Allied A-2515A
General Coverage Shortwave Communications Receiver
(1970) |
はじめにお断りしておきますが
(って単なる自己満足で書いてるページだからお断りも何もないんだけれど)
、これは
Restoration Project
ではありません。 この1970年製
Allied A-2515A
は何しろ
新品
なのですから!!!!
で、よくよく考えてみたら、ひょっとすると、うーん、これが私にとって初めての、
新品で買った通信型受信機ということになります・・・・
もし科学教材社のプラグインコイル式0-V-2キットが通信型受信機とは呼べないのだとすれば。 2001-10-27 A-2515A 入手 |
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1950年代後半から60年代、日本製の低価格なトランジスタポケットラジオは米国で大ブームとなりました。
当初は性能も良くなかったトランジスタも、1960年代後半には本格的な通信機器にも全面的に利用され始め、
真空管を使わない新しい機器が相次いでデビューします。
低価格な輸入製品に押され、ハマーランドやハリクラフターズのような真空管式通信型受信機メーカーの凋落は不可避になっていました。 トリオ9R-59が発売された1960年代初頭、米国のアマチュア無線機器はすでにアマチュアバンド専用のSSB機器が主流でしたので、 Lafayette HE-30/KT-320/ HA-230 /KT-340という形態で米国デビューした9R-59は低価格を売り物にノービス向けの手ごろな短波受信機として人気を得ました。
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1960年代後半から70年前半は日本製の低価格トランジスタ機が広く出回ります。
どうにか短波も聞けるといった程度のお粗末なものも多かった中、
Radio Shack/Reallistic DX-150 (ゼネラル・リサーチ・オブ・エレクトロニックス社製)
などは本格的な設計と強力な販売網で短波リスナー向けに高い人気を得ます。
それではトリオ9R-59をそのスタイルとコンセプトを保ったままフルトランジスタ化し、改良を進めたらどうなっていたか?
ここに答えがあります。 アライドA-2515Aは、1970年製のゼネラルカバレージ通信型短波受信機です。 初期型A-2515は1969年。末尾にAがつくこのモデルは後期型改良モデルです。 写真からわかるように、Lafayette HA-230とほとんど変わらないデザイン スキームとダイヤルレイアウトをもちますが、 内部はフルソリッドステート化されています。 低価格機としてはじめてデュアルゲートMOS FETを採用し、またメカニカル フィルタを採用しています。 A-2515Aの初期型、A-2515はQST誌1969年02月号49ページのRecent Equipmentコーナーで 「日本から輸入された低価格の受信機」として紹介されています。 Allied ElectronicsはLafayette Radioと同じ電子部品・機器カタログ通販会社で、 アマチュア無線家・エレクトロニクス ホビイストの間でたいへんポピュラーでした。 A-2515Aの基本的なデザインはHA-230などのLafayette機と変わりませんが、 Lafayette Blueと呼ばれる緑がかった暗いブルーの替わりに、 Alliedではシックなダークグレーのケースとフロントパネルのグラフィックスになっています。 個人的には、9R-59ファミリの中で最もモダンでセンスがよく、高級感のあるルックスだと思います。 |
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A-2515Aは0.15MHzから30MHzまでを5バンドでカバーする、ゼネラルカバレッジ受信機です。
中間周波数455kHzのシングルスーパーヘテロダイン方式で、高周波1段・中間周波2段増幅。 長波1バンド、中波1バンド、そして短波帯は3バンドに分割されています。 長波バンドが追加されているほかは、HA-230と同じアレンジメントです。 400kHzから550kHzまでの周波数は中間周波数に近いのでバンドギャップとなっており、受信できません。 0.15 - 0.40 MHz 0.55 - 1.6 MHz 1.6 - 4.8 MHz 4.8 - 14.5 MHz 10.5 - 30.0 MHz |
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A-2515Aの回路構成は、特徴的なBFO兼用Qマルチプライヤがないことを除けば9R-59の雰囲気がずいぶん残っています。
