Hallicrafters S-20R
"Sky Champion"
General Coverage
Shortwave Communications Receiver (1939-1945) |
1933年にシルバー・マーシャル社製造による最初の短波受信機S-1スカイライダーを発売して6年後の1939年、
ハリクラフターズ社はそのシンボルロゴを改めました。
大きな丸の中に英小文字の"h"をあしらったシンプルなマークは、
同年発売のS-19スカイバディとS-20スカイチャンピオンのスピーカーグリルのデザインに使用され、
新鮮なインパクトを無線愛好家に与えました。
以来この「サークルh」マークはハリクラフターズ社の全盛期を通じて使用されて親しまれることとなります。 |
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ハリクラフターズS-20Rスカイチャンピオン
は、4バンド切り替えで0.54MHzから44MHzまでの周波数をカバーする短波受信機です。
メタル管とGT管による9球構成の高一中二シングルスーパーヘテロダイン方式です。 S-20Rは1939年、少数しか生産されなかったS-20スカイチャンピオンの改良機として発売されました。 それまでのハリクラフターズ機は精密な目盛が刻まれたシルバーの円形ダイヤルが印象的でしたが、 S-20Rではダイヤル盤をプラスチック製にし、扇形のエスカッションをもつカバーで覆いました。 電源を入れるとダイヤル盤は内側からランプで照らされ、透過式照明が実現しました。 ダイヤル盤に使われている初期のプラスチック材は製造時は白色でしたが、光に反応してしだいに黄ばみ、 この時代のハリクラフターズは現在では例外なくアンバー色のダイヤルになってしまっています。 |
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S-20ではチューニング連動のロギング スケールでしかなかった中央のダイヤルはS-20Rではバンドスプレッド ダイヤルになり、
チューニングつまみが2つになりました。
一見Sメータ風に見えるデザインですが、メイン ダイヤルと同様にプラスチック製のダイヤル盤が中で回転する仕組みです。
S-20Rにはオプションで外付けSメータが用意されていました。 |
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このモデルは、戦前のハリクラフターズの受信機ラインアップの中ではミッドレンジ機といえます。
エントリーモデルとしては基本的に5球スーパー(高周波増幅なし、中間周波増幅1段のシングルスーパーヘテロダイン)である
S-19Rスカイバディ
があり、その上位として高一中二構成のS-20Rスカイチャンピオンが用意されていました。
最上位機種は、いうまでもなく通信型受信機の記念碑的存在であるSX-28スーパースカイライダー(1940)です。 S-20Rと同じ1939年のモデルであるSX-24スカイライダー ディフィアントはS-20Rと同じ9球シングルスーパーの4バンドモデルですが、 クリスタル フィルター/選択度可変機構/Sメータ標準装備/アマチュアバンドにキャリブレートされたスケールをもつバンド スプレッド ダイヤル・・・など、 上級アマチュア無線家向けの装備を持っていました。 資料によればS-20Rは第二次世界大戦が終わる1945年までの販売となっています。 戦後、エントリーモデルのS-19Rスカイバディはより低価格志向となり、 エコーフォンEC-1 / EC-1A/EC-1B を経て ハリクラフターズS-38シリーズ に進化します。 一方ミッドレンジ機であるS-20Rスカイチャンピオンは、 使用真空管やパッケージデザインをリニューアルされてS-40シリーズとなり、これまたミッドレンジクラスの人気モデルになりました。 ちなみにハリクラフターズの型番の"SX"はクリスタル フィルター装備の受信機、"S"はクリスタル フィルターなしの受信機を意味します (ただしVHF受信機にはこのルールは適用されません)。 初期のモデルではクリスタル フィルターがオプションで用意されていたものもあり、 たとえばS-16とSX-16はオプション装着のあり/なしの他は同一モデルです。 |
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S-20Rのフロントパネルのコントロールは、向かって左側から表のようになっています。 中央に2つならぶつまみは、左がメイン チューニング、右がバンドスプレッドです。 15年後の ハリクラフターズSX-96 のコントロール レイアウトも、基本的にはこれと大きくは変化していないことがわかります。 実はS-20RとSX-96のフロントパネルのサイズは幅47cm、高さ21cmと同一なのです。
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回路構成と使用真空管 S-20Rは高一中二のシングルスーパーヘテロダイン受信機です。 中間周波数は455kHzで、真空管構成は以下のようになっています。
標準的な高一中二シングルスーパーであるこの回路構成は、 1959年のS-108までの20年間、姿を変えながら受け継がれていきます。 |
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匡体構造 ケースの両サイドとフロントパネルは一枚物で、板厚1mmのスチール板をコの字型にプレス成型して作られています。 スピーカ部分はパンチング メタルでカバーされています。 エントリー機S-19Rにはない両サイドのシルバーのガーニッシュが上級機ならではの高級感を出しています。 ケース上面はロック機構無し・ヒンジ式のボンネットになっており、 シャーシ上面に簡単にアクセスできます。 |
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チューニング メカニズム ダイヤル盤は、メイン チューニングつまみと同一方向に回転します。 時計方向に回すと、受信周波数が高くなります。これはSX-96とは反対。 バンドスプレッド バリコンはメインの3連バリコンと一体化されており、チューニングつまみから糸掛け駆動されます。 バンドスプレッドつまみのシャフトにはフライホイールが取り付けられています。 バンドスプレッド ダイヤルは0-100のロギング スケールのみです。 バンドスプレッド バリコンのロータは、メイン バリコンのステータの間に入り込みます。 バリコンの中央セクションから周波数変換管6K8のグリッド キャップに接続されているのが見えます。 S-20Rスカイチャンピオンのバンド アレンジメントは以下のようになっています。
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高周波増幅回路と中間周波増幅回路 高周波増幅段と2つの中間周波増幅段には、 6SK7 リモートカットオフ ペントードが使用されています。 これらの段はいずれもAGC制御を受けます。 3本の6SK7のそれぞれのカソード抵抗はグラウンド側で1つにまとめられ、 RF GAINポテンショメータに接続されています。 すなわちフロントパネルのRF GAINコントロールは、これら3つの増幅段のゲインを同時に変化させます。 1939年のS-19スカイバディでは、これらの増幅段で使用されていた6K7から6SK7へのランニング チェンジが行われました。 S-19RおよびS-20Rでは当初から6SK7が採用されています。 6SK7は、1950年代後半にミニアチュア管6BA6に置き換わるまでの間、短波受信機の増幅管として広く使われました。 相互コンダクタンスは2000マイクロモーです。 |
