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Hallicrafters SX-96

General Coverage Shortwave Communications Receiver
(1955)

Hallicrafters SX-96 Front View


SX-96

    ハリクラフターズSX-96はアマチュアバンド受信に重点が置かれた、 12球ダブルスーパーヘテロダイン方式のゼネラルカバレージ受信機です。 1955年発売、定価249ドル50セントで、翌1956年まで販売されました。 世代的にはハリクラフターズ製受信機で最も評価されているSX-88の後継機にあたります。 SX-88が最上位モデルとして企画されたものの結果として多くのアマチュアには高価すぎるものとなってしまったため、 機能・性能と販売価格のバランスを取り直した上位機種として再設計されたものだ、 と考えることができます。

    SX-96は新機能のUSB/LSB切り替えポジションが最大の特徴で、 5段階の選択度切り替え、BFOピッチコントロール、大型Sメータなど充実した内容の高級受信機です。 当時のアマチュア局は受信機と送信機を並べるのが普通で、 よってこの受信機にも送信機との接続(フロントパネルのスイッチで送信機をONできる、 あるいは送信機から受信機を停止できる)の工夫がされています。

    同じ年に発売されたSX-99は96に比べ簡素化された作り (8球シングルスーパーヘテロダイン) ですが、 こちらは1959年まで販売され、現在でも数多く見受けられます。

    SX-96はすぐに後継機SX-100に取って代わられ、 さらに1957年にはこれまた評価の高いアマチュアバンド専用機SX-101が登場します。

    SX-96の面影は1964年発売のSX-122まで引き継がれますが、 それがハリクラフターズ最後の本格的ゼネラルカバレージ受信機となりました。





    SX-96は受信周波数範囲全域でダブルスーパーヘテロダイン動作します。 第1中間周波数は中波放送バンドのすぐ上の1650kHz、そして第2中間周波数は50.5kHz。 このため538kHzから34MHzまでをカバーするとはいえ、 第1中間周波数に近い1580kHzから1720kHzの間がバンドギャップとなっており受信できません。 短波帯は3バンドに分割されています。

    バンドセレクタは「バンド1/2/3/4」あるいは「バンドA/B/C/D」といった表示はされていません。 しかしメインダイヤルのガラスにはバンド表示として「1/2/3/4」と赤字で示されています。





    SX-96はふたつの大型の円形ダイヤルを持ちます。 左がメインダイヤル、右がバンドスプレッドダイヤル。

    いずれも大型ダイヤル盤の外周に刻まれたギアをチューニングつまみのシャフトにつけられたギアが回す方式で、 さらにギアで減速されてバリコンを回します。 バンドスプレッドダイヤルはダイヤル盤からバンドスプレッドバリコンまでは極細金属ワイヤで繋がれています。

    ダイヤルつまみシャフトにはフライホイールが組み込まれており、 減速比も大きく、ダイヤル操作はたいへんスムースです。

    SX-96は各アマチュア無線バンド用に較正されたバンドスプレッドダイヤルを持っています。 たとえば40メーターバンド(7MHz帯)を使うときは、バンド切り替えスイッチを4.6-13MHzにセットし、 ついでメインダイヤルを7.4MHzの位置につけられた印にあわせます。 これにより、バンドスプレッドダイヤルで正確な周波数を読むことができます。

    メインダイヤルには冷戦の時代のラジオの特徴、CDマークも見られます。





    アマチュアバンド用に較正されているバンドスプレッドダイヤルは、 7MHz帯や14MHz帯では20kHz刻みの目盛り、 21MHz帯では50kHz刻みの目盛りです。 7MHz帯では目盛り間隔が広いので、 5kHz程度までは読めそうですね。 しかし本機はクリスタルキャリブレータは内蔵していませんので、 メインダイヤルの合わせマークだけに頼ったのでは5kHzの確度は望めません。






回路構成

高周波増幅 / 第1周波数変換 / 第1中間周波増幅

    アンテナからの信号はまず6CB6 シャープカットオフ5極管 (V1) で高周波増幅され、 第1周波数変換管 6AU6 (シャープカットオフ5極管) (V2) に入ります。 ここで信号は第1中間周波数1650kHzに変換されます。 第1局部発振は出力用3極管 6C4 (V3) で行われており、 発振回路のB電圧は放電安定管 VR150/0D3 (V10) で150Vに安定化されています。

    第1中間周波増幅を行うのは 6BA6 リモートカットオフ5極管 (V4)。 このステージは高周波増幅段とともにAGC電圧によってゲイン制御されており、 この管のプレート電流がフロントパネルのSメータによって計測されます。 入力信号がないとき 6BA6 はフルゲインとなり、したがってプレート電流が最大となります。

    Sメータ指針が無信号時で左、信号強度が大きくなるにつれて右に振れるようにするため、 針の振れかたが通常のものとは反対のメータが使用されています。 この6BA6はSメータアンプを兼用しているともいえるでしょう。




SX-96 S Meter

第2周波数変換

    増幅された1650kHzの信号は中間周波トランスを通った後、6BA6 (V5) で構成される第2周波数変換段に入ります。 第2局部発振は12AT7 双3極管 (V12) で構成された2つの水晶発振回路によって行われます。 双3極管の第1セクションがUSBおよびAM受信用の1700kHz発振回路、 第2セクションがLSB受信用の1600kHz発振回路です。 このうちRESPONSEつまみで選択されているほうの3極管のカソードがチョークコイルを介してグラウンドに落とされ、 回路は発振を開始します。 選択されていないほうの管はカットオフ状態となり、動作を停止します。 ヘテロダイン処理によって得られた50kHzの信号は50.5kHzを中心周波数とする第2中間周波数トランスを通ります。

    第2周波数変換はUSB受信のときにアッパーサイドインジェクション、 LSB受信の時にロワーサイドインジェクションになっているため、 USB受信時はサイドバンドが反転され、 USB受信時もLSB受信時も第2中間周波ではLSBになっています。 この構成のため、USB時とLSB時とでBFO周波数を切り替える必要はありません。

    この第2周波数変換ブロックはサブシャーシ上に組み立てられています。





第2中間周波増幅

    第2中間周波増幅は6BA6 (リモートカットオフ5極管)(V6) で行われます。 この管はAGC制御を受けていません。

    増幅された50kHzの第2中間周波信号は、2連の中間周波トランスを通ります。 この中間周波数トランスの中心周波数と帯域幅はフロントパネルのSELECTIVITYスイッチで切り替えられ、 可変選択度機能が実現されています。 また選択度ポジションによる音声レベルの違いを吸収するため、 SELECTIVITYスイッチは第2中間周波増幅管の増幅度を微調整しています。




Selectivity Control

AM検波 / ノイズリミッタ

    6BJ7 (V7) の2極管第1セクションのプレートに印加されます。 ここが検波段で、シンプルな半波検波です。

    検波管6BJ7はトリプル2極管で、第1セクションが検波、 第2セクションがノイズリミッタそして第3セクションがAGCとして動作します。 検波段のカソードから取り出された音声信号は、2極管第2セクションを通過します。 ここがノイズリミッタで、通常は順方向にバイアスされて導通状態にあり、検波出力の音声信号が通過できます。 しかしイグニションノイズのようなパルス信号が与えられると2極管は逆バイアスとなって、 音声信号を遮断するようになっています。

    フロントパネルのノイズリミッタスイッチをOFFにすると、 ノイズリミッタ2極管のカソードとプレートがショートされて、 音声信号は常時通過できるようになります。







SSB-CW検波 / BFO

    AM/SSBの切り替えはフロントパネルのトグルスイッチによって行います。 SSBにするとBFO管のプレートにB電圧がかかってBFOが動作し、AMにするとBFOが停止します。

