Nikko STA-301
Solid State Stereo Receiver
(1971) |
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勤務先から原則出社禁止の指令が出た2020年03月27日から早くも1年以上経ちましたが、
コロナ禍は収束するどころか悪化してきているようですね。
今年のゴールデンウィークも基本は引きこもりかな。 2021年の今年は1月2月の アップルII、 3月の ソニーTC-K333ES-G 3ヘッドカセットデッキ と、懸案のまま10年近く着手できていなかった大物修理に取り掛かれて、それぞれ良い成果が出せました。 そこで4月は、故障してから25年経ってしまった 日幸電子301 ソリッドステート ステレオレシーバ の修理に着手します。 |
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おそらく1996年、シリコンバレーのスワップミートでたぶん5ドルかそこらで買ったこれは、
最初はクパチーノのガレージラボのオーディオとして
Noobow8000 Intel 80486DX-80MHz MS-DOS / Windows3.1Jコンピュータ
につないで使っていたのですが、
じきにアンプが壊れて片チャネルの音が出なくなってしまいました。
設備も資材もろくになく、なにより知識も経験も乏しく、修理の試みは失敗しました。 アンプ部は壊れてしまいましたがチューナとしては生きています。 サンノゼのよりひろい一戸建てに引っ越してからは、 PC用のパワードスピーカと組み合わせて冷蔵庫の上に置き、ヨメがキッチンラジオとして使っていました。 ブランド価値もない壊れた古い低価格機、帰国に際して捨てても良かったのですが、 船便の荷物に入れその後ずっと保管しておいたのは、 いつか直してやる、という想いを引きずっていたからでした。 あれから25年、いよいよ長年の懸案課題に挑戦します。 2021-04-22 修理開始 |
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※ (このセクションは作業終了後に改めて書き直しています: 作業時には知らなかったことも含めています) 日幸電子 STA-301は全トランジスタ式ステレオFMレシーバです。 FMステレオ & AMチューナを内蔵しており、スピーカを接続すればFMラジオのステレオ音楽が楽しめます。 通常はレコードプレーヤを接続し、またテープデッキも追加接続してステレオシステムを構築します。 バス・トレブルのトーンコントロールのほか、ラウドネススイッチを持っています。 ラウドネススイッチをONにすると、ボリュームコントロール位置が低いときに低音と高音が増強され、 小音量時もバランスの取れた音を楽しめます。 ファンクションスイッチはAM - FM STEREO - PHONO - TAPE - AUXの5つのポジションがあります。 このうちTAPEポジションは、ヘッドアンプを内蔵していないテープデッキ、 いわゆるテープトランスポートを接続したときのポジションであり、 デッキの再生ヘッドの微弱な信号をそのまま本機に接続します。 通常のヘッドアンプ内蔵型(ライン出力型)のテープデッキの場合は、TAPE MOMI. スイッチを下げてテープを再生します。 チューナのダイヤルは糸掛けの横行きダイヤルで、動作時はランプで内部照明されます。 FM受信時もしくはAM受信時はそれぞれ紫色・緑色のインジケータが点灯します。 FMステレオ信号を受信しているときは、赤色のステレオインジケータが点灯します。 メータはチューナの受信信号強度を示します。 本機はFM AFC回路は有しておらず、よってAFCスイッチは持っていません。 |
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リアパネルにはレコードプレイヤー/テープデッキ/その他機器を接続するためのRCAピンジャックが用意されています。
このうち"TAPE"はアンプを内蔵していないテープトランスポートの再生ヘッド接続用であり、
アンプを内蔵していてラインレベルの出力信号を出す通常のテープデッキを接続するときは、
"TAPE MONI."ジャックに接続します。
