Lafayette HA-225
Shortwave Communications Receiver
(1964)
Serial # 31600323
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ラスベガス コンベンション センターで開かれたコンシューマー・エレクトロニクス・ショウで、
そんな名札をつけてうろうろしていたのは要するにウチのヨメさんなわけです。
そろそろラボのコンピュータも新しいものにしたいなあと考えて設備投資審議会を開いても、
投資効果不透明という理由で差し戻しとなります。
ラボの活動経費は高額でない場合はたいていの場合承認を得られますが、
予算というよりも設置場所が最大のネックになります。
似たようなものを買うと、売却命令を受けかねません。 ので、Lafayette HA-63A / HA-230 / HE-80 ときてストーリー立ての理由からHA-225を手に入れたいと考えたものの、「また似たようなものを!」 となりそうです。 幸いなことに、HA-225が届いた時ヨメは都内に連泊で出かけていました。 そこで、調整を終えて快調に動作している ICF-5900W をベンチから下ろし、代わりにHA-225のシャーシを乗せました。 ぱっと見には以前に作業していたHE-80と何も変わりません。 これならまた一台増えたとは(すくなくともすぐには)気がつかれないでしょう。 「あれ? いつのまにヒータートランス追加したの? 」 とか訊かれたらブッ飛んじゃいますが。 2002-03-30 HA-225 入手 |
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外観上は筐体左下隅の変形がいちばん目立ちます。
結構激しく落下させられたと見えて、外側ケースはこの部分だけではなくて全体的に歪んでしまっています。
アルミ製のフロントパネルもひしゃげていますが、シャーシも変形してしまっています。
簡単に直せるかもしれないと思ったのですが、外側ケースは案外に頑丈で、
金属ハンマーで叩いたくらいではびくともしませんでした。
ま、この不具合のおかげで安く買えたのですから良しとしましょう。 数年前まではLafayette機はどれも安価だったのですが、最近は案外いい値段がつくようになってきました。 もちろんコリンズなどに比べれば1/4にも満たないのですが、 当時の販売価格との比を考えると、コリンズよりもリセールバリューがあるのではないかともいえます。 |
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ラジオは使われなくなってかなりの間ガレージか屋根裏の片隅に放置されていたようで、シャーシ上面には長年の埃が堆積しています。
シャーシ内部はかすかな埃と生命活動の残骸 - 蛾か何かが作った小さな繭のようなもの- だけで、
水濡れやサビあるいは腐食はありません。
ユーザによる改造の痕は見られませんが、あれ、1本だけ片側が配線されていない抵抗器があります。これはなんだろう。 コイルパック アセンブリはきれいな状態を保っていますが、ひとつのコイルのコアが乱暴な調整作業のためか壊れかかっているようです。 ダイヤルグラスのデカールは良好な状態を保ってはいますが、汚れもあるので、デカールを剥がさないように清掃するのはやはりチャレンジです。 ダイヤルスケールにはアマチュアバンドの表示がありますが、国際放送バンドは明示されていません。 おそらく前オーナーはアマチュアバンド受信よりも国際放送を聴くためにこのラジオを使用していたのでしょう、 黒マジックで国際放送バンドを示す書き込みがされています。 入手時、クリスタル コンバータの局発・混合用の6BL8が欠品していました。 これはなくてもとりあえず短波受信機としては使用できるので、大きな問題ではありません。 点検と簡単な清掃ののちスピーカをつなぎ電源を入れてみると、予想通り。 真空管は全球点灯したものの、大きなハムだけで、他は全く応答せず。 よしよし。真空管はまだ清掃していないので、電源を入れて球が熱くなると古いラジオのにおいが漂います。 さあ修理開始。 |
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ハムの原因はあえて調べるまでもなし。 B電圧平滑用ブロック電解キャパシタはシャーシ内部に設けられています。
容量は40μFが2ブロック。 これを取り外し、ラグ板を追加して新品のELNA製47μF 350V品を取り付けます。
ハムはすっきり解消。 2002-03-31 電源平滑ブロック電解キャパシタ交換 |
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ハムが消えると、かすかに受信動作をしていることも判明しました。
強力な中国局が聞こえます。 感度は非常に悪く、またダイヤル位置によってはほぼ無感のところもあり。
また、受信音はかなり発振ぎみです。
BFOは一応動作している様子。
メータのゼロ調整を行ってみるとSメータは自然に動き、AGCは動作していることがわかりました。 コイルパックの各コアやトリマのゆるみ止めペイントは割られていますので、ユーザによる調整が入っているようです。 例によって、調整は無茶苦茶にされていると仮定して作業していきましょう。 |
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ボリューム コントロールのホット側にオーディオ信号を注入すると、あれ、案外にいい音です。
小音量では目立った歪もないし、高音もさわやか。
でもHE-80の例もあるし、一応点検しましょう。 出力管6AQ5AはRCA製で、オリジナルは松下製のはずですから交換されています。 第1グリッドはきれいなオーディオ波形ですが、オシロをDCモードにしてみたらDC2Vほどかかっています。 前段プレートとのカップリング キャパシタを切り離すと、電圧は出ていません。 6AQ5Aのグリッド エミッションではなく、キャパシタのリークです。 使用されていたのはNichicon 600WV 0.01μF。 松下の新品フィルムキャパシタに交換するとDC電圧のリークはなくなりましたが、音質・音量ともに特に変化はありません。 カソード電圧は6Vほどありますから、グリッドの電位がプラスになるほどのひどいリークではなかったわけです。 オシロあるいは電圧計をあててみないと気づかない潜在的な故障でしたが、 HE-80の場合と程度の差こそあれ同じ現象ですから、このブランドのキャパシタも無条件交換リストに掲載することにしましょう。 CD音楽を入力すると、やはりバスドラムの低音がオーバーロード気味となり、その瞬間に高音部が濁ってしまいます。 HE-80で行ったのと同様にNFBをかければ音質は改善されるでしょうが、実際の短波受信時にはそのような信号は取り扱いませんから今回はこのままとします。 外部信号注入によるオーディオ段の連続稼動テストを行っているとき、カソード波形が不安定になっていることに気づきました。 調べてみると問題はHA-225ではなく、 ヒューレット・パッカード1200Aオシロスコープ のチャネルAの入力回路の故障であることが判明しました。 あれれ、また修理待ちアイテムができちゃった。 |
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カソード抵抗は330Ωが使用されていますが、実測してみると360Ωあります。
まあ+10%ですからこのままとします。 カソード電圧が6V出ているのでカソード電流は16mAとなります。
