Tektronix 2230
Digital Storage Oscilloscope
(1988) |
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まあこのページを書いている今からするともう10年経ってしまったのですが、
第3研究所にはそれほど長居するつもりはありませんでした。
ヤマが好きなグンマ―なオフロードライダーが、
森も林も沢も峠道もなく星も見えず空は人工ノイズだらけのこんなところで楽しく暮らせるわけはなかろうと思っていたのです。
PCは新品マシン
Noobow9200
をビルドしましたが、
ほかの設備・機材は基本的に撤退時にはすべて捨ててしまっても構わないような、
使い古しの在庫品とリサイクルショップの投げ売り品と頂き物で賄いました。 オーディオアンプは 究極の貧乏アンプ 、 スピーカはサニーベールのコストコで買ったペアで5ドル75セントのKHX。 平日夜に時間ができたならば簡単な修理作業くらいは行えるようにと、 電源装置 ・デジタルマルチメータ・オシロスコープは用意しました。 テクトロニクス2230はいつどこで入手したのか・・・ハムフェアだったかハムの集いだったのかもう覚えていませんが、 当初手書きの「故障」の荷札がついていました。 電源は入りましたが、 長らく倉庫で放置されていたらしくひどく薄汚れていて、 デジタル波形表示はなんとものんびりしています。 まあ壊れていなくてもいまどきこんなものは捨てられて当然でしょう。 オーディオ信号の観察がほとんどな私の使い方では、 ふだんデジタルオシロスコープの必要はほとんどありません。 低速な年代物 で十分です。 し、2230のような古いデジタルオシロでは波形描画が遅くてリアルタイムの観察はできず、 こんなのいらない、という感じでした。 ですが 2012年03月に ティーディのハザードランプコントローラ のブレッドボード試作をしたときは、 2230のストレージ機能で大助かり。 1Hz前後のごく低速な波形はアナログオシロでは波形として観察できませんからね。 目的が違えば適した機材も違う、ということです。 |
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2014年09月17日、
第3研究所で
シャープのCDラジカセ
の修理に使おうと思って久しぶりに2230の電源を入れたら、
あれれ、電源断・再起動を繰り返してしまい、使い物になりません。
ああ、これが「故障」の扱いにされた理由だったのだろうなあ。
しゃあない、
もう一台のオシロも壊れかけ
だけど、そっちを使おう。 2014-09-17 電源断続の故障発生 修理には着手できないまま、第3研究所の一時閉鎖が断続的に続く中、2020年秋、 2230は中央研究所に戻ってきました。 2021年、在宅勤務オフィスとしての整備も進んだ夢と時空の部屋で懸案課題の修理アイテムをひとつひとつのんびり着手し、 日幸電子STA-301 の修理が一段落ついて、こんどはテクトロニクス2230の番。 故障発現してから7年も経ってる・・・ 2021-08-16 2230 修理作業着手 |
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本機に使われているネジはすべてトルクスビット。
まずはこれを回せる工具探しから。
おお、あったあった。
底面ベースカバーを取り外し、スリーブタイプの外装ケースを外すと、
おわあ、ずいぶんぎっちり詰まったパッケージングだ。 症状からして電源回路の故障が疑われます。 スイッチング電源の電解キャパシタ交換作業になるだろうかね。 でも電源装置はシールドケースに格納され、 内部に奥まっています。 アクセスは結構大変そう。 本体上面全体を覆う大きなボードは、どうやらマイクロプロセッサやプログラムROM、メモリ、ロジック回路と、 おそらくA/Dコンバータ部などが載った、デジタル回路部と見えます。 |
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プロセッサは富士通製のインテル8088-2でした。
外部データバスは8ビット、内部16ビットアーキテクチャです。
データシートを見てみるとクロック周波数は8MHz。
さすがに8ビットプロセッサで実用的なデジタルストレージオシロは無理でしょうけれど、
内部16ビットとはいっても外部8ビットバスの8088でよく実用になっているなあ、という気がします。
プログラムはすべてアセンブラで書かれたのだろうと思いますが、
デジタルオシロの機能と性能を実現するためには相当な努力がつぎ込まれたのだろうと思います。 |
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A/DコンバータはSONY でした。
そういえばこのテクトロニクス、背面を見ると実はソニー・テクトロニクス製で、日本製モデルでした。
ソニーはテクトロニクス製品を販売しただけでも製造請負をしただけでもなく、
