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Blinker Position Lamp & Hazard Signal Controller

For YAMAHA TDM850



ウインカーポジションコントローラ

    第3研究所往還機 YAMAHA TDM850 は1996年SOPで、古いですから、フロントウインカーランプを走行中に点灯させるポジションランプ機能がありません。 そこでアフターマーケット品のポジションランプコントローラを取り付けたのですが、 わずか1年、12000マイルで故障してしまいました。 同じ製品、または同等の製品をまた買うのも癪だったので、 同等の機能を持つコントローラをつくることにしました。

    ウインカー動作は車両の純正ウインカーリレーのまま。 このユニットは、左右ともウインカー消灯が一定時間続いたらフロントの左右ウインカーランプを減光状態で点灯させ、 ポジションランプとして機能させます。 左右いずれかのウインカーが灯いたら即座にポジション動作を停止させます。

    ランプの減光は電源をスイッチングしデューティ比で減光させればいいでしょう。 スイッチング動作に伴うエミッションノイズは多少ひどくてもよいとします。

    スイッチング波形発生回路は555を使えば手軽かなと考えましたが、 ウインカー動作時にポジションを消し、ウインカーが止まったら少し経ってからポジション動作を開始させるディレイドゲート回路を考えると、 全部合わせてクワッドオペアンプIC1個で済めば小さくまとまります。 そこでスイッチング波形発生回路はEL500で試した オペアンプ1個による可変デューティ無安定マルチバイブレータ を採用します。 使用するオペアンプはLM324。 特別なことのない回路なので汎用の4個いりオペアンプICならなんでも構いません。 たまたまEL500に使われているからという理由でナショナルセミコンダクタ社のLM324を選んでいます。

    スイッチングデバイスに使えそうな在庫部品は何があるだろう。 ラボを探したところ、 かつてNoobow8000コンピュータに使われていて、2002年夏に故障してジャンクとなったAT電源ユニット にパワートランジスタ2SC2335Fが2個使われています。 取り出して試してみると、このトランジスタは正常に動作。 データシートによると最大コレクタ電流は7A取れます。 ウインカー球は12V 23Wですから、定常時は約2A。 左右のウインカーで合計4Aですが、3倍の突入を考えると12Aとなりますから、 このトランジスタ1個で左右のウインカー球を駆動するのは負担が高そう。 インダクタを入れて突入を抑えるようにすればトランジスタ1個でも行けるかな。

    オペアンプによるマルチバイブレータの出力でこのパワートランジスタを駆動するために、 パワートランジスタはダーリントン接続にします。 スイッチング用小信号トランジスタBC548があったので、これでテスト。ベース電流10mAで完全に飽和ドライブできます。

    さて、バラックを組もうとしたら・・・あれ、クワッドオペアンプの在庫が最後の1個だ。そろそろ買いだしが必要かな。




The IPF Blinker Position Lamp Controller installed into the YAMAHA TDM850 failed after mere 1 year and 12000miles. Buying the same or similar thing again wasn't a fun idea, so I decided to build one.

制御回路

    おおむねのコンセプトが日曜日に決まった後、なんだかんだ忙しく、木曜日になってようやく3時間ほど回路図を描く時間がとれました。 土曜日にブレッドボードで回路を組んで定数を決定、その後サンハヤトICB-86Gユニバーサル基板に実装しました。 できあがった回路は右。

電源回路と基準電圧生成

    制御回路の消費電力は微々たるもの。 電源は車両のVBATTから逆接保護ダイオードD4 1N1518を通して直接得ています。 安定化回路は不要。 車両電源の暴れの影響を抑えるために470μFの電解キャパシタC1を入れています。
    回路内部の基準電圧は正確である必要はなく、電源電圧におおむね比例していれば十分。 VBATTを10kΩの抵抗R1とR2の2本で1/2に分圧して生成し、オペアンプU1で電流ブーストしています。 ただし基準電圧の負荷はほとんどありませんので、この電流ブーストは実は不要。 使用するLM324は4個いりパッケージで1つオペアンプが余るので使っているだけです。

ウインカー動作

    ウインカーは、車両純正のウインカーリレーにより点灯されます。 ウインカーリレーからの点灯電圧は、本機内のダイオードD8あるいはD9を通ります。 このためダイオードの電圧ドロップ分だけ暗くなってしまいます。 まあ許容できるでしょう。

ウインカー動作検出

    ウインカー動作検出は、ランプ上流の電圧を基準電圧と比較することによって行われています。 オペアンプU2をコンパレータとして使っています。

    左右どちらかのウインカーがONになると、オペアンプU2の6番ピン、反転入力電圧(-)はVBATTになります。 U2の5番ピンの非反転入力(+)には、VBATTの半分に設定された基準電圧が与えられています。 V+ よりもV-のほうが電圧が高いので、オペアンプU2の出力はローレベル(0V近く)になります。 このときU2の出力は吸い込み動作となり、U2の出力7ピンに接続された10μFのキャパシタC3は即時放電され、 その電圧はローレベルになります。

    ウインカーがOFFになるとコンパレータU2出力はハイレベル(ほぼVBATT) になりますが、 コンパレータU2の出力とキャパシタの間に入ったダイオードD1のために、コンパレータU2出力は何もしません。 いっぽうキャパシタC3は、上流の220kΩ充電抵抗R4によって徐々に電圧が上がっていきます。

    キャパシタ電圧は2番目のコンパレータU3で基準電圧と比較されます。 キャパシタ電圧が基準電圧以下のときはU3出力はローレベル、基準電圧を上回るとハイレベルとなります。 これにより、ウインカーがONになるとコンパレータU3出力は即時ローレベルになります。 ウインカーがOFFになって一定時間が経過すると、コンパレータU3がハイレベルになります。 このためU3はディレイドゲートとして機能します。

    ウインカーOFF時のポジション動作開始ディレイ時間はR4とC3によって決定されます。 自動車のウインカーの点滅速度は速くて100回/分ですから、1周期は0.6秒。OFF時間はその半分で0.3秒です。 よって原理的には0.3秒より長く設定しておけばいいのですが、今回はおよそ1.5秒に設定しました。




The new homebrew blinker position lamp control unit uses a LM324 quad op-amp. U2 and U3 provides a delay time for start of oscillation, making the position illumination is inhibited during turn signaling. U4 is a multivibrator with ON and OFF duration independently configurable.