    BFOは双3極管 6CS7 (V8)の第2セクションからなるハートレー発振回路で、 BFO発振周波数はフロントパネルのPITCHコントロールで微調整を行うことができるようになっています。 PITCHコントロールを回すと発振回路のコイルに差し込まれたスラグの位置が動くようになっています。

    発振出力はカップリングキャパシタC93(300pF)を介して検波段2極管のカソードに印加されます。 これは中間周波信号にキャリアを注入するというよりも、 2極管のカソードをBFO周波数で振ることにより、 BFO周波数の半波サイクルだけAM検波を行うようにしている、とみることができます。 ある種のプロダクト検波だ、と言えるかもとれません。

AGC

    AGCは第2中間周波段の出力を検波して、 その直流分を高周波増幅段と第1中間周波増幅段のコントロールグリッドにフィードバックしています。 AGC用2極管のカソードは安定化されたDC150Vを分圧してつくったDC4.5Vでバイアスされています。 このため第2中間周波の信号レベルがこの値を越えないうちはAGC電圧は発生せず、 4.5Vを越えて初めてAGC電圧が発生します。 この仕組みにより、ディレイドAGCが実現されています。

    フロントパネルのAVCスイッチをOFFにすると、AGCラインは抵抗を介してグラウンドに落とされ、 高周波増幅段と中間周波増幅段は常時フルゲインとなります。


低周波増幅 / 音声出力

    RESPONSEスイッチはUSB/LSBを切り替えるだけでなく、 オーディオ段の周波数特性も切り替えます。 NORMALポジションでは周波数特性はフラット、 TREBLE CUTで高域が減衰され、 USB/LSBポジションではさらに低域も減衰されます。

    音声信号はカップリングキャパシタとボリュームコントロールを通った後、 双3極管 6SC7 (V8) の第1セクションのグリッドに印加されます。 ここで増幅された音声信号はカップリングキャパシタを通って出力用5極管6K6-GT (V9) のコントロールグリッドに印加されます。 音声出力信号は出力トランスの2次側から取り出されます。

    本機にスピーカは内蔵されておらず、背面パネルの3.2Ωもしくは500Ω用のスピーカ端子にスピーカを接続します。 今のスピーカでは500Ωのタップを使用することはまずないでしょう。 また本機フロントパネルには現代風の、差し込むだけでスピーカの音が切れるヘッドホンジャックがあります。






電源回路

    電源回路には全波整流管 5Y3-GT (V11) が使われ、B電圧として音声出力管に300V、その他の回路に270Vを給電します。 安定性が要求されるステージへのB電圧供給は放電安定管 VR150/0D3 (V10) を介して行われています。 整流管を除く全ての真空管のヒータとパイロットランプへの電力は6.3VのA電源巻線から供給されます。 背面パネルにはDC動作のためのコネクタが用意されていますが、インバータが内蔵されているわけではなく、 外部から300VDCのB電源と6.3Vのヒータ電源を供給しなくてはなりません。 通常のAC動作時には、このコネクタにジャンパープラグを差し込んでおきます。

    シャーシ上面を見て面白いのは、使われている真空管の種類。 放電安定管0D3がST管、低周波増幅とBFOの6SC7がメタル管、整流管5Y3-GTとオーディオ出力の6K6-GTがGT管、 そしてその他がMT管といった具合で、よりどりみどりの感があります。








リビングの飾りの2年間の後に

    私のSX-96はリバモアのスワップミートで前のオーナーから直接買いました。 SX-96にはマイナーチェンジが入っています。私のモデルはMARK1A。 欠品はなく、外観は年代相当の疲れが見えるものの保存自体は良好で、 オリジナルのマニュアルとオーナーの動作保証付き。 オーナーはまた施した改造の内容についても説明してくれ、内容を記録したメモをつけてくれました。 真空管全盛の時代の高性能受信機が欲しかったもののコリンズはあまりに高価、 ハマーランドはいかにも大きくて手におえなさそうに思っていましたので、 端正なマスクで程度の良いSX-96は私にとってベストバイです。

    ラボで動作させてみると全ての機能が正常に動作し、当然のことながら S-38C などの入門者用ラジオでは全く聞こえない信号が見事に受信できます。 安定度も十分。

    しかしその後、どうやらこのSX-96は完調ではないように思えてきました。 感度・選択度・安定性は大変良いものの、どうにも音質がいまひとつなのです。 SSB受信ではさほど気にならないのですが、AM受信の音質がかなり悪いことがわかりました。

    ラボで使用するとすぐそばのコンピュータのノイズも強烈に入ってしまい、 どうにも国際放送をゆっくり聴く雰囲気になれません。 やがてSX-96はリビングルームのスチールラックに移され、 いずれは手を入れてやろうと考えつつも単に部屋の飾りとしての存在になってしまっていました。 以来ラジオはローカル・国際放送のいずれも、ほとんど エコーフォンEC-1A を使うようになってしまいました。

    2年間が経ち、 SBE SB-34トランシーバ の受信部分の修理が一段落しベンチを片づけたのを機に、 ようやく思い立ってSX-96の音質改善プロジェクトを開始することにしました。 しばらくぶりに電源を入れ、状態を再確認。 AM受信時の音質がひどく、これは強烈なローカル放送だけではなくて通常の国際放送でも発生します。 音質を除いた他の性能に問題はなさそうです。 まずはケースを開け、マニュアルを読み返し、また前オーナーの改造内容を確認することから始めました。






前オーナーの改造

    前のオーナーの作業メモに記録されていた変更内容は、通常のメインテナンスに加えて、検波段をSX-101相当にするものでした。

第1局部発振回路調整用トリマキャパシタ変更

    第1局部発振回路の調整用トリマのC52を25-125pFに、パラに入っているC51を100pFマイカに変更。 オリジナルのC52が壊れてしまったため。 これは音質劣化に影響するとは思えません。 すでに40年を経過した受信機ですので各部のキャパシタの劣化は当然です。 前オーナーはすでにいくつかを交換しています。

  • C33, C37 0.047μF 600WV を 0.05μF 630V品に交換。
    リークのため。いずれも第2中間周波増幅管のスクリーングリッドに入ったバイパスキャパシタです。

  • C73,74,75 および 82,83, 84を同容量のものに交換。
    リークのため。 これらはいずれもSELECTIVITYコントロールによって切り替えられる、選択度設定のためのキャパシタです。 まずは音質劣化とは関係ないとしてよいでしょう。

  • 低周波出力段グリッドバイパスキャパシタ容量変更
    低周波出力管 6K6-GT (V9) のグリッドバイパスキャパシタC100を、 ノーマルの10μF/50WVから47μF/50WVに変更。 オリジナルパーツ劣化のため。音質に影響しそうな変更です。

ノイズリミッタ改造

    変更点数は少ないながら、ノイズリミッタ周りの回路を大きく変更しています。 メモにはSX101に近づけるためとありますが、大きな疑問符つきの改造です。 前オーナーはSSBあるいはCW受信が専門でAM音質に関しては気にしなかった、という可能性もあります。

BFO出力取り出し方法変更

    BFOは双3極管 6SC7 (V8) の第2セクションで発振され、 カップリングキャパシタC93 (300pF)を介してトリプル2極管6BJ7 (V7) の第2セクションで構成される検波段のグリッドに印加されます。 ノーマルではBFO出力は 6SC7のグリッド(3番ピン)から取り出されていますが、 これをプレート(2番ピン)から取り出すように変更されています。 前オーナーのメモにはSX-101MkUと同等にするためと書かれており、またこれによってより安定した動作になる、とあります。
    この改造の妥当性は検証する必要がありそうですが、音声の歪はもっぱらAM受信時に顕著なので、 ひとまずは忘れて良いと思われます。

