Homebrew Headphone Amplifiers
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オペアンプの実験課題として、
EL500でヘッドフォンアンプをつくってみました。
トランジスタでオペアンプの出力電流をブーストし、直接ヘッドフォンを駆動する回路です。 トランジスタによる電流ブースト回路はいくつか考えられます。 EL500にはコンプリメンタリなNPN型トランジスタとPNP型トランジスタが付属しているので プッシュプル型電流ブースタも可能ですが、 ヘッドフォンを駆動するのならそう大きな電流は必要ではないので、 シングルエンド型電流ブースタにします。 これは要するにトランジスタ1石によるエミッタフォロワで、 無音時もアイドル電流を消費するため低消費電力を最優先するポータブル機器には向きませんが、 部品点数が少なくてシンプルなのは魅力です。 いろいろトライして、右図の回路が簡単で、かついい成績を出せました。 オペアンプの帰還抵抗R2は10kΩ(ゲイン10倍)から100kΩ(ゲイン100倍)程度で適宜選べます。 右図の回路を2組配線して(オペアンプ動作基準電圧のための1/2VccをつくるR4とR5は共通にできます)ステレオ オーディオ信号を入れてみると、 パワーは必要以上、音質はなかなか良好で、十分実用になります。 周波数特性は高域は可聴周波数帯域をはるかに超えてフラット、 下は100Hz程度からすこしゲインが下がり始めますが、 30Hz程度までは出ており、再生機器側でわずかにバスブーストしてあげれば問題はありません。 この回路が完成後、お気に入りのアルバムを2枚ほど、久しぶりに大音量で聴きました。 この回路では出力電流の吐き出しと吸い込みとで動作が必ずしも同一にならないために音質が劣化しているはずだし、 あるいはNFBを追加する等すればもう少し音質をよくできるかもしれませんが、 貧しいオーディオ機器に慣れてしまっている私の耳にはこのままでも十分満足です。 テストに使ったヘッドフォン パイオニア SE-550D はインピーダンスが比較的高いので駆動力の小さいアンプでもよく鳴る、 というのはあるかもしれません。 公称インピーダンスがもっと低いヘッドフォンでは無理がバレてしまうかも。 [2006-12-16] EL500 エミッタフォロワ式ヘッドフォンアンプ試作 |
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2017年。
第3研究所でコントロールアンプとして使っている
サンスイAU-7700
は、中古現状で購入してからすでに5年半が経っています。
1975年モデルですから製造後40年、
あちこちくたびれてきています。
ときたまスピーカ出力保護リレーが入らないことがあるのですが、
パワーアンプは
究極の貧乏アンプ
を使っているので問題なし。
でもAU-7700フロントパネルのヘッドフォンジャックを使ってヘッドフォンで音楽を聴こうとすると、
左チャネルにバサバサと不安定なノイズが入っています。
AU-7700のヘッドフォンジャックはスピーカ出力から抵抗を介して出力しているので、
要するにAU-7700のパワーアンプ部に故障が発生しているということ。
そこで、単品のヘッドフォンアンプが必要になりました。 いっぽう中央研究所でも、 KR-9340 が引退した後はスピーカとヘッドフォンの簡便な切り替え方法がなく、 独立したヘッドフォンアンプがあったらいいなと思い続けてきました。 最近はヘッドフォンオーディオ愛好家がずいぶん増えてきて、 リーズナブルな価格でハイクオリティなヘッドフォンアンプが出回っています。 し、高音質設計あるいはまたマニアの変態ヘッドフォンアンプキットも各種。 手の届かない価格ではないし楽しそうなのでひとつ選んでもいいのですが、 どうせ私の耳は微妙な音の違いを聞き分けられるでもなし。 そうだ、もう10年も前につくったEL500のシンプルなヘッドフォンアンプをボードにこしらえよう。 そう思って2017年新年冬休みの宿題として、再チャレンジ。 EL500は第3研究所においてあるので、ELENCO社のブレッドボードに組み立ててみました。 動作しだしたヘッドフォンアンプは、だけれどいまひとつ。 音量を上げるとなにやらひずみが目立ちます。 とても簡単なアンプですから文句なしの音質ということはないとしても、 以前つくったときはしばらくたっぷり音楽を楽しめるほどだったのに。 前回はあまり音量を上げなかったので気が付かなかったけれど、 今回は爆音ジャズを大音量で聴こうとしているので無理が出ている、 というのはあり得るポイント。 もうひとつは、10年前によく聴いていた曲と、最近聴いている曲の、パワースペクトルの違い。 