With a powerstage design not yet finalized, a control circuit was built into an universal board. It started to operate without trouble.

ポジションオシレータ

    U3の出力はポジションランプ点灯波形発振用オペアンプU4の基準電圧となっています。 U3出力がローレベルのとき、ポジションオシレータは動作せず、出力はローレベル固定になります。 このため、ポジションオシレータ出力によってドライブされるスイッチングトランジスタはOFFになります。 これにより、ウインカースイッチがONになると即時ポジションランプは消灯します。

    U3出力がハイレベルのとき、つまりウインカーが消えて少し経つと、ポジションオシレータU4が動作しはじめ、 スイッチングトランジスタがそれに応じてON-OFFをすばやく繰り返し、フロントウインカーランプがうっすらと点灯します。

    スイッチング周波数はキャパシタC4と抵抗R9およびR10で決定されます。 今回はスイッチング周波数を約55Hz、デューティ比を約75%としました。 U4の出力にはLEDを入れて動作確認できるようにしていますが、 55HzではLEDは連続点灯しているように見えます。 基板を手に持って軽く左右に振ればLEDが点滅動作していることがわかりますので、 お手軽テスト用としても適。

    なおIPF製のコントロールユニットの場合と同じく、ポジションランプのつき始めはぽわっといった感じです。 これはランプを定格電圧以下で点灯させているために、白熱までの時間もその分長くなるため。 マルチバイブレータのデューティ比決定部分に工夫をするとか、点灯開始時に短時間だけ連続ONする回路を追加するとかして、 動作開始直後はフルデューティになるようにすれば具合がいいのでしょうが、 考えるだけで数週間はかかってしまいそうなので今回は見送り。

2012-03-04 ポジションオシレータ基板実装 動作開始






The multivibrator circuit generates a switching signal for the power stage. Freqency is approx. 55.5Hz, and the duty ratio is approx. 75%. With this setting the front turn signal lamps illuminate with less brightness.


電力スイッチング

    ブレッドボード段階で、2SC2335Fを駆動し、ランプの明るさの具合を確認しました。 実際はウインカーランプは2個駆動することになるので、近くに転がっていた55Wランプを駆動してみました。 すると、最初は具合が良かったのですが、数分後にぱっと明るくなってしまいました。 おや? 制御基板はひきつづきデューティ75%のスイッチング信号を出力しています。 てことは・・・やはりパワートランジスタのONまま故障。 ヒートシンクはあっちっちになっています。 データシート上の最大コレクタ電流が7Aといっても、それは適切な冷却がなされた場合のことであって、 ヒートシンクが小さすぎたために高温になってしまったのです。

    これ以上大きなヒートシンクを用意するのも用途目的に合わないし、 まさか冷却ファンをつけるわけにも行きません (それはそれでバカバカしくて楽しそうですが)。 これはやはりパワーMOS FETを使うしかないようです。 しかしラボ在庫部品には適切なパワーMOS FETはありません。 どれかのジャンクに使われているかもしれないけれど・・・買ってきたほうがよさそうだな。 今週末の完成は見送り。



パワーMOS FETを買おう

    パワーMOS FETを買いに秋葉原まで行く時間は取れなさそうなので、オンラインショッピングで買うことにしました。 200円のFETひとつ買うのに送料500円はばかばかしいので、こまごまといろいろな部品を発注。 これで週末にはパワー回路が試せるな。

    と思いきや、重大なミスを発見。 深く考えずに、TO-220パッケージのパワーMOS FETの店舗在庫の中から最大ドレイン電流とドレイン-ソース抵抗それに値段で品定めをしたのですが、 注文後2日経ってよく考えたら発注したのはNチャネル品。 今回の回路は上流をスイッチしようとしているので、PチャネルMOS FETを使うべきだったのです。 Nチャネルで上流側をスイッチしようとすればゲート電圧をVBATTよりも高くする昇圧回路を用意しなければ!!

    さすがそれはないでしょう。 ので、今度は翌日発送保証のRSコンポーネントでPチャネルパワーMOS FETを注文。 これまた送料を割安にするため、ほかにもいろいろ発注。 同社は商品総額8000円で送料が無料になりますが、RSでそこまでのついで買いは逆に割高になってしまいます。

2012-03-05 部品発注
2012-03-08 部品追加発注
2012-03-10 パワーMOS FET入荷



パワーMOS FETを試す

    というわけでTO-220形状のPチャネルパワーMOS FET 2SJ653が入手できました。 低電圧型で、ゲート駆動電圧は4V。 スイッチング波形発生のLM324 U4出力から抵抗1本を介して直結できます。 ところが、すでにユニバーサル基板で実装してある回路はU4出力はハイレベルでランプ点灯と考えてつくったのに、 PチャネルMOS FETはゲート電圧ローレベルでONするデバイスなのです。

    そこでU4出力のあとに小信号NPNスイッチングトランジスタをゲートドライブとして入れます。 U4出力ハイレベルでトランジスタをONさせ、MOS FETのゲートをグラウンドレベルに落とすしくみ。