    以上の回路変更のほか、ケース上部のボンネット内側に小型スピーカが取り付けられていたり、 電源ケーブルが現代風の3ピンのものに取り替えられています。 前オーナーはまた真空管をテスタでチェックして、エミ減となっていたものを交換しています。





低周波増幅・出力段のチェック

    半田ごてとポンコツオシロに火を入れ、いよいよ内部をいじりだすことにします。

    おそらくここは大丈夫だろうと思いながらも、まずは低周波増幅・出力段のチェック。 電源、スピーカ(オーディオ用のコンパクトブックシェルフタイプ)をつなぎ、 CDプレーヤの音声信号を背面パネルのPHONOジャック(RCAジャック)に接続。 そう、この通信機型受信機にはなんとレコードプレーヤをつなぐための用意があるのです。 この時代の高級モデルではさほど珍しくはないようなのですが、それにしても意外。

    テストで使うCDは Bob Culbertson の <Cafe San Francisco>。 チャプマン・スティックとよばれる12弦のギターのような楽器をたった一人で演奏しているものです。 パロアルトのアートフェスティバルの日に、 ユニバーシティ・アベニューの路上で演奏しているCulbertson氏のスティックから響くなんともきらびやかでかつ深いその音に感激してCDを買いました。 本人のサイン入りです。 真空管の細いグリッド線に与える音としてまさにふさわしいものです。 スピーカからは短波受信機であることを忘れてしまいそうな美しいスティックの響きが聞こえます。

    前オーナーの出力アンプのグリッドバイパスキャパシタ容量変更は問題を起こしていないといえるでしょう。





検波段入力信号のチェック

    第2中間周波増幅管6BA6 (リモートカットオフ5極管) (V6) で増幅された50kHzの第2中間周波信号は、中間周波トランスを通った後、 検波管6BJ7 (V7) の2極管第1セクションのプレートに印加されます。 そこで、6BJ7 を取り外してプレート端子の波形を見てみることにしました。

    ローカルAM放送を受信してAM信号波形を見たところ、 SENSITIVITYコントロール77以上に上げると波形ピークがクリップされてしまいます。 これはAGCが 6BJ7 の第3セクションを使っており、 それを抜いてしまっているために入力信号が強いにもかかわらず前段がフルゲインで動作してしまっているためです。 SENSITIVITYコントロールを下げれば、教科書どおりのAM波形となります。 ここまでの段階で大きな歪があるようには思われません。 そうすると、検波段で歪が発生していることになります。






代替検波段でのテスト

    検波段に問題があることを立証するため、代わりの検波段を設けてテストしてみました。 パーツボックスから検波用ゲルマニウムダイオード、セラミックキャパシタそれに抵抗1本を取り出し、 ほとんどゲルマラジオのような即席検波回路を組み込みました。 音声出力はそのままボリュームコントロールのホット側に注入してみます。

    すると案の定、受信音に歪はありません。 WWVの受信波形も正常な正弦波ですし、短波・中波のどの局もきれいに聞こえます。 すでに記したように、 高周波・中間周波段での飽和を防ぐため適宜SENSITIVITYコントロールを操作する必要がありますが。





AGCとノイズリミッタ

    AGCは第2中間周波段の出力を検波して、 その直流分を高周波増幅段と第1中間周波増幅段にフィードバックしています。 ぱっと見る限りここで歪を発生させる可能性は少ないように思われますし、 AGC動作自体は正常に行われているようです。 SX-96のSメータは第1中間周波増幅j管 6BA6 (V4)のプレート電流を計るようになっており、 そしてSメータの動きは正常に思えます。 これは6BA6のコントロール・グリッドに印加されたAGC電圧の振る舞いが正常であることの証でしょう。

    これに対して、音声信号の導通・遮断を制御するノイズリミッタはかなり怪しく思われます。 もっとも、問題となっている歪はノイズリミッタスイッチのON-OFFによらず発生していました。 もしノイズリミッタに問題があるとすれば、 前オーナーがおこなったSX-101化改造によって検波段に問題を引き起こしてしまった場合でしょう。

    取り外した 6BJ7 はハリクラフターズ社のロゴ入りですので、おそらくオリジナル球でしょう。 念のためヒータを乾電池で点火してみたところ各セクションの計3本とも正常に点火します。





AGCの動作チェック

    AGC回路は正常であることを確認するため、6BJ7を元に戻しました。 ただし検波回路のプレートは切り離し、検波はゲルマニウムダイオードによる代替回路のままです。

    動作させてみると、音は良好なままです。 今度はSメータが電波の強さに応じて動き、 強力な信号を受信中にSENSITIVITYコントロールをフルにしても受信音は歪みません。 よってAGCは正常に動作しているようです。

    ただしここで奇妙なことに気が付きました。 AVCスイッチをOFFにしてもAGCが動作し続けるのです。 AVCスイッチをOFFにするとAGC出力ラインが100Ωの抵抗でグラウンドに落とされ、 高周波増幅・第1中間周波増幅ともフルゲインで動作するようになります。 このとき第1中間周波増幅管のプレート電流は最大となり、 したがってSメータは信号強度によらずS1を示すはずなのですが、 Sメータは依然として信号強度に応じて振れます。 手を加え始めるまではたしか正常にAGCが切れていました。 代替検波段がなにか影響しているのでしょうか?

2024年追記: AGCスイッチが接触不良でONせず状態になっているためでした。




BFOの動作チェック

    ここまでの作業で私の最大の用途である「国際放送をリラックスして聴く」ことができるようになったわけです。 ここで投げ出してゲルマニウムダイオードを残したままケースを閉じてしまってもいいわけですが、 それではSSB受信ができないままで、 せっかくのUSB/LSB切り替えやアマチュアバンド較正目盛り付きバンドスプレッドの意味がありません。

    BFOを動作させ、発振出力をオシロで見てみました。 わずかな歪が見られるもののほぼ正弦波で、発振は安定しています。





SX-101化改造の復旧

    ますますSX-101化改造に問題がありそうに思われてきました。 そこでこの部分の改造をノーマルに戻してみました。 変更は3個所、検波用2極管とノイズリミッタ用2極管のそれぞれのカソードをつなぐあたりで、 抵抗撤去が1つ、キャパシタの撤去・ショートが1個所、そして抵抗値変更が1つ。 代替検波回路を取り外し、変更を終え、期待しつつ電源投入。 すると・・・残念、音はやはり歪んでいます。

    シグナル・トレーサがわりの安物PC用アンプ内蔵スピーカ (ハルテッド・エレクトロニクスのアニュアルセールで1ポンド45セントの目方売りで買ったものです。 ざっと1kg100円です) をつないだところ、歪はさらに悪化してしまいました。 このアンプの入力インピーダンスがあまり高くないとはいえ、悪化具合はかなり大きいものです。 ひょっとしたら検波は正常なのに、 その出力をノイズリミッタの周辺回路が変に吸収してしまっているのかも知れません。





ノイズリミッタの切り離し

    そこで、思い切って検波段からBFOおよびノイズリミッタ回路をすべて切り離してみました。 これで代替検波回路との違いはゲルマニウムダイオードを使うか、2極真空管を使うかだけになります。 結果は・・・歪なし。 あれあれ、ひょっとしたらSX-101化改造そのものはうまくいっていて、原因は他のところにあるのかも。 それでは、BFOだけを元に戻してみたら・・・? OK。 音声は正常で、AMもSSBもうまく復調できます。 BFOは前オーナーの改造回路のままなので、したがってこの改造をオリジナルに戻す必要はなさそうです。

    いずれにせよこの時点で、 問題はノイズリミッタとコモンになる検波段のカソードまわりにあることがはっきりしてきました。 となるとまず疑われるのは都合4個使用されているキャパシタの劣化。 4個のうち1個は前オーナーの改造時に撤去された0.22μFで、 これはパーツ箱のなかから取り出した新古品を取り付け直したのでたぶん問題無し。 あとの3個に疑問が残っています。

