NoobowSystems Lab.

Radio Restoration Projects


Lafayette HE-80
General Coverage Shortwave Communications Receiver
(1964)

強化版9R-59

    1950年代後半、アマチュア無線の通信方式としてSSBが急速に普及していきます。 SSBには高い周波数安定度をもつ受信機が不可欠であり、 受信機の性能は感度や選択度ばかりではなくて混変調特性や高いイメージ排除性能、 良好なSN比、さらにはSSBの特性に合ったAGC特性などといった項目が重要視されるようになっていきます。 こうなるとシングル スーパーヘテロダインのゼネラル カバレージ機では満足できる性能を得るのが次第に困難になり、 メーカー製・自作機ともアマチュアバンド専用のクリスタル フィルタつきダブルスーパーヘテロダイン機が主流になっていきます。 一方日本のアマチュアは新しい時代の受信機は1963年のスターSR-600まで待たねばなりませんでした。

    高一中二シングルスーパーの Lafayette HA-230 (トリオ9R-59) ではやはり、SSBの受信はかなりの困難が伴いました。 Lafayette HE-80 (トリオJR-60) は同じようなシングルスーパーのゼネラル カバレージ機ですが、 放電安定管と局発バッファによる安定度の向上、SSB/CW用プロダクト ディテクタの採用、SSB時も使えるQマルチなど、 HA-230の上位機種として性能向上が図られています。さらに50MHz帯を受信するためのクリスタル コンバータを内蔵し、 FMの受信も可能、100kHzクリスタル キャリブレータも内蔵するなど機能強化も行われています。 これらの改善がはたしてどの程度の効果をもたらすか? HA-230の修理が完了してほぼ2年、ラボに兄貴分のHE-80がやってきました。

HE-80

    Lafayette HE-80は真空管を14球使用した、 高一中二シングルスーパーヘテロダイン方式のゼネラルカバレージ短波受信機です。 中波帯1バンド、短波帯3バンドおよび内蔵クリスタル コンバータによる50MHz帯の5バンド構成。 大型の横行きダイヤルの下半分はアマチュアバンドにキャリブレートされたバンド スプレッド ダイヤルです。 日本のトリオによる設計・製造で、発売は 1964年前期。 1964年12月には後継機HA-225にバトンタッチしています。 HA-225はHE-80に対して外観はほとんど変わりないものの、中波帯の代わりに長波帯が受信できるよう変更され、 かつ内部的にいくつかの改善を受けています。

    なおHE-80のごく初期ロットは6mバンドではなく2mバンド用のクリスタル コンバータを内蔵しており、 日本国内向けのJR-60と同じ塗色とつまみ形状をしていたようです。
HE-80 Interior View - Before Restoration: Click here for larger image
回路構成

    Lafayette HE-80 には真空管が14球使用されており、 Lafayette HA-230 (TRIO 9R-59) の9球に比べると内部はさすがに上級機の風格が漂います。 14球のうち2球は6m(50MHz)帯用のクリスタル コンバータ、1球は電圧安定管ですから、 HA-230に比べて回路機能の実質として増えたのは2球。 これらはBFO/Qマルチの独立とプロダクト検波の追加に使用されています。 したがって、受信機の骨格としてはHA-230/9R-59と変わらない高一中二のシングルスーパーヘテロダインです。

    12本の真空管を動作させる電源回路は、HA-230に対して強化されています。 整流管はHA-230の5Y3-GTに対してHE-80では6CA4を使用。 一見GT管の5Y3-GTの方が大きくてパワーがありそうですが、 最大出力電流は5Y3-GTの125mAに対して6CA4は180mA。 ミニアチュア管なのに大容量なのです。 ただし190VのB巻線を二つ持つ電源トランスにはDC110mAの表示があり、 6CA4をオーバーロードさせうるものではなさそうです。 1960年代初頭の他の通信型受信機を見ると、中型機では5Y3-GT、 大型機では200mA以上取れる大型管の5U4-Gまたは5U4-GBが定番で、 すこし時代が進むとシリコンダイオードを用いた電源回路となります。 したがって、6CA4を使っている受信機というのは珍しいものといえます。

    HA-230ではAC100VとAC110Vの切替スイッチがありましたが、 HE-80では省略され110V巻線に直接接続されています。 今後は日本国内で使うことを考えるとAC100V巻線につなぎなおすとよいでしょう。

    電源電圧変動に強くするため、HE-80では放電安定管0A2(VR-150)が採用されています。 一方、HA-230で採用されていた大技、局発管ヒータの常時通電はHE-80では行われていません。
DESIGNATION TYPE USAGE
V1 6AQ8 6M RF Amplifier
V2 6BL8 6M Mixer / 6M Oscillator
V 6AQ8 Q Multi / Crystal Calibrator
V 6BA6 RF Amplifier
V 6BE6 Mixer;
V 6AQ8 Oscillator / Buffer
V 6BA6 1st IF Amplifier
V 6BA6 2nd IF Amplifier
V 6AL5 AM Detector / ANL
V 6BE6 Product Detector
V 6AQ8 1st AF / BFO
V 6AQ5 Audio Output
V 6CA4 Rectifier
V 0A2 Voltage Regulator