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周波数変換回路 S-20での6L7混合/6J5局発のセパレート構成に対して、S-20Rでは周波数変換回路には 6K8 が使用されています。 6K8は図に示すような特殊構造をした周波数変換用の3極・6極複合管で、 カソードと第1グリッドは3極管部分と6極管部分に共通です。 6極管部分の第2・第4グリッドは同一のもので、 第3グリッドを取り囲む形でスクリーン グリッドを形成しています。 3極管部分は局部周波数発振回路として動作させ、 6極管部分で混合動作を行います。 局発部のグリッドが混合部の第1グリッドと共通になっているので、ここで局発信号が注入されることになります。 入力信号は管頂のグリッド キャップから混合部の第3グリッドに注入されます。 6K8はペンタグリッド コンバータ6A8に比べコンバータ ゲインは低いものの、 短波帯での動作がより安定しています。 6K8はAGCをかけることも可能ですが、S-20Rではそうしていません。 6K8はS-19R/S-20R/SX-24/SX-25などのモデルに採用されましたが、 すでに同1939年のSX-23スカイライダー23では改良型ペンタグリッド コンバータである6SA7が混合管として採用されています。 1940年のSX-28スーパースカイライダーでは6SA7を局発用と混合用にそれぞれ使う構成がとられました。 以降6K8が採用されることはなく、6SA7/12SA7の時代になります。 |
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検波・AGC・初段低周波増幅 6SQ7 双2極3極複合管が使用されるこの段はごく標準的なものです。 双2極管のふたつのプレートは並列接続され、検波回路を構成しています。 AUDIO GAINポテンショメータで音量調整が行われた後、3極管部で低周波増幅が行われます。 |
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ANL 双2極管6H6がANLとして動作します。 ANLのON-OFFはフロントパネルのスイッチで切り替えることができます。 |
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BFO 3極管6J5GTを用いたBFO発振回路はフロントパネルのBFOスイッチをONにすることでプレート電源が供給され、 発振を開始します。 発振出力はグリッドから取り出され、検波管のプレートに注入されます。 BFO発振周波数はフロント パネルのピッチ コントロールつまみで調整できます。 これは6J5GTのプレートに入った発振コイルのスラグ位置を変化させることにより行っています。 |
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音声出力回路とスピーカ 音声信号は出力用5極管6F6-Gで電力増幅され、ダイナミック型スピーカを駆動します。 ラボの個体では、6F6-Gの代わりに、後になって追加発表された6F6-GTが使用されています。 スピーカはパーマネント型ではなく、フィールド コイルを持ちます。 フィールド コイルはB電源回路の平滑チョークとしても機能します。 またオーディオ出力トランスはスピーカに取り付けられています。 ラボの個体ではスピーカはパーマネント型に改造されていました。 ヨークに取り付けられている出力トランスは当初のスピーカについていたものだと推測されます。 フロント パネルのヘッドフォン ジャックは標準モノラル ジャックで、 差し込むと出力トランスの2次側回路が開いてスピーカの音が止み、かわりに出力管の入力信号が接続されます。 すなわち、ハイ・インピーダンスのヘッドフォンを利用します。 |
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トーン コントロール 3段切り替えのトーン コントロールは、 出力管6F6Gのプレートをシャントキャパシタを介してグラウンドに落とすことにより実現しています。 この方式は低コストで実現できるものの、すでに中間周波段で高い選択度を持っている通信型受信機ではほとんど意味のない方式です。 が、出力管の歪によって生じた高域成分を減衰させてオペレータの疲労を低減する意味はあります。 あるいは、IFTの選択度があまり良くないのをカバーする意味もあるでしょう。 S-20Rではシャント キャパシタに直列に入るシャント抵抗を、 オープン(HIGH)/抵抗(MID)/短絡(LOW)の3通りに切り替えることができます。 特にLOWポジションにしたとき、シャント キャパシタには6F6Gのプレート電圧がそのまま印加されます。 このキャパシタがショート故障すれば、出力トランスの1次側巻線あるいはシャント抵抗器の焼損事故につながります。 キャパシタは無条件に新品に交換すべきでしょう。 |
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電源回路とスタンバイ スイッチ B電源の整流は、ST型の直熱型全波整流管80で行われます。 80のフィラメント定格は5V・2A、最大125mAの出力電流を得ることができ、5Y3-Gと能力的に等価です。 ラボの個体では、ST型ではなくGT型の外形をもつRCA製の管が使用されています。 ガラスにははっきり"80"と印刷されているものの、 フィラメント支持方式などの内部構造は5Y3-GTに近いようです。 ベースはオリジナル80と同じUX型4ピン。 整流回路はスピーカのフィールド コイルを平滑チョークとして用いています。 手元の個体ではスピーカをパーマネント タイプに置き換えたため、 後付けのチョークコイルをシャーシ上にむりやり取り付けています。 リヤパネルにある外部電源ソケットにDC340VのB電圧およびヒータ用の6Vを供給することでDC運用が可能です。 ここにオプションのバイブラパックを装着すれば、モービル運用ができます。 AC運用するときは、外部電源ソケットにショート・プラグを挿しておきます。 フロントパネルのスタンバイ スイッチは電源トランスのB巻線に入っており、 スタンバイ ポジションにするとすべての真空管へのB電源の供給が停止します。 |
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Sメータ出力 リヤパネルのSメータ接続用ソケットにはAGCライン電圧、B電圧、 ヒータ電圧および高周波増幅管のスクリーン電圧が出ています。 RF GAINコントロールを時計方向いっぱいにまわすとカチリとスイッチが入り、スクリーン電圧が出るようになります。 ゲイン コントロールを幾分でも下げた場合は、このスクリーン電圧は出力されません。 |
DIAL SETTING | BAND A | BAND B | BAND C | BAND D | ||||