    あるいは、前オーナーのチェックでは正常と判断されていたものの、 ノイズリミッタ用の 6BJ7の第2セクションでカソード・ヒータ間リークが起きている可能性もあります。 が、もしそうなら音声出力に顕著なハムが混入してもよさそうですが、ハムはほとんど出ていません。 したがって球自体は正常であると判断できます。 念のため手持ちの新品球を使ってもみましたが、結果に変わりはありませんでした。






検波管のカソード回路

    ノイズリミッタを切り離せば正常、といっても、よく聴くと少ないながらも音は歪んでいます。 オシロで音声信号を見てみると波形の下側がクリッピングされてしまっており、上下で波形の差が見られます。 単純な2極管検波ですから多少の非直線性は覚悟のうえとはいえ、正常とは思えないレベルです。 受信状態の良くないDX局を受信するならまだしも、 BBCのワールドサービスをくつろいで聴くには不向きです。 何とかもう少し良くならないものか・・・。

    2晩を費やしてあれこれ試行錯誤した結果、 検波管のカソードに入っている抵抗を小さくすることによって歪がかなり低減できることがわかりました。 オリジナルでは120kΩと330kΩが直列に入っていて、グラウンド側の330kΩとパラに220pFのキャパシタが入っています。 これを33kΩと100kΩに変え、キャパシタとして2000pFのマイカを使うことでほぼ満足できる結果が得られました。 キャパシタに1000pFを使うと高音がかなりきつくなり、また50kHzの第2中間周波数成分がわずかに残留します。 またこの定数のままノイズ・リミッタ回路を元に戻しても音質は変化しないことが確認できましたので、 オリジナルの抵抗とキャパシタを完全に取り除いて配線し直しました。 オリジナルの抵抗は1/2W、ところが手持ちの抵抗はほとんどすべてが1/8W。 幸い検波管のカソード電流は微弱ですから、手持ち品で問題ないでしょう。 今後のために1/2Wの抵抗をそろえておこうと思います。






ノイズリミッタの謎

    検波管のカソード抵抗を変えたことによって、 ノイズリミッタの動作点が狂ってしまうかもしれませんが、 そもそもこの回路にあまり期待はできないでしょう。 当時ノイズといえば自動車のイグニションノイズ程度だったのでしょうが、 いまでは最大のノイズ源はすぐ近くのコンピュータ。 どのみちこの程度の回路では除去できませんし、 ノイズリミッタスイッチをOFFにすれば検波管の信号はノイズ・リミッタをスルーしますから、 音の劣化も起こり得ません。

    さて、低周波増幅段の入力結線も元に戻し、これで完成!と思いきや、なんと音がひどい! ものすごく歪んでいるだけではなくて、レベルもとても小さくなっています。 あわてて検波段にオシロをあてると、そこでは正常。しかし低周波増幅段の入力信号は明らかに異常。 しかもノイズリミッタスイッチをONにしてもOFFにしても音はひどいままです。 いったいどうしてこんなことが起こり得るのか・・・。 回路図をながめ、配線を追いかけてたどり着いた結論を確認するためテスタを当ててみれば−ノイズリミッタスイッチの不良。 頑丈そうなトグルスイッチですが、導通がありません。やれやれ。 やはりカソード抵抗の変更がもとでノイズリミッタに十分なバイアスがかからずに効きっぱなしになっており、 しかもそれをバイパスすることができなかったわけです。





作業完了

    結局スイッチの位置によらず常時ノイズリミッタをバイパスするようにし、 今回の作業を終了することにしました。 パーフェクトな修理とは行きませんでしたが、私の用途には十分です。 オリジナルと同じトグルスイッチがもし手に入ったら、 今度はノイズリミッタの対策でまた楽しめるでしょう。 SX-96は再びスチールラックに戻されました。今度はいつでも使用できる状態で。

1998-11-12 作業終了






(ここで26年間のブランク)


26年ぶりに再整備に着手

    1999年に日本に帰国して以降、第1研究所ではスチールラックに、 中央研究所では玄関のキャビネットの上に置かれているのみで、 一度も通電されることないまま。 おそらくは通算で26年間、SX-96は無通電のままでした。 作業リストの後ろのほうにあったのは、 以前は正常動作していたからです。

    2024年の正月も終わり、 CRV-1/HB第2輪廻 の作業が一段落したので、 つぎにSX-96の整備を行います。

    カバーもかけずに置いていただけなのでホコリで汚れてしまいました。 メータの透明カバーは黄変とクラックが進んでしまいましたね。 互換品が手に入るなら交換してしまいたいところです。

2024-02-24 SX-96 整備開始






1998年の整備

    NoobowSystemsのウェブページは基本的に自分の作業ログとして書き残しているわけですが、 まあ書いておいてよかったですね。 26年も前の自分の作業なんて細かく覚えているはずがありません。 で、自分の記録テキストを読んでみると、 かなり怪しい部分があります。 AM復調音不良を改善する方法としてはおそらく適切でないいじり方をしています。 まあ仕方ないね、今でさえきちんと修理理論が身に付いたわけでもないのに、 あの頃は今ほども分かっていなかったからねえ。

    ログにあるように、検波段は全体的にいじられていて、キャパシタ交換もいくつか。 しかし電源平滑キャパシタは工場出荷のままです。






ヒューズホルダを交換する

    保管してあった場所から動かすときにヒューズホルダが外れてしまいました。 ただ外れただけではなく、ホルダ内部の接続片のはんだ付けが取れてしまったので、 在庫の中古品に交換します。 これがまず最初の修理ですね。

    ヒューズホルダを交換して電源を入れると、 パイロットランプが点き真空管のヒータも点火しましたが、 背面スピーカターミナルにつないだスピーカからは何の音も聞こえてきません。 うえ? 保管中にオーディオ出力トランスが湿気や熱サイクルで断線してしまったかな?

    アナログテスタ で調べてみると、トランスは正常。 スピーカも正常。 おかしかったのはスピーカターミナルでした。 ねじ止めターミナルの表面がしっかり参加していて、 スピーカワイヤをきちんとねじ止めしたのに、 導通がなかったのです。 取り付けなおしでスピーカからノイズが聞こえ始めました。

2024-02-25 スピーカターミナル接触不良 修正






バンブルビーは全撤去

    音は出始めたものの、どのバンドでも信号は受信できません。 単なるバンドセレクタスイッチの接触不良でもなさそう。 AF GAINポテンショメータに音声信号を注入すると、 スピーカからは音が出てきましたが、 音量は不十分で、音質も良くありません。 やはりこれは軽整備ではなくて修理作業になりますね。

    SX-96の音声出力は6K6GT、初段低周波増幅は6SC7の片側で行われます。 バンブルビーがいくつも使われていますが、 うち何本かは動作させているうちに物理的にオイルが漏れ始めました。 電気的なリークも明らかで、グリッドバイアスがむちゃくちゃになっています。 こんなのはとっとと全部交換してしまいましょう。

2024-02-25 AF段動作開始 キャパシタ交換作業開始






低周波段復調

    RESPONSEコントロールに使われていた3本のハイカットトーンコントロール用バンブルビーを新品のキャパシタに交換しました。 6K6GTのグリッド電圧が6Vも出ていたのがなくなり平均0Vの正常値に。 音量は増し、音は自然な響きになりました。

    さらにバンブルビーを3本厄払い。 うち2本はリークしていました。 音質音量ともにさらに良くなりました。 6K6GTシングルアンプ、いい感じで鳴っています。

2024-02-25 低周波段整備完了






AM検波回路が働いていない

    AF段はおおむね正常動作を始めましたが、ラジオは受信できません。 調べを続てみると、どうやらAM検波段が動作していないものと見えます。 シグナルジェネレータの信号をアンテナ端子に入れて各部をオシロで追ってみると、 50.5kHzの第2中間周波信号はAM検波段に40Vp-pを超えるような強烈なレベルで入っています。 それでもスピーカからは蚊の鳴くような音しか聞こえず。