理想的なコンディション

    まずは外観目視検査から始めます。外観は年代相応の汚れだけ、大きく目立つキズ等はなし。 欠品もありません。簡単にはげ落ちるダイヤル目盛りもパーフェクトな状態を保っています。 シャーシをケースから引き出そうとしたら、おおっと、本来シャーシを固定するはずの底面のスクリューが6本ともありません。 ということは輸送中、シャーシとケースはアルミ製フロントパネル上部のM3スクリュー2本だけで固定されていたことになります。 よくもまあダメージがなかったものです! ていねいなパッキングと、たぶん箱が大きかったので逆さまにされずに太平洋を横断してきたのでしょう。

    シャーシはそれなりに酸化して荒れていますが、ひどいサビ等はありません。 シャーシ下面はホコリおとしだけでOK。

    使用されている部品は1960年代はじめの典型的な日本製。 高周波部はほとんどがディスクセラミックですが、 検波段以降ではチューブラ型キャパシタも多用されています。交換は不可欠でしょう。 真空管はオーディオ出力の6AQ5Aだけが交換されていますが、他は松下製。 そんなに酷使された受信機ではないようです。

    ダイヤル メカニズムにも致命的な問題はなさそう。 メイン チューニングを回して上側の指針を左の方へ動かすと、 針がガイドレールから外れてダイヤルホイールに乗り移ってしまうというなんともお茶目なトラブルがあります。

    簡単なテストの後にスピーカをつないで電源を入れると、全ての真空管とパイロットランプが点灯し、 放電安定管の内部もきれいな紫色に光りました。 予想していたハム音は全くありません。 各コントロールは例によってガリがひどいものの、 いかにも動作していそうなザーッといった感じの静かなノイズが聞こえてきました。 アンテナをつないでみると、しかし、何も受信できません。

    いや、全く受信できていないのではなく、感度が限りなく悪いのです。 部屋の蛍光灯をONするとノイズが聞こえますし、実際にラジオたんぱがかろうじて聞こえました。 が、RF GAINコントロールをフルにすると音量はかえって小さくなります。 ゲインを少し下げたあたりで音量は最大になるものの、かなり弱々しく、再生音はひどく歪んで、 かつ大変こもった音質です。 かろうじて言葉の内容が聞き取れるといった感じ。これは楽しめそうです。

    外装の修復が苦手な私にとってのレストア素材として、これ以上はない理想的なコンディション。 買ってすぐに絶好調で働き出してしまう機械ほどつまらない物はありません。って、すでに変人だな。 そういえばもう6年以上経つけれど、サニーベールのジャンク屋、 ウイアード・スタッフ で面白い物を見ました。 単なる壊れたビデオデッキなのですが、貼られていた蛍光オレンジ色のシールには "Guaranteed Not Working; We'll refund if it ever works" - 「動作しないことを保証します - 万が一動作してしまった場合は返金いたします」さすが!

Lafayette HE-80 Chassis: Click here for larger image
まずは低周波段から

    例によって回路図が入手できるまでの間、低周波段からいじり始めます。 本機はスピーカを内蔵しておらず、リヤパネルのネジ止め式スピーカ ターミナルにスピーカを接続して使います。 コモン グラウンドと8Ωそして500Ω出力端子の3つのターミナルがあります。 いつものテスト用小型ブックシェルフは8Ωなのでコモン グラウンド"G"と8Ω端子に接続します。
    AF GAINコントロールは通常のボリュームで、ここからの信号はまず6AQ8の片側で初段低周波増幅され、 ついで6AQ5で電力増幅され、出力トランスを経てスピーカを駆動します。 フロントパネルのヘッドフォンジャックはスピーカとの切替え式で、抵抗等は入っていません。 リアパネルにはレコーディング ジャックが用意されています。 ここには初段低周波増幅段の出力が出ています。

    ボリュームのホット側に音声信号を注入してみると、低周波段には問題があることがすぐにわかりました。 音は出ますが、トータル ゲインは低く、また中高音がかなり減衰してしまっています。 ちょうど効きのよいトーン コントロールで目いっぱい高域を絞った感じで、通信型受信機とはいえこれでは困ります。

    まずは出力管6AQ5のカソード バイパスとプレート バイパスをチェックし、新品に交換します。 が、変化がありません。 次に6AQ5のグリッド電圧を測定してみると、あれあれ、10V近くもプラスの電圧がかかっています。 これではせっかくカソード抵抗で作ったバイアス電圧も無駄になってしまいます。 原因はカップリング キャパシタのリークで、6AQ8のプレート電圧が6AQ5のグリッドにかかってしまっていたためでした。 0.01uFのフィルム品に交換すると、グリッド電圧はほぼ0V。再生音は高域がかなり伸びるようになりました。

