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SONY ICF-5500 "SkySensor 5500"

FM/AM/SW Receiver
(1973)
Serial: 940389

    Prior to the fanatic shortwave radio boom in Japan back in 1970s, the Sony ICF-5500 had defined the fundamental cosmetic feature of the famous "SkySensor" generation to come. The 5500 did not have any special provisions for shortwave listening except external antenna terminals. Its single shortwave band covered only up to 12MHz, had no bandspread nor a BFO. Noteworthy features were the provision for the external FM stereo adapter and built-in FM transmitter. It was a a kind of the general public's receiver aiming to the younger generation.

    After the acquisition of this radio the light service was performed. No electronic service was necessary except the scratchy potentiometer treatment. Missing one of the tone control knobs is a problem, but the biggest issue is the irritating backlash of the tuning mechanism. Electronic performance is fine and the audio is rich and crisp; regaining the smooth tuning will give the true life back to this handsome receiver, however an easy attempt of applying lubrication oil to the dial mechanism did not solve it.


SONY ICF-5500 Receiver



Skysensor 5500

    ムービング フィルム ダイヤル、当時としては大型のチューニングメータ、ブラック基調の端正でシャープなルックスにグリーンのアクセント。 スカイセンサーシリーズの意匠エッセンスはここで完成していたんだな・・・と、ICF-5500を見ていると思います。 いっぽうで、間延び感を低減させるためのフロントパネルのデザイン処理はまだ不足を感じるし、受信機としては強力なアピールポイントもなく、 深夜放送を聴く一般ユーザ向けの機能。 いろいろな意味で1970年代の短波ブームの前夜を感じさせるモデルと感じます。

    ICF-5500のAMモード(MW/SW)の回路は、高周波増幅なし、他励式周波数変換、中間周波3段増幅、ダイオードAM検波、 ICによる低周波増幅そしてプッシュプル電力増幅という構成。 中間周波数は455kHz (UK向けは468kHz)。 BASE/TREBLEのトーンコントロールとラウドネススイッチはすべてパッシブ型。 本体側面のイヤフォン端子は抵抗を介さずにスピーカと切り替えているので、外部スピーカの接続が可能。

    ICF-5500は短波受信機としては一般用の普及回路構成です。 リアパネルのアンテナ端子は10pFのキャパシタでホイップアンテナにつながっているだけなので、 基本的にハイインピーダンスアンテナ用。 本格的な同調形アンテナを使う場合は別途アンテナカップラ等を使わないと本来の性能は出ません。 DX-LOCAL感度切り替えスイッチはMWだけで有効で、これはアンテナコイル2次巻線に直列に抵抗を入れるだけのシンプルなもの。 フロントパネルには"IC+FET"の表記がありますが、FETが使われているのはFM高周波増幅用。 中波・短波にはFETは使われていません。

    海外向けモデルICF-5500M "Captain 55" はヨットマン向けの機能を持っており、 1.6MHz~4.5MHzをカバーするマリンバンドがついて計4バンド構成。 短波は4.5MHz~12MHzをカバーするものになっています。 Captain 55はFMワイヤレスマイク機能は持っておらず、 フロントパネルのPTTスイッチ部は"Captain 55"と書かれたオーナメントが入っています。

    電源電圧は4.5Vで、単2乾電池3本で駆動。 短波帯動作時の全電流は32mAです。 本体内には逆接続保護ダイオードや電圧安定化回路などはありません。

    この個体はトーンコントロールのつまみとバッテリコンパートメントカバーが失われていて、 外観も前オーナーによる小傷やいたずらの跡が残り、 ダイヤルの動きも渋く、総じて程度としては良いとはいえません。 電源スイッチレバーは折れていますので、 電源を入れるにはゼンマイタイマーを巻いて最大60分連続で動作できます。