ちょっと少ないなあ。 ボリューム コントロールの両端はそのままリアパネルのRECORDINGジャックに接続されていますから、 RCAプラグを使ってここに信号を入れればシャーシを横倒しにしなくてもすっきりテストできます。 で、よくよく見るとどうやらこれは前オーナーによる改造のようです。 HE-80の回路図では本来はRECORDINGジャックには低周波出力管6AQ5Aの入力、 第1グリッドから100kΩを介して取り出されるようになっています。 この100kΩは本機では片足が宙ぶらりんになっています。 し、RECORDINGジャックとAF GAINポテンショメータを接続しているのはアメリカ式の透明なシースをもつツイストペア線だし、 その半田付けもプロの仕上げではありません。 私としてはこの改造された方法のほうが便利なので、このままにしておきます。 |
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検波回路からの音声信号を増幅する低周波増幅初段は、双3極管6AQ8の片側が受け持ちます。
6AQ8のもう一つのセクションはBFOとなっており、サブシャーシ上に実装されています。
回路構成はHE-80と同等ですが、サブシャーシに実装することによりBFO信号の漏れを抑えています。
メイン シャーシからサブシャーシにいく配線は以下のようになっています。
HE-80では6AQ8のカソード バイパスにリークがありましたが、HA-225ではカソードパイパスはサブシャーシの中に入っているようです。 取り外しはちょっと面倒な様子。 現状では実用上問題なく動作しているので、そのままにします。 |
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プロダクト検波はペンタグリッド コンバータ6BE6を使用しています。
BFO信号は7ピン、つまり第3グリッドに直接注入されています。
発振振幅はおよそ80Vp-p、平均値は-40V。つまり、0Vから-80Vまでをスイングします。
これはHE-80と全く同様で、 BFOは正常に動作しているといえるでしょう。 HE-80のページにも書きましたが、 ペンタグリッド管の第3グリッドにBFO信号を注入するこの方法は手持ちのどんな本にも出てきていません。はて。 ひょっとして特許回避か何かでしょうか。 HA-225ではBFO管をサブシャーシに実装してBFO信号の回り込みを減少させようとしていますが、 サブシャーシからプロダクト検波管までの配線は通常のビニール線を使用しています。 配線全長は5cmほどであり短いとはいえ、信号振幅が80Vp-pもありますからここからの輻射も結構ありそう。 |
6BE6 |
AM検波は双2極管 6AL5 で行われます。
この6AL5のヒータは電源ハムに敏感であり、ハムを低減するためにHE-80/HA-225では抵抗を介して点火されています。
このため6AL5のヒータは他の管に比べて暗く、うっかりすると断線していると早合点してしまいそうです。
実際に印加されているヒータ電圧を測定してみると3.8VACしかありません。 シグナル ジェネレータからの信号を2段めの中間周波増幅段に注入してテストしてみると、 AM検波の音質はなかなか良好であることがわかりました。 HE-80ではAM音質がかなりひどい状態でしたが、HA-225の検波回路の構成はHE-80と同じはずですから、 どちらかの機械に何か残っているのかも。 |
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勢いでこのまま中間周波トランスの再調整を開始します。 シグナル ジェネレータからの455kHz 400Hz 40%の信号を各段に注入し、 AGC電圧をデジボルとオシロスコープで観測しながらトランスのコアを回します。 3つある中間周波トランスはいずれもおおむね455kHzでピークが取れていましたが、 2箇所あるピークのうち弱い方に合わされていたものもありました。 調整を完了してみると、HA-225の感度は大幅にアップしていることがわかりました。 作業開始時点では中国局が何局かかすかに、かつ発振ぎみで聞こえていただけでした。 今では9MHz帯/ 11MHz帯 / 15MHz帯 のいずれも、さまざまな放送局でぎっしりと埋め尽くされています。 9MHz帯のBBCも、プリアンプ利用ではAGC電圧が-8Vに達するほどです。 メイン ダイヤルの位置による感度ばらつきは結構あるのでコイル パックの再調整は必要ですが、 それにしても中間周波トランスの再調整だけで見違えるような性能になりました。 |
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HA-225のAGC電圧は、AM検波管6AL5で生成されます。
AGC電圧は高周波増幅管と二つの中間周波増幅管のコントロールグリッドに与えられます。
フロントパネルのAVC-MVCスイッチをMVCポジションにするとAGCラインが強制的にグラウンドに落とされ、
全段フルゲインで動作します。 フロントパネルのRF GAINコントロールは、高周波増幅管と前段の中間周波増幅管のカソード回路に入っています。 RF GAINつまみを反時計方向に回すとこれら2球のカソード抵抗が高まり、 カソード電圧が上がります。これによりコントロール グリッドのバイアスが深くなります。 これらの球はリモート カットオフ管なので、結果として真空管の増幅度が下がります。 RFゲイン コントロールを時計方向いっぱいにするとカソード抵抗は固定抵抗の300Ωだけになり、 真空管はフルゲインとなります。 中間周波トランスの調整を開始する時点で、本機のAGCは正常に動作していることがわかっていました。 AGCラインに音声成分はほとんど乗っておらず、応答速度も適切なものです。 Sメータも動作しており、リアパネルのゼロ調整はスムースに働きます。 しかし、メータゲインは相当高いものです。 ゼロ調整をきちんとしておいても、AGC電圧が約-2Vでメータは振り切れてしまいます。 およそラボのバックグラウンドノイズだけで常時S9、放送局を受信すれば振り切れたまま針が動きません。 Sメータは第2段中間周波増幅管のカソード電圧変化を、スクリーン グリッド電圧の分圧を基準にしてメータ表示します。 この管の各部の電圧も測定してみましたが、特に異常は見られません。 こういった特性なのだろうと思われます。 1548kHzで連続送信している ラジオぬ〜ぼ〜 を受信すると、信号が強力すぎてAGCの効きが追いつかず、復調音が無音になります。 この場合はRF GAINを下げれば正常に受信できます。 RF GAINコントロールのポテンショメータにはガリはなく、手入れをすることなくスムースに動作しました。 |
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6AQ8による局部発振、6BE6による混合という構成はHE-80と全く同じ。
ただしこの2球は、独立したヒータートランスによって電源スイッチがOFFのときもヒーターが点火されたままとなり、
電源ON直後の周波数ドリフトを低減しています。
真空管の寿命と省エネを考えたら誉められた方法ではありませんが。
それに、真空管のヒーターをつけっぱなしにしたって周波数ドリフトがなくなるわけではありません。
実際に1日プラグを差し込みっぱなしにしておいてから帰宅してスイッチを入れてテストしたら、15MHz帯では電源ON後10分で5kHzもドリフトしました。
結局ウォームアップが必要なことには変わりがないのです。 コンバータ ノイズは、HE-80と同様にかなり目立ちます。 これにより、微弱信号はノイズに埋もれがちになってしまっています。 |
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バンド切替スイッチは比較的良い状態で、接触不良はほぼありません。
ダイヤルにはさほどの狂いはありませんでしたが、シグナル ジェネレータを使って各バンドの再調整を行っておきました。
感度はほぼベストと思われる状態になりました。 |
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14MHzのSSBを受信してみました。
SSB/CWでは受信感度があまりよくないように感じます。