本機はテープデッキ接続用にDINテープデッキコネクタも持っています。 スピーカは通常のスピーカターミナルのほか、RCAジャックで接続することもできます("NIKKO SPEAKERS"ジャック)。 FMアンテナ平行型フィーダで接続します。 AMアンテナは水平面に90度回転可能なバーアンテナのほか、外部アンテナ接続ターミナルも用意されています。 背面パネル右側には、過電流時に回路を切断するサーキットブレーカーが3つ設けられています。 ひとつはAC電源を切るもの、 のこり2つはパワーアンプのDC電源ブレーカで、右チャネルと左チャネルにそれぞれ用意されています。 ところでインターネットでNIKKO STA-301の画像を検索して眺めてみると、 NIKKO STA-301の情報を掲載されているオーディオの足跡さんのページ を含めて、コントロールの配置違いのバリエーションがあることに気がつきます。 ラボの301ではファンクションスイッチは上段右側に位置していますが、 これが下段左から3つめの位置にあるものがちらほら見受けられます。 ラボの301実機を見るとファンクションスイッチ周辺はかなり複雑でスペースを占有していますので、 この位置を変えるとなると内部構造の大掛かりな変更が必要なはず。 実際、ファンクションスイッチが下段にあるモデルは、 とても同じモデル番号を持つとは信じられないほどにその内部構造とリアパネルレイアウトが異なっています。 ファンクションスイッチ下段のモデルでは電源トランスの一部がリアパネルから飛び出ているという異様さ。 筐体構造の完全再設計を同番で行うというとんでもないこのランニングチェンジ、 どちらが前期でどちらが後期モデルなのでしょうか? ファンクションスイッチ下段モデルではチューニングつまみシャフトに大きなフライホイールが取り付けられているところをみると、 チューニングつまみに重厚かつ滑らかさを求め、 かつボリュームつまみは大きく目立つ位置にあったほうが好まれるという市場調査を反映しての設計変更だったのかもしれません。 ファンクションスイッチ下段モデルは、 電源トランスの取り付け以外にもなんとなく内部レイアウト・リアパネルレイアウトの無理矢理感が感じられます。 ファンクションスイッチ上段モデルではリアパネル上部に開けられたベンチレーションスリットの近くにパワートランジスタヒートシンクが位置していますが、 ファンクションスイッチ下段モデルではパワートランジスタヒートシンクは筐体内の隅にあり、自然対流放熱の面でかなり不利になっているはずだ、とか。 確証はないものの、ファンクションスイッチ下段モデルのほうが後期型なのだろう、と推測します。 2021-08-15 このセクション追記 |
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ケースを開けて、中を観察。
誠実な造り、というのが第一印象です。
プリント基板上の4個のU字型放熱器にTO-220パッケージのパワートランジスタが取り付けられており、
そのうち1個は欠品、1個は仮付けされています。
故障した当時、きっとパワートランジスタに違いないと考え、
手持ち品に交換を試み、直らず、断念したんだったね。 写真右側に見えている長いシャフトはFUNCTIONスイッチ、つまり入力セレクタのロータリースイッチです。 右側の下にあるのは FM / AMチューナーモジュール。 電源トランスには日幸電子のマークが入っており、質のよさそうな外観です。 写真下側に4つ並んでいるのはおそらくFMの中間周波トランスでしょう。 まだ小型化がさほどには進んでおらず、どことなく真空管時代の部品の雰囲気が残っています。 |
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2個残っているトランジスタはおそらくオリジナルのものでしょう。
部品番号は消えかかっていて判別できません。
最初が "X" で始まっているようですが、どうやら2Sで始まるJEDEC品番は持っていないようです。 3本の足の中央のピンはコレクタで、 短く切られています。 コレクタはメタルタブからネジで基板に電気接続されています。 ただ、これが製造当初のものであるとも断定はできないかもしれません。 なにしろ本機を買ったのはエレクトロニクススワップミート - ハムフェアの数倍の規模が毎月開催されるという夢のようなシリコンバレー - で買ったものですから、前オーナーがいじり倒していたとしても不思議ではありません。 トランジスタのメタルラジエータタブはマイナスねじで取り付けられていますが、 日本製のこの機械はほかのすべてのねじはプラスみぞです。 ここだけマイナスねじを使う必要性はないので、 アメリカに渡ってきてから修理が入った、と見る方が正しそうな気がします。 取付穴レイアウトは、本来はTO-3パッケージを取り付けることを前提に作られています。 2N3055あたりに変えてみるのも面白いかもしれません。 |