    ダイヤルはチューニングスピード切り替えもなければファインチューニングもバンドスプレッドもなく、 ふつうの3バンドポータブル。 この個体ではチューニングのフリクションが大きくてぐにゃりとしたバックラッシュがひどく、 中波やFMはともかく短波のチューニングフィーリングはかなり不快です。 ムービングフィルム式の弱点、というところでしょうか    [追記: 後日 修理できました]

    しかし弱った電池でも案外にいい音でしっかり鳴ってくれるし、 ビンテージプレミアムを扱う気負いを感じる必要もないので、 時たまラジオ番組を楽しんだり、 自作トランスミッタの調子を見たりするための簡単なテスト機としていつもワークベンチ脇に置いています。 けっこう気に入っている、ということかな。 短波の国際放送を聴くニーズがほぼ消えた今ではいい音で聴ける3バンドモデルは貴重ですしね。

2000-10 ICF-5500入手


SONY ICF-5500 Receiver



15年ぶりに開けてみて

    短波帯の受信性能も良好で、外部アンテナ端子もついているし、 これでダイヤルがスムースに動けば国際放送のニュース番組も楽しめるのだけれど。 注油くらいで直らないかなと、入手して15年も経って再び筐体を開けました。

    スクリュー4本を外すとリアパネルは簡単に開き、ご覧のとおりの昭和の低価格民生機の風景が広がります。 ジャンプワイヤやフェライトコアバーアンテナの配線、ビビリ防止スポンジの糊付けなど、 家計を支えたパートタイムのお母さんたちの姿が浮かびます。

    製品企画から指定された筐体サイズを実現しつつ最大限の感度を求めたからなのか、 それともコスト面から新規寸法で特注できずに既存の部品を使わざるを得なかったのが、 フェライトコア バーアンテナ全長は筐体内法よりも数mm長く、それを収めるためにケースはアンテナ部だけ拡げられています。

    パネル前面・上面・側面のノブを抜けば、 すべてのコンポーネントが取り付いたプリント基板はケースから工具なしで抜き出すことができます。 ただしこの作業性は良いとはいえず、 パートタイムのお母さん泣かせだったのではないかと思います。 このへんは昔は工場での生産性向上の工夫を軽視していたと伝え聞く当時のソニーらしさ、なのかもしれません。

    スピーカフレームの4箇所の取り付け穴のうち3箇所だけがフロントパネルに生やされたドグに嵌るようになっていますが、 ネジ等では固定されていません。 スピーカはフロントパネルとプリント基板とリアパネルで挟まって固定されているだけです。 これはこういうものだったのか、 それとも前オーナーが分解した後にスピーカの取り付けネジを取り付けるのを忘れたのか。 それでも本機は普通の音量で鳴らす限りは取り付けガタによるビビリ音は出しません。


SONY ICF-5500 Receiver

    筐体内部の上半分にはムービング フィルム ダイヤルを含む減速機構、インジケータ、 ON-OFFタイマーユニットなどののコンポーネントがあり、 プラスチックのサブシャーシを使ってプリント基板に取り付けられています。

    ON-OFFタイマーはいまなら制御チップのシリコンロジックで、 あるいは制御ソフトウェアのわずかなコードで実現されるであろう機能は、 この時代では実際ゼンマイ時計です。 透明プラスチックハウジングの中でゼンマイ時計がかちかち動いているのを見るのは楽しいですが、 製作の手間もコストもかかったことでしょう。

    バンド切り替えに使われる基板上のスライドスイッチを 筐体右側面の3ポジションロータリーレバーでプリント基板上のバンド切り替えスライドスイッチを動かすために、 プラスチック製の回転-スライド機構が使用されていたり、 ポップアップロッドアンテナというギミックを実現するための機構も見えます。


