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Tektronix 2230

Digital Storage Oscilloscope
(1988)


Audio Technica AT-MX33




    まあこのページを書いている今からするともう10年経ってしまったのですが、 第3研究所にはそれほど長居するつもりはありませんでした。 ヤマが好きなグンマ―なオフロードライダーが、 森も林も沢も峠道もなく星も見えず空は人工ノイズだらけのこんなところで楽しく暮らせるわけはなかろうと思っていたのです。 PCは新品マシン Noobow9200 をビルドしましたが、 ほかの設備・機材は基本的に撤退時にはすべて捨ててしまっても構わないような、 使い古しの在庫品とリサイクルショップの投げ売り品と頂き物で賄いました。

    オーディオアンプは 究極の貧乏アンプ 、 スピーカはサニーベールのコストコで買ったペアで5ドル75セントのKHX。 平日夜に時間ができたならば簡単な修理作業くらいは行えるようにと、 電源装置 ・デジタルマルチメータ・オシロスコープは用意しました。

    テクトロニクス2230はいつどこで入手したのか・・・ハムフェアだったかハムの集いだったのかもう覚えていませんが、 当初手書きの「故障」の荷札がついていました。 電源は入りましたが、 長らく倉庫で放置されていたらしくひどく薄汚れていて、 デジタル波形表示はなんとものんびりしています。 まあ壊れていなくてもいまどきこんなものは捨てられて当然でしょう。

    オーディオ信号の観察がほとんどな私の使い方では、 ふだんデジタルオシロスコープの必要はほとんどありません。 低速な年代物 で十分です。 し、2230のような古いデジタルオシロでは波形描画が遅くてリアルタイムの観察はできず、 こんなのいらない、という感じでした。 ですが 2012年03月に ティーディのハザードランプコントローラ のブレッドボード試作をしたときは、 2230のストレージ機能で大助かり。 1Hz前後のごく低速な波形はアナログオシロでは波形として観察できませんからね。 目的が違えば適した機材も違う、ということです。


   


    2014年09月17日、 第3研究所で シャープのCDラジカセ の修理に使おうと思って久しぶりに2230の電源を入れたら、 あれれ、電源断・再起動を繰り返してしまい、使い物になりません。 ああ、これが「故障」の扱いにされた理由だったのだろうなあ。 しゃあない、 もう一台のオシロも壊れかけ だけど、そっちを使おう。

2014-09-17 電源断続の故障発生


    修理には着手できないまま、第3研究所の一時閉鎖が断続的に続く中、2020年秋、 2230は中央研究所に戻ってきました。 2021年、在宅勤務オフィスとしての整備も進んだ夢と時空の部屋で懸案課題の修理アイテムをひとつひとつのんびり着手し、 日幸電子STA-301 の修理が一段落ついて、こんどはテクトロニクス2230の番。 故障発現してから7年も経ってる・・・

2021-08-16 2230 修理作業着手




    本機に使われているネジはすべてトルクスビット。 まずはこれを回せる工具探しから。 おお、あったあった。 底面ベースカバーを取り外し、スリーブタイプの外装ケースを外すと、 おわあ、ずいぶんぎっちり詰まったパッケージングだ。

    症状からして電源回路の故障が疑われます。 スイッチング電源の電解キャパシタ交換作業になるだろうかね。 でも電源装置はシールドケースに格納され、 内部に奥まっています。 アクセスは結構大変そう。

    本体上面全体を覆う大きなボードは、どうやらマイクロプロセッサやプログラムROM、メモリ、ロジック回路と、 おそらくA/Dコンバータ部などが載った、デジタル回路部と見えます。





    プロセッサは富士通製のインテル8088-2でした。 外部データバスは8ビット、内部16ビットアーキテクチャです。 データシートを見てみるとクロック周波数は8MHz。 さすがに8ビットプロセッサで実用的なデジタルストレージオシロは無理でしょうけれど、 内部16ビットとはいっても外部8ビットバスの8088でよく実用になっているなあ、という気がします。 プログラムはすべてアセンブラで書かれたのだろうと思いますが、 デジタルオシロの機能と性能を実現するためには相当な努力がつぎ込まれたのだろうと思います。