    2SJ653のON時ドレイン-ソース間抵抗はわずか0.038Ω。 計算では10A流しても電圧降下はたったの38mVで、よって0.38Wしか損失がありません。 今回のアプリケーションではドレイン電流は4Aなので損失は0.15W、 デューティ75%での動作なので熱発生はさらに3/4になり、放熱器も不要です。 バイポーラパワートランジスタでは大電流をONさせるためにはベース電流もそれなりに流さなくてはなりませんが、 パワーMOS FETならゲートは電圧を掛けるだけで済みます。これまた大きなメリット。

    2つの21W球を1つのパワーMOS FETでドライブすることを想定して、 55Wヘッドランプバルブを負荷にして連続点灯を試してみました。 2SJ653は余裕でヘッドランプバルブをこうこうと灯しています。

2012-03-10 2SJ653テスト



やっぱりハザードもほしい

    パワーMOS FETのテストも済んだし、パワーダイオードとともにどう基板に組み込もうかな。 ハザード機能をあとで追加することを考えると、ダイオードとパワーMOS FETは別基板にしておいたほうが楽かも。

    でも、後でっていつのことだ? いったん車両に組み込んだものをまたばらす方が手間なんじゃないの? 昨日も外環道で突然の事故渋滞に出くわしてハザードランプを出せないのが不安だったしなあ。

    二輪車にはハザードランプの装備義務はないし、四輪車と違って後続車から自車の先が見えているわけだし、 なくてとても困るといったものではありません。 でもいまではほとんどの二輪車に装備されているし、やはりあった方がなにかと便利だよな。

    じゃあ、基板の空きスペースにはやはりハザードランプ点滅回路を組み込もう。 ただしウインカーはひきつづき車両の純正ウインカーリレーを使い、 自作回路が壊れても走行には支障がないようにしておきます。

    TDM850の純正ウインカーの点滅速度を実測してみたら、1周期t=0.685secで、87.6cpmでした。 基板の空きスペースに、これとほとんど同じ周期のハザードオシレータを組み込みましょう。 さあてどんな方式にしよう。

NE555案

    8ピンDIPのNE555なら基板の残りスペースに楽に組み込めます。 まずはこれで検討、ブレッドボードで試作します。
    ブレッドボードを使いNE555をアステーブル結線にして試すと、C=10μF、RB=47+4.7kΩ、RA=1.3kΩでt=0.698sec。 周期はこんなものでOKですが、動作制御で悩んでしまいました。 アステーブル動作・停止はNE555の4ピン、RESET端子を使うのが普通ですが、 RESET端子はハイレベル(あるいはハイインピーダンス)でアステーブル動作、 ローレベルに落とすとアステーブル動作が停止するのですが、 停止時は出力はハイレベル固定。 これではポジションランプ回路とロジックが合いませんので反転処理が必要。 それに、NE555のアステーブル回路では出力ON時間はどうしても出力OFF時間よりも長くなってしまいます。 それを論理反転させるとランプ点灯デューテイが短くなってしまい、 新型フォルクスワーゲンゴルフのような違和感のある点灯になってしまいます。これはいやだな。 というわけで、NE555案は中断。

LM324残りの1個のオペアンプを有効活用する案

    つぎに、現状LM324の4つのオペアンプのうちあまり意味なく使っているU1をマルチバイブレータ化することを検討してみます。 ポジションランプ用オシレータと同じ回路構成にして、 非反転入力端子(+)の基準電圧生成分圧抵抗の上流側にハザードスイッチを入れてみましょう。 通常時、つまりハザードスイッチがOFFのときは、プラス端子電圧はローレベル固定で、オペアンプ出力もローレベルになります。 このときキャパシタは放電され、マイナス入力端子電圧はローレベルになっています。 スイッチがONになるとただちにプラス端子電圧がVBATT/2の基準電圧になり、 直ちにオペアンプ出力はハイレベルになって無安定マルチバイブレータ動作が始まります。 つまりハザードスイッチをONにすれば即時点灯から始まるので具合良し、です。
    ただしこれはおそらくハンドルグリップに取り付けることになるハザードスイッチが理想的に0Ω-無限大Ωを示す場合のみ成立する話。 もしハザードスイッチが雨水浸入でたとえば10kΩ程度でリークすれば、ハザードランプの誤動作につながってしまいます。 これを防ぐためにはやはりコンパレータでもう少し正確にON判定する必要がありそうです。 となると別のオペアンプの追加が必要だから、LM324だけで済ますプランもボツ。

DIP 8ピンのデュアルオペアンプを追加する案

    DIP8ピンのデュアルオペアンプICを追加したらどうだろう。 ハザードスイッチON判定コンパレータとしてオペアンプを1つ、 ハザードオシレータ用としてもうひとつ。

    ハザードスイッチON判定コンパレータの出力はまた、 LM324のU2、ウインカー動作検出コンパレータにつないでおきます。 こうすればハザード動作時にはフロントポジション動作を禁止できます。 このプランが妥当でしょうね。

    実証試作として第3研究所のEL500を使い、ハザードスイッチON判定コンパレータとハザードオシレータを組み立ててみました。 すると問題発覚。 ハザードオシレータとして機能するマルチバイブレータは、 ポジションランプ用の55Hz発振のときは気がつかなかったのですが、 最初の点灯時間が2回目以降よりもかなり長いのです。このため見た目がかなり変です。

    このオペアンプ1つによるマルチバイブレータはシュミットトリガ回路の発展形で、 反転入力端子の電圧が基準電圧の上下で変化しています。 これがたとえば基準電圧4.5V±1.5Vに設定されている回路の場合、 最初の点灯サイクルではキャパシタ電圧が0Vから6Vまで上がり、 6Vから3Vに落ちる間消灯、2回目以降は3Vから6Vに上がる間点灯になります。 つまり最初だけ、2回目以降の約2倍の時間点灯してしまうのです。

