最初に自分のものとして買ってもらったラジカセはナショナルRQ-542。
当時のナショナルラジカセのラインアップ、MACシリーズのエントリモデルです。
英語の勉強用に買ってもらったものだったし、
英語が聞ければ短波放送を聴くのもずいぶん楽しくなるだろうと思い、
使いやすいキューアンドレビューとメカニカルポーズを駆使して、
NHK続基礎英語と英語会話を毎日録音しては聴きまくっていました。
あまりに酷使したのでモータを2回、ピンチローラーアセンブリを1回交換するほどでした。
テープヘッドは摩耗が進むと高音域が極端に出なくなりますが、
ヘッドアライメントアジャストスクリューをいじるとしばらくはでごまかすことができることを発見しました。
それでも都合2回ヘッドを交換しました。 もちろん英語ばかりではなくて音楽もずいぶんエアチェックして楽しみました。 当時はステレオラジカセなどはまれで、中学生にはモノラルで当然でした。 エントリモデルゆえテープ再生の周波数特性はカタログ値で80〜8000kHzというひどくお粗末なものだし、 マニュアル録音レベル調整はなくてALCのみだったので、 強いドラムで始まる曲や強弱の大きい曲では不自然な感じを避けられませんでした。 カタログ値0.8%のワウフラッタも明確で、ピアノの余韻などはどうしても気になってしまいます。 それでも2チャンネル入力のパッシブミキサを自作してフェードイン・フェードアウトのあるオリジナルテープをつくったり、 粗大ゴミ置き場のテレビから外した16cmウーハとツイータを自作のエンクロージャに入れて、 多少は音楽らしい音が得られるように頑張っていました。 RQ-542には小型のラジケータがついているものの、これはバッテリ電圧計で、 オーディオレベル計ではありません。 オーディオ機器にはオーディオレベル計がなくてはならないという私の中の絶対的な掟 は、 このころの飢餓感の延長にあります。 |
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中学3年、ようやくステレオラジカセを買えるだけのお金がたまりました。
買うならアイワTPR-830、と心に決めていたのですが、いざショップに行ってみると、
830はすでに生産終了し、その後継機の840が売られていました。定価は52,800円。 830はきちんとステレオVUメータを持っており、 またそれはSメータとセンターディビエーションメータとしても使えるものでした。 840ではステレオVUメータはあるものの、信号強度は緑色LEDの輝度で示され、 その両脇に黄色い三角のLEDがFM受信時のセンターメータとして機能します。 なかなか新規性があり、赤色LEDによるステレオパイロットインジケータとあわせきれいなのですが、 Sメータがないというのはかなりショックでしたし、あこがれの830を買えなかったのは結構残念でした。 とはいえ、待望のステレオラジカセ。 アイワTPR-840 "STEREO840" のモードスイッチは、マトリクス方式による"ステレオ ワイド"ポジションを持ちます。 このポジションでは、ステレオ再生音は左右のスピーカの位置よりもさらに左右に広がって聞こえ、 スピーカ間隔が狭いラジカセの筐体でも十分な立体感が得られます。 その日初めてエアチェックした曲は、 ポールマッカートニー&ウイングスの<My Love>。 フェードイン気味に始まる曲の最初の部分がはてしない広がりをもって鳴り始めたとき、 思わず涙を堪えてしまいました。 1978-04-30 AIWA TPR-840D 購入 TPR-840の録音レベル調整は、レバースイッチでALCとマニュアルが選べます。 専用の左右独立スライド式録音レベル調整と録音ミュートボタンがあり、 機能的には本格的カセットデッキと変わりません。 エアチェックやオリジナルテープ制作に大活躍。 ALCでの録音は行った記憶がありません。 レベルメータを睨みながらマニュアルレベル調整をする緊張感は楽しかったなあ! いまでは考えられないですけどね・・・。 840はラジカセにDolby-Bが搭載されるようになる以前のモデルで、ドルビーはありません。 840の性能を最大限に引き出してやろうと思い、 ステレオコンパンダ・エキスパンダのキットを組み立てて試したこともありましたが、 音が不自然になるのはどうにも避けられず、お蔵入り。 これも後となっては正解で、対数圧縮で録音していたらその後互換性で苦しんでいたでしょう。 