Collins 51S-1
General Coverage
Shortwave Communications Receiver (1959)
(Serial: 581)
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届いた51S-1を念入りなパッキングから取り出し、ラボのベンチの上に置いてみると、
まさにラジオ小僧の夢が現実のものになったと感じました。
名機と呼ばれる理由を、これから自分でじっくり確かめられるでしょう。
受信機は正常に動作するとのことでしたから、さっそく電源を・・・と思いきや電源ケーブルは付属していませんでした。
すでに
サープラス・セールス・オブ・ネブラスカ
で買っておいたオペレーション・マニュアルを参照してみると、
AC電源は背面の9ピンコネクタに接続されるようになっています。
さあ、これに合うコネクタなんてあるかなあ。
でジャンク箱を探してみると、実にズバリそのもののコネクタがあるではありませんか。
以前にリバモアでGT管のソケットと勘違いしていくつか買い込んでいたコネクタです。
これは幸い。 ACケーブルを半田付けして、念入りに再確認していよいよ電源を投入。
受信機はすぐに、はるかヨーロッパからの電波を受信しだしました。 いままで使っていた真空管式受信機との違いのひとつはすぐにわかりました。 安定している・・・! まさにロック・ソリッドという言葉がふさわしい安定度です。 一度ダイヤルを合わせてしまえば、 放送が終了するか伝播状況が悪化してノイズに埋もれてしまって違う局を探すまで、 何も操作する必要がありません。 翌日電源を入れたら、昨晩聴いていた局がいきなりゼロインしています。 音も聴きやすく、長時間のリスニングも疲れません。 その音の良さからラボのメイン・ラジオとして3年間君臨していた エコーフォンEC-1A はこの夜、その座を51S-1にあっさり明け渡しました。 |
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型番に"S"の文字が入っているし、
なによりフロントパネルもキャビネットもSラインならではのインダストリアルデザインを採用していますから、
51S-1はコリンズSラインのメンバーだと思われてしまいますね。
しかし51S-1は、その生い立ちも、また設計のいくつかの点でも、Sラインではないことが明らかです。
51S-1にはMUTE端子や外部VFO端子はあるものの、ほかの送信機とペアにしてトランシープ構成にするためのしつらえはありません。
いっぽうで、独立したライン出力オーディオ回路やリモートRFゲインコントロール機能などはアマチュア無線用としてはほとんど不要な機能です。
51S-1は基本的に汎用の、高性能ゼネラルカバレージ通信型受信機なのです。 51S-1は、先代のジェネラルカバレージ受信機51J-3の近代化再設計モデルです。 コリンズのアマチュア無線用機器と業務無線用機器は、実際には同じ設計部隊によって開発されていました。 1957年に開発が始まったコリンズSラインの開発は1958年には主要な機器の開発は終わっていて、 量産準備が行われているところでした。 1959年、コリンズ社のエンジニアが同僚と 「そういえば51J-3はもうすっかり時代遅れだよね、そろそろリニューアルしたいね」 という話をしたことがきっかけとなって、試作プロジェクトが始まりました。 ただそのプロジェクトは当人たちの思いつきで始めたもので、 上司の承認を得た活動ではありませんでした。 バレたらプロジェクトが禁止されてしまうばかりではなく、当人たちが叱責される可能性もありました。 試作機が動くようになっておそるおそる上司に見せたところ、上司もその出来の良さを認め、 公認の製品化プロジェクトが始まりました。 この51J-3近代化再設計が行われたときすでにSラインの量産設計は進んでいたので、 新型機もSラインのインダストリアルデザインを採用することになりました。 モデルナンバーの51"S"-1は、自然な成り行きだった、と言えるでしょう。 51S-1はとても高額な機器であり、アメリカのアマチュア無線家でもごく限られた裕福な人達しか手にすることができませんでした。 51S-1は長い期間生産されたものの、QST誌に広告が掲載されたのはわずかに2回だけです。 51S-1の大半は、軍や政府機関によるプロフェッショナルな任務に就きました。 |
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高周波増幅段
アンテナからの信号は同調回路で選択され、高周波増幅管 V1 6DC6 シャープカットオフ5極管で増幅されます。
この管はAGC制御されます。
コントロールグリッドのAGC電圧印加部にはAGCのポンピングを防ぎ動作を安定化させるためのダイオードが入れられています。
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第1周波数変換
高周波増幅管の出力は同調回路を通ったあと第1周波数変換段に入ります。
第1周波数変換段は、高周波増幅段からの信号を:
2MHz〜6MHzバンドのとき: 14.5〜15.5MHzにアップコンバート 7MHz〜29MHzバンドのとき: 3〜2MHzにダウンコンバート します。 ミキサにはV2A 6EA8の3極管が使われており、コントロールグリッドに入力信号が、 カソードに第1局部発振周波数が入ります。 第1局部発振器はV2B 6EA8の5極管を使った水晶発振回路です。 水晶発振子はMEGACYCLEターレットのウェハに実装されており、 バンドによって16個の発振子のなかからひとつが選ばれます。 30バンドあるのに水晶発振子はなぜ16個しかないのかというと、これが実にややこしい。 0MHzと1MHzバンドは内部的には中波アップコンバータで28MHzバンドと29MHzバンドに送られるので28バンド。 ですから水晶発振子は28個必要。 でもこのなかで12個のバンドについては、水晶発振子の基本周波数の倍の周波数を取り出すことによって、 発振子を共通化しているのです。このため、ターレットウェハには16個の水晶発振子があるというわけです。 なお28MHzバンドは局発周波数は31MHzが必要なのですが、 ここだけは15.5MHz水晶の2倍を使うのではなく、10.333MHz水晶の3倍オーバートーンを使っています。 バーディ解析の結果としてスプリアスを避ける工夫なのでしょう。 |
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第2周波数変換
第2周波数変換段は、2MHz〜6MHzバンドの時のみ動作します。
14.4〜15.5MHzのバンドパスフィルタを通過した広帯域第1中間周波信号はV3A 6EA8の3極管セクションのグリッドに入り、
同管のカソードに注入された17.5MHzの第2局部発振周波数と混合されて、
3MHz〜2MHzの可変同調ネットワークを通過し、第2中間周波信号が取り出されます。
7MHzバンド以上ではこの管のプレート電源は供給されず、 第1中間周波信号は第2周波数変換段をバイパスして3MHz〜2MHzの可変同調ネットワークに直接送られます。 第2局部発振器はV3B 6EA8の5極管部による水晶発振器で、17.5MHzを発振します。 この管のプレートには常時+150V系からB電源が供給されていますが、 スクリーングリッド電圧は2MHz〜6MHzバンドの時のみ供給され、7MHzバンド以上では発振動作が停止します。 つまり、第1周波数変換段と第2周波数変換段は一体のものとして見るべきで、 「アンテナからの信号を3〜2MHzの可変第2中間周波数に変換している」ことになります。 7MHz以上では周波数変換1回で、 それ以下ではいったん14.5〜15.5MHzにアップコンバージョンして計2回の周波数変換を行う… これが、W0ROW Gene Sentiが上司に内緒で密かに進めていた 51J-4近代化再設計プロジェクトにおけるコンバージョンスキーム設計とバーディ解析の結果だったのです。 |
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中波コンバータ
51S-1の受信周波数は0.2〜30MHzでありMEGACYCLEつまみで30バンドに分割されていますが、
0.2〜2MHzの中波帯を受信するとき、つまりMEGACYCLEつまみが0MHzと1MHzのポジションにあるときは、
アンテナからの信号はまず中波アップコンバータで28.2MHz〜30MHzに変換されたのちに高周波増幅管に送られます。
このとき高周波増幅段以降は28MHzバンドあるいは29MHzバンドで受信動作します。
MEGACYCLEつまみが0MHzあるいは1MHzの位置にあるとき、 ターレットのS6Aウェハがアンテナからの信号を高周波増幅段から切り離して 0.2〜2MHzバンドパスフィルタを介して中波アップコンバータ入力につなぎます。 またウェハS6Bが、中波アップコンバータ管と中波局部発振管にB電源を供給します。 中波アップコンバータはミキサとオシレータからなる水晶発振の他励式です。 ミキサはV10A 6EA8の片側3極管とV16A 6EA8の片側3極管が組み合わされたバランスト・ミキサであり、 V10B 6EA8の片側5極管が水晶発振器として動作しています。 水晶発振子Y16は14MHzで、発振管のプレートに入った同調回路は第2高調波の28MHzに設定されており、 発振回路は28MHzをミキサに送ります。 0MHzバンドと1MHzバンドが選ばれているとき、 アンテナ端子と0.2MHz〜2MHzバンドパスフィルタの間の結線はいったんリアパネルのJ13とJ14のジャックに出ており、 この二つのジャックは51S-1工場出荷時はシャシー内部でジャンプされています。 この内部ジャンプを切り離せば、 J13とJ14の間に外付けの中波用チューナ(プリセレクタ/プリアンプ)を追加することができます。 コリンズはこの用途に55G-1プリセレクタを用意しています。 このプリセレクタを外付けにしたのは、 恐らく大型になる同調部品をSラインのコンパクトなパッケージに収められなかったから、なのだろうと思います。 51S-1のマニュアルには「この中波アップコンバータは実験室用途、およびAMラジオ放送聴取を想定されており、 受信性能は限定的である」と書かれています。 プリセレクタを使わない場合は中波の受信性能は短波帯での性能に対して見劣りするとともに、 この2つのバンドにおいては受信機内部のスプリアスが333/666/1000/1500/2000kHzに発生します。 内部スプリアスは外付けプリセレクタを併用しても改善されません。 この点がこの受信機に対する期待を満たせないので、マニュアルの記載となったのでしょう。 51S-1のアンテナ回路にはアンテナトリマは装備されていません。 短波でももちろんそうですが、中波となれば直結でインピーダンスがマッチするアンテナを用意するのはなかなか困難。 アンテナチューナの併用は欠かせない、ということになるでしょう。 |
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コンバージョンスキーム切り替え機構
51S-1は6MHzバンド以下ではトリプルコンバージョン、7MHzバンド以上ではダブルコンバージョン動作します。
回路的には7MHzバンド以上では14.4〜15.5MHzバンドパスフィルタと第2ミキサをスルーする仕組みになっており、
この切り替えはターレットウェハ上の接点S4とS5で行われています。
回路図をぱっと見るとスイッチによって信号経路がバイパスされているのがすぐにわかりますが、 よく見ると切り替わるのは信号経路だけではなくて、 第1ミキサ・第2ミキサのプレート電圧そして第2局発のスクリーン電圧の給電も同時に切り替えていることがわかります。 7MHzバンド以上では第2ミキサのプレートと第2局発スクリーンは切り離されて機能停止し、 第1ミキサのプレート電圧は+150V電源バスからプレート抵抗R19 1kΩと3MHz〜2MHz可変同調ネットワーク中のL102を通った後ウェハスイッチS5とS4を通ってV2Aのプレートに与えられます。 6MHzバンド以下では、プレート抵抗R19-L102-スイッチS5を通って第2ミキサプレートと第2局発スクリーンに給電されて第2周波数変換段が動作し、 プレート抵抗R15 1kΩと14.5〜15.5MHzバンドパスフィルタのトランスT12を通った電源がスイッチS4を通って第1ミキサプレートに与えられます。 あるいは、第1・第2周波数変換段のプレート電源給電について、以下のようにみることができます。 -> 6MHzバンド以下のときだけ第1ミキサプレートに給電 -> 6MHzバンド以下では第2ミキサプレートと第2局発スクリーンに給電 -> 7MHzバンド以上では第1ミキサプレートに給電 |
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3〜2MHz可変同調ネットワーク
第2中間周波数は3から2MHzの範囲内にあり、
目的信号のほか帯域内の近接信号も含まれています。
3〜2MHz可変同調ネットワークはフロントパネルのメインダイヤル(kHzダイヤル) と連動して、
3から2MHzの範囲内の目的周波数に同調して選択します。
kHzダイヤルが0kHz位置のとき3.0MHzに、500kHz位置のとき2.5MHzに、1000kHzのとき2.0MHzに同調します。
この回路は粗結合の3連同調回路で、高い選択度を得ています。 同調はkHzダイヤルから減速されてスラグラックシャフトが回り、 スチールベルトで直線運動に変換され、6つのコイルスラグが取り付いたラック2本を往復運動させます。 6つのスラグのうち3本が、3〜2MHz可変同調ネットワークの同調用です。 |
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第3周波数変換
第3周波数変換段は、3〜2MHzの可変中間周波数を500kHzの第3中間周波数に変換します。
ミキサはV4A 6BE8Aの5極管部で、局発信号はカソードに注入されます。
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第3局部発振 / VFO
第3局部発振回路はコリンズ70K-7型PTOで、
フロントパネルのkHzダイヤル位置に応じた3.5〜2.5MHzの周波数を発振します。
kHzダイヤルが0kHz位置のとき3.5MHzを、500kHz位置のとき3.0MHzを、1000kHzのとき2.5MHzを発振します。
発振管は7543です。7543はシャープカットオフの5極管で、 ヒータのハム特性が管理されているほかは6AU6Aと同等です。 7543のスクリーン電圧は2本直列のツェナダイオードで安定化されています。 |
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EXT VFO
VFO出力信号は、第3ミキサに入る手前でジャックJ6を通ります。
このジャックはシャシー上に設けられていて、EXT VFOと表示されています。
ここにミニフォーンプラグをさしこむと、内蔵PTOの出力は切り離され、
かわりにEXT VFOジャックから与えられた外部局発信号で第3周波数変換が動作するようになります。
もし受信したい周波数があらかじめ決まっているなら、
その周波数用に外付けの水晶発振回路を用意しておけば、
より高い安定度での受信が可能になります。
ただその場合であっても、kHzダイヤルは受信周波数にあわせておく必要があります。
kHzダイヤルはPTOの出力周波数を変えるだけではなく、
プリセレクタと3〜2MHz可変中間周波ネットワークの同調も行っているからです。
外部発振器を使う時に内部VFOが動作したままだとスプリアスの原因になりうるので、 マニュアルには内部VFOを止める方法も書かれています。 |
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帯域フィルタ
第3周波数変換段の出力は、500kHzフィルタを通過して第3中間周波信号になります。
このフィルタはCW/USB/LSB/AMのそれぞれに用意されており、EMISSIONスイッチで切り替えられます。
CWモードのときは、通過帯域幅800Hzのクリスタルフィルタが使われます。 USB・LSBのときは、それぞれに用意されたコリンズ・メカニカルフィルタが使われます。 AMのときは2つの粗結合中間周波トランスが使われます。 これらのフィルタはオプションで選択ができ、CW用には300Hz帯域のナローフィルタが、 SSBフィルタには狭めと広めタイプが、またAM用のメカニカルフィルタも用意されています。 |
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中間周波数第1増幅