    A/DコンバータはSONY でした。 そういえばこのテクトロニクス、背面を見ると実はソニー・テクトロニクス製で、日本製モデルでした。 ソニーはテクトロニクス製品を販売しただけでも製造請負をしただけでもなく、 デジタルオシロスコープの心臓部ともいえるA/Dコンバータをテクトロニクスに提供していたわけですね。

    A/Dコンバータチップのデータシートを見ると、分解能は8ビット。 ふうん、そんなもんだったんだね。 サンプリング周波数はとみると、あれ? 最大20MHzと記載されています。 なんだ、フロントパネルに100MHzとあるからサンプリング周波数も100MHzあると思ったけれど。



    サービスマニュアルを読んで、上面ボード ― 「ストレージボード」と呼ぶみたいです ― の開け方がわかりました。 基板を固定しているネジを取り外し、 コネクタをふたつ抜き、 ストレージ操作用のプッシュボタンをスイッチから引き抜けば、 フロントパネルを取り外すことなくストレージボードはヒンジを使って開くことができます。 開くためにはフラットケーブルピンヘッダを取り外す必要がありますが、 このピンヘッダを抜いた状態でも本機は電源を入れて動作させることができます。 ただしこの状態ではデジタルオシロ機能は動作せず、 アナログオシロスコープ機能だけが使えます。

    で、あれ? 電源断続の症状が出ません。 直ったのかな?

    実は今日の午後に新型コロナウイルスのワクチン接種1発めを受けたのですが、 こうも早く効果が出るとは思いませんでした。 すごいなワクチン、接種するとオシロが直る。




    いぶかしく思いながらストレージボードを元に戻してみると、やはり電源はOFF-ONを繰り返してしまいます。 さらに試すと、ストレージボードのピンヘッダを抜いた状態なら症状が発生しません。 さあ、最初のヒントが与えられました。 ストレージボードが動作していると症状が発生する? あるいはデジタル表示回路が動作していると症状が発生する?

さらにいろいろ試してみると、

  • コールドスタート時 (1時間程度の電源OFF後) はしばらく動作する ->熱の影響がありそう
  • デジタルモード動作時、スイープ周波数を高めると発生しやすくなる -> ストレージ回路が高速で動作するので消費電流が増えるから?




  •     電源がすぐ落ちてしまう症状をもういちどよく観察してみます。

        本機は電源スイッチをONにすると2秒ほどして電源パイロットランプ (緑色LED)と管面イルミネーションランプが点灯し、 少ししてブラウン管が動作し始めるとアナログオシロの波形が出ます。 その直後にロジックボードが初期化を始め、いったんアナログオシロ波形を消し、 ロジックシステムの初期化が完了するとデジタルオシロの表示が始まります。

        このムービーを見ていると、電源が突然落ちるのは、デジタルオシロ表示が始まったあたりです。

    1. 電源回路の供給能力が低下している
    2. ストレージボードの消費電力が異常に増えた
    3. ストレージボード以外の消費電力が異常に増えた
    4. 過電流保護回路が異常にトリップしている
    5. コミナティ筋注の副作用
    6. 人知を超えた何か

        本機の電源は高圧も低圧も電源トランスで作られますが、 その電源トランスの1次側はインバータで駆動されています。 回路図を見るとインバータにはサーマルシャットダウンボードがあって、 温度異常時にインバータを止めるようになっています。 ここも可能性の中に加えておきましょう。

        デジタルオシロ表示回路が過電流となっている、 だからフラットケーブルをはずしてアナログオシロ動作させているときは問題が出ないのだ、 という推測はもっともなように思われます。

    2021-08-17 不具合動作を観察


        本体を通常姿勢にしてストレージボードのフラットケーブルを外したままで連続動作させていたら、 電源断続のトラブルが発生しました。 デジタル表示モードになっていないのに症状が発生したわけなので、 デジタル表示回路まわりの消費電流だけが過大となっているわけではない、ということのようです。