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プリント基板は4枚あります。 写真右側の大きなものがアンプボードで、 イコライザアンプ、トーンコントロールアンプ、メインアンプが載っています。 左側は2枚が接する形で配置されており、 写真上半分がAM/FMの中間周波増幅段、下側がFMステレオ検波。 電源を入れてみると、25年前の記憶通り、アンプは動作せず。 しかしチューナは動作しているようす。 リアパネルのTAPE RECジャックをヤマハA-501のAUX INにつないで音声出力をスピーカで聴けるようにしてみると、 FM / AMともに動作していることが確認できました。 AMはとても感度よく、安定しています。 エスケイ電子 C'z Kit TW-172D で発生したFMステレオ信号を受信してみると、 FMはいちおうステレオで受信できていますが、セパレーションも音質もいまひとつだし、 FMに切り替えた直後に大きなザーッというノイズが出て数秒で通常の局間ノイズになるあたり、 どこかに異常が出ていそうです。 2021-04-23 FM/AMチューナ機能テスト開始 |
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FM/AMチューナボードをテストしていて、
チューナボードの電源電圧が当初9Vだったものが徐々に低下していく異常に気がつきました。
とりかかりに、本機の電源回路を調べました。 背面パネルにはサーキットブレーカが3つあります。 1つはトランス1次巻線に入っており、 ほかの2つはそれぞれメインアンプの右と左チャネルに給電しているようす。 上掲底面写真の中央下側にある小さいボードは定電圧電源回路になっていて、 FM/AMチューナボードはこのボードから電源を受けています。 全体としては、電源トランスからのAC電圧はアンプボード上にあるダイオードで整流され、 写真中央最下部の電解キャパシタで平滑された後、4系統に分配されています。 |
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低価格機だからと言えばそれまでですが、
電源トランスのサイズに比べるととても小さい電源整流ダイオードや、たった1つしかない平滑電解キャパシタがとても頼りなく見えます。
もちろんイコライザアンプ / トーンコントロールアンプ / パワーアンプの初段プリアンプは、
それぞれにローカルな電源デカップリングと平滑キャパシタを持っていますけれど、
プリアンプ系の電源が安定化されていないというのは、
はたしてこんなものでいいんでしょうかといった感じがします。 チューナボードの電圧不安定は、どうやらアンプボードのどこかが異常に電流を喰っているようす。 サーキットブレーカを介して給電されている右と左のパワーアンプへの電源線を取り外したら、 整流ダイオード直後の電源電圧はDC44Vで安定 (ただし当然リップルは有り) しており、 チューナボード電源回路の出力はDC12Vできれいに安定しています。 チューナボードの電源は正常に動作しているわけですが、 FMチューナはときたま突然無音になる場合があります。 はて? 局発が停止しているのかな? でもこの頻度は徐々に減り、そのうち発生しなくなってしまいました。 2021-04-24 メインアンプ部電源切り離し / FM受信停止故障は自然治癒 |
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本機のカタログを見ますと 「ステレオ-モノの自動切換式FMマルチプレックス回路を採用しており、ステレオ放送を受信すると自動的にステレオシグナルインジケーターが点灯します。」 と書かれています。 ところが本機ではステレオインジケータランプが切れていました。 これを直さぬことには1971年の喜びは味わえませんね。 ボード上の回路を追うと、 19KHzに同調したトランスでFMステレオパイロット信号を取り出し、 それをダイオード検波してDC電圧にしてトランジスタ2SC968のベースに入れています。 パイロット信号レベルが高まるとトランジスタがONし、ステレオインジケータランプが点灯する仕組みのようです。 2SC968は壊れていないようです。 手持ちの豆電球をつないで試してみると、 強力なFMステレオ信号を受信するとランプは点灯しますが、 信号のない局間周波数でもランプが点灯してしまいます。 19kHzトランスの2次側を オシロスコープ で観てみると、 外部アンテナとしてビニール線をつないでいる状態では、 局間周波数でもさまざまなデジタル機器から出ているノイズを受けてしまい、 ノイズフロアが爆上がりしてしまいます。 19kHzトランス2次側に漏れ出たノイズをダイオードが検波すると結構なレベルに達してしまい、 ステレオパイロット信号だとみなしてしまうといった具合です。 そんなわけなので、いまのところこれは正常な動作なのだと思っておきましょう。 テストしているうちにFMが突然無音になる症状はすっかり出なくなりました。 チューナはここでいったん作業終了にして、メインアンプの作業に移りましょう。 2021-04-25 FMステレオインジケータランプ断線を確認 |