    これを防ぐため、シュミットトリガの幅を増やしてみました。 キャパシタ電圧は1V〜7Vの間で往復する設定です。 これなら、初回点灯のキャパシタ電圧変化は7V、2回目以降は6V。 初回だけ点灯時間が長いという事実は変わっていませんが、 その伸びは相対的に小さくなるため、 それと言われなければ気がつかないレベルです。 これで問題解決ということにしよう。

    というわけでデュアルオペアンプ案を採用。

2012-03-12 EL500を使いLM324でハザードオシレータを試作




Measured by Tektonix 2230

ハザードとウインカーの競合

    このままだと、純正ウインカーリレーによるウインカー動作とハザードオシレータによるハザード動作が同時に行われてしまい、 非同期の点滅が重なってしまい具合が悪いです。 もうひと工夫必要。

    ほとんどの車両ではハザード動作がウインカー動作に優先するようになっています。 緊急路肩退避のシナリオなら、車を路肩に寄せるためにウインカーを出し、 そのあと停車表示のためにハザードを出すことになるでしょう。 よってこれが自然と思えます。 いっぽう、前方渋滞表示でハザードを出ししながら減速し、 さらに車線変更するならいったんハザードを止めないとウインカーが出せず危険です。 この問題を解決するため、一部の車両では すでにハザード動作しているときにウインカースイッチが入った ら、ウインカー動作に切り替えるものもあります。 でもこれを全アナログロジック回路で実現するのは結構な手間。 今回はハザード優先にします。

    これを実現するため、ウインカースイッチ上流にパワーMOS FETを入れ、 ハザード動作時にウインカーリレーが動作しないようにします。 ここにはNチャネルMOS FETを使い、ゲートを10kΩでドレインにプルアップしておきます。 これによりMOS FETは自力でONするので、コントローラが故障しても(多くの場合)ウインカーの動作は保たれます。 このMOS FETをドライブするためにさらにトランジスタの追加が必要になってしまいました。 ハザードスイッチ検出コンパレータ出力がハイレベルになったらゲートドライブトランジスタがONし、 NチャネルMOS FETのゲートをローレベルにします。これによりウインカー動作が止まります。 NチャネルパワーMOS FETは今回間違って注文してしまったわけですが、さっそくの出番となりました。



ターンシグナルインジケータ

    TDM850のインパネのターンシグナルインジケータは、左右共通の1つだけで、 使われているランプは3.4W球。 右と左のウインカーランプをわたる形で結線されています。 ウインカーを出しているとき、ウインカーリレーからの電流はインジケータランプを通り、 反対側のウインカーランプを通ってグラウンドに落とされます。 反対側のウインカーランプよりもインジケータランプの方がずっと抵抗値が高いため、 反対側ウインカーランプは点灯には至らず、インジケータランプだけが点灯するのです。 問題はこのインジケータはハザード動作時には点灯しないこと。なにしろ左右同時に点灯するわけですから。 これはどうする?

    ハザード出しっぱなしに気づかないのはかなり危険ですから表示灯は付けておかないと。 TDM850のインパネには4つのインジケータランプ取り付け部がありますが、 使われているのはニュートラル、ハイビームとターンシグナルの3つだけ。 シンプルだなあ、そういえば油圧警告灯ってないんだな。 インジケータランプを追加して左右独立灯にすれはウインカー動作とハザード動作の見分けもついて便利ですが、 使われていない部分のレンズは何色なんだろう。 インスツルメントクラスタに手を入れるのはあまり気乗りしません。

    純正のインジケータランプのままでウインカーとハザードを兼用するなら、 左右リヤウインカーからダイオードでとりだして直接点灯させればいいや。 仕組み的にはこれが一番シンプルそうです。 が、車両ハーネスにさらに手を入れなければならず、 ノーマルに戻す必要があるとしたらこれまた面倒な話。

    TDM850のインジケータランプ類はインパネの下の方にあって見やすい位置とは言えず、 ウインカー出しっぱなしに気がつかないことが何回かありました。 それならばインパネの上のほうに後付けインジケータクラスタをつけても良いな。 時計とか気温計と多機能タイマとかもいっしょに。 ならば純正ターンシグナルインジケータはそのままにしておこう。



レイアウト再考

    ハザード回路追加コンセプトがほぼ確定したので、基板レイアウトを再考します。 電源平滑用の470μFは場所ふさぎなので取り除き、代わりに9Vの3端子レギュレータを追加して、 制御回路は9V動作させることにします。 パワーMOS FETはフロント左右ウインカーランプ用Pチャネルとリヤ左右ウインカーランプ用のPチャネルを載せます。 ウインカー禁止用のNチャネルは小さなパッケージにしてハーネスの途中に空中配線。 MOS FET用のゲートドライブトランジスタ計3個はオンボード。

    これで基板はおおむね埋まってしまうので、パワーダイオードは別基板に載せます。 当初の計画よりずいぶんややこしくなったなあ、ダイオードだらけだ。



パワーダイオードをテストする

    電球駆動の逆流防止につかうダイオードは在庫パーツのなかから選んだ1N5822。 逆耐圧40Vの低圧用ショットキー・バリア型整流用で、最大電流は3A。

    このダイオードで問題がないかどうか見るため、テストバラックを組みました。 本物の21W球を負荷にして、ELENCOのブレッドボードで組んだNE555の回路でデューティ50の信号を発生させ、 2SJ653 PチャネルMOS FETを介して点滅させます。 1N5822はMOS FETのドレインと電球の間に入れてあります。

