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Sony ICF-5800 "SkySensor 5800"

Portable Shortwave Receiver
Japanese Version


    Clearly aiming the shortwave listening, the SkySensor 5800 fueled the shortwave boom in Japan back in 1970s. Its cool professional like styling, double speed reduction tuning with moving-film dial, covering up to 30MHz and a BFO; all gave the thrill of the shortwave.

    The unit had suffered distorted audio and sluggish dial, which were cured after the servicing. Severe frequency drift associated with the incoming signal strength was reduced to acceptsble level, by modifying the AM mixter circuit - stopped applying AGC control and made the mixer transister running with fixed-bias.

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くやしいけど完敗

    小学生のとき、現在は音信不通の友人が使っていたのがICF-5800。 あるとき彼が私の家に遊びに来て、私の パナソニックRF-877 と並べて受信性能を比較してみたのです。 RF-877は家人が買ったものを半ば自分のものにしていて、 それが短波受信を主眼に設計されていたものではないことは自分では理解してはいましたが・・・・ その性能差は小学生にも明らかでした。 RF-877では隣りの中国語放送をどうしても除去できないのに、 ICF-5800ではKGEIサンフランシスコの日本語放送がまるでローカル局のようにクリアに聞こえてきたのです。

    なにかRF-877に勝てることはないかと思い、 RF-877のポップアップ・ジャイロアンテナとICF-5800のポップアップ・ロッドアンテナではどちらが上に乗せた消しゴムを高く飛ばせるか競争しましたが、 これも僅差で敗北。

    国際放送のゴールデン・バンド、15MHz帯が受信できないというのは致命的でしたが、 他は努力で何とかしてみようとその夜もRF-877に向かい合いました。プアーな選択度は耳で補い、 2段変速チューニングの代わりは大径チューニングつまみと指先で補う。 BFOの代わりは近くに置いた もらい物の5球スーパー の局発。 アルゼンチン放送の初受信は彼とICF-5800に持っていかれてしまいましたが、 努力の甲斐あってかその後はさほど引き離されずに喰らいついていました。 とはいうものの、ICF-5800は私にとって実に憎いライバル。






このままじゃ使えない

    見まがうことのない精悍なマスクのICF-5800がラボの仲間入りをしました。 フロントパネル左下のSONYのエンブレムが欠品しているほかは外観上の大きな問題はありませんが、 薄汚れていていかにも元気がなさそう。 電池を入れて電源スイッチを入れてみると、AMもFMも感度良く受信できますが、音はひどく割れています。 パワーアンプ部の故障のように思われます。 さらに打撃的なのは、自慢の2段変速チューニングの動きが極めて悪いこと。 ダイヤルは重く、かつダイヤル位置によって重くなったり軽くなったりします。

    このままではすでにラボでメンテナンスを受けた同世代のモデル、 パナソニックRF-1150 に太刀打ちできません。 回路図等の技術資料がないので再調整などは保留するにしても、 ダイヤルの動きと音割れはなんとか修理しなくてはなりません。 情けないライバルの姿は見たくないものです。






分解

    なにしろこれはソニーです。 分解に取りかかる前に金沢市の大野からくり記念館に行って、 展示してある寄木細工のからくり箱をどれも難なく開けられるかどうか腕試しをしておくとよいでしょう。 箱根の寄木細工のお土産屋さんでもいいかもしれません。 私はというと、10種類近く展示してあったからくり箱のうち6種類くらいしか開けられませんでしたから、 それなりの苦労と失敗が予想されます。

    フロントパネルからチューニング、ボリュームとトーンコントロール、バンド セレクタ ノブを静かに抜き、 リヤパネルの4本のスクリューを緩めるとリヤパネルが外れます。 さらにタイマー ノブを抜き、スピーカへの配線の半田付けを外せばフロント パネルも外せ、 全てのコンポーネントが取り付けられたメイン フレームが現れます。 ここまでは入門編といった感じで、さほど困難はありません。

    フロント パネルからスピーカを取り外せば、パネル全体をぬるま湯と洗剤で丸洗いできます。 今夜はスカイセンサーと一緒にお風呂に入りましょう。

    メイン フレームは黒色プラスチックの一体物ですが、 複雑なその形状は、まるで製図室にT型定規だけしかなかったかのごとく徹底的に直線と直角で構成されています。 どうせ外からは見えないのだから、少しくらい各部のコーナーにRをつけたほうが樹脂型の寿命が延びそうなものですが。

    内部の汚れはさほどひどくなく、メインフレームは簡単に乾拭き、プリント基板は軽いブラッシングだけできれいになりました。

2001-03-18 サービス開始






ダイヤル メカニズム

    ダイヤル メカニズムは、メイン基板に取り付けられたプラスチック製のサブフレームにより構成されています。 バリコンと基板の半田付けをうまく外すことができれば、 バリコンが付いたままのサブフレームごと外すことができ、かなり楽に手入れができるはずです。 しかしバリコンの端子の半田付けは案外しっかりしていて、ちょっと苦労しそう。 吸い取りポンプを使って取り外しを試みましたが、 長時間半田こてをあてているとバリコン内部にダメージを与える恐れがあります。 一方、バリコンごとサブフレームを外さないとバリコンに付いたプラスチック製のホイールは取り外すことができません。

    よく観察すると、ゆがんでいるホイールはたしかにプリント基板に接触はしていますが、 ダイヤルの重さはホイールの接触によるものよりも、 チューニング ノブ部の減速ユニットの動きの悪さのほうが支配的であることがわかりました。

    ホイールの基板への接触寸法はごくわずかだったので、ホイールのゆがみを修正するのはあきらめ、 基板側をヤスリで削って逃げを大きくすることにしました。




    ダイヤル コードを外して、減速メカニズムをサブ フレームから取り外してみました。 ICF-5800自慢の2段変速メカニズムは、写真に示すような減速モジュールとして構成されています。 チューニング ノブが取り付くシャフトは減速比およそ1:5の同軸減速シャフトになっており、 これがダイヤル コードを駆動します。 この同軸減速シャフトの入力側 (チューニングノブ側)にはプラスチック製の傘歯歯車が取り付けられており、 また出力側 (ダイヤル コード側) には2つのキーがついたプラスチック製円筒が付いています。

    チューニング スピード レバーがSLOW側のとき、同軸減速シャフトによって出力側の回転速度は入力側の約1/5となります。

    レバーをFAST側に切り替えると、 同軸減速シャフトと同軸に配置されたプラスチック製のロックアップ スリーブがバネによって引っ張られてスライドします。 このスリーブには入力側の傘歯歯車と噛みあう部分と、出力側円筒のキーにはまり込むキー溝が設けられています。 少なくともダイヤルを1/2回転すればキー溝にキーがはまり込み、ロックアップ スリーブがさらにバネによって引っ張られて移動し、 入力シャフト側の傘歯歯車どうしがかみ合います。 この状態で同軸減速シャフトの入力側と出力側はロックアップ スリーブによって強制的に結合されるので、 同軸減速シャフト本来の減速機構はスリップを開始し、減速比は1:1 になります。

