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Hammarlund HQ-170
Amateur Band Shortwave Communications Receiver
(1958) |
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移転後のラボではこの巨大受信機をつつくためのスペースがありません。
ので、しばらくマニュアルを読んで座学といきましょう。
以下はHQ-170純正マニュアルを和訳したものです。
訳レベルはあえて、比較的直訳に近いものとしてみました。 |
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ううむ、なんともゴージャスな構成でありませんか! で、このマニュアルにはなぜか記載がないのですが、テレクロンと呼ばれる時計はタイマー機能を持っています。 朝目を覚ますとすでに受信機はウォームアップ完了、 というのは早朝のDXハンティングに実に便利であったに違いありません。 |
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TUNING (main) HQ-170を初めて見ると、二つの扇型ダイヤルと二つの大きいノブが目につきます。 左右どちらかがメイン チューニングで、もう一方がバンド スプレッドだろう、と考えるのはある種当然かもしれません。 実際には左側の大きなノブがメイン チューニングで、 このつまみを回すと左右両方の扇型ダイヤルが同時に回転するのです。 しかも、左右のダイヤルは回転速度が違います。これには正直言って不意打ちを食らった感じでした。 メイン チューニングつまみのシャフトにはフライホイールが取り付けられていますが、 回転抵抗は小さくはないので慣性で回りつづけるわけではありません。 このシャフトに取り付けられた小さなローラーが、左側の円形ダイヤルの外周を回します。 ダイヤルの中心は6連のメインバリコンに直結されていて、したがってバリコンが回ります。 プラスチック製のダイヤル盤そのものが減速機構になっているのです。 このため左側ダイヤルには180度の範囲に目盛が刻まれています。 全チューニング範囲をチューニングつまみ5回転でカバーします。減速比は1:10。 |
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右側ダイヤルの中心シャフトは、左側メイン バリコンのシャフト(メイン バリコンのシャフト)と糸掛けで接続されています。
ダイキャスト製のプーリーと金属撚り線でできているこの糸掛けは、いかにも精密な作り。
右側プーリーの左側プーリーよりも小さく、したがって右側ダイヤルは左側ダイヤルよりも早く回転します。
右側ダイヤル盤には約300度にわたって目盛が刻まれています。 左側ダイヤルには160/80/40そして20メーターバンド用の目盛。 右側には15/10/6メーターバンド用の目盛と、ロギングスケールが刻まれています。 ダイヤル盤は不透明白色で、電源ON時は裏側からランプで照らされ透過照明になっています。 赤い細い目盛り線は透明な扇型プラスチックに刻まれており、 エスカッション右側の何も表示のない小さなつまみで左右に動かすことができます。 これと内蔵100kHzキャリブレータを使用して周波数の較正を行います。 ダイヤル エスカッションはダイキャスト製で、光沢のないダークグレーにペイントされています。 このペイントは簡単に剥れてしまうため、レストア済みHQ-170/180ではたいていリペイントされているようです。 |
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VERNIER TUNING これは目盛つきのファイン チューニングと呼べるもので、受信周波数を±3kHzの範囲で可変することができます。 つまみは同軸減速でミゼット単バリコンを回します。 このバリコンは第3局部発振周波数を変化させます。このためどのバンドでも周波数変化幅は±3kHzとなっています。 同軸減速されたシャフト部から赤い指針がつまみのフランジから少しはみ出す形でパネルに出ており、 この指針により周波数変化量を読むことができます。つまみは5回転とすこし回ります。 |
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NOISE LIMITER CW/SSB受信時はノイズリミッタとして、AM受信時はスケルチとして動作します。 このコントロールはOFFポジションをもつポテンショメータで、双2極管6AL5の動作点を調整できます。 AM時のスケルチ動作はFMトランシーバのように音声信号が明確にON-OFFされるものではなく、 目的信号がないときの外来ノイズが聞こえないほどにつまみの位置を上げてしまうと、 信号が入ってきたときの復調音もかなり小さくなってしまいますし、 また音質の劣化も顕著です。このため実用性には疑問があります。 レベルを最低に絞っておいても、強力な信号の場合は波形のピークが削られる形となり、音質に影響してしまいます。 一方イグニションノイズのように強烈なパルス性のノイズに対してはかなり良く動作します。 AVC OFF-SLOW-MID-FASTのポジションがあり、AGCのディケイ時定数を切り替えます。 またOFFポジションではAGC動作が停止します。4ポジションのロータリースイッチです。 |
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ANTENNA アンテナ トリマです。このつまみはシャシーの奥行きと同じ長さのシャフトを回します。 このシャフトの中ほどにプーリーが取り付けられており、 糸掛けでシャシー中央部に設置されたミゼットバリコンを回します。 つまみには目盛は振られていませんが、約210度にわたって回転します。 SEND-RECEIVE-CAL スタンバイスイッチです。SENDポジションでスタンバイ状態、RECEIVEポジションで通常動作になります。 またCALポジションでは通常動作に加え、100kHzクリスタル キャリブレータが動作します。 3ポジションのロータリースイッチによるこのスタンバイコントロールは、 放電安定管の出力供給をON/OFFすることにより切り替えを行っています。 本機の背面パネルにはACソケットと同じ形状をしたトランシーブ用のコネクタがあり、 2本の線をリレー等で外部からショートすることによって、SENDポジションのままで通常受信動作させることができます。