500kHzの中間周波数はフィルタを通過する際にかなり減衰されてしまいますので、
それを増幅してレベルを回復します。
増幅管はV5 6BA6で、AGC制御を受けます。 この管のカソード電圧はシャシー上にあるR25 RECEIVER GAINポテンショメータで設定でき、 受信機の感度を固定的に下げることができます。 これはAGCのスレッショルドレベルを調整するためのものであり、 アンテナ端子での入力電圧が1.5μVでAGC電圧が変化し始めるように調整します。 |
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Qマルチプライヤ
51S-1ならではの機能であるREJECTION TUNINGは、Qマルチを使ったノッチフィルタです。
フロントパネルのREJECTION TUNINGつまみがOFFポジションでは中間周波数信号はQマルチプライヤをスルーします。
つまみをOFFポジションから動かすとQマルチが有効になり、
ノッチフィルタのセンター周波数をつまみの位置で可変することができます。
ノッチの深さを調整することはできません。
QマルチにはV6 12AX7 の3極管がふたつ使われています。 ひとつめの3極管はカソードフォロワになっており、信号はふたつめの3極管のカソードに入ります。 この管のプレートから取り出された信号はTブリッジ型のノッチフィルタに入ります。 ノッチフィルタ出力はふたつめの3極管のグリッドにフィードバックされます。 フィードバックループのゲインはすくなくとも10倍あって、 結果としてTブリッジの同調Qは2500となり、ノッチ周波数を少なくとも40dB減衰します。 Tブリッジの構成キャパシタの一部分としてC315 1N950バリキャップが使われています。 フロントパネルのREJECTION TUNINGつまみはポテンショメータを回し、バリキャップに印加される電圧を変化させます。 これにより、Tブリッジのノッチ周波数を変化させています。 REJECTION TUNINGつまみをOFFにしたときはバリキャップに順方向バイアスがかかり、 信号はバリキャップをスルーします。これによりQマルチがスルーされることになります。 |
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中間周波数第2増幅
Qマルチプライヤの出力はV7 6BA6で増幅されます。
コントロールグリッド電圧はAGC制御されます。
フロントパネルのRFメータは、この管のカソード電圧(を分圧した電圧)を基準として、 この管のスクリーン電圧(を分圧した電圧)を測定し表示しています。 カソードに入れられたRFメータのゼロ点調整のための250Ωポテンショメータ R37 の両端がカソード抵抗になっており、 よってカソード抵抗値は250Ω固定です。 出力は500kHz中間周波トランスで取り出され、中間周波増幅第3段のグリッドに伝えられるほか、 AGC電圧生成回路にも送られます。 |
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中間周波数第3増幅
500kHz中間周波トランスT2で取り出された中間周波信号は、V8 6BA6で増幅されます。
この管のカソードは直接接地されていて、コントロールグリッドはAGC制御を受けています。
この管のスクリーングリッド電圧は、前段のスクリーンから1kΩを介して供給されています。
この管のコントロールグリッド電圧にはAGC電圧をR43とR109で分圧してその約3分の1の電圧がかけられています。 サービルマニュアルの記載には「AGC動作を安定化するため必要に応じてR148を加える」とあり、 その処置を施すとコントロールグリッド電圧はAGC電圧の5分の1になり、AGCの影響を受けにくくなります。 中間周波トランスで取り出された500kHz中間周波信号は、 AMダイオード検波回路とSSBプロダクト検波回路に同時に伝えられます。 |
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AM検波
AM検波には半導体ダイオードが使われています。
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プロダクト検波
中間周波信号はバランストランスを介してゲルマニウムダイオード4本からなるリングダイオード式バランストミキサに入ります。
ここには500kHzのBFO信号が注入されていて、SSBおよびCWが復調されます。
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BFO
BFOは水晶発振式で、EMISSIONスイッチがCW・USB・LSBポジションのときに5極管 V17 7543が500kHzを発振します。
発振出力はプレートから取り出され、プロダクトディテクタに注入されます。
BFO周波数は受信モードによらず500kHz固定です。
EMISSIONスイッチがAMポジションにあるとき、7543のカソードは切り離されて発振が停止します。 7543は電気的には6AU6シャープカットオフ5極管と同等ですが、 ヘリカル巻きヒータと内部電極の耐振性向上により低ハム・低マイクロフォニックを実現しています。 いっぽうでラボの実機 シリアル番号581の個体では、V17には6BA6 リモートカットオフ ペントードが使われています。 シャシー上のシルク印刷にもはっきり"6BA6"と示されていますから、これはランニングチェンジがあったのでしょう。 航空機搭載時の耐振動特性を向上させるためだったのでしょうか。 |
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ローカル系低周波段
AM検波器出力とプロダクト検波器出力のいずれかがEMISSIONスイッチで選ばれ、AF GAINを通った後、低周波増幅されます。
初段増幅は12AX7の片側3極管、出力管は6BF5ビームパワー管です。
6BF5のヒータ電流は1.2Aで、ヒータだけで7Wを消費し、かなりの発熱があります。 この発熱を嫌って他の管に替える改造例もいくつも見受けられますが、 51S-1のヒータ電源配線は各管のスタートアップ時間を考慮してグループ分けされているので、 無思慮に球を換えてしまうと同一系統の他の管のヒータに過大な突入電流を与えてしまう可能性があり、 発表されている改造例ではそういった点の配慮がされています。 |
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リモート系低周波段
遠隔地に音声信号を送出するためのリモート系低周波増幅段は、12AX7 3極管で初段増幅、6AK6 5極管で電圧増幅され、
リモート系専用出力トランスを介して600Ωのバランス出力を得ています。
出力トランスの2次側にはNFB専用の巻線があって、初段のカソードにネガティブフィードバックがかけられています。
リモート系の出力レベルはAF GAINつまみの中央部にあるちいさなポテンショメータで調整でき、 その出力レベルはフロントパネルのメータで確認できます。 |
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AGC回路
第2中間周波増幅段出力IFTの2次側は第3中間周波増幅段に入るとともに、
分岐されてV11a 5670 3極管のグリッドに入ります。
この管はカソードフォロワとして動作しており、
カソードから取り出された中間周波信号はAGC増幅管 V9 6BA6で増幅されます。
中間周波トランス2次巻線から取り出された中間周波信号はシリコンダイオードで整流・平滑され、 中間周波信号の振幅に比例した直流電圧を得ます。 基本的にこれがAGC電圧になります。 いっぽうでこの中間周波トランス2次巻線の反対側にはAGC増幅管6BA6のスクリーン電圧の約40分の1の電圧がかけられているため、 中間周波信号片側振幅がこの電圧 (+ シリコンダイオードの電圧障壁高さ) を越えたときにはじめてAGCダイオードが導通し始めます。 これにより、信号強度が一定レベルに達するまではAGC動作が始まらないようにするディレイドAGCを実現しています。 |
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AGCライン
AGCラインはもちろんAGC回路が信号強度によらず受信音量を一定に保つための制御電圧ですが、
51S-1ではAGC以外の受信機のゲインコントロールもすべてAGCラインを使って行われます。
RF GAIN フロントパネルのRF GAINつまみは、ポテンショメータでAGCダイオード負荷の電位を変えています。 RF GAINつまみがフルゲイン位置にあるときはダイオード負荷の電圧はグラウンド電位に対してわずかに負になっている程度。 RF GAINを反時計に回して行くとAGCダイオード負荷の電位は-37Vに近づいていき、 それに応じて無信号時のAGC電圧は下がって行きます。これによって受信機のゲインを下げます。 STBYポジション 受信機の電源を入れたまま、受信動作を停止させる「スタンバイ」機能です。 フロントパネルのOFF-STBY-ON-CALスイッチをSTBYポジションにすると、 AGC負荷の電位は強制的にすくなくとも-12Vあるいはそれよりも低くなり、 AGC制御を受ける増幅管がカットオフされ、受信機は無音状態になります。 STBY状態でも真空管へのB電源は供給され続けており、PTOを含む発振回路は変わらずに動作し続けています。 これによりSTBYからONにした直後の周波数ドリフトを最低限にしています。 MUTEジャック 51S-1のリヤエプロンにはMUTEジャックJ5があります。 フロントパネルのスイッチをSTBYポジションにしておいても、 このMUTEジャックにつないだスイッチをONにすればスイッチをONポジションにしたのと同じことなり、 受信機が動作を始めます。 この動作は、内部的には前述のSTBYの動作と同じです。 リモートRFゲインコントロール 51S-1には遠隔地から受信機のRFゲインをリモートコントロールするための仕組みが備わっています。 これは外部から強制的にAGCライン電圧を落とす (より負にする) ことで実現しています。 AGCラインをそのまま受信機の外に引き出して長いケーブルで引き回すと、 ケーブルのインピーダンスやノイズで受信機の動作に悪影響を及ぼしますし、 AGCライン電圧を外部から強制的に固定してしまうとAGC動作ができず受信音量を一定に保てません。 そこで51S-1では、リモートRFゲインゲート回路を設けて、 AGCラインと外部リモートコントロールラインをアイソレートしています。 リモートRFゲインゲートはV4B 6EA8の3極管部を2極管接続したものです。 カソードにリモートコントロール電圧を入れ、プレートが12kΩの抵抗を介してAGCラインにつながっています。 リモートコントロールを使うときはリヤエプロンのJ7から引き出したケーブルの先にポテンショメータをつないでおきます。 ポテンショメータの抵抗値がゼロのときがフルゲイン状態で、 受信機内部では-37V系電源電圧がR89とR90で分圧された-0.37Vが2極管のカソードにつながります。 もしAGCラインが-0.37Vより高いときは、それを-0.37Vに近づけるべく落とそうとします。 実際には無信号時のAGC電圧は-0.7V程度なので2極管は逆バイアスとなって、実質何も起きません。 リモートRFゲインポテンショメータの抵抗値を上げると、 それに応じて2極管のカソード電圧が下がり、それに追従する形でAGCラインの電圧も下がり、 受信機のゲインを下げます。 これは受信機の最大ゲインを制限しているわけなので、 その設定値より強い信号を受信したときはAGC電圧はさらに下がって受信音量を一定に保ちます。 |
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100kHzクリスタルキャリブレータ
V16B 6EA8Aの5極管を使った水晶発振回路です。
フロントパネルのスイッチをCALポジションにすると5極管のカソードがグラウンドに落とされて発振動作が始まり、
100kHzとその高調波を発生します。
発振出力はプレートから取り出され、1pFのキャパシタを介してアンテナジャックに直接注入されます。
スイッチのCALポジションは、発振回路を動作させるほかは何の仕組みもありません。 |
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このページをご覧になっている皆さんの中には、
上の写真に見えるフロントパネルがノーマルと異なってることにお気づきの方もいらっしゃるでしょう。
そう、メイン・チューニングのノブが純正品ではありません。
この受信機を手に入れたとき、
メイン・チューニングつまみとして総アルミニウム削り出しの黒色染め仕上げの計測器用のものがついていました。
さらに外装ケースもなし。
この2点のために、この51S-1は相場よりもずっと安く買うことができました。 最初はケースもノブもどこかで見つかるだろうと軽く考えていたのですが、ちょっと甘すぎたようです。 確かにノブはサープラス・セールス・オブ・ネブラスカのカタログに載っていました。 が、その値段はノブ、シルバーの化粧プレートそれにフランジリングを入れると完動状態のラファイエット製受信機が簡単に買えてしまう金額です。 それでも手に入るだけラッキーだと思い注文しましたが、残念なことに売り切れ。 私の 75S-1 はノブもケースも完全ですが、いずれも51S-1とは非互換です。 指を入れて回すための穴の有無を除けば同じように見える両者のノブですが、 75S-1のチューニング・シャフトは半月形のもので、ノブもそれ用のシャフト受けの形状をしています。 これに対し51S-1のシャフトには切り欠きがありません。 したがって75S-1のノブを51S-1のシャフトに取り付けることはできません(少なくとも追加工なしには)。 75S-1のケースは51S-1よりも短いため、これまた使用できません。 ケースはともかく、真っ黒のノブはコリンズSラインの印象をずいぶん変えてしまいます。 なんとかならないかなあ、と日本帰国の直前の最後のフットヒルを歩いていたら、ちょうど使えそうなノブが。 オリジナルとはずいぶん違いますが、ちょうどKWM-380や651S-1に使われているようなスタイルで、 シルバーのプレートつきで切り欠きなしシャフト用。 これを最後のフレア・マーケットの買い物にしよう。 さようなら、フットヒル。 大半の家財道具の船便出しが済んでわずかな荷物しか残っていない家に戻り、 買ったノブをすでに準備の整っているスーツケースに放り込み、 航空便で発送しました。 51S-1は一足先に太平洋を日本に向けて航海しています。 1999-03-19 KWM-380風ダイヤルノブ購入 @ Foothill |
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日本のアパートに届いた船便引っ越し荷物の中から 51S-1を引っ張り出してすぐに、
スーツケースから取り出した651S-1風ノブを取り付けてみました。
が、フランジがないとどうにも不格好です。
最初ついていたノブはフランジと別体で、小ネジで組み付けられていました。
ので、フランジを取り外して、651S-1風ノブに瞬間接着剤で貼り付けます。
・・・っと、ちょっとセンターがずれてしまいました。
ともあれシルバー仕上げのプレートを持つスピナー付きノブは当初の真っ黒金属ノブに比べればずっと全体の雰囲気にマッチします。
それでも、やはり純正ノブとケースが欲しいところですねえ。 1994年末に渡米したとき、ラジオを聴いてもテレビも見ても当然英語ばっかりで、 それはずいぶんつらい思いをしました。 サンフランシスコ・ベイエリアでは時間限定ながら日本語テレビを見ることができたのが大変救いでした。 それから4年半が経ち、いざ日本に帰ってみると、 それまで毎日ずっと聴いていた英語ニュースが聴けなくなったのが非常に寂しく思えます。 ヨメはヨメでやはりずっとCNNをかけっぱなしにしていたので同じようなことをいいます。 それではFENでも聴こう、と思ったのですが、関東平野から外れた鉄筋建てのアパートの中までFENは届かないのです。 屋外に2メートル程度のビニール線を垂らしてみて51S-1で短波を聞いてみると・・・ テレビとコンピュータの強烈なノイズ!いまや我がラボは最低の受信環境の中にありました。 幸い15MHz以上の周波数ではノイズはあまりひどくなく、VOAかBBCがたいていの時間良好に聞こえています。 そこで良好に受信できる英語ニュース局の周波数をメモしておいて、ヨメに51S-1の使い方を教えました。 ラボとキッチンは3歩しか離れていないので、51S-1をキッチン・ラジオとして使ってしまおうという失礼な企みです。 メガサイクルつまみとメイン・チューニングつまみで1kHzまで直読できる51S-1のダイヤルを合わせるのはヨメにも簡単にできます。 そういえば、我がラボにはデジタル表示で周波数が読めるラジオは一台もない、という事実に改めて気がつきました。 この受信機は今のところメイン・チューニング・ノブやケースといったコスメティックな問題の他には大きなトラブルはありません。 ボリュームのガリも皆無です。 マイナーな問題点としては、しかしながら、以下のものが挙げられます。
