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National Panasonic RF-877
"Cougar No.7"

Portable Shortwave Receiver
(1973)



レーダースクリーンの中の宇宙

    なにかの雑誌で見た東芝サウンド750GTVが気に入っておねだりしたものの、 家に来たのはナショナルクーガNo.7。 かなり失望はしたものの、小学4年生にとってすごいマシンを買ってもらったことには変わりがありませんでした。 短波とは何であるかもろくに理解していなかった小学生にとって、 レーダースクリーン風のダイヤル盤に不思議な音が広がる短波バンドはまさに未知の宇宙でした。

    クーガNo.7は私にとって最初の短波ラジオであり、 忘れることのできない日々を共にしたマシンでしたが、 やはりいつのまにか家人に捨てられてしまいました。 もう一度手にしたいなあとは思いつつも、この手のモデルは日本では異常なほどの高値がついてますし、 思い残すことはないと思えるほど使い込んだつもりでしたし、 そもそも短波受信機として冷静にみればRF-877は何ということのないモデルですから、 今まで触手は動かしていませんでした。 が、ある日疲れきった自分の心を癒すために秋葉原病院をさまよっていたら、ジャンク屋にRF-877が。 値段も案外に安く、その日の治療として購入しました。

    ICF-5900 のときと同様に、いやそれ以上に、 どこかにしまいこんでいた自分のラジオがようやく出てきたという気持ちになりました。 ラボのチェアにゆっくりと腰を沈め、あらためてこのラジオを手にとってみると、 25年以上ぶりのはずなのに、昨日まで使っていたかのような錯覚さえ覚えたのです。

2003年 RF-877 再購入






整備計画

    DC6Vジャックから電源を供給すると、コントロール類に多少のスクラッチを示しながらもクーガNo.7は吠え出しました。 各バンドの感度も音質もメータの動きも良好。 外装も損傷はなく、清掃と軽整備だけで完全復帰できるものと思われます。 ただし入手して2年近くたって電池で動作させてようとしたら、 全く電源が入りません。 DC6Vジャックの接触不良でしょう。端子を見るとかなりひどい酸化を呈しています。 修理に困難はないはずです。

2004-05-16 乾電池で動作せず DC6Vジャックからの給電では動作する






トーンコントロールが固着した

    2021年、夢と時空の部屋を片づけつつ久しぶりに通電。 ボリュームとバリコンにガリが出ていますが回路動作は正常、 一晩クリフォード・ブラウンを聴いて過ごしました。 そのうち分解清掃したいですね。

    ・・・と思ったら、トーンコントロールつまみが固着してしまいました。 あれれ。 同形状のポテンショメータなんていまどき手に入るかなあ。

2021-05-24 トーンコントロールつまみ固着 回らず






トーンコントロール復活

    東芝トライエックス1600 が完全ではないとはいえ復活しました。 フツーの3バンドポータブルラジオとしてみるとTRY Xはとてもいい音で鳴ります。 2週間ほどBGM機として楽しく聞けました。

    では同時期の同じような構成のクーガNo.7と聞き比べてみようかな。 ラジオを引っ張り出して、ああそうだ、トーンコントロールが固着していたんだ。

    リアパネルを外しただけではプリント基板の半田面しか見えず、部品面を見るにはさらに分解する必要があります。 面倒だなあと思い、 ためしにフロントパネルのつまみの孔から細いノズルでCRC 5-56をほんのわずかポテンショメータのシャフトに吹いたら、 つまみは軽く回るようになりました。 これでいいや。 ほんとうは5-56はあまり良くないんですけれどね。

2022-09-21 トーンコントロールシャフト注油





    メモリ機能修理を終えた ケンウッドPWR18-2TP直流安定化電源装置 を使ってDC6Vを給電。 RF-877の動作時全電流は40mA、ダイヤルライトを点灯すると140mA。

    いまクーガNo.7を聞くと、音量はたっぷりで目立つひずみもないのですが、 FMでも高音の伸びが今一つに思えます。 トーンコントロールを時計回りいっぱいにしてもきらびやか感が少ないです。 これは電解キャパシタ劣化とかが効いているのかなあ? 次の課題は分解とキャパシタ交換ですかね。

    短波を受信するための特段の工夫や機能は持っていないクーガNo.7ですが、 ダイヤルは糸掛けにしてはバックラッシュは少なく、引っかかりもなくてスムースな動き。 ムービングフィルム方式に比べてフリクションが少ない円形目盛盤方式のメリットでしょう。 右サイドに設けられた大型のチューニングつまみで繊細な同調操作もできます。 このダイヤルのつくりの良さ、操作感の良さはRF-877の美点ですね。

    当時はベトナムの声放送もよく聞いていました。 1975年04月30日のサイゴン陥落の日もこのラジオでベトナムの声を聞いていたのですが、 小学生の私にはその内容は理解できず、ただ大変なことが起きたらしいという強い印象だけが残りました。 そして今はベトナムの仲間と毎日ネットワーク越しに仕事をする毎日。 時代は変わるものですね。