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AF 音量調整です。ごく普通の1MΩのポテンショメータで、ノイズリミッタを通り抜けた音声信号が印加されます。 ワイパーから取り出された信号は6AV6の3極管部で増幅され、ついで6AQ5パワーアンプを駆動します。 ポテンショメータのグラウンド側には抵抗が入っていて、ここにスピーカからのフィードバックが入ります。 TUNING RANGE MCS バンド切り替えです。ロータリースイッチにより、7つのアンテナコイル/RFコイル/オシレータコイルを切り替えます。 RF 電源スイッチ兼用の、感度調整つまみです。 これは結構特殊で、スイッチつきの10kΩ/1.5kΩの2連ポテンショメータです。 1.5kΩポテンショメータは高周波増幅管6BZ6のカソード抵抗を、 10kΩポテンショメータは455kHz中間周波増幅管6BA6のカソード抵抗を変化させます。 スイッチは電源ON-OFFで、テレクロン電気時計のタイムスイッチと直列に接続されています。 最初この受信機を入手したとき、 このRFつまみでスイッチをいれても電源が入らないので電源トランスが故障しているのかと思い失望しましたが、 テレクロン スイッチがOFFポジションになっていたためでした。 RFゲイン コントロールは時計方向に回すと感度が上がりますが、 一杯に回し切った位置ではポテンショの接触不良があるとみえて感度が低下します。 すこし戻したあたりで使えば問題はありません。 |
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SIDE BANDS SIDE BANDSつまみは、 第3 (60kHz) 中間周波数段のIFTの接続を切り替えることによりLSBのみ通過/USBのみ通過/LSB・USBともに通過を選択します。 ウエハを8枚持つ、長く複雑なロータリースイッチです。 SELECT KCS 60kHz中間周波数段の選択度を切り替えます。これもウエハ4枚からなる複雑なロータリースイッチです。 60kHz中間周波数増幅は6BA6で2段、ついで6BV8で増幅される3段構成です。 このうち、2本の6BA6のゲインはこれら2つのロータリースイッチによって切り替えられます。 SIDE BANDSスイッチのつまみは純正品ではありません。本来はSELECT KCSスイッチと同じ物がつきます。 |
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SLOT FREQ 455kHz中間周波段に設置されたスロットフィルタの同調周波数を調整します。 スロットフィルタはパッシブ型のノッチフィルタであり、 このつまみは同軸減速されて単連のミゼットバリコンを回します。 バーニアチューニングつまみと同様に、 シャフト部から赤い指針がつまみのフランジから少しはみ出す形でパネルに出ており、 この指針により周波数変化量を読むことができます。つまみはおよそ3回転半回ります。 通常の使用時は、スロット周波数はプラスあるいはマイナス5kHzのどちらか目一杯に回しておきます。 SLOT DEPTH ノッチの深さを調整します。このつまみはポテンショメータを回し、同調回路のQを変化させます。 調子が悪いのかどうか、まわしてもほとんど変化がありません。要チェック。 |
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AM-CW/SSB AM受信とCW/SSBの受信を切り替えます。 2ポジション ロータリースイッチによるこの切り替えは、検波回路の出力切り替え、 BFO管とプロダクトディテクタ管の動作ON/OFF、そしてノイズリミッタ回路の挙動の切り替えを同時に行います。 このスイッチの動作は、AGC動作やサイドバンド選択機能とは独立しています。
BFO KCS CW/SSB受信時に、BFOの発振周波数を±2kHzの範囲で可変します。 BFOは12AU7 双3極管のAセクションを使っており、中心周波数は60kHzです。 このつまみは180度回転し、BFO同調回路に入っているミゼットバリコンを回します。 BFO出力はグリッドから取り出され、 プロダクトディテクタを構成している双3極管12AU7(V9)の片側のグリッドに注入されます。 |
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CARRIER LEVEL 65mm角のSメーターは、内側からランプで照らされ、白地に黒のシンプルな目盛で読みやすく作られています。 12AU7双3極管の片側、V13BがSメーターアンプとして働きます。 グリッドにAGC電圧が直接印加され、メーターはカソード・プレート間の電位差をブリッジで表示します。 シャシー背面にゲインとゼロ点を調整できるポテンショメータが配置されており、 容易にメーター較正を行うことができます。 AGC電圧は専用の2極管で発生され、BFO信号の影響を受けません。 このため、メーターの挙動はAM受信時もCW/SSB受信時も変わりません。 さらに、RF GAINコントロールで感度を落としていった場合は、メーターのゼロ点は変動せず、 振れ方が小さくなっていきます。個人的に大変好みの挙動です。 AGCの時定数をAVCつまみで切り替えた場合にメータの指示が変わらないよう微妙な工夫がなされているのもきめ細やかです。 AVC OFFポジションでは振れ具合はかなりオーバーなものになってしまいますが、 まあそこまでは手が回らなかったというところでしょうか。 |
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この厚い堆積物はいったいどのように形成されたものなのか。
おそらく小屋とか納屋とか屋根裏部屋におそらく20年以上、ひょっとしたら30年近くも置かれたままだったのでしょう。
ボートアンカーのニュースグループに、積もった埃をみればカリフォルニアで使われていたものなのかアリゾナなのか、
はたまた東のほうかがわかる、との投稿がありましたが。 ともあれ、まずは絞った濡れ雑巾でざっと拭いて、堆積物をおおむね除去しました。 やはりシャシーの表面は痛みが気になります。 ので、泥沼にはまると知りつつも、スチールウールと金属研磨剤で磨き始めてしまいました。 というのも、磨けば当然きれいにはなりますが、均一に仕上げるのは至難の業です。 案外に、磨かないでおいたほうが違和感がなかったりしますから。 それこそ何十時間もの間ひたすら磨く覚悟でなければなりません。 |
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昨夜は 2時間以上も磨いたのに、まだ10分の1も終わっていません。
やれやれ大変だなあと思いつつ電源スイッチを入れると、