SONY ICF-5500 Receiver

    ダークグリーンのムービング フィルム ダイヤルとインジケータは、 この時代のソニーの香りのエッセンスだと思います。

    本体上面のメータ切り替えスイッチによってこのメータはチューニングインジケータとオーディオVUメータに切り替えることができます。 メータは右がゼロ点になっている逆振れタイプです。 メータが逆振れタイプのため、チューニングインジケータは無信号時に左に、強力な信号で右に振れます。 これは通信機型受信機のSメータの振る舞いと同じで、 この一点だけでスカイセンサーシリーズはナショナルクーガシリーズを蹴落とすことができます。 VUモードにすればメータはパワーアンプ出力レベルを示します。 部屋で静かに聞く音量ではメータはほとんど動かないので寂しさを感じます。

    メータのすぐ左脇にはメータ/ダイヤル照明用のムギ電球が置かれています。 電球バルブはグリーンで塗られており、透明プラスチックによるライトガイドでフィルムダイヤルとメータを照らします。 電気を消した布団部屋で使うには実用にはなりますが、明るさと配光はやはりお世辞レベル。 大きな電球を使ってしまうと乾電池駆動時にライトON/OFFで電源電圧が変動し短波の局発周波数も変動してしまうでしょうから、 この程度のランプしか使えない、という理由もありそうですね。


SONY ICF-5500 Receiver

    You see this is a Japanese version of 5500; the mark "JJY" is for a standard time and frequency station in Japan, equivalent to the WWV or WWVH in the U.S. "NSB" marks show the only-one shortwave broadcast station in Japan, the Nippon Shortwave Broadcasting, now renamed to Radio Nikkei. FM band covers from 76 to 90 MHz which is a Japanese FM broadcast frequency allocation.

    筐体右側面のダイヤルつまみで回される金属シャフトはプラスチックギアで減速され、 糸掛けでバリコンホイールを回しています。 さらにそこから糸掛けと小さなギアトレインでムービングフィルムを駆動しています。

    ダイヤルしぶりの主因はバリコンシャフトが軽くは回らないことで、 これ以上分解しない範囲でシャフトに潤滑油を注油してみました。 わずかな改善は感じられたのですが、バックラッシュなしの快適チューニングにはなりませんでした。 AMやFMでは十分実用的ですが、9MHz帯以上の短波の国際放送のチューニングはかなりストレスが溜まります。 しかしいじり壊してしまうリスクを覚悟しない限りはこれ以上の改善は無理そう。 残念ですが課題は今後に持ち越し。 む、この程度じゃRestoration Projectなどと呼べないな。

2015-01-17 ダイヤル渋り修正トライ


SONY ICF-5500 Receiver

    Sluggish dial movement could not be improved with an easy lubrication.


これは不思議

    ICF-5500は1ヶ月に1回くらい使います。 乾電池の持ちが良いのは美点で、この程度だと電池交換は年に1回くらいで済むのですが… 本日まるっきり電池がアガっていたので交換。 でも新品を入れてもダメ。 あ、すこし液漏れしてたか。 リアパネルを開けて、電池ボックスのターミナルをヤスリで磨き、OK。

    しかしちょっと奇妙なことに気がつきました。 電源スイッチをOFFにしても、メータが原点にまで戻らず、すこしだけ振れているのです。 これはメータ本体がイカレかけているのか。 さらに調べて、そうじゃあない、電源スイッチOFFなのにどういうわけかどこかに電流が流れ続けているみたいです。 LIGHTスイッチを入れると指針が動くし、 バンド切り替えを行っても動きます。 メータのTUNE/VU切り替えを行っても動きます。 不思議なこともあるもんだ。

    おそらくどこかでわずかなリークが発生しているのでしょう。 電源スイッチOFFでもわずかに電流が流れていれば、長期間放置の間に電池が完全放電してしまうでしょう。 液漏れが加速する要因でもあります。 さあて、これは修理アイテムだ。 でも、今は元気なし。 使わないときは電源スイッチをOFFにするだけではなくて、電池を抜いておくことにします。