強力な局を受信すると音声のピークがつぶれてしまうので、MVCポジションにしてRFゲインを絞る必要があります。 プロダクト検波の音声出力は、6BE6のプレートから10kΩと0.005μFを介して取り出しています。 この出力はモードスイッチを通り、初段低周波増幅管に伝えられます。 この0.005μFの取り出し側の波形を観測してみたら、DC電圧が22V程度も出ています。 そのまま連続して使用していたら14Vまで低下したものの、明らかに0.005μFのリークです。 Nichicon 0.005μF 600WVを取り外し、代わりに新品の0.0047μF 250WVに交換しました。 DC電圧はもちろん消えましたし、音声信号のピークの顕著なつぶれが見られなくなりました。 結果として、SSB受信時もAVCポジションにしてAGCを使えるようになりました。 AGCを使える、とはいっても、SSBでは波形ピークにくらべ平均パワーは低いためAGC電圧があまり出ず、 強めの信号では波形ピークで中間周波増幅段がオーバーロードとなり音が歪んでしまいます。 強力な局の信号を満足できる音質で復調するためには、やはりRFゲインを絞る必要があります。 改善するためにはSSBの特性を考慮したAGC回路が必要ということでしょう。 アンテナを接続せずにBFOピッチ コントロールをセンターに近づけると、 中間周波増幅段にBFO信号が出て、Sメータが反応するのが認められます。 また、BFOをセンターにすると軽い発振状態となります。 ただし、この傾向はHE-80に比較するとかなり軽微で、BFO回りこみ対策の効果が出ているものと思われます。 SSB受信はBFOの周波数調整やMVC調整など相互作用があり手間取りますが、 いったんベストなBFO位置を見つけてしまえば放電安定管のおかげでチャープは気にならず、 3.5MHzなら周波数ドリフトも許容できるレベルで、夜のOMさんのラグチューを楽しみながら聴くことができます。 現状 AGCを使ったほうがSSB受信音質が良い(低域が豊か)のですが、この理由は不明。 CWを受信する場合、AVCポジションでは受信音がチャーピーになります。 また、BFOピッチ コントロールがセンターに近い場合は受信音は濁りがちになります。 そこで、MVCポジションにし、BFOピッチをある程度センターから外した状態で使うことになります。 CW受信では選択度確保のためにQマルチの助けが必要ですが、現時点で動作はしているものの効きは今ひとつ。 再調整が必要かも。 HA-230と同様の局発管ヒータ常時過熱の大技は、やはり効果はさほどありません。 7MHz帯でも、一晩ヒータ通電しておいていてさえ、電源投入後15分はドリフトのためにバンドスプレッドから手を離すことができません。 |
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さて、Nichiconのキャパシタが2個顕著なリークを示していましたから、他のものも交換してしまいます。 まずはAM検波出力の直流阻止。 強力な信号のとき、出力側には検波後の直流分がほぼそのまま出ていました。 増幅管のグリッド電圧に悪影響を与えていたはずです。 交換してOK。 つぎにAGCフィルタの0.05μF。 交換したらAGC電圧がわずかにアップ。 テスタで確認したらやはりリークしていました。 AC電源ラインのノイズ吸収用0.01μFは、顕著にリークすれば発火の危険性もありますので松下の250WV品に交換しました。 テスタで確認するとやはり2MΩ程度のリークがありました。 オーディオ出力トランスの1次側パイパス用0.005μもまたリークあり。 交換しましたが、音質の変化は感じられません。 どれも受信機を止めるほどの故障ではありませんでしたが、 結果として全数がリークを示していました。やはり無条件交換対象品です。 2002-04-06 ニチコンオイルキャパシタ全数交換 |
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さてここまで調子が良くなってくると、やはりHE-80と同様にAM受信音質がいまひとつであることが目立ち始めました。
シグナル ジェネレータからの安定した信号では復調音声波形は正常、
ラジオぬ〜ぼ〜
からのピアノ音楽放送もいい音。
でも短波で実際の国際放送を聞くと、音がかなり悪いケースがあります。
どうも変調が深い場合に復調波形の頭打ちが顕著なようです。 HE-80と同様な音であることを考えると、故障というよりこのモデルの特性なのかもしれません。 JR-60をお持ちの方、皆さんの機械はどんな様子かお教えいただけないでしょうか・・・・。 |
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6m受信用クリスタル コンバータは一枚のプリント基板にきれいにまとめられています。
基板は他と同様にかなり汚れてしまっていました。 HE-80の時は時間をかけて綿棒とセーフ・ウォッシュで清掃しましたが、今度はシンプルグリーンと超音波洗浄機を使用してみました。 基板を取り外し、また水や振動に弱そうな部品は超音波洗浄機に入れる前に取り外しておきます。 今回は水晶振動子とコイルボビンをひとつ、事前に取り外しておきました。結果はご覧の通り。 1〜2時間はかかる綿棒作業がコーヒーを淹れている間に完了しました。 シンプルグリーンは強力な洗浄力のわりに素材へのダメージが比較的少ない洗剤ですが、 元来電子部品用ではありませんし、全く安全なわけでもありません。 写真では、コイルのエナメル皮膜が変色していることがわかります。 また、よく洗浄しても表面に残渣が確認できるので、精密接触が必要な部品の場合は要注意です。 |
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いずれにしても、電子部品を水洗いするのは本来は誉められたものではありません。
現代のプリント基板回路製造工程では洗浄液による洗浄工程が入る場合がありますが、
その際は使用する全てのコンポーネントは洗浄可能であることがメーカーによって保証されていなくてはなりません。
最近ではフロンやメチレンクロライドなどの物質が使用規制を受けたために水洗浄を採用するようになっていますが、
コンポーネントへの影響を細心の注意で評価した上で実施されています。
洗うことなど考えられてもいなかった部品を家庭用洗剤で水洗いしドライヤーあるいは天日で自然乾燥させるなど、
本来は狂気の沙汰です。
あくまでも全てのリスクを自らが負う覚悟とアマチュア精神で行うべきです。 いつぞやのハムフェアの出展ブースで、某有名レストアショップが 「雑誌に載ってた水洗いと一緒にされちゃ困る、ウチのはプロの仕上げだよ〜!」 と声を張り上げてました。 そんなんあたりまえじゃん、高い金を取っておいて水洗いだけじゃあサギだよな。 我々は何しろ誇りあるアマチュアなのですから、胸をはって堂々と度胸一発洗っちゃえばいいのです。 こっちはいじるのが楽しくて、直すのが楽しくて、努力と工夫の成果 (時として負の成果!!) が現れるのが楽しくてこんなことをしています。 決して最初からピカピカのクラシックマシンが欲しくてやっているのではないのです。 そこんとこを勘違いしちゃあいけません。 とはいえ、プロの仕事は本当に綺麗なんだよなあ。 ・・・・・・・・・・・・・ 本機入手時には6BL8が欠品していました。 幸いラボにはオランダ製中古球の在庫がありましたのでこれを使い、50MHz帯受信機能をテストします。 が、相変わらず50MHz帯を発振できるジェネレータもアンテナもありません。 ジェネレータの高調波が受信できているのでなんとか動作はしているものと思われますが、 性能のほどは全く不明。 2002-04-06 クリスタルコンバータボード洗浄 |
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HA-225のダイヤルグラスのレプリカを製造したいのでガラスのイメージスキャンをとってくれないか、
との要望がありました。
お安い御用、と、フロントパネルの取り外しにかかろうとしましたが、
FUNCTIONのつまみが外れない!