真空管が動作を開始して音が出だすと同時にパチパチと小さな音がします。
その音はスピーカからだけではなく、受信機そのものからも出ています。
あれっ、と思って覗き込むと、異臭と同時にシャシーの下から
もくもくと煙が出はじめました! あわてて電源を切ったときには、 すでにラボから出た異臭はキッチンにもリビングにも漂ってしまいました。 「なにまた燃やしてんのよ!」とヨメの苦情。 受信機を横倒しにして調べると、燃えたのは第1周波数変換管6BE6の1kΩのプレート抵抗、R9でした。 炭化してしまった小さなソリッド抵抗をつついたら、ポキッと折れてしまいました。 はて、どうしてこれが燃えるのだろう? 6BE6の内部で電極ショートでも起きたのかなと回路図を眺めながら考えます。 電源を入れていないとき、プレート抵抗が入るべき部分の両端には明確なショートはなく、 大電流が流れそうにはありません。 パーツボックスから取り出した1kΩを取り付け、注意しながら再度電源を投入してみます。 と、プレート抵抗はやはり光りだしてしまいました。 あわててスイッチを切ったのですが、その直前、 プレート抵抗とは違う場所で青白いスパークが断続して飛ぶのが見えました。 一瞬のことだったのではっきりとは断定できなかったのですが、 スパークが飛んだのはどうやら6BE6のプレート側に入っている中間周波トランスの内部のようです。 回路図を参照しながらテスターで周辺の抵抗値を測ってみると、 中間周波トランスの端子の間で、本来は絶縁されているはずの部分に約20kΩの導通があります。 事故後最初の点検で導通がないと思ったのは、アナログテスタを低抵抗レンジで使ったので針が振れなかったためでした。 しかもそのターミナルをゆすると、抵抗値が変化します。 いよいよIFT自体が怪しくなってきました。 でもなぜIFTが? 直前まで行っていた作業を考えれば、 スチールウールの断片かアルミの微粉末を含む研磨剤がIFTのケース内に侵入してしまったのだ、とするのが妥当でしょう。 げげ、作業ミスで壊しちゃった!! しかもこのIFT、普通の455kHzのじゃないんだよ! スペア入手はほぼ不可能! 2000-05-19 T1焼損 |
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これは数年がかりのプロジェクトになるかもしれないと恐れつつ、問題のIFTを取り外しました。
アルミケースのカシメをこじ開けて中身を取り出すと、プラスチック製のベース部分に見事なスパーク痕が残っています。
でも不思議なことに、スチールウールのかけらとか、研磨剤の残渣物のようなものは見られません。
すべて燃えてしまったのでしょうか。
これを勤務先の材料研究所に持ち込んで元素分析を依頼すれば、あんさんこりゃスチールウールでっせ、
とかなんとかのレポートが手に入るかもしれませんが・・・。 このIFTは3つのコイルと6つのターミナルを持ち、それぞれのコイル間には接続はありません。 にもかかわらず、3つのうち2つのコイルの間に80kΩの導通があります。 幸い、コイル巻線自体は断線していないようです。 異常導通は、プラスチックベース部分にありそう。 見るとベースは、2つのプラスチック製部品が背中合わせに金属クリップで留められた構造をしています。 合わせ面に研磨剤が入り込んじゃったんだろうか。 |
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片側の3本のコイルリードを外し、クリップを外してベースを分解してみました。
すると、2つのプラスチック部品の間には透明な、3枚の雲母のようにも見える透明フィルムがはさまっており、
真中のフィルムには鈍い銀色をした材料がおそらく印刷技術によって塗布されています。
そうか、これがIFT内部のキャパシタを形成しているんだ。
そして、このフィルム電極の一部分が焼けこげています。 このフィルムは多少は曲がりますが、さほど柔軟性はなく、軽く力を加えたらパリッと折れてしまいました。 どうやら故障の原因は異物混入ではなくて、IFTのケースを磨いたときに、 ケースとベースに加わった力によって脆くなっていた絶縁フィルムにひびが入り、 コイルターミナル間がキャパシタ電極用の銀色材料を介して導通してしまったものではないかと考えられます。 |
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ここの絶縁が破れれば、回路上は1kΩのプレート抵抗を通ったB電源がフィルム上の電極材料を流れ、
本来絶縁されているはずのターミナルからシャシーグラウンドに落ちます。
この故障モードの場合はコイル自体には電流は流れません。これが、コイル自体は焼け切れなかった理由でしょう。 さあそうなると・・・。 焼けたフィルムはどうしようもなく、結局全てのフィルムをIFTから取り除いて組み立てなおしました。 コイル間の異常導通はなくなり、3つのコイル自体はおそらく使用可能でしょう。 フィルムが形成していたキャパシタの代わりのものを、シャシー下面に取り付ければいいことになります。 でも、いったい何pFのキャパシタをつければいいのだろう? IFT内部のキャパシタなので、HQ-170の回路図にはキャパシタのシンボルはあってもその容量は記載されていません。 トリマで試すか、トライ アンド エラーでさまざまな容量のものを試すか? ディップメータやキャパシタンスメータがあれば助かるのかもしれません。 |
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夏は深夜でも居られないほど暑いのに、さすがに12月ともなるとラボも冷え込みます。
問題の中間周波トランスの修理は全く進んでいませんが、とりあえず17本の真空管に火をいれて温まることにします。
