に160Ωの抵抗が入っています。 カソードバイパスキャパシタC14は2つになり、 160ΩとRFチョークのそれぞれに並列に入っています。
        160と80メーターバンドではカソード回路のRFチョークはパイパスされますが、 カソードは直接接地されるのではなくて、160Ωの抵抗が入っています。 したがって下表の抵抗値測定結果は正常であるといえます。

    2nd Converter Stage

    V3 6BE6 Pin 1 2 3 4 5 6 7 8 9
    455kHz IF Amplifier 1st Grid Cathode Heater+ Heater- Plate 2nd & 4th Grid 3rd Grid N/A N/A
    Voltage Spec -4.0 0 6.3AC 0 248 98 0 N/A N/A
    Measured 0 0.08 6.5AC 0 250 85.7 0 N/A N/A
    Resistance Spec 22k 0 N/A 0 16k 19k 0 N/A N/A
    Measured 45.7k (1) 170 N/A 0 16k 18.2k 0 N/A N/A

    Measured : Dec.17, 2000 with Systron Donner Model 7004A Digital Multimeter
    (1) : Schematic diagram shows 22kOhm as R10, while the actual receiver has 47kOhm.

        音声変調を掛けた455kHzの信号をこの6BE6に注入して数日間モニターしてみましたが、 動作は安定しており、とりたてて問題には気がつきません。 この段以降には周波数変換が2段と中間周波数増幅が4段もあることを考えると、 トータルな利得が低いようにも思われますが、やはりそういった設計なのかも。
    さて、そろそろ問題のIFTと第1周波数変換段にチャレンジする段階のようです。

    第1周波数変換

        第1周波数変換段は、 ペンタグリッド管6BE6(V2)を使った混合回路と三極管6C4(V12)を使った局部発振回路で構成されています。 6C4の発振出力はカソードからキャパシタを介して取り出され、 混合管の第1グリッドに注入されます。 現状では中間周波トランスT1がないので、6BE6のプレート電圧がかからず動作していません。 ちなみに、この段の6BE6/6C4そして高周波増幅管6BZ6のソケット周辺は、 バンド切り替えロータリースイッチとトリマおよび発振コイル群の下に隠れてしまっていて、作業性は最悪です。

        マニュアルの解説にあるように、第1周波数変換段は使用するバンドによって動作が異なっています。
    受信バンド 局部発信周波数 第1中間周波数
    1.8- 2.0MHz 受信周波数+455kHz 455kHz
    3.5- 4.0MHz 受信周波数+455kHz 455kHz
    7.0- 7.3MHz 受信周波数+3035kHz 3035kHz
    14.0-14.4MHz 受信周波数+3035kHz 3035kHz
    21.0-21.6MHz 受信周波数+3035kHz 3035kHz
    28.0-30.0MHz 受信周波数+3035kHz 3035kHz
    50.0-54.0MHz 受信周波数-3035kHz 3035kHz

        そうすると、問題の中間周波トランスT1は、 160および80メーターバンドでは455kHzを取り出して次段に伝え、 それ以外のバンドでは3035kHzを伝達することになります。 これが、コイルを3組持つIFTの理由です。

        もう一度第1周波数変換段周辺回路図を右に示します。

        回路図上でT1の下側の共振回路が455kHz用です。 中間周波数が455kHzのとき、周波数が低いので信号は上側共振回路のコイルを通過し、 下側の455kHz共振回路の両端に現れます。 この信号はキャパシタC134を介して取り出され、 同様の構成を持つ中間周波トランスT2の下側共振回路に伝えられ、 第2周波数変換管の第1グリッドに注入されます。
        一方中間周波数が3035kHzのとき、T1の上側共振回路の両端に信号が現れます。 今度はキャパシタではなく、3つめのコイルによって信号が取り出され、 第2周波数変換管の第3グリッドに注入されます。 周波数が高いので、信号はT1の下側のキャパシタを通過します。