2016-10-08 電源スイッチOFFなのにメータ指針が動く症状を確認



電源スイッチレバーをなんとかする

    電源スイッチレバーは折れているので、本機を使うときはゼンマイタイマーを巻きます (OFFタイマーとして使う)。 でもまあ、スイッチレバーがないのはみっともないので、 細いアルミパイプを接着剤で取り付けました。 スイッチON/OFF操作できる強度はさすがに無理でした。 あくまで飾り。

2020-04-25 電源スイッチダミーレバー装着




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バンドセレクタ

    第3研究所で短波放送を聞こうかなと思って5500を持っていきましたが、 さてラジオタイランドでも聞こうかなと思ってスイッチを入れると短波が全然聞こえません。

    ケースを開けてシャシーを取り出し、 バンドセレクタスライドスイッチに接点清浄剤を噴射。 じきに直りましたが、 ケースの組みなおしにまたまた一苦労。 できあがった時はラジオタイランドの番組はとっくに終わってしまっていました。

2023-06-27 バンドセレクタ接点回復






暗電流修理

    さて、 CRV-1/HB の改善が一段落ついたから、 5500の暗電流修理でもしようかな。 まずは簡単なのに手こずるシャシー取り出し。

    安定化電源 のDC4.5Vを外部電源ジャックにつなぎ、 途中に テスタ を入れて回路の全電流をチェックします。

    すると、スイッチOFFのときも4mAほど流れ続けていることがわかりました。 スイッチONのときは35mAかそこら。 以前よりも4~5mAほど消費電流が増えていますね。 どこかでレアショートみたいなのが起きているのでしょう。 あちこちぐりぐりウイグルテストしてみましたが漏れ電流は安定しています。





    原因は電源スイッチでした。 接点部に酸化物が生成されて、OFF時でも500Ωほどの導通が発生してしまっていました。

    この電源スイッチは折れたレバーの代わりにダミーのアルミパイプを接着する細工をしたので、 接着剤が接点部に流れ込んでしまったのかなとも思いましたが、 それが原因ではなかったようです。 ケース上面に設置されているこのスイッチ部にむかし砂糖の入った飲み物がこぼされて接点部に侵入し、 とかだったのかな?

    スイッチ周辺/内部には合成繊維くずが見られますが、 これはうちのラボ起因のものとは思えず、 最初のオーナーさんの部屋のカーペット由来なのではと思います。





    在庫のトグルスイッチに交換しました。 見た目はかなり違いますけれどね。 ちいさな取り付けプリント基板の追加工だけで機能回復するんだからヨシ。





    動作チェック。 スイッチOFF時の暗電流はゼロ、 無信号動作時の消費電流も4mA下がりました。 修理完了。 今回は久しぶりにテスタだけで診断とテストができた修理でした。

    ケース組付けの際に、スピーカをフロントパネルにネジ2本で固定しました。

    LIGHTスイッチは昨年2023年10月の分解時にレバーを折ってしまったので、 接着剤で取り付け。 強度不足で実際には使えませんが、 まあおフトンにはいって枕元にこのラジオを置いて電気を消してゼンマイタイマーをセットしておやすみなさいすることはこの先ないでしょうから、 こんなもんでいいです。

    まる2日間在宅勤務のBGM機として使用しましたが、動作は安定。 本機は入手後アライメント取り直しは行っておらず、電解キャパシタもすべてオリジナルのまま。 内部回路的には良好な状態を保てています。 受信感度は各バンドとも良好。 短波の周波数安定度も国際放送を聞く分には問題なく安定、 選択度も国際放送用として適度。 AM復調音質も良好で、 REC OUTジャックに出ているラインレベルの音声信号を外部のパワーアンプに入れて良いスピーカで聞けば、 いい音でラジオ番組を楽しめます。

    外観的にはやはり失われたトーンコントロールノブに適当なものを探し出して取り付けてあげたいなあ。 実用的にはこれまた失われた電池カバーをなんとかしてあげたいところです。 ともあれ、いつでも使えるスタンダードトランジスタ3バンドラジオとして、 5500、いい感じです。

