NoobowSystems Lab.

Radio Restoration Projects

Lafayette HA-230

General Coverage
Shortwave Communications Receiver
(1965)
Lafayette HA-230 Front View

Lafayette HA-230

    トリオ9R-59、といえば日本のアマチュアに説明の必要はないかもしれません。 Lafayette HA-230は、日本製のアマチュア向け真空管式受信機の代表といえるでしょう。 大型の横行きダイヤルと端正に並べられたノブは典型的な1960年代のスタイル。 良い造りながら低価格、この時代までは日本製のアマチュア無線機器はあくまで安物扱いでしたが、この後しだいに米国製を駆逐していきます。
    HA-230は9球式のいわゆる高1中2シングルスーパーヘテロダイン。 中間周波数は455kHzで、整流管を除きMT管で構成されています。 0.55MHzから30MHzまでを4バンドでカバーし、各アマチュアバンド用に較正されたバンドスプレッドを持っています。 Qマルチ兼BFOを持ち、オペレータの腕次第で高性能を発揮します。
    スピーカは外付けのものを使います。 純正のLafayetteロゴ入りスピーカが用意されていましたが、小型で、音質はかなりチープであるという話を聞きました。
    局部発振と周波数混合用の2本の真空管6BE6は電源スイッチOFFの状態でもヒータが常時点火されており、 電源投入直後の周波数ドリフトを低減させています。 ですが真空管の寿命を考えれば、使わないときは電源プラグを抜いておいたほうがよさそう。

    トリオ9R-59は米国でLafayette HE-30としてデビューし、QST誌の1961年11月号のRecent Equipment (新製品紹介コーナー) でレビューされています。 冒頭で「HE-30は主として初心者アマチュアおよび短波放送リスナーのために設計された受信機だ」と書かれています。 時代はすでにコリンズSラインを筆頭にダブルスーパーのアマチュアバンド専用SSB機の時代になっていましたから (同じ号のHE-30の次にはコリンズ30L-1リニアアンプが新製品として紹介されています)、 格安の入門用モデルとしてとらえられても無理はありません。 この新製品紹介コーナーでは、その冒頭の記述を除けばあとは回路構成や機能を淡々と解説しているだけです。

    QST誌1961年11月号の広告では、最も廉価な入門受信機としては5球スーパーのゼネラルカバレージ機、ハリクラフターズS-120が$69.95。 トリオ9R-4と同じLafayette HE-10 (完成品)が$79.95で、新型機のHE-30は$99.50の価格がつけられています。 コリンズ75S-3は$620ですからこれは別格として、全く同じ$99.50のモデルとしてGonset GR-212があります。 これも入門者向けのゼネラルカバレージモデルですが、ダブルスーパーヘテロダイン。 HE-30は1964年03月号のQST誌まで広告が掲載されていました。

    HA-230はHE-30からフェイスリフトされたモデルで、すでに発売されていたHE-80と同じクリーンなデザインとなりました。 QST誌の広告に初めて登場するのは1965年02月号145ページ、価格は89ドル50セント。セミキット版のKT-340は74ドル50セントでした。 1966年01月号では69ドル95セントに値下げされています。このときHA-225は119ドル95セントでした。 これらの広告ではHA-230は8球式と書かれています。整流管を含まない数え方をしているのだと思います。

    QST誌1964年09月号で、待望のアマチュアバンド専用ダブルスーパーSSB機 Lafayette HA-350 (トリオJR-300S)が$189.50でデビューします。 HA-350は1964年12月号のRecent Equipmentでレビューされ、 「日本が初めて本格的アマチュア機で挑戦してきた」と書かれています。 「回路構成はプロの設計というよりいささか手作り機の風情があるが」と手厳しいものの、 HA-350は日本製アマチュア機の歴史のひとつのエポックといえるでしょう。

回路構成

使用真空管

    HA-230に使われている真空管は以下の通りです。 整流管の5Y3-GTだけがGT管、他はミニアチュア管です。 ( May-22 1999 Corrected 誤記訂正)

DESIGNATION TYPE FUNCTION
V1 6BA6 RF Amplifier
V2 6BE6 Mixer
V3 6BE6 Local Oscillator
V4 6AV6 Q Multiplier/BFO
V5 6BA6 1st IF Amplifier
V6 6BA6 2nd IF Amplifier
V7 6AV6 Detector/ ANL/ 1st Audio
V8 6AQ5 Audio Output
V9 5Y3-GT (5CG4) Rectifier

高周波増幅回路

    アンテナ端子から入ってきた高周波信号は、 3連ギャングバリコンの第1セクションで構成されるアンテナ同調回路を通り、 リモート・カットオフ5極管 6BA6 (V1) で高周波増幅されます。 この管のコントロール・グリッドはAGCラインに接続されており、AGC制御されています。
    アンテナ同調回路のメイン・バリコン、バンド・スプレッド・バリコンと並列にさらに小さなバリコンが接続されており、 これがフロント・パネル右下の ANT TRIM つまみで回せるようになっています。 これは任意のアンテナに対してアンテナ同調回路のマッチングをとるためのもので、このチューニングは受信性能に大きく影響します。
    受信機のファンクション・スイッチがSEND(受信待機状態)のとき、この管のプレート電源は切断されます。