フルソリッドステートですので電池動作が可能ですが、電池コンパートメントは持っておらず外部DCジャックに接続します。
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アンテナ回路 シャーシ背面のアンテナ端子はネジ式ターミナルです。 トランジスタを使ったフロントエンドは真空管と異なり過大入力で損傷する可能性があるため、 アンテナ端子の直後にゲルマニウムダイオード2本による保護回路が入っています。 QST誌のA-2515のレビュー記事では、近くに大電力の放送局があるためにこのダイオードが導通状態となり、 ひどい混変調を起こした、とあります。 QSTラボではゲルマニウムダイオードをシリコンダイオードに置き換えて問題を解決していました。 RF GAINは増幅段のゲインコントロールではなく、アンテナ端子直後の簡単なアッテネータとして実装されています。 アンテナからの信号はコイルパックのアンテナセクションで同調選択されたあとRFボードに導かれます。 アンテナセクションのトリマはフロントパネルにアンテナトリマ調整つまみとして出されており、 広範囲のアンテナ負荷に対応できます。 これは9R-59と同じつくり。 つまみの位置で とても弱い〜強力に受信できる といった感じで変化します。 アンテナインピーダンスの整合が取れていないランダムワイヤーアンテナを使うならこの調整はとても大切だし効果的で、 外付けのアンテナチューナを併用する必要性は少なくなります。 逆に言えば、ランダムワイヤーアンテナを使う場合が多いはずのカジュアルな短波リスナーにとっては不可欠ともいえる装備であるはずで、 他の多くの受信機がこれを有していないのははてどういう理由なのだろうか、と思ってしまいます。 QST誌には「A-2515の局発はいつも受信周波数より高い設定なので、 イメージ混信を低減するためにはアンテナ トリマはいつもハイキャパシタンス側にセットすべきだ」 と書かれています。 |
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コイルパック ロータリー スイッチによる5バンド切替のコイル パックには、 アンテナセクション、MIXセクションそれにOSCセクションがあります。 この部分のコンセプトは9R-59と変わらず。 基本コンセプトは9R-59と同じといっても、細部のつくりはかなり進化しています。 コイルパックの各セクションにはプリント基板が使われており、 ロータリースイッチとコイルはプリント基板に実装されています。 空中配線が減ることによって機械的にも安定になり、セクション間の不要結合を低減、 製造時の個体ばらつきも減り、 さらには製造組み立てコストも低減されたことでしょう。 |
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バリコン バリコンとダイヤルメカニズムの基本は9R-59と同じで、 電気的にはメインバリコンとバンドスプレッドバリコンを並列につないでいます。 二つのバリコンはブラケットで機械的に結合されています。 ここまでは9R-59と同じですが、 このブラケットはシャーシに対してラバーマウントされています。 シャシーに加わった振動を減衰することによりハウリング防止に、 また耐ビンボーゆすり性能も上がっていますね。 幸いなことにラバーマウント自体はまだゴム質を維持しています。 メインバリコンの手前側セクションはバンドスプレッドバリコンの真中のセクションに、 またメインバリコンの真中のセクションはバンドスプレッドバリコンの手前のセクションに接続されています。 いかにも意味がありそうな結線です。 バンドスプレッドバリコンの各セクションには容量違いの2種の組がありますが、 容量の小さな組は周波数直線型、またはそれに近いロータの形をしています。 容量の大きな組は1.6〜4.8MHzを受信するバンドCのときだけ追加される形で使われ、 これによりバンドCでのバンドスプレッドのカバー範囲が広がっています。 9R-59は80メーターバンドの3.5MHz帯と3.8MHz帯は別のキャリブレーションポイントになっていて それぞれで合わせる必要がありましたが、 A-2515Aではひとつのキャリブレーションポイントで3.5MHz帯と3.8MHz帯をカバーできます。 |