2022-09-21 作業終了






> 次の修理・・・ ラファイエットHA-225のつづき


アール・エフ・ラジオ日本が濁る

    ここのところ第3研究所には ICF-5500 を持ち込んであるのですが、 ダイヤルの動きが渋くてどうにも短波を聞くのが楽しくありません。 ので、RF-877を持ち込みました。

    災害対応も考えて乾電池駆動せようと思い乾電池も持ち込んだのですが、 電池スプリングが腐食していて通電ません。 そういえばこの個体、入手以来いちども乾電池では動作させていなかったんですね。

    DC電源ケーブルを用意して菊水PAK35-10A安定化電源で動作させてみたのですが、 この電源装置はスイッチング電源で、短波帯にひどいノイズをばら撒いてしまい、使い物になりません。 なので電池ボックスを使って乾電池4本をDC外部電源ジャックから給電しました。

    第3研究所は屋外アンテナは張れないしそもそも立地が良くないので短波はほとんど楽しめません。 なのでアール・エフ・ラジオ日本をRF-877で聞いてみたのですが・・・ あれえ? なんだか低域の音が濁ってる。 ラジオタイランドを聴いている限りは気がつかないのですが、なんだかわずかに歪っぽいです。 ん? でもNHK東京第1はきれいに鳴るなあ。

    どうもアール・エフ・ラジオ日本だけ、低域がオーバーロード気味になります。 このときRF GAINを最低に絞ると、低域のひずみは許容範囲になります。 でもMW DX-LOCALスイッチをLOCALにしたのでは低域の歪は変化がありません。 どういうわけなんだろね。

    AM810kHz AFN Tokyoもわずかに低域のひずみが感じられました。 やはりRF GAINを絞ると歪は軽減します。 それに、RF GAIN絞り切りのちょっと手前で受信音がモーターボーティングすることがあります。 どうやら受信機側の問題のようですね。 AGCフィルタの劣化でフィードバックの不安定が起きてしまっている、 とかなのでしょうか?

    いっぽう、アール・エフ・ラジオ日本のFM補完92.4MHzもわずかに低域が歪んでいる気がします。 この局に固有の送信音質の関係もあるのでしょうか?

2023-06-20 アール・エフ・ラジオ日本の受信音が濁る




    RF-877で1422kHzアール・エフ・ラジオ日本の受信音の低域が濁る問題、ICF-5500でも同じような音の傾向。 でも1990年代製のシャープのCDラジカセで聴くとほとんど気にならず。 やはり受信機側の問題と、アール・エフ・ラジオ日本に特に顕著な何かの両方があるようです。

    アール・エフ・ラジオ日本が特にというのは、 低域をあまり絞らずにいる (ことによると増強) かもだし、 そもそもほかの局はウッドベースが豊かなジャズを流していないからなのかもしれませんね。

2023-06-29 原因切り分け






整備

    中央研究所に持ち帰ったRF-877を整備します。 ケースを開けて、まずはバッテリスプリングのサビ落とし。 買ったばかりのリューターの出番です。 見栄えはきれいではありませんが、 接触部分のサビは除去できて、電池駆動できました。

2023-07-11 電池ボックススプリング サビ落とし





    つぎに、シャシーから基板を外さず手の届く範囲内で、すべての電解キャパシタを新品交換してしまいましょう。 ひとつひとつ交換しては動作テストして、差があるかどうか見ながらののんびり作業。

    おそらく初段低周波増幅段の47μFを交換したとき、明らかに音量がアップしました。





    初段低周波増幅段周りの別の47μFを交換したときには、 明らかに高音の伸びが良くなりました。

    ダイヤル盤の下あたりには未交換のキャパシタが残っていますが、 今回はここまで。 結果、音量が大きくなり、ブーミーさがなくなり、自然な豊かな音質になりました。 アール・エフ・ラジオ日本の低域ひずみ問題は、おそらくこれで直ったのではないかと思います。 となると、ICF-5500も同様の問題を抱えているということだなあ。


2023-07-11 電解キャパシタ交換





    キャパシタ交換したRF-877を外部スピーカにつないでテストしてみます。 乾電池動作。 16cm級のブックシェルフスピーカを迫力ある音で鳴らすにはRF-877のパワーアンプは駆動力不足。 低音部に限界が来ます。 音量控えめで静かに聞くなら合格点です。

    RF-877のパワーアンプは入出力ともトランス結合のプッシュプル。 内蔵スピーカを駆動するのにちょうどいいように設計されている、という感じですね。 RF-877のトーンコントロールは、 とてもシンプルなキャパシタシャント方式。 時計回りいっぱいでフラットになり、反時計に回すにつれ高域シャントの効きが強くなります。 高域ブースト機能はありません。

    FMを受信すると、バリコンの接触不良によるガサガサ音が出ていることがわかります。 しばらくダイヤルをくるくる回しただけでは治りません。 これは直らないね、たぶん。

2023-07-12 オーディオ段試聴






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2004-05-16 Created.
2006-04-15 Updated.
2022-09-22 Updated. [Noobow9100F @ L1]
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2023-09-30 Updated. [Noobow9100F @ L1]