1999-04 NoobowSystems 富岡第1研究所 活動開始 |
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メータをRFポジション、すなわちSメータとして使うとき、
メータのゼロ点がマイナス側振り切れになる問題が発生しました。
手に入れた直後は正常だったのに。
どこかの部品が最近の連続使用で劣化し始めたのかもしれません。
通常の使用には問題はありませんが、気にしだすと気になってしまうものです。 メータ周りの簡略化した回路図を左に示します。 メータスイッチをRFポジションにしたとき、 メータは6BA6で構成された第2中間周波数増幅段に接続され、 スクリーン・グリッドとカソードの間の電位差が検出されるようになっています。 51S-1のB電源の整流は半導体ダイオード・ブリッジで行われており、 したがってスクリーン・グリッドの電圧は電源投入後ただちに上がります。 これに対しヒータが加熱されてカソードに電流が流れだすまで、カソードはグラウンド電位です。 このため、電源投入直後はメータはプラス側に振り切れ、真空管が動作を開始すると指針は正常な位置に戻ります。 メータが切れるほどの電圧ではないのでしょうが、ちょっと精神的に不安。 電源投入前にメータ・スイッチをオーディオレベルのポジションにしておけばこれは回避できますが、 多くの人がこの点は気になると見えて、定番の改善策があるようです。 |
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メータのゼロ点の調整はシャーシ上、メータのすぐ近くのトリマ・ポテンショメータ R37 で行います。
で、ドライバで回してみたところ正しくゼロを示すようになりました。
が、調整中はトリマの回転に対してメータがスムースに動きません。
しばらく使っていると今度はわずかにプラス側に振れるようになったり、元に戻ったりします。
トリマにガリがあるのではないかと思われます。 よくよく観察してみると、RFメータのゼロ点は単に狂っているのではなくて、 電源投入からの経過時間にしたがって徐々に下がっていっていることがわかりました。 入手直後は単に気がつかなかっただけのようです。 室温約25℃で、電源投入からの時間経過とメータの振れの関係をプロットしてみました。 電源投入直後はプラス側に振れていますが、約30分間かけて0まで戻ります。 今回の測定では、その後再び針はプラスを指し始めました。 変化の主要因はやはり温度のようです。 変化のようすはスムースですから、原因はトリマの接触不良ではないでしょう。 となれば、原因は第2中間増幅管6BA6の球自体かその周辺素子、あるいはAGC電圧そのものが変動している、 ということになります。 次のステップはAGCラインの電圧とメータの振れの相関関係を調べることでしょう。 HA-230 と同じような、グリッド・エミッションが起きているのかもしれません。 1999-05-17 RFメータ ゼロ点ドリフト傾向測定 (RFメータゼロ点ドリフト対策はこちら) |
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念願のスピナーノブが手に入りました。
レプリカ品ですが、51S-1はしかるべき顔つきに戻りました。
やはりこうでなくては。残るはケースです。 それにしても、古いラジオのつまみというのはどうしてよく紛失してしまうのでしょうか。 ボートアンカーのニュースグループなどを読んでいると、 「求む、ABC-123のつまみ」の類がよく見かけられます。 たしかにハリクラフターズSX-28などは実に特徴のあるノブを持っているので、 これがオリジナルでないとまったくサマになりません。 この51S-1にはブレーキレバーは当初からついていないようです。 1999-11-11 スピナーノブ取り付け |
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ポインタノブの固定スプリングが折れ、電源スイッチとEMISSIONスイッチのノブが取れてしまいました。
とりあえず別のノブをつけておけばよいのですがそうもせず、
スイッチを入れるのが億劫になりしばらく使わないままになってしまいました。 もっと簡単に手の届くところに置いて聞いてやろうと思い、 配置を換えて久しぶりに電源を入れると、受信動作をしません。 オーディオ段は動作しているようですが、 感度が極端に落ちてほとんど何も聞こえないでいるようです。 やはり機械はほったらかしにしちゃうと機嫌を悪くしちゃうんだなあ。 コリンズといえども所詮は真空管ラジオ、 壊れる場所はそうそう違わないよな・・・と思いつつ、ベンチに乗せ、 底面を見てみます。 |
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問題は周波数変換段とかターレット式バンド切り替え辺りにありそうな気がしたので、
ターレットカバーを外して観察しながら電源を入れてみると・・・
うわわわわっ!!! トラブルシューティングのためにはターレットの分解を必要としそうな予感。 とてもいまの状況 - 作業場所と割り当て可能な時間の少なさ - では対応しきれません。 ので、残念ながら、じっくり作業できる状況になるまで戦線離脱させることにします。 そのうち必ず直してあげるから待っててね。 2008-01-11 発煙故障 修理待ち扱いに |
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発煙事故から14年経過。
いよいよ、ようやく、修理作業に着手します。 煙を吹いたのは第一研究所のベンチででした。 ということは、この受信機は中央研究所ができてメインのスチールラックに堂々と鎮座しながら、 修理の日を待っていたんですね・・・。 キッチンのそばゆえ、オイルミストもかぶってしまい、みすぼらしくなってしまっていました。 ごめんねえ。 発煙したあとすぐに修理に着手しなかったのは、 第1研究所のベンチでは手狭すぎて作業スペースがなかったからというのが最大の理由でしたが、 経験を積んでいろいろなことを学んでからにしよう、と思ったからでもあります。 2008年以降は仕事が難しくなり育児と看護で家庭崩壊のリスクも大きくてしょっちゅうツブれそうになったからでもあったし。 中央研究所ができて作業スペースは広くなりましたが、 2010年の第3研究所運用開始で週のうち中央研究所ワークベンチで作業できるのは土曜の夜だけ、みたいな状況になってしまいましたからね。 活動はおおきくペースダウンでした。 2020年03月27日以降のコロナ体制は、弊ラボの活動にとっては思ってもみなかった朗報。 中央研究所での在宅勤務により、毎日毎晩すこしずつ作業を進めることができます。 ワークスペースとして機能し始めた中央研究所の夢と時空の部屋、 修理できて実用配備された計測機器類、 その後手に入った各種の資料、 のんびりながらもいろいろ学んできたこと。 14年の間に、修理の環境と条件はずいぶん整いました。 2020-02-02 作業開始 |
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なにしろ最後の通電が発煙でしたから、
用心しながら電源ON。
よかった、煙は出てきません。 さてそれでは例によって低周波段から。 でもこの受信機、AF GAINのポテンショメータの手前に太くて硬いワイヤーハーネスが走っていて、 ポテンショのホット側にみのむしクリップをかますことができません。 なので、ローカル系低周波出力管 V12 6BF5のグリッドに音声信号を注入。 おお、とてもいい音で、パワーもたっぷりです。 低域にわずかに濁りが感じられますので音楽鑑賞に使うには一工夫必要でしょうけれど、 高域は気持ちよくすっきりと伸びています。 ついで、ローカル系低周波増幅初段のV14 12AX7 の第一セクションのグリッドに信号注入。 ここも正常、いい音で鳴ります。 それにしてもこの受信機、 コンパクトで無駄のない、堅牢な実装ですね。 Vectorのスタンドオフターミナルを使って、とても密度の濃い部品実装です。 真空管ソケットにみのむしクリップやオシロスコープのプローブを当てるのも苦労します。 2020-02-03 ローカル系低周波段は正常 |
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51S-1の第3中間周波数は、よくある455kHzではなくて、500kHzです。
中間周波第3増幅管 V8 6BA6のグリッドに、キャパシタを介して500kHzのAM信号を注入してみました。
きちんと復調できています。
でも、サービスマニュアルに記載されているレベルの5倍ほどの強度で注入しなくてはなりません。
中間周波第3増幅段のゲインが低いのでしょうか、それとも検波回路に不調があるのでしょうか。 中間周波第2増幅管 V7 6BA6のグリッドに注入してみると、 ここも動作。 きちんとAM復調してくれますし、第2段は増幅しています。 でもやはり注入した信号レベルの割にはオーディオ出力は低いですね。 こういうものだったっけ? 51S-1の3つの中間周波増幅段はいずれも6BA6リモートカットオフペントードが使われていて、 コントロールグリッドはAGC制御を受けます。 第2段のコントロールグリッド電圧を見ると、 AGCは動作していますが、 復調音量に敏感に、かつ素早く反応しています。 51S-1のAGC時定数は短いという話は聞きますが、はて、 こんなにも速いものなのだろうか。 ここまで速いと、オーディオの復調音質に悪影響を与えてしまいそうだけれどねえ。 受信音質は、オーディオアンプ直接注入時よりもずっと低域の濁りが明確です。 これはひょっとしてAGCが速すぎるために起きているのではないだろうか? 2020-02-06 500kHz中間周波信号注入テスト |
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今度はアンテナからRF信号を入れてみましょう。
シグナルジェネレータで10.5MHz AM 80dBuの信号を作ってアンテナ端子に入れ、
MEGACYCLEつまみを10に、メインダイヤルを500kHzにセットすると、
51S-1は一瞬信号を受信しました。
MEGACYCLEつまみを回すと、聞こえたり聞こえなかったりします。
やはりターレットの接触不良ですね。 RF部を覆うシールドカバーを取り外してターレットを露出させました。 MEGACYCLEターレットにはなんと12枚ものウェハがあります。 そのどれかの接触が悪くなれば不調になるわけですし、 ウェハはMEGACYCLEシャフトに対しては自由度をもって、つまりわずかにがたついた状態で取り付けられています。 ウェハがわずかに自由に動くようにしておくことによって接触子が自分の接触圧でウェハ端子を挟めるように、 ということなのでしょうけれど・・・ この受信機は航空機に搭載され少なくない振動のもとで動作する必要があるはずなのに、 このコンセプトを採用したというのは驚きですね。 接触子とウェハ側ターミナルを清掃し、取り急ぎ7 / 9 / 10 MHzで動作するようにしました。 しかし受信機全体としては感度はいまひとつです。 BFOは発振しているものの、SSBの受信もとても弱いので、 問題がどこかにあるのは確実。 2022-02-06 ターレット接触子整備 受信動作開始 |
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連続通電使用しているうち、ハム音が目立つようになってきました。
ボリューム位置によらずハム音の大きさは変わらず。
ま、電源の平滑キャパシタの容量抜けでしょうね。 51S-1の電源トランス2次側には、プラス電源系とマイナス電源系の2つの巻線があります。 いずれもシリコンダイオード4本のブリッジ整流で、その後電解キャパシタとドロッピング抵抗で安定化されます。 プラス系にはチョークコイルも入っています。 プラス系からは+150V系と、さらに平滑安定された+140V系の2系統が取り出され、各部に給電されています。 この平滑キャパシタはシャシー上面に取り付けられた1本のブロック電解キャパシタの中にある3つのセクションが受け持ちます。 まあフツーここだよねと思いながら、整流ブリッジ直後の40uFキャパシタに新同品の22uF+22uFを並列につなぐと、 電源リップルは明らかに減ります。 しかしハム音の大きさに目立った変化はありません。 チョークコイル通過後の+150V系の電解キャパシタに新同品をつないでも変化なし、 さらにドロップされた+140V系に新同品をつないでも変化なし。 うむ? プラス系の電源は正常なのかな? 今度はマイナス系を見てみます。 ここでは-37Vのマイナス電源がつくられ、 さらに分圧されて数種類のマイナス電源がつくられます。 オシロをつないでみると整流ブリッジ直後にはリップルがはっきり乗っているし、 そこからさらにドロッピングを通った-37V取り出し点でもリップルは明らか。 そしてここに50uF新同品を並列につなぐと、リップルは大きく減って、 ハム音も消えました。 こっちだったか。 在庫の50uF 50VのキャパシタはSprague製のアキシャル品で、 ルックスもアメリカ機にマッチします。 でも、さて、このキャパシタはいつ買ったものなのだろう。 1997年〜1998年頃に、真空管受信機の修理をするためのものとして、 サンタクララのHalted Specialtiesで買い込んでおいたものに違いありません。 部品を買ってからも25年は経っていそうだし、 製造時期はというと1960年代中盤から1970年代前半のものでしょう。 新同品とはいえ50年も経過しています。 どこまで持つかなあ、すぐにダメになっちゃうかな? ということでC247とC183を交換。 -37V系電源電圧のリップルは100分の1になり、 ハム音はすっきり消えました。 2022-02-07 ハム音発生 C247 C183 を Sprague 50uF 50V品に交換して快癒 |
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14年前に燃えた抵抗を交換します。
V2B 6EA8の5極管部、第1局部発振器のプレート抵抗、R94 1kΩでした。
この管のプレート回路の配線はシャシーの中でアルミの板を貫通してターレットセクションに入ります。
この貫通部のターミナルは、150Vのプレート電圧と0Vアルミ板との間隔が1mmほどしかありません。
作業中になぜかここでショートが発生したのだろうと推測しています。 燃えた抵抗器は、本来1kΩであるべきところが実測1.5kΩになってしまっていました。 新品の抵抗器に交換。 今までは水晶発振器の電源電圧が設計値よりも低い状態で動かしていたわけですから交換後は感度が良くなるかなと思ったのですが、 気がつくほどの変化はありませんでした。 2022-02-13 焼損抵抗器交換 R94 |
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低周波増幅初段に直接オーディオ信号を入れたときは十分な音量が得られていましたが、
それでもやはりこれは行うべきですね。初段のカソードバイパスキャパシタの交換。 KEMETのNOS品に交換したら、低周波段のゲインは大幅アップしました。やっぱりね。 AMではAF GAIN 20%ほどで室内使用に十分な音量。正常になったとしていいでしょう。 いっぽうSSBではAF GAINをフルに上げる必要があります。SSBプリアンプが不調なのは明らか。 同じタイプの電解キャパシタが使われているAGC回路と、-13V電源の平滑キャパシタも交換。 いずれも交換前にキャパシタ両端のAC電圧をオシロで観測。 交換後はAC電圧はほぼゼロになりました。どちらも劣化していたわけですね。 -13V電源は-37V電源から分圧して生成されていますが、 これは唯一ローカル系低周波出力管6BF5のグリッドバイアス電圧として使われます。 ここに電源リップルが乗ればそのままスピーカからハムとして聞こえるわけですね。 -37V系電源の平滑キャパシタがダメになってスピーカからハムが出る、というのはこの理由によるものでした。 この様子では、残りの電解キャパシタは全数交換不可避です。 2022-02-13 音量不足問題 低周波増幅初段のカソードバイパスを交換して音量正常化 |