        実機のT1周辺の配線をよく見ると、これまた回路図との相違がみつかりました。 このトランスからバンド切り替えロータリースイッチに伸びており、 455kHzで動作する160と80メーターバンドでは上側の3035kHz用コイルがスイッチによりショートされ、 それ以外のバンドでは下側の455kHz用コイルがショートされます。
        せっかく第1混合管6BE6のプレートとトランスT1の約5cmの接続に同軸ケーブルを使っているのに、 マイナーチェンジで追加したと思われるこの配線は単なるビニール線。 動作原理的には無理を減らした改善ですが、ちょっと竜頭蛇尾的な趣があります。
    1st Mixer Circuit


    T1を元に戻す

        事故発生から実に7ヶ月もたってしまいましたが、いよいよ中間周波トランスT1を元に戻しました。 トランスのベース部分は熱可塑性プラスチックでできていて、 分解時に半田こての熱でずいぶん変形してしまいました。 これ以上半田こてを繰り返しあてていると、復旧できないほど変形が進む恐れもあります。 そこですぐ近くにラグ板も取り付け、ここに追加のキャパシタを取り付けることにしました。
        配線を復元して3.8MHzの信号をアンテナ端子から注入してみると、感度は低いながら受信できています。 パーツボックスをあさって、455kHzコイルに並列に入れるべきキャパシタを探してみましょう。 45pFから450pFの範囲でいくつかテストしてみると、ちょうど100pFを使ったときにベストの性能になります。 トリマを取り付けることも考えましたが、コイル側での微調もできるので、 最終的に100pFのセラミック キャパシタで決着しました。
        IFT組み込みのキャパシタの構造からして、3035kHz側のキャパシタもほぼ同一容量でいいはずです。 ところが14MHzの信号を入れてテストしてみると、 どういったわけかキャパシタを全く入れない場合がベストの感度になります。 中間周波数3035kHzを使う各バンドでは、 455kHzを使う160メーターおよび80メーターバンドにくらべ心持ち感度が低くなっています。 なにか見落としがあるのかなあ。 よく回路図を見てみると、T1とT2のIFTのリンクコイルを結んでいる部分に560pFのキャパシタが入っていますが、 実機ではそもそも該当するものを見つけられません。 試しに何種類かのキャパシタを入れてみましたが、感度が低下こそすれ改善されません。はて。

        ともあれHQ-170は久しぶりに、シグナル ジェネレータの信号ではなく実際の電波を受信するようになりました。 第1局発トリマを調整してダイヤルの読みを較正し、RFトリマも再調整しました。 各バンドでひととおりチェックしてみると、おおむね以前の感度を取り戻していてることがわかりました。 直った・・・!

    オペレーションを楽しむ

        さすがに17球のトリプルスーパーヘテロダイン、調整はまだ不十分なはずですが、 年末年始の休みで賑わうアマチュアバンドを存分に楽しむことができます。 ずっしりした操作感のメイン チューニングつまみは早送り操作は苦手ですが、 バックラッシュは全く気になりません。 7MHz帯ではダイヤル1回転での周波数変化は約60kHz。 どんぴしゃゼロインするには少しばかり慎重に操作する必要がありますが、 それが面倒ならばバーニア チューニングで精細な微調ができます。
        各つまみは基本セッティングのままでも十分な性能を発揮しますが、 多くのコントロールを操作してベストな受信状態に持っていくのは、HQ-170を使いこなす楽しみです。 特にQSOパーティで超過密状態にある7MHz帯では4段の選択度切り替えは不可欠ともいえるし、 近接混信を回避するためにスロット フィルタは強力な武器となります。 本機のIFフィルタはセンター周波数をシフトすることはできませんが、 バーニア チューニングとBFOピッチ コントロールを操作すれば同じ効果が得られます。 このような状況で聞き比べてみるとコリンズ51S-1よりもやはり有利。
    Hammarlund HQ-170

        14MHzのSSBでOMさんのラグチューを聞いてみると、明らかな周波数ドリフトが見られます。 電源を入れて10分程度してからチューニングしても、 その後数分に一回の割合でバーニア チューニングで追いかける必要があります。 この主要因はやはり第1局発の安定度で、特にシャーシ裏面のオシレータ トリマやパディング キャパシタは温度に大変敏感です。 安心して使うためには1時間程度はウォームアップをしておく必要がありそうです。
        受信強度に応じた周波数変動もわずかに見られます。 SSBではほぼ気になりませんが、CWでははっきりとわかります。 原因は不明。
        60kHz中間周波段の再調整も必要です。 LSBポジションとUSBポジションとで感度の差がはっきりと残っており、 パスバンドのセンターもきちんと出ていないようです。
        その他は各コントロールとも動作していますが、AVCコントロールはFAST-MID-SLOWとの差があまりありません。 SLOWではもう少しディケイをゆっくりにしてもいいように感じられます。