    初段低周波増幅管6AQ8に進みます。 プレート電圧を測定してみると、わずか35V程度しかかかっていません。これでいいのかなあ。 B電圧は135Vほどかかっているので、220kΩのプレート抵抗で100Vの電圧降下があることになります。 プレート電流は45mAも流れていることになり、ずいぶん流れすぎなような気がします。
    カソード パイパスのキャパシタは10μFで、これを交換したらカソード電圧が約0.6Vから約1Vにアップ。 リークしていたのでしょう。 周波数特性も大幅に改善され、シンバルやハイハットのさわやかな高音が自然に聞こえています。
    6AQ8のグリッドはボリューム コントロールのワイパー端子にシールド線で直結されており、 固定されたグリッド抵抗はありません。 ボリューム コントロールのホット側に直流電圧がかかれば、グリッド電圧が影響してしまうことになります。 はて、これでいいのかな。

    キャパシタ交換で高域もよく鳴るようになったしゲインも向上しましたが、いまひとつ音質がよくありません。 ラジオ受信であれば実際には気がつかないでしょうが、 CD品質の音声信号を注入してテストしてみるとどうにも気になってしまいます。 バスドラムのような大振幅の信号の際に背景の高域成分が濁ってしまう、といえばよいのでしょうか。 所詮は通信型受信機のアンプですから高品質なオーディオを求めるのはお門違いというものですが、 ちょっとだけ回路を変更してみることにします。 まず、入力信号をボリュームから取り出すところに0.1μFをいれて直流阻止します。 代わりに6AQ8のグリッド抵抗として220kΩを入れます。 プレート抵抗を220kΩから100kΩに下げ、カソード抵抗を1.5kΩから1.3kΩにします。 この抵抗は1kΩと300Ωの直列とし、10μFのバイパスキャパシタは1kΩだけに並列に入れ、 300Ωに出力トランスの2次側から取り出した信号を3kΩの抵抗を介して接続し、ネガティブ フィードバックさせます。
    NFBのため低周波段全体としてのゲインは低下しましたが、 バスドラムで背景の高音が濁る現象はほぼ気にならなくなり、FM音楽を聴く程度であれば満足できる音質になりました。 短波を聴くのなら申し分ないレベルです。 受信がきちんとできるようになったらシャント キャパシタでも入れて、高音を適当に減衰させるとよいと思います。 意図して高域を減衰させるのと、故障していて高域が伸びないのと、いったいどう違うんだい? と聞かれるとちょっと考え込んでしまいますが・・・・。

DESIGNATION TYPE USAGE RESULT
C 10μF 50V 6AQ5 カソード バイパス 22μF 50Vに交換。変化なし。
C 0.05μF 6AQ5 プレート バイパス 変化なし。
C 0.01μF 6AQ8-6AQ5 カップリング リークしていた。0.01μF 250V品に交換後、高域特性向上。
C 10μF 6AQ8 カソード バイパス リークしていた。10μF 35V品に交換後、歪、高域特性向上。
R 220kΩ 6AQ8 プレート抵抗 100kΩに変更。
R 1.5kΩ 6AQ8 カソード抵抗 1kΩ+300Ωに変更。
R (added) N/A 6AQ8 グリッド抵抗 220kΩをグリッド抵抗として追加。
R (added) N/A NFB抵抗 3kΩ抵抗を追加し、OPT2次側から6AQ8のカソードにNFB。
C (added) N/A 6AQ8 入力カップリング 0.1μF 50Vを直流阻止用として追加。
C (added) N/A 6AQ8 入力バイパス 0.022μFを高域バイパスとして追加。(後述)

    AF GAIN および RF GAIN のポテンショメータは、それ自体にはガリはありません。 セーフティウォッシュを使う必要はなく、少し使っただけでスムースな調整ができるようになりました。

問題は検波段か中間周波増幅段か?

    低周波段がとりあえず完調といえる状態になったので、信号が強まると音が消える原因を調べてみましょう。 HE-80ではAM受信時は6AL5によるダイオード検波回路が、SSB/CWの時は6BE6によるプロダクト検波回路が使用されます。 トラブルはFUNCTIONスイッチがAMの時もSSB/CWの時も発生しています。

    本機にはANLが装備されており、ファンクションスイッチをANLポジションにするとANLが有効になります (SSBの時はANLは使えません)。 今回のトラブルはANLを使わない状態で発生していますが、AM検波回路とANLは同じ6AL5に同居しているので、 ANLがどういうわけか効いてしまっていてオーディオ信号をクリップしている、という説もありえます。 が、これはプロダクト検波回路を使ったSSBモードでも発生していることから可能性は低そう。

    配線を追うと、最後の中間周波トランスの2次側から取り出された中間周波数信号はマイカ キャパシタを介して6AL5のAM検波ダイオードに入り、 さらに別のキャパシタでプロダクト検波管に入力されています。 どちらかが調子が悪くて他方に悪影響を及ぼしている可能性もありますので、 まずはプロダクト検波管への入力キャパシタを切断しました。 しかし状況は変わりません。