    FASTではチューニング ノブをおおむね4+1/4回転させるとダイヤルの端から端まで移動します。したがって減速比は1:8.5。 SLOWではこの約5倍となり、減速比はおよそ1:41.5となります。

    減速モジュールの動きの悪さは、分解清掃しただけで回復しました。 塗布されていたグリスが固化してしまっていたようです。

    このユニークな減速モジュールはなかなかよくできていると思えます。 シンプルな形をしたモジュールなので、部品取り機があったらこれ取り出して、 自作受信機の補助減速機構として流用したら面白いでしょう。

2001-03-30 ダイヤルリダクションユニット分解清掃給脂






音割れの修理

    ダイヤル メカニズムがどうにか実用レベルまでスムースになったので、基板むき出しの状態で電池とアンテナ、 それにいつもテストに使っている小型ブックシェルフスピーカをイヤホン端子につないで電源を入れてみます。 すると、受信音はごく普通で音割れは認められません。 それじゃあ音割れの原因はスピーカにあるのかな。 フロント パネルから取り外したスピーカをイヤホン端子につないでみると、入手時と同じで大変ひどい音です。 スピーカ自体の不良であることがはっきりしました。

    スピーカのコーンを軽く指で押すと、音割れはしなくなります。 あちこちつついたり押したりしているうち、 片方のターミナルとコーンを結んでいるフレキシブルワイヤに触れると音割れが消えたり、 あるいは音がしなくなったりすることに気がつきました。 どうもこの部分で接触不良があって、コーンの振動に応じて導通したり断線したりしているようです。





    フレキシブル ワイヤの半田付けをはずしてテスタで調べてみると、あれ不思議、 やわらかい銅線を編んで作られているこのワイヤ自身に導通不良があり、 曲げたりすると抵抗値が変化します。こんな故障もあるのですね。

    ラボの片隅に落ちていたビニール線の切れ端から芯線を取り出し、 これを使ってフレキシブル ワイヤの代わりにしてみました。 コーン表面のボイスコイル取り出し部にも接触不良の疑いがあったので、 リード線の切れ端を付け足して接続しました。 結果、ひどい音割れはしなくなりました。

    代用品のワイヤはオリジナルほど柔らかくはないので、 コーンの自然な動きを阻害してしまって音質が悪くなっている可能性がありますが、 短波ラジオですのでさほど気にしなくてもよいでしょう。 ま、これは応急修理的な措置ですから、 同じ寸法のスピーカが入手できたら交換してしまうのがよいと思われます。 忘れないように書いておくと、スピーカの寸法はフレーム外径Φ101、フレームのコーン部外径Φ95 (これより小さいと取り付け金具がうまく噛まない)、全高50、ヨークは41x32。

2001-03-30 スピーカフレキシブルワイヤ修理






テスト ドライブ

    ボリューム コントロールとバンド セレクタのスライド スイッチの内部にセーフティ ウォッシュを吹き付けて何回か動かすと、 接触不良はほぼなくなりました。 各部の電気的な動作はひととおり安定していて顕著なトラブルは見当たりません。 しばらく5800で短波を楽しみます。 回路図等の技術資料がないので、現時点では問題点が把握できても手を出せません。

周波数安定度とCW/SSBの復調

    電源投入からの経時的な周波数ドリフトはさほどなく、 次の日スイッチを入れたら昨晩聞いていた局が聞こえています。 受信中にダイヤルを全く触らなくてもいいわけではありませんが、 高一中二クラスのゼネカバ真空管式通信型受信機よりはずっと優れています。 この辺は熱環境の変化の少ないトランジスタ機のメリット。

    BFOスイッチを入れてCW/SSBの受信を試してみます。 BFOスイッチを入れると音量はずいぶん小さくなるので、ボリュームを上げてやる必要があります。

    たしかにCWもSSBも聞こえるには聞こえますが、 信号強度に応じた受信周波数の変動が大変ひどい ことがわかりました。 CWの復調音はひどくチャーピーです。 復調音をWaveSpectaで観測してみると、復調周波数は信号強度に応じて最大500Hz程度も変動します。 この原因は局部発振周波数が信号強度に応じて変化してしまうことです。 ICF-5800でCWを受信しているときに別の受信機でその局部発振信号の漏れ(受信周波数+455kHz)を受信してみると、 CWのキーイングに応じて周波数が変動していることがはっきりとわかり、これを聞くだけでCWのコピーができてしまいそうです。 アマチュア局のSSBを聞く場合、Sメーターがかすかに振れる程度の弱い信号であればどうにか我慢できますが、 強力な信号に対しては完全に非実用的です。 カタログを見ると局発にはバッファアンプ採用とありますが、疑いたくなってしまいます。 それともこの辺になにかトラブルがあるのかな。いずれにせよ対策が望まれます。

    この周波数変動が改善できたとして、SSBの復調音質は決して良くはありません。 検波回路はどうなっているのだろう。14MHzのOMさんのラグチューを聞いて楽しむためには改善がほしいところ。

イメージ妨害

    分解したフィルム ダイヤル ユニットを組み付けるときに、いきなりイメージ周波数に惑わされてしまいました。 受信周波数を15.000MHzにセットしておくと、15.915kHz (2.5kHzほど中間周波数がずれていそうですね) の信号もSメータの目盛りで1つ低いだけで受信できてしまいます。 中間周波数455kHzのシングルスーパーヘテロダインですからある程度のイメージ妨害は不可避ですが、 それにしてもこの5800のイメージはかなりのものです。 夜8時台に14MHz帯のアマチュアバンドを聞こうと思ったのですが、15MHz帯の国際放送がバンド中に広がり、望み薄。

    さらに、局発周波数の2倍の高調波との差が455kHzとなる信号も受信されてしまいます。 たとえば30.457MHzの信号(受信周波数15.000で局発周波数は15.455kHz、その高調波は30.910MHz) も15.000MHzと同じ程度の強度で聞こえてしまいますし、さらにそのイメージである31.370MHzの信号も同様。 最初4MHz台のダイヤル位置で国際放送がずらりと並んで聞こえるので変だなあと思ったのですが、 これは31メーターバンドの信号が上記の理由で聞こえているのでした。 ダイヤルのあちこちで放送が聞こえるので感度いいなあと喜んでいたのですが・・・・じつは幽霊だらけなのです。