    40Vp-pも振幅があるということは、AGC電圧も発生できていないようですね。 AM検波/AGC/ANLを構成しているトリプルダイオード管6BJ7は動作しているのだろうかと思い、 この管を抜いて定電圧電源でヒータを点火してみました。 管内の3つのセクションのヒータがすべて点火しています。 1998年に修理を試みたときもこの管は正常であったし、 その当時に別の在庫完に交換したときにAM検波動作の様子は変わりませんでしたから、 この管はいまも正常であるのでしょう。

2024-02-26 AM検波段とAGC電圧発生が動作していない





輪廻転生

    特に何をしたわけでもないのに、短波が聞こえ始めました。 Sメータも信号強度に反応しはじめ、 そのうちそれなりに元気に受信できるようになってきました。

    直ったのは嬉しいけれど、こういうのは困ります。 どこがどう悪くて、それをどうしたから直った、という納得ができないと、 いつまた突然無音になってしまっても不思議ではありませんからね。

    いまのところ、 6BJ8のソケットの接触不良で6BJ8のヒータが点火していなかったか、 あるいは加熱が弱すぎた・・・のが、 真空管を刺しなおして復活したというのがスジが通る説明。

    ともかくも受信動作し始めたので、整備を続けます。

  • AGCフィルタ交換
  • 第2中間周波増幅管カソードバイパス交換
  • AM検波とANLの改造をオリジナル回路・オリジナル定数に復元
  • ANLスイッチONせず故障を修復

  •     バンブルビーはさらに2本厄払い。 2本ともリークしていました。

    2024-02-27 短波受信動作開始 整備継続



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    Sメータを壊しちゃった

        今日は50.5kHz第2中間周波増幅段の点検と第2中間周波トランスの調整。 感度に変化はありませんが、 SELECTIVITY=0.5KCポジションでの選択度が格段にシャープになりました。 半面、5KCポジションでは通過帯域にニ峰特性が出てしまい、AMの復調音質がわずかに劣化してしまいました。 ラジオタイランド日本語放送を聞く限りは問題とはならなさそうですが。

    2024-02-28 第2中間周波トランス調整

        バンドCとバンドDでコイルパックのトラッキング調整を行ってみました。 国際短波放送を聞くのに一番よく使うバンドC全域で感度大幅アップ! これはうれしい。

  • ??第1中間周波増幅段点検 プレート抵抗交換
  • ??第1中間周波1650kHz IFT調整
  • ??高周波増幅段点検
  • ??バンドD/バンドCトラッキング調整 バンドCの感度大幅向上

  •     ところがSメータを壊してしまいました!! 今回整備を始めた当初からSメータの針の動きがスムースでなく、 途中で引っかかるような動きだったのです。 AGCの動作不良かもと思いましたが、 受信機が正常と思える動作を初めても針は途中で引っかかる動き。 どうにもダメだったのでピボット調整ネジを緩めたら緩め過ぎてしまい、 コイル枠が外れてしまったのです。 あああ、やっちゃった。

    2024-02-29 トラッキング調整ほか / Sメータ損傷



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    代替Sメータの駆動方法を考える

        SX-96のAGC電圧発生用2極管はカソードがDC4.5Vでバイアスされており、 第2中間周波信号の振幅がこの電圧を越えて初めてAGC電圧が発生し始めます。 これによりディレイドAGCを実現しています。 入力信号がある一定のレベルに達するまではAGC電圧は発生せず、 受信機はフルゲインで動作するようになっているわけです。

        このディレイドAGC回路のため、AGC電圧を測定表示したのではSメータとしてはうまくありません。 ということは、AGC電圧を受けて増幅度が変わる真空管のカソード電圧を表示する方式でも同様にうまくないのでしょう。 そこでSX-96では、第2中間周波増幅管のプレート電流を測定表示する方式を取っています。

        第2中間周波増幅管のプレート電流は無信号時に最大で、 信号が強まるにつれてプレート電流は減っていきます。 メータの指示が無信号時に左側で、 強まると右に振れるようにするために、 SX-96のSメータは右端がゼロになっている逆振れタイプが使われています。 壊れたSメータの代替品はそうそう見つかりそうにありません。 普通のメータを使うと、 ナショナル・クーガシリーズ のように、 メータの振れが普通の通信型受信機と左右反対になってしまって、非常によろしくありません。

        でもちょっとまって。 第2中間周波増幅管のプレート電流が信号強度に応じて滑らかに変化するのなら、 そのカソード電圧を測ってもいいのでは?

        第1中間周波 (1650kHz) 増幅管6BA6のカソード電圧を マルチテスタ のDC2.5Vレンジで測ってみると、 無信号時に1.1V、 強信号時に0.6V を示します。

        今度は 外部安定化電源装置 を併用して、テスタの+リードをDC+1.04V固定、 テスタの-リードを6BA6のカソードに接続して、 DC0.5Vレンジで振らせてみると、右のムービーの通り。 メータアンプ新造しなくても、抵抗とトリマポテンショだけで行けるかも。

    2024-02-29 代替Sメータ駆動方法を検討



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    BFO点検とチャープテスト
       
  • BFO回路点検
  • BFO管プレートフィルタキャパシタ新品交換
  • BFO出力がプレート取り出しに改造されていたのをグリッド取り出しに復旧

  •     シグナルジェネレータからの信号で強力なCW信号を模してチャープテストをしてみます。 右のムービーでご覧いただけるように、 チャープはほとんどなく、優秀。 とても快適に電信を受信できます。 ただキークリックはちょっと目立ちますね。

    2024-03-01 BFO整備 チャープテスト



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    FT8を試す

        SX-96でFT8受信を試してみました。

        第1局発を真空管VFOで行っているため温度ドリフトはむろん皆無ではありませんが、 周波数安定性はとても優秀。 信号強度による変動はなく、 電源電圧変動に応じてわずかに動く程度。 FT8はかなりのところまでデコードできています。

        SX-96はAGC回路が検波回路から独立しているため、 BFOをONにしたCW/SSBモードでもAGCが使えますし、 SメータもAMモードと全く同様に使えます。 いいですね。

    2024-03-01 FT8受信テスト






    SSB/CW復調回路を考える

        SX-96はプロダクト検波回路は持っていません。 SX-96が発売されたのと同年の1955年、 コリンズは75A-4に12AU6双3極管を使ったプロダクト検波回路を採用しました (QST誌の広告では "product detector" ではなく "mixer type" と書かれています)。 75A-4の販売価格はSX-96の倍。 平均的な人には手が届かない高級機だったのでしょうね。 これ以降SSB/CWの復調回路の標準はプロダクト検波回路に移っていきます。

        SX-96のSSB/CW検波回路は、AM検波2極管のカソードに300pFのキャパシタを介して注入する方式です。 これはそれまでに使われてきたIF信号にBFOによるキャリアを注入する方式とはちょっと違いますね。 2極管のカソード電位をキャリア周波数で振ることにより、 BFOの半サイクル間は2極管をカットオフさせる的な動作になるのでしょうか。

        この方式を採用したことと、 AM検波管とは別にAGC電圧発生管を持たせたことにより、 SX-96はSSB/CW受信時も普通にAGCが効きますし、 Sメータも使えます。