2024-01-10 電源スイッチ交換修理 完了



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> 元の作業に戻る・・・ CRV-1/HB リーインカーネイション2


ダイヤル渋りにトライする

    ICF-5900J の整備が完了したので、 スカイセンサー続きで5500を引っ張り出しました。 この5500、たまに引っ張り出して短波を聞くのですが、 室内ノイズから逃れにくく、 つい CRV-1/HB コリンズ51S-1 あるいは 八重洲FRG-7 などの通信型受信機に戻ってしまいます。 強力な国際放送を聞こうとしているので感度や安定度はさほどに高性能が求められるわけではないのですが、 金属シャシーで作られた通信型受信機はアンテナをつながないと何も聞こえず、 つまり室内の様々な機器からのノイズに対しては強いわけですね。 トランジスタポータブルは、 そのプラスチックキャビネットが弱点なわけです。

    どう工夫したらいいだろうと思ってリアカバーを開けたのですが、 仮にノイズが低減できたとしてもこの5500には短波受信機として致命的な欠点があるよなあ・・・ ダイヤルの渋り。 なんとかならないだろうか? 再チャレンジしてみようかな?

2025-01-25 分解整備開始



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ダイヤルドライブを分解する

    今回はダイヤルメカニズムの分解・清掃を試みます。 もう一度、仕組みをよく見ておきましょう。 チューニングノブが回すシャフトは金属製で、プラスチックギアで減速されて糸かけプーリーを回します。

    コードはバリコンプーリーを回し、 同時にフィルムドライブプーリーを回します。 フィルムドライブプーリーの回転はギアでフィルム下側スプールを回します。

    プーリー部のコードスリップはなく、 動きが渋いのはどうやらフィルムドライブのほうに思えます。





    ダイヤルコードの張り方を中心にあちこち写真を撮っておいて、 いよいよコードを取り外し。





    チューニングシャフト、リダクションギアシャフトそしてムービングフィルム駆動用のプーリーギアシャフトは、 1つのサブユニットとして構成されていました。 意外なことに、バリコンプーリーとバリコンシャフトは簡便なはめ込みです。






フィルムドライブプーリーギア

    ダイヤル渋りの原因がわかりました。 フィルム駆動用の、プーリーと一体になったギア ― ICF-5500の日本語版サービスマニュアルでは「ギヤA」と呼ばれているもの ― の回転が非常に重いです。 ギアとシャフトの回転が渋っています。

    しばらくの間、潤滑剤を隙間に流し込んでくるくるやったりいろいろ試しましたが、 回転抵抗はいっこうに軽くなりません。 経時変化で樹脂材料に寸法変化が起きてしまったのでしょう。

    いったんギアをシャフトから抜くことができれば、 シャフトを磨いて細らせるなり、 ギア穴の内径を拡大するなりして渋りを解消できるはずですが、 抜け止めワッシャがとてもいい仕事をしており、外れてくれません。 材料は極端に脆化しているふうではありませんが、 誤って強い力や衝撃を与えてしまうとギアが割れたり歯が欠けたりしますから、 慎重のうえに慎重を期して作業します。





    やはり抜け止めワッシャを破壊するしかないようです。 リューターに細いビットを取り付け、シャフトもギアも傷つけないように注意しながら、 ワッシャの一部を削り落としました。

    これでギアが抜けると思ったのですが、シャフトとギアはきつくはまっていて、 ギアを抜くには精密マイナスドライバーを使って抉る必要がありました。

    ともかくもギアがシャフトから抜けたので、 紙やすりでシャフトを細らせてみたり、 ギア穴内径を丸棒ヤスリで拡大したりを、 慎重に少しずつ進めました。

    30分ほどの作業ののち、 ギアはシャフトにスムースに嵌り、 軽く滑らかに回るようになりました。





    ダイヤル渋りの原因がわかり対処もできたので、 これでダイヤルを組み戻せばOKのはず。 でも慌てると失敗するでしょうから、 のんびり休憩しましょう。 この手の作業では、イライラ・カリカリしないようにセルフコントロールすることが成功への早道です。 納期の制約のないアマチュアの楽しみの作業ならなおのこと。