    ふだんはベランダアンテナにMFJのアンテナチューナー・プリアンプを組み合わせて使っているのですが、 こうもイメージがひどいとプリセレクタが欲しくなります。 ICF-5800ってこんなにイメージ妨害に弱かったのでしょうか。 オレの5800はそんなにひどくないぞ、という方がいらっしゃいましたらご連絡ください。 ひょっとすると私のユニットにはなにかまだ問題があるのかも。

音質

    スピーカの修理のところで書いたように、スピーカ自体の音質はおそらくすこし悪くなっているはずです。 が、キャビネットを閉じて使ってみると音はなかなかどうして良好です。 パワーをかけるとやっつけ修理が破綻しそうなので通常室内で使用する程度の音量にとどめておきますが、 バス コントロールを上げると十分に豊かな低音になります。 高音域はかなり強く出るようで、短波受信時はトレブルは最低、 VOAのように強力な局なら25%程度でちょうど良く感じられます。 FM受信時も50%以上に上げると私にとっては高音がきつくなりすぎです。

選択度は通信型受信機に比べればやはり広めのようで、短波の再生音質は良好。 ただし各部の再調整は行っていませんので、選択度が低下している可能性もありますが。 フェーディング歪についてはコリンズ51S-1と聞き比べると劣っていると感じられますが、 その価格差を考えれば十分に良好といえます。 AGCの応答速度は適切なものです。

2001-03-30 現状整理






回路構成

    ICF-5800のサービス マニュアルが手に入りました(hamaさんありがとうございます)。 プロック ダイヤグラムを見てみましょう。

    カタログには高周波増幅回路にFET採用、とありますが・・・FM用のRF段のことだったのですね。 短波受信時には高周波増幅段はありません。 イメージ混信がひどいのも納得。

    AM受信時の局発とFMの第1中間周波増幅は1つのトランジスタで兼用されています。 カタログにあるように、局発とミキサの間にはバッファ(FM第2中間周波増幅と兼用)が入っています。 となると、CW受信時に局発周波数が振られるというのはやはり変ですね。 それともバッファが入っていてもこの程度なのかなあ。 AMミキサにAGCが入っているので、周波数変動はAGC電圧によって引き起こされているのかもしれません。 電圧レギュレータもあるし、もうちょい安定でもいいのでは・・・・。

    BFOがONの時は、通常のAM検波とは別の検波段が使われます。はて、これはプロダクト検波なのかしら。 回路図を見てみよう。 BFOがONのとき、AM検波回路はAGC電圧発生用としてひきつづき機能します。

    トーン コントロールは簡易的な回路に見えますね。

2001-10-21 ブロックダイヤグラムを眺める







(ここで22年間のブランク)


今週のBGMはこれで

    Portescap vibrograf B200 の修理の途中ですが、注文した部品が届くまでの間、 さほどには場所を取らないラジオでBGMを聴こう。 取り出したのはICF-5800。 前回サービス時に清掃してポリ袋に入れておいたので、 きれいな状態を保っていますね。 うーんやっぱりこのラジオはハンサムだ。

    と思ったら、あああ! 乾電池入れたままだった。 当然のごとく液漏れ。 でもさほどにはひどい状態ではなくて、 電池ターミナルの表面は傷んでしまいましたが、 続投は可能。

    外部電源ケーブルを用意して、 安定化電源装置 で DC6Vを与え、久しぶりに電源ON。 ボリューム類やバンドセレクタの接触不良は出ていましたが、 じきに回復。 スカイセンサーは調子よく鳴りだしました。




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ふらっふら

    AMもFMも短波も調子よく鳴っていますが、 えーっと、前回の残課題は何だったっけ。 そうか、短波受信時に信号強度による局発周波数変動がすごくひどかったんだった。

    BFOをONにして、10MHzのBPMを受信し、ゼロビートからすこしずらしてビートがだいたい1000Hzになるようにセットしてみると、 あー本当にこれはひどい。 フェージングに応じて、 ビート音は幅にして500Hzも激しく上下します。 これじゃあSSBもCWもまともに受信できませんね。 FT8など問題外の問題外です。 これは5800の実力なのかなあ、 それともなにか故障しているのかなあ。 いくらなんでもこんなにひどいものをソニーが手を打たずに量産投入したとはとても思えないのですが。

2023-03-13 信号強度による局発周波数変動の現状実力を観察






原因調査開始

    問題点を認識してから22年も経っているだなんてね。 なんだかね。 つい先週までいじってたような気もするのだけれどね。 そんなことを考えながら、キャビネットを開けます。

    この時代のトランジスタラジオはたいていそうですが、 AM受信回路とFM受信回路がなるべく共通に使えるように工夫されています。 一つの部品をAMでもFMでも使うことによって部品点数を減らし、 コストを下げ、回路基板を小型・軽量化し、消費電力も減らす。 コンシューマ向けポータブルラジオに求められる技術なわけですし、 回路図を読むとその工夫と努力に感銘します。

    いっぽうでAMとFMの回路機能の双方を同時に最適化するのはやはり困難です。 多少のコスト増も許され、装置の小型軽量化や消費電力の制約がないならばAM用とFM用とで回路を独立にし、 それぞれに最適な設計が楽になり、よって確実な回路になります。 しかしポータブルラジオは商品意図ゆえの設計制約を宿命として持たされているわけですね。 最大限の努力が払われた回路は、受信機の性能としては必ずしもベストなものにはなっていないのが普通でしょう。





    5800の場合、AMの局部周波数発振器はトランジスタ1石。 このトランジスタはFM受信時は中間周波第1増幅段として動作します。 AMの局発出力はトランジスタ1石のエミッタフォロワでバッファされますが、 このトランジスタはFM受信時は中間周波第2増幅段として動作します。 AMの周波数混合はトランジスタ1石。これはAM専用です。 この構成ゆえ、局部周波数発振器もバッファも設計に無理がある、のかもしれません。

    AM局発バッファトランジスタQ5 (2SC710) のエミッタから短いリード線を引き出し、 バッファ出力での局発周波数を オシロスコープ 周波数カウンタ で見てみましょう。




    右の写真/ムービーは、9.940MHzのラジオタイランドを受信中の局部発振信号。 5800は中間周波数455kHzのアッパーインジェクションですから局発周波数は本来は

9.940 + 0.455 = 10.395 MHz

になるべきですが、10.3978MHzあたりにいますね。 中間周波フィルタと中間周波トランスのセンターピーク調整が2.8kHzほどずれているようです。

    中間周波数のずれはともかく・・・ これは22年前に局発の漏れ信号を別のラジオで受信して確認していましたし、 すでに受信音ビート周波数の変動をスペクトログラムで見ていましたから分かっていたことではありますが、 やはり局発バッファトランジスタのエミッタ出力で周波数は数100Hzのオーダーで細かく変動してしまっています。

    エミッタフォロワのエミッタ平均直流電圧は0.7V程度で信号強度によらずぴったり安定しています。 発振波形もきれいですね。 エミッタフォロワとミキサをつなぐキャパシタがリークしている、というようなことはなさそうです。

    容易に想像されることですが、 信号強度による局発変動はダイヤルの上端、各バンドの最高周波数側で顕著です。 ラジオタイランドの9.940MHzはバンドSW1の上限10MHzに近いので、一番影響を受けやすくなっています。




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    さあて、どういう理屈で発振周波数が信号強度の影響を受けるのだろう。 5800のAMミキサはAGC制御を受けていますから、

信号強度が変わるとAGC電圧が変わる
→ ミキサトランジスタQ4のベース電圧が変わる
→ Q4のベース-エミッタ容量が変わる
→ エミッタフォロワQ5のベース-エミッタ容量を経由してオシレータコイルの負荷が変わる
→ 局発周波数が変わる

とかでしょうか?