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METER ZEROと METER SENSのポテンショメータにはひどいガリがありましたのでFader Lubeを注入してクルクル回し、接点を回復。
フロントパネルのメータセレクタも接触不良がひどかったのでウエットタイプの接点復活剤を使用。 ポテンショとスイッチの動きがスムースになったので、 暫定的に無信号で5dB、強信号で60dB程度を指すように合わせておきました。 18年前はメータのゼロ点の経時変動がありましたが、いまのところこの様子は見えていません。 ポテンショメータ接触が不安定だっただけなのかもしれません。 2022-02-13 メータ調整 |
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MEGACYCLESつまみを0にセットしたら、NHKラジオ東京第1・第2そしてTBSが聞こえてきました。
中波アップコンバータは動作しています。
MEGACYCLEつまみを1にすると、しかし、一瞬バックグラウンドノイズが聞こえただけで、ラジオ放送は受信できません。 でもこれは、中波コンバータのせいではなくて、親機側で29MHzバンドが受信できていないためです。 しっかりした外部アンテナを使い、外付けのアンテナチューナープリアンプを使うのが前提の51S-1です。 短いワイヤーアンテナではノイズの多い受信しかできません。 それにしてもトリプルスーパーヘテロダインの中波AMラジオなんてそうそうないよね。 AGCの動作不良の症状が見えてきました。 強い局に合わせようとしているときなど、それまで弱かった入力が強くなっていくとき、 AGC電圧はスムースに負に強まって行くのではなく、ステップ状に強まります。 この動きのため、中程度の信号強度ではAGC電圧がハンチングすることもあります。なんでだろうね。 2022-02-13 中波を聞く |
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AGCの動作不良は、朝一番では顕著で、その後数時間は不規則に感度が上がったり下がったりが繰り返されましたが、
数時間が経つと頻度が減ってきました。
機内温度が上昇したためかも知れませんし、素子不良が一時的に回復したのかも知れませんし。
で、今夜はAGC回路はそのままにして、先にSSBの音量不足の修理に取り組みます。 SSB/CW受信時は、リングダイオードバランストミキサによるプロダクト検波の出力は、 トランジスタ1石によるプリアンプで低周波増幅されたあと、 EMISSIONスイッチを通ってAF GAINポテンショメータのホット側に入り、低周波増幅初段へと伝わります。 昨日の低周波増幅初段のカソードバイパスキャパシタ交換でAMの音量は正常レベルになりましたが、SSBでは小さいまま。 AF GAINをフルに回しきってようやく普通の音量。 これはトランジスタプリアンプが動作していないとみるのが自然です。 プリアンプはごくシンプルなエミッタ接地増幅回路です。 そこに使われている、入力カップリングとエミッタバイパスの2つの電解キャパシタは無条件で交換ですね。 でも、さて、そのトランジスタはどこにあるんだろう。 正直、探すのは結構てこずりました。 あ、これだこれだ。 2つの電解キャパシタとともに、スタンドオフにぎっちりと取り付けられています。 トランジスタの型番は2N647。 サービスマニュアルに書かれているものとは違いますね。 ラボの個体は初期のロットだし、その後のバージョンのサービスマニュアルには書かれていないのかな? エミッタバイパスの50μFをKEMETの47μF 35V品に交換したら音量は大きくなりましたが、まだ正常には明らかに不足。 さらに入力カップリングの2μFを新品の電解キャパシタに交換したら、SSBの音量はAM並になりました。 よかったよかった、トランジスタは59年経った今でも動作しています。 2022-02-14 SSBプリアンプ回路電解キャパシタ交換 SSB時音量不足問題解消 |
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500kHz中間周波増幅第3段の出力は中間周波トランスで取り出されてAMダイオード検波器とSSB/CW用のリングダイオード式プロダクト検波器に同時に注入されますが、
AGC電圧はというと、とても贅沢な方法で作られます。 検波回路から分岐された500kHz中間周波信号はカソードフォロワでバッファされたあと、 6BA6を一本使ったAGCアンプで増幅されます。 6BA6の出力は専用の中間周波トランスで取り出され、ダイオード検波器で信号レベルが直流電圧に変換されます。 このとき中間周波トランス2次側巻線は直流約4Vでバイアスされており、 中間周波数信号の片側振幅が4Vを越えたときに初めてAGCダイオードが導通します。 この仕組みによって、信号強度がある程度に高まるまでは受信機はフルゲインで動作する、 ディレイドAGC動作を実現しています。 さて、信号強度が高まるときにAGC電圧が不連続に変化するのはどういうわけなのか。 それにそもそもAGC電圧は変調信号レベルではっきり変化していて、これはいかにも速すぎるように思われます。 まずはAGC電圧のフィルタキャパシタを交換するようですね。 2022-02-14 AGC回路を調べる |
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回路図上RF GAINのすぐ右、"AGC DIODE LOAD"のすぐ下にあるC271 0.1μFには"+" "-"と極性が表示されていて電解キャパシタであるかのように思えるのですが、
実機ではそのような部品は見つかりません。
よくよく実機配線を追いかけると、その0.1μFはセラミックキャパシタが使われていました。
部品劣化の心配はとりあえずないとしてよいでしょう。 いろいろ調べて行くうち、51S-1のAGCはこんなものなのではないかと思うようになってきました。 なにより、実際の受信音は決して悪くないどころか、十分にいい音で鳴っています。 AGC電圧の変化が急すぎると思えたのは、 このAGC回路にはとても高速なファースト・アタック特性を持たされているためのようです。 専用のAGCアンプで増幅された後に中間周波トランス2次巻線から取り出されるIF出力はインピーダンスも低く、 だから信号立ち上がり時はAGCライン電圧を急速に変化させられるのです。 この急峻なファースト・アタック特性は、SSB時に話しはじめの子音が歪むのを防ぐでしょうし、 CWであればキークリック音を出さず、聞き易く疲れない音にしてくれるはずです。 AGCリリースの時定数はやや速めではあるものの、"FAST"というほどではなく、 AMもSSBもCWもカバーするならほどよい程度だと言えます。 私の使い方からすれば、CWで強力な局のキーアップ中に弱い局を拾うといったスポーティな運用はしませんから、 時定数はもう少し長めでもいいかも。 そこでAGCラインに2.2μFの電解キャパシタを追加しました。 ファースト・アタックはそれでも十分に高速で、オーディオ波形に従った電圧変化は残っているものの、 信号が途切れたときの感度回復はちょっとゆっくりになりました。 このセッティングだと、強力な局を受信していてフェージングの谷が来てもゲイン回復がほんのちょっと遅れるので、 結果としてフェージングによる音質劣化が聴感上かなり改善されます。 元に戻したければすぐに戻せますから、これで行きましょう。 昨日見かけられた、不定期に信号強度が高くなったり低くなったりする現象は現時点原因不明。 素子劣化かもしれないし、アンテナケーブルやコネクタの接触不良かもしれないし。しばらく様子を見ます。 2022-02-15 AGCはたぶんこういうもの |
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kHzダイヤルは5kHz以上ずれていて、ポインタのゼロ調整の範囲を超えていました。これは1999年の入手時からそうでした。 サービスマニュアルをみると、VFOシャフトカップリングのネジを緩めて合わせ直せ、とあります。でもこのカップリングシャフトのいもネジ、手持ちのどのビットでも緩められません。面倒になって、VFOの調整コイルL502でダイヤルを合わせ込みました。kHzダイヤルのリニアリティに影響するのは覚悟して。 MHzハンドのそれぞれで第1局発発振周波数が本来ねらい値からずれているので、kHzダイヤルのゼロ位置はバンドによって数kHzずれています。ターレットウェハ上の局発周波数微調トリマで合わせ込めばよいのですが、面倒だなあ。 2022-02-16 kHzダイヤル調整 |
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各MHzバンドでの感度の違いを計ってみました。
テストに使っている目黒測器MSG-2161はアッテネータの動作がおかしくなってきていて、
同じ出力レベル表示の時でも出力が強かったり弱かったり。
概略測定でよいとはいえ、だまされないように作業しないとね。。 結果、MHzバンドによってかなりの感度の違いがあることが分かりました。 現状RFメータを60dB振らせるために必要なSG出力は、10MHzバンドで45dBuで済むのに対して、 18MHzバンド以上では90〜99dBuを必要とします。 原因はターレットの接触不良。 16MHzは利用頻度が少ないので、ウェハ側の接触があまり良くないままなのですね。 接触面を清掃し、かなり改善しました。 9・10MHzのふたつのバンドでの感度は飛び抜けて良好です。 ターレットコイルの調整で他のバンドの感度も良くなるだろうか。 29MHzバンドはターレット接触が安定せず、かつ感度は良くありません。 内部的に29MHzバンドを使う1MHz中波バンドの感度も低いまま。 2022-02-17 ターレット整備続き |
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51S-1のリヤエプロンにはアンテナやスピーカをつなぐRCAジャックが並んでいますが、
このうち3つはSPAREと表示されていて、内部的には何もつながっていません。
改造して手を加えてさまざまな通信システムの一部として使うための配慮ですね。 せっかくなのでありがたく使わせてもらうことにします。 まずひとつは51S-1ならではの音声出力第2系統、つまりライン出力のジャックとして。 ライン出力はリヤエプロンに600Ωのバランス出力ネジ留めターミナルがあるのですが、 ここの片側から取り出してSPAREジャックにつなぎました。これで簡単にPCにつないでFT8を受信できます。 ライン出力レベルはAF GAINつまみの中央にある小さなネジをマイナスドライバーで回すことによって可変でき、 メータスイッチを0DBMポジションにすればメータで出力レベルを読むことができます。 +10DBMポジションはレベルが高くてメータが振り切れてしまうときにメータ感度を10dB落とすためのもの。 Noobow9100Fのオーディオライン入力に直結するときは、 PCのオーディオインターフェイスライン入力のオーディオプロパティでボリューム70%、 51S-1側でライン出力レベルが0dBを越えないようにするとちょうどいい感じです。 ライン系はローカル系とは別の、 3極管初段と5極管電圧増幅のオーディオアンプを持ちます。 出力トランス2次側の専用巻線から初段カソードにネガティブフィードバックがかけられています。 このため音質はライン系よりも優れており、とくに低域の落ち込みが少なくなっています。 ライン出力を外付けアンプにつなぎと良質なスピーカを使えば、短波AM放送を良い音質で楽しめます。 2022-02-17 SPAREジャックにライン出力を出す |
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51S-1のAGC電圧は専用カソードフォロワでバッファされた後に専用アンプで増幅された上で生成されており、
検波段からはアイソレートされています。
このためAGCラインを引き出してオシロやデジボルで観測しても、
ケーブルが長くなくローインピーダンスのものをつながない限り、
ノイズは増えないし、復調動作に影響も与えません。
なのでAGCラインをリヤエプロンジャックに引き出して、テストしやすくしましょう。 AGC電圧は無信号時-0.7V程度で、100dBu入力で-6Vまで落ちます。 60dBu時で-3.5V程度。もっともこれはこの個体の現状であって、設計値は、はて、どのくらいなんだろう。 他の受信機では-10Vとかそれ以下に落ちるものもありますから、なんだか変化が少ないのではという気もします。 でも実際に受信機を使ってみると頻繁にボリュームをいじる必要はなく、音量レベルはいつもはいい感じです。 51S-1には遠隔地からリモートでRF GAINをコントロールする仕組みが用意してあってそれが悪さしている、 あるいは故障しているのではとも思いました。 が、回路図とサービスマニュアルを読む限り、その心配は無さそうです。 故障していればAGCライン電圧が大きく負に落ちて受信機がミュートされてしまう可能性はありますが、 無信号時AGC電圧は0に近いところにいますから。 それに回路図からすると、AGC電圧-12Vあたりで受信機が完全にカットオフしてしまうような設計であると読めます。 AGC電圧はどう信号が強くても-6Vを下回ることはない、のは正常に思えます。 マニュアル読み・回路図読みの努力は無駄ではなかったと思いました。 リヤエプロンにある、リモート系の600Ω平衡オーディオ出力ターミナル。 中ほどの3つのネジターミナルは小さなスチールプレートでシャントされているのですが、 このシャントは内部的にJ7 REMOTE RF GAINジャックをGNDに落とす役目も持っています。 もしこのシャントが外れてしまうと、REMOTE RF GAINジャックはオープンになり、 それはRF GAINを最低に絞って受信機動作を止めてしまうのです。 単なるオーディオ出力ターミナルのバランスト-アンバランストの切り替えにしか思えないシャントプレートが、 まさか受信機を完全停止させる作用を持っているとは。 世界のどこかにはこの真空管式受信機の最終世代最高峰モデルを譲り受けながら、 マニュアルをよく読まず、 電源を入れたけれど何の音も出ないので壊れていると思って捨てちゃった人がいるかも知れませんね。 2022-02-18 REMOTE RF GAIN GATE回路動作原理理解 |
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REJECTION TUNINGのセンター周波数はすこしずれているようでした。
つまみをセンターポジションから右に20度ほどの位置がセンターになっていました。 そこでQマルチの再調整を行いました。 クリスタルキャリブレータをONにし、6.500MHzをAMモードで受信し、 REJECTION TUNINGつまみをセンターポジションにしておき、その信号レベルが最低になるようにL108を合わせ込めばOK。 ノッチセンター周波数は、つまみ反時計方向90度 (9時の位置) で-5kHzほど、 時計方向60度 (2時の位置) で+5kHzほどです。 近接妨害信号を40dB排除できるREJECTION TUNING機能ですが、 SSBモードでCWを受信しているときに近接した局を排除できるかというと、そこまでノッチは鋭くはありません。 いっぽうCW用の800Hz帯域クリスタルフィルタは1kHz離れた信号をみごとにバッサリと切り落とします。さすが。 2022-02-20 Qマルチ調整 |
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アンテナをつながずにコールドスタートすると、電源投入後数分後にポップノイズが頻繁に出ることが確認されました。何かありますね。 ポップノイズはその後数分してほとんど出なくなりました。 温度によるものでしょうか、それともまだ交換していない+150V系電源の平滑キャパシタでしょうか。 アンテナをつながずに中間周波第1増幅管 V5 6BA6のプレート電圧をオシロで見てみると、 50Hzの電源リップルが0.6Vp-p乗っています。また、ときおりスパイク状に数V変化することがあります。 2022-02-21 ポップノイズの出所を探す |
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SPAREジャックから取り出したライン系オーディオをNoobow9100FのLINE INに入れてFT8をワッチしていたら、あれ?