周波数変換回路

    高周波信号は、6BE6 2本 (V2/V3) で構成された周波数変換回路で中間周波数 455kHzに変換されます。 6BE6は周波数変換用のペンタグリッド管(7極管)で、本来1本で局部発振と混合を行うよう設計されている球です。 が、HA-230では局部発振用と周波数混合用にそれぞれ6BE6を割り当てています。 これにより局部発振周波数が強力な入力信号に影響されて変動すること(オシレータ・プルイン)を低減し、とくに高い受信周波数での安定性の向上を狙っています。

    これら2本の6BE6のヒータはメインの電源トランスとは別のヒータ・トランスにより点灯されており、受信機の電源スイッチがOFFの状態でも常時通電されています。 したがって受信機の電源を投入してすぐに、安定した受信を行うことができます。
    受信機のファンクション・スイッチがSEND(受信待機状態)のとき、これらの管のプレート電源は切断されます。

Qマルチプライヤ兼BFO

    サブシャーシ上に組まれたQマルチプライヤ兼BFOは 6AV6 双2極3極管 (V4) と専用の455kHz発振コイルで構成されています。 ファンクション・スイッチをQ-MULTポジションにすると、6AV6のプレートにB電源が供給され、回路が動作し始めます。

    この回路には2つのコントロールがあります。 フロントパネルのSELECTIVITYコントロールは発振回路のカソードに入ったポテンショメータであり、回路のフィードバック量を調整します。 BFO-Q-MULTI FREQUENCYコントロールは360度無制限に回転するミゼットバリコンであり、回路の共振周波数を可変することができます。

    SELECTIVITYコントロールを時計方向いっぱい(AM-CW-SSBポジション)にすると、スイッチにより回路は中間周波数信号ラインから切り離されます。 SELECTIVITYコントロールがAM-CW-SSBポジション以外のとき、回路はキャパシタを介して中間周波数信号ラインに接続されます。

    使用方法の詳細は後述します。
Q-Multi Controls

中間周波数増幅回路

    中間周波数増幅回路は2段構成で、リモートカットオフ5極管 6BA6 が2本(V5/V6)使われています。 段間結合は3つのトリオ TYPE-11 中間周波数トランスを使います。
    第1中間周波数増幅管 (V5) のゲインはAGC制御されます。 フロントパネルのIF GAINコントロールはこれら2本の6BA6のカソードに入ったポテンショメータであり、 AGCが使えないSSB/CW受信時に中間周波増幅段のゲインを手動で低下させることができます。
    Sメータは第2段のカソードバイアスを基準にして第1段のカソード電圧の変化を読み取るように配置されています。 このため、IF GAINコントロールがフルゲイン位置以外のときはSメータは正しく読み取れません。

検波・AVC・ANL・第一低周波増幅回路

    増幅された中間周波数信号は6AV6 双2極3極管 (V7) の2極管部で検波されます。 同時に検波出力のキャリア分に比例した電圧がAGC電圧として発生されます。
    検波出力の低周波成分はAF GAINコントロールのポテンショメータから取り出され、3極管のグリッドに導かれて低周波増幅されます。
    増幅された音声信号は次段の音声出力回路に導かれますが、ANLスイッチがONのときは同時に6AV6のもう一つの2極管プレートに戻され、 ノイズ・リミッタとして動作するようになっています。

音声出力回路

    音声信号は最後に、当時の定番ともいえる 6AQ5 パワーペントードで増幅され、出力トランスを介して外部スピーカを駆動します。 マニュアルによれば定格出力は1.5ワット。
    出力トランスの2次側巻線には4Ωと8Ωのタップがあり、 シャーシ背面のネジ式スピーカターミナルにもそれに対応して4Ωと8Ωのターミナルが用意されています。
    フロントパネルには標準モノラルヘッドホンジャックがあり、 プラグを差し込むと8Ωのスピーカ端子が切断されてヘッドホンが利用できるようになります。 このとき4Ωのスピーカ端子は切断されないので、4Ωの端子につないだスピーカとヘッドホンを同時に使用することも可能です。

電源回路

    電源回路はごく一般的なものです。 電源トランスを持ち、B電源は 5Y3-GT (5CG4) 双2極整流管で作られます。 5Y3のソケットがぐらついており大丈夫かなと思いましたが、 ソケット本体にピンががっちり固定されていないためで電気的にはしっかり接続されているようです。 本機は放電安定管などB電圧安定化のための回路は持っていません。
    電源トランスの1次側巻線にはAC100Vと117Vのタップがあり、シャーシ上の切り替えスライド・スイッチでどちらか選べるようになっています。
    すでに述べたようにシャーシ底面にはもうひとつの電源トランスがあり、これは周波数混合管と局部周波数発振管の2本の6BE6のヒータを点火するためのもの。 これらはフロントパネルのメインスイッチがOFFであっても通電しています。 ダイヤル盤の両サイドには40のパイロットランプがあり、メインの電源トランスのヒータ巻線で点火されています。
    シャーシ背面には補助コントロール・ソケットがあり、ここにリレー等を用意することによって外部から受信機をスタンバイ状態にすることができます。 実際には高周波増幅および周波数変換段の真空管のプレート電源回路の端子であり、リモート・コントロールしないときは所定のピンをショートしておきます。