   





トランジスタを交換してみる

    Q4 AMミキサトランジスタの劣化を疑ってみます。 ソニーの2SC710は故障が頻発しているとも聞きますし。 これを手持ちの2SC2669-Yに交換してみました。 残念、状況は全く変わりません。

    これはたぶんシロと思いつつも、 Q5 AM BUF/FM 2nd IF AMPの2SC710も2SC2669-Yに交換。 変化なし。

    AM受信もFM受信も、 感度も安定度も何も変わったようには見えませんので、 交換したままとします。

    Q6 AM OSC / FM 1st IF AMPも2SC710です。 今回の事象はこのトランジスタの不良で起きているのではないと思われるので、 このトランジスタには手を付けないでおきます。





    というわけで状況は全く変化がありません。 シグナルジェネレータで0.5Hzの振幅変調を掛けた信号を受信させてみると、 ご覧の通り。 これではSSBもCWもまともに受信できません。 つぎはやはりミキサにAGCを掛けるのをやめてみるか。

2023-03-15 AMミキサトランジスタとAM局発バッファトランジスタを2SC2669-Yに交換 変化なし




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ミキサを固定ゲインに改造する

    AMミキサトランジスタにAGCを掛けないように改造してみました。 ミキサのベースにAGC電圧を与える抵抗R27 75kΩの足を1本浮かせてAGC電圧を切り離し。 コレクタとベースの間に180kΩを、 ベースとグラウンドの間に33kΩを入れました。 ミキサのコレクタ電圧は4.7Vなので、 これでベース電圧は0.72Vで固定になります。

    試してみると効果は明らか。 信号強度に応じてわずかに周波数変動は残っていますが、 CWもSSBもこれなら実用になるでしょう。

    でもねえ、AGC電圧印加を止めればがっちり安定すると思ったのに、 まだ残っているんだねえ。 RF入力信号に応じてベース - エミッタ間の静電容量が変化してしまっているのでしょうか。 今回はここで妥協しますが、 さらに改善するとしたらオシレータ - バッファアンプ間をつなぐキャパシタ C51 0.01uFと、 バッファアンプ - ミキサ間のC52 0.01uF をそれぞれ容量を下げれば、 ミキサトランジスタの接合容量変化の影響を減らせるかもしれません。 でもその分ミキサへのLO入力レベルが落ちるから、 オシレータの出力レベルを高める工夫が必要になるかも。 でもそうするとLOが別なところに飛び込むトラブルが出たりして・・・ それを防ぐためにLOをシールドで囲む必要が出てきたりして・・・ 泥沼が待っているのかもしれません。

2023-03-16 ミキサトランジスタからAGC電圧を除き固定バイアス化改造 かなり効果あり 完全ではない



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AM IFチェインとBFOを調整

    すでに中間周波数が本来の455kHzであるべきところ2.8kHzほどセンターがずれているのは確認済でしたから、 AM IFチェインを調整します。

    AMの中間周波調整箇所は、セラミックフィルタCFTとAM中間周波トランスIFT-Aの2か所。 ところがIFT-Aは調整しずらいところにあって・・・ 以前やったようにシャシーフレームからPCBを取り外すところまでやればいいのですが億劫で・・・ IFT-Aのセンターは457kHzあたりにいたので、 IFT-AはそのままにしてCFTを457kHzに調整を取り直しました。 結果全体的にほんのわずか感度アップ。





    あわせてBFO周波数を457kHzに調整しなおしました。

2023-03-19 AM中間周波数を457kHzに調整しなおし BFOも457kHzに調整






SSB/CWの復調音質不良

    ICF-5800は、AM受信でBFO ON時はFM中間周波第5増幅と兼用の2SC710でプロダクト検波をさせています。 しかしCWもSSBもFT8も復調品質は明らかに悪いです。 これもスカイセンサー5800なんてこんなものなのか、それともこの個体はどこか調子が悪いのか。 なにか簡単な手当てで改善できないものでしょうかね。

   




アンテナを延ばさなくても

    5800の受信感度は優秀です。 短波の国際放送を、まるでローカル中波AM局のようにロッドアンテナを延ばさずともきれいに受信することができます。

    「アンテナを延ばさずとも聞こえるのだからこのラジオは感度が良い」と当時の小学生はみなそう思ったことでしょう。 私もです。 おそらくそれを狙ったのでしょうね、 匡体内でプリント基板のアンテナ回路とロッドアンテナをつなぐワイヤは、 わざわざ遠回りしてぐるっと配索されています。 内蔵ホイップアンテナを延ばさなくてもこのワイヤで電波を拾っているわけです。

    そしてこれは、ほかのプラスチックキャビネットのポータブルトランジスタラジオもみな同じですが、 すぐ近くのほかの電気器具・電子装置から出たノイズをなすすべもなく受けてしまうことを意味しています。 PCやディスプレイから出る放射ノイズを嫌って離れたところに屋外アンテナを設置し、 ノイズを受けにくい同軸ケーブルでアンテナから受信機まで引っ張ってきたとしても、 受信機本体がノイズを受けてしまうのは防げません。

    良い受信機とは、アンテナをつながなくてもノイズでチューニングメータが大きく振れる機械のことではなくて、 アンテナをつながないときは何も ― ノイズさえ聞こえない機械のことなのです。 当時の小学生はそのあたりは分かっていませんでしたね。





    5800は背面に外部アンテナ接続端子を持ちます。 短波で長距離受信を狙うなら外部アンテナの使用は不可欠、 だから外部アンテナ接続端子は不可欠な装備でした。 当時の小学生は、これがついていないラジオなどは最初から話題にしようともしませんでした。

    けれど今になって5800を見てみると・・・ この外部アンテナ端子は、小さなキャパシタを介してロッドアンテナにつながっているだけなのです。 ロッドアンテナ用に設計されたアンテナ回路はハイインピーダンス設計で、 数メートルのワイヤーで十分な感度が得られるように配慮されている半面、 低インピーダンスの本格的なアンテナをつないでも本来のゲインは得られない、 ということになります。