ネジが固すぎてネジ山を崩してしまい、
ええいとドリルでネジを削り始めたら逆に絶対抜けない状態になってしまいました。
頭に血が上り、冷静になってから「ごめん、こんなワケで無理だ」とメールの返答を書き、
そのまま意気消沈して、つまみが外れたままHA-225は棚上げにしてしまいました。 それから5年経ち、外れたままのつまみを見つけ、せめてなくさないうちに組み上げてやろうとHA-225をベンチに乗せました。 5年ぶりに電源を入れると、ポテンショメータにガリが戻っていたり、バンド切り替えロータリースイッチに接触不良が出ていたりと、 さすがに多少ぐずっていました。 それが元に戻ると、HA-225はじゅうぶんに元気良く鳴り始めました。 それじゃあ3.5MHzでOMさんの技術談義でも聞いてみようと思ったら、 やはりSSB/CWの受信性能の悪さが気になります。 もし現状がHA-225(あるいはJR-60系)の実力だとすると、 わたしがちょこちょこいじって良くなるものでもなさそうです。 が、無駄だとわかっていても試してみるのがアマチュア、なんだからいいよね。 以前の作業内容をほとんど忘れていたためにこのページを読み返しながらいじり始めてみると、 あれえ? プロダクト検波回路に関する記述が何か変だなあ。 ・・・っと、ああっ、プロダクト検波管周辺の配線の様子を撮った自分の写真のコメントが間違ってる!! 6BE6と6AL5が入れ替わっていました。 いままで誰からも指摘はなかったけれどね。 自分で自分にハメられた・・・。 2007-09-27 作業再開 |
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現状SSB/CW受信の最大の不都合は、
BFO信号が通過帯域に回り込んでしまい、AGCを効かせているとメータが大きく振れてしまうこと。
当然受信機のゲインは大きく低下しています。 MVCポジションにしてAGCを停めて動作させる場合、RFゲインコントロールをハイゲイン方向に進めていくと、 あるところ以降で無音状態になってしまうため、本来の感度を得ることができません。 9R-59ではBFOとQマルチを兼ねるコンセプトのために検波段以前でストレーでBFO注入しているのでこれは致し方ないですが、 HA-225では独立したプロダクト検波管とBFOを持ち、SSB/CW受信時にもAGCが使えるはずの回路構成なのに残念です。 し、HE-80に対してせっかくBFOをサブシャーシに実装したのに、その恩恵があまり感じられません。 現状、BFDパワーは前述の通り80Vp-p。 いかにも大きすぎると感じられるので、 もういちどこのあたりから始めてみます。 BFOからの細い黄色のビニール線を6BE6の7ピンから切り離しても、 BFO信号の飛び込みがあります。 やはりBFO信号が中間周波数段に直接飛び込んでいるのでしょう。 飛び込みの経路を想像してみると、
飛び込みの調査のまえに、現状のプロダクト検波回路に必要なBFOパワーを調べてみましょう。 本機のBFOを止め、外部シグナル ジェネレータをBFOとして使ってみます。 本機のFUNCTIONスイッチはSSB/CWポジションにしたときにのみBFO管のカソードをグラウンドに落とし、 BFOが動作を開始するようになっています。 よってこの配線を一時的に切り離してしまえば、 プロダクト検波出力がオーディオアンプにつながれたままBFOの動作を止められます。 外部BFOによる復調の場合、BFO注入は10Vp-pあれば良好に復調できることがわかりました。 6Vp-pでは復調音質の劣化が明らかです。 BFOレベルを高くしていっても、15Vp-p程度以上では変化が感じられません。 そしてこの状態だとBFO信号はSメータには現れず、AVCポジションできれいに信号強度に比例してSメータが動き、 良好に受信できます。 BFOレベルを適度に抑え、それが他に回り込まないようにすれば、SSB/CW受信は快適にできそうです。 つぎに、オリジナルBFOの回り込みの要因を調べてみます。 プロダクト検波管までの黄色いビニール線を、いったんすべてBFOサブシャーシのなかに引き戻してみます。 これでも回り込むなら原因は別のところにあり、ということ。 [自分に忠告! 2007年11月現在 今もこのまま。] さてさて、期待は見事に裏切られ・・・しっかり回り込んでおり、 BFO注入接続がまったくなくても、しっかりSSB/CWの復調ができています。 オリジナルの状態に比べれば程度は軽減しているものの、Sメータも大きく振れています。 回り込みによってすでに復調されているところにさらにプロダクト検波しているのですから、 位相のずれとかなんとかでワケわかんなくなって復調性能いまひとつ、も納得できます。 となると、やはり回り込みのレベルを下げてやらないといけません。 BFO管を発振させても全くSSBが復調できない程度にまで下げられればいいのですが。 第2中間周波増幅管のグリッドをオシロで見てみると、BFO波形が見えていて、そのレベルは20mVp-p。 受信入力信号よりも強いレベルです (岩通SS-5702で観測)。 第1中間周波増幅管のグリッドでは、ノイズにうずもれてBFO波形ははっはりとは見えず。 しかし混ざっていない、と明確には言い切れません。 2本の中間周波増幅管6BA6へのB電源供給ラインを見ると、ACハムはありますが455kHzの信号は見えず。 電源から回っているのではないようです。 AGCラインには455kHz成分は見えませんでした。 BFOピッチ バリコンとコイル パックとの間にアルミホイルを入れてみても回り込んでいるレベルは変わらず。 出直し。 プロダクト検波管の1ピン、第1グリッドへのSSB入力をオシロでモニタしておいて、 どのステージから回り込んでいるのかを追ってみます。 標準(BFO出力ワイヤを切り離してサブシャーシに引っ込めた状態)でのBFO信号レベルは1Vp-p。 ここで第2中間周波増幅管6BA6を抜くと、当然のことながらSSB入力は完全にフラット。 第2中間周波増幅管を戻し、第1中間周波増幅管6BA6を抜くと、やはり完全にフラット。 中間増幅ありに戻し、局発&カソードフォロワの6AQ8を抜くと・・・ 1.5Vp-pの455kHz信号が見え、 スピーカからはザーッというおそらく6BE6のノイズ。 局発を戻して周波数変換管6BE6を抜くといったいどうなるのだろう? 答えは0.5Vp-p。あれえ、どういうこと? コンバータ直後の中間周波トランス1次側、つまり6BE6のプレートに入る側を短いジャンパーコードでショートしてみると、 0.9Vp-pが観測されます。わずか5cmのジャンパーコードですが、これが小さいループアンテナになっている様子。 第一中間周波増幅管のコントロールグリッドへの短い配線を切ってみると、BFO混入はなし。 やはりT1 IFTあたりで拾っているようです。 T1の1次巻線の1ピンは、周波数変換管のプレートにつながるとともに、Qマルチ接続線が延びています。 QマルチOFFのときは、この1ピンから5cm程度のワイヤが伸びた後0.005μFのセラミックキャパシタにつながり、 その反対側はQマルチスイッチでオープン状態。 この線をIFT側で切ってみると、プロダクト検波管入力で0.5Vp-pだったBFO混入が0.08Vp-pまで減りました。 約1/6です。 つまり、QマルチOFFのときはこの配線は約7cmのワイヤーアンテナになっていてBFO信号を拾っているようです。 しかし残念なことに、周波数変換管6BE6を挿し込んで動作させると、プロダクト検波管入力ではやはり0.8Vp-pほどあり、 あまり効果がありません。 [自分に忠告! 2007年11月現在 Qマルチ接続線は切ったまま。] BFO混入のレベルはどのバンドでも変わらず、アンテナを外しても変化はなく、 高周波増幅管6BA6を抜いても同じ、さらには周波数変換管のRF入力である第3グリッド(7ピン)をグラウンドに落としても変わりません。 このことから、455kHzのBFO信号を拾っているのは主として周波数変換管からIFT T1までの間だ、といえそうです。 455kHzに対して一番感度の高い部分ですから、言ってみればこれは当然ですね。 さて、結局なんにもわかってないぞ。 2007-11-09 作業中断 |
HA-225 and HE-80 promise better SSB/CW reception than HA-230
by having independent product detector.