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10% | 0.589MHz | 30dBμ | 1.822MHz | 0dBμ | 5.617MHz | 5dBμ | ---MHz | 無感 |
25% | 0.673MHz | 30dBμ | 2.069MHz | 0dBμ | 6.364MHz | 5dBμ | 18.113MHz | 45dBμ |
50% | 0.945MHz | 30dBμ | 2.848MHz | 5dBμ | 8.620MHz | 10dBμ | 24.602MHz | 60dBμ |
75% | 1.402MHz | 30dBμ | 4.112MHz | 15dBμ | 12.067MHz | 15dBμ | ---MHz | 不明 |
90% | 1.834MHz | 20dBμ | 5.265MHz | 25dBμ | 14.868MHz | 15dBμ | ---MHz | 不明 |
入手直後の状況観察通電をした以降、
スカイチャンピオンは段ボール箱に入れられて修理待ちのステータスになりました。
が、スペースがない第1研究所ではやや大柄なこの受信機を整備することはなかなかできず、
その後ポゴの誕生・仕事のトラブルとつづき、
段ボール箱に入れられ中央研究所に運び込まれたS-20Rがようやく箱から出て再び光を浴びたのは、
実に21年後でした。
しかしこれはコロナ禍で在宅勤務室が必要になり、容積率80%以上にモノが詰め込まれた保管室の整理作業をはじめたから。
長い間復活を待ちわびていたスカイチャンピオンにとっては、コロナ禍は災い転じて・・・だったのかもしれません。 2021-05-28 中央研究所 夢と時空の部屋 修理待ち機としてラックに設置 (このセクションは 2021-12-12 に Noobow5000 Windows2000 Professional上のXyzzy0.2.2.231で書きました) |
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2021年秋。
整備を終えた
コリンズ75S-1
は快調に動作しています。
ここ数年で急速に普及したデジタル通信モードFT8も快調に受信できています。
帯域幅わずか3kHzの周波数に複数の局が同時に運用でき、
目の前で世界のあちこちからの信号が同時に受信できているというのは今までになかった体験。
真空管式受信機で聴くデジタルモード、面白いね。   FT8を安定して受信するには、受信機は10Hzオーダーで復調周波数が安定している必要があります。 コリンズ75S-1は60年経った真空管式といってもその安定度の高さはピカいちですから問題なく受信できるわけですが、 ほかの真空管式受信機ではそうはいかないだろうなあ。 たとえばそこにあるハリクラフターズS-20Rは・・・ 1939年モデル、わがラボの最古参です。 これでは無理だろうなあ、 試してみよう。   コロナ禍の巣ごもりでラボの保管室の整理が進み、今年になってようやく段ボール箱から出てこれたS-20R。 早いもので、最後に通電動作させてから21年が経過しています。 電源を入れてみると、プツッという音は出ますが、パイロットランプは点灯しないし、 真空管のヒータも全く点灯しません。 これは・・・ 生命兆候が全くない。 2021-10-31 整備開始 生命兆候全くなし |
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お次は定番のオーディオ段テスト。
普通ならばボリュームコントロールのホット側に外部からオーディオ信号を注入するところですが、
ケースに収まった状態ではボリュームコントロール (AF GAIN) のポテンショメータには手が届きません。
なので回路図と配線を追いかけ、
オーディオ信号注入ポイントを探し、
信号を入れます。
すると、S-20Rは十分な音量と期待される音質で鳴り始めました。 しばらく同人ジャズアレンジを楽しんでいたのですが、 80年前のラジオに突然同人作品では困惑しているかもしれませんね。 そこでこの受信機が誕生した年 - 1939年のベストヒット曲を聴かせてあげることにしました。 この曲ならきっと、この受信機は聞いたことがあるはずです。 2021-10-31 オーディオ段正常動作開始 |
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この受信機はプレイ・スルーがとても大きいことに気がつきました。
正直、最初に電源を入れたときからこうだったのか、今となっては分かりません。
ボリュームコントロール (AUDIO GAIN)を目いっぱい絞っても、
結構な音量でスピーカから音が出続けるのです。   これはどうしてだろうかと考え始めていたら、 パリパリノイズが出始めました。 音量を絞り切れないならスタンバイスイッチで完全にミュートしてしまえばよいのですが、 パリパリノイズが出てしまうとBGMどころではないですからね、こちらが優先課題です。 さあて、パリパリノイズはどのキャパシタの劣化によるものかな? 初段低周波増幅3極管6SQ7のプレート電圧を オシロスコープ で観察すると、不定期に、ノイズ音と同時に、 約500mV程度のDC電圧シフトが観察されます (オシロは20mV/div設定、プローブは1:10設定)。 いっぽう、グリッドにもカソードにもノイズ波形は観測されません。 さらに、6SQ7プレートと、オーディオ出力管6F6GTのグリッドをつなぐキャパシタを切り離すと、 当然受信音声は出なくなりますが、ノイズも出なくなります。 このことから、6SQ7のプレート周りに問題があると推測できます。 |
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まずは6SQ7のプレートと6F6GTのグリッドをつなぐカップリングキャパシタを交換してみましょう。
ところが奇妙なことが。
カップリングキャパシタは0.02μFのペーパーキャパシタなのですが、
これを0.047μF新品に交換すると途端に音が小さくなるのです。 まったく説明がつかない現象。 あれやこれや数時間試し、 ようやく原因が判明しました。 ニチコンの新品キャパシタが不良品だったのです。 アナログテスタで抵抗値を測ると、 6kΩ程度を示しています。 これでは6F6Gのグリッドの電圧が高くなってしまい、 アンプとして動作しなくなるわけですね。 同じキャパシタはいつ買ったものなのか、 たぶん2000年ころに秋葉原で買ったのかも。 新品在庫は6個ありましたが、 このうち1個 (今回たまたま「引いた」モノ) が6kΩのリークを示していて、 別の1個はリークはないけれど容量少なすぎ。 残り4個は正常でした。 6個中1個しかないハズレ品を引くだなんて、 私は万一の万一に必要に迫られても、 ロシアン・ルーレットは応ずるべきでないと確信しました。 さてパリパリノイズですが、 まあ、よくあるパターンですね。 数時間を費やしてキャパシタを1個交換して、 全く変化なし。 2021-11-03 パワーアンプグリッドカップリングキャパシタ交換 C19 ノイズは変わらず |
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S-20Rのオペレーションマニュアルは2種類あって、ひとつがおそらく戦前バージョン、
もうひとつには1945年6月15日の日付が見えます。
これは大日本帝國が無条件降伏する2か月前。