        実は、故障が直らないのであればデジタル表示回路を切り離してアナログオシロとして使えばいいかなと思っていたのですが、 この目論見は外れたことになります。

    2021-08-18 デジタル表示していなくても症状が発生


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        サービスマニュアルの回路図を読み、トラブルシューティングの作戦を考えながら、 いよいよ電源回路の調査に取り組みます。

        電源回路は、本機下面を覆う大きなボード - メインボードのだいたい半分を占めています。 ここにはAC100Vだけではなく、ブラウン管アノード電圧を生成する回路もありますので、 部分的に2kVが出ている、とても危険な基板。 電源回路部のパターンは黒色プラスチック製のプロテクションカバーが取り付けられ、 うっかり触っても安全なようになっています。

        サービスマニュアルを参照してプロテクションカバーを取り外して、電源回路のパターンを露出しました。 黒く汚れて見えるのはインバータで生成したACから各部の電源電圧を取り出す電源トランス回り。 高圧回路がススを集めたカーボン汚れかと思いましたが、 アルコールで清掃しても黒色は綺麗にはなりません。 吸着汚れのほかに、どうやら熱による変色もあるようです。 部品リードはんだ付け部は、クラック等の顕著な異常は見えません。







        プリレギュレータ出力が過電圧になってプリレギュレータを止めているなら プリレギュレータ出力電圧は異常発生中はいったん0V近くに落ちるはずだし、 サーマルシャットダウンボードがトリップしてインバータを止めているのなら プリレギュレータ出力電圧は異常発生中も継続して出ているはずです。 なので、 プリレギュレータ出力電圧をモニタするために、 メインボードのテストポイントTP940に小さなリード線をはんだ付けしてみのむしクリップをつなぎ、 デジボルで見てみることにします。 設計値は42.8VDC。 電源回路はシャシーからはアイソレートされているので、 測定グラウンドはシャシーではなくてテストポイントTP950につなぎます。



        ストレージボードのフラットケーブルをつなぎ、デジタルストレージモードで動作させて、 症状の発生を待ちます。 プリレギュレータ出力電圧の設計値42.8Vに対して、愛機シストロン・ドナー7004Aでの測定値は42.6V。 最後に校正されてから27年も経っているこのデジボルを信じるなら、 プリレギュレータ出力電圧はほとんど設計値ぴったりといえるでしょう。 さあ、症状が発生したとき、ここの電圧はどうなるかな?




        ところが・・・ストレージボードコネクタをつないで連続デジタルモードで動作させても、 まる1日 まったく症状が発生しません。 なんで?

        やったことといえば、

  • パワーサプライプロテクタシールドを取り外した
  • 基板上黒く汚れていたところを洗浄液で拭いた
  • テストポイントに引き出しリードワイヤをはんだ付けした
  • テストポイント電圧をデジボルで測った
  • コミナティ筋注 1回目の接種後24時間が経過した

  • これだけです。

        黒く汚れていたところはブラウン管アノード用の1万2000ボルトを作り出す高圧回路です。 熱はさほど高くならないようですが、熱によるはんだクラックの可能性も考え何か所かはんだを盛ってみました。 けれどこれは的外れ対応のはずです。 なぜなら、もしアノード高圧発生回路が動作しなくなれば、 ブラウン管のラスターが出なくなるということは起こるでしょうけれど、 低圧系電源は引き続き動作するはず。 つまりパイロットランプもイルミネーションランプも消えず、 復活したときはプロセッサリセット動作はせずにただ画像表示が復活するだけのはずだからです。

        そうではなくて、基板の汚れによってリークが起きていて消費電流過大となり、インバータの保護回路が働いた・・・ のであったのなら、拭いただけで直ったというのもあながち呪術とは言い切れないでしょう。

    2021-08-19 まる1日安定して動作

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        連日まる一日安定して動作しつづける2230を横目で見ながら、 今日は電源回路のうちインバータ回路の回路図を読みます。