中間周波トランスなしでは当然何も聞こえませんので、低周波段のテストでもしましょうか。 マニュアルの動作原理の項にあるように、 HQ-170のオーディオアンプには可変ネガティブフィードバック方式が採用されています。 これはオーディオ出力トランスの2次側巻線から信号を取り出して音量調整ポテンショのグラウンド側に戻す方法です。 Radio Designer's Handbook から抜粋した動作原理図をここに示します。 ボリュームコントロールがフルの場合は6AV6の入力に占めるネガティブフィードバックの比率が小さくなり、 ボリュームを絞れば絞るほどネガティブフィードバックの割合が高まる、という方式です。 簡単なので(動特性解析までやるのはアマチュアには荷が重過ぎますが・・・)、既存の受信機にも応用できそうですね。 しかし、トランス2次側の負荷によって動作が影響を受けそうなこと、 また音質調整と音量調整を独立して行うことができないことを考えると、 所詮はチープな方法でしかない、ともいえます。 CDプレーヤからのオーディオ信号をポテンショメータの上側に注入して試してみると、 可変ネガティブフィードバックの効果ははっきりわかります。 フル ボリュームの位置ではちょうどバス・トレブル トーンコントロールを両方とも絞りきった感じの音になり、 またミニマムボリューム付近ではハイハットやシンバルの音もはっきりとした、FMラジオ並の音になります。 しかし小型の出力トランスを使ったHQ-170の6AQ5シングルパワーアンプは、 当然のことですが、オーディオ用としては能力不足です。 Bob Culbertson の"A Moment In Time"を聴いてみると、思いのほか低周波成分が強く、再生音はかなり濁ったものになってしまいます。 チャプマンスティックでこんな豊かな低音が出るんだなあと逆に感心。 HQ-170のオーディオゲインコントロールのポテンショメータには軽いガリがありましたが、 例によって Safety Wash を2度ほど吹きかけたら回復しました。 ハムは気にならず、ノイズもありません。 |
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オーディオ段の総合ゲインはちょっと低いような気がします。
出力管の各ピンの電圧を測定してみました。
プレート回路の抵抗値、
たとえば出力トランスの1次側巻線など・・・が少なめのほかは、特に異常は見当たりません。
(1) : Measured with Systron Donner Model 7004A Digital Multimeter in 100kOhm range. (2) : Meadured 8,3V on Dec.03, 2000. Measured 15.0V on Dec.16, 2000. Why...? (3) : Schematic drawing shows 500kΩhere. 6AQ5のカソードには、430Ω 1Wの抵抗と、それに並列に40μF 25Vのバイパスが入っています。 これはシャシー上の円筒形ブロックキャパシタのひとつのセクションです。 容量減の可能性をチェックするため、さらに並列に47μFをつないでみました。 出力はほとんど変わらず、よってバイパスキャパシタは正常であるといえます。 この受信機では、 電源平滑と音声出力バイパスのためのこのブロックキャパシタを除けば他は全てマイカキャパシタかセラミックで、 したがってリキャップの必要性はほとんど無いのではないかと思われます。 この受信機とほぼ同時期に製作された CRV-1/HB では大半のキャパシタを交換したのに比べると、あらためて品質の高さがわかります。 マニュアルの真空管各端子の抵抗値表ではグリッドピン抵抗値の読みは470kΩですが、 回路図上ではグリッド抵抗は500kΩになっています。 どうもこのマニュアルは細かい誤記、あるいはランチェン時のアップデート漏れのようなものが多いようです。 初段低周波増幅管6AV6のプレート負荷抵抗と出力管6AQ5の段間結合は、 Sprague社製のキャパシタが3個と抵抗2個が一つにまとめられた部品が使用されています。 回路図によればこの一体型部品のうち6AV6のプレートと6AQ5のグリッドをつないでいるキャパシタの等価容量は0.01μFです。 ここに外部でさらに0.01μFを並列につなぐと、やや高音が抑えられるだけで音量は変わりません。 出力段には目立ったトラブルがなさそうなので、低周波増幅段に移ります。 ここで使われている6AV6、あるいは12AV6といえば、5球スーパーの検波・初段低周波増幅用として大変ポピュラーです。 HQ-170ではAM検波は6BV8のダイオード部分、SSB/CWでは12AU7のプロダクト検波を使います。 6AV6のダイオード部分は、ディレイドAGCゲートとして利用されています。
(1) : Schematic drawing shows 500kΩhere. プレート負荷抵抗は前述の一体型パーツに組み込まれた500kΩ。 プレート電圧は5%減でまあ正常なレベルですが、抵抗値はどうも高そうです。 グリッド抵抗もちょっと高め。 ディレイドAGCゲートの電圧は低めですが、入力信号に応じて-1.6V程度まで負に高まります。 ここではとりあえず正常としておきましょう。 |
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中間周波トランス焼損事故の前の日に測定した結果では、
短波帯での受信機の感度はかなり優秀なものでした。
したがって、中間周波段各部の調整はほとんど狂ってはいないだろうと思われます。
が、まずは第3周波数変換段の局部発振周波数をチェックしてみました。 第3周波数変換管6BE6(V5)は自励式のコンバータとして動作し、 455kHzの第2中間周波数を60kHzの第3中間周波数に変換します。 局部発振周波数はしたがって395kHz。 この周波数はフロントパネルのバーニアチューニングダイヤルで±3kHzの範囲で可変できるようになっています。 このコントロールは単バリコンを同軸減速シャフトでまわすことによって行います。 この局部発振周波数を周波数カウンタで測定したところ、385kHzでした。 10kHzほど低い値でしたが、これは周波数カウンタを6BE6の第1グリッド、 つまり共振回路に直に接続したために同調点が狂ったためでした。 6BE6のプレートから信号を取りだして周波数を測定してみると、 わずかにずれはあるものの395kHzを中心に発振していました。 シャシー上の局発コイルL4を調整し、 バーニアチューニングダイヤルの指針が0のときに正しく395.0kHzになるよう調整しました。 波形は厳密な正弦波よりも若干丸みを帯びていますが、局発出力は出力レベル、周波数とも十分に安定しています。 |
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普段使っているシグナルジェネレータ ―
目黒MSG-2161
と
LODESTAR SG-4162AD
―
のどちらも、最低周波数は100kHzで、60kHzは出せないことに気がつきました。
別のジェネレータ、
岩通SG-4111
なら60kHzも出せますが、出力アンプ周辺の故障の修理中で実用できない状態です。
よって455kHzを第3周波数変換管に注入した状態でテストを続けます。 6BE6の第3グリッドに455kHzを注入してSメータの振れがS9になるためには、 出力を89dbμにもする必要があります。 HQ-170は60kHz中間周波増幅段として3段増幅していますので、これはちょっと感度が低いような気がするのですが。 あるいは、60kHz中間周波増幅段はLSB/USBの切り替えも含めて選択度を確保するのが主目的で、 各段のゲインは低めのセッティングなのではないかとも考えられます。 |