いつのまにかデコードできなくなってるぞ。
信号強度はたっぷり、オーディオレベルも適正。
そのうちFT4の局が出てきたのでデコードモードをFT4にすると、これはデコードできています。でもFT8はダメ。 PCの内蔵リアルタイムクロックがずれたかなと思ってタイムサーバ同期を取ってみましたが、やはりダメ。 これはデコーダソフトが変になったかなと思ってアプリケーションをアンインストールしてからインストールし直しましたが、 状況に変化はありません。 あれこれと弄って、スペクトルグラムを見てふと気づきました。 15秒ほどの短い時間のなかで、復調周波数が20Hzほど、ふらついている。 FT8は15秒の送信タイムフレーム中にキーイング偏移わずか43.75Hzでメッセージが送信されます。 受信機側で15秒のうちに復調周波数が20Hz動いたら正しくデコードはできないでしょうね。 いっぽうでFT4は周波数偏移は62.5Hzでタイムフレームは7.5秒。 復調周波数の短時間ドリフトに関してはFT8より3倍は寛容であるはず。 FT4はデコードできるけれどFT8ではデコードできない、というのは、つまりそういうことなんですね。 これは、受信機側の問題。正常にきれいな音で明瞭に受信できているように聞こえて、実はまるきりダメ。 この復調周波数のふらつきはなぜ起きているのだろう。 いろいろ見て行くうちに、+150V系電源電圧が奇妙にふらついていることを見つけました。 アンテナ入力がなくオーディオ出力もないはずの状態でも、電圧はふらついています。 これは電源の平滑ブロック電解キャパシタだろうね。 そう思ってブロック電解キャパシタを切り離して新品の手持ち品をつないで見ると、やはり電圧は不規則に変動しています。 AC100Vの母線電圧の変化はそのまま+150Vラインの変化になりますが、 明らかに受信機内部由来のふらつきがあります。 これはヒントですね。どこかに動作が不安定になってしまった壊れかけの部品があることを示唆しています。 さあて、これはどうやって調べて行けばいいのだろう。 どれかの真空管のプレート電流が不安定に増減しているとしたら、 それに合わせてカソード電圧も増減しているはずだよね。カソードをグラウンド直結にしている管では使えない技だけど。 2022-02-21 FT8のデコードができなくなった - 電源電圧のふらつきを疑い始める |
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ローカル低周波出力管6BF5と12AX7A初段低周波増幅管は抜いてもふらつきが残ることはすでに確認済みですので、
他の真空管も一本ずつ抜いて、+140V電源バスの電圧ふらつきに影響がある管がないか探します。 7MHzバンドで発生しているので中波コンバータ管も第2周波数変換段も停止しているはずだし、 AMモードで発生しているのでBFO管を抜いても変化がないのは当然。 でもそういった思い込みでハマることもありますからね。 クリスタルキャリブレータ管も含め、全部一通りに。 +150Vライン/+140Vラインともに、x10プローブをつないでオシロで背見ると、ふらふらとした電圧の変動幅は0.2V程度。 ときおり0.6Vほど大きく振れることがあります。 作業を進めていく途中でギクリとしました。もしやVFO? VFOユニットの発振管は、そのスクリーン電圧を安定化させるのにツェナーダイオードの2直列を使っています。 ツェナーダイオードが間欠的に軽ショート症状を示していたら? +150Vバス電圧を下げるように動くでしょうし、スクリーン電圧の変化は発振周波数変動にダイレクトに効いてきます。 すごくありえそうなシナリオ。 これを調べるため、VFOユニットは簡単には開けられないのでシャシー裏でVFOユニットに行く+150V電源ワイヤを切り離し、 おそるおそる電源を入れると・・・よかった、+150Vライン電圧はふらついています。VFOユニットじゃない。 結果、この真空管を抜くと症状がはっきり変わる、というものは見つかりませんでした。 V1 高周波増幅管 変わらず V2 6EA8 第1周波数変換/第1局発 変わらず V3 6EA8 変わらず V4 6EA8 変わらず V5 中間周波第1増幅管 変わらず V6 12AX7A 変わらず V7 6BA6 変わらず V8 6BA6 変わらず V9 6BA6 AGC増幅管 変わらず V10 6EA8 変わらず V11 5670 変わらず V12 6BF5 変わらず V13 6AK6 リモート系低周波出力 変わらず V14 12AX7 変わらず V15 VFO 変わらず V16 6EA8 変わらず V17 6BA6 変わらず 何もわからなかったのでこのチェック方法は失敗だった・・・と思いましたが、いやいやそうじゃない。 どれかの真空管を抜くと電源電圧のふらつきが止まるということはない、ということが判明したのですよ。 偉大な前進なのです。 いや、言い訳とか悔し紛れとかそうじゃなくて、本当に。 2022-02-20 真空管を1本ずつ抜いてみる作戦 進展なし |
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RF GAINを操作してAGC電圧を変えると、+150Vバス電圧は大きく変化します。
真空管のグリッドバイアスを変えればプレート電流が変化するためですね。
RF GAINを反時計方向回しきりにするとAGC電圧は-15V程度まで下がり、受信機はカットオフ状態になります。
この状態ではAGC電圧にふらつきはみられませんが、+150Vバス電圧はやはりふらふら。
真空管のグリッド電圧が固定であるならプレート電流も本来は一定であるはず。
それが変動しているというのなら、スクリーンバイパスやプレートバイパスのリーク故障が起きているのかもしれません。
プレート抵抗やスクリーン抵抗の抵抗値が不安定になっているということも考えられますね。 さあこれはどうやって絞り込んでいこうか。 電源平滑ブロック電解キャパシタ周辺の配線をみると、+150V系は3本、+140V系は2本のワイヤで電源電圧が取り出され、 受信機各部に供給されています。 +150V系は白シースに赤ラインの入ったワイヤ、+140V系は白シースにオレンジラインの入ったワイヤが使われていますが、 ワイヤはいったん太いワイヤーハーネスとして束ねられているため、 どのワイヤがどこに行っているのかを知るのは容易ではありません。 まずはこれら合計5本のワイヤを個別に切り離して、電源バスのふらつきを引き起こしているワイヤがあるかどうかをみることにします。 最初に+140V系の2本を切り離したところ、ふらつきは残っています。+150V系のどれかか。 つぎは+150Vの3本のワイヤ。 マーフィの法則ですね。 3本のうち2本を切り離してもふらつきがあります。残る1本に原因が潜んでいる。 2022-02-21 電源配索をカットして電圧変動を引き起こしている部分を絞り込んでみよう作戦 |
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今日は一日実機は弄らずだだ連続動作させるだけで、昨晩の作業を振り返って考えました。
電源ラインの電圧ふらつきは、どこか具体的な場所の消費電流が不安定に増えているのではなくて、
負荷の消費電流が増えると発生するのでは? 電源回路から負荷をすべて切り離すと電圧のふらつきは収まります。 でもどれか一部分でも負荷をつなぐと電圧ふらつきが発生する、のだと思います。 もしそうだとしたら、どういう理屈なのだろう。電源トランス、ダイオード、チョークコイル、平滑キャパシタ・・・電源回路そのもの? 2022-02-22 消費電流に関係しているのでは? |
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そうですよね、その通りです。
せっかく最高級の美しく堅牢な結線処理にニッパを入れて台無しにする前に、もっと良く観察するべきでしたね。
さあ、よく見れば何かが分かってくるでしょうか。 ごくわずかな復調周波数のふらつきを観察するのにFT8デコードソフトウェアWSJT-Xのスペクトログラムが都合がいいので、 これをよく見てみることにしましょう。 実際のFT8の信号を受信しながら、復調信号の3kHzあたりにうっすら聞こえるようにシグナルジェネレータの信号を注入しています。 右のほうに連続的な縦線が見えていますね。 これがそうです。 3本、あるいはそれ以上の本数見えているのは、 老兵 目黒測器MSG-2161が不調で、RF出力に50Hzのハムが乗ってしまっているからです。 キャリア周波数を50Hz正弦波(と その高調波) の音声信号でAM変調をかけているのと同じことです。 受信機が正常で理想的なら、この縦線はきれいな垂直線で表れるべきで、左右に振れるべきものではありません。 右に見えているスクリーンショットでは周波数変動はほとんどなく、安定してFT8信号がデコードできています。 |
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真ん中と下のあたりは、不安定な周波数変動はさほど強くなく、かわりにAGC電圧の変化の影響が見えます。
15秒の送信フレームの境目で各局の送信が停止するとAGC電圧がゼロに近く回復し、
それに応じて復調周波数が動いています。
つぎのフレームで各局が送信を始めるとAGC電圧が負に落ちて、復調周波数がもとに戻っています。 スペクトログラムの上の方 (時間的にあとのほう) では、おそらくAGC電圧とは関係ない変動が発生しています。 この変動が起きている間、05:51:15 05:51:30 05:51:45 の3フレーム 合計45秒間は、まったくデコードできていません。 |
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前半 スペクトログラムの下半分では15秒のフレームの境目で信号強度に応じた復調周波数変動が見て取れますが、
アンテナを外すと変動は収まります (上半分)。 そういえば最初にFT8復調不能に気がついたのは夕方4時頃でした。 翌朝は調子が良くなったのに、次の日の夕方もまた不調になりました。 今考えると、受信していたのは7MHzの国内FT8周波数で、夕方4時ころになると7MHz帯は日本国内の信号がとても強力になり、 AGC電圧が大きく落ちて、かつ大きく変動するわけですね。 それに応じて受信機の真空管のプレート電流が変化して電源電圧が変動し、 それを受けて受信周波数のわずかな変化が引き起こされる。 結果として、7MHz国内FT8は、夕方にデコード不能になる。 奇怪な現象の説明がつきました。 それにしてもこれは驚いた、アンテナを外した状態でもごくわずかに信号が受信できています。 スピーカからの音はランダムなホワイトノイズばかりでほとんど何も聞こえていないのですが、 スペクトログラムでは薄いけれどはっきりとFT8信号が見え、 そして多くの局がデコードできています。 これが微弱信号でも復調できるFT8の凄さなんですね。 |
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それではアンテナをつながずAGC電圧が0Vに近くかつAGC電圧の変化が少ない状態だといつも周波数変動が少ないかというとそうでもなく。
なにかの拍子に不規則な周波数変動が発生しはじめ、デコードできなくなります。
かすかにFT8信号が見えますが、まったくデコードできていません。 つまり、AGC電圧変動に起因する周波数変動の現象と、 AGC電圧とは関係がない不安定な周波数ふらつきの現象があって、 不安定なふらつきは発生したり収まったりする、ということのようです。 |
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アンテナを外した状態 (下半分) から、アンテナをつないでみたところ。
アンテナをつないで信号が入ってくるとAGC電圧がぐっと下がっているはずですが、
復調周波数に大きく影響したふうではありません。 アンテナをつないでいるとき (上半分) 、たまたまなのでしょうか、 15秒の送信タイムフレーム中に変動がほとんどなかった08:50:30のフレームと08:51:15のフレームでは多くの局がデコードできていますが、 その途中の08:50:45と08:51:00のフレームではまったくデコードできていません。 復調周波数の変動がデコード不能の原因であることを明確に示しています。 |
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途中で突然受信機の感度が上がりました。
スペクトログラムの背景のブルーが明るくなっています。
バックグラウンドノイズのレベルが高くなったためです。
スピーカで聴いていてもそれとわかる程度のレベル増大。
ゲインが上がったのはAGC制御を受けている高周波・中間周波数段なのかもしれないし、
低周波段なのかもしれません。
あるいはアンテナチューナー・プリアンプ (プリアンプのスイッチは切ってありますが)やアンテナケーブルの接触不良という可能性もあります。 感度が上がるとともに周波数変動も大きくなったようにも見えます。 パルス的な変動が見えていますが、正確な周期性を持っているようには見えません。 |
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周期的な周波数変動がきれいに観測された例。
FT8モードで動作しているのでスペクトログラムの緑の横線は15秒間隔。
正負ペアのバルス的な変動は16秒ほどの一定周期で発生しています。
かつ、それと同期したゆっくりした変動が見て取れます。
なにがこの16秒周期を発生させているのでしょうか? またこの周期はFT8のフレーム時間間隔とは非同期に見えるので、 周期を発生させているのはFT8の15秒の送信間隔ということではありません。 |
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「安定して」発生していた約16秒周期の周波数のふらつきが、突然消えてすっかり安定しました。
この周期的なふらつきは、やはり受信機の外部の別の装置から・・・ 商用電源ライン経由で来ているものなのでしょうか。
足元に使っているアイリスオーヤマのパネルヒーターが、一定温度に達してサーモスタットが一定周期でON/OFFしていて、
それが電源電圧変動を起こしている、というのはありえそうな話です。 |
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今日の観察をまとめると、以下のようになります。 2022-02-23 これだから素人はダメだ! もっと良く見ろ! - でもまだよくわかりません・・・ |
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その発生原因は未だ不明なままだけれど、電源電圧が変動すると復調周波数が変動する。
入力信号強度が変化するとAGC電圧が変化してその結果電源電圧が変動して、復調周波数が変動する。
ではさて、電源電圧が変動したときに復調周波数が変動する要因は何でしょう。 51S-1は7MHz帯を受信するときはダブルスーパーヘテロダイン動作し、第2周波数変換段は休止しています。 USBを受信しているときはBFOが動作します。 よって、復調周波数を決定するのは の3つです。 第1局発とBFOはそれぞれ水晶発振ですからね。 発振周波数が変動するとしたらVFOでしょう。 なので ユニバーサルカウンタ で測定してみました。 第1局部発振器、― マニュアルではHF OSC ― は、発振周波数 9.999636MHz。 RF GAINを100%から0%に変化させても、発振周波数は動きません。 1分以内の周波数変動は1Hzで、これはカウンタの最大分解能です。 やっぱり水晶発振回路は安定していますね。 BFOは発振周波数実測値 500.09565kHzでした。 RF GAINを100%から0%にすると1Hzほど変化しましたが、 同じ設定のままなら変化幅は0.2Hz程度。 これに対してVFOの発振周波数は 3.45900MHz (当然メインダイヤル位置で変化します)。 電源電圧の大きなふらつきが出ておらずAGC電圧の変化もないとき、 VFO周波数の短時間での変化は2Hzといったところ。 しかしいったん電源電圧変動が出始めると、 10Hzから20Hz、あるいはそれ以上変動します。 やはり復調周波数が変動する理由はVFO発振周波数の変動です。 VFO発振周波数は、80dBほどの強い信号が入ると、無信号時に比べて30Hzほど下がります。 また、RF GAINを0%に絞ると、無信号でRF GAIN 100%時に比べて40Hzほど下がります。 電源電圧の不安定なふらつきが解消されたとして、 信号強度がS=1〜S=9+20dBの間で変化したときに復調周波数が30Hzも変化してしまっていては、 FT8の安定な受信は望めませんね。 どこかが故障しているのか、 それとも51S-1はこういうものなのか? もしこれが正常挙動だとするならば、 SSBやCQの受信には実用上の問題が全くなくても、FT8には絶対的に力不足です。 75S-1 ではここまでにFT8復調に支障を感じたことはなかったのですが、 それもさほどに不思議ではないのかもしれません。 75S-1のVFOである70K-2は周波数可変範囲が2.5〜2.7MHzの0.2MHzなのに対し、 51S-1のVFOである70K-7は3.5〜2.5MHzの1MHzを可変します。 周波数安定度については70K-7のほうが数倍不利なのは不思議ではありませんね。 2022-02-24 発振周波数変動測定 |
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まあ今の時点ではやはり電源平滑電解キャパシタが一番疑われているわけですけれど、
交換するのに適した部品の在庫がないので、
入手できるまでの間 FT8や短波放送を聴いて楽しむことにします。
楽しむことにしますといいながら、
聞こえてくる電波はしだいに不安の声が強くなり、