        2個のインバータトランジスタは、飽和トランスの働きにより自発的に約20kHzでスイッチング動作します。 インバータスイッチングの具合は2個のトランジスタ - Q938とQ939によって制御されますが、 そこにはサーマルシャットダウン回路が設けられています。

        本体背面空冷ファンが止まるなどのトラブルによって内部の温度が異常に高まったときは、 サーミスタRT950の抵抗値が変化して、サイリスタQ950が点弧し、 トランジスタQ939のベースをプルアップします。 これによってトランジスタQ939はオフ状態となってインバータ制御トランジスタQ944もオフし、 インバータ出力はシャットダウンされます。

        サーマルシャットダウン回路がトリップしたらサイリスタは点弧状態を維持するので、 自動復旧はしません。 復旧させるためにはいちど電源スイッチを切る必要があります。

        この理由から、今回の故障はサーマルシャットダウン回路がトリップしたことによるのではない、と結論できます。

        サーマルシャットダウン回路が故障していてQ939のベースを不定期にプルアップしてしまうという可能性もありますが、 電源断続の起きている様子 ― 起動後ちょっとの間は動作、 プロセッサ初期化が終わったタイミングあたりでインバータが停止する ― をうまい具合に起こせるとは思えません。

        やはり観察を続けて、 異常発生時にインバータ入力の42.8Vラインが落ちるかそれとも出続けているかを知り、 故障がインバータにあるのかそれともプリレギュレータにあるのかを切り分けるのがつぎのステップでしょう。

    2021-08-21 サーマルシャットダウン回路の仕組みと誤動作の可能性を検討




        もう3日間も正常に動作しているからすっかり直っちゃったみたいですが・・・ こういうのはどうせそのうち再発しちゃうんだよなあ。 もう少ししつこく回路図を読んで、 可能性のあるシナリオを見つけてみましょう。

        プリレギュレータには出力過電圧保護機構があります。 プリレギュレータ出力電圧の設計値42.8Vですが、 これが51Vを超えるとVR935のツェナが導通し、 サイリスタQ935が点弧してプリレギュレータ出力をシャントするようになっています。 これが起きるととPWMコントローラICへの電源もゼロになるのでICがリセットされ、 プリレギュレータが停止し、再起動する仕組みになっています。

        ・・・とまあ、わかるけれども、故意に電源ショートを起こして止めるだなんてかなり乱暴な方法ですね。 エンジンを止めるのに停車中にブレーキ掛けながらトップギヤに入れてクラッチをつなぎエンストさせて止める、 かのような趣があります。

        さらに、サービスマニュアルの回路動作原理説明セクションには記載がないのですが、 このサイリスタQ935にはインバータ出力電流過大保護機構も備わっています。 インバータの出力電流が増大するとR949の電圧が高まり、 シリコンダイオードCR948を介してサイリスタのゲート電圧を高め、 プリレギュレータ出力過電圧のときと同様にサイリスタがプリレギュレータを再起動させるようになっています。

        インバータ出力が実際に過電流になっているか、あるいはこの過電流保護回路が誤動作しているのでしょうか? 診断のために、サイリスタQ935のゲート電圧を観測するべきです。

    2021-08-23 インバータ出力過電流保護機構の原理を理解




        どうせこの手の故障は安心してケース閉めると再発しちゃうんだよなー。 なので、メインボードから細目のリボンケーブルでプリレギュレータ出力とサイリスタのゲート電圧を引っ張り出して、 本体側面のインターフェイスサブパネルを開ければすぐ計測できるようにしてみました。 まだケースは閉めずにモニタを続けますけどね。

        サイリスタQ935のゲート電圧は、電源投入後 対カソードで電源投入時0.136V、 時間がたつと少しずつ高くなって10分後で0.185V、 その後0.21〜0.23Vあたりにいます。 時間とともに電圧が上がっていくというのは、 電流検出抵抗の温度上昇が主な原因なのでしょうか。

