「おいジム、俺オシロ買ったんだぜ。」 「いいねえ、どこの?」 「HP。」 「そりゃすげえ、一体いくらしたんだい?」 「2個で8ドル」 ラジオ小僧として、オシロを持つのはそれは夢でした。が、高くてとても手が出るものではありませんでした。 高校生のころのある日、行き付けのジャンク屋にそれはかなり古そうな小さなオシロが。 売り値2万円。 貯めたお小遣いを全部つぎ込めば買えそう。 どうしよう、欲しいけど、動くのかなあ。 お金を持って数日後にもう一度行ってみたら、オシロの姿はもうありませんでした。 20年近く経って復活したラジオおやじが中古なら何とかなるかなあとフットヒルを歩いていると、 同じモデルが何段にも積まれたオシロの山。 いくら中古のポンコツでも100ドルからするのが普通なのに、その売り値に驚いて、即買ってしまいました。 「10台買ってくれればもう少し安くするぜ。」 「い、いえ、に、2個でいいです」 こうしてラジオ小僧は、晴れてオシロスコープのオーナーとなりました。 それも、エンジニアのあこがれ、ヒューレット・パッカード社製のです! たとえ古くたって、最高周波数500 キロ ヘルツだって、 ヒューレット・パッカード のオシロスコープ! 1997-xx-xx HP1200A 2台 $10 @ Foothill College Ham Raio Frea Market |
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正常になった2号機をベンチに置き、連続通電してみました。
ラスタは安定していて、修理は成功したとしてよいでしょう。
2号機の外観は、管面にマジックで書き込みがあるなど汚れているので、
少しは清掃しようかなと考えていると、しかし、輝度がなんとなく下がってしまったような気がし始めました。
翌日の夜、輝度低下は疑うべくもなくなってしまいました。
ふたたびカバーをあけ、カソード回路基板の中の輝度調整とおぼしきトリマをいじってみると、十分な輝度が得られました。
ところがその翌日の夜になるとさらに輝度は低下し、完全にラスタが見えなくなってしまったのです。
とほほ。 すでに記した通り、 偏向異常の調査中にカソード回路基板をいじったらトリマのプラスティックノブと一本の抵抗がぼろぼろと崩れてしまいました。 それまでは輝度低下はこれほど顕著ではありませんでしたから、 原因を推測するに、 外装が崩れてしまった抵抗の抵抗値が熱による酸化か何かで変化し、輝度を下げてしまったのではないかと思われます。 2台を並べてカソード回路各部の電圧を比較してみることにしましょう。 抵抗の交換程度で済むことを期待しながら。 1999-01-30 HP1200A 2号機 輝度低下故障発生 対応せず作業終了 |
結局のところ2号機はそれからほったらかしですが、
1号機はラボにやってきてからすでに16年、
帰国後も第1研究所で、さらに中央研究所設立後もベンチのメイン機として大活躍中。
日曜日の朝、
TDM850用ポジションランプコントローラ
のテストを続けようと思ってHP1200Aの電源を入れたら、ラスターが管面左に行きません。
ああ、とうとう1号機にも2号機と同じ症状が出たぞ。5分ほどで突然症状は消え、その後は正常に。 2012-03-11 HP1200A 1号機 ラスタ左に行かず故障発生 翌週、起動直後にラスターが左に行かない現象が再発。 これはもう水平偏向トランジスタの劣化に間違いないでしょう。10分ほど経ったら正常になりました。 3週めも発生。電源投入直後にラスタが左に行きません。 5分ほどそのままにしておくとぱっと直り、以降は正常に動作。 温度が低いとトランジスタが異常動作するようになってきてしまっているのでしょう。 1999年の2号機修理以降サービスマニュアルも入手できているし、 すでに直し方はわかっているから (このページを書いておいて良かった!! 13年も前の修理の詳細を覚えているはずはありませんからね。)、 交換用のトランジスタがあれば今度はすぐに直せるでしょう。 ないなら2号機から取り出せばよい・・・でも2号機はどこに行ってしまったんだろう。 2号機を探し出すのに一番時間がかかりそう。 参考に偏向出力トランジスタ2N3440の主要スペックを書いておくなら以下。 2N3440 High-Voltage High-Current NPN Transistor, Metal Package VCEO 250V IC 1000mAmax hFE 40 min @ IC 20mA VCE 0.5Vmax @ IC 50mA @ IB 4mA FT 15MHz min @ IC 10mA NTE Replacement: NTE396 |