昔聴いていたのは1970年代の曲がほとんど。当然全アナログ、スタジオでマスターテープ録音のアルバムばかりでした。 再生機期の主流はLPレコード。 電源ハム対策のため60Hzにノッチフィルタが入っている機器も珍しくなかった時代です。 しかし最近聴いているのは新しいデジタル録音のスムースジャズ〜ジャズロックアレンジの曲。 もともとウッドベースなどの低音楽器のレベルが高いジャンルの音楽ですし、 DSPデジタル録音で、超低域が阻害されずに豊か。 お気に入りの曲の一つではベースの音が40Hz程度にまで下がります。 さらにいわゆる打ち込み演奏のオーケストラアルバムでは大太鼓の音が20Hz台まで落ちることがあり、 こうなると音というより空気の震えを再生する能力が必要になってきます。 10年前に試した回路ではこのあたりの大振幅の信号をうまく取り扱えていない様子。 前回作ったEL500ヘッドフォンアンプは、 オペアンプで電圧増幅した後にエミッタフォロワで電流ブースト、という2つの回路ブロックを単純にキャパシタでつないだものでした。 これはこれで回路の理屈を学ぶにはわかりやすいのですが、 実際に動作させてみると基本動作原理だけでは見えてこない欠点が出てくるというもの。 いろいろトライして、結局たどり着いたのはとてもシンプルなソリューション。 エミッタフォロワを後段ブロックとして追加するのではなく、 オペアンプの一部として一体化する回路です。 これも特殊なものなんかではなくて、オペアンプのデータシートにも載っている、ごく基本的なものです。 今回はそれを実際に試してみました、ということ。 電流ブースト用トランジスタは小信号用ならなんでもよいでしょう。 今回は一番手ごろで安く、ラボに部品在庫がたくさんある2N2222を使いました。 無信号時のエミッタフォロワのベース電圧はオペアンプの出力電圧とイコール、 つまりオペアンプ非反転入力側の電圧とイコール。 なので、電源電圧が変動してもこの電圧は管理する必要があるので、 回路電源は小さな3端子レギュレータで5Vを生成してそれを使います。 回路の全電流は100mA。 これじゃ電池で動作させるにはちょっと辛いですね。 結果として、段間結合のキャパシタが削除でき、エミッタフォロワのベースバイアス抵抗もなくなり、 回路はさらにシンプルに。 そしていちばん重要なのは、大音量時に出ていたひずみがすっきり消えたこと。 帰還抵抗は4.7kΩ固定にしてアンプのゲインは約5倍としました。 入力が-30dBV程度で迫力ある音量、といった感じ。 最大出力は、もうこれ以上では耳が耐えられないというほどの大音量のあたりでそろそろ頭打ちになります。 もうすこしパワーにゆとりがあってほしいところですが、 まあ実用になります。 残留ヒスノイズはほぼなし。こりゃいいや。 テスト曲は、 Logical Emotion [外部リンク] の Pops Arranged Instruments 1から「亡き王女の為のセプテット」。 演奏開始から3分ころの、ピアノソロにつづくベースソロ部、そのあとの超低音部が気持ちよく再生できて、よしOK。 このヘッドフォンアンプが動作し始めて数日後、 買い物に行った量販家電店で展示されていた最近流行りのハイレゾヘッドフォンを冷やかしに試してみたら、 SONYのはわずか数秒でこりゃダメだとなりましたが、 オーディオテクニカのこれは…ええっ、なんだかすごくいい! かけ心地も悪くないし、一目惚れならぬ一耳惚れで、 よおしこれが今年の自分へのお年玉だ、とオーディオテクニカATH-MSR7を購入。 で、ブレッドボードのままの在庫部品だけで組み上げたチープなヘッドフォンアンプを2万4000円もした新型ヘッドフォンで聴いてみると、 なんともいい音! 聴くのは 最近のお気に入りの自作コンピレーション・アルバム。 うーん幸せ。 手製のシンプルなアンプから広がる豊かな音。 この音を、食べられなかった日さえあったほどに貧しかった中学生の頃の自分に聴かせてあげたい。 大音量なのにまったくうるさくなく、ヘッドフォンをかけたままいつしか夢の中。 [2017-03-18] Still on the breadboard. Tested with Audio Technica AT-MSR7, performs nicely. |