        フロントパネルはタバコのヤニでかなり汚れていますので、つまみをひとつずつ外して磨きました。 ヤニ汚れに最適なのはやはり石鹸水。塗装へのダメージの心配もありません。 汚れがきつい部分はシンプルグリーンの希釈液を使いました。 セーフティウォッシュをちょっとだけ使ってみたら汚れは見事に落ちますが、 パネルの塗装表面も荒らしそうだったので止めておきました。
        フロントパネルに出ているビスのうち、 時計を固定しているものとBFOピッチおよびスロット フィルタのバリコンを固定しているものは頭のサビが汚いので新品に交換します。 ダイヤル目盛の透明プラスチックは内側に汚れがありますのでそのうちパネルを分解したときに掃除することにします。

        QSOパーティをワッチしながら半日掃除したら、顔つきはかなりシャキッとしてきました。 きれいになってうれしいのか、HQ-170はもともと大盤振舞いのSメータをいっそう元気良く振らせています。

    AGCのディケイを遅くしてみる

        現状ではAGCのディケイがSLOWにしても早すぎるように感じられます。 また、特にFASTにしたときに復調音質の劣化が気になります。
        HQ-170のAGC電圧は、トリプル2極管6BV8(V8)のひとつのセクションを使用したダイオードで生成されます。 AGC電圧平滑用のキャパシタは0.25μFで、AGCアタック時はこれを47kΩの抵抗で充電します。 AGCディケイ時はキャパシタの電圧は抵抗を介してグラウンドに放電されますが、 この抵抗をロータリー スイッチで切り替えるしくみになっています。 またOFFポジションではAGCラインは4.7MΩを介して接地されます。
        MIDとSLOWのポジションでは、Sメータ アンプのプレート側分圧抵抗に別の抵抗が並列接続されます。 AVCつまみのポジションを変えたときにSメータの振れ具合が変化しないようにする工夫だと思われます。

    AVCスイッチ
    ポジション
    ディケイ放電抵抗 Sメータ
    基準電圧側分圧抵抗
    OFF 47kΩ
    AGCラインは4.7MΩを介して接地される
    750Ωのみ
    FAST 4.7MΩと47kΩ並列 750Ωのみ
    MID 4.7MΩと470kΩ並列 750Ωと24kΩ並列
    SLOW 4.7MΩ 750Ωと15kΩ並列

        AGCライン電圧をオシロスコープで観察してみると、 SLOWにセットした状態ではアタックとディケイの時定数の違いのため音声に応答したノコギリ波状になっています。 FASTポジションでは音声信号成分がそのままの形でかなり残っていることがわかります。 これでは音質に影響を与えても不思議ではありません。 試しにAGC平滑キャパシタに別のキャパシタを並列接続してみました。 2μFをつなぐと、SLOWポジションでのディケイが遅くなりすぎて早いフェーディング時やチューニング時に応答しきれません。 1μFをつなぐと各ポジションとも適当かなといった感じで、特に問題点もなく、また復調音質はかなり聴きやすくなりました。

        ところが実際に1μFを取り付けてみると、2μFの時と同じ程度の重さになってしまいます。 何の事はない、接続していたオシロスコープとデジボルが影響してディケイ時間が半分程度になっていたのです。 SLOWで遅すぎる感じになってしまっていますが、とりあえずこのまま使ってみましょう。音質はかなり聴きやすくなりました。
    AGC Filter Cap