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高周波増幅段 アンテナからの信号はRFボードに入ります。 RFボードには高周波増幅段と周波数変換段が実装されています。 高周波増幅を行うのはデュアルゲートMOS FET 40603。 初期型A-2515ではMOS FETにTA-7150が使用されていました。 QST誌には「MOS FETを使用した最初の低価格機である」と書かれています。 入力ゲートとドレインに低い抵抗を入れておくことによって寄生発振を予防しています。 高周波増幅段はAGC制御を受けます。 周波数変換段 局部発振は2SC381Rによって行われます。 局発トランジスタは、ツェナーダイオードで安定化されたDC9Vで動作します。 局部発振器の出力にはバッファは入っていません。 周波数混合はデュアルゲートMOS FET 40603で、 ひとつめのゲートに入力信号、ふたつめのゲートに局部発振周波数が注入されます。 QST誌のレビューでは、「低価格機は局発の高調波によるスプリアス妨害がひどいことがあるが、A-2515ではそのようなことはない」 と書かれています。たしかに ソニー スカイセンサー5800 は局発の高調波による幽霊だらけでした。 混合出力はこのRFボードから出てIFボードに入ります。 |
RFボード。 ゆったりしたレイアウトで、組み立ても修理も改造もコピーさえも容易です。 |
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中間周波増幅・検波・BFO 中間周波数増幅・BFOそして検波段は1枚のIFボードに実装されています。 RFボードからの混合出力はIFボードに入り、最初のメカニカル フィルタで455kHz中間周波数が取り出され、 ついで2SC454(B)で2段増幅されます。 1段目と2段目の間には2つめのメカニカル フィルタが中間周波トランスの代わりに使用されています。 2段目の出力は中間周波トランスを介して検波段に伝えられます。 使われているメカニカル フィルタは中間周波トランスと同一の形状をした小さいもので、 いわゆる簡易型メカフィルと呼ばれているものです。 初期型A-2515では、中間周波増幅は3段構成で、メカニカル フィルタが4個使用されていました。 A-2515Aではなぜか2番目の中間周波増幅段が実装されておらず、2段構成になっています。 Sメータは第1中間周波増幅トランジスタのエミッタ電圧の変化を読むように配置されています。 Sメータのゼロ点はシャーシ背面のポテンショメータで調整できます。 AM検波回路 AM検波はゲルマニウムダイオードを用いています。 AGC電圧は別の回路で作られますので、 AM検波に専念した回路設計になっています。 BFOとプロダクト検波回路 BFOは独立した2SC454(B)で発振されます。フロントパネルのBFOミゼットバリコンで発振周波数を微調することができます。 BFOトランジスタへの電源は安定化された9Vで、ファンクション セレクタ スイッチをCW-SSBポジションにしたときのみ供給されます。 SSBの検波にはAM検波とは独立した、ダイオード2個を使った平衡検波回路が利用されます。 ここも9R-59のダイオード検波方式に対して大きな進歩。 AGC A-2515Aが9R-59に比べてフロントパネルが少し寂しく見える理由の一つが、AVC-MVCスイッチがないこと。 A-2515Aでは専用のAGC電圧発生回路を設けることにより、 AM受信時はもちろん、SSB/CW受信時にもAGCが動作するのです。 なんといっても欲しかった機能です。 |
IFボード。 中間周波3段構成のパターンが用意されていますが、A-2515Aでは2段目に部品は実装されていません。 |
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低周波増幅と出力 低周波回路は1枚のプリント基板にまとめられています。 音量調整ポテンショメータからのオーディオ信号は2SC281トランジスタで2段増幅された後、 低周波出力段をドライブします。 パワーアンプは入出力にトランスをもつプッシュプル方式で、出力トランスの2次側には8Ωと4Ωの出力があり、 シャーシ背面のネジどめスピーカ端子に接続されています。 フロントパネルのヘッドフォン ジャックは8Ωのスピーカ端子につながっており、プラグを差し込むと8Ωスピーカの音が切れます。 このとき4Ωスピーカ端子は切れません。 出力トランスの2次側からはドライバのエミッタ回路にNFBがかけられています。 電源回路 AC115Vの電源は電源トランスで降圧されたあと半導体ダイオードで整流される、簡単で一般的な電源回路になっています。 電圧の安定性が要求される局部発振、BFOおよびSメータの基準電圧回路には、ツエナー ダイオードで安定化された9Vが供給されます。 動作中、ダイヤル盤は16V 0.15Aの豆電球2個で照らされます。 AC電源使用時は電源トランスの専用14V巻線が使われ、DC動作時は電源直結で点灯されます。 バッテリー使用時にはランプを切って節電したいのではと思いますが、そのしくみは用意されていません。 |