    大型の低インピーダンスアンテナを使うのなら、 受信機側をハイインピーダンスにできるアンテナチューナの併用が望まれます (ハイインピーダンスのアンテナを低インピーダンスのアンテナ入力につなぐための「普通の」アンテナチューナとは逆の動作ですね)。 そしてさらに高感度を望んで広帯域のプリアンプでも入れようものなら、 ダイヤルは一面の放送局だらけになります。 さすが外部アンテナ! さすがアンテナカップラー! さすがプリアンプ! ダイヤルが放送局だらけだぜ! と当時の小学生は喜ぶわけですが、 これは高周波増幅段を持たずミキサ前の同調回路が1段しかない5800ではミキサがオーバーロードして混変調が起こりまくっている状態なのです。 本来放送局などありもしない周波数でさまざまな局がひしめいて聞こえる、 それを「すごい感度!!」と喜んでいたわけですね。

    ただでさえ混変調に弱い5800で、ラボの個体ではAGC制御を外してしまいましたから、 さらに問題は深刻になっているはずです。 幸い、アンテナを長くし過ぎないように気をつけていれば大きな問題とはなりません。





室温センサー5800

    パーフェクトにはほど遠いながら信号強度による受信周波数変動は大きく軽減されましたので、 JMHのファクシミリを受信してみます。 7.795MHzのJMH2は、テストチャート送信前の2130JST頃になると受信状態が悪化してしまいます。 チューニングメータ指示が3を割り込むと復調音はノイズに埋もれ、 きれいな受像はできなくなります。 今夜は2200JST直前でやや持ち返してメータ読み3~4、良好に受信できました。

    ICF-5800の局部発振周波数は室温の変化にも敏感に反応してしまいます。 ファクシミリ受信中に受像が黒っぽくなってきたら、 部屋のドアを開ければ15秒ほどで画像が白っぽくなります。 受信周波数の微調を部屋のドアの開け閉めで行うってなかなかステキです。





    ファクシミリの受像にはK.GさんのKGFAXを使っていますが、 同期が外れてしまうケースが多くて苦労します。 どうやらこれは受信機のSSB復調品質の良し悪しがけっこう効いているようですね。 今夜は比較的良好に受信できたものの、この受信機ではけっこう辛いときがあります。 SSB/CWの復調音質が悪いことの直接的な表れと思います。

2023-03-20 ファクシミリ受信をトライ






今回はここまで

    今回はここまで。 22年前に大きく失望した周波数安定度を、 完璧とまでは言えないものの、 CW/SSB受信に関してとりあえず実用になるレベルまで改善できました。 それが何らかの故障あるいは劣化であったのか、 それともスカイセンサー5800の当初からの弱点であったのかいまだ不明です。 後継機スカイセンサー5900の回路を見ると、 ダブルスーパーヘテロダイン化されているのはよく知られた変更点ですが、 その第1局発はトランジスタ2石を使用、 第1ミキサもトランジスタ2石の差動型になっていて、 個々の回路ブロックも大きく進化しています。

    5800のフロントパネルに小さく入っている"SSH"は、 "Super Sensitivity / Super Selectivity / High Fidelity"の意味らしく、 当時のソニーの自信作であることを誇っていたようです。 しかし"SSH"の中にStabilityは謳われていないあたりが当時のポータブルラジオへの期待値を示しているとも思えるし、 FETの採用はFM受信回路だけでAM受信回路には関係がないし、 イメージ妨害や混変調特性についても重要視されてはいなかったようですね。 小学5年生にとっての憎いライバル機に抱いていたハイパフォーマンスの強烈な印象を、 いまでは等身大のポータブルラジオ機として冷静に見られるようになりました。 もう一回りしてもっと技術が身に付いたなら、 プロダクト検波の復調品質改善にトライしてみなよ、自分。

2023-03-24 作業終了






SONY in 1975

    おまけ。1975年10月の日付のあるカタログです。 いつになってもワクワクしますねえ。







> 次の作業・・・ KOSMOS 70 Yahre Radsiomann 短波受信機


(ここで2年10ヵ月のブランク)


ベストパートナー

    ミズホSX-1プリセレクタ 、 故障品だと思っていたのは実は自分の勘違いで、 正常に動作していることがわかりました。 なので、ラボの受信機でそれを一番必要としているのは・・・ スカイセンサー5800ですね。 まさに同世代の製品だし、 プリセレクタは5800の最大の欠点であるイメージ混信妨害の酷さを救ってくれるはずです。

    確かに、条件がよければイメージ混信をほぼ聞こえないレベルにまで排除できます。 右の動画の例はすこし極端かもしれませんが、 5800の欠点の一つ、低調波イメージの混信。 13.750MHzの信号が、 ICF-5800のダイヤル位置6.420MHzで聞こえてしまっています。

(13750 / 2) - 455 = 6420

    14MHzと6.5MHz。 さすがにこれだけ離れていれば、SX-1でばっさり落とせます。



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    ICF-5800で6.115MHzのラジオNikkei RaNi Musicを聞いていると、 モールス信号が聞こえることがあります。 これは7.025MHz±3kHzの40メーターバンドのアマチュア局のイメージ混信です。

6115 + 910 = 7025

    このケースもSX-1を6MHzに合わせれば7MHzのアマチュア無線の信号はきれいに落とせます。


    しかし、 8.828MHzのVOLMETを聞きたいのに9.740MHzのRTI 台湾国際放送のイメージが8.830MHzに入ってきてしまう問題。 これは厄介です。 台湾国際放送の信号はあまりに強力で、 SX-1では歯が立ちません。

    右の動画では8.828MHzにシグナルジェネレータで断続信号を出しています。 これが聞きたい信号を模擬していますが、 RTIを回避することができずにいます。

2026-01-15



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    SX-1の効果が十分に発揮できないのは、 ICF-5800は筐体内アンテナ回路配線が長く、 5800本体だけで信号を拾ってしまうため。

    5800のメイン基板からロッドアンテナまでの配線を切り離してみましたが、 基板上のパターンの這いまわしだけで妨害波をしっかり受信してしまっています。 ICF-5500ではこの手軽な方法でかなり効果があったのですが、 5800では効果が薄いですね。 基板にパターンカットを入れる程度の工作は必要なようです。

2026-01-15





    ICF-5800で7.795MHz JMH2を受信すると、 8.705MHzの強力なスロットマシンがイメージ混信で入ってしまいます。

8705-910 = 7795

    SX-1を入れてやるとスロットマシンはきれいに消えますし、 イメージ周波数に何も信号がなかったとしてもそこにいるノイズも消してくれるので、 ノイズも減ります。 今回は過去にないほどにきれいに気象ファクシミリが受像できました。 以前はICF-5800はファクシミリは苦手と思ってたのですが、 イメージ妨害のためだったのかもしれません。