    周波数ドリフト


        マニュアルの謳い文句を読む限り、この受信機には周波数安定性を確保するための工夫や注意がじゅうぶんに払われているようです。 しかし実際に14MHzのSSBやCWをモニタしていると、 電源投入からけっこうな時間がたっても周波数は絶えずゆっくりと一定方向に変化していきます。 そこで周波数ドリフトの傾向をシグナル ジェネレータを使って調べてみました。 受信機のダイヤルを144.150MHzにセットしてコールド状態から電源を入れ、 受信機側は全く触れずに、シグナル ジェネレータ側の周波数を変化させてゼロビートとなる周波数を2時間にわたって測定してみました。 季節は1月、室温は約12度です。ケースは外したままですのでシャーシ上面にはごくわずかな空気流があります。 シャーシ下側は対流以外に外部からの空気流はほとんどないはずです。

        グラフからわかるように、受信周波数が安定するまでには実に2時間を要しました。 トータルのドリフト量は11kHzもあり、これではSSB/CWの安定受信など望むべくもありません。 選択度を最もナローな0.5KHzにした場合は、5分程度でパスバンドの外に出てしまいます。

        これが果たしてHQ-170本来の性能なのか、それとも素子の経時劣化によるものなのか、 はたまた中間周波トランスの素人修理に起因するものなのか・・・ 都合11kHzの変化幅というのは Lafayette HA-230(Trio 9R-59) に比べれば少ないものの、30分のウォームアップの後の変化量を見ればむしろHQ-170のほうが分が悪いことになります。 し、松下のコイル パックを使った自作高一中二 CRV-1/HB の方が優秀ということになります。

        せっかくの高級受信機、これは要対策です。 完全とはいかないにしても、おそらくオシレータ コイル部に入った温度補償キャパシタの温度係数のチューニングで改善は可能でしょう。 相当根気の要る仕事だとは思いますが・・・。
    HQ-170 Frequency Drift


    60kHz中間周波増幅段のゲイン設定

        60kHz中間周波数はV6とV7の2本の6BA6、およびV8の6BV8で3段増幅されます。 このうち2本の6BA6のカソード抵抗は、 SIDE BANDSスイッチとSELECT KCSスイッチの組み合わせによりその抵抗値が切り替えられます。 つまり、サイドバンドと選択度の設定に応じてゲインも切り替えているのです。
        回路図から読むと、V6とV7のカソード抵抗値は以下のようになります。

    V6/V7 6BA6 60kHz IF AMP
    Cathode Resistance (Designed)
    SELECT KCS
    0.5kHz 1kHz 2kHz 3kHz
    SIDE BANDS LSB 6.8 + 0.068
    = 6.868kΩ
    6.8//15 + 0.068
    = 4.747kΩ
    6.8//3 + 0.068
    = 2.145kΩ
    6.8//0.68 + 0.068
    = 0.686kΩ
    USB 6.8 + 0.068
    = 6.868kΩ
    6.8//15 + 0.068
    = 4.747kΩ
    6.8//3 + 0.068
    = 2.145kΩ
    6.8//0.68 + 0.068
    = 0.686kΩ
    BOTH 6.8 + 0.068
    = 6.868kΩ
    6.8//15/1 + 0.068
    = 0.892kΩ
    6.8//3//0.27 + 0.068
    = 0.307kΩ
    0.068kΩ
    // は並列接続を示しています。

        実機において、V6 6BA6のカソード(7番ピン)にマルチメータをあてて抵抗値を測定してみました。すると、

    V6 6BA6 60kHz IF AMP #1
    Cathode Resistance (Measured:Pin7)
    SELECT KCS
    0.5kHz 1kHz 2kHz 3kHz
    SIDE BANDS LSB 7.308kΩ 5.071kΩ 2.208kΩ 0.705kΩ
    USB 7.308kΩ 5.071kΩ 2.208kΩ 0.705kΩ
    BOTH 7.308kΩ 0.950kΩ 0.337kΩ 0.073kΩ

        念のためV7も測ってみると、

    V7 6BA6 60kHz IF AMP #2
    Cathode Resistance (Measured: Pin7)
    SELECT KCS
    0.5kHz 1kHz 2kHz 3kHz
    SIDE BANDS LSB 7.304kΩ 5.068kΩ 2.205kΩ 0.700kΩ
    USB 7.303kΩ 5.068kΩ 2.205kΩ 0.700kΩ
    BOTH 7.303kΩ 0.947kΩ 0.333kΩ 0.069kΩ
    Measured by Systron Donner Model 7004A Digital Multimeter in 10kΩ range.

