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Lafayette TE-50

Tube Tester

(1964)





真空管テスタ

    真空管の欠点の一つは寿命が限られていること。 ヒータ断線による故障は半ば当然です。 しかしほとんどの真空管はもはや製造されていませんから、じゃあスペア球を手に入れておこう、となるのも自然。 ジャンク球を買ってきてはアナログテスタでチェックし、電池をつないでみてヒータが灯れば一安心。

    しかし真空管のことを勉強していくにつれ、たとえヒータが灯っても、 古くなった球ではいわゆるエミッション不良というものがあることを知りました。 カソードの材料が劣化し、電子の放出量が低下するというものです。 使用される回路によっては、少しのエミッション不良が大きく性能に影響することもあります。 また、本来絶縁されているはずの電極間にショートが起きたりすることもあるそうです。 そうなると、アナログテスタによる単純なヒータチェックだけでは球の状態は判断できません。 やはり真空管テスタが欲しくなります。





Lafayette TE-50

    Lafayette TE-50 は、サービスマン用のコンパクトな簡易型真空管テスタです。 ヒータチェック、ショートチェック、そしてエミッションチェックができます。 本格的な研究用テスタのようにさまざまな特性が測定できわけではありませんが、 それでも複数のジャンク球の相互比較ができるのは便利。

    本体下側は取っ手つきの引き出しになっていて、中に取扱説明書と、真空管の種類ごとのセッティング表が入っています。 最初そのことに気がつかず、「マニュアル付きということだから買ったのに・・・」 と売り主にクレームをつけてしまうところでした。 メールを書き終えてからそのことに気がつき、書いたメールを削除しました。

    マニュアルには、たぶん最初のオーナーさんの書き込みなんでしょうね、 1964年07月03日 19ドル95セント とボールペンで書かれています。 買った日と値段なのでしょう。




    使用方法はちょっと面倒です。 パネル下部に並んだスライドスイッチでそれぞれのピンをどこ (グラウンド、ヒータ、プレート、またはノーコネクション)につなぐのかをセットします。 ヒータ電圧をロータリースイッチで設定し、セッティング表にあるとおりにメータ感度つまみをセットします。 モードスイッチをQUALポジションにし、テストする球をソケットに差し込み、 真空管が暖まるのを待ってメータの指示がGOODの範囲内に入ればOK。

    しかしメータの読みがNG範囲だからといって、その真空管が使えない、というものでもありません。 回路によってはエミッションがかなり低下しても問題ない場合があるからです。 結局のところ実機でOKであればOK、というのが本当のところのようです。




    ご覧のように、回路はいたってシンプル。 安定化電源回路はありませんので、メータの指示は電源電圧によって影響を受けます。 複数の球の比較には問題ありませんが、 エミッション量の絶対値を測定するには事前に電源電圧をチェックしておく必要があります。

    電源トランスは各種のヒータ電圧を得るためのオートトランスです。 電源電圧が115Vから125Vのときは電源スイッチをHIポジションに、 105Vないし115VのときはLOWポジションにセットします。 HIポジションのときは電源電圧がそのまま、 LOWポジションにセットした場合はオートトランスによって昇圧された電圧がプレート電源として利用されます。

    フロントパネルに並んだスライドスイッチはその番号が真空管のピン番号に対応しています。

  • スイッチをKにすればそのピンが共通グラウンドに
  • スイッチをPにすればそのピンが抵抗を介してAC105Vラインに
  • スイッチをNにすればそのピンは何にも接続されず
  • スイッチをFにすればそのピンがAC点火のヒータ電源に

  • つながる仕組み。

        本機には保護回路のようなものは一切ないので、 設定や使用方法を間違えるとテスタ本体やテストしている真空管を壊してしまう可能性があります。 そういえばこの機械にはヒューズもありませんね。





    新品同様

        さてこのテスタ、ほとんど未使用との触れ込みで買ったのですが、実際に見てみるとかなり使い込まれていたようです。 たしかにパネルもメータも歳月を感じさせない美しさですが、スライドスイッチのまわりの指が擦れるところはペイントが消えかかっています。 し、9ピンのMT管ソケットがほとんどへたりかかっています。 ので、非常に大切に、かつ丁寧に取り扱われてきた機械だといえるでしょう。

        全てのコンポーネントは、上面パネルにきれいに取り付けられています。 埃やサビ等は全く見られず、内部は新品同様です。 真空管ソケットのピンの結線は色分けされたビニール線で行われており、これも大変きれい。