    AM検波ダイオードの出力信号をオシロで見てみると、たしかに検波はされていますが、 強信号のときに波形のピークがクリップされてしまい、さらに信号が強まるとオーディオ出力は無音になります。 これは、音声信号の負のピーク(キャリヤの振幅が最も小さくなる瞬間)でさえクリップ レベルに達してしまい、 もはや音声成分が残らない状態になってしまっているのです。 正のピークもクリップ レベル以下に収まるような弱い信号、あるいはゲイン コントロールを絞れば、復調音声は正常になります。

    それでは中間周波段、特に2段目の6BA6が飽和しているのでしょうか。 これはありえそうです。事実、2段目の6BA6のプレート電圧をオシロで観測してみると、 強信号のときに確かに変調のピークがクリップされています。 どうやら問題は検波段より前のようです。

DESIGNATION TYPE USAGE RESULT
C 0.01μF セラミック 第2中間周波増幅 6BA6 入力側バイパス Sprague 0.01μF 80V に交換。
変化なし。
C 0.01μF セラミック 第2中間周波増幅 6BA6 スクリーン バイパス Sprague 0.01μF 20V に交換。
変化なし。
C 0.01μF セラミック 第2中間周波増幅 6BA6 カソード バイパス Sprague 0.01μF 20V に交換。
変化なし。
C 0.05μF 600V チューブラ AGC平滑 Nichicon 0.047μF 400V に交換。変化なし。

     AGCはそれなりに発生しているし、各部の電圧レベルも正常。真空管を交換しても症状は変わりません。 2段目の6BA6のスクリーン バイパスとカソード バイパスは0.01μFのディスク セラミックで、これはあまり痛みそうにありません。 念のためAGCフィルタ キャパシタ0.05μFを含めて新品のSprague製およびNichicon製フィルムに置き換えてみましたが、 症状は変わりません。 第2段の6BA6のプレート出力のAC成分はおおむね30Vp-p以上振ることができず、波形は確かに飽和しています。 しかし中間周波増幅段にも検波段にも明らかな異常はありません。 これはわからない! あちこちつつきまわしましたが、どうにも理解できません。

中間周波トランス

    コイル セクションの各コイル、トリマ、およびすべてのネジ固定部は生産時にゆるみ止めの白いペイントが塗布されています。 コイル セクションと中間周波トランスの調整部の白ペイントは割れており、ユーザーが再調整を試みていることがわかりました。 本当に正しく調整されているか確認した方がよさそうです。 コイル セクションの再調整は音消えが直ってからにすればよいので、まずは中間周波トランスの再調整を行いましょう。
    局部周波数発振管6AQ8を抜き、混合管6BE6の第3グリッド(ピン7)にシグナル ジェネレータからの455kHzを注入します。 AGC電圧をデジタル マルチメータで読めるよう接続し、さらに今回は2段目の中間周波増幅管6BA6のプレート信号もオシロでモニタします。 調整をとってみると、3つある中間周波トランスはどれもきちんとピークが取れていました。

    ところがいろいろ試しているうちに、奇妙なことに気がつきました。 1段目と2段目の6BA6の個々の動作を調べようとしたときです。 1段目の6BA6のコントロールグリッドにシグナル ジェネレータを接続し、プレートの波形をオシロで観測すると、 当然のことながらジェネレータの周波数を455kHzにしたときにプレートの信号が最大になります。 2段目の6BA6でこれを試すと、もちろん455kHzジャストで最大のプレート信号になりますが、 約370kHz程度にももうひとつピークがあるのです。それも455kHzの時よりはるかに大きな出力レベルで・・・・!

    2段目の6BA6の前後の中間周波トランスががぜん怪しくなってきました。 どうなっているのだろう? コイルの導通やショートをチェックしつつ、思いきって各コアをぐるぐる全範囲で動かしてみます。 どのトランスもピーク出力を得られる調整ポイントは2箇所あります。 最終の中間周波トランスについて、先ほどまであわせられていたピークとは別のピークを見つけて最大点を探してみようとしたら・・・・ 検波段入力信号波形がオシロの管面から飛び出してしまいました!

これだっ!!

    調整後の検波段入力レベルは、いままでの10倍をはるかに超えています。

バンドいっぱいの放送局

    以前のオーナーが中間周波数トランスの再調整を試みたとき、誤って455kHzではない別のピークにあわせてしまったのでしょう。 最終の中間周波トランスは上側コイルも下側コイルも誤調整されていました。 6BA6の出力は検波段に伝わる前に大きくロスされ、したがってAGCはあまり効かず、 6BA6はハイゲイン状態を余儀なくされて結果的にオーバーロードになっていたものと思われます。 結局、強い信号での音消え現象の修理は調整ドライバー1本だけで済んだわけです。
    音消えが解消されただけでなく、受信機の感度ももちろん大幅アップ。 すでに5球スーパーでは逆立ちしてもかなわない性能が出ています。 夜の国際放送バンドは、どこも放送局で埋め尽くされています。 最初のうちはボリューム コントロールをフルにしても弱々しい音しか出なかったのに、 今度はつまみを最小にしてもかすかに音が残ってしまう、という逆のトラブルが発覚しました。 とりあえず喜んでおきましょう。