        ほとんどの組み合わせでやや抵抗値が大きめになっています。 6.8kΩの抵抗が大きめになっていると思われますが、誤差は10%以内ですからとりたてて異常とはいえません。 それにしても、2段もある6BA6中間周波増幅段のゲインをわざわざここまで落として使うとは・・・。 やはりこれらの段の目的はフィルタの損失を補うのが目的であって、ゲインを稼ぐ目的ではないのでしょう。

        お試しでカソード抵抗切替回路を300Ωの抵抗でショートしてみました。 通常のSSB受信時、たとえばLSBで2kHz幅の場合は2本の6BA6ともカソード抵抗は2.2kΩですが、 これがおよそ252Ωで動作することになります。 すると、S5ほどの信号がS9+20dB程度振れるようになり、受信機のゲインは見違えるほどに向上します。 が、復調音波形の上下が台形にクリップされてしまい、聞くに堪えない音質になってしまいます。
        300Ωの代わりに2kΩでショートしてカソード抵抗を1.088kΩ程度にすると、 2kHz帯域では感度が向上し音質はさほど劣化せず。 しかし0.5kHz帯域では強い信号のとき音質劣化が認められます。
        結局、ゲインを上げすぎるとどこかで飽和が起きるのでしょう。 それぞれの組み合わせで飽和が起きない上限(にすこし余裕を持たせて) にゲインを設定しているものと思われます。

        いずれにせよ、この音質劣化がなぜ起こるのか、私にはまだ理解できていません。 中間周波トランスでの飽和? それとも後段の6BJV8?それとも検波段? そのうち調べてみよう。

    信号強度による受信周波数変動

        信号強度によって受信周波数がわずかに変化するのは、 AGC電圧の影響を受けているためだということがわかりました。 AVCつまみをOFFポジションにしておいた場合、信号強度による周波数変動はほとんどありません。 この周波数変動は数10Hz程度であり、CWを受信している場合に認めることができます。 AM受信の場合は全く気がつきません。
        高周波増幅管のゲイン変動が影響しているのかなと考えてV1 6BZ6のグリッド電圧(AGC制御対象)を0Vに固定してみましたが、 周波数変動は残っています。まずここではなさそう。
        放電安定管で生成されるB電圧は106Vでぴたりと安定しているので、 高周波増幅、第1周波数変換および第2周波数変換管のスクリーン電圧も安定しています。 さらに第1周波数変換段も第2周波数変換段もAGC制御を受けないので、 変動しているのは455kHz段以降ということになります。
        455kHz増幅段で周波数変動が起こるとは考えにくいので、残るは第3周波数変換段とBFOです。

    BFOの安定性

        第3局発の周波数を直接測定するのがちょっと難しかったので、先にBFOをチェックしてみます。 周波数カウンタで測ってみると、どうも信号強度の影響より経時ドリフトのほうがありそうです。
        翌日コールドスタートからのドリフト量を測定してみました。 すると、ご覧のように電源投入から30分にわたって約125Hzのドリフトがあります。 これだけ変化すればCWおよびSSB受信時に明らかなピッチ変動となって現れます。 11kHzにおよぶ受信周波数ドリフトに比べれば大した問題ではない、といえますし、 30分経過後の変化は20Hz以内ですから、ウォームアップしてから使えば済む話ですが。

        ともあれ、AGC電圧変化によってBFOの周波数が変動するということはなさそうです。
    BFO Frequency Drift

    第3周波数変換段の安定性


    3rdf Converter Circuit
        一方、第3周波数変換管V5 6BE6はその第3グリッド(455kHz入力)にAGC制御を受けています。 また、スクリーン電圧は安定されていないB電圧から27kΩ2Wのスクリーン抵抗を経て供給されています。 このためスクリーン電圧は当然AGC電圧に応じて変動します。 実測してみると無信号状態で約84.5V、強力な信号で約77V。10%近く変化します。