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455kHzの中間周波数は定番の6BA6(V4)で増幅されます。
この管はAGC制御されるとともに、カソードに入ったポテンショメータでマニュアルゲインコントロールを受けます。
6BA6の出力と次段の第3周波数変換段の間に、スロットフィルタと呼ばれるノッチフィルタが挿入されています。
SLOT FREQと表示されたつまみは同軸減速されてノッチ同調回路のバリコンを回します。
またSLOT DEPTHと表示されたつまみはポテンショメータで、回路のQを可変しています。 スロットフィルタをスルーするスイッチはないので、 通常時はスロット周波数を+5kHzまたは-5kHzのどちらか目一杯に外しておきます。 このことはマニュアルに書かれているのですが、 無線機ショップの店頭で展示機を触ったお客さんがスロット周波数つまみを中央の0kHzに合わせてしまい、 HQ-170は性能が悪いと思いこんでしまう ことも多かったようです。
Measured : Dec.16, 2000 with Systron Donner Model 7004A Digital Multimeter (1) : Gmax = Control at MAX RF Gain, Gmin = Conrol at MIN RF Gain 6BA6の各ピンの電圧を見るに大きなトラブルはなさそうですが、不思議なことに、 この6BA6のグリッドにシグナルジェネレータの信号を注入した場合、 同じ出力を得るには後段の第3周波数変換段に注入するよりもパワーを要します。 はて、インピーダンスマッチングの関係かなあ、それとも455kHzの中間周波トランスの調整が狂っているのかなあ? で、試しにトランスの調整をしようとしたら・・・ああっ、違うトランスを回しちゃった!! 間違えて60kHz段の調整をぐちゃぐちゃに狂わせてしまいました。 とほほ。なにしろトランスがたくさんあるもんで・・・。 とりあえずだいたいの再調整はしましたが、ここはあとでもう一度、じっくり再調整しましょう。 なにしろここでLSB/USB/BOTHのサイドバンド切り替えと、0.5/1/2/3kHzの選択度切り替えが実現されているからです。 感度も選択度も再生音質にも左右する部分。60kHz段の調整はHQ-170のキモのようです。 |
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第2周波数変換回路は、第1中間周波数3.035MHzを第2中間周波数455kHzに落とします。
ペンタグリッド管6BE6(V3)による自励式のコンバータで、局部発振は2.580MHzの水晶発振子によって行われます。 受信バンドが1.9MHz帯または3.8MHz帯の場合は第1中間周波数はすでに455kHzなので、2.580MHz局部発振は停止し、 この段は単なる455kHz中間周波増幅段として動作します。 6BE6の7ピン、第3グリッドに3.035MHzを注入してテストしてみると、 S9を得るのに必要なジェネレータ出力は83dbμ。 また信号が確認できるレベルはAMで35dbμ、SSB/CWで20dbμ程度。 455kHzを1ピン、第1グリッドに注入すると、S9を得るのに必要なジェネレータ出力は78dbμ程度。 各ピンの電圧をチェックしてみると、あれ、第1グリッドの電圧が低い。 どうしてだろう。3.035MHz注入で受信できているのだから、2.580MHzの局部発振は動作しているはずです。 調べてみると、ここも回路図との差異があり、 第1グリッドに入っている抵抗の値が異なっている(回路図で22kΩに対して実機では47kΩ) ほか、 実機ではカソードとRFチョークの間に160Ωの抵抗が入っています。 カソードバイパスキャパシタC14は2つになり、 160ΩとRFチョークのそれぞれに並列に入っています。 160と80メーターバンドではカソード回路のRFチョークはパイパスされますが、 カソードは直接接地されるのではなくて、160Ωの抵抗が入っています。 したがって下表の抵抗値測定結果は正常であるといえます。 |
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Measured : Dec.17, 2000 with Systron Donner Model 7004A Digital Multimeter (1) : Schematic diagram shows 22kOhm as R10, while the actual receiver has 47kOhm. 音声変調を掛けた455kHzの信号をこの6BE6に注入して数日間モニターしてみましたが、 動作は安定しており、とりたてて問題には気がつきません。 この段以降には周波数変換が2段と中間周波数増幅が4段もあることを考えると、 トータルな利得が低いようにも思われますが、やはりそういった設計なのかも。 さあ、そろそろ問題のIFTと第1周波数変換段にチャレンジする段階のようです。 |
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第1周波数変換段は、
ペンタグリッド管6BE6(V2)を使った混合回路と三極管6C4(V12)を使った局部発振回路で構成されています。
6C4の発振出力はカソードからキャパシタを介して取り出され、
混合管の第1グリッドに注入されます。
現状では中間周波トランスT1がないので、6BE6のプレート電圧がかからず動作していません。
ちなみに、この段の6BE6/6C4そして高周波増幅管6BZ6のソケット周辺は、
バンド切り替えロータリースイッチとトリマおよび発振コイル群の下に隠れてしまっていて、作業性は最悪です。 マニュアルの解説にあるように、第1周波数変換段は使用するバンドによって動作が異なっています。
そうすると、問題の中間周波トランスT1は、 160および80メーターバンドでは455kHzを取り出して次段に伝え、 それ以外のバンドでは3035kHzを伝達することになります。 これが、コイルを3組持つIFTの理由です。 |