        この方式でもやはり、IF信号がBFO信号より強いと具合が悪くなるのでしょう。 強力な信号の時は適宜RF GAINを絞ってやる必要があります。

        ラボの個体は、前オーナの改造により、 BFO信号は本来発振管グリッド取り出しであるところをプレート取り出しに改造されていました。 プレート取り出しのほうが振幅が取れて、よって大入力でも復調できる・・・ところにメリットを見出したのでしょうか。 いっぽうグリッド取り出しのほうがより正確な正弦波を取り出せるものと思います。

        今回はSX-96の本来回路に戻しましょう。 300pFのBFO発振出力取り出しを発振管プレートからグリッドに変更した (戻した) ことで、 BFOを使わないAM受信の時の音質に影響があるかもしれませんが、 ラジオタイランドを聞くかぎり違いは分かりません。

    2024-03-01 BFO信号取り出しをグリッド取り出しに変更 (オリジナル回路に復旧)






    SELECTIVITY切り替えのテスト

        SX-96の自慢、選択度切り替え機構のもっともシャープなポジション、 Selectivity=0.5KC のテストをしてみます。 シグナルジェネレータを使って、 目的信号を模した7.000MHzの信号を短い周期のバースト信号としてつくり、 近接信号を模して7.000.2MHz〜7.003MHzの信号を長い周期のバースト信号としてつくります。 両者の振幅は同一。 この信号をアンテナ端子に入れて7.000MHzを受信します。

        結果は右のムービー。 1kHz離れるとかなり弱くなり、 2kHz離れれば聞こえない、 という結果になりました。 メカニカルフィルタやクリスタルフィルタを使わず中間周波トランスだけでこの選択度が出るのは、 さすが第2中間周波数50.5kHzのダブルスーパーヘテロダインですね。 455kHz中間周波トランスでは絶対実現不可能な選択度です。

        ところでハリクラフターズ製受信機の型番が SX- なのはクリスタルフィルタ搭載の受信機、 というのが原則なのですが、 SX-96にはクリスタルフィルタは使われていないのです。 クリスタルなら第2局発が水晶発振式で水晶発振子が2つついてるんだからいいじゃない、 細かいこと言わないでよ。 とかいう感じかな?

    2024-03-02 0.5KCポジション選択度聴感テスト



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        選択度切り替えスイッチの各ポジションでのオーディオ出力のレスポンスを見てみました。 RESPONSEスイッチはUPPER SIDEBANDにセットしてテストしましたからオーディオ段でのハイカットも入っています。

        確かに帯域幅は確実に変化するし隣接局の混信が厳しいときは強力な武器ですが、 音質も含めた了解度はというと、びっくりするほどには効果がないようにも思えます。 強力な国際放送を聞く時は5KCではちょっと広すぎに感じられます。 これは通過帯域の双峰特性のために復調音は低域が細く高域が伸びてしまっているため。 3KCポジションではリラックスして聴くにはちょっと狭すぎるという感じです。

        強力な局を聴くなら5KCポジションでRESPONSE切り替えでTREBLE CUTをいれるのがいちばんよさそう。

    2024-03-02 オーディオ出力レスポンス観察






    Sメータ直った!

        どうせ交換するのなら、と、Sメータを取り外して、ダメ元で修理を試みることにしました。

        SX-96 Sメータ裏側の端子には、硬くて丈夫なボール紙を折り曲げて造られた端子カバーがついています。 Sメータはプレート電流を測っているので端子には最大270ボルトのB電圧がかかっています。 それがむき出しだと、ボンネットを開けてうかつに手を入れると本当に生命にかかわります。 そんな事故をフラグためのカバーなわけです。

        メータをフロントパネルから取り外し、目盛盤を取り外し、 ハズキルーペを掛けていろいろ試しながら外れた針を元のピボットに・・・ 神経集中し続け、どのくらいの時間がたったのでしょう、 どうにか・・・直った!!!!

        テスタでメータが触れることを確認し、 針の曲がりを修正し、 フロントパネルに取り付けて、 配線をつなぎ、 Sメータとしての正常な動作を確認。 すごく疲れた作業でした。 自分で壊したものだけれど、修理成功の満足感に浸ります。

        Sメータのゼロ点調整ポテンショはシャシーのリアエプロンに出ていますが、 メータのゲイン調整機構はありません。 このメータは第1中間周波増幅管のプレート電流を測っているわけですから、 いくら入力が強くてもプレート電流がゼロになってしまうだなんてことは起き得ません。 目盛りには右側端に近いS9+80dBまで目盛りが振られていますが、 そこまで触れる (=プレート電流が減る) こともありません。 S9+20dB以上触れることはまれで、 目盛盤には精密なアンテナ入力レベルの目盛りが振られていていかにも正確そうですが、 精度は所詮アマチュア機だったりしますね。 ものすごくかっこいいけれども。

    2024-03-02 Sメータ修理完了



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    シャシー上を軽く清掃

        シャシー上面清掃します。 1998年の入手時には清掃していなかったみたいですね。

        シャシー表面やバリコンなど各コンポーネントの表面は酸化していて輝きは失われてしまっていますが、 磨き始めるとかえってバランスが崩れてみっともなくなってしまったりしますから、軽い清掃にとどめます。

        RF段・IF段の真空管はすべてシールドケースに収まっています。 シールドケースはどれも酸化が進んでいたので、 コンパウンドで磨いておきました。

    2024-03-03 シャシー上面清掃開始






    オールギアドライブ

        SX-96はメインチューニング・バンドスプレッドともに大型の円形ダイヤルが特徴的ですが、 この円形ダイヤル盤は金属製で、外周にギアの歯が刻まれています。 メインチューニング・バンドスプレッドのつまみのシャフトは、この大型円形ダイヤル盤の外周を回しているのです。 大型円形ダイヤル盤はさらにギアで減速されて、バリコンを180度回転させます。

        SX-96のメインダイヤルはオールギアドライブでありかつ大減速比なので、 ダイヤルノブを回す力は何十倍ものトルクでバリコンを回そうとします。 そのためダイヤル端で無理にノブを回すと、 ギアトレインとバリコンを簡単に壊してしまいます。

        これを防ぐために、メインダイヤル/バンドスプレッドダイヤルともに、 ダイヤル端でダイヤルノブを回らなくするストッパ機構が設けられています。

    2024-03-03 ダイヤルストッパ機構の動きを観察



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    音が悪い

        今回26年ぶりにSX-96を使って驚いたのは、シリーズノイズリミッタがすごく良く効くこと。 パルス性のノイズはすっきり消えます。 いままでいじってきた受信機のノイズリミッタは正直どれもたいして効いた覚えがなかったので、 これはほんと驚きです。

        そのいっぽうで昨日から調べ始めているのが、AM復調音質の悪さ。 ラジオタイランドも昼間の11.810MHz KBS World RadioのK-Popも普通にいい音で聞けるのですが、 昼間のラジオNikkei JOZ6 6.115MHzのRaNi Musicはかなり音が悪いです。 しかしこの原因がわかりません。 シリーズノイズリミッタは効きはいいけれどOFFしたときの音質も悪化してしまう、 というのはありそうですが、 それならどの局を聞いても音は悪くなりそうなものです。

    2024-03-04 AM復調音歪調査開始


    JOZ6 RaNi Music聞き比べ

        いま気にしているのは、 オーディオ波形のピーク部がクリップしているような歪なのですが、 この点で比べると

    FRG-7・51S-1 > CRV-1/HB RI2 > SX-96

    といったところ。 FRG-7と51S-1ではこの歪は感じられません。 FRG-7は高域がシャープにドロップするので音に伸びや明るさ・歯切れの良さはありませんが、 トーク番組であればいちばん聞きやすいです。

        よくよく聞いてみると、ラジオNikkeiだけが音が悪いというわけではないようです。 Radio New Zealand Pacific RNZ-P 13.755MHzでも音質差は聞き取れます (51S-1は13MHz帯はダメなのでFRG-7と比較) それども明らかに、ラジオNikkeiが特に音が悪く聞こえます。

