Ramsey Electronics
Ramsey
社はアメリカのエレクトロニクス・ホビイストの間では最も知られているキットメーカーであるのではないかと思われます。
多くのパーツショップやウェブサイトで取り扱われていますし、多くの雑誌に広告があります。
簡単なLED点滅キットからSSB HFトランシーバまで、数多くのキットを送り出しています。
その製品の評判というと、しかし、必ずしもベストとは言えないようです。
仲間内に聞いても「そこそこ」というのが一般的な答えで、事実私もこのAR-1を含め4点組み立てましたが、
ノントラブルで実用になったのは1点だけです。 まあ、アマチュア無線の世界で有名な今は無き Heathkit 社の製品にしても、 中には設計品質がひどくてマニュアル通りに組み立てただけでは全然使い物にならない高級短波受信機があったようですから、 Ramsey社だけを責めるのもどうかという気もします。 ともあれこれはキット、あくまで素材としてとらえ、いったん組み立てた後にも性能・機能改善で楽しむものだとすればいいんです。 |
さてこの Ramsey AR-1 は、エアバンドすなわち航空無線の受信機です。定価は手元のカタログで29ドル95セント。
専用ケースは別売りです。 最初に組立ててからかれこれ4年も経ってしまいましたが、まだ完成していません。
というのも、いまだに実用域に達していないからです。 アメリカという国は大変広いので、主要都市間交通は航空機によることが多いですし、 ちょっとした町になると緊急医療の目的を含めてたいてい飛行場があります。 したがって簡単なアンテナと受信機でも航空無線を受信できるわけです。 我がラボからだとサンノゼ・インターナショナルがもよりの空港ですが、 同じサンノゼでも小型機用のレイド・ヒルビュー飛行場がありますし、同じ程度の距離にパロアルト飛行場、 マウンテンビューにはNASAのモフェット・フィールド、そして上空にはサンフランシスコやオークランドに降りようとする機体。 以前所持していたハンドヘルド機ではすくなくとも20チャンネル程度が常時アクティブでした。 勤めていたオフィスはNASAのAMES研究所に付帯するモフェット・フィールドの周回レグの真下にあったので、 一日に何回もC-130ハーキュリーズの腹を見ていましたし、T-38タロンやF/A-18ホーネットもしばしば見られました。 スパイ機U-2のシビリアン・バージョンである地球資源探査機ER-2の急角度での離陸上昇は、何度見てもため息ものでした。 ・・・あれ、何のページだったっけ、ここ。 |
アンテナからの信号はLCネットワークを通った後、まずトランジスタ 2SC2498 で高周波増幅されます。
信号はついでミキサー・オシレータIC NE602 に入ります。
このICと外付けのLC共振回路で目的の周波数より10.7MHz高い局部発振周波数が作られます。
これによりICからは10.7MHzの中間周波数が取り出されます。 同調は局部発振コイルに並列に入っているバリキャップに印加する電圧をポテンショメータで可変することによって行います。 中間周波信号は10.7MHzのセラミック・フィルターを通過した後、 中間周波増幅用IC MC1350 に加えられます。 このICはAGC制御されます。 信号はその後中間周波トランスを通り、ダイオード検波されて音声信号が取り出されます。 音声信号は クワッド・オペアンプ LM324 に入り、ここで音声帯域フィルタ/AGC電圧発生/スケルチの処理が行われます。 低周波出力に使われているのは定番のIC LM386 です。 本機の電源は006P 9V乾電池です。 |
局部発振コイルが見えます。 |
組み立ておわって簡単な調整を済ませると、オークランド・センター広域管制をふくめ何局か受信できました。
ところが安定性が悪く、しばしばチューニングを取り直す必要があります。
普通のポテンショメータで行うチューニングは操作にたいへん敏感で、精神統一しないととても合わせることができません。
また、強い局を受信すると最初の一言が大きな音で聞こえるものの、その直後に消えてしまいます。
あるいは、音声が大変にごってしまいます。 調べた結果、普通の乾電池と単なるポテンショメータでは安定した同調電圧を得られないことがわかりました。 電池の消耗につれて同調電圧が変化しますし、スピーカから音が出るたびに電池の電圧が下がって同調が外れるわけです。 暫定的に同調電圧電源として別の電池を使い、同調コントロールにベックマンの10回転精密トリマポットを使ったところずいぶん受信周波数が安定しました。 受信周波数が不安定な原因はもう一つ、局部発振コイルの同調点が基板の置き方で変わること。 ベンチの作業台、これは近所のガレージセールで椅子込みで25ドルで買ったものですが、 木目コーティングされているこの天板がスチール製であるということを思い出すまでに少し時間がかかりました。 安定なラジオとして完成させるには磁気シールドを含めてしっかりしたケースに収めるべきなようです。 ここまでやった段階でこのAR-1はガレージの棚に上げられ、そのままとなってしまっていました。 最近 Lafayette HA-55A エアバンド・レシーバ をいじりはじめ、その回路図が入手できるまでの間のネタとして、再びAR-1を引っ張り出したわけです。さあ、どうしよう? |