動作チェック

    このラジオは欠損部品なし、ただし不動との状態で入手。 全般的に汚れており、フロント・パネルはもちろん内部も清掃する必要があります。 たしかに欠損部品はないものの、以下に示すように程度は必ずしもよくないことがわかります。

  • フロントパネル上部、ちょうどLAFAYETTEのロゴのあるあたりが曲がってしまっています(拡大写真)。
  • バンドスプレッドを回すと途中で指針がダイヤル盤に引っかかってしまい、その後動かなくなってしまいます。
  • Sメータがフロントパネルから脱落してしまっています。 以前にテープで固定し直されていたようですが、輸送途中にふたたび取れてしまったようです。 このためSメータ指針が曲がってしまっています。
  • Sメータの目盛り盤は褪色がひどく、オリジナルの目盛りはほぼ消えかかってしまっています。
  • ダイヤルはガラス板の内側から目盛りが貼られていますが、一部剥がれて浮き上がってしまっています。


  •     通電チェックを行ってみたところ、真空管は全て点灯。 しかしスピーカからは猛烈なハム音。 ボリューム・コントロールの位置によらず大きなハムなので、電源平滑が全くできていないものと思われます。

        ローカルAM放送局にあわせてみるとハム音の中にかろうじて放送が聞き取れますから、 周波数変換段を含めて全体的にはどうにか動作しているようです。 短波帯では何も聞こえませんが、これはハムをまず直さないとなんとも言えません。 BFOとQマルチが動作しているのかも不明。

        実作業には全くとりかかれないまま、シリコンバレー駐在の期限切れ。 実を言うと、このラジオが届いたのは引っ越しのための船便出しの日の前日。 工具や計測器はおろか、鍋釜の類までほぼ全ての家財道具がおびただしい数のダンボール箱に詰められていました。 ラボ関連機材だけでもすでにうん十箱あります。ので、いまさら真空管式受信機が1台増えたからってどうってことありません。 でも、日本のアパートに本当に入るのかなあ?
    Interior view - click here for larger image

    作業開始

        新しいシステムにはフォーマットしたてのハードディスクが500MB。それもすでにパーテーションが3つに切られています。 ここに300MBのZIPファイルがまずコピーされました。 従来2GBディスクのシステムで使っていたファイルのうち必要なものだけを圧縮したものです。 で、圧縮済みのこのファイルを解凍し、なんとかシステムを復旧しなくてはなりません。 単純に全部解凍したのでは500MBのディスクに入りきらないのは自明で、少しずつ解凍しようにもテンポラリエリア不足で頻繁にエラー。 さあ、どうする?
        ・・・というのが今回のラボ移転の状況。 スタック・エレクトロニクス社あたりで3DKアパート用の圧縮ドライブユーティリティでも開発してくれないかなあ。

        というわけで移転作業も一段落し、最低限の作業スペースが確保できたので、HA-230をいじりはじめることにしました。 HA-230をダンボールから取り出してみると、船便での輸送によるダメージは見受けられません。 猛烈なハム音が出るのも相変わらず。 この受信機はいずれにせよ各部の清掃やダイヤルドライブ周辺の再調整を行う必要がありますから、内部の観察がてら大きなところを分解することにしました。 高周波増幅用と中間周波増幅用の3本の6BA6、それに周波数混合用の6BE6以外の真空管はすべてRCA製(ただし世代はまちまち)のものに交換されていました。 交換の理由は不明ですが、寿命断線だとすればこの受信機はかなりの時間使用されていたのではないでしょうか。 ただしどの真空管の頭にもそれなりの埃が積もっていますから、真空管を交換したのはかなり以前のようです。 近年手を入れられた形跡はありません。
         それにしても前のラボのベンチが恋しいなあ。

    まずはハムを直す

        電源電圧切り替えスイッチは米国仕様ですから当然117Vにセットされていましたが、日本で使用するに当たって100Vにセットし直しました。 ステップアップ・トランスを使う必要がありませんからこれはラッキーです。

        電源平滑キャパシタはELNA製で、40μF 2個入りの縦置きアルミケース型がシャーシ上に配置されています。

        オリジナルの電源平滑用電解キャパシタのかわりに新品手持ちの45μF品2個を使ってみると、ハムはすっきり消えました。 やはり電解キャパシタの劣化が原因でした。 オリジナルのキャパシタを取り外して手で振ってみると、中からなにやらカラカラ音がします。 容量減というよりは完全なドライアップ故障です。

        外観的にはきれいなままですのでこれはシャーシ上に残しておくことにして、 代替品をシャーシ下にラグ板を使って取り付けました。

        ハムが消えたとはいっても、スピーカ使用時に気にならないという程度で、 ヘッドホンを使った場合は無視できないレベルのハムが残っています。 この時代のトリオの受信機はハム対策が不十分だという話を聞きますので、 現状がオリジナルデザインの実力値であると思われます。 が、改善したいところ。

    機能チェック

        オープン・シャーシのまま短いビニール線をつないで動作させてみると、各バンドとも受信できていることがわかりました。 各コントロールに使われているポテンショメータにはかなりのガリがありましたが、セーフウォッシュを接点に吹きかけたところ一発で回復。 バリコンのシャフトを指で回してみるとかなり重く、スムースさに欠けます。ベアリングの注油が必要かも。