    FMなら、180度回転でダイヤル全域を亘ってしまうバリコン直接チューニングでも簡単に選局できますね。

    テスト音源は豚乙女 パプリカ さんのアルバム"東方猫鍵盤8"からトラック4、 「儚きもの人間」(原曲:「柳の下のデュラハン」)。

2025-01-25 フィルムドライブプーリーギア渋り対処完了



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はんだクラック修理

    ↑ の動画を見ると、バンドセレクタつまみに触れるたびにプツプツ音が途切れていますね。 そのたびごとに、チューニングメータの針が大きく振れて0を指します。 なにか力が入ると起きるみたいです。

    そういえば以前から、バンドセレクタを操作すると接触不良のような症状は出ていました。 どこかに何か隠れているようです。

    プラスチック調整棒であちこちつついてテストしていくと、 どうやらバンドセレクタスライドスイッチの筐体中央側に力を入れると顕著に症状が出ます。 基板のはんだ面を見ると、クラックと思しきはんだ異常が確認できました。

    フラックスを塗り、新しいはんだを足して再はんだ処置。 動作不良はすっかり消えました。 快癒です。

    あわせ、バンドセレクタスイッチ駆動機構も清掃と注油を行いました。 ナイロン樹脂成型部品で作られたこのメカ、 筐体右側面のバンドセレクタつまみの回転運動の向きを90度変換し、 プリント基板上のスライドスイッチを動かす直線運動に変換しています。 スタイルと操作性のための機構なわけですが、 こういう機構を見るのは楽しいです。 設計した人も、いろいろな方法が考えられる中でのベストなソリューション選びを楽しめたのでしょうね。






ダイヤルメカニズム組み戻し

    リューターで破壊した抜け止めワッシャは、 うまいこと再利用することができました。 使用中に抜け落ちる心配はなさそうです。 ノートに書いておいたダイヤルコード取り回し図、 サービスマニュアルそして撮っておいた写真を見ながら、 ダイヤルメカニズムを組付けます。

    コードのひっかかり解消やフィルムユニットの適切なテンション出しに時間がかかりましたが、 どうにかスムースに動くように組み立てられました。 チューニングノブを取り付けて試してみると、 チューニング操作はスムースになっています。 やったね!

    スムースにはなったものの、糸掛けドライブにつきもののコード伸びによるごくわずかなバックラッシュは残っています。 気になるほどのものではなく十分に実用的ですが、 ギアドライブほどのダイレクト感はありません。

    このダイヤルメカニズム、 5500のマイナーチェンジや 海外向けのマリンバンド付きICF-5500Mではギアドライブに変更されているようですね。 ダイヤルコード張りの作業工数を減らすのが目的だったのでしょうけれど、 かっちりしたフィーリングのギアドライブの5500を試してみたいです。






AM IFT調整

    この5500、受信性能は良好なので再調整の必要はないと思われますが、 ついでなのでAMのセラミックフィルタ内蔵型中間周波トランスの調整を行いました。 予想通り大きな狂いはなく、 それでも調整後はわずかにチューニングメータの振れが増しました。

    さらについでに電解キャパシタの全交換でも・・・とも思いましたが、 現状で音質音量に不満はないので、 後日の楽しみに取っておきましょう。






ダイヤルスケール調整

    ICF-5500はフロントパネルを外した状態でないとダイヤルアライメントが取れません。 シャシーにはフィルムダイヤル合わせの刻印があるものの、 それだけだと正確にダイヤル目盛りを合わせることはできないので、 仮ポインタを取り付けて短波のダイヤル調整をしました。