そして2022年02月24日、とうとう侵攻が始まってしまいました。 物心ついて私が聞き始めた1970年代中盤から短波はいつも大きな不安に満たされていたし、 それは1930年代から続いてきたことです。 この51S-1は1963年製造モデルですからキューバ危機は知らないのでしょうが、 ベトナム戦争はその闇をずっと聞いていたのでしょうし、 ことによると参戦していたのかもしれません。 この受信機はどんな人生を送ってきたのだろうか。 B電源に横河電機の電流計をつなぎ、全電流を測ってみます。 電源投入直後の全電流は12mA。 真空管が動作し始めると、 全電流はざっくりと100mA。 装置温度が高まると110mAほどにまで増えるようです。 6MHzバンド以下で第2周波数変換段が動作すると全電流は5mA増加。 SSBモードにしてBFOが動作すると全電流は1mA増加。 クリスタルキャリブレータをONにすると全電流は1mA増加。 入力信号がなくて全段フルゲイン動作しているときが消費電力は最大で、 60dBほどの強い信号を受信しているときは全電流は15mAほど下がります。 RF GAINを絞り切ると無信号時に比べて全電流は23mA下がります。 現状でB電源電圧は128V前後。 なので、この受信機はB電源系で13ワットの電力を消費しています。 2022-02-28 B電流測定 |
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+150V系B電源負荷を切り離して、代わりに100Vのちいさな電球を灯らせてみました。
+140V系の負荷はつながったまま。
B電源の全電流は60mA程度。
この状態でも、B電源電圧のふらつきは発生しています。
ふらつきの原因は+150V系の負荷にあるのではないことがはっきりしました。
やはり電源回路側に問題がありそうですね。 B電源系に入っているチョークコイルの直流抵抗値は100Ω。 B電源の全電流が10mA変化すれば、チョークコイルでの電圧降下は1V変化することになります。 無信号受信時と強信号受信時ではAGC動作によりB電源の全電流は20mAほど変化するわけですから、 信号強度によってB電源電圧は2Vほど変化することになります。 信号強度によるVFO発振周波数の変動を抑えたければ、 VFO電源はチョークコイルの手前から取り出すのがよさそうです。 2022-03-07 +150V系電源 外部負荷でテスト |
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+150系・+140系のB電源に使われている3つの平滑用電解キャパシタ
- 実際にはひとつのブロックキャパシタに入っている - は、
どれも平滑作用を行っていて致命的な容量抜けはないようなのですが、
しかし不安定にリークしているということはあるかもしれませんね。
なので3つとも新品の、47uF 2個と120uF 1個に交換しました。
とりあえずの仮配索。
しかし電源電圧のふらつきは変わったようには見えません。 2022-03-08 ブロック電解キャパシタ3つを新品に 仮配索 ふと気がつきました。 B電源は電源トランス2次巻線電圧をシリコンダイオードブリッジで全波整流しているのですが、 そのリップル電圧波形は20ms周期、つまり50Hzです。 全波整流なら100Hzが現れるはずなのに。 手持ちの素性不明の整流ダイオードでブリッジを組んで試したら、 低圧用ダイオードだったらしく、電源ON後数秒でショート故障を起こし、ヒューズが飛んでしまいました。 51S-1のヒューズは、AC115V仕様の場合は1.5アンペア品。 在庫はなかったので2アンペア品を装着しました。 1.5アンペアヒューズを買っておこう。 整流用ダイオードの在庫を見るとかなり前に埼玉ハムの集いで120円で買ったブリッジダイオードがありましたので、 それを仮配索。 RVB-2506、逆耐圧600V、順電流25A。 十分すぎるスペックです。 結果、整流出力のリップルは100Hzになったし、B電圧はすこし高くなり、 またリップル振幅も半分以下になりました。 しかしB電源電圧の不安定なふらつきは残ったまま。 いっぽうで、スパイク状の急峻な変化は観察されなくなりました。 おそらくダイオード不良は実際にあったのでしょう。 2022-03-09 B電源整流ブリッジダイオード交換 RBV-2506 仮配索 |
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BGMプレイヤーとして日中も連続稼働させている51S-1ですが、
ボリュームを完全に絞っているのにカサカサとスピーカからノイズが出始めました。
1分ほどして収まり、その後数時間、出ていません。
いったい何が原因だったのだろうか。
とりあえずは忘れることにしますが、
何かが潜在しているのかもしれませんね。 原因調査を続けるなか、 テクトロニクスのデジタルストレージオシロスコープの冷却ファンが止まり、 オーバーヒートで動かなくなりました。 低速スクロールスキャンしてくれるこのオシロは電源電圧のふらつきを観察するために欠かせません。 51S-1作業の手を止めて、 さきにオシロを修理。 2022-03-11 Tektronix 2230冷却ファン交換修理 |
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B電源のふらつきの原因が特定できないので悔し紛れをいうわけではないのですが
(注:悔し紛れです)
、電源電圧がふらつくから困っているのではなくて、
復調周波数が数秒間のうちに10Hz程度変動してしまうから困っているわけです。
そして現状では、復調周波数変動にいちばん効いているのは入力信号強度。 信号強度が高まるとAGCが効いて受信機の感度を下げ、 真空管のプレート電流が低下し、 チョークコイル両端の電圧降下が減り、 だからB電圧が高くなり、 その結果VFOの発振周波数がわずかに変化してしまう。 コリンズ70K-7 VFOユニットの中にはツェナーダイオードが入っていて電源電圧変動の影響を抑えるようになっていますが、 FT8復調に求められるオーダーには不足ということです。 VFOへの電源電圧を安定化させればよい、はずですね。 +150V電源バスから70K-7 VFOユニットへは、1kΩの抵抗を介して電源供給されています。 ここに100uFの電解キャパシタを追加してみました。 すると電源バスに載っているACリップル分はかなり下がったし、 電圧変化はすこしゆったりしたものとなりました。 しかしまだ不十分です。 さらなる対策としては、電圧安定化回路を追加することが考えられますね。 いっぽう筐体サイズの制約もあります。 まずはVFOのB電源をチョークコイルの手前から取り出すことを試してみましょう。 チョークコイルによる電圧降下の影響を受けなくなるはずです。 ブリッジダイオード直後から2kΩを通した後に47uFで平滑、さらに1kΩを通して47uFで平滑。 これでハムはほとんどない約140VをVFOに供給できます。 結果、VFO電源電圧へのAGCの影響は明らかに低減されましたが、 残念、まだ不足。 AGCの影響はなくなってはいません。 2022-03-13 VFO電源をチョークコイルの手前から取り出してみる |
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AGC動作でB電源電圧が変動するのは確実だし、
平滑キャパシタの劣化・整流ダイオードの劣化による電源電圧変動があったのもほぼ間違いがありません。
でもB電源電圧変動は、やはりかなりの部分が商用電源の母線電圧変動によるもののようです。
比較のために、商用AC100Vではなく、バッテリとACインバータで試してみましょう。 シリコンバレー駐在時代にテスト車両走行中のログ取り用の東芝J3100を動かすために使っていたDC12V-AC115Vインバータを使い、 デリカD:5に使っていて先日引退した12Vバッテリを接続。 バッテリはバッテリチャージャでフローティング充電しながら動作。 バッテリチャージャは定格最大の6Aとちょっとを出力しています。 バッテリ充電量はジリ貧状態。 1〜2時間のうちに電圧が下がってしまうでしょうね。 オシロでモニタしているのはVFOのB電源電圧。 チョークコイルの手前から取り出し、2段の平滑フィルタを通していますが、 インバータ由来のスイッチングノイズがはっきり残ってしまっていますね。 テストをはじめた直後は商用AC100Vのときと同じような電圧ふらつきがありましたが、 10分ほどすると電圧は安定しました。 RF GAINを絞って真空管をカットオフ状態にすると、 電源電圧のふらつきはほとんどなくなりました。 変動幅は±0.1V以内で安定しています。 |
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25年前のACインバータは正弦波タイプではないので受信妨害となるノイズを出していますが、
スペクトログラムを見ると復調周波数はしっかり安定していることがわかります。
シグナルジェネレータ信号の復調周波数 (3720Hzあたり) は1本の線でピシッと安定しています。
やはりいま観察しているB電源電圧変動の半分は商用電源の母線電圧変動によるものという感じですね。 というわけで、母線電圧変動とAGCの影響による電源電圧低下の影響をなくしたければ、 合理的な対策はVFO駆動用の定電圧電源回路を追加することだ、ということになりましょう。 2022-03-14 インバータで動作させてみる - B電源電圧ふらつきは母線電圧のふらつき |
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ぽかぽかと春の陽気になった昨日出かけて花粉をいっぱい浴びちゃったからかなあ、
月曜休暇を取ったのに、熱っぽくってだるくってなんだか元気なし。
朝から腰も痛いし。
16時からちいさな仕事をひとつ入れられて休暇気分に水を差された、ということもありますけれど。
なので作業も大した進展がありません。 今夜の作業は、仮配策で動かしていたB電源整流用ブリッジダイオードを取り付け。 本組付けにはRVB-2506ではなくてD25XB60を使いました。 スペックは同じ、逆耐圧600V、順電流25Aです。 取り外したオリジナルの整流ダイオードGE製の1N1695は、どれも順方向直流抵抗値19Ω前後を示していました。 おっかしいなあ、このあいだ測った時は1本が34Ω、もう1本が50Ωを示していたのに。 それに4本のうちの2本は、はんだこてを当てただけで簡単に取り外せました。 ほかのすべての部品のような、がっちりしたからげ配線がされていませんでした。 これは使用過程で交換修理がはいっていたのかもしれません。 2022-03-14 ブリッジダイオードD25XB60取り付け |
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新しいシグナルジェネレータ、SIGLENT SDG2122Xが届きました。
120MHzまで出力できるし、2チャンネル出せるし、周波数設定分解能も高いし、信号純度も良いはず。
これからいろいろ活躍してもらいましょう。 AM-FMラジオ受信機テスト用に設計された目黒測器MSG-2161に比べると、汎用機ゆえに使いづらい点も多くあります。 のんびり工夫して行くようでしょうね。 一番最初に困ったのは出力レベル。 出力レベルを最低に絞っても1mVp-pも出てしまいます。 受信機の受信感度を測るには0.5μVとかまで絞りたいので、そのためにはアッテネータを用意する必要がありますね。 もうひとつは、まあ当然ではありますが、 FMステレオ変調はできません。 外部にステレオマルチプレクサを用意しなくてはなりません。 うまくいくかなあ。 2022-03-17 新シグナルジェネレータ SIGLENT SDG2122X 使用開始 |
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電源平滑ブロック電解キャパシタはシャシー上に残したまま完全に切り離し、
仮配策していた新品電解キャパシタをシャシー内部に取り付けました。 PTOのB電源をチョーク前から引き出してドロップ抵抗+電解キャパシタ2段で平滑する作戦は、 AGC電圧変化によるPTO電源電圧変化をある程度は低減できますが、 完全とは言えないし、なにより母線電圧の変化に対しては効果がありません。 なので仮配策したPTO専用平滑回路は取り外して、 ひとまず電源回路の手入れは終了としました。 FT8の安定受信に向けての作戦は、 150V入力・135V出力のコンパクトな安定化電源ボードをつくってシャシー内に追加するということにします。 これはおいおいやるようだなあ。 写真中央に縦に配置された長いハーメチックシール電解キャパシタが見えますが、 これは手持ちのバージョンの回路図には記載がありません。 このキャパシタはSSB/CW用オーディオプリアンプトランジスタの電源 DC+24Vライン - 実機ではDC+20V - に入った平滑キャパシタのようです。 SSB/CW受信時の電源ハムを低減するのが目的なのでしょう。 しかしこのキャパシタは切り離しても受信音に変化は感じられません。 いまは切り離したままとしています。 2022-03-23 平滑電解キャパシタ取り付け |
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51S-1のPT0のすぐ近くのシャシー上に、J6 EXT VFOジャックがあります。
これはΦ3.5mmミニジャックで、外部VFOを接続するためのもの。
プラグを差し込むと内蔵VFO コリンズ70-K7 PTOの発振出力が切り離され、
プラグからの信号が第3混合管 V4A 6EA8のカソードに注入されます。 このジャックを使い、買ったばかりのシグナルジェネレータを外部VFOとして使ってみます。 |
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51S-1のVFOは3.5MHz〜2.5MHzを発振します。
メインダイヤルが0kHzのとき3.5MHz、1000kHzのときに2.5MHz。
いま7.074MHzを受信しようとするなら、
3.500MHz - 74kHz = 3.426MHz に合わせればよいはず。
実機ではVFO周波数が3.425 670MHzで7.074MHz受信になりました。
本来値と330Hzほどずれていますが、
これは第1局発周波数とBFO周波数のずれのためでしょう。 シグナルジェネレータ出力は1Vp-pあれば正常に復調でき、 2Vp-p以上にしても受信機の総合感度はほとんど変わりませんでした。 EXT VFOジャックにプラグを差し込んでも内蔵VFOは発振したままなので、 ジャック部で回路が切り離されているといっても飛びつきでビート音が発生したりするかもしれません。 が、このセットアップでは全く問題がありませんでした。 |
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FT8を受信しスペクトログラムを見てみると、3500Hzに見えている連続音 -
7.0775MHzで発振している目黒測器MSG-2161の出力を51S-1のアンテナ端子に疎結合 -
が垂直に一直線です。
VFO発振周波数がきっちり安定であればこうなる、ということですね。
そしてこの状態だと、いままでになかったほどに多くの局がデコードできています。
やはり復調周波数がわずかでもふらつくとデコードに支障をきたすというわけですね。 そしてこれは、 コリンズ70K-7 PTOへの電源電圧安定化回路を追加すれば、FT8受信性能はかなり向上するはずだ、ということです。 2022-03-27 外部VFOでテスト |
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朝一番のコールドスタート - 春めいてきて室温は15度前後です - からの復調周波数のドリフトを見てみると、
1時間かけて50Hzほど動きました。
この変化はとてもゆっくりしているので、FT8デコードに悪影響はないでしょう。 そのいっぽうで、右の画像に見えるように、 ±10Hzほどの不安定な変動も観測されました。 ただしこの動きは継続せず、数分間で収まりました。 目黒測器は夜間もずっと電源を入れっぱなしでしたからそれが原因とはあまり考えられず。 とすると一過性の電源電圧の変動を受けて第1局発やBFOの周波数が動いたのか、 それとも次第に機器が暖まっていく中でターレットの接触抵抗がわずかに変わり第1局発周波数が変化しているのか。 程度は軽いながら、不安定な周波数のふらつきは第1局発やBFOにも原因はありそうです。 2022-03-28 復調周波数ふらつきはVFOだけが原因なのではない |
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ターレットの接触不良は、皆無とまではいきませんが、実用上さほどに問題とならないところまで回復しました。
長期間放置せず、19MHz以上の普段使わないバンドも含めてときたまMEGACYCLEつまみを回してやることが必要みたいですね。
で、調子が良くなったところでバンドごとの感度の傾向やぱらつきを再度見てみました。
結果は右。 この測定は、51S-1のRFメータが同じRF=60dBを支持するのに必要なアンテナ入力レベルを測定することで行いました。 メインダイヤルは基本的に500kHz固定、 ただし各バンドでわずかに500kHz位置がずれるのでバンドごとに感度最良となる位置にメインダイヤルを合わせています。 基本的な傾向としては、4MHzバンドが一番感度が良く、周波数が高くなるにつれ感度は下がっていっています。 赤丸で示した29MHzバンドと、内部的に29MHzバンドをつかう1MHzバンドの感度が良くありません。 まったく無感というわけではないので、 ターレット上の同調素子の不良なのかもしれません。 2MHzバンドを2.500MHzでテストすると、スプリアス混入と思える異常発振に近い症状に出くわしました。 そうか、51S-1にとって受信周波数2.500MHzは特殊な周波数。 2.500MHzを受信しようとするときだけ、受信周波数と第3中間周波数がぴったり同じになるのですね。 VFOは3MHzを発振していて、BFOは0.5MHzを発振していて、 漏れたその2つの周波数の差の周波数から2.5MHzが受信機内部で発生する可能性もあります。 51S-1は当時最高峰のゼネラルカバレージ受信機ですが、 51S-1にとっては2.5MHzとその前後0.1MHzくらいの範囲は鬼門であると見えます。 そのほかは24MHzバンドが前後のバンドと比べてもはっきりと感度が悪くなっています。 これもターレットの接触の問題ではないようで、 ターレット上の素子あるいはピストントリマの調整不良なのかもしれません。 2022-03-30 各バンドの感度傾向とばらつきを測定 |