2026-01-16

    昨日の5800はじゅうぶんウォームアップしたので奇跡的に周波数変動がほぼありませんでしたが、 電源投入語1時間、内蔵BFOでJMH3を受像すると、周波数ドリフトは明確。 きちんと周波数を合わせても、天気図を一枚受像する間に画面はどんどん黒くなっていってしまいます。

    2枚目はBFO OFF。 シグナルジェネレータでキャリア周波数13.986.6MHzをアンテナにルースカップルで注入して復調したもの。 きれいに見えています。

2026-01-17






2023年のつづきを

    SX-1を使えば、 聞こえているのがそのダイヤル位置の本物の信号なのか、 それともイメージ混信なのか、 たいていの場合で判別がつくので便利です。 しかしあれですね、 ICF-5800で聞こえる短波放送の約1/3はイメージ混信だと言い切ってしまっていいような気がします。 8MHz帯でラジオ放送が聞こえるならばほぼ例外なく9MHz帯のイメージ混信ですし。 5800はすごい、ほかのラジオでは弱くにしか聞こえない局がたくさん聞こえる! でもそれは、そういうことだったのですね。

    イメージ妨害耐性の無さは5800の味わい、そういうものだということにしておいて、 2023年の整備の続きをしましょう。 前回の整備では、 局発のひどいふらつきの対策としてAMミキサにAGCをかけずゲイン固定にする改造を実施しました。 チャープ特性も我慢できるレベルになっています。 ただしこれはおそらく対症療法で、 真の原因はどこかに残っている可能性があります。

    もうひとつはSSB/CWの復調音の悪さでしたね。 いままで5800のプロダクト検波やBFOの仕組みを正確には理解していませんでしたから。 今回は回路図を写経しながらじっくり読み、 仕組みを理解するところから始めましょうか。

    およそ2週間の写経作業でできあがった回路図は右。 これは作業が進むにつれ改訂していきます。






プロダクト検波は具合よさそうだよ?

    2023年に書いていたSSB/CWの復調音質問題は、 昨日のきれいなファクシミリ受像の様子を見るとそんなにひどいとも思えなくなってきました。 いっぽうで、あれ? むしろFMの音が明らかに悪いです。 リキャップした方がいいのかもしれません。

    5800の電解キャパシタでFMのときだけ使われるのは、レシオ検波のC78 10uFだけ。 まずは狙いをつけてこれを交換してみようか。 あとはFM局発の電源電圧フィルタ C4 100uFの可能性もありますね。 これが完全に容量抜けになれば、 スピーカの音声出力波形に応じてわずかにFM局発のコレクタ電圧が変動し、 局発周波数が変動して、結果としてFM中間周波にさらに自分でFMをかけてしまう形となってしまうはずです。

2026-01-17


    でもちょっと待って、 いままではイヤホンジャックから音声信号を取り出して外部アンプとスピーカで聴いていたけれど、 REC OUTから取り出した場合は普通の音質だぞ? これはオーディオアンプ部で音質劣化が起きているのかも。

    右の動画はREC OUT取り出しで外部パワーアンプ&ブックシェルフスピーカ使用。 ミズホSX-1でイメージ周波数側のノイズも低減できていて、いい音で鳴っています。

    さらに、外部アンプにつなぐときはREC OUT端子よりもMPX OUTから検波出力を取り出すのがさらに好都合ですね。 これは ICF-1100D も同じ。

2026-01-18



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原因はこれかも

    回路図の写経を続けていて、気がつきました。 ICF-5800の音が悪い問題は、自分の勘違いのようです。 5800のイヤホン端子のマイナス側はグラウンドコモンではなく、 ここからプリアンプにBASSコントロールの低域フィードバックがかかっています。 イヤホン端子にグラウンドコモンのプラグを挿し込んで外部ミキシングアンプの入力につなぐと、 外部機器のグラウンド電位との違いがいろいろ悪さをするみたいです。 だから、REC OUTあるいはMPX OUT端子だと音質は良好なのでしょう。 それに、内蔵スピーカで聞く分には音質の悪さは感じられないというのも説明がつきます。 2023年にSSB/CWの音が悪いと思ったのも、 イヤホン端子から信号を取り出していたためなのだろうと思います。

    うーん、5800のイヤホン端子の回路、 なんでこんなことしているのでしょう。 なにか意図、あるいは制約条件でもあるんだろうか。

    ICF-5900 ではイヤホンジャックのスリーブはすごく普通にグラウンドコモンになっています。 スピーカ+からプリアンプにBASS低域フィードバックする仕組みは同じなのですが、 5900のほうが「普通の」つなぎ方をしているように思えます。

    ところでさらに気がついたのですが、 ボリュームコントロールのポテンショメータに入ったC93とR81は、 ひょっとしたらラウドネス効果を持たせているのでしょうか? 5800にはラウドネススイッチはないのでラウドネス回路はないと思っていたのですが。

2026-01-19






2石ボルテージレギュレータ

    2週間に及ぶ写経の修行がおわりました。 自分でもあきれるほどにバカバカしい手法ではあるのですが、 仏教の経典の写経が今も行われているのもおそらく同じ理由・・・ じっくり時間をかけて向き合った分、 眺めるだけでは気づかないさまざまなことに気づけます。

    「トランジスタ2石使用の本格的レギュレータ使用」とは5800のカタログのうたい文句の一つですが、 回路図を見るとこの電圧安定化回路は簡易式と言えるもので、 ツェナーダイオードのような素子は使われていません。 制御用トランジスタのベース―エミッタ電圧特性を基準として使っています。 乾電池消耗による電源電圧低下の影響は抑えられるものの、 温度特性はあまりよくないのかもしれません。 もしそうなら、ここの電圧安定度を改善したら周波数ドリフトを改善できたりしないでしょうか?