    ダイヤルフィルムの刻印はやや不正確であるとみえて、 4MHz-12MHzの2点で調整すると7MHz/10MHzあたりは200kHz近い誤差が出ます。 実用性を考え、5MHzと10MHzの2点を合わせました。 まあこのダイヤル目盛りでは、 100kHz程度の誤差は致し方ありませんね。






ロッドアンテナを切り離す

    さて、ICF-5500、今回そもそもやりたかったことを試します。 室内ノイズの影響を低減するために、 内蔵ロッドアンテナを切り離して 「外部アンテナをつながないとノイズさえ聞こえない」受信機に改造したかったのでした。

    プリント基板上部でロッドアンテナへの接続ワイヤを切り離せば、 アンテナとなるのは短波用アンテナコイル1次側から外部アンテナ端子に伸びる10cmほどの基板パターンのみになります。 ここを切り離した状態であれば、 室内ノイズはほとんど聞こえなくなります。





    内蔵ロッドアンテナを使うときはスイッチでも取り付けてこの配線をつなげばいいかな。 でも今回はお手軽に、ロッド暗転接続ワイヤをちょっと延長して端子を取り付け、 外部アンテナ端子部に引き出しておきました。 内蔵ロッドアンテナを使いたいときは引き出したワイヤをアンテナ端子につなぐわけです。

    とても簡単でお手軽な改造ですが、結果は上々。 外部アンテナを接続したとき、 室内のさまざまな電子機器からのノイズはぐっと減りました。

    リアパネル裏側にアルミ箔でも貼ってシールドにしてみるかなとも思いましたが、 まずはこの状態でもいいかも。 しばらくこの状態で使ってみます。

    まあしかしあれですね、 5500ではバリコンで同調されるアンテナコイル1次側がほぼそのままアンテナ端子に引き出されているわけですから、 アンテナ同調のQも同調点も外部アンテナの状態で変化してしまいます。 外部アンテナを使うと、イメージ混信抑止性能はかなり低下してしまうのではないかなあ。





局発の安定性

    ラボのICF-5800個体 では、信号強度に応じて局発周波数が大きく変動してしまうという症状を示していました。 5500はどうだろう。 BFOを持っておらずSSBやCWを聞くことはないからあまり気になることはないとは思いますけれど。

    ICF-5500でJOZ6 6.115MHzを受信し、 そのときの局部発振器発振周波数6.570MHzの漏れをIC-706MkIIGMでUSBモードで受信して、 ビート音の変化から5500局発周波数の変動の様子を見てみました。

    結果、ご覧の通り、 室温変化を受けてゆっくり周波数が変化していますね。 トランジスタポータブル機としては普通だし、 むしろ変化は少なくて良好な部類に入ります。

    受信信号のフェーディングに呼応してわずかな周波数変動が観察されました。 が、変化しても100Hz程度です。 5500の回路構成ならこの程度は不思議ではありません。 し、ラボのICF-5800よりもずっと安定しています。 やっぱりうちの5800はどこかがヘンなんだなあ。

2025-01-26 局発の安定性を見てみる






調子いいね

    内部のアンテナ配線を切り離した結果は上々、 室内ノイズを受けにくくなり、 屋外ロングワイヤーアンテナで快適に短波放送を受信できるようになりました。

    それに何より、スムースなダイヤルで短波を探る操作を楽しめます。 ダイユルがスムースだとこんなに違うんだね。

    テストにラジオタイランドを・・・ と思ったら、今夜のラジオタイランドはなんか音声が途切れるというか音飛びするというか・・・ 楽しい放送局ですねここは。 今夜は何が起きるだろうと毎晩楽しみです。