    このダイオードは、データシートを参照すると順方向電圧が低いとありますが、 パワーMOS FETに比べればやはりON抵抗は高く、2A連続通電時実測での順方向電圧は0.35V。 すると損失は0.7Wということになります。ウインカー動作時はデューティ50%ですから平均は0.35W。 10分ほどウインカー点滅させたあとのダイオードの温度は人肌以下の温度で、熱を心配する必要はなさそうです。 次にランプの突入電流が心配ですが、ウインカー点滅動作時の突入は冷間突入よりもそれなりに小さく済んでいるようで、 ダイオードそのものは3Aよりも大きなサージに耐えられるので、たぶん大丈夫でしょう。 ランプ1個の負荷ではパワーMOS FETはほんのわずかに温かくなったかなという程度。

    電源電圧を15Vまで上げると順電流は2.8A近く流れています。 この条件で数時間連続動作。 問題は見受けられません。
    今回のユニットはこのダイオードを合計8個も使います。 車両純正ウインカーリレーをそのまま使うというコンセプトゆえの負担。



2012-03-18 LM358を使う

    せっかく金曜日に第3研究所でEL500での試作結果を回路図に書いたのに、 ポータブルハードディスクを中央研究所に持ってくるのを忘れてしまいました。 思いだしながら日曜日の朝、ELENCOのブレッドボードで再度試作を開始。

    DIP8ピンのオペアンプはラボ在庫に結構あったはずと探すと、多くはTL-061のようなシングルオペアンプでした。 幸いLM358の新品がいくつかありましたので、これでいこう。

    パワーMOS FETのゲートドライバはBC548をやめて、3つとも2N2222を使います。 ハザードオシレータの電圧シフト用ダイオードは充電用・放電用で揃えたかったので、在庫から1N4309をチョイス。 古い部品で、ちょっとサーチした程度ではデータシートは見つかりませんでした。 が、ごく普通のシリコンスイッチングダイオードだと思います。

    簡単な回路ですが、こんなものでも実際に組み立ててみるといろいろ細かな問題が出てきて、試行錯誤してしまいました。 今回は秋月で安く売っていたブレッドボードワイヤーを使ったので作業は結構快適になりました。

    午後から基板実装を開始。 途中ポゴの新しいうわばきを買いに出かけたりして、 3端子レギュレータ、ハザードオシレータとパワーMOS FETが追加された基板が動作し始めたのはもう日曜の夜の7時過ぎ。 ハザードスイッチ端子をショートするとポジションオシレータはすぐに止まり、 ハザードオシレータがONサイクルから動作を開始し、テスト用のウインカー球がベンチでいい感じで点滅を始めました。 ハザードスイッチ端子を開放にするとハザード点灯は直ちに止まり、少ししてからポジションオシレータが動作を始めました。 いい感じ。

2012-03-18 ハザードオシレータとリア用パワーMOS FET実装

    ハザード機能のためにフロントとリアの計4つのウインカーランプを駆動するわけですが、 2つのパワーMOS FETをひとつはポジションランプ用、もうひとつはハザード用とする構成もありうることに気がつきました。 21Wのランプが4つなら全部で約8A流せばいいわけですから、2SJ635ひとつで駆動可能。 でも4倍の突入があれば定格最大電流に近いですから、余裕があるとは言えません。 のでやはりパワーMOS FETはフロント用とリア用というわけ方にします。
    基板に2個めの2SJ653を実装。 ハザードモードでは2つのテスト用ランプがいい感じで点滅し、 ハザードスイッチを切るとフロントランプだけが9V相当の明るさで点灯します。 だんだんできてきたぞ。

2012-03-20 フロント用パワーMOS FET実装



検討不足

    ここまで時間をかけて考えておきながら、まだ検討不足。やっぱり素人細工だ。 TDM850 4TXは古いのでヘッドライトスイッチがあります。 当初このユニットはポジションランプ用だったので制御回路の電源は純正写楽法介ポジションランプからとればよかったのですが、 これじゃあヘッドライトスイッチがOFFのときにはハザードが出ないじゃないか。 制御回路の電源をIGNラインからとれば、今度はメインスイッチONではポジションランプを消せません。

    ガス欠などエンジン停止状態でハザードを出して非常停車するなら、 ただでさえ大きいとは言えないバッテリ容量を考え純正ポジションランプ+テールランプは消したいです。 し、そのうちナビゲーションシステムを取り付けた場合などはエンジン停止状態で目的地設定等もしたいでしょうが、 ポジションランプの30Wの負担が心配です。 やはりさらに回路を追加して、 回路電源はIGNラインからとりながらもヘッドライトスイッチがOFFのときはポジション動作をしないようにします。 そうわかっていればなにか簡単になるように工夫できたのでしょうけれど、 さらにトランジスタをひとつ追加するようだ。

2012-03-22 ヘッドライトスイッチ接続を検討

    ティーディは50000マイル80000キロは走ってもらいたいと考えていますが、 あと3年間36000マイルの間の環境条件にユニバーサル基板の手はんだユニットが耐え切れるかどうかはかなり怪しいものです。 ので、修理を想定して車両への組み込みはコネクタを用いることにします。 ユニットを外してもジャンパーコネクタを差し込めば即ノーマル配線に戻れるようにしておくことにしました。 ので自動車用コネクタの9ピンのと6ピンのを購入。
    なお今週は実質的に開発活動はお休み。 ダイオードボードの実装は来週に持ち越します。

2012-03-24 コネクタ購入 住友電装 MWP型自動車用非防水コネクタ 9Pセットx2 @577円 6Pセットx2 @410円

    毎週恒例のプチうつ状態から脱却、回路図を描いてみました。 さあ、ここでどうしてもひとこと言わずにはいられなくなってしまいました。 どうしてこんなにややこしくなっちゃったんだ!?