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70K-7 PTOのL502を回して、kHzダイヤルの読みを再調整しました。
kHzダイヤルのヘアラインをセンターにセットしたときの実際の周波数とダイヤルの読みの差を、
7MHzバンドで測ってみました。
結果は右。 実際の受信周波数が7.400MHzのとき、kHzダイヤルはほぼぴったりの400kHzを示しています。 しかし実際の受信周波数が7.000MHzのときはkHzダイヤルは998kHzを示しています。 実際の受信周波数より2kHz低く表示されているわけです。 kHzダイヤルのヘアラインはZERO SETつまみによって±4kHzほど動かすことができます。 右のグラフの最大値最小値は±2kHz以内ですから、ヘアラインの調整範囲内。 7.100MHzでヘアラインを調整すれば、 実際の受信周波数が7.050MHzのときはダイヤルは実際の周波数よりも0.5kHz低く、049.5kHzを示すことになります。 7.074MHzの国際FT8周波数に合わせたければ、 7.100MHzでキャリブレーションし、 kHzダイヤルを073.8に合わせればOK。 51S-1のサービスマニュアルのスペック欄には、 ダイヤル確度は「直近の100kHz点でキャリブレーションしたときダイヤル誤差は400Hz以内」と書かれています。 この個体ではキャリブレーションしても最大500Hzの誤差が出てしまうので、 わずかにスペック未達ということになります。 まあそれでも1kHzまで読めるわけで、 当時のほかのゼネラルカバレージ機では不可能だった領域です。 |
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復調周波数のふらつきは現状が51S-1の実力値だ、と思うことにしました。
FT8の安定復調を目指すならばPTOの安定化電源回路追加、
さらには各管のスクリーングリッド電圧安定化の工夫が必要なようすです。
現状でもまあ7割方は復調できているので、ここでいったん作業終了としましょう。 AF GAINを絞っているのに出たカサカサノイズはここしばらく全く出ていません。 電源回路のダイオードやオリジナルの電解キャパシタの劣化が原因だったものと推測します。 1999年に発生していたSメータのゼロ点変化は、今回整備を始めてからは一度も確認できていません。 ゼロ点調整トリマの接触不良だったのではないかと思います。 夢と時空の部屋のラックにセットアップして、メイン受信機の座につきます。 ケースがないのはまあまだ我慢できるとして、 シャシー底面の通風を確保した底板とフートは用意してあげたいですね。 今回初めてライン系オーディオ出力をグライコとアンプを介してスピーカで聴いてみましたが、 あれえ? ローカル系よりも音質が悪い気がする。 気のせいでしょうか? 2022-03-31 夢と時空の部屋ラックに配備 メイン受信機として復活 |
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Lafayette HA-225
で、DC150Vを生成する安定化電源回路が動作しないトラブルに出くわしました。
放電電圧150Vの0A2放電安定管が使われていますが、
シリーズドロップ抵抗入り口ですでに電圧が148Vまで落ちているために放電安定管が点弧せず、
よって電圧安定化作用が起きない、というものでした。 はて、51S-1のPTO発振周波数不安定も同じような原因じゃないのかな? 2022年4月に運用し始めた中央研究所 夢と時空の部屋では、 AC100V->AC120Vのステップアップトランスは使っていませんでした。 AC115Vで動作する51S-1にとってはAC100Vでは電源電圧が低く、 内部B電圧もそれに比例して低く、 PTOの内部にあるツェナーダイオードがうまく電圧安定化の作用をしていないのかもしれません。 そう思って長らく使っていなかった汎用ステップアップステップダウントランスを使ってAC120Vで51S-1を動作させてみましたが、 WSJT-Xのスペクトログラムで見る限り、 復調周波数の短時間のふらつきは残っています。 ひょっとしてPTO内部のツェナーダイオードの不良なのかもしれないねえ。 けれどPTOのシールドケースはむやみに開けるべきものではないし、 コリンズの心臓部といえるそこを開ける勇気はまだありません。 2022-11-04 AC120V電源で動作トライ PTO周波数ふらつきはなくならない |
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PTOの短周期周波数変動はやはりPTO内部の電圧安定化回路 -
スクリーングリッド電圧を安定化している2本のツェナーダイオードの劣化かなあ。
そういう事例が他にもあったりするのかな?
ネットをサーチしてみると、
ずばりの事例はぱっと見にはなさそうですが、
Collins Collectors Association JournalのIssue #67
に、気になる記事を見つけました。
75S-3Aに使われているPTOにおいて、真空管の違いで、電源電圧変化に起因する発振周波数変動のぐあいが変わってくるという記事です。 ほんまかいな。 明らかな不良球ならともかく、 認識できるような差なんて出るのかな。 真空管をとっかえひっかえしてああでもないこうでもないなんてのはオーディオ屋さんの生業でしょうに。 でもまあ、ウチの51S-1はそういえばPTOの発振管はソケットから抜いたことさえなかったな。 試してみるのも悪くない。 |
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51S-1の70K-7型PTOには7543が使われています。
ラボの在庫リストを見たところ、残念、7543の在庫はありませんでした。 7543は6AU6Aの対振動性能を改良した高信頼管で、ばらつきを低減するための品質管理が取られていますが、 電気的特性は基本的に6AU6Aと同等です。 2008年の中央研究所への移転の時以降開けることがなかったスペア真空管が詰まった段ボール箱を開け (ということは過去14年間に真空管の球切れというトラブルはただの一度もなかったわけですね)、 6AU6 2本と6AU6A 2本を取り出しました。 まずは一番新しそうな、モトローラ製の箱入り新品を使ってみるか。 いざPTOから真空管を取り外してみると、あれ? 7543ではなくて、6136が使われているよ? まあともかく、6AU6Aを差し込んで電源ON。 受信機が動作し始めて、最初は熱変化が大きいですから発振周波数はふらふらと数100Hz変動し、 瞬断でもあったかのように一瞬大きく変化したのちに・・・ 発振周波数がぴたりと安定しました。 2022-11-07 PTO発振管に新品6AU6Aを使ってみる |
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18時間動作させて、いままでなら午後4時からとかの夕方はいつもFT8復調周波数はふらふらしていたのですが、
6AU6Aでは安定したまま。
たまに顕著な電源電圧変動を受けて一瞬動揺することはあるものの、短時間でのふらつきはないし、
ローカル局がSメータを65dB振らせて入感しても周波数は安定しています。 いやいや、真空管のせいではないでしょう。 ソケットの接触不良を招いていた酸化被膜が球を抜き差ししたときに剥がれて接触が回復したんだよ。 ソケットをアルコールで拭いて、ターミナルに接点洗浄剤をごくわずかにつまようじでアプライして6136を挿して試すと、 真空管が動作し始めてすぐに、いままで見慣れていた短時間の小刻みな周波数変動が起きます。 6AU6Aに挿しなおすと、周波数はぴったり安定。 やはり真空管の不良だったのか。 2022-11-08 6136を6AU6に交換すれば短周期周波数変動は収まる |
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まだ結論には早い。
「真空管を交換したら症状が消えた」
のは事実ですが、
球の特性ではなくて6136はピンの曲がり具合で接触不良が起きるのかもしれないし、
PTO内部回路素子の劣化で動作の余裕度が落ちていて本来なら問題ないわずかな球の特性の違いで動作不良が起きるのかもしれません。
この6136はなにかほかの球とは違う、不良とまでは言えない何かがあるのでしょう。
それは何なんだろう。 真空管テスタ を引っ張り出して、 球のエミッションをチェックしてみました。 このテスタは簡易式なので絶対値の計測はできませんが、 複数の球の比較には十分使えます。 テスタを6AU6A用にセットアップして6136のエミッションを見ると、 テスタのメータ読みは80。 いっぽうRCA製の新品6AU6Aではメータ指示は85。 やはり箱入り新品のJAN 6AU6 (メーカーはRCA) でも85。 どうやら6136は新品球に比べエミッションが6%ほど減っているようです。 でもねえ、エミッションが6%落ちたくらいで動作異常を示すようなクリティカルな設計じゃないはずだよねえ。 軍用ともなれば、むしろ民生機よりもロバストな設計をするはずだよね? 2022-11-09 6136のエミッションをチェック |
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この51S-1の70K-7 PTOには6136が使われているということは今回しげしげと見るまで気がつきませんでした。
回路図にもほかのいろいろな記事にもPTOの発振管は7543だと書かれていましたから、
信じ込んでいたのです。
ちょっと調べた限りでは6136を使った70K-7というのは見つかりません。
BFO管にも7543でなくて6BA6が使われていたり、出回っているサービスマニュアルにも記載がないキャパシタがついていたりと、
やはりウチの51S-1はごく初期の生産ロットのようですね。 ともかくも、水晶発振PLLシンセサイザほどではないにしてもFT8の復調に支障をきたさない周波数安定度が得られました。 ローカル局が強力に入感しても復調周波数は振れず、 同一タイムフレームのほかの局もきちんと受信できています。 そしてこれが室温に影響されず一晩経って朝になっても20Hzとは動かず。 さらにこの安定度がどの周波数帯でも・・・ 28MHzでも悪化せずに得られるのですから、 さすがコリンズ! ですね。 サイクル25の上昇期、ラボの簡便なロングワイヤーアンテナでもヨーロッパが聞こえだした28MHzのFT8受信が楽しめそうです。 2022-11-10 短周期周波数変動問題は解消 |
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RFメータのゼロ点のドリフト問題、いまも残っています。
ゼロ調整しても半日も経つと明確に上がったり下がったり。
気持ちよくありません。
1999年05月に経時変化の傾向を測って
、たぶんゼロ点調整ポテンショメータの接触不安定ではなくてなにかの素子の特性が温度で変化しているのだろうと推測していました。
実はその時はまだグリッドエミッションという現象があることを知らなかったのです。
1ヶ月後に
Lafayette HA-230の修理をしていてOMさんにグリッドエミッションの可能性を示唆され
、
初めて学んだという次第。
HA-230では高周波増幅管6BA6がグリッドエミッションを起こしていました。
そして51S-1のRFメータを駆動しているのも6BA6。
さらに51S-1のサービスの記事を読むと、
「RFメータのゼロ点ドリフトは6BA6のグリッドエミッションが原因」
とはっきり書いてあるものもあります。 まあ、そうと目星がついていたんだったらとっとと真空管交換して試せばよかったのにね。 ということで中間周波第2増幅管 V7 6BA6をRCA製の箱入り新品球に交換してみました。 電源を入れ、3分ほどたったところでメータのゼロ点調整トリマでゼロ点合わせ。 すると・・・その後8時間経過しても、ゼロ点はほとんど動きません。 ほうら、直ったじゃん。 なんでこんなのを23年も放置してんのよ。 ごめんねえ。 2022-11-14 中間周波第2増幅管 V7 6BA6を新品交換 RFメータゼロ点ドリフト問題解決 |
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CRV-1/HB
のビルダーさんから受信機本体といっしょに頂いた部品類を使って、
真空管いろいろ実験用のベンチシャシー、CBA-1000を作りました。
まず最初の実験は、51S-1から取り外した6BA6。
ほんとうにこの真空管にグリッドエミッションが起きているのかな? テスト回路はごくシンプルな5極管結線。 カソード抵抗に300Ωを入れてカソード電圧が約3Vとなるようにし (=カソード電流が約10mA)、 コントロールグリッドは100kΩでグラウンドに落としてあります。 異常がなければコントロールグリッドの電圧は0Vのはず。 この電圧をデジボルで測定します。 2022-12-12 CBA-1000稼働開始 6BA6グリッドエミッション測定 |
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測定結果は右図。
電源投入直後はデジボルのゼロ点誤差の0.6mVですが、
2分経過したあたりから急激にグリッド電圧が高まり、
9分経過時点でピークの130mV、
そのあとは電圧が少し下がって110mVあたりを示します。
100kΩの抵抗に100mVが出ているということは、
グリッド電流は1μA、グリッドからグラウンドに向かって流れているということです。
これはグリッドからスクリーン及びプレートに向かって1μAぶんの電子が放出されているということになります。 グリッドがヒータによって加熱されはじめるのが2分くらい。 その後グリッド温度が上がるにつれグリッドからの電子放出量が増えるというのはまあそうでしょうねという感じですが、 10分を過ぎても安定はせず、ゆっくり - 数秒〜数10秒の速度で、グリッド電圧が上がったり下がったりします。 この傾向は何べんか測定を繰り返しても同じようになります。 そのまま放置すると2時間経過前後の時点でグリッド電圧が一時的に倍程度に高まったりすることもあるし、 グリッドからの電子放出量は安定的ではないようです。 電源電圧の時間的変化にしては大きすぎますね。 どういう理由でこの時間的変化が起きるのでしょうか。 新品の6BA6で試してみるとこのような傾向は全く出ずにグリッド電圧はほぼゼロで安定。 いっぽう、 Lafayette HA-230 でグリッドエミッションを起こした6BA6 (捨てずにとってあるんですよ) を測ってみると、 この51S-1に使われていた球の倍以上のグリッド電流が観測されました。 6BA6はリモートカットオフ管でありコントロールグリッドの電圧で増幅度が大きく変わりますからね。 ほかの6BA6も調べてみたほうがいいのかもしれません。 2022-12-15 測定結果グラフ作成 |
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2022-12-26から、
非線形境界検波器のテスト〜実証運用のために、
51S-1の24H連続運用を始めました。
非線形境界検波器
は要するに自作の6BN6ゲーテッドビーム管式プロダクト検波器です。
テスト運用のためにリアルなIF信号が必要となったのですが、
51S-1にはリアエプロンにIF出力ジャックが用意されているので、
これを使うことにしました。
IF OUTジャックから取り出した500kHzのIF信号を非線形境界検波器に入れてプロダクト検波し、
復調オーディオ出力をNoobow91000Fに入れてWSTX-JでFT8のデコードを行い、
また自作のステレオアンプで増幅してスピーカを駆動します。
別の言い方をすれば、
51S-1の検波段以降を自作の回路で置き換えているわけですね。 ゲーテッドビーム管を使ったプロダクト検波は51S-1内蔵のプロダクト検波に勝るとも劣らない性能を発揮し、 世界中のあちこちからの信号を復調してくれています。 ただ一点、非線形境界検波器では復調出力に100Hzの明らかなハムが重畳しています。 まあ簡便な配線でこしらえている試作回路ですからハムが出るのは想定内ですし、 いろいろいじってかなりハムは軽減できました。 しかしまだはっきりと100Hzハムは残っていて、 それがどこから来ているのかが分かりません。 2022-12-26 24H連続運用開始 |
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3週間後、原因判明。
自作プロダクト検波器の問題ではありませんでした。
ハムは51S-1のIF出力にすでに乗っています。 しかし奇妙なのは、この100Hzハムは51S-1をUSBモードとCWモードにしたときは出るのに、 LSBモードとAMモードでは出ないこと。 回路図を読み、51S-1のモード切替の仕組みをどう調べても、 USBとCWのときだけ問題が出るようなことはなさそうなのです。 さらに考えつづけいろいろ試し、 判明しました。 IF出力に100Hzのハムが乗っているのではなく、 51S-1内蔵BFO信号が漏れて乗っていたのです。 内蔵BFOの発振周波数は設計値から少しずれて500.1kHzになっていました。 だから非線形境界検波器で500.0kHzのBFO信号を入れてプロダクト検波すれば、 周波数の差の100Hzがオーディオ復調信号となって出てくるというわけでした。 そうとわかってしまえば安心、100Hzハムは我慢して、特に対策の必要はなし。 51S-1のIF OUTジャックは、AMでもSSBでもCWでもない特殊な変調方式を使うときに外部の復調装置に接続するための配慮です。 そこに内蔵BFO信号が漏れ出ていたらちょっと不都合じゃないのかなあ。 でもそんなときは51S-1内蔵BFOの500kHzクリスタルを抜いてしまえばBFOは止まるから簡単に対応できますね。 2023-01-23 IF OUTジャックに内蔵BFO信号がわずかに漏れ出ていることを発見 |
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ぼちぼちバレンタインデー。
こんなおふざけツイート
でもしようと思って51S-1のキャビネットの画像をネットで探そうと思ったら・・・
Nationwide Radio
で なんと51S-1用の新品レプリカキャビネット売ってるじゃん!