夢と時空の部屋では、購入後18年経つ
アイワXR-FD55
とその付属スピーカを使っています。
このアンプをテストするとなると、そのスピーカ以外には低価格の小型スピーカしかありません。
ちゃんとしたスピーカを買いたいなあ。
思いがけずの臨時収入があったし、
お誕生日プレゼントもおねだりしなかったから、いいよね。 スペース制約からコンパクトブックシェルフになるけれど、 去年買ったDeli Spectre2はやはり小さすぎて低音は不足だったから、 今回は16cmウーハの品物にしよう。 注文した翌々日には、Wharfedale Diamond 225が届きました。 初鳴らしは Sony TC-K333ESGカセットデッキ と Yamaha A-501プリメインアンプ という、 なんとも時代錯誤な構成。 それでもさすがに、16cmウーハは豊かな低音を出してくれます。 復調なったK333ESGで、カセットテープとは思えない良い音でひとしきり大音量でジャズアレンジを楽しみました。 日幸301のテストには、このワーフェデールスピーカとヤマハA-501を使います。 2021-04-26 Wharfedale Diamond 225 新品購入 |
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チューナ部のどこかまだ不調な部分は後回しにして、アンプ部の修理に取り掛かります。 Audio Technica AT-MX33ミキサ を経由したNoobow9100Fコンピュータのアナログオーディオ出力を日幸301リアパネルのAUXジャックに入れ、 301の内部から取り出した信号をヤマハA-501に入れて、ワーフェデールでモニタ。 どのみちパワートランジスタは一部欠品していますのでまずはパワートランジスタを取り外しました。 前回修理作業の際に取り付けた引き出し配線もいったん除去。 まずはTAPE RECから取り出した信号をA-501につなぎ、音楽を聴きながら作業。 TAPE RECの出力にはボリュームコントロールもラウドネスもトーンコントロールも利かないことから ここは入力信号がただ単に入力切替えロータリースイッチを通って出ているだけだと思ったのですが、 301の電源を切ると一呼吸おいてから音が消えます。 あれえ? AUX -> TAPE REC間にはバッファアンプが入っているみたいだ。 2021-04-27 アンプ部修理開始 |
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メインアンプ基板の表裏の写真を撮って、パターンを追い、
回路図を書き起こしてみます。
スピーカ出力からファイナル出力トランジスタ、ドライバ段と遡っていって・・・あれれ?
なにか変だぞ? 本機は電源電圧DC44V単電源で、出力段とスピーカの間は電解キャパシタで結合された、SEPP - Single Ended Push Pull - 回路です。 それならばパワートランジスタは上流のプッシュ側がNPNパワートランジスタ、 下流のプル側がPNPパワートランジスタなはずですが、 基板半田面のパワートランジスタピン部に銅箔で示された "E" "B" のマークをもとに回路図を描いてみると、 プル側もNPNトランジスタのようです。 ドライバ段まで書いてみると、なるほどこれならプル側にNPNトランジスタを使っても動作する仕組みになっている。 しかし変だなあ、これじゃあコンプリメンタリ構成になっていないじゃないか。 正直にお話しすると、私はこの回路図を自分で書いてみるまで、 プッシュもプルもNPNパワートランジスタを使った回路を見たことがなかったのです。 調べてみるとこれは Quasi-Complementary - 準コンプリメンタリ回路と呼ばれる方式で、 1960年代後半から1970年代初頭にかけて標準的に使われていた回路のようです。 当時はトランジスタの製造技術が発展途上で、 性能の良いPNPのパワートランジスタを作ることができませんでした。 そのため、上流プッシュ側はNPNドライバトランジスタとNPNパワートランジスタを組み合わせたダーリントン・ペアを使い、 下流プル側はPNPドライバトランジスタとNPNパワートランジスタを組み合わせたジクライ・ペアを使ったのです。 ダーリントン・ペアは中学生の頃から知っていたつなぎ方ですが、 ジクライ・ペアというつなぎ方は初めて知りました。 この回路構成はQuasi-Complementaryと呼ばれるほか、"Pseudo-Complementary" - 「偽コンプリメンタリ」とも呼ばれるそうで。 プッシュとプルの動作が完全に対称とはなりませんから理想とは言えないわけで、 より本音に近い呼び名だとは思いますが、製品のカタログに「偽コンプリメンタリ回路採用!」とは書けませんよね。 NPNとコンプリメンタリなPNPパワートランジスタがつくれるようになった1970年代中盤には準コンプリメンタリ回路は姿を消し、 それ以降は「純」コンプリメンタリなSEPP構成になります。 だからわたしがトランジスタオーディオアンプの回路を雑誌で読むようになった頃には準コンプリメンタリ回路を目にすることはなかった・・・ ということだったようですね。 言い訳ですけれど。