デジタルオシロスコープの心臓部ともいえるA/Dコンバータをテクトロニクスに提供していたわけですね。 A/Dコンバータチップのデータシートを見ると、分解能は8ビット。 ふうん、そんなもんだったんだね。 サンプリング周波数はとみると、あれ? 最大20MHzと記載されています。 なんだ、フロントパネルに100MHzとあるからサンプリング周波数も100MHzあると思ったけれど。 |
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サービスマニュアルを読んで、上面ボード ― 「ストレージボード」と呼ぶみたいです ― の開け方がわかりました。
基板を固定しているネジを取り外し、
コネクタをふたつ抜き、
ストレージ操作用のプッシュボタンをスイッチから引き抜けば、
フロントパネルを取り外すことなくストレージボードはヒンジを使って開くことができます。
開くためにはフラットケーブルピンヘッダを取り外す必要がありますが、
このピンヘッダを抜いた状態でも本機は電源を入れて動作させることができます。
ただしこの状態ではデジタルオシロ機能は動作せず、
アナログオシロスコープ機能だけが使えます。 で、あれ? 電源断続の症状が出ません。 直ったのかな? 実は今日の午後に新型コロナウイルスのワクチン接種1発めを受けたのですが、 こうも早く効果が出るとは思いませんでした。 すごいなワクチン、接種するとオシロが直る。 |
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いぶかしく思いながらストレージボードを元に戻してみると、やはり電源はOFF-ONを繰り返してしまいます。
さらに試すと、ストレージボードのピンヘッダを抜いた状態なら症状が発生しません。
さあ、最初のヒントが与えられました。
ストレージボードが動作していると症状が発生する?
あるいはデジタル表示回路が動作していると症状が発生する? さらにいろいろ試してみると、 |
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電源がすぐ落ちてしまう症状をもういちどよく観察してみます。 本機は電源スイッチをONにすると2秒ほどして電源パイロットランプ (緑色LED)と管面イルミネーションランプが点灯し、 少ししてブラウン管が動作し始めるとアナログオシロの波形が出ます。 その直後にロジックボードが初期化を始め、いったんアナログオシロ波形を消し、 ロジックシステムの初期化が完了するとデジタルオシロの表示が始まります。 このムービーを見ていると、電源が突然落ちるのは、デジタルオシロ表示が始まったあたりです。 1. 電源回路の供給能力が低下している 2. ストレージボードの消費電力が異常に増えた 3. ストレージボード以外の消費電力が異常に増えた 4. 過電流保護回路が異常にトリップしている 5. コミナティ筋注の副作用 6. 人知を超えた何か 本機の電源は高圧も低圧も電源トランスで作られますが、 その電源トランスの1次側はインバータで駆動されています。 回路図を見るとインバータにはサーマルシャットダウンボードがあって、 温度異常時にインバータを止めるようになっています。 ここも可能性の中に加えておきましょう。 デジタルオシロ表示回路が過電流となっている、 だからフラットケーブルをはずしてアナログオシロ動作させているときは問題が出ないのだ、 という推測はもっともなように思われます。 2021-08-17 不具合動作を観察 本体を通常姿勢にしてストレージボードのフラットケーブルを外したままで連続動作させていたら、 電源断続のトラブルが発生しました。 デジタル表示モードになっていないのに症状が発生したわけなので、 デジタル表示回路まわりの消費電流だけが過大となっているわけではない、ということのようです。 実は、故障が直らないのであればデジタル表示回路を切り離してアナログオシロとして使えばいいかなと思っていたのですが、 この目論見は外れたことになります。 2021-08-18 デジタル表示していなくても症状が発生 |
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サービスマニュアルの回路図を読み、トラブルシューティングの作戦を考えながら、
いよいよ電源回路の調査に取り組みます。 電源回路は、本機下面を覆う大きなボード - メインボードのだいたい半分を占めています。 ここにはAC100Vだけではなく、ブラウン管アノード電圧を生成する回路もありますので、 部分的に2kVが出ている、とても危険な基板。 電源回路部のパターンは黒色プラスチック製のプロテクションカバーが取り付けられ、 うっかり触っても安全なようになっています。 サービスマニュアルを参照してプロテクションカバーを取り外して、電源回路のパターンを露出しました。 黒く汚れて見えるのはインバータで生成したACから各部の電源電圧を取り出す電源トランス回り。 高圧回路がススを集めたカーボン汚れかと思いましたが、 アルコールで清掃しても黒色は綺麗にはなりません。 吸着汚れのほかに、どうやら熱による変色もあるようです。 部品リードはんだ付け部は、クラック等の顕著な異常は見えません。 |