検波出力とAM復調音

    AM検波ダイオードの出力とプロダクト検波管の出力は、 ファンクション スイッチによってどちらかが選ばれて音量調整用のポテンショメータに接続されます。 それぞれの出力には直流阻止用のキャパシタが入っています。 このため、ポテンショメータから初段低周波増幅管のグリッドの間にはキャパシタは不要だったのです。 ところが、これらの直流阻止用キャパシタはいずれもひどくリークしていました。 AM検波出力に関しては信号強度に応じてプラスマイナス1〜2V程度、 プロダクト検波出力では6BE6のプレート電圧の一部がかかって10V以上もポテンショメータに印加されていました。 今回はすでに低周波段の修理と改造を行っており、ポテンショメータとグリッドのあいだに直流阻止用キャパシタを、 また固定したグリッド抵抗を追加していたために、大して問題とならず使えていたのです。
    リークしていたキャパシタはいずれも新品に交換しました。 直流電圧は観測されず、SSB-CW時にボリュームを回すと出ていたコンタクトノイズも消えました。

DESIGNATION TYPE USAGE RESULT
C 0.005μF 600V
チューブラ Nichicon製
AM検波ダイオード出力 直流阻止 顕著なリークあり。
Sprague 0.0047μF 80V に交換。
復調音の高域特性が良好になった。
C 0.005μF 600V
チューブラ Nichicon製
プロダクト検波出力 直流阻止 顕著なリークあり。
Sprague 0.0047μF 80V に交換。

    この修理後も、AM受信音質はかなり歪っぽく、思わしくありません。 通信機としては使用可能なものですが、国際放送を聴いて楽しむにはかなり不満です。 ダイオード検波出力波形を見ると、上側ピークがクリップされてしまっています。 これは受信信号強度やボリューム位置によらないので、検波段に起因するものと推測されます。

    AGCの応答時間が短すぎるのかとも思いましたが、そうではなさそうです。 AGC抵抗は 2.2MΩが使用されていますが、実測したところ2.9MΩまで抵抗値が上昇しています。 応答時間は遅くなる方向なのでこれは音質不良の原因ではありませんが、1MΩの新品抵抗2本に置き換えました。 HA-230の時と異なりAGCの動作は安定しており、時定数も適切なものです。

    歪の原因をさがすために各素子を交換したり、別の6AL5を試したり、プロダクト検波回路を切り離したりしてみました。 が、思うように改善されません。 6AL5でAM検波とANLを行う回路は、たとえば実用真空管ハンドブックにも掲載されていますが、HE-80の回路とは差異があります。 ひょっとしたらこれがオリジナルデザインの性能かもしれないと思いはじめました。

    HE-80では検波段でのハムを減少させるため、6AL5のヒータに10Ω抵抗が直列に挿入されています。 他の球のヒータ電圧実測値はAC6.7Vですが、6AL5はこの10ΩのためにAC4.4V程度しかかかっていません。 このため、6AL5のヒータの光は他の球に比べ薄暗くなっています。 ヒータ電圧が低すぎるのかなとも思いましたが、10Ωをショートして6.7Vで点火しても状況は変わりません。

    なお実用真空管ハンドブックの記述によると、6AL5のヒータの片側をシャーシに落とす場合は3番ピンを落とすのが良い、と書かれています。 HE-80では3番ピンに10Ωを通じてヒータ電圧供給、4番ピンがシャーシに接続されています。 変更したらなにか効果があるでしょうか。

ノイズはどこから

    まだコイル パックの調整は行っていませんが、どの程度の感度が出ているのだろうと思い、アンテナ端子に接続したシグナル ジェネレータの出力を絞ってみました。 すると、10dBμあたりからバックグラウンドノイズに埋もれてしまい、信号が判別できなくなってしまっています。 わがラボのアンテナとノイズ事情は劣悪なので、どのみちふだん受信するのは強力な放送局だけです。 が、この性能はちょっと納得できないものがあります。感度が悪いというより、ノイズがとても目立つのです。
    アンテナを外してみても、スピーカからはザーッといったホワイトノイズ的な音が絶えず出ています。 これはいったいどこから来るのだろう? 高周波増幅管6BA6を抜いても変わらずに音は出つづけているので、受信機由来のノイズであることがはっきりしました。 ほぼ同じ回路構成のHA-230やCRV-1/HBに比べても、現在のノイズレベルは大きいように思えます。 さらに局発管を抜いてみても、ノイズレベルは変わらず。
    この受信機にはFM受信ポジションがあります。 ノイズはFMラジオの無信号ノイズに似た音色なので、FM受信機能が悪さをしているのかもしれません。 6mコンバータ ボードの6BL8も抜いてみましょう。 ええっ、まだ出てる。 それじゃQマルチの6AQ8。うう、変化なし。 じゃあ、これが? 周波数変換の6BE6。 ノイズは消え、かすかな誘導ハムだけになりました。 じゃ、要するにコンバータノイズなの?