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もう一度第1周波数変換段周辺回路図を右に示します。 回路図上でT1の下側の共振回路が455kHz用です。 中間周波数が455kHzのとき、周波数が低いので信号は上側共振回路のコイルを通過し、 下側の455kHz共振回路の両端に現れます。 この信号はキャパシタC134を介して取り出され、 同様の構成を持つ中間周波トランスT2の下側共振回路に伝えられ、 第2周波数変換管の第1グリッドに注入されます。 一方中間周波数が3035kHzのとき、T1の上側共振回路の両端に信号が現れます。 今度はキャパシタではなく、3つめのコイルによって信号が取り出され、 第2周波数変換管の第3グリッドに注入されます。 周波数が高いので、信号はT1の下側のキャパシタを通過します。 実機のT1周辺の配線をよく見ると、これまた回路図との相違がみつかりました。 このトランスからバンド切り替えロータリースイッチに伸びており、 455kHzで動作する160と80メーターバンドでは上側の3035kHz用コイルがスイッチによりショートされ、 それ以外のバンドでは下側の455kHz用コイルがショートされます。 せっかく第1混合管6BE6のプレートとトランスT1の約5cmの接続に同軸ケーブルを使っているのに、 マイナーチェンジで追加したと思われるこの配線は単なるビニール線。 動作原理的には無理を減らした改善ですが、ちょっと竜頭蛇尾的な趣があります。 |
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事故発生から実に7ヶ月もたってしまいましたが、いよいよ中間周波トランスT1を元に戻しました。
トランスのベース部分は熱可塑性プラスチックでできていて、
分解時に半田こての熱でずいぶん変形してしまいました。
これ以上半田こてを繰り返しあてていると、復旧できないほど変形が進む恐れもあります。
そこですぐ近くにラグ板も取り付け、ここに追加のキャパシタを取り付けることにしました。 配線を復元して3.8MHzの信号をアンテナ端子から注入してみると、感度は低いながら受信できています。 パーツボックスをあさって、455kHzコイルに並列に入れるべきキャパシタを探してみましょう。 45pFから450pFの範囲でいくつかテストしてみると、ちょうど100pFを使ったときにベストの性能になります。 トリマを取り付けることも考えましたが、コイル側での微調もできるので、 最終的に100pFのセラミック キャパシタで決着しました。 IFT組み込みのキャパシタの構造からして、3035kHz側のキャパシタもほぼ同一容量でいいはずです。 ところが14MHzの信号を入れてテストしてみると、 どういったわけかキャパシタを全く入れない場合がベストの感度になります。 中間周波数3035kHzを使う各バンドでは、 455kHzを使う160メーターおよび80メーターバンドにくらべ心持ち感度が低くなっています。 なにか見落としがあるのかなあ。 よく回路図を見てみると、T1とT2のIFTのリンクコイルを結んでいる部分に560pFのキャパシタが入っていますが、 実機ではそもそも該当するものを見つけられません。 試しに何種類かのキャパシタを入れてみましたが、感度が低下こそすれ改善されません。はて。 ともあれHQ-170は久しぶりに、シグナルジェネレータの信号ではなく実際の電波を受信するようになりました。 第1局発トリマを調整してダイヤルの読みを較正し、RFトリマも再調整しました。 各バンドでひととおりチェックしてみると、おおむね以前の感度を取り戻していてることがわかりました。 直った・・・! 2000-12-24 T1焼損事故 修復完了 |
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さすがに17球のトリプルスーパーヘテロダイン、調整はまだ不十分なはずですが、
年末年始の休みで賑わうアマチュアバンドを存分に楽しむことができます。
ずっしりした操作感のメインチューニングつまみは早送り操作は苦手ですが、
バックラッシュは全く気になりません。
7MHz帯ではダイヤル1回転での周波数変化は約60kHz。
どんぴしゃゼロインするには少しばかり慎重に操作する必要がありますが、
それが面倒ならばバーニアチューニングで精細な微調ができます。 各つまみは基本セッティングのままでも十分な性能を発揮しますが、 多くのコントロールを操作してベストな受信状態に持っていくのは、HQ-170を使いこなす楽しみです。 特にQSOパーティで超過密状態にある7MHz帯では4段の選択度切り替えは不可欠ともいえるし、 近接混信を回避するためにスロットフィルタは強力な武器となります。 本機のIFフィルタはセンター周波数をシフトすることはできませんが、 バーニアチューニングとBFOピッチコントロールを操作すれば同じ効果が得られます。 このような状況で聞き比べてみるとコリンズ51S-1よりもやはり有利。 |
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14MHzのSSBでOMさんのラグチューを聞いてみると、明らかな周波数ドリフトが見られます。
電源を入れて10分程度してからチューニングしても、
その後数分に一回の割合でバーニアチューニングで追いかける必要があります。
この主要因はやはり第1局発の安定度で、
特にシャシー裏面のオシレータトリマやパディングキャパシタは温度に大変敏感です。
安心して使うためには1時間程度はウォームアップをしておく必要がありそうです。 受信強度に応じた周波数変動も見られます。 SSBではほぼ気になりませんが、CWでははっきりとわかります。 原因は不明。 60kHz中間周波段の再調整も必要です。 LSBポジションとUSBポジションとで感度の差がはっきりと残っており、 パスバンドのセンターもきちんと出ていないようです。 その他は各コントロールとも動作していますが、AVCコントロールはFAST-MID-SLOWとの差があまりありません。 SLOWではもう少しディケイをゆっくりにしてもいいように感じられます。 フロントパネルはタバコのヤニでかなり汚れていますので、つまみをひとつずつ外して磨きました。 ヤニ汚れに最適なのはやはり石鹸水。塗装へのダメージの心配もありません。 汚れがきつい部分はシンプルグリーンの希釈液を使いました。 セーフティウォッシュをちょっとだけ使ってみたら汚れは見事に落ちますが、 パネルの塗装表面も荒らしそうだったので止めておきました。 フロントパネルに出ているビスのうち、 時計を固定しているものとBFOピッチおよびスロットフィルタのバリコンを固定しているものは頭のサビが汚いので新品に交換します。 ダイヤル目盛の透明プラスチックは内側に汚れがありますのでそのうちパネルを分解したときに掃除することにします。 QSOパーティをワッチしながら半日掃除したら、顔つきはかなりシャキッとしてきました。 きれいになってうれしいのか、HQ-170はもともと大盤振舞いのSメータをいっそう元気良く振らせています。 |