2012-03-26 Revision 1 回路図作成





Revision 3: ダイオードボード実装

    ポゴの入院騒ぎとその後の疲れとで1ヶ月以上開発は停滞したままゴールデンウィーク突入。 しかしポゴはまた発熱。今度は普通のカゼのようですが、今年は休養のゴールデンウィークだな。 天気も良くなく、停滞前線の影響で1日雨降りの本日、ようやくダイオードボードに着手します。

    ポジションスイッチ検出トランジスタとウインカーキャンセラのドライブトランジスタはダイオードボード側に載せます。 回路図を書き直してRevision 2とし、作業開始。 100円ショップで買ってきたポリプロピレンケースに入れるにはTO-220パッケージは背が高すぎるのに気づき、横倒しに。 行き場を失った3端子レギュレータの入力側キャパシタは基板下面に移動。

    できあがった2階建てボードはジャンプワイヤが目立つし、太いワイヤを引き出しているせいもあって、ひどくごちゃついています。 たかだかウインカーポジションランプとハザードランプ駆動だけなのにね。

    この状態で動作テスト。あれ、ポジションランプの駆動が変だ。 おそらくポジションスイッチ検出トランジスタが誤動作していて、小刻みにポジションオシレータを止めに行っているようです。
    ポジションスイッチがONになってバッテリ電圧が来ると、ポジションスイッチ検出トランジスタがONになり、 ポジション禁止信号をローに落とす(=ポジション動作がはじまる)ような回路にしてあります。 このトランジスタがONになりきっていないか、ONにはなっているけれどポジション禁止信号を落とし切れていないのかな。 でもまてよ、一瞬でもポジション禁止信号がハイレベルになればディレイドゲートがポジション禁止を1秒ほど続けるはずなのに。 それともポジションスイッチ検出トランジスタに、ディレイドゲートの遅延時間設定キャパシタが放電しきらないほど短時間のパルスが入っているということか。

    オシロスコープを使って調べて、原因判明。ポジションランプ駆動電圧が逆流防止ダイオード1N5822を通って現れてきているのでした。 この程度は4つのダイオードでまちまちです (もともと複数のメーカー製のものが混じっている新古のグラブバッグ品でしたし)。 この電圧がウインカーON判定コンパレータの判定電圧4.5Vを超えればポジションランプは消えてしまいます。 回路図上で逆電圧のかかったダイオードはつながっていないのと同じと読みがちですが、実際のダイオードは接続されていないワイヤとは違うのです。

    原因はもうひとつ。 逆電圧がかかった瞬間、ダイオードはごく短い時間、導通しているかのように振舞うのです。 半導体の特性をいろいろ考えなくても、絶縁された二つの電極が近接しているならば小さな容量のキャパシタとなるわけですから、なにも不思議ではないでしょう。 この程度もまた、使った4個のダイオードの間でずいぶん違いがありました。

    これらの対策として漏れ電圧を落とすための抵抗とON時パルスを吸収するキャパシタを追加し、動作は安定しました。 この二つはフロントウインカー配線から回り込んだRFを落とす役目もしてくれるはずです。 修正完了後、回路図をRevision 3にアップデート。 さらに複雑になっちゃった。

    実測値をちょっとメモしておきます。

  • スタンバイ時全電流5.5mA @ VCC=DC12.0V
  • ハザード点滅周期 1.488Hz (89.28 cycles per minute)
  • ポジション点滅周期 50.000Hz (20ms) 15.575ms (77.87% duty)

  • 2012-05-02 ダイオードボード実装
    2012-05-03 ダイオードボード異常動作対策 回路図をRevision 3に更新







    Revision 3の回路

        開発試作の初期、このページの最初のほうとではずいぶん回路図が変わってしまいましたので、 Revision 3の回路図では素子追番を振りなおしました。

        Revision 3 では、動作仕様として狙いとはちょっと違う点がまだあります。

        まずは、車両のメインスイッチをONにしたとき、すべてのウインカーランプが一瞬点灯してしまうこと。 これはウエルカムサイン機能だと考えることにします。
        ふたつめは、車両のメインスイッチをONにして、ヘッドライトスイッチをOFF位置からポジションON (またはヘッドライトON) にすると、 ポジションランプは即座には点灯せず、約1秒の間をおいてから点灯します。 これはポジションスイッチ判定とウインカー判定を同じディレイドゲートに入れていることが理由。 まあこれも実用上問題とはなりません。

        この回路には、実車で問題が出たら対策しようと考えている懸念点も残っています。

        まずはハザードスイッチ入力にノイズ吸収のキャパシタを入れていないこと。 インピーダンスを低めにしてあるし、 ハンドルに取り付けたハザードスイッチからユニットまでのケーブル長は50cm程度しかないから大丈夫だろうと高を括っているのですが、 ボディアンテナとキチ×イアンプを使った長距離トラックの不法CB局の隣で停車したらどうなるか。

        もうひとつは、ポジションライトスイッチがOFFのとき、つまり車両のヘッドライトスイッチがOFFのとき、 やはり強力な電波を浴びるとポジションライトが点灯してしまうかもしれないということ。 でもその逆、電波を浴びたためにポジションスイッチがONなのにポジションライトが消えてしまうという可能性は低いと思われます。 実車の走行時は問題がないでしょう。 これも様子見。


    Original size


    ユニット組み込み

        ようやく晴れたのでいのぶ〜でピクニックにでも行きたかったのですが、ポゴはまたカゼをひきそうだからといって及び腰。 ホームセンターに買い物に行きモスバーガーで昼食をとっただけでした。 ので、ウインカーポジションコントロールユニットの車両組みつけを始めました。日没まであと6時間。 ハザード機能は後日に回せば、のんびりやってちょうどいいくらいでしょう。

        まずは基板をポリプロピレンケースに組み込み、ワイヤーにコネクタを取り付けます。 ついで車両のスクリーンとアッパーパネルカバーを取り外して、ケース取り付けの検討。 ケース寸法は事前に計っていなかったのですが、ヘッドライトハウジング上の空きスペースにどんぴしゃり。 あと5mm幅が大きかったら難儀していたでしょう。取り付け方法は重ねて厚みを増した両面テープにしましょう。