そもそもテープのヒスノイズはあまり気にならない方だったし、 その後の機器でドルビーを使って録音した音に幻滅したこともあり、 今に至るまでドルビーにありがたみはあまり感じたことがありません。 TPR-840はFeCrテープが使えるポジションスイッチを持ちますが、 高級なテープをしょっちゅう試すような経済力はなかったので、 ほとんど音楽用ノーマルポジションテープばかりを使っていました。 840にはレコードプレーヤをつなぐPHONOジャックがあり、 ファンクションスイッチレバーにPHONOポジションをもっています。 本気の価格帯にあわせたレコードプレーヤもアイワからオファーされていました。 私はというと、当時の中高生の多くがそうであったように、レコードを買うような経済力はありませんでしたから、 この機能、つまり内蔵のRIAAイコライザは当時ほとんど使わず。 今となってはTPR-840は、 ほんの何枚かしかないレコードを聴くために実働可能なRIAAイコライザとしてとても貴重な存在です。 840のラジオは3.8〜12MHzをカバーする短波つきなので百万人の英語を聞くにも便利。 短波ラジオはすでに RF-2200 があったのでSTEREO840で短波を聞くことはあまりありませんでしたが、 通過帯域が広いので音はとても良くて心地よく、 強力な信号で近接混信がないならRF-2200よりもはるかに楽しく聴けます。 横行きダイヤルはバックラッシュは小さくないものの動きはスムースで、 さほど苦労せず微調できます。 外部アンテナ端子が背面にあるので、屋外アンテナを接続することもできます。 ただし安価なラジカセのことですから、 局部発振器のドリフトは顕著。 室温が安定していても電源を投入して1時間ほど経つまでは5分に一度くらいダイヤルを触ってやる必要があります。 し、AGC電圧に呼応した周波数変動も大きく、フェーディングに応じてとなりの局が聞こえてきたりします。 経時ドリフトで受信周波数がずれて信号が弱まり始めると、 AGC電圧が変化してさらに周波数をずらしてしまう・・・という連鎖反応が起こり、 外れ始めると見る間に外れてしまう動きをします。 (この挙動を逆手にとればAFCのようにロック特性が得られたりして・・・。) TPR-840の操作系の最大の欠点は、LINE INと内蔵ラジオとの切り替え方法。 ファンクションスイッチをRADIO/LINE INにするとラジオが聞けますが、 このときLINE INジャックにピンプラグを差し込むとラジオの音声が切れ、 外部機器からの音声に切り替わります。 つまり、LINE INとラジオを切り替えるにはプラグを抜き差しする必要があるのです。 ファンクションスイッチか、別のスイッチで切り替えられるようにできなかったのかな。 メカニカルタイマースタンバイ機構を備えたテープメカは、 キューアンドレビューやメカニカルポーズも装備していますが、操作に渋さがあるため、 英語学習機材としては適しておらず、英語の勉強にはRQ-542を引き続き使っていました。 840のテープメカは、操作フィーリングに関していえば落第点でした。 |
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TPR-840の本体スピーカはごく平凡な構造のフルレンジ。
癖はなくバランスは悪くないものの、重低音の響きや高音の伸びはやはり絶対的に不足。
840にはφ3.5mmのモノラルジャックによる外部スピーカ端子があり、簡単に外部スピーカを接続できます。
貧乏高校生の私はいいスピーカを買う経済力はなかったので、
1979年のJARL群馬支部大会のジャンク市で3000円で買ったモジュラーステレオ用フルレンジスピーカを使っていました。 TPR-840の音は、バランスが取れたまろやかなもの。 強烈なインプレッションはないし、スピード感はなく、むしろぼやけた感じがあります。 が、長時間リラックスしてじっくり楽しむのには向いていて、それが現在に至るまで私の音の好みであり続けています。 840の音が好きなのはどうやら自分だけではありませんでした。 高校1年、私が840でエアチェックしたテープともう一人の同級生がエアチェックしたテープを別の友人が聴き比べたところ、 あきらかに私のテープのほうがいい音だというのです。 もう一人の同級生は、当時の高校生では普通は所有できない高級品ばかりでそろえた高額なシステムを使っていました。 