    別の中古の6BE6を挿してみると、ノイズはオリジナル球と同様に出ています。 真空管そのものの問題ではないようです。 ノイジーな球として定評のあるペンタグリッド コンバータ 6BE6 ですが、はて、こんなにノイジーだったっけ。
    各ピンの電圧測定結果は表のとおりで、正常なように思えます。 6BE6の第1およぴ第3グリッドへの入力配線を切ってみたら、ノイズは多少減りましたが、やはり無視できないレベルです。
    プレート端子から最初の中間周波トランスへの配線をいじるとわずかにレベルが変化します。 ここにはQマルチへの接続があり、これを切り離すと多少改善されます。 が、これを切ってしまってはHE-80の存在意義がなくなります。
6BE6 MIXER VOLTAGE MEASUREMENT
PIN CONNECTON VOLTAGE
1 1st Grid 0V
2 Cathode & 5th Grid 3.6V
3 Heater 6.65VAC
4 Heater 0V
5 Plate 118V
6 2nd & 4th Grid 119V
7 3rd Grid 0.18V

    結局これは「正常な」コンバータ ノイズのようです。 となると、改善するにはペンタグリッド コンバータをやめて3極管ミキサーにでも改造するしかありません。 いつかトライしてみましょう。

    コンバータ ノイズへの最も有効な対策は、入力レベルを上げてノイズレベルを上回るようにすること。 で、安直に、高周波増幅管6BA6へのAGC制御をやめて常時フルゲイン動作に変更してみました。 中程度の強度で入感している信号についてはS/N比が向上したように感じられます。 極端に強い半島や大陸からの信号ではオーバーロードが感じられますが、必要であればRFゲインコントロールを絞れば済みます。 し、この改造は抵抗1本の接続先を変えただけですから、いつでもノーマルに戻せます。

    AGCをかけないのなら、高周波増幅にあえて6BA6リモート カットオフ管を使う必要はありません。 1950年後半から60年代のQSTの記事等を見ると、6DC6や6AK5のようなシャープ カットオフ管を使う例が多くみられます。 リモート カットオフ管の混変調特性の悪さが嫌われているためのようです。 6BA6の代わりにと同一ピンアサインであるシャープ カットオフ管6AU6を使ってみると、 良好に入感している国際放送の場合はバックグラウンド ノイズが少なくなって聴きやすいように思えます。 正確なところは不明ですが・・・。

Sメータ

    本機のSメータは、第2中間周波増幅管6BA6のカソード電位の変化を読む形式になっています。 メータの基準電圧は同じ6BA6のスクリーン グリッド電圧を抵抗とゼロ点調整ポテンショメータで分圧して作られています。
    HA-230では第2中間周波増幅段はAGC制御を受けないのでSメータは第1中間周波増幅管6BA6のカソードに接続されています。 HE-80では第2中間周波増幅段もAGC制御を受けます。 一方、HA-230ではフロントパネルのIF GAINコントロールは第2中間周波増幅管のカソード抵抗を変化させるのでゲインを落とすとSメータのゼロ点が変化しますが、 HE-80のRF GAINコントロールは第2中間周波段には影響しません。 このためゲインを落とすと、ゼロ点は変化せずにメータの振れだけが低下します。

    HE-80のメータはHA-230と同様な縦振れのラジケータです。 電源OFF時および無信号時は針は下側にあり、信号強度が上がるにつれ上側に振れていきます。 この挙動はHA-230とは正反対です。ゲインを絞ったときの動きとともに、このHE-80の挙動の方が私個人としては好みです。

    本機ではメータ自体も周辺回路も正常に動作しています。 が、高周波増幅段を常時フルゲインにしたため、同じ信号強度でもAGC電圧はぐっと上がってメータ はほとんど振り切りっぱなし状態になってしまいました。 メータ ゲインを落とすため、メータに直列に入っている1.5kΩに2.2kΩを追加したところ、シグナル ジェネレータ出力40dBμで大体S9を指示するようになりました。 良好に入感しているVOAやBBCではほぼ上限、目盛りにして+40dBあたりを指しますが、 非常に強力な信号でも振り切ってしまうことはありません。 アクセサリとしてちょうどよいレベルだと思います。