        劣悪な新ラボの受信環境の中にあって、数メートルのビニール線でBBCワールド・サービスが聞こえてきます。 現状での感度はそうひどくはなさそうです。 Sメータはまったく動作しません。 オーディオ出力は十分すぎるほどで、低周波段のゲインに問題はなさそうです。 バリコン直結チューニングのこの状態で、あちこち掃除しつつしばらく使ってみることにします。

        選択度は国際放送受信にはちょうど良いものです。 小型ブックシェルフスピーカと組み合わせたときの音質は私の好みの落ち着いたもので、良好です。 Qマルチはまだ使い込んでいないのでなんとも言えません。

        AGCの効きもどうも今一つで、ボリュームコントロールをしばしば操作しなくてはなりません。 これも本来の性能なのかどうかわかりませんが、要調査。

        いったんウォームアップした後の周波数安定性は、国際放送を聞く分には問題ないレベル。 ただしコールドスタートすると、1時間近くにわたって数10kHz程度ドリフトしてしまい、5・6回はチューニングを取り直す必要があります。 これが本来の性能なのかはわかりません。 周波数変換段の真空管をスイッチOFFでも通電しておくという大技は、必要に迫られた苦肉の策なのでしょうか。 それとも、コールドスタート性能をあえて犠牲にして、ウォームアップ後のドリフトを低減するためのチューニングを狙ったものなのか・・・。
        いずれにせよ現状では、夕食をすませてさあゆっくりニュースを聞こう、といったときにいらいらしてしまいます。 6BE6のスペアを何本かキープしておき、電源プラグはつなぎっぱなしで使うのがやはり正しいのでしょうか。
    HA-230 Open Chassis - Click here for larger image


    中間周波数のアライメント

        明らかに前オーナーの調整ミス(というより調整をめちゃくちゃにしてしまった)であった HA-63A の時と異なり、本機の場合は感度・選択度とも極端にひどいというものではありません。 し、真空管が交換されている以外にユーザーの改造や再調整が行われている様子はありませんでした。 3つあるトリオTYPE-11中間周波数トランスの調整ネジには工場での調整時に付けられたネジロック剤がそのまま残っていました。 少なくともユーザが中間周波数のアライメントを狂わせてしまった可能性はなさそうです。
        とはいえ35年を経過した受信機、経時劣化があるかもしれないので一応トライすることにしました。 局部発振管6BE6 (V3) を取り外し、周波数混合管6BE6 (V2)のピン7つまり第3グリッドに シグナル・ジェネレータの455kHzの信号を注入します。 スピーカの出力レベルをオシロスコープでモニターしながら、中間周波トランスの調整ネジを回してみます。 その結果・・・35年経った今でも、調整は完璧な状態にあることがわかりました。

    ダイヤルパネルの再組付け

        当初バンドスプレッドが途中で引っかかってしまっていた原因は、 指針の可動部とバンドスプレッド・バリコン用のホイールが物理的に干渉してしまっていたためでした。 ダイヤルパネルを再組み立てするときにぶつからないようホイールを少しバリコン寄りに取り付け、問題は解消。 曲がっていたメインとバンドスプレッドの指針も曲げ直し、ダイヤルガラスも清掃しました。 レタリングが剥がれないと確信できるのなら洗剤で洗いたいところなのですが、 すでに一部剥げていますので腫れ物に触るように埃だけ落としました。
        ダイヤルパネル取り付け作業中にミスをして、 ダイヤルランプのホット端子がシャーシに触れている状態で電源を入れてしまいました。 が、幸いシャーシ背面の2A管型ヒューズが飛んで受信機を保護してくれました。 ヒューズを交換しようとしたら・・・ヒューズ・ホルダの取り付けフランジ部が崩れて、 シャーシから脱落してしまいました。プラスチックの経時劣化のようです。 ジャンクパーツの中に同じサイズのホルダがあったはずなのですが、 なにせラボ移転の後ですのでどこに紛れ込んでいるか不明。 見つかるまで、崩れたホルダのまま注意しながら使うことにします。


    バンド・スプレッドのカバー周波数

        HA-230はクリスタル・キャリブレータは内蔵していません。 アマチュアバンドで使用する際はメイン・ダイヤルを目盛り盤にあらかじめ示されたマークにあわせれば、 バンドスプレッド・ダイヤルで周波数を読み取ることができます。 が、たとえば14MHz帯の場合はメイン・ダイヤルの針の太さは実に100kHzにも相当します。 バンドCの12MHz付近では実に200kHz近く。
        これでは、外付けキャリブレータでも使用しない限り周波数の読み取り精度はせいぜい ±50kHzといったところなのではないでしょうか。

        国際放送バンドの場合はバンドスプレッド・ダイヤルには目盛りはありませんから、 チューニングはもっぱらロギング・スケールに頼ることになります。 三角波形のロギングスケール目盛りは最初変に思えましたが、 すぐにこれが大変便利であることが実感できました。

        メインダイヤル盤をよく見ないと気づきませんが、このラジオも冷戦時代のモデル、 きわめて小さいながらCDマークが入っています。 トリオは9R-59の開発にあたって当初から対米輸出を考えていたようで、 日本国内向けの9R-59にもすべてCDマークが入っているようです。