2026-01-22






お背中あっためてみましょうねー

    5800メイン基板はんだ面のパターンを眺め、 ボルテージレギュレータの配策を調べました。 レギュレータ出力電圧をデジボルで読めるようにテストピンをつなぎ、 60W白熱電球を用意して、お背中あっためてみましょうねー、きもちいいですよー。





    というわけでICF-5800ボルテージレギュレータの温度環境感受性を測定してみました。 電源をONすると、ボルテージレギュレータ出力電圧は約7分で安定しました。 レギュレータ回路そのものの自己発熱はそのくらいで温度平衡になるみたいですね。

    つぎに、夢と時空の部屋のドアを開けて冷たい空気を入れると、電圧は高まります。 電圧が変化している途中でドアを閉めると、電圧は下降傾向に転じました。

    ここで60W白熱電球を点灯。 電圧は急速に落ちていきます。

    電球を消すと電圧はもとの室温のときに戻ります。 室温に馴染むには30分程度かかるように見えます。

    ICF-5800のボルテージレギュレータは、 乾電池の消耗や音声出力による電源電圧変動の影響を受けないように考慮されたものです。 当時のACアダプタには安定化回路は入っていませんでしたから、 コタツのサーモスタット動作に伴うAC100V電源電圧の変動などにも効果はあったのかもしれません。 しかしその回路は簡易なもので、 外部安定化電源で動作させる場合は内蔵安定化回路の温度特性の悪さがかえって局発周波数の変動を招いている、 と言えそうです。






グリーンLEDレギュレータ

    5800のボルテージレギュレータの出力電圧は2V。 オリジナルのレギュレータとは別に2V安定化電源回路を追加して、 その電圧でAM局発トランジスタを動作させることを試してみます。

    さてどんな方法にしようかな。 ツェナーダイオードに比べれば温度安定性は劣るかもしれませんが、 LEDの順方向電圧を使ってみましょう。 部品入手性も含めて、手軽にできる方法です。

    手持ちのLEDをいろいろ試すと、 グリーンLED1個でちょうど順方向電圧2.0Vが得られます。




    グリーンLEDレギュレータをメイン基板はんだ面に仮配線し、 JMH3を受像したらきれいに受像できました。 こりゃいいやと思ったら、 残念、まだ温度変化で局発周波数は変化してしまいます。

    ICF-5800のAM局発トランジスタは、 FM受信時は中間周波増幅第1段として動作します。 このときこのトランジスタのベース電圧はレギュレータの出力電圧2.0Vからとられています。 なのでグリーンLEDレギュレータでサイドエフェクトがないか、 FM受信もテストしました。 すこし局間ノイズが増えたかな? 実用にはまったく問題がありません。

2026-01-25






FT8にトライする

    7MHz帯のFT8受信を試みましたが、 信号強度依存の周波数変動がわずかに残っており、ほとんど復調できません。 信号強度依存の周波数変動低減はひきつづき努力すべき。

    周波数変動に加え、 強力な信号が複数折り重なる7MHz FT8では帯域内混変調も明らか。 これはプロダクト検波のダイナミックレンジの問題かも。 信号が強すぎるとBFOが負けてしまうという感じです。 この問題はDX-LOCALスイッチをLOCALにすればある程度緩和できます。

    もっともこのBFOが負ける問題は、 AMミキサにAGCを掛けるのをやめて固定ゲインに改造したことが影響しているのかもしれません。






ミキサ電源を安定化する

    現状で、DX-LOCALを切り替えると復調トーンが1kHzくらいずれます。 はたしてこれはどういう理屈なのだろう。

    回路図を読むと、DX-LOCALスイッチをLOCALポジションにしたときにダイオードD2とD3がオンになり、 アンテナからの信号をC48でシャントする仕組みです。 いわゆるダイオードスイッチ式ですね。

    LOCALにすると、ダイオードの順方向電流のぶんAMミキサ段の電源電圧が下がり、 ミキサとバッファのトランジスタのVccがごくわずかに下がって、 局発周波数に影響しているんじゃないでしょうか?





    DXのまま、あるいはLOCALのままでも、信号強度による周波数変動は起きているわけです。 これはどういう理屈だろうか? メイン基板のパターンを追い、AMミキサと局発バッファトランジスタの電源をデジボルで測定できるようにし、 RF信号の強さを変え、電源電圧がどう変わるか見てみました。

    すると見事に、信号強度 (横軸=チューニングメータの振れ具合)の変化に応じて、 回路電源電圧があきらかに変化しています。

    ではこれを安定化したらどうなるでしょうか?





    AMミキサとAM LOバッファへの電源供給ラインをR33のところでパターンカットし、 外部安定化電源装置 でつくったDC5.0Vで駆動してみました。 すると、おお! 信号強度による周波数変動は大幅に減りました! 7MHzのFT8の受信中、7.077MHzで注入しているテスト用パイロット信号のスペクトログラムがすっきり直線になっています。

    ICF-5800のAMミキサとAM局発バッファの電源は、 6V非安定Vcc系の最下流からとられています。 信号強度が変化するとAGCのかかり具合が変わり、 中間周波段の消費電力は大きく変わります。 その影響でミキサとバッファの電源電圧も変動し、 その影響でバッファトランジスタのベース接合容量が変化して局発周波数の変動を招いている・・・ と解釈するのが正解なようです。

2026-01-27 AMミキサと局発バッファを安定化電源で駆動: 信号強度に呼応した周波数変動は大幅改善






まだどこかに

    AMミキサとAM LOバッファを定電圧動作させることにより信号強度依存の周波数変動は大幅改善しました。 まあもうAM受信には全く問題ないレベルですし、 SSB電話や電信を聞くのにも問題はほぼありません。 でもまだパーフェクトではないようです。 DX-LOCALスイッチを操作したときの周波数変動は明らか。 チャープテストでもわずかな変動は残っています。

    そしておそらくこのために、SSB電話の受信ではピッチがまだ不安定で気持ちよくありません。

    さあて、これはどういう理屈なんだろう。 BFOの周波数は十分安定しているように思えるのですが、 それを含めもう一歩調査を進めるべきかなあ。



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ボディエフェクト

    この5800には明らかなボディエフェクトがあります。 AMラジオ放送受信になら気になりませんが、 SSBのゼロイン、 とくにラジオファクシミリのチューニングにはとても気になってしまいます。 でも、まあ、こんなものとして放置かなあ。



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レギュレータ組み込み

    AM局発用のグリーンLEDレギュレータと、 AMミキサ用の5Vレギュレータを組み込みました。 5Vレギュレータには小型のHA178L05を使用。 パターンカットは入れてしまったものの、 どちらもメイン基板をシャシーから外さずに簡単にリバートできる取りつけとしました。

    これで電源電圧由来、 ならびに信号強度 = AGCレベルに由来する受信周波数変動は大きく低減されたはず。

2026-02-07 レギュレータ組み込み






依然として周波数ドリフト

    朝、夢と時空の部屋の室温がゆっくり上昇しつつある状態で5800の周波数ドリフトの様子を見てみます。 WSJT-Xのスペクトログラムは復調ピッチがゆっくり高くなっていきます。

    このとき5800背面を白熱電球で温めると、復調ピッチは落ちます。 この変化は白熱電球ONと同時に遅滞なく発生しますから、 グリーンLEDへの加熱が主要因でしょう。 白熱電球による変化は2分ほどで落ち着いて、 もとの度合いでゆっくり復調ピッチが高まっていきます。

    背面からの白熱電球による加熱は、 部品面側のバリコンやダイヤルメカにはすぐには効かないはずです。 ゆっくりした変化はバリコンやダイヤルメカに起因しているのではと思います。
   