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現状ではAGCのディケイがSLOWにしても早すぎるように感じられます。
また、特にFASTにしたときに復調音質の劣化が気になります。 HQ-170のAGC電圧は、トリプル2極管6BV8(V8)のひとつのセクションを使用したダイオードで生成されます。 AGC電圧平滑用のキャパシタは0.25μFで、AGCアタック時はこれを47kΩの抵抗で充電します。 AGCディケイ時はキャパシタの電圧は抵抗を介してグラウンドに放電されますが、 この抵抗をロータリー スイッチで切り替えるしくみになっています。 またOFFポジションではAGCラインは4.7MΩを介して接地されます。 MIDとSLOWのポジションでは、Sメータアンプのプレート側分圧抵抗に別の抵抗が並列接続されます。 AVCつまみのポジションを変えたときにSメータの振れ具合が変化しないようにする工夫だと思われます。
AGCライン電圧をオシロスコープで観察してみると、 SLOWにセットした状態ではアタックとディケイの時定数の違いのため音声に応答したノコギリ波状になっています。 FASTポジションでは音声信号成分がそのままの形でかなり残っていることがわかります。 これでは音質に影響を与えても不思議ではありません。 試しにAGC平滑キャパシタに別のキャパシタを並列接続してみました。 2μFをつなぐと、SLOWポジションでのディケイが遅くなりすぎて早いフェーディング時やチューニング時に応答しきれません。 1μFをつなぐと各ポジションとも適当かなといった感じで、特に問題点もなく、 また復調音質はかなり聴きやすくなりました。 ところが実際に1μFを取り付けてみると、2μFの時と同じ程度の重さになってしまいます。 何の事はない、接続していたオシロスコープとデジボルが影響してディケイ時間が半分程度になっていたのです。 SLOWで遅すぎる感じになってしまっていますが、 とりあえずこのまま使ってみましょう。音質はかなり聴きやすくなりました。 2001-01-13 AGC回路小変更 |
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マニュアルの謳い文句を読む限り、
この受信機には周波数安定性を確保するための工夫や注意がじゅうぶんに払われているようです。
しかし実際に14MHzのSSBやCWをモニタしていると、
電源投入からけっこうな時間がたっても周波数は絶えずゆっくりと一定方向に変化していきます。 そこで周波数ドリフトの傾向をシグナルジェネレータを使って調べてみました。 受信機のダイヤルを144.150MHzにセットしてコールド状態から電源を入れ、 受信機側は全く触れずに、 シグナルジェネレータ側の周波数を変化させてゼロビートとなる周波数を2時間にわたって測定してみました。 季節は1月、室温は約12度です。 ケースは外したままですのでシャシー上面にはごくわずかな空気流があります。 シャシー下側は対流以外に外部からの空気流はほとんどないはずです。 グラフからわかるように、受信周波数が安定するまでには実に2時間を要しました。 トータルのドリフト量は11kHzもあり、これではSSB/CWの安定受信など望むべくもありません。 選択度を最もナローな0.5KHzにした場合は、5分程度でパスバンドの外に出てしまいます。 これが果たしてHQ-170本来の性能なのか、それとも素子の経時劣化によるものなのか、 はたまた中間周波トランスの素人修理に起因するものなのか・・・ 都合11kHzの変化幅というのは Lafayette HA-230(Trio 9R-59) に比べれば少ないものの、 30分のウォームアップの後の変化量を見ればむしろHQ-170のほうが分が悪いことになります。 し、松下のコイル パックを使った自作高一中二 CRV-1/HB の方が優秀ということになります。 せっかくの高級受信機、これは要対策です。 完全とはいかないにしても、 おそらくオシレータコイル部に入った温度補償キャパシタの温度係数のチューニングで改善は可能でしょう。 相当根気の要る仕事だとは思いますが・・・。 |
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60kHz中間周波数はV6とV7の2本の6BA6、およびV8の6BV8で3段増幅されます。
このうち2本の6BA6のカソード抵抗は、
SIDE BANDSスイッチとSELECT KCSスイッチの組み合わせによりその抵抗値が切り替えられます。
つまり、サイドバンドと選択度の設定に応じてゲインも切り替えているのです。 回路図から読むと、V6とV7のカソード抵抗値は以下のようになります。
実機において、V6 6BA6のカソード(7番ピン)にマルチメータをあてて抵抗値を測定してみました。すると、
念のためV7も測ってみると、
ほとんどの組み合わせでやや抵抗値が大きめになっています。 6.8kΩの抵抗が大きめになっていると思われますが、誤差は10%以内ですからとりたてて異常とはいえません。 それにしても、2段もある6BA6中間周波増幅段のゲインをわざわざここまで落として使うとは・・・。 やはりこれらの段の目的はフィルタの損失を補うのが目的であって、ゲインを稼ぐ目的ではないのでしょう。 お試しでカソード抵抗切替回路を300Ωの抵抗でショートしてみました。 通常のSSB受信時、たとえばLSBで2kHz幅の場合は2本の6BA6ともカソード抵抗は2.2kΩですが、 これがおよそ252Ωで動作することになります。 すると、S5ほどの信号がS9+20dB程度振れるようになり、受信機のゲインは見違えるほどに向上します。 が、復調音波形の上下が台形にクリップされてしまい、聞くに堪えない音質になってしまいます。 300Ωの代わりに2kΩでショートしてカソード抵抗を1.088kΩ程度にすると、 2kHz帯域では感度が向上し音質はさほど劣化せず。 しかし0.5kHz帯域では強い信号のとき音質劣化が認められます。 結局、ゲインを上げすぎるとどこかで飽和が起きるのでしょう。 それぞれの組み合わせで飽和が起きない上限(にすこし余裕を持たせて) にゲインを設定しているものと思われます。 いずれにせよ、この音質劣化がなぜ起こるのか、私にはまだ理解できていません。 中間周波トランスでの飽和? それとも後段の6BJV8? それとも検波段? そのうち調べてみよう。 |
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信号強度によって受信周波数がわずかに変化するのは、
AGC電圧の影響を受けているためだということがわかりました。
AVCつまみをOFFポジションにしておいた場合、信号強度による周波数変動はほとんどありません。