コイル パックの調整

    コイル パックの再調整を行ったところ、各バンドのダイヤルほぼ全域で良好な調整結果が得られました。 ダイヤル目盛りも結構正確で、なにより短波帯の感度は素晴らしいものがあります。 近所迷惑なほどの音量を出すことができ、あるいはRF GAINを絞りきった位置でさえVOAが聞こえつづけるほど。 ラジオたんぱがかろうじて聞こえていた当初に比べれば、驚異的な復活といえます。
    バンド セレクタをいちばん右側に回せば、6mクリスタル コンバータが動作を開始します。 6m専用アンテナ端子(日本でいうM型コネクタ)にベランダ アンテナをつないでみると、何かのノイズが受信できています。 50MHz台をきちんと発生できるシグナル ジェネレータは持っていないので正確なテストはできませんが、 25MHzの第2高調波が受信できているのでクリコンは動作しているのでしょう。 ケンウッドTS-60Dを引っ張り出してダミーロードでもつないでみれば、もうすこしマシなテストができるかもしれません。

BFOとプロダクト検波

    SSBおよびCWを受信するためのBFOは、初段低周波増幅と兼用の双3極管 6AQ8 の第1セクションで構成されています。 ファンクション スイッチをSSB-CWにセットすると、3極管のカソードがロータリー スイッチによりグラウンドに落とされ、 BFOは発振を開始します。 発振出力はグリッド(ピン7)から取り出され、プロダクト ディテクタを構成している 6BE6 ペンタグリッド管の第3グリッド(ピン7)に直接注入されています。 ここの信号を見ると、BFO非動作時はほぼ0Vですが、動作時は約-50Vを中心にプラスマイナス40V、 ピーク・トゥ・ピークで80Vもの発振出力になっています。 波形はきれいな正弦波で、オシロで見る限りは安定しています。

    BFO発振周波数はずいぶん狂っていたようです。コイルを調整し直したらSSB/CWがクリアに受信できるようになりました。 ゆっくりとした周波数ドリフトはありますし、シャーシを揺さぶると周波数が変化するものの、 信号強度や電源電圧に起因した周波数変動はなく、安定しています。 この安定度はHA-230ではとても得られなかったものです。 しかし、BFOピッチ コントロールでたとえば相手局のゼロビートを取ろうとするとき、 言い換えればBFOの周波数と入力キャリア周波数が近いか等しいとき、復調音の音量が低下し、 かつ歪っぽくなってしまいます。 ちょうど信号が引きずり込まれてしまっている感じ。これが本調子なのでしょうか。

    6BE6の第3グリッドに注入されたBFOの出力は、第1グリッドにも現れてしまっています。 この信号がAM検波回路に入り込み、検波されてAGC電圧を発生させてしまっています。 その強度はおおむねS9程度で、メータは振れたままになっています。 このため中間周波段のゲインはかなり低下してしまいます。 弱い信号を受信するためには、やはりAVC-MVCスイッチをMVCにして手動でゲイン調整を行う必要があります。 すると今度は、RF GAINコントロールの位置によってわずかな周波数変動が発生します。 これを補正するためにBFOピッチあるいはバンド スプレッドを再調整することになります。 シングルノブでの快適チューニングは現時点ではあいかわらず夢のままです。

Qマルチ応答せよ

    夕方の7MHzのSSBを受信すると、上から下から遠慮のないQRMに悩まされます。 ここは自慢のQマルチの出番。ところが、Qマルチは全く応答しません。 SELECTIVITYコントロールを反時計いっぱいにするとスイッチが切れてQマルチは停止状態になり、このとき受信機は正常に動作しています。 が、スイッチを入れると感度はとたんにガクリと下がり、SELECTIVITY およびFREQUENCY の つまみをどういじっても変化がありません。 Qマルチはサブシャーシ上に組まれており、Qマルチ用コイルがあります。 このコイルのコアをどういじってもやはり変化がありません。 Qマルチ管6AQ8のヒータは正常に点火しているのですが。
    依然として回路図は入手できていません。 サブシャーシをひっくり返せば配線を追えるとは思いますが、HA-230のQマルチとほぼ同等だろうと仮定して、 Qマルチ管の電圧を測定してみましょう。

測定ポイント 回路機能 測定結果
QマルチOFF QマルチON
(BROAD)
QマルチON
(SHARP)
ラグ板赤色ワイヤ クリスタル キャリブレータ電源 キャリブレータ動作時 88.7V ±0.3V程度
ラグ板青色ワイヤ Qマルチ管カソード 0V 3.3V 2.45V
22kΩ同軸ケーブルの反対側 プレート抵抗 B電源 開放 136.9V 136.2V
22kΩ同軸ケーブル側 プレート抵抗 Qマルチコイル側 開放 131.6V 120.3V
0.01μF スイッチ側 プレート抵抗 Qマルチコイル側 開放 131.6V 120.3V
ミゼットバリコン ステータ Qマルチ管プレート 開放 132.6V(*1) 121.2V(*1)
0.01μF IFT側 中間周波数信号ライン 124V 123.8V 123.1V

( *1: 少し時間がたってから測定したので電圧が高めです。 )
( RFゲイン コントロール反時計いっぱいで測定。これらの電圧はRF GAINコントロールの位置で変化します。)