        現時点では、 「SX-96は、ノイズリミッタをOFFポジションにしたときでも、 ノイズリミッタ回路がAM検波段に動作に影響を与えてしまうために、音質が悪化する」 というのが現時点での結論。 ゲルマニウムダイオードによるAM検波段を追加して切り替えられるようにしようかな。


    6BJ7のヒータ電圧を上げてみる

        6BJ7トリプルダイオードのヒータ電圧をAC3.1Vまで上げてみましたが、 やはりノーマルの検波回路では復調音の歪はどうしても残ってしまいます。

        ノイズリミッタOFFのときノイズリミッタ用2極管はスイッチでショートされます。 このときノイズリミッタのプレート電圧(音声信号の平均値に応じて変動)とカソード電圧 (瞬間的に変化する音声信号) をむりやりつなげることになるわけで、 このあたりで歪が出るのかなとも思いましたが、そういう理屈ではないようですね。

        そろそろAMからSSBへの移行が始まっている時代の上級クラスのアマチュア無線家向けに作られた受信機にAM復調の音質を求めるってのは的外れだ、 といわれれば、まあそうなんですけれどもね。 わずかの復調歪のデメリットよりも、 良く効くノイズリミッタのほうがずっと恩恵があったのでしょう。

    2024-03-05 AM復調音質調査つづき






    ゲルマニウムダイオード検波を試す

        オリジナルの6BJ7によるAM検波回路を切り離して、 即席のゲルマニウムダイオードAM検波回路を仮組みしてみました。 オリジナルのAM検波回路に比べて音の良さは明らか。 ラジオタイランドの小島秀美さんのアナウンスも、 ニュースの後のタイポップスもずっときれいに聞こえます。

        オリジナルのAM検波回路では、変調度40%あたりから早くも歪が出始めていました。 ラジオNikkeiが殊更音が悪かったのは、 他の局よりもコンプレッサを強めにかけて変調を深くしているからとかなのかもしれません。

        ゲルマニウムダイオードではなく、 同じ定数で6BJ7の2極管を使ってみたところ、70%までひずみが出ていません。 やはりノイズリミッタを実現するための2極管カソード周りの回路が2極管のAC負荷としては重すぎて、 変調度が大きいときの復調歪をもたらしているということでしょう。

        SX-96の作業は、これで、 1998年11月06日にサンノゼのガレージラボで行っていた作業の段階に出戻ったことになります。 26年前の作業の続きを再開、ということです。

    2024-03-06 ゲルマニウムダイオード検波を試す


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    国際放送バンドのバンドスプレッド

        SX-96が発売された1955年、 アマチュア無線用受信機はほとんどがバンドスプレッド付きのゼネラルカバレージ機でした。 SX-96も基本的にはアマチュア無線用モデルであり、 バンドスプレッドはアマチュアバンドに較正されています。 クリスタルキャリブレータは内蔵されていないのでメインダイヤルのセットしだいで周波数読み取り確度は決まってしまいますし、 出荷後の経時変化等でメインダイヤルの読みが狂ってくればそのまま読み取り誤差になります。 クリスタルキャリブレータは標準で内蔵するか、 せめてオプション装備を用意するべきだったのではないかと思います。

        バンドスプレッドダイヤルは、 7MHzバンドでは20kHzおきに、 21MHzバンドでは50kHzおきに目盛りが刻まれています。 7MHzバンドでの目盛の間隔は広いので、 実力的に5kHz程度まで読むことができます。

        国際放送バンドではバンドスプレッドに目盛りはないので、 28MHzバンド用の28.0〜30.0MHz目盛りを使って、 9MHzバンド用のキャリブレーション表を書いてみました。 バンドスプレッドを30.0MHzにセットして、 メインダイヤルを10MHzの標準局BPMが聞こえるようにし、 あとはバンドスプレッドでチューニング。 5kHz間隔での待ち受け受信が可能。 聞こえ始めたら微調整は必要ですが、 国際放送の待ち受けならじゅうぶん実用的。 11MHzバンドなどはメインダイヤルをセットするのにシグナルジェネレータの助けが必要ですけれどね。

    2024-03-07 国際放送用バンドのバンドスプレッド換算表を書いてみる






    ゲルマニウムダイオード検波の定数テスト

        ゲルマニウムダイオード検波の負荷抵抗定数はいくつがいいか実機でテストしました。 歪と検波出力がほどよくバランスとれるところで、 AM変調深度100%でわずかに歪み始めるあたりに調整。 負荷抵抗は上流側220kΩ、下流側1MΩ、RFバイパスを250pF、 AF取り出しは0.01uFにしました。 まあこんなものでいいでしょう。

        冒頭のテスト信号は三稜綺想曲 @okatappi2023 さんの 「春の氷精トランペット二重奏」(原曲: 春の氷精)、 その途中に400Hz 変調度100%、 そのあと9.940MHz ラジオタイランド。

    2024-03-12 ゲルマニウムダイオード検波回路の定数テスト



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    MODEスイッチを改造してゲルマニウムダイオード検波回路を正式組み込み

        増設するゲルマニウムダイオード検波回路とオリジナルの検波回路・ノイズリミッタ回路をどう両立・切り替えるべきかしばらく悩んでいましたが、 結局 モードスイッチを2極双投のものに取り換えて、 AMポジションのときにゲルマニウムダイオード検波でBFOはOFF、 CW-SSBポジションのときにオリジナルの6BJ7 2極管検波+BFO ONとすることにしました。 これだとAM受信時にノイズリミッタが使えないのですが、 まあ実用上困ることはないでしょう。

        オリジナルの検波回路・ノイズリミッタ回路の仮配策を配線しなおして、 スイッチを交換し、配線。 狙い通りに動作し始めました。

        右のテストムービーでは最初に41メーターバンドのAM国際放送を受信し、 ついでモードスイッチをCW-SSBポジションに切り替えて40メーターバンドのSSB電話とCW電信を受信、 最後にAMポジションに戻してシグナルジェネレータで造ったAMのテスト信号を受信しています。

        AMの音質は合格点でしょう。 7MHz電話を聞くときLSBポジションにセットすれば逆サイドバンドはほとんど聞こえないし、 電信の分離もよいですね。

        これで、1998年にこの受信機を使い始めたときに感じたAM復調音質不良の問題は、 やや強引な方法で解決。 問題覚知から解決までに26年かかりました。

    2024-03-29 MODEスイッチ改造 検波回路再配策 AM復調音質問題解決



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    SSB/CW検波が調子いい

        SX-96のSSB/CW検波はプロダクト検波回路ではなく、 2極管にBFO信号を注入する方式です。 それに気がついたときはちょっと残念に思ったのですが、 どうしてこのCW/SSB検波回路はいい仕事をしてくれます。 入力信号がBFO信号レベルを超えてしまうと歪が大きくなってしまうのでそこは注意が必要ですが、 それさえ気をつけていれば復調品質は良好。 ファクシミリの受像も安定して行えます。

        帯域幅を3kHz以下にできる鋭い選択度とUSB/LSB切り替え機能により、 SSB受信時に逆サイドバンドが聞こえてしまうこともありません。 操作感としては現代の受信機とさほどには変わらず。 CW受信時のチャープがほとんどないのも美点です。

        しかしファクシミリを受像しようとすると、周波数ドリフトがなかなか厳しいものがあります。 右の画像でもわかるとおり、白黒のレベルがしだいに変化してしまい、 受像中になんべんもバンドスプレッドダイヤルまたはBFOピッチコントロールを操作してやる必要があります。

    2024-04-05 ファクシミリ受信を楽しむ






    新アンテナ

        時間は短いものの地域の活動の予定を入れられて遠出はできない週末、 春めいた陽気にもなったので、 かねてから構想していたロングワイヤーアンテナ新設の作業を行います。

