アメリカのラジオ・無線機メーカーとして名声をはせた、今はなきハリクラフターズ社。
本書は、ハリクラフターズ・コレクターとして有名な筆者による本です。
アマチュア無線用のみならず、民生・軍事・業務用のさまざまな受信機、
送信機、トランシーバそれにアクセサリーの数々の写真が、簡単な解説とともに載っています。
本書はまたハリクラフターズ社の歴史や、ラジオのレストアの方法についても触れられており、
まさにハリクラフターズ・ファンのバイブルと呼ぶにふさわしいものです。
全220ページ。
製本は中国で(ということは米国製よりもはるかに紙質・写真ともに上質)、大半の写真は白黒ながら、重要な機種のページはカラーになっています。
アマチュア機の写真は筆者所有あるいは他のコレクターが所有する実機の写真。
テレビ受信機の多くはカタログなどの資料からのコピーです。
巻末には発行当時の各モデルの平均的な取引価格も掲載されています。
数年たった今、50%程度相場が上がっているように思われますが。
各モデルの解説は発売年、価格、機能概略と使用真空管および回路構成。
技術的あるいは販売成績などの細かなことには触れられていません。
1933年製5球TRF方式のS-1スカイライダーに始まり、
戦前のシングルスーパーヘテロダインの最高峰SX-28スーパースカイライダー、真空管全盛時代の最高機種SX-88、
そしてエントリーレベル機として極めて人気の高かった
S-38シリーズ
など、ハリクラフターズ社は優れた受信機のメーカーとして知られていました。
しかし1960年代中盤になると日本製の低価格トランジスタ機が台頭し、製品ラインアップにも悩みが見え始めます。
次第に製品の多くが日本製のOEMとなり、1970年には同社の売り上げは急速に悪化します。
1972年を最後に同社のアマチュア無線機は姿を消し、会社が二度三度と転売され、
そして1980年代に会社の最後のオーナーが破産申告した時点でハリクラフターズの名前は完全に消滅することになります。
多くの機種が手頃な価格に設定されたハリクラフターズ社のラジオは多くの人に親しまれ、
そして今でもたくさんのアマチュアが同社のラジオのレストアを行っています。