(この段階では回路図はパワー段とドライバ段までしか描けていませんでした。
右の回路図は後の作業が進んで全体が判明し描き上げたものです。)
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右チャネルはパワートランジスタのコレクタを浮かせ、
いったんドライバ段までにしておきます。
いっぽう左チャネルもドライバ段が故障しているので、
ここで左チャネルのドライバ段にフォーカスを移します。 左チャネルドライバの中点電圧は電源電圧の約半分あたりにいるべきですが、3V程度でしかありません。 ドライバ下流側トランジスタQ4 2SA539を新品の2SA933ASに交換したら、 おおむね期待される電圧で動作し始めました。 ドライバ段はオリジナルでは2SC815と2SA539のコンプリメンタリペアが使われていますが、 手持ち部品の都合で、この先は2SC1740Sと2SA933ASのコンプリメンタリペアを使うことにします。 2021-05-04 左チャネルドライバ 2SA539デバイス故障を確認 2SA933ASに交換 左チャネルドライバ段動作開始 |
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起動時の右チャネルからの一瞬のハムと、右チャネルがゲインが低い問題、
さらに右チャネルの高域の伸びが不足している感じは続いていますが、
とりあえずは昼間1週間安定して動作しています。
ので、テストのフォーカスをFMチューナに戻します。 FM受信が突然無音になり、しばらくして突然直る問題は、すっかり出なくなってしまいました。 無音になるのは局発の発振停止だろうかとも思い別の小さいラジオで局発の漏れを聞いてみようとしたのですが、 チューナモジュールはシールドケースに入っているためか、うまくいきませんでした。 現時点では、自然治癒として調査は止めます。 FMチューナのテストは エスケイ電子 C'z Kit TW-172D で行います。 まずは切れてしまったステレオインジケータランプの代替。 FMチューナボードはDC12V安定化電源回路から給電されていますが、 ステレオインジケータランプの電源は電源トランスを整流平滑したリップルありDC44Vから、 470Ωを介してとられています。 代わりの電球をと思いましたが、 手持ちの麦球はオリジナル品よりも電流を喰うらしく、 いろいろ試しているうちにランプ駆動用トランジスタを飛ばしてしまいました。 コレクタ-エミッタ間が常時導通になってしまっています。 とりいそぎ2SC1740Sに交換しましたが、 はて、ここはどうしよう。 ランプを駆動するために、コレクタ電流がもっととれるセミパワートランジスタにしないといけません。 LEDにしてもいいのですが、 1970年代初頭の機械ですから電球の明かりで行きたいですね。 それに、電球を単にLEDに交換するだけだと、 パイロット信号が受信できていないときもLEDはうっすら光って見えます。 電球の場合は電流が少ないときは光らないから気にならなかった、 のでしょうかね。 それともランプ駆動トランジスタ以前の部分もいじり壊しちゃったのな。 2021-05-15 ステレオインジケータ駆動用トランジスタ 不注意で焼損 12V球を2本直列にして点灯するにしても、 電流が流れすぎる球だと、 ドライブトランジスタもそうですが、 DC44Vから電圧を落とすための抵抗の発熱も大きくなってしまいます。 調べは進める必要がありますが、LEDだと消灯させるのにひと工夫が必要かなあ。 本機のフロントパネルのダイヤル盤は、電源トランスのランプ点灯用巻線からのAC電力で点灯しています。 FMあるいはAM時は、それぞれFMランプ・AMランプが点灯します。 これらのランプも電源トランスのランプ巻線からの駆動。 ああ、そうか、ステレオインジケータランプもトランスのランプ巻線で点灯させればいいんだ。 でもランプ点灯用巻線とアンプ電源巻線をアイソレートされたままで点灯制御させるには・・・ ひと工夫要るなあ。 リレーを使う方法もあるけど、点灯-消灯がはっきりしちゃうし、 ヒステリシス持たせないと点灯-消灯の境目で暴れちゃうだろうしなあ。 そもそも局間ノイズ部でも19kHzトランス2次側には結構なレベルのノイズが出ていてステレオインジケータが点灯してしまうという問題は依然残っています。 まずはこっちの対策が先だなあ。 そうか、これはひょっとしたらどこかが故障していてこういうことになっているのかもしれないぞ。 やはりステレオインジケータランプの駆動方法は後回しにして、 FMチューナがそもそも正常なのか、ちゃんと調べるべきです。 |