        ここのところ夜は15.240MHzのVOAの英語放送を良く聴くので、 HA-230で簡単にダイヤルを合わせられるようグラフを書いてみましょう。 バンドDを使用してメイン・ダイヤルを15.500MHzにあわせたとき、 バンドスプレッド・ダイヤルのロギングスケールと実際の周波数の関係はグラフのようになります。 バンドスプレッドは15MHz帯のとき約350kHzをカバーすることがわかります。 250kHz間隔のクリスタル・マーカを用意しておけば、使い込めば10kHzの精度までなんとか読み取れそうです。

        バンドスプレッドつまみは0から100を11回転でカバー。 糸掛けドライブの操作感はノブのがたつきが明確で、まあこんなものかなという程度ですが、 バックラッシュは国際放送をチューニングする限り気にはならず、 大きい減速比とあいまって操作には神経を使いません。
    Band Spread Scaling at 15..500MHz - Click here for Adobe PDF format

    Sメータの謎

        フロントパネル左側に設置されたSメータは、縦振れのラジケータ。 電源OFFおよび無信号時は指針はメータ上側にあり、信号強度が強くなるにつれて下側に振れるようになっています。
        Sメータ目盛り盤の褪色は致し方ないとして、脱落して曲がってしまった指針はピンセットで曲げ直してなんとか気にならない程度に修復できました。 指針の蛍光オレンジのペイントは一部剥げてしまっていますので、後で適当なペンで塗り直すことにしましょう。 幸いメータそのものは正常に機能しています。

        にもかかわらず、Sメータはほとんど動きません。 メータの両端にデジボルをつないで印加電圧を測ってみると、無信号時にマイナスの電圧がかかっています。 HA-230にはシャーシ背面にSメータのゼロ調整のポテンショメータがあるのですが、最も上げた状態でもマイナス35mV程度。 ポテンショを逆方向に回すと、マイナス180mV近くにもなります。 信号を受信すれば電圧はプラス方向に変化しますが、当初からマイナス35mVものオフセットがあるため、かなり強い信号でないとメータの針は振れません。 なおメータはプラス60mV程度でフルスケールになるようです。

        HA-230のSメータは基本的に、AGC制御されている第1中間周波数増幅管6BA6のカソード電圧を測るようになっています。 メータのプラス側ターミナルは第2中間周波数増幅管6BA6のカソードに入ったゼロ調整ポテンショメータのアームにつながっています。 こちら側はAGC制御されていないので、信号強度にかかわらず一定のはず。 しかし現実にゼロ調整可能範囲を大きく超えてメータに負の電圧がかかっているということは、 この中間周波増幅段のカソードまわりのバイアスがどうしたわけか狂っているということになります。 これはヒントかも。

         次の日、コールドスタートからのSメータ印加電圧のトレンドを測ってみました。 IFゲインコントロールはフルゲイン状態、AVC-MVCスイッチはAVCポジション、 ダイヤルは約17MHzの無信号の周波数でさらにアンテナ・ターミナルはグラウンドへショートしています。 室温は約25度、オープン・シャーシで空気流はごくわずかにあります。

        すると・・・グラフからわかるように、電源投入して2分ないし3分の時点ではSメータにはプラス40mV程度の電圧がかかり、 メータはS9オーバーで振れます。 が、その後急速に電圧は低下して、5分経った時点でほぼ電圧0、10分の時点でマイナス35mV近くまで低下してその後安定します。 明らかに異常です。
    十分なクールダウンの後に、AVC-MVCスイッチをMVCのポジションにして同様の観察を行ってました。 電源投入後5分程度の時点でわずかに変動があるものの、ほぼ安定しています。 (S9程度で安定しているのはゼロ調整を上側めいっぱいにしているせいです。)

        AVC-MVCスイッチをMVCのポジションにすれば、受信機内のAGCラインが強制的にグラウンド電位に落とされるようになっています。 したがって、AGC電圧が一定であればSメータ電圧は変動しない、言い換えれば中間周波数増幅段のカソードバイアス自体は安定していて、 AGC電圧が無信号状態であるにも関わらず変動している、となります。 はたしてそうなのでしょうか? 次はAGCラインの電圧の時間トレンドをプロットしてみるべきです。

    Band Spread Scaling at 15..500MHz - Click here for Adobe PDF format

        AGC Voltage showed strange behavior - it first went negative, peaked at -350mV. At 1 minute and 30 seconds after powered up, it started to go positive. It stabilized at +1.625V.


    AGCラインの電圧異常

        AGCライン電圧は、AVC-MVCスイッチをAVCポジションにしておいて(つまり開放状態)その両端の電圧を測ればいいわけですから簡単。 で、その結果・・・見事な変化が観測されました。 電源投入直後から電圧はどんどん下がり、1分30秒程度でマイナス350mVのピークを迎えます。 と、すぐさま電圧は上昇しはじめ、2分30秒経過した時点で 0mV、4分の時点でプラス1.625Vにもなります。 で、その後はほぼ安定。     さあ、いったい何がこんな異常を起こしているのでしょうか? AGC電圧は検波とノイズ・リミッタおよび初段低周波増幅を受け持つ双2極3極管 6AV6 (V7) の2極管部で発生されます。 ごくオーソドックスなこの回路で発生されるAGC電圧は信号強度が高まるにつれマイナス電位となるはずで、 プラス電圧が発生すること自体が異常なわけです。 となると、どこからかプラス電圧が回り込んできているに違いありません。 6AV6を抜いた状態でもプラス電圧が出ることからもそう言えそうです。 ではAGC制御を受ける側の第1中間周波数増幅管6BA6を外したら? なおいっそう顕著にプラス電圧になります。