    2012-05-04 ユニットパッケージング完了 車両組みつけ開始




    電源取り出しを考える

        ところが2時間ほど経ったら雨が降り出し、強烈な雷雨になりました。 なんだか今年のゴールデンウイークは荒れているなあ。 午前中はちっとも景色の良くない国道を何台もの大股びらきハーレーがベチベチと汚い音をたてて軽井沢に向かっていましたが、 いまごろは全身で大自然を感じ取っているんでしょうね・・・。

        屋外作業ができないので、デスクワークで車両のどこから配線を引き出すべきかを検討します。 特に電源ラインはウインカー球4個を同時に点灯しますから、8A以上が流れます。 やたらなところから取り出すとヒューズ切れ、車両ハーネスの発熱、最悪は発火もあり得ます。 ウインカーポジションユニットの故障が他のサブシステムに及ぼす影響も考えなくてはなりません。

        ついでですから、サービスマニュアルを参照し TDM850 4TXの電源系 を調べておきました。路上故障のダイアグにも役に立つでしょうし。

        ウインカーポジションコントロールユニットの電源は、電源アーキテクチャから考えてシグナルシステムヒューズからとるのが妥当です。 シグナルシステムヒューズ系の負荷にはウインカーランプやストップランプなどがあり、 純正のランプ負荷のワッテージを単純に足し算すれば91W。 それが今回の変更でさらに42Wが上積みされますから、合計133W。 12Vで11A、14Vならざっと13Aということになります。15Aヒューズだと余裕が小さくなってしまいそうです。
        車両ハーネスの電流容量にまだ余裕があることを願って20Aヒューズに換えるべきでしょう。 ウインカーポジションコントロールユニットが故障してシグナルシステムヒューズを飛ばしてしまうとブレーキランプさえつかなくなってしまいますから、 このユニットの電源ラインには10Aのサブヒューズをいれておくことにします。 手元に新品の小型ブレードヒューズホルダがありますからこれを使いましょう。 10Aの小型ブレードヒューズはないので明日になったら買い物だな。

    2012-05-04 電源取り出し検討



    車両組付け

        今日はいい天気。朝6時30分、作業開始。

        電源は、シグナルシステムヒューズラインのフロントブレーキスイッチ上流から取り出すことにしました。 ステアリングヘッド周りの配索はもともと余裕がないしステアリング操作でハーネスも動きますからあまり気乗りしませんが、 やむなくステアリングヘッド右側に中間ヒューズホルダを設置。 ポジションランプ機能はほどなく動作を開始しました。 おお、これでプロジェクト開始当初の目標は達成された。

        まだウィンカーキャンセラサブボードはつくっていないし、 ハザードスイッチも用意していないのでいったんここで作業完了にしてもいいのですが、 来週とか再来週とかにまたフェアリング廻りを分解するのもおっくうだろうから、 ひきつづきハザード機能の設置にとりかかります。

        ハザード機能配線は、左右のリアのウィンカーランプの配線を引っ張ってくればいいだけですから難しい理屈はありません。 でもオート×クスのアルバイト店員みたいな作業はしたくないので、取り出し場所をいろいろ考えました。 ウインカースイッチを出たウインカー信号はどこかでフロントウインカーとリアウインカーに分岐していますから、分岐後直近から取り出せば可。 エアクリーナ直下のジャンクションから取り出せれば一番素直です。 しかし分岐は車両メインハーネスの中で行われているようで、メインハーネスのテーピングをけっこうな量はがさないと見つけられなさそうです。 そこで結局オート×クス的な作業・・・テールカウル内部から引き出すことにします。 ヒューズボックスからの電力はシート下のウインカーリレーを通り、左ハンドルスイッチのウインカースイッチを通り、 テールカウルまで行った後にUターンしてフロントカウル内のポジションコントロールユニットのダイオードを通り、 再度テールカウルに行くことになります。 ま、いいか。

        配索後、ハザードスイッチ配線を仮ショートさせて、ハザードランプのテストをします。 すると、ハザード点灯させてもポジション動作が止まらないことに気がつきました。 これはパッケージング時に無理をして回路図中のダイオードD9の配線を痛めてしまったみたいです。 また基板を外すのは面倒だったので、部品面で空中ショート配線をして修理しました。 結果、おお、いい感じでハザード点滅している。

    (事前購入-在庫部品) ミニ平型ヒューズホルダ 最大15A仕様 283円


    異常動作

        ところが、一休みして車両を眺めていたら、奇妙なことに気がつきました。 メインスイッチをON、ヘッドライトスイッチOFF、ウインカースイッチOFF、ハザードスイッチ断のままにしておいたら、 一瞬だけリヤのランプが左右とも点灯したのです。
        じっくり見ていると、たしかに一瞬、しかも一定の周期で・・・およそ25秒周期で・・・ハザード点灯するのです。 さらに見ると、フロントの左右ランプも同時に一瞬点灯します。 ポジションランプを点灯させていても、リアはやはり一瞬点灯します。 フロントランプもリアランプも点灯するのですから、ハザードオシレータの出力が一瞬ハイレベルになっているのは間違いがありませんし、 テスタを当てたらたしかに一瞬電圧が出ています。 しかしハザードスイッチ検出コンパレータはローレベルままのはず。 ベンチテストではこんな現象は起きていなかったし、これは考えにくいぞ。