スピーカに至ってはタンノイ・アーデンで、 雑誌でしかみたことのないスピーカがその同級生の部屋に何気においてある様子に、 世の中なかなか平等にはいかないものなんだと思い知らされました。 ケイト・ブッシュのアルバム中の靴音の効果音がビシッと定位していて、 本当に部屋の中を固い靴底の人が歩いているように聞こえてきました。 さすがいいスピーカといわれるだけのことはある!! ところが、機器の自慢を続ける友人の話を聞きつつ、私はひとつ奇妙なことに気がつきました。 NHK前橋FMを受信しているチューナのSメータがわずかしか振れていないのです。 いくら八木アンテナをFM東京に向けているからといっても変じゃないの? と私が尋ねると、 このチューナを新品で買ったときからこうなのだから壊れているはずはない、と言い張ります。 そこで、ちょっと失礼とチューナの背面パネルをみると・・・ フィーダの両方の芯線がみごとに絡まってアンテナターミナルがショート状態でした。 それを直すと、チューナのSメータはこれが当然とばかりにフルスケール指示になりました。 おそらく信号レベルが弱いままエアチェックしたので、 それがマルチプレクスノイズとかなにかで音に影響していたのでしょう。 さもなくば、おそらく100万円を超えていたはずのシステムにたかがラジカセ1台で勝てるはずはありません。 機械は結局使い手の問題なんだな、と思った出来事でもありました。 聴き比べてくれた友人に次の日アンテナショートの顛末を話したところ、彼は、 「そうだったのか・・・でもさ、おれやっぱりおまえのラジカセで録った音、すごく好きなんだよな。」 TPR-840を買った直後のころ、 行きつけのショップ主催でアイワの「オーディオセミナー」なるものが開かれたので参加したことがあります。 会場にはJBLの大型スピーカが持ち込まれていて、 「ラジカセはスピーカが小さいからどうしても音に、特に低音の質感に限りがあるけれど、 それ以外の部分は私たちは真剣に造っています・・・これを聴いてください」 と、講師であるアイワのセールスさんはTPR-840の上位モデルにJBLをつないでテープをかけました。 その音は・・・これがラジカセとはとても思えない!! そのときお土産に配られたのはアイワのロゴがエンボス印刷された小ぶりな漢字字典。 840とともに、この字典も思いっきり使いました。 私が書いている日本語の中でやや難しめの言葉は、ほとんどがアイワの字典で学んだものだと思います。 高校1年はそれこそ840で音楽を聴きまくりました。 そのせいか、保証期間を過ぎて間もなく、テープドライブが不調になりました。 再生ピッチが不安定に変動します。 原因はサプライリールのシャフト渋り。 素直に修理に出せばよいのに、1週間も音楽なしの生活を許せず、 サプライリールシャフトを丸ごと取り外して使い続けました。 やがて別のメカトラブルがおき、テープドライブはほぼ絶望的になってしまいました。 1980年09月、よく通っていたオーディオショップでLo-DのロジックカセットデッキD-77sが手の届く価格で売られていたので、 それを買ってSTEREO840につなぎました。とうとう単体コンポーネントを買えた! ロジック動作はそれは嬉しかったし、テープ走行はさすがに安定しています。 しかし肝心の音は、ちっとも感激がない・・・。 高音が出ないとか低音が細いとか歪んでいるとかではないのですが、なぜだか乾いていてパサパサ感があり、 音に味がしないのです。 もうすっかり840の音に慣れてしまったためなのか、 それとも私の友人が言っていたように840は本当に音の良いラジカセだったのか・・・。 |
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高校を卒業して家を出たとき、おそらく母親にこれだけは捨てないでくれと強く頼んでおいたのでしょう。
シリコンバレー駐在だった間に大半の機材は捨てられてしまいましたが、840は残っていました。 日本に戻ってきたあとの2000年ころ、 Kenwood KR-9430 4チャネルステレオレシーバ がハム再発のため戦線離脱したとき、 メインアンプの座を代わったのは18年のブランクから復活したTPR-840でした。 さすがに長期間放置されていたため、ハムが目立っていました。 本体内蔵電源がダメなら外部の安定化電源装置を使うようかなあ? でも2〜3日のうちにハムは聞こえなくなりました。 おそらく平滑用の電解キャパシタが通電で再化成され、復活したのでしょう。 