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イメージは致し方ない

    5500は高周波同調増幅段なしのシングルスーパーヘテロダインですから、 当然イメージ妨害には弱いです。 右の動画では、9740kHzの台湾国際放送が、 910kHz低い8830kHzにダイヤルを合わせても強力に聞こえてしまっています。 このため、台湾国際放送の番組が終わる時間までは8828kHzにいるVOLMETを受信できません。 まあ5500はBFOがないからVOLMETは聞こえてもモガモガ言うだけですけれど。



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ロギングスケール

    ふと気づきました。 5500のダイヤルのロギングスケールの小目盛は、大目盛を7等分して刻まれているんですね。 これはびっくり、どういう料簡なのよ。

    そう思って5800や5900を見ても、 ロギングスケールはどれも使い物になりませんね。 5800は大目盛に数字が振られていないし、 5900の小目盛は大目盛を8等分しています。 スカイセンサーシリーズのロギングスケールは、どれも実用性がありません。

    同じ周波数直読できないモデルであっても精密なロギングスケールがあれば、 方眼紙に校正線図を描けば20kHzくらいまでは読めたものですが・・・ でもそれは、当時自分が使っていた RF-877 のダイヤルのロギングスケールが良く作られていたから、 だったのですね。 7等分の目盛りの読み取り結果を方眼紙にプロットするのはかなり面倒でしょう。

2025-01-29 スカイセンサーシリーズのロギングスケールの使いにくさに気がつく






ワイヤレスマイク機能の謎

    この5500は、自慢のワイヤレスマイク機能が動作しません。 PTTを押すとスピーカの音は切れ、メーターがスケール10固定になります。 ダイヤル周波数に信号は出ていません。

    ワイヤレスマイク送信時はメータは強制的にVUメータモードになって、 スピーカに話しかけた音量に応じてメータが振れるはずで、 音を入れていないときはスケール0を指示するはず。 ラジオ受信時にはVUメータはスピーカ音量に応じて振れますし、 無音時にはスケール0を指示します。 VUメータ回路の故障ではなさそう。

    まあまるでオマケの機能でしかないし、 使おうとも思いませんし、 修理しようとも思いませんが、 どういう理由で動作していないのかは知りたいかな。





    そう考えて、回路図を写経しながら動作原理を調べてみました。 すると・・・これは不思議だ。

    昔の中学校の技術家庭科課題のインターホンと同じように、 5500のワイヤレスマイク機能ではスピーカをダイナミックマイクロホンとして使います。 スピーカの音声信号はオーディオアンプで増幅されて、 その出力がAFC制御用のバリキャップに入り、 FM局発信号を周波数変調します。

    まあここまでは簡単に想像がつくのですが、 取扱説明書を読むと、 5500ワイヤレスマイクの送信周波数はダイヤル周波数と同じなのです。 FM局発の周波数はダイヤル周波数よりも10.7MHz低くなっています。 どうやってダイヤル周波数の信号を作り出しているのだろう。

    回路図を読むと、 ワイヤレスマイク送信時はどうやらFMミキサトランジスタを10.7MHzで発振動作させているようです。 局発周波数と10.7MHz発振を混合して、ダイヤル周波数の信号を作り出しているのだろうか。 5500のワイヤレスマイク機能を懐かしむブログ記事はいくつか見受けられますが、 その動作原理に言及した記事は見つかっていません。 かなりトリッキーなことをしていそうだぞ、5500。

    となると? ワイヤレスマイク送信時にオーディオアンプが激しく発振しているとか? そうであってもFM局発漏れをほかのラジオで聞いても、 なにかの音でFM変調がかかっているようにも見えません。 複数の故障が起きていそうな様子。 PTTスライドスイッチの複数個所故障がいちばん疑われますね。

    でもまあこれは・・・先々のお楽しみにしよう。

2025-01-31 回路図写経完了 FMワイヤレスマイク機能の動作原理を推測する






> 次の作業・・・ SBE SB-34 Sメータ回路の続き



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2025-01-31 Updated. [Noobow9100F @ L1]
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