    チューニングスピードをSLOWにしたときは、 ダイヤルのバックラッシュもかなりあります。 バックラッシュがあるだけではなく、 ダイヤルを再微調して手を放しても、 そのあと1分ほどは最後にダイヤルを回そうとした向きに周波数が動き続けてしまいます。 わずか100Hほどではありますが、 これはラジオファクシミリを受信しようとするときはかなり厄介です。

    これを見ると、 温度による周波数ドリフトはやはりダイヤルメカのわずかな温度による伸縮が効いているのではないかと思います。

    これに加え、AM DX-LOCALスイッチを切り替えたときに500Hzほど、 またSX-1プリセレクタのAMPスイッチをOFFにしてスルーに切り替えると数100Hzほど、 受信周波数は変動します。 AMミキサはAGCを切り離して固定ゲインにし、 またそのVccもレギュレータで安定化したにもかかわらず、 ミキサ入力の負荷でわずかに周波数が変動してしまうわけです。 これは数時間にわたってゆっくり変化し続ける性格のものではありませんが、 AMミキサが周波数変動の機序の一部であることには間違いがなく、 また簡単には改善できそうにありません。






RF注入法にしてみたけれど

    とまあ、レギュレータ2個追加というお試しをしてみたものの、 FT8をデコードするのはとても難しいです。 ラジオファクシミリを受像するには絶えずダイヤルを微調する必要が・・・ いや、微調するとバックラッシュで周波数が1kHz近く吹っ飛ぶからそれもできません。 部屋のエアコンを入れてもエアコンは室温を±0.1℃に保つことはできません。

    結局、SSBとCWなら聞き取る分には問題なし、 10分間手放し受信は厳しい。

    局発の安定度が足りないのなら、チート技だけれど外部シグナジェネレータでRFキャリア注入すればFT8は調子よくデコードできるよね。 そう思ってFT8連続モニタを始めたら、 深夜1時から翌朝8時まで、 無人になった夢と時空の部屋の室温は約7℃下がり、 5800はドリフトしてFT8信号がパスバンドから完全に外れてしまいました。 次の晩はエアコンを入れっぱなしにしてみたものの、やはり3時間ほどで周波数ずれで無感に。 RF注入法・エアコン作動でさえ、一晩連続受信は無理でした。 現状では残念ながら、 5800の周波数安定度はやはりAMラジオ放送を1時間聞くのがいいところといった感じです。

    それでもがんばって、RFキャリア注入法で2日と10時間 14.074MHz FT8を連続受信してみた結果は右。 グリッドロケータを含むメッセージは2万回以上デコードできていて、 世界中からの電波が受信できています。 アフリカは少ないですが、それでもカナリア諸島とケニアが聞こえています。 5800、すごいね。

    これはWSJT-X 3.0.0rc1で受信したログで、 Reduce Fause Decodeにチェックをいれてありますが、 明らかなフォールスデコードが1回ありました。 それでもバージョン2.6に比べればフォールスデコードは大幅に減っていて、いい感じです。






第3巡整備はこれでひとまず

    これで第3巡整備はおしまいにしましょう。今回のサマリーは:

  • 内部回路詳細が理解できた。
  • 5800のイヤホン端子のスリーブはコモングラウンドになっていないので、外部アンプにつなぐとひどい音になってしまう。 外部アンプはMPXジャックから取り出すこと。
  • ロッドアンテナ配線を切り離し、近くのノイズ源の影響を低減した。
  • プロダクト検波回路は正常かつ良好に動作している。
  • ボルテージレギュレータは簡易式。 AM局発トランジスタをグリーンLEDレギュレータで動作させ、温度特性向上を試みた。 結果は今一つだけれど。
  • AMミキサの電源電圧がAGCに呼応して変化してしまい、受信周波数の変化を引き起こしている。 専用の5Vレギュレータで動作させたら周波数の短時間のふらつきが大幅に低減できた。
  • チューニング減速ユニットのバックラッシュが大きい。 分解整備で良くなるか?
  • アンテナ負荷ならびにDX/LOCAL操作での受信周波数変動がある。
  • ボディエフェクトが明らか。SSBで正確にゼロインしようとするとかなり悩ましい。



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    トランスオーシャニックへの憧れ

        ところで今回気がついたのですが、 1973年製のスカイセンサー5800の内部回路は、 1971年のソニー・ワールドゾーン9、CRF-5090とよく似ています。 というより、ワールドゾーン9をショルダーポータブル機として再設計したものがスカイセンサー5800だ、 といえそうです。 (なおワールドゾーン9でのSSB/CW検波は、BFO信号をAM検波段に注入する極めて旧式な回路で、 ここはプロダクト検波回路とした5800のほうが進化した設計になっています。)

        そしてワールドゾーン9の筐体デザインは、 明らかにゼニス トランスオーシャニック ロイヤル1000そっくり。 CRF-5090のデザイナーは高性能ポータブル短波ラジオの代名詞であるトランスオーシャニックに強く影響されてオマージュとしたのか、 それとも企画当初から米国販売を重視した営業部門が、 デザイナーにトランスオーシャニック・ロイヤルのイメージを持たせることを要求したのか。

        ロイヤル1000 / ロイヤル3000は開閉式フロントカバーをもち、 そのためにフロントパネル両サイドに「壁」の構造を持ちます。 クロームめっきされたこの「壁」の構造が、 ロイヤルを模したワールドゾーン9のデザインを経て、 フロントカバーをもたないスカイセンサー5800にも受け継がれているわけですね。 5800の両側面の黒色レザーを思わせるプラスチック仕上げも、 トランスオーシャニックの影響を受けているのかもしれません。

        他のスカイセンサーシリーズ機には見られない、 フロントパネル両サイドのクローム仕上げの「壁」をもつ5800の特徴的な筐体デザイン。 どうやらこれは、 ワールドゾーン9から受け継がれた、トランスオーシャニック ロイヤルへの憧れなのでしょう。

       





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    2001-03-21 Created. Dial mechanism and speaker problem corrected.
    2001-03-29 Cleaning and reassembling completed. Improvement requires further effort.
    2001-10-21 Added block diagram. Thank you Hama san!!!
    2002-07-27 Revised links.
    2002-08-24 Reformatted.
    2005-06-20 Reformatted.
    2007-10-12 Reformatted.
    2023-04-04 Updated. [Noobow9200B @ L3]
    2023-04-09 Updated. [Noobow9100F @ L1]
    2024-06-02 Updated. [Noobow9100F @ L1]
    2024-10-20 Corrected typo. [Noobow9100F @ L1]
    2025-02-20 Converted to UTF-8. [Noobow7400 @ Naruto]
    2026-01-25 Updated. [Noobow9100G @ L1]
    2026-01-30 Updated. [Noobow9200B @ L3]
    2026-02-12 Updated. [Noobow9100G @ L1]