HA-225 further improves it by shielded BFO sub chassis,
using coaxial cables internally and tighter openings of the IFT mounting holes. However the SSB/CW performance of HA-225 is still marginal, mainly due to the BFO signal leakage. The BFO signal should only be injected to the product detector, but it is also somehow picked up somewhere around the converter tube and the first IFT. This causes self-interference of two different-routed BFO signal, resulted in poor SSB audio reproduction. Because the AGC circuit detects the BFO signal, it reduces the receiver's sensitivity. Spending weeks to find out the exact mechanism how the BFO signal is fed into the IF chain, still no bingo. The BFO frequency control is a small tuning cap mounted on the front panel. The connection between this tuning cap and the BFO sub chassis could cause the signal leakage (for the signal return path is chassis, common to the IF chain), but it has not been tested. By disabling the internal BFO and using an external signal generator, it has been confirmed that 20Vp-p of BFO signal is sufficient for the product detector to effectively reproduce the SSB audio. This test resulted in far superior audio and favorable AGC operation. Therefore it may be an option to build a solid state BFO circuit and hide it within the BFO sub chassis, however it should be the last resort. |
入手直後の作業開始から20年も経ったのにいまだに作業中ですね・・・。
HE-80の整備の続きを行っていて、
復調音質の不良はおそらくトリオJR-60オリジナルの性能レベルだろうと思えるようになりました。
と同時に、音質が悪い原因もなんとなく見えてきました。
HE-80はオリジナル回路での復旧とし、
いろいろ素人改造を楽しむのはHA-225で・・・と思っていましたから、
いったんHE-80の作業を終えて、
HA-225を引っ張り出して、15年のブランクの後にHA-225の作業を再開します。
目標は、JR-60での欠点を克服すること。
場合によっては外観変更を伴わない範囲で半導体回路追加も辞さず。 ボリュームのガリ取りなどの軽い整備の後にHA-225は動作を開始しました。 感度や分離などの基本性能はとても良好。 いろいろ試しながら現状を再確認し、 問題点を整理して対応策を検討してみます。 |
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1: AM復調音質不良
AMの復調音質不良は、AM変調度が高いときに起きます。
テストシグナルジェネレータとして目黒測器MSG-2161を使っているときはAM変調度は50%より深くできないので復調音質は良好ですが、
実際の国際放送を聞くと音質劣化は明らか。
新規導入したSIGLENT SDG2122Xならば100%超のAM変調が得られるので、
以前は無理だったテストができるはず。
AM復調音質不良は、AM検波管6AL5の2極管のAC負荷が重すぎるからだと思えます。 AMの検波管負荷としてはボリュームコントロールを介して初段低周波増幅管の入力、 AGC電圧生成、ANL (Automatic Noise Limiter)があり、 さらにプロダクト検波回路への入力もAM検波の後から取り出されています。 もともと大して効果のないANLは使いませんから、 ANL回路を除去することで改善できるならそれを試みてみようと思います。 もしANLを除去しても不足なら - それはなさそうに思えますが - AM検波管出力にトランジスタエミッタフォロワを入れるというのはどうだろう。 またAM受信時にプロダクト検波段をぶら下げておく必要は本来ありませんから、 プロダクト検波が重いならAM受信時にはプロダクト検波を切り離すスイッチを追加する手もあり得ますね。 |
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2: SSB復調音質不良
HE-80においてプロダクト検波が標準的な6BE6のインナーグリッドインジェクションではなくて
なぜかアウターグリッドインジェクションになっている理由は、
FM受信モードの時に6BE6にクワドラチャ検波を行わせるため
だ、と2022年になってようやく理解できました。
HA-225ではFM受信モードは廃止されているわけですから、
6BE6は標準的なインナーグリッドインジェクションによるプロダクト検波に変更し、
6BE6本来のSSB復調性能を得ることにします。
それよりも致命的なのは、BFO発振出力が大きすぎること。 漏れ出したBFO発振管の出力は第1中間周波トランスに飛び込み、 ここですでにSSB信号とミックスされてSSB復調されてしまうのです。 それを中間周波増幅第1段・第2段で増幅したのちにあらためてプロダクト検波するのですから、 狙い通りの動作にはならないわけです。 これはSSB復調音質を悪化させているだけでなくて、 無信号時にもAGC電圧を発生させてSメータを振らせ、 受信機の感度を下げてしまう結果となっています。 サブシャシーに実装されたBFO発振管とフロントパネルのBFOトリマは離れていて、 長い同軸ケーブルで繋いでいるというレイアウトの悪さも原因の一つ。 ちょっとしたシールドの追加で何とかなるものなら何とかしていたでしょうから、 トリオも次期モデルで完全再設計するほかに対策はない、と断念したのかもしれません。 したがってまず試みるべきは、現行のレイアウトと回路ブロック構成でBFO発振管の発振出力を下げてみること。 発振出力を現状の80Vp-pから10Vp-pにまで落とすことができたなら、 かなりの改善になるのではと思われます。 それでも回り込みが無視できないのであれば、 トランジスタでBFOを作ってみたらどうだろう。 フロントパネルのBFOつまみは発振回路の同調バリコンではなくてポテンショメータに置き換え、 トランジスタBFO同調回路に入れたバリキャップで周波数の微調を取るようにし、 なんならBFO出力にバッファアンプも入れる。 |
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3: CWチャープ
電信を受信すると明確なチャープが感じられます。
AGCを止めるとほとんど問題になりませんが、
現状ではCW受信時にもAGCが使える設計なのにチャープのためにAGCを使う気になりません。
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4: FT8復調品質不良
SSB/CWの復調品質が改善できたとしても、
FT8の復調までは無理でしょう。
ウォータフォールを見ると周波数ドリフトは長時間・短時間ともにあまりにひどく、
もうふらっふら。
これはどうしようもないレベルに見えます。
FT8の復調ははなからあきらめた方がいいでしょうね。
さあて、どうなりますかねえ。 2022-09-27 課題を整理 2022-10-06 FT8は絶望的 |
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それではまずAM復調音質の改善に着手しましょう。
回路図を見ながら、プロダクト検波管を切り離したりAGC回路を切り離したり、
またシグナルジェネレータでAM変調深度を替えたりしながら、
音声の歪の具合を見ていきます。
幸いなことに、ANLを切り離すだけで実用になりそうです。
ピアノソロを聴いてみると、変調深度90%程度まで、不快な歪は発生していません。 2022-10-03 ANL切り離すだけで実用となりそうなことを確認 |
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AM検波出力取り出しの抵抗R31は47kΩが使われていますが、