AFボードと電源ボード。 AFボードはまるでトランジスタ式プッシュプル低周波アンプの学習教材のようなわかり易い構成です。 シャーシの下面も写真に撮ろうかと思いましたが、コイル パックのほかにはほとんど何もなく、単に配線だけ。 |
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整備が済んだ
ハリクラフターズSX-96
でしばらく短波を楽しんできましたが、
春になってすっかり暖かくなり、もう暑いくらい。
真空管受信機を一日中つけっぱはもうやめて、
トランジスタ機いじりにシフトしましょう。
そうね、これを楽しもう。
2重の新品元箱に入った、54年前の新品受信機。
最後の通電から22年経過していますが、元箱とダストカバーのおかげで新品の状態を保てています。 2024-05-04 使用開始 |
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A-2515Aには簡易型メカニカルフィルタが使われています。
長期保管中にこのフィルタの劣化が起きていないかは気になります。
最近ほぼ毎晩聴いているラジオタイランドの日本語番組をまずは受信してみました。 9.385MHzで送信されているこの局、 ここのところ9.381MHzあたりにFSK局の混信があり、 選択度の甘い受信機ではピロピロ音が耳障りなのですが、 A-2515Aではほとんどカットできています。 聴感での通過帯域幅は6kHz程度のようで、 AM受信にちょうど良い選択度を示しています。 メカニカルフィルタはいまもいい仕事をしているように聞こえます。 感度も安定度も良好。 パーフェクト9R-59の性能は十分に出ています。 いっぽう復調音質は不満です。 波形ピークでの歪が顕著。 これは気になるなあ。 最初はPHONEジャックにつないだ外部オーディオアンプで聞いていましたが、 本体背面のスピーカ端子につないだミニブックシェルフスピーカで聞いてみると、 トップのサチり歪はさほどひどくありません。 しかし音質は低域が出ておらず、耳につく音。 通信機風といえばかっこいいですが、 耳に突き刺さる感じで、番組をリラックスして楽しめません。 低周波段のサービスは必要なようです。 2024-05-04 ラジオタイランドを聞く さらに試すと、AF GAINつまりボリュームコントロールつまみを30%以上の位置にすると、 音声出力の波形に振幅リミットがかかってしまう症状が出ていることがわかりました。 低周波増幅段のエミッタバイパスのキャパシタ劣化が真っ先に疑われます。 2024-05-05 低周波増幅段 動作不良を確認 |
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それでは新品受信機の修理を始めましょう。
AF GAIN位置30%以上でオーディオ出力の歪が急増する症状をチェックするために、
まずはオーディオアンプボード入力端子にテスト信号を注入して聞いてみると、
この手のオーディオアンプなら普通の性能が出ています。
問題はオーディオアンプボードより上流にありそうです。 テスト信号は三稜綺想曲 @okatappi2023 さんのアルバム "Water Suite:水組曲" から トラック1 「第1番〜おてんば恋娘」 (原曲:「おてんば恋娘」)。 2024-05-12 修理開始 |
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今度はシグナルジェネレータでアンテナ端子からAM信号を注入してテストします。
音質不良問題はバスドラムやベースが大振幅で入っているソースのときに顕著にわかります。 この画像を見れば・・・ ほとんどどこが悪いか、もう明らかですね。 テスト信号はC-Claysさんのアルバム "幻想天舞 〜GENSOUTENBU〜" から トラック8 「Cafeteria in satellite」(原曲:「衛星カフェテラス」)。 2024-05-12 |
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AF検波出力カップリングキャパシタ C209 0.1uF ニチコンチューブラ CP-C をフィルムキャパシタ新品に交換しました。
正しくゼロインすると高音はかなり抑えられますが、
これはメカニカルフィルタがAM受信機としてはけっこう狭帯域になっているためでしょう。