ドイツが無条件降伏した5月08日にはすでにアメリカには戦争の結末は見えていて、
ハリクラフターズ社には軍需の急減が明らかに予測でき、
したがって民生機生産再開に向けて急速な準備をしなければならないことがわかっていたのでしょうか。 ハリクラフターズS-20Rスカイチャンピオンは1939年のモデルだから戦前生まれと思っていましたが、 資料によると戦時中は生産が停止されていたものの、1945年夏から生産が再開され、 1945年末まで生産されていたようです。 そしてラボの個体は、シリアルナンバーとフロントパネルのSky Championロゴのフォントから、 戦後生産モデルであると思われます。 ハリクラフターズ社は、 戦争終結とともに新しい時代にふさわしい新工場をイリノイ州シカゴ W 5th Avenue 4401番地に建設しました。 この工場は1945年から稼働開始したとされており、 であれば戦後生産のS-20Rはこの新工場で作られたのかもしれません。 QST誌1945年10月号の広告においてハリクラフターズ社は、 限定数量ながらアマチュア向け機器の製造と出荷が始まっていることを伝えています。 しかし大きな量産工場が1ヶ月・2ヶ月で建てられるとも思いにくく、 ドイツが無条件降伏する前から建設着手でもしない限り9月からの量産はできなかったでしょうから、 戦後生産ロットのS-20Rは従来工場の軍需ラインをピースタイム転換して生産したのかもしれません。 いずれにせよハリクラフターズ社は、第2次世界大戦の終結前後から新しい時代のモデルの準備を始め、 レイモンド・ローウィ氏をデザイナーに起用し、 エコーフォンEC-1A を再設計して S-38 を、 また戦前機S-20RをスタイリッシュにリパッケージしてS-40を世に送り出しました。 新工場は1965年まで稼働し、 建屋は1990年代までは倉庫として使われていたとのことですが、 いまでは更地になってしまっています。 |
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S-19スカイバディとS-20スカイチャンピオンはQST誌1938年05月号の巻頭広告2ページで同時デビューを飾りました。
価格はそれぞれ29ドル50セントと49ドル50セント。
いずれも、良い受信機を手の届く低価格でより多くの人に提供したいという創始者のWilliam J. Halligan氏の想いを実現したモデルです。
スカイチャンピオンの価格は先行していたスカイチャレンジャーIIやナショナルNC-80Xの半額。
同じ性能が半分の値段で手に入る、と広告に謳われています。
1939年の49ドル50セントは
The Inflation Calculator
によると2020年の937ドル45セントとのことですから、日本円ならざっと10万円。
20万円していた本格的受信機が10万円で手に入るとなれば、
ショーウインドゥを眺めることしかできなかった少年たちはアルバイトに精を出したに違いありません。 さらに身近な価格だったスカイバディはスカイチャンピオンとほぼ変わらぬルックスでしたから、 スカイバディを手に入れられた少年はみな誇りに思ったことでしょう。 いっぽうでスカイチャンピオンの匡体には最上位機スーパースカイライダーと同じシルバーのサイドガーニッシュが奢られ、 上級機の風格を得ています。 アルミ薄板をプレスして作られたこのサイドガーニッシュは、 ラボの個体では表面酸化に加えひどいタバコのヤニで茶色くなっていました。 ケースから取り外してシンプルグリーン原液でお湯洗いののち、軽くコンパウンドで光りすぎない程度に研磨。 すっきりきれいなアルミホワイトに戻りました。 2021-11-20 サイドガーニッシュ清掃 |
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狂わせてしまったBFOの再調整を行います。
6J5GT 3極管で発振されるBFO周波数はグリッドから取り出され、
ワイヤを6SQ7の2極管プレートへの検波入力ワイヤに巻き付ける形で注入されます。
このBFO信号注入ワイヤをみのむしクリップで噛んで
岩崎通信機SC-7202ユニバーサルカウンタ
に入れると、
BFO周波数を変動させることなく周波数を読むことができました。 BFO周波数は、フロントパネルのつまみでネジを回し、 このネジがBFO同調コイルのスラグコアを前後に出し入れすることによって調整されます。 ネジとつまみをつなぐジョイントの締めネジの頭は大きくなっていて、 つまみの回転角度を300゜に機械的に制限しています。 ジョイントの締めネジを取り外し、つまみの締めネジとして使われているイモネジを使ってジョイントを締め、 つまみを回してBFO周波数が455kHzになる位置にセット。 ジョイントを緩め、本来の頭の大きなネジにつけ戻して、 つまみ可動範囲のセンターになる位置で締めます。 これでBFOは455kHz±数kHzで可変できるようになりました。 BFOが使えるようになったのでSSBとCWの受信を試します。 AGCを切り、RF GAINを絞り、AF GAINを大きく上げた状態で受信。 ワイヤ巻き付け量が少ないと見えてBFO注入電力は弱く、 RF GAINを高くするとモゴモゴになって復調できず。 せっかくの高感度受信機でありながら、ゲインを高められないというのはもったいない話ですね。 短時間の変動がないわけではないし数分間の間にゆっくり受信ピッチは変化してしまいますが、 それでもCW受信トーンは十分にクリスプでチャープはなく、気持ちよく受信できます。 手を抜かずにRF GAINを調整している限りはSSBの受信音質も良好。 これならばと思ってFT8の受信にチャレンジしましたが、 あれ? 今夜はただの1回もうまくデコードできません。 最初にFT8のデコードがすくなくとも何回かできたときは、 音声信号はAM検波出力、つまりAF GAINのポテンショメータのホットから取っていました。 いまはスピーカ端子両端から音声信号を取り出し、PCのオーディオインターフェイスに入れています。 ひょっとしたらスピーカ端子からだと低周波増幅段で50Hz/100Hzのハムが混入してしまい、 FT8のデコードを妨害しているのかもしれません。 もしそうなら、FT8受信用にハムの影響を受けづらい小さいアンプをトランジスタかオペアンプで作り、 検波段からオーディオ信号をなるべく低負荷で取り出す方法がいいかな。 現状ではBFO注入レベルが低すぎるので、 ワイヤ巻き付けではなく、数pFのセラミックキャパシタを試してみましょうかね。 2021-11-21 BFO再調整 |
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ムラの濃い茶色に変色してしまったダイヤルディスク、
それがこの時代のハリクラフターズの証といえばそうなのですが、
やはりあまり楽しいものでもありません。
作り直してみようかな。 乳白色半透明のプラスチック板で円盤を作って、 目盛はプリンタで透明フィルムに印刷して貼り付けてやれば行けそうですね。 問題は、私はこの手の工作が子供のころからとても苦手だったということ。 はたしてできるだろうか。 半透明アクリル円盤を特注加工してくれるサイトがありました。 値段も手ごろだし、当然精度よく作ってもらうるでしょう。 でもプリンタでフィルムに印刷して貼り付けるのが果たしてうまくいくかどうか確信が持てなかったので、 とりあえずホームセンターで乳白色半透明の2mm厚のアクリル板と、 サークルカッターと、印刷フィルムを買ってきました。 慌てずのんびり作ろうね。 と、買ってきた材料を見て、ありゃ、 着手前に失敗しちゃった。 ・・・うちにはレーザープリンタなんかないよ。 2021-11-27 ダイヤルディスク用材料・機材購入 |
