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Echophone Commercial
EC-1B

General Coverage
Shortwave Communications Receiver
(1946)




Echophone EC-1B

    Echophone Commercial EC-1B EC-1A のマイナーチェンジモデルです。 外観からはその差をすぐに言い当てることはできないでしょう。 ダイヤル盤に小さくEC-1Bと示されています。

    EC-1Bのデビューは・・・とQST誌をめくってみたのですが、 どこにも言及がありません。

    EC-1の広告が最後に掲載されたのが1945年10月号。 1945年11月号でEC-1Aが登場しています。 1946年02月号でS-41 Skyrider Jr.が"New"と登場し、 しかしEC-1Aの広告は1946年05月まで続いています。 そして1946年06月号にはハリクラフターズS-38がデビュー。 QST誌の広告を見る限り、EC-1Bというモデルは現れないのです。

QST 1945-10 p114 Echophone EC-1 $28.50
QST 1945-10 p115 Echophone EC-1 Radio Shack ad
QST 1945-10 p141 Echophone EC-1 1 page ad
QST 1945-11 p125 Echophone EC-1A 1 page ad
QST 1945-12 Echophone EC-1A 1 page ad
QST 1946-01 p125 Echophone EC-1A 1page ad
QST 1946-02 p111 "New" S-41 Skyrider Jr. $35.00
QST 1946-03 p123 Echophone EC-1A $29.50
QST 1946-04 p108 Echophone EC-1A $29.50
QST 1946-04 p105 S-41 Skyrider Jr. $33.50
QST 1946-05 p122 Echophone EC-1A $29.50
QST 1946-05 p142 S-41 Skyrider Jr. $33.50
QST 1946-06 S-38

    S-38の発売直前、1946年2月から6月の間の短い期間に販売された ハリクラフターズ スカイライダー・ジュニアS-41G/W は、実質的にEC-1Bと同一のモデルです。 違いはキャビネットおよびダイヤル盤の色、そしてつまみの形状だけ。 まずEC-1AがEC-1Bにマイナーチェンジされ、 つぎにそのリパッケージとしてS-41G/Wが市場投入されたのだろうと思っていましたが、 QST誌の広告を見ると市場投入のタイミングと広告の掲載と在庫と店頭販売はかなり混乱していたのでしょうね。

    エコーフォンEC-1A/Bは低価格モデルであったため、当時「貧乏人のハリクラフターズ」と呼ばれることもあったようです。 ある人がいっしょうけんめい貯めたお小遣いでエコーフォンを買い、 家に帰って箱を開けたらスカイライダー・ジュニアが出てきて飛び上がって喜んだ、という話も聞きました。

    いまQST誌の広告を見ると、EC-1Aは29ドル95セント、 スカイライダー・ジュニアは33ドル50セント。 中身の実質は同じなのにこの価格差は・・・ 戦後の急速なインフレと、ひょっとしたらその埋め合わせとしてのハリクラフターズロゴ使用だったのかもしれません。








回路構成

使用真空管と回路構成
12SA7 メタル管:周波数変換用7極管 局部発振・周波数変換
12SK7 メタル管:リモートカットオフ5極管 中間周波数増幅
12SQ7 メタル管:双2極・高μ3極管 検波・初段低周波増幅
12SQ7 メタル管:双2極・高μ3極管 BFO / ANL
35L6GT GT管:ビーム出力管 低周波出力
35Z5GT GT管:2極整流管 整流



バンドスプレッド機構

    ハリクラフターズ・ファンのバイブル、Chuck Dachis氏著の <Radios By Hallicrafters> にはEC-1AとEC-1Bの差については記述がありませんが、バンドスプレッド機構が大きく異なっています。

    EC-1Aのバンドスプレッドは、メインバリコンと一体になったバンドスプレッドバリコンを糸掛けドライブで駆動し、 バンドスプレッドダイヤルの指針はバリコンのシャフトに直付けされています。これは後のS-38Cと同じ方式です。

    これに対しEC-1Bでは外観上は同じながら、 バンドスプレッドはシャーシ下のローカルオシレータコイルの中におかれたスラグを移動させる方式になっています。 バンドスプレッドつまみのシャフトとダイヤル指針のついたシャフトは糸掛けでつながれ、 またシャーシを垂直に貫通するシャフトを回します。 貫通シャフトはさらにシャーシ下面でスラグを往復させる糸掛けを動かします。 結局2連糸掛けになっているわけで、またそれぞれの糸掛けの途中にはロードスプリングが入っています。

    バックラッシュを含めたダイヤルの操作感からすれば複雑なEC-1Bは原理的に不利です。EC-1Aではフリクションロスは最低限であり、 指針がバリコン直結になっているためチューニング範囲を超えて回しても指針のずれは発生し得ません。 結果として糸掛けとしては最高にスムースなチューニングが可能です。

    ところがEC-1Bでは糸掛けが2連になっており、 貫通シャフトとスラグ往復部のアイドラローラの分だけフリクションが増加します。 さらに途中に入ったロードスプリングのため動作がダイレクトでなくなっています。 チューニング範囲を超えて無理に回した場合のダイヤル指針ずれの可能性もあります。

    この変更の理由は何だったのでしょうか? 標準的なバリコンを使うことによるコストダウンを狙った? それともひょっとして一時的にバンドスプレッド一体型バリコンの生産が間に合わなくなったための措置でしょうか。 後継機S-38 ではバンドスプレッド一体バリコンに戻されていますが、これはバリコンが入手できるようになったためなのか、 それともEC-1B方式の評判が悪かったためなのか、興味あるところです。




    EC-1B band spread is more complicated than EC-1A's, causing sluggish movement and spoils the fun of searching the signal.



ダイヤル盤の違い

    EC-1AとEC-1Bとでは、ダイヤル盤にも違いがあります。 すぐ気が付くところでは、バンドスプレッドの目盛りがその方式の違いから、 EC-1Aでは0から100までなのに対し、EC-1Bでは±50になっています。

    EC-1AとEC-1Bの違いで興味深いのは、アマチュアバンドの違い。 EC-1Aにはなかった21MHzアマチュアバンドが、EC-1Bでは示されています。 新バンド開放がいつだったのか? を合わせると、EC-1B市場投入のタイミングのミステリーをもっと楽しめそうです。

    EC-1Aでは1600kHz帯にPOLICEの表示がありますが、EC-1Bでは削除されています。


    外観上はこのほかに、 フロントパネルのスライドスイッチがEC-1Aでは黒色なのに対して、 EC-1Bでは赤色になっていること。 ただしこれはランニングチェンジの可能性もありますね。 赤色スイッチのEC-1A、あるいは黒色スイッチのEC-1Bがあるのかどうか。 ちなみに手元のS-41Gは黒色スイッチ。






現状を確認

    EC-1Bは外観的にはオリジナルコンディションを保っています。 しかしながらバリコンに堆積した埃とごみのためチューニング時にスクラッチノイズが出るなど、 全般的な清掃・調整が必要なようです。

    電源平滑用の電解キャパシタはやはり前のオーナーにより最近のものに交換されており、 とりあえず動作します。

    EC-1Aの背面パネルはベニア板製ですがEC-1Bは黒色のボール紙製。 このEC-1Bのボール紙パネルはすでによれよれになってしまっています。






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