この周波数変動は数10Hz程度であり、CWを受信している場合に認めることができます。
AM受信の場合は全く気がつきません。 高周波増幅管のゲイン変動が影響しているのかなと考えてV1 6BZ6のグリッド電圧(AGC制御対象)を0Vに固定してみましたが、 周波数変動は残っています。まずここではなさそう。 放電安定管で生成されるB電圧は106Vでぴたりと安定しているので、 高周波増幅、第1周波数変換および第2周波数変換管のスクリーン電圧も安定しています。 さらに第1周波数変換段も第2周波数変換段もAGC制御を受けないので、 変動しているのは455kHz段以降ということになります。 455kHz増幅段で周波数変動が起こるとは考えにくいので、残るは第3周波数変換段とBFOです。 |
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第3局発の周波数を直接測定するのがちょっと難しかったので、先にBFOをチェックしてみます。
周波数カウンタで測ってみると、どうも信号強度の影響より経時ドリフトのほうがありそうです。 翌日コールドスタートからのドリフト量を測定してみました。 すると、ご覧のように電源投入から30分にわたって約125Hzのドリフトがあります。 これだけ変化すればCWおよびSSB受信時に明らかなピッチ変動となって現れます。 11kHzにおよぶ受信周波数ドリフトに比べれば大した問題ではない、といえますし、 30分経過後の変化は20Hz以内ですから、ウォームアップしてから使えば済む話ですが。 ともあれ、AGC電圧変化によってBFOの周波数が変動するということはなさそうです。 2001-02-01 BFOドリフトを測定 |
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一方、第3周波数変換管V5 6BE6はその第3グリッド(455kHz入力)にAGC制御を受けています。
また、スクリーン電圧は安定されていないB電圧から27kΩ 2Wのスクリーン抵抗を経て供給されています。
このためスクリーン電圧は当然AGC電圧に応じて変動します。
実測してみると無信号状態で約84.5V、強力な信号で約77V。10%近く変化します。 ここの電圧を安定化したらどうなるか試してみましょう。 27kΩ 2Wのスクリーン抵抗の一端を取り外し、0B2で生成されている106Vを接続してみました。 これで6BE6のスクリーン(第2・第4)グリッドの電圧は入力信号にもAGC電圧にもよらず106Vでぴたり安定しますが、 依然としてAGC電圧に依存した周波数変動が残っています。 このスクリーン電圧をオシロスコープで観測すると、第3局発信号が重畳しているのが見られます。 波形はやや非線形な正弦波ですが、その振幅が信号に応じて変動していることに気がつきました。 AVCスイッチをOFFポジションにすると、信号強度によらず安定しています。 |
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スクリーン電圧を安定化するのではなくて、この第3周波数変換管にAGCをかけないようにしてみたらどうでしょうか。 455kHz中間周波数信号は7pFのキャパシタを介して6BE6の第3グリッドに印加されており、 AGC電圧はここに220kΩの抵抗を介して印加されています。 スクリーングリッドは従来の配線に戻し、 第3グリッドの220kΩの反対側をAGC回路から切り離して直接グラウンドに落としてみました。 すると、安定化されていないスクリーン電圧の平均値は信号強度に応じてわずかに上下しますが、 受信音のピッチは信号強度に関係なく安定しています。やはり 第3局発の周波数がAGC電圧の影響を受けてわずかに変動していた のです。 3.610MHzのUSBで夜なぜか聞こえるNHK第1をこれは幸いとテストに使ってみると、 オリジナルの状態ではどうファインチューニングしても音楽の部分はまともなピッチで聞こえませんが、 6BE6からAGC電圧を取り除くと10分程度はノータッチで音楽を楽しめます。 問題箇所は特定できました。 しかしこの信号強度による周波数変動は、新品出荷時からあった問題なのでしょうか? HQ-170は決してエントリーモデルではなく、ターゲットユーザはハイエンドアマチュアだったはずです。 この程度の受信音ピッチのふらつきは、当時は当然のものとして考えられていたのでしょうか? ひょっとしたら真空管が劣化しているのかなと思い、新品の6BE6に差し替えてみました。 違いは確かにあるようで、オリジナル管では80V前後であるスクリーン電圧が新品管では約65Vです。 どちらも同じ頃(1959年)に生産されたGeneral Electric製ですが、はて、なぜだろう。エミ減かな。 しかし、周波数変動の傾向はほとんど変わりません。 さらに中古の日立製6BE6に変えてみると、スクリーン電圧は75V程度ですが、安定度は変わらず。 真空管の劣化が引き起こしているのではないようです。 当時コリンズSラインの広告は長時間手放しでSSB受信ができることをことさら強調していましたから、 逆にいえばコリンズ以外はいずれも安定性に難あり、だったのでしょう。 |
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さて、対策はどうしましょうか。
もちろんAGCをかけないままにすればいいのですが、
ゲイン配分を狂わせてしまうことになってAGCの効きが弱くなるだろうし、
当然トータルゲインは上がりすぎて場合によっては60kHz初段でオーバーロードが発生するかもしれません。
AGC電圧を分圧して印加することも考えましたが、
周波数変動は信号が比較的弱いポイントに変化点があるので、あまり効果的ではありません。 誰かの知恵を授かろうかと思いBoatAnchorsメーリングリストにポストしてみましたが、残念、期待はずれ。 これといったリプライは返ってきませんでした。 ということは逆に、他のHQ-170ではこういった現象は出ていないのかもしれません。 いい方法が見つかるまで、220kΩをグラウンドに落としたまま使ってみることにしました。 ただでさえSメーターは元気に振れる受信機なのに、 常時フルゲインで動作するコンバータによりトータルゲインはアップ。 いまやメーターは振れまくり状態です。 40メーターバンドで北京放送にでもあわせようものなら、メーターの針が曲がるのではないかと心配します。 そこで、今まで触れないようにしていたリアパネルのメーター感度・オフセット調整トリマをいじり、 そこそこもっともらしい読み値にしました。 メーターがほとんど振れない信号でもSSBならクリアに聞こえるというのは気持ちがいいものですし、 なにしろ安定したピッチでCWを聞けるのはやはり幸せ。 |