この抵抗値がどのように変調度-歪特性に影響するのかを調べてみました。
1000Hz正弦波で連続AM変調を掛けた信号を受信し、聴感で歪が出始める変調度を調べると、 47kΩ : 70% 150kΩ : 80% 220kΩ : 85% となりました。 220kΩを使えば、AMラジオ受信機として満足できる音質です。 これでいきましょう。 しばらく、音が良くなったHA-225で在宅勤務のBGMを楽しみます。 2022-10-04 ANL切り離してテスト継続 負荷抵抗の抵抗値増大をトライ 短波バンドCで7.850MHz以下で無感になる症状が出ています。 どうやら局発停止のようです。 これはシリアスな故障かなと思いましたが、 単にバンド切り替えロータリースイッチの接触不良でした。 局発コイル切り替えに接触不良が出て、 周波数の低いほうで発振停止してしまっていたようです。 スイッチの接触を処置して回復。 AM復調品質はじゅうぶん満足できるものとなったので、 つぎはSSB/CW復調品質改善作業に移りましょう。 |
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SSB/CWの改善作業再開として、
15年前の状態を再確認します。
BFO出力の黄色のリードワイヤはプロダクト検波管から切り離してあって、
ワイヤはすべてBFOサブシャシーの中に収めてあります。
にもかかわらずBFOを動作させるとBFO信号はSメータを大きく振らし、
強力に受信できてしまいます。 BFO管はDC150Vの安定化された電源で動作しますが、 ここに10kΩを入れてBFOのB電源を114Vに落としてみました。 BFO発振出力は下がりましたが、それでも60Vも出ており、 IF段に飛び込んでしまっています。 BFO信号が入力されていないのでプロダクト検波管は復調動作をしておらずSSB/CWはモゴモゴ言うだけのはずですが、 実際にはIF段で入力SSB信号にBFOの回り込みがキャリアとして重畳されているため、 音声復調できてしまっています。 この様子ではトランジスタでBFO発振回路をこしらえて、 HA-225本来の狂暴すぎるBFO発振管は潔く止めてしまった方がいいのかもしれません。 その可能性も視野に入れつつ、 まずはBFO発振管は止めてシグナルジェネレータでつくったBFO信号でテストを続けることにします。 2022-10-08 BFOのB電圧を下げてみる |
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最適なBFO信号レベルをもう一度さぐるため7MHzのSSB/CWを聞いているうち、
音割れしてしまうことがあることに気がつきました。
SSBでの音声通信ですから多少の音割れでも通信内容は判別できますが、
不快です。 これはどうやら強信号時に発生するみたいです。 AGCを切ってRF GAINを下げれば歪はなくなりますが、 プロダクト検波管6BE6の第3グリッドへのIF入力が±0.8Vより強まると歪が発生します。 現状のAGC制御では±1V〜±1.5V程度に達するので、 強い局ではほとんど歪みまくり。 BFOの対策ができたとしても、これではSSB/CWの復調品質は悪いままでしょう。 あちこち調べていて、6BE6のカソード電圧が0.8Vになっていることに気がつきました。 カソード電圧が0.8V、音声が歪み始めるIF入力は±0.8V。 む、IF入力の第3グリッドのバイアスが足らないからか。 2022-10-08 プロダクト検波で強力な信号の時に音声がひずむ |
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プロダクト検波管6BE6のカソード抵抗は100Ω。
抵抗器の抵抗値は実測ほぼ100Ωで故障はしていませんが、
これを330Ωに置き換えたところ、カソード電圧は1.95Vに上がりました。
カソードから見ると、第3グリッドはマイナス1.95Vになっているわけです。
IF信号のレベルが±1.95Vに達するまでは、第3グリッドはカソードに対して負電位を保ちます。 この状態で実際のSSB/CW信号を受信してみると、 歪なくきれいに受信できています。 ただし強力な信号の時はIFレベルが±2Vを超え、そのときに歪が発生します。 歪の原因はカソードバイアス不足、ということで結論付けていいでしょう。 本機はHA-225のオリジナル回路に対して第1グリッドと第3グリッドを入れ替えています。 なのでこれは当初の設計不良ではなく、 インジェクションスキーム変更改造に伴ってあわせて実施すべき変更だ、 ということでしょう。 さらに6BE6第3グリッドに47kΩの抵抗を直列に入れ、 IF入力レベルを約3分の2に落としました。 AGCがONのとき、強力な信号のアタックの瞬間を除いてほぼ歪は発生しなくなりました。 最終的にはカソード抵抗を470Ωにし、 カソード電圧2.67Vで使うことにしました。 AGCを使っている限り非常に強い信号も破綻なく扱えるはずです。 2022-10-09 プロダクト検波管 復調歪改善 |
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プロダクト検波回路のテストとして、
外部BFO・外部局発で動作させFT8を受信してみました。
これではまるで2ch出力のシグナルジェネレータという人工心肺をつながれて生きながらえている瀕死の生命体みたいです。 でもこの状態なら、いい感じでFT8がデコードできています。 こんな感じに仕上がればいいのですけれどねえ。 2022-10-09 外部BFO・外部局発でFT8の受信テスト |
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プロダクト検波回路はいい具合になりましたが、人工心肺状態は見るのが忍びなく・・・
BFOの低出力化の試みを続けます。 FUNCTIONスイッチをSSB/CWポジションにすると、 このロータリースイッチによってBFO発振管のカソードがグラウンドに落とされ、 BFO管が発振し始める仕組みです。 そうか、ここに抵抗を入れてみればいいんだ。 サブシャシーを開けることなく、BFO管のカソード抵抗を変えて試せる。 カソード抵抗として350Ωを入れてみると、 それなりに効果的に発振出力が下がりました。 発振管のB電源ラインには3.3kΩを追加で入れ、 BFO出力ラインには82kΩと100pFのキャパシタを追加。 これでプロダクト検波管へのBFO信号振幅は±10Vp-p以下になります。 この状態でもBFO発振周波数をIFパスバンドのセンター455kHzに合わせるとSメータははっきり振れて、 IFへの飛び込みが残っています。 が、その程度はかなり低減しました。 S=3〜4程度です。 AGCによって受信機のゲインは明確に下がりますが、 微弱局の受信に支障をきたすといった程度で、 感覚的にS=7程度で入感していれば実用的。 さらにBFO発振周波数をIFのセンターから2kHzほど外せばSメータはほぼ振れなくなり、 AGC ONの状態でも微弱局を受信できます。 小さな変更で対応できる手段としてはこのあたりが現実的。 仮配線でこの状態ですから、 カソード抵抗や追加プレート抵抗それに出力低減抵抗をサブシャシー内に組み込み、 BFO出力ワイヤにシールド線を使えば、さらにすこしは改善されるはずです。 これならばオリジナルBFO発振回路に見切りをつけてトランジスタBFOを載せるという敗北宣言をしなくても済みそうです。 2022-10-09 BFO低出力化の試み |
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BFOのテストのために7MHzのCWを聞いていて、やはりチャープが気になります。
AGC ONだとはっきりピュウピュウいってしまうし、
AGC OFFでも皆無とはなりません。
JR-60では局発バッファが採用されたのに、
こんなものでしかないのかなあ、
がっかりだなあ。 そう思いながら局発管6AQ8の接続を見ると、ん? なんで7ピンと8ピンに何もつながってないの? これは衝撃の事実。 HA-225には局発バッファが実装されていない!! なぜだろう? HA-225はJR-60/HE-80の改良機だと思っていたのに、 局発バッファが削除されているとはどういうこと? なにか逆効果なことがあったので廃止されたのだろうか? それともコイルパックはじめ各部もろもろ、 局発バッファを入れたくらいじゃどうにもならないほどに安定性が不足していたからばかばかしくなってしまったのか? 局発バッファを削除したのに、 使われている真空管はHE-80と同じ6AQ8 双3極管です。 そして片側のセクションは全く使われていない。 局発バッファを廃止しても、セーブできるBOMコストは抵抗3本とキャパシタ1個だけです。 HA-225は局発管常時点火用ヒータトランスを持つくらいだし、 ケチるほどのことでもないのでしょうに。 まったく理由がわかりません。 2022-10-09 局発バッファの謎に気がつく |
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サービス中はシャシーを横倒しで立てているために、ごくわずかな振動で受信周波数が変化します。
これは致し方ないとしても、コイルパックの局発セクションのワイヤリングが振動にとても敏感であることに気がつきました。