        ここであることに気がつきました。 ファンクション・スイッチをSENDのポジションにすると、AGC電圧は現実的な値になるのです。 SENDポジションはこの受信機を送信機と組み合わせて使うためのポジションで、電源は入ったまま受信動作が停止します。 実際の運用では背面パネルに設けられたリモート端子を使って、送信機が送信中は自動的に受信停止するようにできます。
        ファンクション・スイッチをSENDポジションにすると、HA-230の内部では高周波増幅管・局部周波数発振管・周波数混合管の3本の真空管のプレートがB電源回路から切り離されるようになっています。
        ということは、これら3本の真空管のプレート電圧がどういうわけかAGCラインに回り込んでいるのではないかと思われます。 キャパシタの劣化によるリークの可能性が真っ先に出てきますが、回路図を眺めてもそのような経路にあるキャパシタは見当たりません。

        3本の真空管の中でAGC制御を受けているのは高周波増幅管6BA6 (V1) だけ。 これを取り外してみたら・・・ AGC電圧は正常です! これはもしやと思い、手持ちのスペア球に交換してみました。 明らかに中古のモトローラ製ですが、ロゴマークもほぼ残っており程度は良さそう。 その結果は・・・正常なAGC電圧!! 背面パネルのゼロ調整トリマでSメータのゼロもごく自然に取れました。 し、メータはいまや信号強度に応じて振れます。 なんとも、真空管そのものの不良だったとは。

        高周波増幅管はHA-230の中で唯一シールドが取り付けられています。 これを取り外して不良球を元に戻してみました。 やはりAGC電圧は異常ですが、真空管自体の外観は正常でヒータも正常に点灯していますし、 内部放電が起こっているようすもありません。 TE-50真空管テスタ でチェックもしてみましたが、エミッションレベルは正常な球と変わらず、リークチェックもパスします。 というわけでこの球がどのような不良モードにあるのかわかりません。 とにかくこの球が不良であるのだけは事実。

    6BA6 RF Amplifier caused strange AGC behavior - Click here for larger image

        The RF Amplifier Tube, 6BA6, showed strong grid emission. It caused the AGC Voltage went positive. Replacing the tube cured the problem.

    グリッド・エミッション

        Lafayetteブランドのトリオ受信機に関して、私の知る限りもっとも豊富な情報をもつウェブサイトのオーナー 花澤さん からメールをいただきました。 Sメータ逆振れの原因だった高周波増幅管6BA6は、グリッド・エミッションを起こしていたのではないか、とのご指摘です。 むむ、聞いたような言葉だけれど、グリッド・エミッションってなんだっけ。 あわてて Radio Designer's Handbook をひっぱりだし、索引で調べると・・・1500ページにもおよぶこの分厚い本の、なんと最初から3ページ目に記述があります。 せっかくいい本を買ったんだから、初めの10ページくらいは真剣に読んでおくべきでした。 でないと、いつまでたっても電話級アマチュアのまま・・・。

        で、真空管(傍熱型)というものは通常、 ヒーターによって熱せられたカソードから飛び出した電子がプレートのプラス電圧に引き付けられることによって電流が流れ、 その量をグリッドに電圧をかけることによって制御しているわけです。 ところがもし高すぎるヒーター電圧で連続して使用されると、カソード表面の電子放出コーティング材料が蒸発し、 発散して近くにあるグリッド表面に再付着してしまうことがあります。 こうなると、機器の電源を入れて5分程度するとグリッドはそばのヒーターやプレートからの熱で次第に熱せられ、 本来そうならないはずなのにグリッドは電子を放出し始め、したがってグリッド−プレート間に電流が流れてしまうことになります。 これがグリッド・エミッションと呼ばれる現象です。

        なるほど、もしこの現象が起きれば、グリッド電流によってAGC回路にプラスの電圧が発生することになり、異常電圧の説明がつきます。 し、現象が発生するのが電源投入後1分以内ではなくて、3分程度から始まることも説明できます。
        故障を起こした6BA6はまだ手元にあります。 手持ちの真空管テスターではこんな気の利いた測定はできませんので、再度実機でグリッド電流の測定を行って、 確認実験としてみる価値はありそうです。 何本かある6BA6のスペア球を比較してみるのも面白いかもしれません。

        Electric Radio誌の1999年10月号の記事 "The Last RME Preselector" (W4MEW Mr.Chuck Teeters) に、 「私の(フレア・マーケットで手に入れた、3球のプリセレクタ)DB-23はそれなりに汚れてはいたけれど、 使えそうな程度に思えたので、中を開けて3本の6J6を調べてみた。 すると全部が限度を超えたグリッド・エミッションを示していた。 どうやら過去にずいぶん強いRFにさらされていたのに違いない。 6J6全部を新品に交換して、問題は解決できた。」 とあります。 なるほど、過大入力を受け続けるとフロントエンド管はグリッド・エミッションを起こしてしまうのですね。 アメリカでは500W出力でさえ「大出力」のカテゴリーには入りません。 ので、私のHA-230も昔キロワットクラスの送信機の脇で動作していたのかも知れません。