        インバータ出力電流検出抵抗R949の両端は起動後まもなくで0.74Vあります。 ここからシリコンダイオードCR948のシリコン電圧障壁0.6Vぶん下がって0.14V、 33Ωと120Ωで分圧されて78%に下がると約1.1V・・・あれ、ちょっと計算が合わないなあ。

        デジボルで直流電圧として測定すると0.23Vというところですが、 Q935のゲート電圧をオシロで見るとご覧のような波形。 インバータ発振周波数は実測22.7kHzです。 波形を見ると、インバータトランジスタのOFFの瞬間にスパイク状に電圧が高まっています。 ここの電圧を見るべきでしょうね。 DC電圧計では平均値として0.23Vを示していますが、オシロの管面から読み取るとピークでは0.38Vに達しています。

        このサイリスタ、型番を調べてもデータシートを探すことができず、 本来設計値でどの程度のゲート電流を流せば点弧するものなのか不明なのですが、 でもまあ、現状はサイリスタが点弧する電圧にはまだずっと低いと言っていいですよね。

    2021-08-23 サイリスタゲート電圧測定観測




        まあいまのところ「何もしないのに直っちゃった」わけなのですが、 想定されるシナリオでいちばんそれっぽいのが、 インバータ出力電流検出抵抗R949のリードはんだ付けのヒートサイクルによる疲労クラック説。 0.51Ωが使われているこの電流検出抵抗、接合抵抗値がほんのわずか上がり、 過電流と認識されてサイリスタが点弧してしまったのではないかとみています。 実際にこのはんだを見ると熱クラックらしきリング縞が見えます。 基板の汚れを落とすため拭いたりなんだりしているときに力がかかって、 ごく微細な亀裂が閉じて抵抗値が下がったのでは、と。

        仮説にすぎませんけれど、ありえそうなシナリオに思えます。 なので、R949の端子にはんだこてを当てて再溶融させ、フレッシュなはんだを少し足しておきました。 これで直ったかもしれないし、単なるおまじないにすぎないのかもしれないし。

        2230のサービスマニュアルを読むと、 抵抗R948は初期モデルで10Ωだったものがランニングチェンジで33Ωに設計変更されています。 これは過電流保護機構の作動を鈍感にする変更です。 ひょっとするとこのオシロスコープの初期ロットでは、 過電流保護機構が敏感すぎて故障でもないのに電源が落ちるというクレームが出ていたのかもしれません― というか、出ていたのでしょうね。 それしか考えられない。

    2021-08-26 回路図写経作業終了 故障機序推定

        その後2022-02-02 にTwitterのフォロワーさんから情報。 ほぼ同様の症状が、電流検出抵抗の再はんだ付け作業で出なくなったとのこと。 さらに、2230の後継モデル2232では、R948にはには47Ωが使われているとのこと。 さらに保護回路を鈍感にしたのですね。 この「電流検出抵抗取り付け部のはんだクラック成長により過電流保護機構が誤動作した」 というシナリオはかなりそれらしく思えます。




        安定動作している2230をケースに収め、フロントパネルを清掃し、 夢と時空の部屋のメインのオシロスコープに。 このオシロ、正直に言うと入手したときは薄汚れていてなにかひとつ信用できなさそうでしたし、 使いにくいなあという感覚がありました。 だからずいぶん長いこと、ほとんど使わずに放置してあったのです。

        しかし清掃の結果シャキッとした表情を見せ始めた2230を使い始めてみると、 デジタルストレージモードとリアルアナログスキャンモードをボタンひとつで切り換えられるというのが想像以上に好印象。 そのうちに「これでなくっちゃね」とも思え始めてきました。 さあ、こいつを使っていろいろ修理してみようか。

    2022-08-29 夢と時空の部屋で実戦配備





    > 次の修理は・・・National Panasonic RF-2200


    起動時ダイアグエラー

        2230は大活躍。 八重洲無線FRG-7 のワドレーループ回路の修理のときは、 最大周波数20MHzの 岩通SS-5702 ではさぞかし苦労したでしょう。 FRG-7を修理するための下準備として2230を修理したのだ、 と思えるほどです。