        まあ何のことはないビニール線を使ったランダムロングワイヤーアンテナですけどね。 いままで使っていたものよりもワイヤー長で3mほど長く、 地上高は2mほど高く。 2008年に 6mヘンテナ をつくったときのアルミパイプを自由端側のマストにして、 ガレージの柱に取り付ける金具を用意するだけの楽しい週末工作です。 近くのホムセンで金物を買い、 だけれど1つ具合が悪いことに気づいて寸法違いで一部買いなおして、 部品代は3400円といったところ。 狙い通りの素人細工で、新9.5mランダムロングワイヤアンテナが完成しました。

    2024-04-06 9.5mランダムロングワイヤアンテナ落成






    8MHz帯を楽しむ

        新アンテナはエレメント長からして8MHzあたりが最適のはず。 試してみると、 SX-96のSメータ読みで受信機入力電圧は前アンテナの倍ほど出ています。 まあ電圧が倍ということはSメータの振れにしてせいぜい1つかそこらの違いでしかありません。 しかし聞こえるかどうかの微弱な信号となるとその差は明らかです。 前アンテナで何か聞こえるといった程度の信号の場合、 新アンテナでは通信内容がはっきりとわかります。 週末工作は効果あり。

        SX-96のBFOカソード注入型2極管検波は、 いい感じでSSB電話やファクシミリを復調できています。 なのでしばらく、8MHz帯を楽しみました。 実をいうといままで8MHzはあまり聞いたことがなかったのですが、こりゃ楽しい。 こんな素人のランダムロングワイヤアンテナでも、けっこう聞こえるものですね。 聞こえてきたのはざっとこんな感じ。 8.992MHz USBは短波らしい怪しさたっぷりですね。

    8.302MHz XSG Shanghai Weather Faximile
    8.412MHz XSQ Guangzhou Weather Faximile
    8.743MHz HSW Bangkok Meteorogical Radio
    8.761MHz 長崎漁業
    8.764MHz National Weather Service Radio via USCG Honolulu NMO
    8.785MHz 沖縄漁業 / 宮崎油津漁業
    8.879MHz XSG Shanghai Weather Faximile
    8.794MHz 釜石漁業
    8.828MHz VOLMET
    8.849MHz 北京VOLMET
    8.870MHz Air Traffic Control Guam
    8.992MHZ ATC?
    9.165MHz HLL2 Seoul Weather Faximile

    2024-04-08 04-09 8MHz帯を楽しむ


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    カサカサノイズが出ている?

        ラジオタイランド日本語放送を聞いていて、 なんだかときおりカサカサノイズが聞こえるように感じました。 これは近接する強力な局のスプラッタかもしれないと思い、 翌日に2局を同時に受信してステレオ録音しチェックしてみましたが、 どうやらそうではないようです。

        昼間ずっと何も聞こえない8.992MHz USBのヒスノイズを受信し続けましたが、 カサカサノイズは気になりません。 SX-96のアンテナを外すと受信機はノイズすら聞こえない無音状態になりますが、 その状態で長時間放置してもカサカサ音は出ません。 これはラジオタイランドの局側の問題なのか、 受信機の問題なのか、 あるいはラボの環境あるいは接続されているほかの機器の問題なのか。

    2024-04-09 カサカサノイズに気がつく


        どうやら原因はSX-96の中にあるようです。 外来ノイズを拾わないようにシグナルジェネレータをつないだ時も、 カサカサノイズは聞こえます。 ただ一回の発生は長続きしないため、 原因はすぐには分からず。 ともかくアンテナをつないでいないときは出ないため、 低周波段はもちろん高周波増幅段でも中間周波増幅段でもなさそう。 ある程度以上の中間周波信号振幅があるときに聞こえる、という感じです。 このことから、局発管のプレートバイパスキャパシタが劣化して不安定なノイズを出しているのだ、 という説明がもっともらしいです。 局発信号にノイズが乗っても、入力信号がないときは中間周波信号は現れないので、 アンテナをつないでいないときは聞こえない、という説明。

        もしそうだとすれば、 第2局発が怪しいですね。 第2局発はサブシャシーの中にあって、 まだキャパシタの交換作業は行っていませんから。

    2024-04-12 第2局発のプレートバイパスを疑う






    第2周波数変換サブシャシーを取り外す

        サブシャシー取り外しを決意しました。 回路図と実機を交互に見て、サブシャシーから出ているワイヤをひとつひとつ外していきます。

    サブシャシー左側の穴からの配線

  • ブラックワイヤ: RESPONSEスイッチのフロントパネル側ウェハ 220Ωと390Ωがつながっているターミナル
  • ホワイトワイヤ: SELECTIVITYスイッチの真ん中のウェハ 3つのキャパシタがつながっているところ
  • 50.5kHz中間周波信号出力 シールドケーブル

  • サブシャシー右側の穴からの配線

  • グリーンワイヤ: サービスポジションでシャシー内縦方向のラグ板の一番下
  • イエローワイヤ: RESPONSEスイッチにつながる
  • ブルーワイヤ: 経年変化で紫色になってる 上側7端子ラグ板の下から3番め
  • レッドワイヤ:
  • 1650kHz中間周波信号入力 シールドケーブル

  • サブシャシー右上の穴からの配線

  • オレンジワイヤ: ヒータ接続 コイルスプリングでシールド効果を出している

  •     ワイヤを切り離してシャシー底面からヘキサヘッドのネジを3本外して、 サブシャシーが取り外せました。

       





    サブシャシーは原因ではなさそう

        数時間かけてサブシャシーを取り外してみたわけですが、 さらにネジを4本緩めてサブシャシーのボトムカバーを外してみると・・・ 中に使われているキャパシタはすべてセラミックキャパシタでした。 劣化は考えにくい部品です。 ううむ、どうやらカサカサノイズの原因はサブシャシー内部ではなさそうだぞ。

        ガス管ゴムホースのような茶色いスリーブに入っているのは12AT7のカソードに入るチョーク。 水晶発振子はソケットは使わずピンに直接はんだ付けされていますね。 ぎっちり詰め込まれている印象です。






    これだ・・・え、ちがうの?

        サブシャシーは外観を軽く清掃するにとどめて組み戻し。 さあて、するとどこだろうね。 マイカキャパシタの不安定なリーク故障だろうか。 試しにC31、470pFを新品交換。 サブシャシー出力の50.5kHzを第2中間周波増幅管V6 6BA6のコントロールグリッドに導くキャパシタです。 しかしこれでもない・・・ 数時間後にカサカサノイズ発生。

    2024-04-17 サブシャシー組み戻し C31交換


        オシロのプローブをつないであちこち見てみますが、 なにしろカサカサノイズはときたま思い出したように出るだけなので、 つないだままノイズが出るのを待たねばなりません。

        そうこうするうちに、第2中間周波増幅管6BA6のカソードバイパスキャパシタの足が取り付けられていないことに気がつきました。 交換時の作業ミスですね。 これがカサカサノイズの原因だったのだろうか? しかしこれも残念、 朝から連増動作させて5時間ほど経ったあたりでカサカサノイズ発生。 部屋の室温は30℃近くなっていますし、 シャシー下の部品の温度が上がると出てくる現象なのかもしれません。

    2024-04-18 C32取り付けなおし






    たぶん最後のバンブルビー

        そうなるとこれか。 奥まっていて作業がしにくいので後回しにしていた、 たぶん最後のバンブルビー。 C85、0.22uF。 SENSITIVITYポテンショメータの両端に入るACバイパスです。 取り外すにはフロントパネルの全分解が必要で面倒なので、 片側をニッパで切り離し、 新品のポリプロピレンフィルムキャパシタを取り付けました。

    2024-04-19 C85交換

       





    つづく・・・

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