Revision 00 headphone amplifier circuit played well 10 years ago. This time, however, that circuit had a distortion problem when large level of signal is handled. In the revision 01 circuit, the emitter follower block is now integrated into the OP amp circuit. Not only eliminted a coupling capacitor and a base bias resistor, the distortion problem is solved. Power output is merginal to play with very loud volume, still practical in ordinaly use. |
日程が調整できたので、年度末3月末に2日間の休みを取りました。
昨年度につづきFY2016年度も有給休暇を消化できず数日ぶん流してしまいましたけど。
あーもったいない。
せっかくの春休みではあるのですが、家族で遠出することもなく、
赤久縄とちょっとしたカフェそしてカフェダイニングまあむに行ったくらいで、
ゆっくりとラボで過ごします。
ということで金曜日の夜はシンプルヘッドフォンアンプの実用配備に向けてユニバーサル基板に実装します。 パーツはすべてブレッドボードで使っていたものをそのまま使います。 ひととおり部品がとりついたのち電源を入れてみますが、まったく無反応。 変だなあといろいろ調べていくと、 基板上のヘッダピンに接続するためのヒロセ製8ピンヘッダコネクタ、 これは何かの機器から取り外した中古品なのですが、 このなかのワイヤが1本だけ、まったく導通がありません。 そのワイヤはたまたまアンプの電源グラウンド側の線だったので、電源が入らないわけです。 ヘッダコネクタからピンを抜いて調べてみると、外観は何も異常がない普通のビニール線なのですが、 完全に断線。 あれまあ、こんなこともあるんですね。 でもひょっとして、このコネクタが使われていた機器はこの断線のために故障していたのかも? これってどこから来たものなのかな? ミニパワーアンプ のときにもヘンテコなスプリッタのために小一時間トラブルシューティングをする羽目になってしまいましたが、 似たような状況でした。 中古パーツの有効活用を目指しているので、こういった落とし穴は結構あります。 ま、それを楽しんでいられるのがアマチュアの良いところ。 基板に電源が入ったので、 テスタでオペアンプ各端子の電圧を アナログテスタ でチェック。 すると片チャンネルのオペアンプ出力ピン電圧が想定外の値。 原因はボード上の半田ブリッジでした。 このトラブルシュートはスムースに行きました。 ヘッドフォンアンプは正常に動作を開始。 今夜はむき出しの基板で音楽を楽しみます。 翌土曜日の夜は匡体実装。 どうしようかいろいろ考えたのですが、 ニューヨーク在住の方からの製作依頼品のAMトランスミッタ をつくるために買ったタカチのケースがひとつ在庫していましたので、 それを使って、コンパクトでかわいらしい単体ユニットに仕上げることにしました。 それにしてもあのAMトランスミッタ、今にしてみればヘボい性能しか出なかったけれど、 ちゃんとニューヨークで使ってもらえたのかなあ。 せっかく匡体は12年前の新品を使うのだから、つまみもリアのRCAピンジャックもフロントパネルのステレオミニジャックも新品を使用。 いつ買ったものなのかも覚えていない長期在庫ですが。 あれ、ペテットの在庫が見つからない。 今夜はパネルと内部配線まで、基板の固定は後回し。 リアパネルのEIAJ電源ジャックは IC-502 と同じアウター・ポジティブにしました。 装置の全電流はオンボードLEDとフロントパネルLEDを含めて70mA。 雰囲気温度25℃のときHA178L00のパッケージの最大許容放熱は800mWなので、 約11Vの電圧降下まで対応できます。 よって装置の最大許容電源電圧は5V+11Vで16V。 ということで装置の動作可能電源電圧はDC6V〜DC16Vです。 できあがってみると、程よい手作り感のなかなかかわいらしいルックスになりました。 中身は100円しないオペアンプ1個と20円で買えるトランジスタ2個なのですけれどね。 すでに土曜日の25時を過ぎていますが、完成前祝いとして冷えたワインを引っ張り出し、 ケースに入ったアンプを眺めながら 例のコンピレーションアルバム を2枚連続で。 オーディオテクニカATH-MSR7の性能に助けられている部分が大きいとは思いますが、 いままで気づかなかった、聞こえなかった、よく見えなかった音… サックス奏者の息遣いとか、ベースの弦の音とか、床を踏み鳴らす音とか、 わずかに入れられた効果音とか…がくっきりと、でも押しつけがましくなく聞こえます。 あーいいなあ。 [2017-04-01] 匡体実装。ケースはタカチKC4-10-8GS。 |
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