        回路図を20分ほどにらみ、10分ほど車両を眺めながら考えて、再びメインスイッチを入れたら、症状は消えてしまいました。 そういうことか・・・。
        実測していないので推測の域を出ませんが、ハザードオシレータのカットオフ動作安定用シリコンダイオード、 これはオレンジ色のガラス封入品ですが、に直射日光が当たり、光電効果で予期せぬ起電力が発生したためのようです。 現象が発生したとき、ポジション禁止動作不良の修理のためにユニットのカバーは開けてあり基板はむき出しでした。 しかもそのときはちょうど5月の元気な太陽光線が基板に直接射し込んでいたのです。回路図をにらんで考えている間に太陽は西に動き、 基板に直射日光は当たらなくなっていました。
        だから対策はなにもせず。 ポリプロピレンケースのフタを閉め、フェアリングインナーパネルを取りつければ問題は発生しないはずです。



    凝りすぎに気がつく

        お次はウインカーキャンセラユニットの準備。 これはなくてもハザードは出ますから、 左サイドパネルを外すだけで後で簡単に組み込めるようにコネクタを用意しておこう。 ウインカースイッチに行くワイヤをエアクリーナ下で切断し、ここからワイヤを2本引っ張り出してコネクタにつなごうとして、 あれ、まてよ? これってもっと簡単にできるじゃん! ハザードスイッチに2回路のものを使い、ノーマル位置ではウインカー回路ON、 ハザード位置ではウインカー回路を切ってハザードスイッチをONするようにすればいいんじゃないか!! Revision 3の回路は凝りすぎ!!

        ラボのトグルスイッチ在庫を確認すると、大半は1回路でしたが、狙い通りの2回路品も数個ありました。 小さなポリプロピレンケースにスイッチを組み込み、配線し、動作を確認。 ケースは左バックミラーボルトを使ってL型ブラケットで固定します。 パッシングスイッチを操作するときのように、左手人差し指を意識してちょっと伸ばしてレバーを下に倒せばハザードになるようにしました。 このスイッチ取り付けはかっこいいものではないので、後日もうすこし見栄えのいいものにしよう。 ので、ハザードスイッチはコネクタで簡単に交換できるようにしておきました。 おお、完成だ!!




    エミッションテスト

        ボディを組みなおし、組付作業が完了したのはもう夕暮れ。 みごとに1日作業でした。 片手に祝杯のビールジョッキ、もう片手に小型ポータブルラジカセを持ち、 ポジションライトのエミッションノイズチェックをしておきます。 ポジションライトをONにすると案の定AMラジオにノイズがでます。

        でも十分な信号強度の局を受信中であれば、ノイズはまったく気になりません。 車両から1mほど離れると局間周波数でもノイズはほぼ聞こえなくなります。 これなら信号待ちで隣に並んだ車に迷惑をかけることもないでしょう。 おそらく市川プレスの製品よりも優秀と見えます。 ポジションランプのスイッチングのON時に出るノイズが支配的なようなので、 MOSFET出力にインダクタとキャパシタを追加すればさらに改善できると思われます。




    いつまで持つか

        狙い通りの機能がみごとに実現でき、最初の中央研究所から第3研究所間の走行をノートラブルで走れましたので、ひとまず大成功! でもこのプロジェクトは実用プロジェクトですから、ようやくスタートラインを離れたにしかすぎません。 ユニバーサル基板にヘタクソ半田付けですから、はたしていつまで持つものやら。 接触不良とか雨水浸入とかはすごくありえそうだなあ。

        そこで、サクセスクライテリアを定義しておきましょう。 所定の機能ができたので現時点ではリミテッド・サクセス。 1年間もしくは12000マイル(のどちらか早いほう)、コントロールユニット内部の修理改修なく動作し続けたらフル・サクセス、 3年間36000マイル(のどちらか早いほう)、コントロールユニット内部の修理改修なく動作し続けたらエクステンデッド・サクセスと定義します。 さあどうだ。

    2012-05-05 車両組付完了 運用開始 20653.1mi




    ミッションコンプリート

        2017年07月02日、ティーディはオイル消費増大と排気管腐食のために第3研究所往還任務を退役。 自作ポジション/ハザードランプコントローラは5年2ヶ月 55267.3マイル、 エクステンデッド・サクセスのクライテリアも超え、車両退役までをしっかり動作してくれました。

        後継機スズキVストローム1000ABS "ティル" には最初からハザードランプ機能があります。 ウインカーポジジョンランプ機能はありませんが、 大径のリフレクタヘッドランプをもつティルは先行車バックミラーからの夜間視認性もティーディよりも良いと見えて、 進路をふさぐ形で先行車に車線変更されてしまうケースはかなり少ないです。 このため、このポジション/ハザードランプコントローラをティルに移設する必要はありませんでした。

        ポジション/ハザードランプコントローラは、ティーディに装着したまま廃車でお別れ。 そのままスクラップ扱いになるのでしょうけれど、 もしどこかの国に輸出されて修理され再び目を覚ますことがあるとしたなら・・・ 私の知らないところでコントローラもきっと働いてくれるでしょう。

    2017-07-02 ティーディ退役 ポジション/ハザードランプコントローラ任務完了 75920.4mi




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    2012-02-12 Front blinker position lamps do not illuminate.
    2012-02-17 Confirmed the failure of IPF USDM Blinker Position Lamp Control Unit.
    2012-02-25 Searched a power device among the lab's inventory, tested a power transistor 2SC2335F.
    2012-03-02 A new control circuit designed.
    2012-03-04 Tested on a breadboard, then assembled on an universal board. 2SC2335F failed. Page created.
    2012-03-21 Updated. Now the board has a hazard oscillator and 2 power MOSFETs.
    2012-03-22 Updated. Added headlight switch interface.
    2012-03-26 Updated. Circuit diagram revision 1.
    2012-05-03 Updated. Diode board assembled and debugged. Circuit diagram updated to Revision 3.
    2012-05-06 Updated. The unit installed and ready to go, declaring a limited success.
    2012-05-07 Updated, corrected typos.
    2014-10-19 Updated, corrected typo.
    2014-12-08 Updated. Added a tag.
    2022-03-21 Updated. [Noobow9300A @ L1]