        ここの電圧を安定化したらどうなるか試してみましょう。 27kΩ 2Wのスクリーン抵抗の一端を取り外し、0B2で生成されている106Vを接続してみました。 これで6BE6のスクリーン(第2・第4)グリッドの電圧は入力信号にもAGC電圧にもよらず106Vでぴたり安定しますが、 依然としてAGC電圧に依存した周波数変動が残っています。 このスクリーン電圧をオシロスコープで観測すると、第3局発信号が重畳しているのが見られます。 波形はやや非線形な正弦波ですが、その振幅が信号に応じて変動していることに気がつきました。 AVCスイッチをOFFポジションにすると、信号強度によらず安定しています。

        スクリーン電圧を安定化するのではなくて、この第3周波数変換管にAGCをかけないようにしてみたらどうでしょうか。
        455kHz中間周波数信号は7pFのキャパシタを介して6BE6の第3グリッドに印加されており、 AGC電圧はここに220kΩの抵抗を介して印加されています。 スクリーン グリッドは従来の配線に戻し、第3グリッドの220kΩの反対側をAGC回路から切り離して直接グラウンドに落としてみました。 すると、安定化されていないスクリーン電圧の平均値は信号強度に応じてわずかに上下しますが、 受信音のピッチは信号強度に関係なく安定しています。やはり 第3局発の周波数がAGC電圧の影響を受けてわずかに変動していた のです。 3.610MHzのUSBで夜なぜか聞こえるNHK第1をこれは幸いとテストに使ってみると、 オリジナルの状態ではどうファインチューニングしても音楽の部分はまともなピッチで聞こえませんが、 6BE6からAGC電圧を取り除くと10分程度はノータッチで音楽を楽しめます。

        問題箇所は特定できました。しかしこの信号強度による周波数変動は、新品出荷時からあった問題なのでしょうか? HQ-170は決してエントリーモデルではなく、ターゲット ユーザはハイエンド アマチュアだったはずです。 この程度の受信音ピッチのふらつきは、当時は当然のものとして考えられていたのでしょうか?

        ひょっとしたら真空管が劣化しているのかなと思い、新品の6BE6に差し替えてみました。 違いは確かにあるようで、オリジナル管では80V前後であるスクリーン電圧が新品管では約65Vです。 どちらも同じ頃(1959年)に生産されたGeneral Electric製ですが、はて、なぜだろう。エミ減かな。 しかし、周波数変動の傾向はほとんど変わりません。 さらに中古の日立製6BE6に変えてみると、スクリーン電圧は75V程度ですが、安定度は変わらず。 真空管の劣化が引き起こしているのではないようです。 当時コリンズSラインの広告は長時間手放しでSSB受信ができることをことさら強調していましたから、 逆にいえばコリンズ以外はいずれも安定性に難あり、だったのでしょう。

    対策は?

        さて、対策はどうしましょうか。 もちろんAGCをかけないままにすればいいのですが、 ゲイン配分を狂わせてしまうことになってAGCの効きが弱くなるだろうし、 当然トータルゲインは上がりすぎて場合によっては60kHz初段でオーバーロードが発生するかもしれません。 AGC電圧を分圧して印加することも考えましたが、 周波数変動は信号が比較的弱いポイントに変化点があるので、あまり効果的ではありません。

        誰かの知恵を授かろうかと思いBoatAnchorsメーリングリストにポストしてみましたが、残念、期待はずれ。 これといったリプライは返ってきませんでした。ということは逆に、他のHQ-170ではこういった現象は出ていないのかもしれません。 いい方法が見つかるまで、220kΩをグラウンドに落としたまま使ってみることにしました。 ただでさえSメーターは元気に振れる受信機なのに、常時フルゲインで動作するコンバータによりトータルゲインはアップ。 いまやメーターは振れまくり状態です。40メーターバンドで北京放送にでもあわせようものなら、メーターの針が曲がるのではないかと心配します。 そこで、今まで触れないようにしていたリアパネルのメーター感度・オフセット調整トリマをいじり、 そこそこもっともらしい読み値にしました。 メーターがほとんど振れない信号でもSSBならクリアに聞こえる、というのは気持ちがいいものですし、なにしろ安定したピッチでCWを聞けるのはやはり幸せ。

    つづく・・・


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    Dec. 23, 2000 Revised.
    Dec. 29, 2000 Revised. IFT T1 back in place, receiver revived.
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