        今後必要な修理といったら、へたったソケットを交換する程度。 キャパシタは折をみて交換しておくのが良いと思われます。

        なおこのテスタは1960年代のLafayetteブランドなので当然ながら日本製です。 さて、どこのOEMなのかな? するとこのページをご覧になったブリュッセルのJaakさんから書き込みがあり、 共立電子計器株式会社のK119型と同じだとのこと。さらに調べてみると、 いろいろなバリエーションがあるようです。





    本末転倒

        最初はあくまでもスペア球のチェックが目的だったのですが、 実際テスタが手に入るとこんどはテスタにかけるためのジャンク球を買い始めることになってしまいます。 こうなると本末転倒、本来の目的を見失った時点でめでたくファンからマニアに昇格です。 うん千本の真空管を持っている人の気持ちがだんだんわかるようになってきました。 あぶないあぶない・・・





    出番ですよ

        2022年11月、 コリンズ51S-1の短周期周波数変動問題 がPTO発振管6136を交換すると直ることに気づき、 この管をチェックすべくTE-50を引っ張り出しました。 最後に使ったのはいつだったろうね、 すくなくとも2008年の中央研究所開設以降は使っていなかったはず。

        スイッチやポテンショメータの動きを確認して、ソケットの接触不良にさえ気をつければ使えることを確認してテスト開始。 6136はシャープカットオフ5極管で、6AU6と電気的に等価です。 チャートを参照して、TE-50を6AU6用にセットアップします。

  • 測定モードを"QUAL"に。
  • FIL. VOLTSを"D"に。
  • Pin #1を"P"に。
  • Pin #3を"F"に。
  • 他のすべてのPinは"K"に。
  • LOADを30に。
  • 被試験球をMT 7ピンソケットに取り付け。
  • POWERスイッチを"LOW"に。

  • 真空管のヒータが灯り、 メータの針が動き出して80を示しました。 グリーンの"GOOD"の範囲内です。 これを箱入り新品のRCA製6AU6AとJAN 6AU6についても実施。 メータはそれぞれ85を示しました。




        ついでリークチェックを行います。 本来ならリークチェックを行ってからエミッションチェックを行うのが正しいのですが。

  • 測定モードを"LEAK"に。
  • すべてのPinを"K"に。
  • 被試験球をMT 7ピンソケットに取り付け。
  • POWERスイッチを"LOW"に。
  • Pin #1から#7まで、一つずつ"P"にして、LEAK INDの赤ランプが点灯するかどうかを観ます。
  •     "P"にセットするのはいつもどれか1つだけ。 同時に複数のスイッチを"P"に絶対にしないこと。

        6AU6/6AU6Aは3ピンと4ピンがヒータですから、 Pin #3とPin #4を"P"にしたときにLEAK INDが赤く光りますが、 他のピンについては光りません。 この球に電極間リークは起きていないことがわかりました。



        51S-1で問題を起こす6136は、新品の6AU6 / 6AU6Aに比べてエミッションが6%ほど減っていること、 電極間リークはないことが確認できました。

        ちょっとまてよ、ヒータ - カソード間にわずかな絶縁低下があるのかもしれない。 それもヒータが点灯しているときにしか起こらないような。 リークチェック時にPin #3を"F"にしてヒータを灯らせてみても、 ヒータ以外の電極にリークはないようです。 念のためにTE-50ではなく球のヒータを直接 電源装置 で点灯させ、デジボルでヒータ - カソード間の抵抗を10MΩレンジで測定しましたが、 リークしている様子はまったくありません。

        51S-1のPTOは6%程度のエミ減で動作不調が出る回路とは思えず、 しかしこの球では発振周波数の小刻みな変動が起きる。 なにかこの球に固有の特性の違いがあるはずなんだけれども、 それはいったい何なんだろう。 グリッドエミッションを測定する機能も電極間容量を測定する機能もないこの簡易型真空管テスタでは、 残念ながらこれ以上の調査はできなさそうです。

    222-11-07 コリンズ51S-1 PTO用 6136をテスト





    MT7ソケットを交換する

        6136は7ピンのMT管ですが、TE-50のMT 7ピンソケットはヘタっていてテストに支障があったので、 ソケットを交換することにしました。 MT 9ピンもヘタっているんですけれどね、 面倒で今回はMT 7ピンソケットだけ着手。

        ついでにキャパシタも交換しようかと思いましたが、 リークはないようだったのでそのままとしました。 ポテンショメータやスライドスイッチ、ロータリースイッチに接触不良はなく、 手入れの必要はありませんでした。 さあ、つぎの出番はいつでしょうかね。

    2022-11-10 MT 7ピン ソケット交換




    > 次の修理・・・ どれにしよう


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