    AGCの時定数の謎

        高周波増幅管を交換してSメータの異常動作は解消されましたが、まだ完全とは言えないようです。 強力な局を受信するとAGC電圧はマイナス2V以上発生しますが、このとき急に無信号状態にしても (たとえばチューニングをずらしたり、アンテナ線を外したり、別のバンドに切り替えたり、あるいはSENDポジションにしても) AGC電圧が無信号レベルに低下するまでに1分近く要します。 この間はSメータの読みも高いままですし、実際に受信機の感度は低いままです。
        このため、バンド内をチューニング中にいったん強力な局を受信してしまうと、その後数10秒は他の局が聞こえにくくなってしまいます。 し、平均的には強力に受信できている局がフェーディングを受けて一瞬弱くなってしまった場合、音量がかなり低下してしまいます。 また、たぶん同じ理由で、微弱な信号を受信しても針が動きません。

        HA-230のAGCが正常な状態でどの程度の時定数を持たされていたのか不明ですが、現状の動作はあまりにも緩慢で、 短波受信機として実用するには不適切です。 おそらく抵抗やキャパシタの経時劣化によって特性が変化してしまったのでしょう。

        しかしこのAGC電圧の挙動は不思議です。 いったん強力な信号を受信したあとの復帰が遅い、となれば、AGCライン電圧の平滑のためのキャパシタ (0.05μF)が大きすぎるか、AGCラインと検波出力をつなぐ2.2MΩと音量調整用の500kΩポテンショの抵抗値の和が大きすぎる、 というのが最初に思いつきます。 基本的にはこの両者で復帰時の時定数が決定されるはずだからです。 しかし、もしどちらか、あるいは両方が相当大きくなってしまっても、 一度AVC-MVCスイッチをMVCポジションにすればAGCライン平滑キャパシタは瞬時に放電されるはず。 そしてAVC-MVCスイッチをAVCポジションに戻せば、AGC電圧は無信号時のレベルに戻っているはず。 試してみると、確かに電圧は下がるものの、無信号時よりはずっと出ています。 さらに不思議なのは、受信機の電源を切ってもAGC電圧はすぐには下がりません。 たとえMVCポジションにしても、AVCポジションに戻したときにわずかながら電圧が残っているのです。
        AGCラインと検波出力をつなぐ2.2MΩに680kΩをパラに入れてみたり、 ボリュームの両端にパラに100kΩを入れてみたりしましたが、状況は変化しません。 まるで0.05μFが電池になってしまっているかのようです。

    AGC Circuit - Click here for larger image     そこでこの0.05μFのチューブラ型キャパシタを切り離してみました。 するとAGC電圧は信号強度に俊敏に応答しますし、Sメータは無信号にすれば即ゼロに戻ります。 これは当然のこと。 平滑キャパシタがなく音声信号成分の除去ができないので、 不要な音声帯域のフィードパックがかかり音質が悪化しています。
        つぎに手持ちの新品0.022μFのキャパシタを代わりに使用してみました。 AGC応答は俊敏なままで、音質の悪化は少なくなりました。 では手持ちの新品0.068μFを使用してみると・・・ 依然として良好な応答性を示しており、問題なく動作しています。 どうやら、オリジナルの0.05μFのキャパシタに問題があったようです。

        経時劣化か何かでどういうわけかキャパシタの内部抵抗が極端に高くなり、 図に示したような等価回路になってしまったとすれば、 AVC-MVCスイッチでキャパシタ両端を少しの間ショートさせても電圧がわずかに残ることが説明できます。
        ともあれオリジナルのキャパシタを除去し、0.068μFを半田付けしました。

        オシロスコープで見るAGC電圧の動きとSメータの針の動きを比べると、 Sメータの動きはほんの一呼吸 − たぶんコンマ数秒 − 遅れています。 たぶん第1中間周波増幅段のグリッドに入ったキャパシタのために、 AGC電圧とコントロールグリッド電圧との間に遅れが生じてしまっているのでしょう。 早いフラッターを伴う信号を受信する場合に支障が出てくる可能性もあります。 が、そのキャパシタはセラミックで経時劣化の心配も少ないし、 現時点では問題にするほどでもありませんので、深追いはやめておくことにします。

        さあ、これでSメータとAGCの動作はほぼ完調になりました。 微弱な信号に対しても針が動くし、強力な信号受信後の復帰も適切です。 ゼロ点もすっかり安定しています。 欲をいえばS9オーバーの強力な信号に対してもう少しゲインの抑えが利いて欲しいところですが、ほぼ満足。

        Sメータ指針のペイント剥がれは、顔料インクの赤色マーキングペンでちょこちょこっと色を塗ってごまかしました。 メータ脱落の原因は本来接着されているはずの黒色ケースと透明カバーの接着が取れてしまったためだったので、 針のペイントと曲げ直しが完了してから接着し直しました。
    S meter - Click here for larger image

    QマルチとBFO

        本機の最大の特徴は内蔵Qマルチ兼BFO。 AMを受信するときはQマルチとして混信除去に、SSBやCWを受信するときは周波数可変BFOとして使用できます。

    通常のAM受信

        通常AMを受信するときは、ファンクション・スイッチをREC-AMポジションにし、 Q-MULTIPLIER SELECTIVITYコントロールをAM-CW-SSBポジション(時計まわり一杯でカチリとスイッチが切れます)にします。 この状態では、Qマルチ管6AV6のプレートにはB電源が供給されず、かつ回路は中間周波数信号ラインから切り離されます。 すなわち受信機は通常の高1中2として動作し、中間周波トランスによる通常の選択度が確保されます。 この状態ではもちろんAGCが作動し、Sメータで信号強度を知ることができます。