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買ってきたアクリル板を丸く切り抜くにしろ、
アクリル円盤を特注するにしろ、
それをバリコンシャフトに取り付けるのはどうやろう。
オリジナルのダイヤル盤はそのまま保管しておきたいので、
それを分解してハブ部分だけを取り出すということはしたくありません。
工作がヘタクソな自分でも確実に作る方法はないかな。 あれこれ考えて、いもネジでシャフトに取り付けるタイプのつまみを転用することにしました。 S-20Rはアメリカ製ですからシャフトの径は1/4インチ、約6.35mmです。 6.1mm径シャフト用の日本製のつまみは使えません。 ラボの在庫部品を探すと、 ちょうどいい形状の1/4インチシャフト用のつまみが5個ありました。 これを使います。 メインダイヤル側はつまみのシャフト穴をドリルで貫通させてしまえばOK。 しかしバンドスプレッド側は、ダイヤル盤とダイヤル機構の寸法の関係からハブの厚みに制約があって、 そのままでは取りつきません。 なので、ハンドソーでつまみを切り、厚みを薄くしました。 工作ヘタクソ少年はこんな加工ができただけでも達成感で大満足。 2021-12-01 ダイヤルディスクハブ製作 |
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つぎはいよいよサークルカッターでアクリル板の切り出し。
しかし厚さ2mmのアクリル板はサークルカッターだけでは切れてくれません。
何回も回して切り溝がすこし深くなったところで、
プラスチックカッターを使って根気よく掘っていきます。
汗をかきながら作業して、切り口もきれいに、とは言えないものの、
どうにか円形に切り出すことができました。
うん、この材料と方法、大変だけどなんとかなる。 2021-12-02 メインダイヤルディスク素材切り出し |
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ついでバンドスプレッドダイヤルのディスクを切り出し。
2回目だと手際も少しはよくなるし、
径が一回り小さいこともあって、
さほどに汗をかかずに切り出せました。 2021-12-05 バンドスプレッドダイヤルディスク素材切り出し |
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メインダイヤルをフラットベッドスキャナでスキャンしてグラフィック画像に。
手持ちの・・・驚かないでくださいね・・・ 1994年製JASC Paint Shop Pro 4.13でピクセル単位でタッチアップし、
いい感じのイメージファイルにできました。
まずはテスト用に普通紙にプリンタで印刷して・・・あれえ? プリンタ壊れた。 内蔵フラットベッドスキャナが、スキャンヘッドの初期キャリブレーションに失敗しているようです。 それでもプリンタ機能は使わせてくれてもいいのに、 Canon XK80はシステムエラーを表示するのみで全く使えず。 新品購入後わずか2年1ヶ月、たいして使ってもいなかったのですが、 修理に出す気にもならず、EPSON EP-883ABの新品を買ってきました。 ところがこの新品のEPSONは、プリンタエラーを表示してまったく使い物になりません。 またかよ。 2回連続で、エプソンプリンタは初期不良品を引いてしまった。 起動シーケンスから見て排紙トレイ駆動モータが動作していない様子だったので、 排紙トレイを手で引き出しておいてから電源を入れると正常に動作することがわかりました。 うーん、年賀状の印刷が終わったらクレームに出そう。 ということで交換カートリッジ込みで3万5000円以上の出費。 S-20Rのダイヤルディスクはずいぶん高いものについたなあ。 2021-12-05 メインダイヤルフェース試作 |
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次はバンドスプレッドダイヤルですが、
こちらはオリジナルのままにするのではなくて、
よく使うバンドについて較正されたキャリブレーテッドダイヤルにしたいなあ。
外付けクリスタルキャリブレータあるいはシグナルジェネレータを併用して基準点合わせを行う必要がありますが、
いったんメインダイヤルを合わせればバンドスプレッドで10kHzの精度でチューニングできそうです。 それではバンドスプレッドダイヤルの周波数変化量を正確に測定しようしましたが、 そうだ、このバリコンは容量大側の80%程度でロータがステータに接触するトラブルがあったんだった。 テスタを使ってどのセクションがショートしているのかを調べ、 ショートしていたアンテナ同調回路バリコンのロータを指で曲げて修正しました。 さらにオシレータセクションのバリコンもショートしていたので、これも修正。 バンドスプレッドの全域でスムースに変化できるようになりました。 あたらめてバンドスプレッドのキャリブレーションスケールつくりのためにダイヤル位置と受信周波数の関係を測定。 2012-12-06 バンドスプレッドバリコンロータ曲がり修正 |
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インクジェット用透明フィルムを買ってきてメインダイヤルを印刷し、貼り付け。
むー、エアバブルが入っちゃうよう。
とりあえずはできあがり。
いよいよ気になるようだったらやり直せばいいですね。 バンドスプレッドは、まずは14.0〜15.5MHzの目盛ができたので、 普通紙に印刷して実機で再確認。 いい感じで使えます。 バンドスプレッドバリコン容量大側、つまり周波数が低くなる側で周波数変化量はとても大きくなるので、 14.0MHzのCWを受信するときはバンドスプレッドといえどかなりデリケートなつまみ操作が必要になります。 14.5MHz起点のスケールも用意できるといいのですが、 ダイヤル盤の寸法上、スケールは5本がせいぜい。 この受信機で自分が良く使いそうな、 6MHz国際放送帯・7MHzアマチュア帯・9MHz国際放送帯・11MHz国際放送帯、 それに14MHzアマチュアと15MHz国際放送帯を一つにまとめたスケールの5本をつくることにします。 2021-12-07 バンドスプレッドダイヤルスケール試作 |
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測定した受信周波数をダイヤルスケールとしてデザインし、フィルムシートに印刷して取りつけ。
おお、#47ランプの光の透過具合もちょうどいい感じです。できた! 2021-12-09 バンドスプレッドダイヤルスケール完成 |
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フィルムの貼りムラやエアバブルもあるのですが、
光源の#47ランプの光のムラのほうが気になりますね。
さらに半透明のディフューザプレートとか追加すればいいかな? |
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オリジナル品は新品の時は白だったといいますが、
実際にはどういった色味だったのか?