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テストを兼ねてFMステレオでBGMをずっとかけ続けていて、奇妙なことに気がつきました。
いい音で楽しめる曲もあるのですが、妙に音が悪く感じられる曲もあります。
明らかに音が悪い曲の場合でも、
19kHzトランスのコア位置をずらすとかなり低減されます。
しかしそれではステレオセパレーションがかなり悪化してしまいます。
音質とセパレーションの妥協点をみつけて調整するしかないのだろうか。
1971年のFMチューナというのはこの程度のものだったのだろうか。 しばらくして気づきました。そういうことなのかもしれない。 音が悪く感じられるのは、高域が伸びているレコーディングの曲だ。 テストに使っているトランスミッタは、エスケイ電子TW-172D FMステレオトランスミッタです。 2500円の低価格キットですから音が悪くてもまあ不思議ではないのですけれどね。 このFMトランスミッタ、オーディオ入力の直後にちゃんとプリエンファシス回路を持っているのですが、 ハイカットフィルタは持っていません。 それが原因なのかも。 そこで中央研究所1階のメインワークベンチで使っている 目黒MSG-2161標準信号発生器 を、2階の夢と時空の部屋に移動しました。 きちんしたシグナルジェネレータでテストしてみるべきです。 するといきなり、奇妙なことに気がつきました。 FMステレオ受信音の、右と左が入れ替わっている! これは19kHzトランスの再調整で直りました。 TW-172Dのときは右と左が入れ替わるだなんてことはなかったのに、 いったいどういうわけなんでしょうね。 そもそも19kHzトランスの調整でステレオの左右が入れ替わってしまう理由もわかりません。 けれど、これは要するに38kHzサブキャリアの位相が180度反転してしまうということですよね。 そう考えると、なんとなくではありますが、トランスの調整でそうなることが理解できそうな気がしてきました。 さて特定の楽曲での異常音ですが、顕著な例が見つかったのでTW-172Dと目黒MSG-2161で比較してみました。 ムービーではTW-172Dが88.8MHzで、102.5MHzで目黒が送信しています。 TW-172Dでは聞くに堪えない異常音が出ていますが、 目黒では大丈夫。 もっともこのテストでは目黒はプリエンファシスを掛けていないので、いっそう差は明らかになっているはずです。 CDの上限16kHz目いっぱいまで高域を含む楽曲をTW-172Dに入れて日幸301で受信すると、 日幸301は高域音声信号を19kHzパイロット信号と誤認して、サブキャリア周波数が乱れ、 異常復調してしまうのです。 これを防ぐためには、 TW-172Dに12kHzあたりにカットオフ周波数を持つハイカットフィルタを追加する必要がありますね。 2021-05-20 特定の楽曲での異常音はTW-172Dトランスミッタに起因するものと判明 翌日は一日MSG-2161でFM信号を出し、FMでBGMを聴きます。 朝 日幸301の電源を入れてから30分ほどの間は、結構頻繁にチューニングつまみを触る必要がありました。 受信周波数102.5MHzでは、温度による局発ドリフトが結構あるようです。 本機のFMチューナにはAFCスイッチはありませんし、 センターディビエーションメータも装備されていません。 神経質にチューニングしたいユーザは不満を感じるでしょうね。 |
テスト曲は C-CLAYSさんのアルバム「幻想天舞」 からトラック3、 美有耳虚無頭さんの"Keep On Loving You"、原曲は「リーインカーネイション」、ご存じ魅魔様テーマ。 |
19kHzトランス2次側に出ている信号をダイオードでDCにしただけだと、パイロット信号と近いレベルで局間ノイズを拾ってしまいます。
そこで、19kHzトランス2次側の信号を19kHzバンドパスフィルタを通してみます。
バンドパスフィルタは
TW-172Dで作ったものと一緒。
20mHと3300pFの並列です。
バンドパスフィルタは帯域外をバッサリというものではないので、
ゲルマニウムダイオードで整流した電圧は曲間ノイズ時も結構ありますが、