    Qマルチとしての利用

        AM受信時に近接周波数混信がシビアな場合、Qマルチを使って妨害を除去することができます。 まずファンクション・スイッチをQ-MULTポジションにします。これによりQマルチ管6AV6が動作し始めます。 つぎにQ-MULTIPLIER SELECTIVITYコントロールは反時計方向いっぱいに、BFO-Q-MULTI FREQUENCYコントロールを中央にします。 この状態でQマルチ回路は中間周波数信号ライン、具体的には周波数混合管のプレート出力に接続されます。
        SELECTIVITYコントロールを時計方向に進めていくにつれ、Qマルチ管のフィードバックが強まり、中間周波数の通過帯域は徐々に狭まっていきます。 すなわち選択度がシャープになっていきます。 コントロールを進めすぎるとQマルチ回路は発振を開始してしまいますが、その直前で選択度は最高になり、きわめてシャープになります。
        通過帯域の中心周波数は、BFO-Q-MULTI FREQUENCYコントロールで可変することができます。
        この状態ではAGCが動作し、Sメータを使うことができます。

    BFOとしての利用

        SSBあるいはCWを受信する場合、Qマルチ回路をBFOとして使います。 ファンクション・スイッチはQ-MULTポジションにしてQマルチ管6AV6を動作させ、Q-MULTIPLIER SELECTIVITYコントロールをAM-CW-SSBポジションにします。 このコントロールが時計方向いっぱいにセットされているため、Qマルチ管は発振状態になっています。 さらに、Qマルチ回路は中間周波数信号ラインからは切り離されます。 が、発振された455kHzの信号はストレー容量結合で中間周波数信号ラインに流れ込み、結果としてBFO動作するわけです。
        BFOの周波数はBFO-Q-MULTI FREQUENCYコントロールで可変することができます。
        BFO出力は検波・AGC発生の前段で目的信号に混合されていますから、AGCはBFO信号に反応して受信機のゲインを下げようとしてしまいます。 このため、BFOを動作させている場合はAVC-MVCスイッチをMVCにして、AGCの動作を停止させなくてはなりません。 このときSメータは利用不能になります。
        強力な信号を受信している場合はIFゲインコントロールつまみで第1および第2中間周波数増幅段のゲインを下げて対応します。

        ・・・ということになっているのですが、なかなか操作はうまく行きません。 QマルチとしてもBFOとしても、回路自体はたしかにマニュアルに書かれているように動作はしているようなのですが、うまく調整できないのです。 マニュアルにははっきりと、「Qマルチを使いこなすには少しばかり慣れが必要です。」と書かれていますので、もうしばらく使い込んでみることにしましょう。
        少なくとも言えるのは、SSBやCWの受信機能がかなり使いづらいことです。 BFOを動作させるとAGCは動作しませんし、Sメータも使えません。 回路が兼用のため、BFOとして使っている間はQマルチとしては使用できません。 本来ならばSSBやCWの受信時にこそQマルチが活躍するはずなのですが。 SSBやCWを受信する場合はバンド・スプレッド・チューニング、AFゲイン、IFゲイン、そしてBFO周波数コントロールをかわるがわる頻繁に操作する必要があるわけですので、オペレータの作業量としてはかなりのものになります。 これに使いこなす喜びを見出せるかどうかでユーザの評価は大きく変わってしまうでしょう。

        さらに加えて、本来ないはずの各コントロール間の相互作用−AFゲインやIFゲインコントロールの操作によって受信周波数 (あるいはBFO周波数)が影響を受けたり、B電源安定化回路を持たないために電源電圧のわずかな変動で周波数が変動したりと、 受信安定度はSSB受信にはかなり辛いものがあります。 周波数読み取り誤差を考えあわせれば、アマチュアバンドでの使用はコリンズ51S-1や75S-1のようにらくらく操作で安定受信、 とはとてもいきません。

        SSBをHA-230で運用しようとするオペレータにはつねに「攻めの姿勢」で受信に取り組まねばなりません。 逆にこの受信機で多くのDXをゲットした局は、相当に腕のたつオペレータであるに違いありません。 こういったSSBおよびCW受信時の問題点については、14球構成の上級機である HE-80 / HA-225ではプロダクト検波回路の採用、 QマルチとBFOの分離、放電安定管の採用などでかなり改善されているようです。


    供用開始
        日本で生まれ、アメリカに渡り、二流品の扱いのままテキサスで死にかけていたHA-230はいま日本で生き返りました。 電源ハムやQマルチの動作など改善したいところは残っていますし、外観もまだクリーニングとタッチアップの余地があります。 が、ヒューズ・ホルダとオーディオ段のカップリング・キャパシタを1つ交換したところでひとまず作業を終了し、 ラボで実用機として供用を開始することにします。

        生まれた頃から恐れていたICBMは飛んできませんでしたが、 貧弱なワイヤーアンテナから入感してくるVOAニュース・ナウで今なお地域紛争がつづくことを知って、 HA-230はすこし残念そうにSメータを振らせています。
    HA-230 Overview - Click Here for Larger Image (126KB)


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