        毎日毎日がんばってくれている2230ですが、 起動時にダイアグエラーを表示するようになってしまいました。 プッシュスイッチを一回押して通常動作に戻れますが、そのうち動作に支障をきたすトラブルに発展しちゃうのかなあ。 初めてこの表示が出て以降、毎回確実にこの画面が出ます。 表示される実測値は毎回すこしずつ違いますね。

        表示されている"CDT"というのはClock Delay Timerのことのようです。

    2022-02-24 Powerup Failure画面表示





    冷却ファン交換

        ここのところ コリンズ51S-1 の修理のために1日16時間連続動作を2ヶ月ちかくほぼ毎日続けていますが、 どうもファンの回転が落ちてきているようです。 そして動作中にファンの音がしなくなりました。 これは・・・ほどなく予期通りに、電源がふっと切れました。 サーマルプロテクション機構が動作したのでしょう。 やむなく週の残りは 岩通SS-5702 を使用。

    2022-03-09 冷却ファン停止 サーマルシャットダウン発動


        リアパネルにある冷却ファンのスピンドルは、固着に近いくらいに重くなっていました。 問答無用でファン交換ですね。



        週末を待って作業開始。 どうやら冷却ファンを交換するにはパワーサプライシールドを取り外さなくてはならないようです。 そしてそのためには筺体中央に入っているサブフレームと、大きなロジックボードのヒンジを取り外さなくてはならない様子。 良く言えばとてもコンパクトにまとめられた本機、悪く言えば整備性に難あり。 よく配慮されてはいるのですが、手間数が多くて。 冷却ファンなどは寿命が限られていることが最初から分かっています。 プロが使う業務機なのですから、 ケースを開けなくとも工具なしにファン交換できるくらいの配慮が欲しいですが。

        途中休憩をはさんで2時間ちかく格闘し、 ようやくパワーサプライシールドが外れました。




        使われていたのは西ドイツBuehler Motor社製のDCサーボモータファンでした。 制御回路が別体の小さなボックスに収まっています。 へえ、初期の冷却ファンってこんなんだったんだね。 本体からの回転数制御はなく、メインボードにはんだ付けされたビニール線でDC12V固定で給電されています。




        昨年8月の再起動繰り返す問題の原因分析の時は、 サーマルシャットダウン機構については回路図からその挙動を読み、 問題はないはずと判断しました。 実物を見るのは今回が初めてです。

        サーマルシャットダウンボードは小さな特殊形状のプリント基板。 冷却ファン直前の空気流の中にサーミスタを曝すように取り付けられています。 冷却ファンが止まって筐体内の気温が上昇すると、 サーミスタの抵抗値が変化し、サイリスタがトリップしてパワーインバータドライバを強制停止します。 今回はじめてこのボードが設計意図通りに動作した、ということになります。

        42.8Vを生成するプリレギュレータのPWMコントローラは、 サービスマニュアルの回路図ではTL594が示されていますが、 ラボの個体ではuPC494Cが使われていますね。

        インバータ出力過電流検出回路の抵抗R948は、サービスマニュアルどおり33Ωが取り付けられています。



        代わりのファンは、中古リサイクル品在庫のなかから程度のよい100mm品を選びました。 2021-01-21に RPS1206 の解体品から取り外したものですから、1990年初頭の製品でしょう。 製造後30年は経っていそう。 このファンはリヤパネルに両面テープで取り付けることにしました。 オシロスコープを地面に立てて使うサービスマンスタイルは取れなくなってしまいましたけどね。

        組み立ては面倒だけどいちど分かってしまえば難しいこともなく・・・と、 ああ、プッシュスイッチレバーをひとつ、フロントパネル裏に落としちゃった。 30分ほど格闘しましたが取り出せず、まあいいか。

        組み立て後は連続して正常動作、めでたく 前線復帰。

    2022-03-11 ファン交換
    2022-03-12 前線復帰





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