良好に受信できているパイロット信号とはどうにか区別がつきそうです。 つぎにこのDC電圧をuPC277コンパレータで基準電圧と電圧比較。 uPC277はオープンコレクタ出力なので、これでマイクロメカニカルリレーを駆動します。 ランプ点灯電源は電源トランスのランプ点灯用6.3V巻線から取りました。 リレーですから、チューナボードDC12V電源とアイソレートされます。 ブレッドボードで作ってみた回路を試すと、 パイロット信号を受信したときにリレーがカチリと動作します。 リレー駆動音ははっきり聞こえますが、 実用上は頻繁に選局はしないし、ケースカバーを閉めれば音も小さくなるでしょうから、 まあ大丈夫でしょう。 ランプは手持ちの6.3V 150mA品を使います。 2個パラで使うとON/OFFでほかのランプの明るさがはっきり変わってしまうので、1個だけにします。 うまい取り付け方法を考えないとね。 コンパレータの入力電圧が緩変化となるよう電解キャパシタを入れていますが、 実際にチューニング動作を試すと、やはりON-OFF境界でリレーは暴れます。 コンパレータにヒステリシスを持たせなければなりません。 回路計算は明日以降に。 まずはステレオインジケータランプを点灯させることを試みているわけですが、 コンパレータ出力で同時にオリジナルのランプドライバトランジスタを駆動すれば、 FM MPXデコーダのステレオ受信-モノラル受信を切り替えられます。 このためにはON-OFFのロジック反転が必要ですが、 uPC277はパッケージにコンパレータ2個入りですから、もうひとつのコンパレータを使えばいいですね。 2021-06-05 ステレオインジケータ回路試作 |
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半分敗北感を覚えながら試作ステレオインジケータランプドライバ回路のブレッドボードを取り外し、
ステレオデモジュレータボード上の配線を復旧します。
オリジナルのステレオインジケータランプドライバトランジスタのベース抵抗は・・・
あれ、1kΩはボードから完全に除去されてる。
そう、外付けボードからこのトランジスタのベースに電流を流し込もうとしていたんだから。
外した抵抗はどこに置いたっけ。
まあ、新品を取り付けておけばいいね。 オリジナルと同等の豆電球はやはりラボ在庫にはなくて、 たくさんある豆電球では電流が流れ過ぎて680Ωの電圧降下抵抗が焼けるし、 ランプドライバトランジスタもワンランクパワーのあるものに変えないといけません。 それも面倒になったので、もういいや、豆電球の代わりに赤色LEDを光らせることにしよう。 本機のステレオインジケータの豆ランプは光るためだけではなくて、 光っていないとき - モノラル受信時は38kHzアンプトランジスタとバランストデモジュレータのダイオードのうち2本に逆バイアスをかけて動作を停止させる役割をも持っているので、 LED+1kΩを3並列、さらに300Ωを並列につなぐことにします。 試すと、受信信号が弱いときはスピーカから出るホワイトノイズはセンターに定位してモノラルになっています。 オッケー。 今まで通りにシグナルジェネレータの信号を入れてFMステレオで音楽をかけると・・・ あれ? あれれ? なんか、音がいいぞ。 |
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ゴキゲンになったFMステレオデモジュレータですが、
リーインカーネイションでの復調異常はなくなってはいないので、
その理由をもう少し調べてみます。 オーディオエディタを使い、 演奏時間4分09秒の「リーインカーネイション」から復調異常が起きている部分を切り出してみます。 変な音を立てながら作業し、もっとも顕著に症状が出る部分を1ms - 1000分の1秒ほどの一瞬 - 切り出すことができました。 この音を連続再生し、FMステレオチューナで聴き、 その時のバランストデモジュレータ入力波形をオシロスコープで見てみると、 ご覧のように、サブキャリア振幅が0にまで落ちています。 「リーインカーネイション」が激しく歪むのは、 楽曲の一部に左右の信号が大振幅で逆位相になっている部分を含むからです。 同じような音の傾向を持つ楽曲を手持ちライブラリの中から探してみたら、 トッド・ラングレンのアルバム"No World Order"から「Property 1.0」 がまさにそれでした。 激しくひずみまくってしまいます。 シンプルにマイク2本でステレオ録音した音、 あるいは複数のマイクの信号をミキサでミックスしただけの「スタジオ録音の生演奏」であれば、 ここまで激しい大振幅逆位相音は発生しません。 シンセサイザ音楽が登場したのは1970年代半ば。 この日幸301が発売された1971年、すべての音を人工的に発生させたシンセサイザ音楽というのは存在しなかったのです。 だから、1971年発売の製品では大振幅逆相信号による復調困難は問題とはならなかったのでしょう。 1971年は、冨田勲がMoogIIIを手に入れた年。 そして1974年に発表されたのが、 アルバム「月の光」。 