第2次世界大戦開戦前のモデルですからカラー写真は残っておらず、
コントラストから推測するだけ。
でもまあ、だいたいこのくらいだったんじゃないかな。 新旧のダイヤルを並べてみて、色味の違いを見ます。 それにしても激しい黄変ですね。 まだページは書いていないのですが、 このあとそのうちに修理を待っているNational NC-57のダイヤル盤は、 このS-20Rよりもずっと酷く黄変しています。 今回初挑戦したダイヤルディスクつくり、 きっとNC-57にも行ってあげるつもりです。 |
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タバコのヤニでひどく黄色になっていたのをシンプルグリーンとお湯で洗い、
きれいになったケースに組み込みました。
おそらく当時の色味にかなり近いところまで戻れたのではないかと思います。 電源を入れていないときはダイヤルは薄グレーがちな冷たい白色。 電源スイッチをONにすると、#47ランプが暖かい色にダイヤルを照らします。 まさに命が吹き込まれて目覚めた、という感じですね。 しかし、ケースに組み込んでみるといくつか問題あり。 さすがに一発では無理でしたね。 メインダイヤルが、7MHz前後でわずかな引っ掛かりがあります。 シャシーをフロントパネルに密着させられず、パネル右側のジャック類のナットを取り付けることができません。 いったんシャシーを取り外して再チャレンジ。 メインダイヤルディスク外径が大きすぎてケースベゼルに擦れていたので、外径をドリル砥石で削りました。 メインダイヤルディスクセンター穴とメインダイヤルハブセンター穴の同心度不足のため、 メインダイヤルディスクがメインバリコンシャフトに対して垂直になりません。 これはメインダイヤルディスクセンター穴をドリルで拡大して回避。 バンドスプレッドダイヤルはハブ厚みがまだ厚すぎてフロントパネルと擦れるので、 ダイヤルシャフトアセンブリをワッシャをかませてシャシーへの取り付けを傾けて回避。 スピーカフレームがシャシーに干渉してしまうのでスピーカを取り付けなおし。 なんとかダイヤルがスムースに回る状態で組付けられましたが、 手作り品の寸法精度の悪さゆえ、かつスピーカも前オーナーが見つけてきた代替品ゆえ、 微妙な調整で組付ける必要があるという感じです。 なお電源チョークコイルは、入手時にたった1本のネジだけで仮固定されていたのですが、 ドリルでシャシーにもう1つ穴をあけ、セルフタップスクリューを使ってしっかり固定しました。 このチョークコイルやそこへの配線からの誘導ハムが懸念されるので本来なら電源トランスに近い位置にマウントしたいところではありますが、 現状 ハム混入は許容できるレベルなので、レイアウト上の都合を優先しました。 |
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この受信機は、まあその設計年度を考えれば不思議ではないのですが、
受信周波数の安定度はよくありません。
電源電圧変動の影響はほとんど感じられず、
CW受信時のチャープも少ないのですが、
電源投入後の周波数変動は結構あります。
とくに15MHz帯 - バンド3の上限近く - では、
しょっちゅうバンドスプレッドダイヤルを触ってチューニングを取り直す必要があります。
ま、いつもの感じで受信周波数のドリフトを測定してみましょうか。 シグナルジェネレータで15.000MHzを60dBμで受信機のアンテナ端子に入力。 朝一番のコールドスタート状態でS-20Rの電源を入れ、BFOをONにし、BFOピッチはセンターに。 バンドスプレッドダイヤルは100位置 (=バリコン容量最小位置)にし、 メインダイヤルを合わせて15.000MHzを受信し、ゼロビートをとります。 ここでストップウォッチをスタート。 以降、一定時間間隔で、受信機がゼロビートとなるようにシグナルジェネレータ側で周波数を変化させていき、 その周波数をプロットします。 結果は右。 電源投入後、受信周波数はどんどんずれていきます。 変化の傾向は1時間30分あたりで緩やかになってきますが、 3時間を経過しても周波数のズレは1分間100Hz程度で続いています。 電源投入後4時間を経過してでさえなお、周波数変化は収まる様子にありません。 これはおそらく・・・ 4時間15分経過時点で部屋のドアを空けたら、周波数の変化傾向は反対になり、元に戻りはじめました。 1時間30分経過したあたりでおそらく受信機内部の温度勾配はほとんど平衡し、 その後はどうやら室温の変化にしたがって受信周波数が変化していると見えます。 電源投入して機内温度が安定するまでに1時間半、は、 この構成の受信機ならまあありうる話だとして納得できるのですが、 その間に50kHzも受信周波数が変化し、 さらにその後はわずか数℃の室温変化で5kHzも受信周波数が変化してしまうというのはかなりのものてす。 これではSSB/CW受信時はバンドスプレッドダイヤルから指を離せないし、 AM受信時もしばしばダイヤルを調整することになりますね。 周波数安定度に関していえば、 ハリクラフターズS-20Rスカイチャンピオンは、 トリオ9R-59 や 松下電器CRV-1 にも及ばないし、 入門者向けキットである ヒースキットGR-64 にさえ負ける、最下位クラスの成績ということになります。 幸い7MHz帯ではこれほどにはドリフトは酷くないし、 なにより信号強度の変化によるオシレータプルインが気にならず、 チャープもないので、 しょっちゅうダイヤルを合わせなおす手間さえ惜しまなければ、 SSB/CWの受信音はきれいで、楽しめます。 2021-12-12 周波数ドリフト実測 (このセクションは 2021-12-12 に Noobow5000 Windows2000 Professional上のXyzzy0.2.2.231で書きました) |