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これは数年前から観察されていた現象ですが、チャネルAの垂直アンプが動作不良です。
信号を入力していないのに大きくオフセットしていて、しかも不安定。
やはり電源投入直後に発生して、しばらく経つと直ることがあるので素子不良だと思います。
が、チャネルAのバーチカルレンジつまみをガチャガチャやると直ることもあるから、
ロータリースイッチの接触不良なのかも。 今年に入ってからデジタルオシロスコープを使い始めましたが、 アナログ信号を観測するのにはデジタルオシロスコープではどうしても表示が遅れてしまい、不自然さがぬぐえません。 もしHP1200Aが再起不能になったらアナログオシロスコープを一台買うようかなあ。 2012-03-23 HP1200A 1号機 チャネルAバーチカル動作不安定顕著に |
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2011年に第3研究所を開設して以降中央研究所のワークベンチで過ごせる時間が大幅に減ってしまい、
結果としてHP1200Aを使う機会も減ってしまいました。
2020年03月に入り新型コロナウイルス感染が世界的にひろがり始め、
対処として月曜日は中央研究所から在宅勤務するようにしました。
03月27日には可能な限り出社禁止・在宅勤務せよとの指示が出て、
以降すでに1ヶ月 中央研究所に籠る暮らしになりました。 ラップトップ1台あればVPN接続ですべての業務ができるIT環境がすでに6年以上前から構築されていて リモートワークが推奨されていたという点において、 自分の勤務先は日本においてはかなり先進的な環境だったことにあらためて気づかされましたが、 連続の在宅勤務をしてみて、これまたあらためて、 ただ参加だけしていればいいといった会議が実に多いことにも気づかされました。 会議の話を聞きながら、ワークベンチ周辺の整理や清掃を少しずつ進め、 終業後はいままで滞っていた細かな作業を少しずつ再開できるようにもなりました。 直近のメインのプロジェクトは Brother Joysound BA-101 の調査・修理や追加回路のブレッドボード試作で、HP1200Aは活躍してくれています。 ラスターが水平左に行かなくなるという現象はここ数年発生しておらず、 とりあえずは自然治癒したものと見ています。 が、チャネルAバーチカルのロータリースイッチ接触不良は相変わらず悩ましく、 ときおりV/DIVつまみをガチャガチャ回して接触を取り戻す作業が必要でした。 ベンチの片づけが進み、半分埋もれていたHP1200Aを引き出しやすくなったので、 ロータリースイッチの接点メンテ作業をすることにしました。 2020-04-24 HP1200A 1号機 メンテ開始 |
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小ネジ4本を外してボトムカバーを外せば、匡体左側にある長大なチャネルA V/DIVロータリースイッチには簡単にアクセスできます。
アルコール系接点洗浄剤を接点に吹きかけて洗浄、黒ずんでいた部分はコンタクトZで軽く研磨して、
チャネルAのV/DIVはスムースに安定して動作するようになりました。 同様に簡単にアクセス可能な、 偏向回路基板上のDISPLAY MODEロータリースイッチの接点も接点洗浄スプレーで洗浄。 モード切替動作も安定しました。 |
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チャネルBのバーチカルも、使えなくなるほどではないにせよ接触不良の症状はあったので、
同じように接点洗浄剤を使いたいところ。
しかしこちらはロータリースイッチには全くアクセスできません。
チャネルBバーチカル基板を取り外す必要があります。 基板を固定している小ネジ、帯域幅制限スイッチのプッシュバー、グラウンド接続ピンポスト1本、 それにV/DIVのCALポテンショメータについたCAL ON/OFFスイッチの配線を切り離してなんとかすこし基板を持ち上げ、 できた隙間からスプレーノズルを差し込んでロータリースイッチ接点めがけて洗浄剤をスプレーします。 結果、完全復帰とは言えない仕上がりで、V/DIVを切り替えるたびにノイズ波形が見えてしまいます。 でもまあ、おおむね実用にはなるレベルだし、 どこも壊さずに基板を元に戻せただけでも良かったとしよう。 |
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