コイルパックと局発発振管6AQ8をつなぐ2このキャパシタもまたとても敏感です。 正確に言うと、ワイヤとキャパシタが触れているもの、 また2つのキャパシタがとても近づいているものは、 その接触の具合やお互いの間隔のほんのわずかな変化が発振周波数の大きな変化を引き起こしています。 これでは温度変化によるごくわずかなリード線の線長の伸び縮みが発振周波数に影響を与えてしまうかもしれません。 なので、途中にサポートなくて長い距離に伸びているビニール線は硬いエナメル銅単線に付け替え、 ワイヤやキャパシタ類がお互いに可能な限り間隔を取れるように (かつできる限り短く・できる限り揺れないように) 配線引き回しを修正しました。 結果、右のビデオにあるような敏感な箇所はなくなりました。 この改良がどのくらい発振周波数の温度特性改善に寄与したのかははっきりわかりませんけれども。 2022-10-10 コイルパック配線改善 |
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BFO出力低減策を仮配策のまま2日間動作させ、満点ではないもののこんなところで妥協かな、と思いました。
追加したカソード抵抗は真空管直近に設けた方がワイヤーを伝っての輻射も少なくなるでしょうし、
BFOサブシャシーを取り外して本配策しましょう。 サブシャシーを取り外して内部接続を確認していくと・・・ おお! BFO発振管のグリッド抵抗R38 47kΩが抵抗値∞、オープン故障しています。 これか? このために発振出力が異常に強くなってしまったのか? でも残念、新品の47kΩに交換して仮配策で試しても、 発振出力は±60Vが出ています。 2022-10-11 BFO管グリッド抵抗断線を発見 |
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気を取り直して作業継続。
BFO管のB電源の高周波バイパスキャパシタC44 0.01uFに並列にキャパシタを追加すると、
おそらくB電源ライン経由でのIF回り込みが低減できました。
0.01uFを0.15uFフィルムキャパシタに交換。
追加のカソード抵抗は真空管ソケット直近に取り付け。
これでBFO ON-OFFのワイヤからの輻射は減るはず。
さらにBFO出力ワイヤはシールド線に変更。 BFO発振管6AQ8は低周波初段増幅管でもあります。 カソードバイパスはチューブラキャパシタなので無条件に交換。 案の定リークしていました。 いままでこれが原因と思われる明らかな異常は出ていませんでしたが、 たぶん音質は改善したのでしょうね。 しばらく仮固定仮配策で動作させました。 BFO周波数をIFセンターに合わせるとS=4程度の強さで回り込みがあり、完全ではありませんが、 この状態でサブシャシーを正式に組付け。 2022-10-12 BFOサブシャシー整備 |
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プロダクト検波段の復調品質改善とBFO発振出力低減によるIF段への回り込み抑制で、
SSB/CWの復調品質はかなり改善したはずです。
7.795MHzのJMH2を受信してみると、
今夜はコンディションが良いことにも助けられて、とてもきれいに受像できました。
なにしろ他の機器の助けを借りず自分の局部周波数発振器・自分のBFO発振器で受信できているわけで、
これは進展ですね。
1960年代ファッションの綺麗なお姉さんを眺めてひとり悦に入ります。 2022-10-14 JMH2を良好に受信 |
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プロダクト検波によるSSB/CWの良好な復調、
SSB/CW受信時にも使用可能なAGC。
JR-60の、9R-59に対するアドバンテージの2つが実現 - 復元 - できました。
なので3つめのアドバンテージ:
SSB/CW時にも使えるQマルチで、混信の少ない受信を楽しみましょう。
ところが・・・ Qマルチは全く動作しません。
Qマルチコイルをくるくる調整してもまったく反応なし。
なにかこれは、Qマルチ回路がIFラインから切り離されているみたいです。
QマルチとIFラインをつなぐスイッチの接触不良か、
カップリングキャパシタの故障か。 でもこのページの2007年の作業記述を読み返すと、 書いてありましたね・・・ 「現在Qマルチは切り離したまま」って。 見事に忘れてたよ。 配線をつなぐと、Qマルチは動作し始めました。 FREQUENCYつまみがセンターにあるときにQマルチ同調周波数が455kHzぴったりになるように再調整。 しばらくQマルチをあれこれいじってみましたが、 うーん。 効いてはいるのだけれど、 その、大した効果は感じられなくて。 ひしめく7MHzの電信曲の中から目的の局だけをシャープに切り出すなどといった芸当はとても無理、 ですね。 2022-10-15 Qマルチ作業開始 |
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SSB/CWの復調品質はかなり改善したとして良いと思いますが、
局発周波数の短時間内のふらつきは依然として明らかで、
実用上は支障がないものの、CWを受信していてピッチがふらつくのは気持ちよくありません。
何とかしたいところです。 HA-225では放電安定管で電圧安定化されたDC150V B電源で局発とBFOに給電していますが、 さらにミキサ電源も安定化してみましょう。 ミキサのB電圧が変動したり、またミキサにもAGCを掛けている受信機の場合はAGC電圧の変化によって、 ペンタグリッドコンバータ管の動作点が変化し、 その影響で局発インジェクショングリッドの静電容量が変化し、 局発の発振周波数に影響を与えてしまうことがあります。 このHA-225では局発バッファが実装されていないので、その影響は無視できないはず。 とか言いながら6BE6のプレート抵抗の接続先を変えてみます・・・ 簡単な改造ですね・・・が、 ううむ、とくになにかが変わったふうでもありません。 2022-10-17 ミキサをDC150V安定化電源ラインから給電 |
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局発バッファを実装してみました。
HE-80では双3極管6AQ8の第1ユニットで発振、第2ユニットでカソードフォロワとしていますが、
HA-225では最初から第2ユニットで発振させていますから、
使われていなかった第1ユニットをカソードフォロワとして使います。
追加するのは抵抗3本と100pFのセラミックキャパシタ1個。 結果は・・・何も変わりません。 局発周波数のふらつきは相変わらず。 もっとも何も変わらないのならいいことだとしましょう。 2022-10-17 局発バッファを実装 |
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局発周波数の短時間での不安定なふらつきの原因を探るため、
ひきつづきあちこち調べます。
現状で局発管・局発バッファ・ミキサそしてBFOの真空管は0A2放電安定管で安定化されたDC150Vラインから給電していますが、
この電圧を
デジタルストレージオシロ
の低速スクロールモードで観測してみたら、
電圧ふらつきの具合がWSJT-Xで観察している周波数ふらつきの傾向と酷似しています。
およ?
DC150Vラインの電圧安定度が足らないのかな?
でもこのラインに入っている平滑キャパシタはすでに新品交換してあるし、
何が原因なんだろう。 実機の配線を追いかけながら放電安定管周辺のチェックを行い、 理由がわかりました。 230VのB電源から放電安定管の手前で平滑するためのドロッピングレジスタと、 放電安定管のシリーズレジスタの抵抗値が高く、 放電安定管の両端は放電安定管が抜いてあっても148Vしかなかったのです。 放電安定管は電圧が低すぎてグロー放電が始まらず、 だから電圧安定作用は働いていなかった、というわけ。 ドロッピングレジスタとシリーズレジスタはどちらも2.2kΩで、 抵抗値に変化はありませんでした。 それぞれに2kΩの抵抗を並列に加えて1kΩにしたところ、 放電安定管電圧は165V以上に上がるようになりました。 そして160Vあたりで0A2が点弧してグロー放電が始まり、 DC150Vラインは148Vでぴったり安定しました。 |
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DC150Vラインが148Vを示していたので、
放電安定管は正常に点弧していると思い込んでいたのです。
0A2のガラス管菅頂内壁は黒くコーティングされていて放電しているかどうかぱっと見にはわからなかったということも、
不調に気がつくのが遅れた原因でした。 ドロッピングレジスタとシリーズレジスタでの電圧降下が大きくなりすぎた理由の一つは、 使われていなかった局発バッファと、さらには設計当初には含まれていなかった局発管もDC150Vラインから電源を取るようにしたためです。 しかしもしそれだけが理由だったのなら改造する前は正常だったはずで、 当初から局発周波数が短周期でふらふらしていたことの説明がつきません。 何にせよ、ミキサをDC150Vラインから給電するように変更したことにより生じた電圧降下の変化を抵抗を追加することによって調整し、 放電安定管がきちんと動作するようにした・・・のが今回の作業の「意図」だったとすれば、説明にはなりますね。 そしてそうか、 局発バッファ廃止の謎は、 「放電安定管動作の余裕が少なくなったので電源負荷を減らすために局発バッファを廃止した」 というのが理由だったのだとしたら、これはありそうなストーリーに思えますね。 |