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一日中S-20RでBGMをかけていると、ときたま一瞬だけ音が大きくなる現象が起きていました。
きっとAGC平滑キャパシタが壊れかけているためだろうと思っていましたが、
これは使っているシグナルジェネレータ、
目黒MSG-2161
の問題であることがわかりました。
特定の楽曲の特定の個所で、どうやらPLLのロック外れが起きてしまい、
一瞬RF周波数が大きく変化してしまうからのようです。 高崎のジャンク屋で中古AS-ISで買ったのがたぶん2000年、 もう21年も経っているので文句など付けられませんけどね。 そろそろいいシグナルジェネレータ買おうかなあ。 |
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電源平滑のブロック電解キャパシタは無条件交換対象ですが、
修理再開してから1ヶ月半、ほとんど毎日16時間動作させて問題なく動作しているのは驚きでした。
製造されてから76年は経過しているんだよ? でもとうとうダメになりました。 電源を入れて1時間ほど経過したころ、徐々にハム音が大きくなり、 その1時間後には大きくブーンと。 大きなハム音をもたらしたのはプレート電源系平滑用の10uFで、 ラボの在庫NOSの22uFに交換。 ハム音は気にならないほどに小さくなりました。 調べてみると整流管出力直後の40uFもほとんど機能を失っていました。 あわせて周波数変換管系の10uFも新品の22uFに。 これで電源ON中のハム音は気づかない程度に小さくなりました。 交換後、外部スピーカから音の低音が明らかに良く響くようになりました。 音量もたっぷり。 6F6Gを使ったこの受信機のオーディオ出力はほんと優秀ですねえ。 2021-12-16 電源平滑ブロック電解キャパシタ機能喪失 2021-12-17 電源平滑キャパシタをNOS品交換 |
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さあ、いよいよ、
現時点で最大の製品仕様未達の不具合 - バンド4受信できず - に挑みます。
16MHzから44MHzを受信するバンド4は、まあ実際にはあまり使うことはありませんけれどね。 周波数変換管のプレート電圧を測ってみると、周波数混合用のヘキソードセクションのプレート電圧が171V、 局部発振用のトライオードセクションのプレート電圧が55V。 1938年1月31日付けの6K8のデータシートを読むと、トライオードプレートは100Vで動作させています。 55Vはいかにも低いな。 そこでプレートドロッピングを変えて、プレート電圧を78Vにまで上げてみました。 しかし発振する兆候は全くありません。 2021-12-17 6K8 3極管部 プレート電圧増大の試み 効果なし |
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バンド4が受信できないのは6K8の3極管セクションが発振動作をしていないからなのは間違いないのですが、
発振さえすれば受信できることを確認しておきます。 Lodestar SG-4162ADシグナルジェネレータ を使って19.545MHzを発振し、ブロッキングキャパシタを介して6K8のグリッド (3極管と6極管部に共通) に注入。 アンテナ端子からは目黒MSG-2161で生成した20.000MHzを入力。 これでS-20Rをバンド4にし、メインダイヤルを20MHzに合わせたら、 ちゃんと受信できました。 アンテナ同調回路〜高周波増幅段〜RF同調回路〜周波数変換段入力までの信号経路に問題はないということが確認できました。 2021-12-18 バンド4 RF信号経路の動作を確認 |
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バンド4の局発同調回路のトリマをいじって静電容量を下げたら、
局発が発振し始めました。
2001年に調整を試みたときに調整を途中でほったらかしていてたのかな? けれどそんな簡単に解決するものでもありませんでした。 調べると、発振できているのはメインダイヤルが20MHzあたり以下の場合だけのようです。 それも、たとえば20.0MHzで受信できているのに20.1MHzでは受信できず、 もういちど20.0MHzに戻すと全然聞こえない。 今度は19.8MHzでなら聞こえるけれど、 19.81MHzではだめだとか、 19.81MHzでは聞こえないけれどシグナルジェネレータの信号をめいっぱい (99dBu) に上げると突然聞こえるようになって、 いったん聞こえるようになれば60dBuまで下げても大丈夫だとか。 要するに、やはり発振回路の発振余裕がほとんどない状態になってしまっているようです。 発振したり、止まってしまったり、外部からの刺激で発振再開したり、とか。 |
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発振コイルが断線しかかったりしているのかな?