840は音が良い、といっても、それはFMのエアチェックとカセットテープしか知らなかった当時の高校生にとってであり、 そのころよりもずっと周波数範囲もダイナミックレンジも広い現代のデジタルサウンドを見事に鳴らしきるといったものではありません。 BOSE SeriesVと組み合わせると、当然本体スピーカよりもはるかに豊かな低音が得られますが、 それでもトーンコントロールはバスをフル、トレブルを70%ほどまで上げてようやく好みのバランスになります。 ボリュームを上げると低域がすぐに限界となり、大迫力の再生は無理。 もっとも、集合住宅ではそこまで音量を上げられませんので実質問題とはなりませんでした。 その後約8年間連続通電で、840はリビングで我々を楽しませてくれました。 2003年からはもっぱらポゴがメインユーザとなり、 1歳を過ぎたころからは自分で840の左右独立スライド式ボリュームコントロールを上手に操作し、 はいだしょうこ の歌をいっぱい聴いていました。 2006年頃から、左チャネルVUメータのゼロ点が上がっていることに気がつきました。 その後この傾向は次第にひどくなり、2007年の夏には20%ほどまで上がっています。 |
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2008年05月に中央研究所へ移転した際、840はリビングのメインアンプ役を
アイワXR-FD55
にひきつぎ、
いまでは機材保管室でときたま使うだけとなっています。
保管室には同じような役回りの壊れかけラジカセとして
SONY CFD-500 DoDeCaHORN CD
があり、
バスレフ構造のスピーカとバスブーストに期待させられるのですが、
音の全体のバランスがどうにも悪く、楽しむ気になりません。
それにそもそも外部入力端子がないし。
結局840に戻ってしまいます。
大昔の大衆向けラジカセにしか過ぎないのに、840で音楽を聴いているとなぜかほっとするんだよなあ。 2010年01月01日、左チャネルの音量が極端に低下。 スライド式ボリュームの接触不良でした。 ボリューム内部にSafeWashをひと吹きして数回スライドさせて回復。 ラジオのバンドセレクタはMW/SWで接触不良が残っています。 スピーカで聞いているうちはほとんど問題がないのですが、ヘッドフォンで聴くと内蔵電源のハムがわかります。 また、左チャンネルにレコードの針先音のようなノイズが常時乗っています。 どこかのキャパシタのリークか、トランジスタの劣化故障か? はたしてこれを修理すべきか・・・それともこのまま静かに引退、かな。 |
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ラボのワークステーション用に使っているKenwood KR-9340の動作が不安定になってきました。
単純な接触不良ではないようで、修理は億劫だなあと思っていました。
そこに
東日本大震災による長期的電力不足
という予想だにしない事態。
いまは中央研究所ワークステーションは需要がさほど逼迫しない週末にしか使用しないとはいえ、
無出力時消費電力38WのKR-9340を土日の48時間連続通電しておくのが浪費に思われてきたので、
TPR-840をワークステーションに移動しました。
おそらくデバイス劣化に起因するわずかなスクラッチノイズは出ていますが、まだ許容範囲。
TPR-840の消費電力は銘板の表記によれば16Wで、
カセットを動作させず無出力であればもっと少ないでしょう。
静かに引退のはずが、乞われて現役復活。
もうしばらくがんばってもらうことにします。 2011-07 Noobow9100用メインアンプとして現役復活 |
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今年の夏は左レベルメータのゼロ点上昇傾向が収まり、むしろ改善の傾向が見えてきています。
どういう理由なんだろうね。 と、すっかり秋も深まった本日、左チャネルの音が突然出なくなりました。 レベルメータは振れているのですが、内蔵スピーカも左チャネルが無音。 スライドボリュームを動かしてもダメ。 となるとパワーアンプか。 購入後34年、とうとう寿命のようです。 現役引退。 Noobow9100D用パワーアンプの役割は ELEKIT EL-559 に引き継がれました。 2012-10-21 左チャネル音が出ず、引退 |
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