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背景や経緯が何であれ、
明らかに言えることは短周期での局発周波数の変動がなくなって、
FT8がきちんと復調できている!! 9R-59に対してのJR-60の強化ポイントの4番め、 定電圧電源回路採用により受信周波数変動を低減、 が実働し始めました。 FT8の安定受信は絶望的と思っていただけに、 これはうれしい。 2022-10-18 DC150V安定化電源回路 正常動作開始 |
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本機のメインの電源平滑電解キャパシタは入手直後に交換しましたし、
他の電解キャパシタもすべて交換済みなのですが、
スピーカからのハム音は小さいながらもはっきりと残っています。
これは変だな。何が変かって、ハム音は電源スイッチをONにした瞬間から出始めるのです。 ふつう真空管ラジオのハム音はB電源の平滑不足で発生するもので、 B電源を生成するのは整流管です。 整流管のヒータが暖まって真空管として動作し始めるまではB電圧は発生せず、 だからハム音も出ないはずなのです。 整流管6CA4を抜いて試すと、しっかりスピーカからハム音が出ます。 ハム音はB電圧がなくても出ているわけです。 なんだこれは? さらに音声出力管6AQ5を抜いてさえ、ハム音は出続けています。 6AQ5を抜いてしまえばオーディオ出力トランスの1次側は高周波バイパスキャパシタを除けば何もつながっていないわけで、 つまり 出力トランスが自分ひとりでスピーカを鳴らしている ということになります! これではまるでオカルトです。 起きていることが心霊現象ならば、 その対処は除霊しかありませんね。 3mmほどの厚みのある頑丈な鉄板 - 機器をラックマウントするための金具です - を右の写真のように電源トランスに乗せてみると、 ハム音は聞き取れないくらいに小さくなりました。 ・・・つまり、電源トランスからの漏れ磁束をオーディオ出力トランスの1次巻線が拾って、 そのエネルギーでスピーカを鳴らしていたのです。 |
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シャシーから出力トランスを取り外し、置き場を動かしてみると、
電源トランスから離せばハムは減ります。
出力トランスの設置場所を変えてしまいましょう。
出力トランスの配線を切り離して、右図の写真のようにシャシー下部に置くことを試してみました。
しかしこの位置では、すぐ上にあるヒータトランスからの漏れ磁束を拾ってしまい、ハムが発生してしまいます。 2022-10-19 ハムの原因を特定 音声出力トランス取り外し 移設検討 |
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結局、非破壊で改造できる方法として、シャシー上のコイルパック取り付けネジに共締めする形で置くことにしました。
この位置だとハムは皆無にはなりません。
もうすこし電源トランスから離したいところではありますが、
そうするとシャシー下にあるコイルパックのコイルになにかしら影響を及ぼしそうだし、
シャシーに穴あけを行わなければならないので、
この位置に妥協しました。 この位置に置くためには出力トランスのリード線の長さが足らないので、 ワイヤを継ぎ足す必要がありました。 このページの冒頭で述べているように、 HA-225の電源トランスは45度傾けて取り付けられています。 これは当初電磁結合を防ぐための工夫なのだろうと思いましたが、 どうやらそうではなく、 バリコンを覆うプレススチール製のカバーを追加したときにJR-60のもともとのトランスと干渉してしまい、 トランスを傾けて逃がしたのだと思われます。 傾けるのではなくてもっと電源トランスから離せばよかったのになぜそうしなかったのだろう? と思いましたが、 たぶんそれはJR-60用に特注で作った出力トランスのリード線の長さが足らず、 だけれどリード線の長いトランスを発注しなおすことができず (コストの問題か、納期の問題か、在庫のトランスを使わざるを得なかったか)、 線がぎりぎり届く範囲に取り付けた、くらいの事情だったのでしょう。 低音が細い小口径の通信用スピーカではハムは耳につかなかったということもあったでしょうし、 わずかにハムが聞こえるくらいは普通、といったおおらかな時代だったからなのかもしれません。 2022-10-20 音声出力トランス移設 作業完了 |
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DC150V電源の安定化と局発バッファの実装が効いたのでしょう、
CW受信時のチャープはいまや皆無です。
AGCをONにしてS9+40dB以上の強い断続信号を入れても復調トーンはしっかり一定。
気持ちいいですね。 AGCフィルタキャパシタを大きくしてAGC時定数を伸ばしましたが、 これはアタック時も応答が遅くなっていることを意味します。 Sメータの振れを見るとアタックは素早く応答してくれていますが、 キークリックはあります。 シリコンダイオードでも追加してファーストアタック特性を持たせてみようかとも思いましたが、 AM検波ダイオードの負荷を増やさず原状復帰が簡単にできる改造方法が思いつかず、 7MHzのCWもSSBも、実際の受信時にアタック不足のために何かが気になるということはないし、 このままにします。 2022-10-28 チャープテスト |
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入手から20年以上が経過してしまいましたが、9R-59に対してJR-60が約束していた改善点がひととおり実現できました。 高1中2とは思えない高感度、スムースなダイヤル操作、 AM・SSB・CWともに良好な復調音質。 製造後60年経ったとは思えない元気な受信機になりました。 最大の課題であったBFOの回り込み問題は実用になるレベルまで改善できましたが、 皆無にはなっていません。 今後さらに技を磨けたならばいつか再チャレンジしてみたいですね。 現状実用上最大の欠点はやはり周波数ドリフト。 電源投入後1時間ほどはウォームアップが必要で、 その後も室温変化に敏感に反応してしまいます。 温度係数は1kHz/℃ といったところ。 FT8を安定に受信するためには室温変化を0.1℃以下に管理する必要があります。 温度補償キャパシタを追加するなどじっくり取り組めば、何か手が打てるかなあ? 機能的には水晶発振子不良のために動作しない50MHzコンバータ、 これはHE-80から水晶発振子を持ってくればよいのですがどのみち使わないならそのままに。 AM音質優先のために切り離したANLは、これも実際には使わないから問題ではないのですが、 ロータリースイッチのポジションが空いているのももったいないから何か活用するアイデアはないかな。 そんなことを考えながら、 シンプルグリーンで洗ってすっきりしたラファイエット・ブルーのスチールキャビネットに組み込み、 ひとまず全作業完了。 2022-10-31 キャビネット組み込み 作業完了 |
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BFO信号の回り込みはやっぱり完治できなかったなあ・・・と考えていて、
お、まてよ? そういうことかも? BFO信号はプロダクト検波をさせている7極管 6BE6の第1グリッドに注入されています。 管内の電子流は第3グリッドがカソードに対して負にバイアスされているため第3グリッドの手前で空間電荷が発生し、 第3グリッドとの間で電子結合が起き、第3グリッドに電圧が誘起されます。 管内の電子流はBFO周波数で変動しているので、第3グリッドに誘起される電圧もBFO周波数で変化します。 第3グリッドには最終の中間周波トランスが接続されているので、 その同調周波数で第3グリッドは電子結合発振器として発振動作を始めます。 これは6BE6がロックドオシレータとして動作していることになるわけです。 だから・・・第3グリッドに誘起されたBFO周波数はAM検波回路で検波され、その振幅に比例したAGC電圧が生成されるのかもしれない。 む、これなら説明がつく。 でも本当にそうなら、どうやって対処しよう? プロダクト検波段の手前にカソードフォロワを入れて、 プロダクト検波段からBFO信号がAM検波段に逆流しないようにすればいいのかも? この仮説を実証するためにもういちどキャビネットを開け、 6BE6を抜いて試してみました。 が・・・ 結果は変わらず。 BFO周波数をパスバンドセンターにすると、 やはりSメータはしっかり振れます。 なあんだ、6BE6ロックドオシレータ仮説は否定的に実証されました。 むー、するとやはり輻射による回り込みか電源経由の回り込みなんだな。 これは完全に対策できるものなんだろうか? 未来の自分、さらに技が身に付いたらもういちどがんばってみてね。 2022-11-02 ロックドオシレータ仮説とその実証実験 |
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