音質は正常になったと判断できます。 テスト信号はシグナルジェネレータでつくった9.385MHz、1mVp-p、 AM 80%変調。 音源はC-CLAYS @cc_clays さんのアルバム「幻想天舞」からトラック3、 美有耳虚無頭さんの 「Keep On Loving You」(原曲:「リーインカーネイション」)。 2024-05-12 カップリングキャパシタ交換 音質問題解消 |
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オーディオアンプボードを含め受信機は正常に作動しているようですが、
どのみちラインオフから50年以上を経過している機械です。
予防保全として信号系のすべての電解キャパシタを新品交換してしまいましょう。 結果として、まあ予想通り、あきらかな変化はありませんでした。 低域が特に強い音源でテストしてみると、 破綻せずにきれいに鳴ってくれています。 テスト音源はZephill @zephill_tw さんのアルバム「東方的な何か」からトラック1 「上海紅茶館 〜 Arabian tea」(原曲:「上海紅茶館 〜 Chinese tea」)。 電源平滑キャパシタはそのままとしました。 そのうちハムが気になってきたら交換することにします。 2024-05-12 信号系電解キャパシタ全数新品交換 |
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簡単なキャパシタ新品交換作業で、A-2515Aはほぼ新品の性能に戻ったとしてよさそうです。
9.385MHzのラジオタイランド日本語放送がとても良好に受信できています。
このときはちょっと下にFSK局の混信があって選択度の広めな受信機では気に障る状態だったのですが、
メカニカルフィルタのおかげでほとんど混信妨害を除去できています。
混信がないのであればこの選択度は国際放送受信にはシャープすぎるかもしれまんね、
高音域の伸びはちょっと物足りない感じです。
復調音質に気になる歪は感じられません。 バンドスプレッドのカバー範囲は広くはなく、 9MHz帯を受信するときは 0.3MHz程度しかカバーしてくれません。 ハリクラフターズSX-96のときは10MHzのWWVHでキャリブレーションすれば バンドスプレッドダイヤルで9MHz対放送バンド全域をカバーできたのですが、 A-2515Aでは 9.2〜9.5MHz / 9.4〜9.7MHz / 9.7〜10.0MHzという感じなので、 あらかじめバンドスプレッドダイヤルの較正表を作っておいたとしても、 正確な待ち受け受信をするためには外部のキャリブレータ発振器が必要になってきます。 2024-05-12 ラジオタイランド |
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この受信機、信号強度が大きく変化するとそれにつられて受信周波数が動いてしまうことはないし、
局部発振器の周波数が入力信号の周波数に引き込まれてしまう (オシレータプルイン) こともなく、
SSBもCWも安定して受信することができます。
チャープフリーで電信を受信できてとても快適だし、SSB電話の受信も快適です。
BFOピッチコントロールをLSB/USB側にセットすればSSB受信時のサイドバンド混信も気になりません。
選択度は混雑している7MHz帯のSSB電話には不足していますし、
7MHz帯電信ではそれこそ10数局が同時に聞こえてきてしまいますけれど。 A-2515AはSSB/CW受信時にはゲルマニウムダイオードを用いたプロダクト検波回路が使われており、 SSBの復調音質も良好。 SSB電話受信時に入力信号が強すぎるとプロダクト検波回路の復調音質が悪化してしまいます。 強力な信号の時はRF GAINで入力を絞ってやればOK。 2024-05-13 SSB/CW受信テスト |
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選択度を測って、メカニカルフィルタの性能を見てみましょう。
測定はいつものようにアマチュア流儀。
ダイヤルを15.100MHzにセットして、シグナルジェネレータで作った15.100MHzの信号を受信します。
ぴったり同調が取れたときにSメータがS=6ほど振れるようにシグナルジェネレータの出力を下げ、
ここをセンター周波数とします。
そこからシグナルジェネレータの周波数を動かし、
センター周波数の時に比べてどのくらい出力を高めればメータがS=6を示すかをプロットしていきます。