バンド4の発振コイルまわりを眺め、回路図と見比べてみます。 S-20Rは中波帯から44MHzまでを4つのバンドに区切って動作します。 全バンドで安定に動作させるというのはやはりなかなか難しいことなのでしょう。 各バンドの発振コイルは、コイルのインダクタンスが違うだけではなく、 回路構成も少しずつ違います。 15.5MHzから44MHzをカバーするバンド4の局発コイルは、 2次側のパディングキャパシタが固定になっている (他のバンドではパディングトリマがある) ほか、 1次側に寄生発振防止用の抵抗が入っています。 寄生発振防止用の抵抗は10Ω。 この抵抗が断線していれば発振はしないはずですね。 実測してみると12Ωでした。 抵抗値が高くなってしまっているようですが、 設計値の20%増大程度なら問題はないように思えます。 でも物は試し、 この抵抗をみのむしクリップリード線でショートしてみました。 すると・・・ おお、しっかり発振するぞ? 30MHzも安定して受信できてる!! 右のテスト中のムービーでは、再生音が途中2回途切れています。 これは特定の音声信号で目黒MSG-2161シグナルジェネレータのPLLのロックが外れることがあるため。 S-20R側の異常ではありません。 |
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パラ止め抵抗として新品の5.1Ω金属皮膜抵抗を入れてみたら、
全く発振しません。
結局、抵抗を入れずに直接コイルをグラウンドに落とすことで対策としました。 やはり発振回路の余裕度が少なくなってしまっているのでしょうね。 となると、真空管の性能低下の可能性、 またまだ交換していない3つのキャパシタ - 6K8 6極管部スクリーングリッドフィルタ用のC9 0.02uF、 それに6K8カソードバイパスの0.05uFペーパーと2200pFマイカ - あたりが怪しそうです。 特にカソードバイパスは、わざわざペーパーとマイカを並列につないでいるあたり、 周波数特性に効いているであろうことが伺えます。 問題は、6K8のソケットはコイルパックのバンド1局発コイルの真下にあって、 ニッパーも半田こても入らないということ。 交換作業をするには、キャビネットからシャシーを外し、 かなりの作業をしてコイルパックを外す必要があります。 ネジザウルスGTを使えばバンド1局発コイルだけを取り外すことができるかもしれません。 いずれにしても、作業の途中でコイルパックを痛めてしまう可能性があり、 おいそれと試せません。 パラ止め抵抗をショートした暫定対策で動作するのなら、 修復不能な失敗をするリスクを冒したくはありません。 ということで、ここまででやめておきます。 2021-12-18 バンド4局発コイルの寄生発振防止抵抗をショートすることで局発動作開始 |
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プローブの先に被覆単線をループ状にして取り付け、
6K8の3極管プレート抵抗に引っ掛けると、
局発周波数を取り出して
岩通SC-7202ユニバーサルカウンタ
で周波数が読めることに気がつきました。
このとき局発周波数はわずかにずれてしまいますが、
そのズレは30kHz程度。
これなら周波数ドリフトの測定はカウンタで測定できそうです。 で、バンド4で30.000MHzの信号を受信しているときの局発周波数を測ってみたら・・・ あれれ? 30.455MHzになっている。 アッパーサイドインジェクションになってるじゃん。 これはうっかりしたな、調整作業のときに間違っちゃったのか。 さらに調べると、 バンド1から4のすべてのバンドで、局発周波数は受信周波数よりも455kHz高くなっています。 むむ? S-20Rのマニュアルには、 局発がアッパーサイドインジェクションなのかロワーサイドインジェクションなのかを示す記述は全くありません。 でもネットで調べると、S-20Rは全バンドがアッパーサイドインジェクションだ、というポストを見つけました。 なんだ、調整作業のミスじゃなかったのか。 |
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試してみると、バンド4とバンド3ではトリマを回すことによって局発周波数を目的周波数よりも455kHz低くセットすることができますし、
バンド3ではパディングトリマを調整してメインダイヤルの読みもぴったり合わせ込むことができます。
バンド4はパディングトリマはありませんが、メインダイヤルのずれは気にならない程度です。
いっぽうバンド2では、トリマの調整範囲では目的周波数より455kHz低いところまでは変化できませんでした。
結果として、バンド3とバンド4ではロワーサイドインジェクションに調整することが可能です。 バンド3もバンド4も、このトリマはわずかな機械的振動にとても敏感でした。 またそのため、温度変化にもとても敏感です。 受信周波数ドリフトの大きな原因になっています。 ロワーサイドインジェクションに調整するということは局発周波数を下げるわけで、 このとき調整トリマはねじを締めこんで電極を近づけ、静電容量を大きくした状態で使うことになります。 であれば、ロワーサイドインジェクションに調整すれば、 トリマは機械的振動に対して鈍感になり、 また温度変化に対しても鈍感になるのではないでしょうか。 なので、しばらく使って受信に支障がないことを確認し、 またそのあとで周波数ドリフトの再測定をしてみようと思います。 なおアッパーサイドインジェクションをロワーサイドインジェクションに変更すると、 中間周波数に変換したときにサイドバンドが反転してしまいます。 でもS-20RのBFOは周波数可変式ですから、 BFOつまみを回す方向が反対になるだけで、USBにもLSBにも対応できます。 実用上の問題はないでしょう。 2021-12-20 アッパーサイドインジェクションになっていることに気がつく / ロワーサイドインジェクションを試みる |
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さて当初から気になっていたプレイ・スルー問題ですが、
キャパシタ交換作業を進めていく中でそのレベルがかなり小さくなっていることに気がついていました。
どういった機序なのか。
入力信号波形に応じたRF段・IF段のプレート電流変化がAF段に流れ込んで、
検波段をバイパスした音声復調経路ができていた、とか? 確かに音は小さくなりましたが、無音になったわけではありません。 2極・3極複合管をAM検波管・低周波初段増幅管として使うとき、 共通要素であるカソードは直接グラウンドに落とすのが普通です。 しかしS-20Rでは、6SQ7のカソードには100Ωの抵抗が入っています。 これはおそらくANL - Auto Noise Limiter回路の動作のためなのだろうと思われますが、 正直 その詳細な動作原理を追いかけきれていません。 しかし、100Ωのカソード抵抗があるということはIF信号波形に応じてカソード電圧が変化しているはずで、 ボリュームを目いっぱい絞って3極管のグリッドをグラウンド電位固定にしても、 カソード - グリッド間の電位差はIF信号波形が出ているはず。 だから、3極管はグリッド接地増幅回路として動作してしまうはずです。 これが本当に嫌なら、もともと大した効果がなく、かつ現代では必要性がほとんどなくなったANL回路を撤去し、 シンプルな検波回路に改造してしまうという作戦もあり得ます。 けれど、まあそこまでする気もならず、 ほぼ実用上は困らない程度にまでプレイ・スルーは低減したので、 確証に乏しいもののこれが本機の本来の姿だということにして、 ちょっと心残りだけどこれで調査改善は打ち切りにします。 2021-12-21 プレイ・スルー問題調査中止 |
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