その中の代表曲である Clair de lune - 月の光 (「ベルガマスク組曲」第3曲) / クロード・ドビュッシー作曲 / 演奏:冨田勲 は、左右のスピーカの幅をはるかに超えて音場が拡がる、とても美しい曲。 それは、ステレオ信号に逆位相成分がたっぷり含まれていることを意味します。 この曲は301ではどう聞こえるだろう? 自分のライブラリのなかからこのアルバムのCDをMP3にリップしたファイルを見つけて再生してみて、思い出しました。 もともとこの曲は、このレコードの中での録音レベルがとっても小さいんだ。 高校生のときに友人が買ったこのアルバムをカセットテープに録音させてもらったとき、 この曲がとくに録音レベルが低く、テープヒスが目立つことになっていました。 この曲のレコード上での録音レベルがとても低いのは、 そうか、当時のオーディオ機器では大振幅逆位相の再生がうまくできないものが多かったからかもしれない。 301に限らず当時のほかの多くのFMステレオチューナでは大振幅逆位相をうまく扱えなかったのかもしれないし、 針が大きく上下することになる逆位相ではレコード再生もいろいろ難しいことがあったのでしょう。 だからやむを得ず、カッティングの段階でレベルを大きく下げていたのではないでしょうか。 日幸301が発売された翌年、モトローラは第2世代のFMステレオデモジュレータIC、MC1310を発売します。 このICを使えばパイロット信号に正確にPLL同期したサブキャリア信号を受信機側で簡単に生成することができ、 正確なステレオ復調ができます。 「大振幅逆相信号をうまく扱えない」問題は、1973〜1974年にはMC1310によってあっけなく解決された、 のでしょう。 2021-06-25 復調異常時のサブキャリア波形観測 さて、そんな発展途上のFMステレオチューナである日幸301。 サブキャリア振幅を高めればこの傾向を抑えられるかなあ? 現状でサブキャリア振幅は2.5Vp-pあります。 ここで38kHzアンプトランジスタのエミッタ抵抗に並列にバイパスキャパシタを入れてみます。 2SC373のエミッタ抵抗は2.2kΩですが、 ここ1kΩと0.002μFを並列に追加すると、 サブキャリア振幅は5Vp-pまで高まりました。 しかし・・・L-R成分もまた同じ比率で大きくなってしまい、 大振幅逆位相の復調異常の傾向には変化がありませんでした。 しゅん。 この回路方式ではこんなもん、なのでしょうかね。 2021-06-26 サブキャリア振幅増強 効果なし 後日追記。 この時代のFMステレオデマルチプレクサはこんなもん、 ということはやはりなさそうです。 1962年モデルのアメリカSherwood社初の真空管式FMステレオチューナー ではリーインカーネイションを見事に美しく再生しましたから。 いくら本機が日本製の格安モデルといっても、 こんなひどい現象では市場には出せなかったはずです。 やはり回路のどこかに、当初設計から外れた劣化箇所があるはずです。 ステレオデマルチプレクサの4本のゲルマニウムダイオードのどれかが素子劣化しかけて、 特性バランスが崩れている…というのはありそうな話ですね。 2022-02-02 ノート追記 |
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感染拡大開始から1年半経過、
2021年の夏はデルタ株が急速に広がり、
いままでにない事態。
誰とも会わず山の中でおにぎり食べるだけなら全く心配はないとは分かっていても、
今年の夏休みはどこに出かける気もしません。
うつうつした長期休暇、
今日はブレッドボードで仮接続していたステレオインジケータの正式組み込みを行います。 ラボにはちいさなインジケータ用赤色LEDが何千本も在庫がありますが、 豆電球ほどの光量はありません。 そこで チャールズ・バベッジ号 に使っていた100円LEDテールランプ ― 正確に言うと2個買ったうちのストック在庫 ― を分解し、使われていた高輝度赤色LEDを、 取り付けられていたプリント基板とともに取り出して使うことにしました。 ハックソーで基板をLED3個分だけ切り出し、 これまたジャンクユニバーサル基板から切り出した基板に組み上げ、 インジケータランプAssyを作りました。 |
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それなりに考えて寸法出したつもりだったのに、
取付穴位置は実機とうまく合わず、
LED取り付け高さはフロントパネルの赤色レンズの位置よりも高くなってしまいした。
70点、ってところかな。
相変わらず、こういうのはヘタクソです。 それでもとにかく、ステレオ信号を受信するとぽわっと赤ランプが光る機能は復活しました。 2021-08-14 ステレオインジケータLED版 実装 |
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