結果は右。 けっこうシャープな特性を示していますね。 この受信機でAMを聞くと音声の高音域はかなり減衰されますが、 それもうなづけるカーブです。 5kHz離れた隣接混信信号は除去しきれずわずかに残りますが、 6kHz離調すれば全く聞こえなくなります。 1970年代中盤〜後半のトランジスタポータブル短波ラジオよりもシャープだ、といえそうです。 グラフには以前測定した RF-2200 の結果も入っていますが、 あれ、RF-2200の結果は変だな、目盛りを間違えているかな。 RF-2200はもういちど測りなおすべきでしょう。 2024-05-14 選択度測定 |
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パーフェクト9R-59と言ってもA-2515Aも所詮はシングルスーパーヘテロダイン、イメージ混信には弱いです。
8.828MHzのVOLMETを聞こうと思ったら、
非常に強力な9.740MHzのRTI 台湾国際放送のイメージが8.830MHzに入ってきてしまい、2kHzのひどいビートになってしまいます
(9740 - 910 = 8830)。 これを回避する方法はなく、 RTIがサインオフする2100JSTを待たねばなりません。 そもそも8MHz帯は9MHz帯の強力な国際放送のイメージだらけで、 微弱なユーティリティ局を聞くのにそれなりの支障となってしまいます。 |
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台湾が停波したあとならVOLMETもしっかりきれいに聞こえます。 こういった信号の場合は、 RF GAINを絞ったほうがノイズが減ってクリアに聞こえますね (動画の前半)。 RF GAINをフルにした動画後半ではノイズが耳障りになっています。 A-2515AのRF GAINはアンテナ端子に入ったポテンショメータです。 インピーダンス整合とかはシリアスには考えていない簡便な方法ですが、 具合は良いです。 2024-05-16 イメージ混信妨害の実例を体感 |
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周波数ドリフトを測ってみました。
シグナルジェネレータで15.100MHz無変調キャリアをつくって、
SSB/CWモードで受信し、ゼロビートを取ります。
時間経過とともに受信周波数が動きますから、
シグナルジェネレータ側で周波数を変え、ふたたびゼロビートを取っていきます。
その繰り返し。 結果、コールドスタート後 ざっくり2時間で4kHz変動しました。 低価格トランジスタシングルスーパーならこんなものでしょう。 AM受信でも1時間ノータッチは無理、途中1〜2回はダイヤルを合わせなおす必要があります。 以前測った パナソニックRF-2200 と同程度といったところでしょうか。 だらだらと続く周波数変化の傾向は、機内温度のウォームアップというよりは、 室温変化に依存しているほうが大きそうですね。 変化の傾向は安定していて、突発的な、あるいは不安定な変化はないので、その点は好感が持てます。 2024-05-14 周波数ドリフト測定 |
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クリスタルキャリブレータを持たずバンドスプレッドダイヤルは国際放送バンドの目盛りを持たないという不満点は残るものの、
受信機の基本性能としてA-2515Aは短波国際放送を楽しむのにじゅうぶんな性能を発揮します。
しかしイメージ混信はやはり気になるところ。 基本的には高1中2のゼネラルカバレージのままとしても、イメージ混信を抑止するためにせめてハイバンドはダブルスーパー化したい、 局発にもBFOにもバッファを入れよう、 ツェナーダイオード1本だけでは電圧安定度が不足だからシリーズドロップ型定電圧回路にしよう、 SSB/CWには選択度が不足しているのでセラミックフィルタを追加しよう、 RFボードをシャシー下に移してコイルパックに近づけよう、 ツーダイヤルバンドスプレッド構成は変えないとしてもどうせなら筐体設計も変えてモダンなルックスにしよう、 と改良を続けてくと・・・ できました、QR-666。1974年。 そしてさらに細部改良を進めて、できあがったのがR-300。 こう見ると、1961年の9R-59の設計は受信機アーキテクチャの大きなパラダイムシフトなしに継続的な進化が続き、 R-300まで受け継がれているわけですね。 9R-59とQR-666を橋渡しするのがA-2515/A-2515A。 普及価格帯のトリオ製ゼネラルカバレージ受信機の進化が見られて興味深いモデルです。 2024-05-31 整備完了 |
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