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2230は大活躍。
八重洲無線FRG-7
のワドレーループ回路の修理のときは、
最大周波数20MHzの
岩通SS-5702
ではさぞかし苦労したでしょう。
FRG-7を修理するための下準備として2230を修理したのだ、
と思えるほどです。 毎日毎日がんばってくれている2230ですが、 起動時にダイアグエラーを表示するようになってしまいました。 プッシュスイッチを一回押して通常動作に戻れますが、そのうち動作に支障をきたすトラブルに発展しちゃうのかなあ。 初めてこの表示が出て以降、毎回確実にこの画面が出ます。 表示される実測値は毎回すこしずつ違いますね。 表示されている"CDT"というのはClock Delay Timerのことのようです。 2022-02-24 Powerup Failure画面表示 |
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ここのところ
コリンズ51S-1
の修理のために1日16時間連続動作を2ヶ月ちかくほぼ毎日続けていますが、
どうもファンの回転が落ちてきているようです。
そして動作中にファンの音がしなくなりました。
これは・・・ほどなく予期通りに、電源がふっと切れました。
サーマルプロテクション機構が動作したのでしょう。
やむなく週の残りは
岩通SS-5702
を使用。 2022-03-09 冷却ファン停止 サーマルシャットダウン発動 リアパネルにある冷却ファンのスピンドルは、固着に近いくらいに重くなっていました。 問答無用でファン交換ですね。 |
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週末を待って作業開始。
どうやら冷却ファンを交換するにはパワーサプライシールドを取り外さなくてはならないようです。
そしてそのためには筺体中央に入っているサブフレームと、大きなロジックボードのヒンジを取り外さなくてはならない様子。
良く言えばとてもコンパクトにまとめられた本機、悪く言えば整備性に難あり。
よく配慮されてはいるのですが、手間数が多くて。
冷却ファンなどは寿命が限られていることが最初から分かっています。
プロが使う業務機なのですから、
ケースを開けなくとも工具なしにファン交換できるくらいの配慮が欲しいですが。 途中休憩をはさんで2時間ちかく格闘し、 ようやくパワーサプライシールドが外れました。 |
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使われていたのは西ドイツBuehler Motor社製のDCサーボモータファンでした。
制御回路が別体の小さなボックスに収まっています。
へえ、初期の冷却ファンってこんなんだったんだね。
本体からの回転数制御はなく、メインボードにはんだ付けされたビニール線でDC12V固定で給電されています。 |
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昨年8月の再起動繰り返す問題の原因分析の時は、
サーマルシャットダウン機構については回路図からその挙動を読み、
問題はないはずと判断しました。
実物を見るのは今回が初めてです。 サーマルシャットダウンボードは小さな特殊形状のプリント基板。 冷却ファン直前の空気流の中にサーミスタを曝すように取り付けられています。 冷却ファンが止まって筐体内の気温が上昇すると、 サーミスタの抵抗値が変化し、サイリスタがトリップしてパワーインバータドライバを強制停止します。 今回はじめてこのボードが設計意図通りに動作した、ということになります。 42.8Vを生成するプリレギュレータのPWMコントローラは、 サービスマニュアルの回路図ではTL594が示されていますが、 ラボの個体ではuPC494Cが使われていますね。 インバータ出力過電流検出回路の抵抗R948は、サービスマニュアルどおり33Ωが取り付けられています。 |
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代わりのファンは、中古リサイクル品在庫のなかから程度のよい100mm品を選びました。
2021-01-21に
RPS1206
の解体品から取り外したものですから、1990年初頭の製品でしょう。
製造後30年は経っていそう。
このファンはリヤパネルに両面テープで取り付けることにしました。
オシロスコープを地面に立てて使うサービスマンスタイルは取れなくなってしまいましたけどね。 組み立ては面倒だけどいちど分かってしまえば難しいこともなく・・・と、 ああ、プッシュスイッチレバーをひとつ、フロントパネル裏に落としちゃった。 30分ほど格闘しましたが取り出せず、まあいいか。 組み立て後は連続して正常動作、めでたく 前線復帰。 2022-03-11 ファン交換 2022-03-12 前線復帰 |
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