いやまさか、本当に?
ツイートもそこそこに、ぽちりました。 くだならいツイートしようなどと思わないでいたなら、 この先しばらく気づかずにいたでしょうね。 そして気づいたときはもう売り切れで、悔しい思いをしていたかも。 教訓。 くだらないツイートは価値を生む。 2023-02-09 51S-1用レプリカキャビネット発注 |
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当方が電子メールの連絡を見落としていたこともあり国際発送の料金のやり取りにすこし日数を要してしまいました・・・
Nationwideさんの応答はいつも迅速だったのに、ごめんなさい。
ともかくS&Hの合意と送金ができて、
そして・・・ 届きました!
男が本当に望んでいるものが! 2023-03-01 キャビネット到着 消費税7.8% 地方消費税22/78 輸入関税支払合計3700円 |
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いくつかのバンドで接触不良が酷くなっていたので、
キャビネットに組み込む前にターレットの再整備。
今回はコンタクトグリスを塗布してみましたが、
完調と言えるまでにはなりませんでした。
14MHzでは接触不良による感度低下が頻繁に発生してしまいます。 いくつかのウェハではターレットシャフトとのガタつきも大きくなっています。 分解補修するべきなのでしょうが、 構造が複雑なこの51S-1の心臓部、 未経験で手を出すのは怖すぎます。 どうにもならなくなるまで、分解は先延ばしすることにします。 2023-03-03 ターレット再整備 |
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いよいよキャビネットに組み込み。
もともとの受信機についていたトリムリングがうまく外れないので、
新品キャビネットのトリムリングは外して、
もともとのリングのまま組み付けることにしました。
薄汚れているしキズもけっこう入っているけど、
それもこの受信機の歴史でもあるから。 結果、大きな支障なく組み込めました。 これだよ! パーフォレーテッドキャビネットに収まった51S-1は、 1999年の入手以来ずっと願い続けていた姿。 小学6年生だった自分が、叶うことなどない望みとして憧れを心に刻み込んだその姿。 いまようやくその望みが叶えられました。 2023-03-03 キャビネット組み込み |
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スチールラックに収めた51S-1、
なんだか調子が悪くなってきてしまいました。 2022年02月の整備時に-37系電源の平滑キャパシタ交換に使ったSpragueのキャパシタが抜けかけているのかもしれません。 新品在庫といっても製造後50年は経っていそうなブツでしたから。 3時間ほど使っていたらハムはそれなりに小さくなりました。 通電でキャパシタの再化成が進んで復活したのでしょうか。 いや、ちょっと違うかもしれません。 -37V系は低周波段のグリッドバイアス生成にも使われているので、 ハムが乗ればAF GAIN絞ってもハムは出続けるはずですが、 今回はAG GAINを絞る、 あるいはRF GAINを絞るとハムは消えます。 Rejection Tuningつまみの操作でハムの大きさが変わりますから、 Rejection Tuning周りから調べを入れるのがいいかもしれません。 2024-02-20 ハムが出る |
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翌日、コールドスタートからは無理状況を再確認。
電源投入後のハム発生はとてもひどいけれど、
2時間ほどで気にならない程度になり、
4時間通電後は言われなければ気づかないほどに小さくなります。 前回のPTO周波数不安定調査のときに電源平滑キャパシタはすべて交換しました。 すると機器内部で50Hz/100Hzが使われているのは・・・真空管のヒータがありますね。 RF/IF段でハムが混入しているとなると 真空管のカソード-ヒータ間絶縁不良の可能性が思い当たります。 ハム音は、出る時は9.940MHzのラジオタイランドでも6.115MHzのMHzのラジオ日経でも出ます。 51S-1は7MHz以上ではダブルスーパーヘテロダイン動作します。 このとき第2周波数変換段は使われずスキップされます。 ラジオタイランドでも発生するということは、 第2周波数変換管のV3 6EA8はシロということになります。 すると、高周波増幅管の6DC6、第1周波数変換の6EA8、 第3周波数変換の6EA8、中間周波第1増幅・第3増幅の6BA6、 そしてQマルチの12AX7Aが怪しいように思えます。 中間周波第2増幅の6BA6は近年新品交換したのでひとまず可能性から除外しましょう。 Rejection Tuningつまみの操作でハムの具合が大きく変わることを考えると、 12AX7Aが一番怪しいかな? 物は試し。 上述した、可能性のある真空管を一本一本交換してハム音の出方の違いをみましたが、 残念、すべて交換前後での変化はありませんでした。 2024-02-21 真空管のカソード-ヒータ間絶縁不良を疑って真空管交換を試す 変化なし |
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CWモードにして内蔵クリスタルキャリブレータの信号を受信してみると、
きれいな単一正弦波の音になるべきところ、明らかに濁っています。
復調音のスペクトルをWave Spectraで見てみると、あらら。 キャリアの±100Hzにハムによる周波数成分が認められます。 ハムは Rejection Tuning OFFでひどいです。 Rejection Tuningつまみを反時計いっぱいの位置にしたときがハムは一番弱く、 時計方向いっぱいで一番ひどくなります。 オーディオの100Hzにもハムは出ていますが、その大きさは変わりません。 このことから、 中間周波信号に100Hzで振幅変調がかかっている状態だ、ということがわかりました。 AGC電圧はどうなってるのでしょうか? 2024-02-21 中間周波信号が100Hzで振幅変調がかかっていることを確認 |
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リアエプロンのジャックにAGC電圧を引き出す改造をしていたことを思い出したので、
オシロスコープをつないで観測してみます。 復調音にハムは出ていますが、 AGCラインに100Hzのリップル重畳は認められません。 それにしても51S-1のAGC電圧は動きが速いですね。 2024-02-22 AGC電圧観測 |
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ボリュームを絞るとハムは消えるから低周波増幅段が影響を受けているわけではなく、
無信号時 - RF信号が入っていないときもハムは出ません。
RFキャリアが入ると、それの振幅が100Hzで変調を受けている状態です。
なので、強いRF信号ほどハムも大きく聞こえます。 電源投入直後にハムが大きく 2時間でかなり小さくなり、 4時間で気にならなくなります。 いっぽう電源を切って10分ほどしてから電源を入れると、ハムはまた大きくなっています。 真空管ではない素子が周辺の熱で変化している(回復方向に) ものと思われます。 十分に暖まってハムが静まったころに懸念のある部品に冷却スプレーを噴射し反応を見る、 という作戦もありそうですね。 今回の症状はなによりも、 Rekection Tuningつまみの位置によってハムの大きさが大きく変わるというのが特異なところ。 どうしてこんなことが起きるんだろう? Rection Tuning周辺の回路図を眺め、 いろいろと考えてみます。 Rejection Tuningのノッチ周波数は-37Vの電圧を分圧した負電圧でバリキャップの逆バイアスの程度を変えて調整しています。 もしもバリキャップ制御電圧に100Hzのリップルが乗れば、 ノッチ周波数が1秒間に100回のはやさで変動するわけで、 これが中間周波信号に100Hzの振幅変調を掛けている、という説明は理にかないます。 -37V系は受信機のゲイン制御ラインにも用いられます。 51S-1では AGC / RF GAINコントロール / リモートRFゲインコントロール / スタンバイ / リモートミュートの機能がすべて統合されており、 これをつかさどるのが-37V系電源回路です。 ↑のAGC電圧の観測時にはAGCラインには電源リップルは観測されませんでしたが、 RF GAINを大きく絞ってゲインを落とすと、 AGCラインの電圧は-20Vよりも低くなりますが、 そのときにははっきり100Hzのリップルが現れます。 -37V系はまた分圧されて低周波段のグリッドバイアスを得ています。 -9Vはリモートオーディオ出力用の出力管6AK6のグリッドバイアスに使われており、 -13Vはローカルオーディオ出力用の6BF5のグリッドバイアスに使われています。 2022年の段階ではオーディオ出力にボリューム位置によらないハムが出るようになって-37V系の平滑キャパシタを交換しました。 もし-37V系の電源リップルが大きくなっているのならどうして今回はオーディオ出力には影響がないんだ? という疑念になりますが、 今回はリモートオーディオ出力の音は聞いていないないのでハムの影響を受けているかどうか不明。 ローカルオーディオについては、-13Vに分圧した直後の平滑キャパシタC269が効いていて、 何とかなっているのだ、と説明できます。 ますます-37V系のリップルが怪しいですね。 前回交換したSpragueのキャパシタの劣化。 2024-02-22 原因推定 |
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週末になり51S-1をワークベンチに乗せ、キャビネットを開けて調査開始。
手始めにRejection TuningユニットL108の2番ピン - ノッチ周波数制御電圧入力端子 -
をオシロで見てみると、ほぼビンゴでした。 Rejection Tuningつまみを時計方向いっぱいでこの端子の電圧は-37V系電圧ほぼそのものになりますが、 9Vp-pものひどいリップルが乗っています。 つまみを反時計いっぱいで-37V系電圧の約9分の1になるはずで、 リップルは実測1Vp-p。 Rejection Tuning OFFの位置では2番ピンの電圧は220kオームを介して吊り上げられますが、 -37Vのリップルの影響は引き続き受けていて、その程度は5Vp-p。 すべてつじつまが合います。 ということで、2022-02-07 に取り付けたSpragueのキャパシタを撤去し、 50V 47uFの新品電解キャパシタに交換。 ハム問題はすっきり快癒しました。 やはり渡米中にHalted Specialitiesで買い込んでおいたキャパシタ、 もうダメになっていたんですね。 51S-1の他の何か所かも、同じ時期に買ったキャパシタですでに交換してあります。 でもそれらはKemet製。 Spragueはダメでも、Kemetはがんばってくれるかな? 2024-02-24 -37V系電源平滑電解キャパシタ新品交換 ハム問題解消 |
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ついでにターレット手入れ。
13MHzバンドの無感は第1局発のピストントリマウェハA9と水晶発振子ウェハA10の接触あたりが一番怪しくて、
いろいろ試してみましたが、
確実動作までには持って行けず。
13MHzが動作するかどうかは時の運、みたいな感じです。
残念だなあ。
コンタクトの新品交換とかができたらいいのに。
いっぽうで水晶発振子の劣化の可能性も否定できずにいます。 2024-02-24 ターレット手入れ |
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さらについでに、前回2022年に気がついていたアンテナジャックのRCAピンジャックの勘合緩みの対策として、
BNCコネクタに交換しました。
レプリカキャビネットだと干渉するので、回転砥石で逃げを削りました。
素人細工にしては十分かな。 2024-02-24 アンテナジャックをBNCに交換 |
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スチールラックに戻すにあたって、レプリカキャビネットに付属していた前脚エクステンションを取り外し、
筐体が水平に設置されるようにしました。 デスクの上に置いたときにフロントパネルがすこし上を向く前脚エクステンション、 八重洲FRG-7 も同じものがついていて、 ラックに設置する際に同じように取り外したのですが、 まあこんなふうに見ると八重洲のコリンズオマージュが明確ですねえ。 そういえば51S-1とFRG-7、 受信周波数を3〜2MHzの中間周波数に変換したあとメインダイヤルで同調し第3中間周波数の455kHz/500kHzに落とすという回路構成は基本的に同じだということもできて、 FRG-7は51S-1リスペクトな設計だったんだなあと思います。 ずらりと並んだ同調素子と水晶発振子をターレットで切り替えるという力づくな51S-1に対し、 ワドレーループ構成によりたった1個の水晶発振子と1石HFOで同じ機能を実現するFRG-7。 軍用・政府機関向けの超高価格な51S-1を、 中学生でも手が届く価格で実現したのがFRG-7なんだな、と思えます。 この2台の聞き比べは、 そういう意味でも面白いです。 2024-02-24 戦列復帰 |
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