    SELECTIVITYポテンショメータは、Qマルチ管のカソード抵抗3.3kΩに直列に入っています。 つまみを反時計いっぱいで抵抗値は最大となり、Qマルチ管の動作感度は最低になります。時計方向に回すと、カソード抵抗は3.3kΩだけになります。 このときのカソード電圧が2.45Vなので、3.3kΩのカソード抵抗には約0.74mA流れていることになります。 これはプレート電流と等しいはずです。 またこのとき、22kΩのプレート抵抗の両端の電位差は16Vであり、したがってプレート電流は約0.72mAとなり、 抵抗値の誤差を考えれば結果が合います。
    それでは、Qマルチ管は増幅動作をしているのでしょうか。 HA-230の場合はSELECTIVITYつまみを時計方向いっぱいにすれば回路は発振状態になりますが、 このQマルチは発振するふうではありません。グリッド廻りの回路に違いがあるのでしょうか。

    再度Qマルチコイルのコア位置調整を行ってみたら、今度は受信音量が変化します。お、動作しているみたいだぞ。 シグナル ジェネレータからの455kHz注入ではうまく調整が取れなかったので、実際の信号を受信しながら調整してみました。 なぜか最初のトライではうまくいかなかったのですが、単なる調整不良だったようです。

    Qマルチを使えば国際放送受信時に隣接局との10kHzビートをかなりのところまで低減できます。 さらにHA-230とは異なり、本機のQマルチはSSB/CWモードでも利用できます。 混雑する7MHzのSSBやCWで試してみると、確かに混信低減に効果があります。しかし効きはいまひとつ。 QマルチをBFOとしても使うHA-230と異なり、発振しはじめるまでフィードバックを強めないように設計されているのかもしれません。 カソードの固定抵抗3.3kΩにさらに10kΩをパラに追加し、発振状態にまでフィードバックを上げられるようにしてみました。 フィードバック直前ではかなりシャープにはなるものの、十分満足できるものではありません。 SSBの受信音質もかなり歪っぽくなります。
    やはりこれはQマルチの限界、すなわち鋭いピークとなだらかなスカート特性に起因する限界なのでしょう。 でなければ、Qマルチが真空管1本とコイル1個で簡単に実現できるときに、 あえて低い周波数での中間周波トランスをずらりと並べてみたり、クリスタル フィルタやメカニカル フィルタを使ったりはしないでしょうからね。

    ともあれQマルチは復活。HA-230/9R-59に対して大きなアドバンテージです。

プロダクト検波回路をいじる

    プロダクト検波回路は IF信号にBFO信号をヘテロダインし、差信号として音声を復調します。 根本原理としてはスーパーヘテロダインの周波数変換回路と同じと考えることができます。 真空管受信機のプロダクト検波回路では、3極管を3つ使ったもの(1949年にM.G Crosby氏により特許)、 あるいはペンタグリッド コンバータ管を使ったものが多く利用されています。

    Single Sideband for the Radio Amateur に掲載されている6BE6を使用したプロダクト検波回路の例を見ると、 BFO出力はキャパシタを介して第1グリッドに注入されており、その振幅は10V程度にせよ、とあります。 また左図は電波技術誌に掲載されていた例ですが、これでもBFOは100pFを介して第1グリッドに、IFは第3グリッド注入。 Radio Handbook 16th Edition の"DX Communications Receiver"ではBFOは第1グリッドに10pFを介して注入、注入レベル調整ポテンショもついています。 QST誌1963年3月号のW6TC/SKによる入門者向け自作機 HBR-8でも、 BFO出力はトリマ キャパシタを介して6BY6の第1グリッドに注入しており、このトリマを出力の歪が最も少なくなる点に合わせよ、とあります。

    いずれの例をみてもBFOはペンタグリッド管のオシレータ グリッドである第1グリッドにキャパシタを介して注入されており、IFは第3グリッド。 しかもBFO注入レベルが復調歪に影響するとされています。

    これに対してHE-80では、BFO信号をダイレクトに6BE6の第3グリッド(7番ピン)に注入しています。 しかもその振幅は80Vp-pもあり、RCA Receiving Tube Manual(RC-25)で推奨されている第3グリッドの動作電圧-1.5Vに対してずいぶん違うように思われます。 この設計理由はいったい何なのでしょうか。

    オリジナルの回路でいろいろいじっても復調音質不良は一向に改善されないので、 思い切って右の図にあるような方式に変更してみました。

    455kHz IF は従来どおり100pFを介してAMダイオードに接続し、 ここから47pFセラミックを介して6BE6の第3グリッドに印加します。 ここにはグリッド抵抗として100kΩ、またそれに並列に50pを入れてあります (これらはオリジナルの第1グリッドに入っていたものをそのまま使用) 。 BFOは今までどおり6AQ8のグリッドから取り出していますが、 47pFのセラミックを介して6BE6の第1グリッドに注入。 ここにはグリッド抵抗として22kΩを入れました。 上記の回路例ではカソード バイパスは10μFが入っていますが、 "Single Sideband for the Radio Amateur"記載の回路例では0.01〜0.1μFとなっています。 HE-80実機では10μFのケミコンと0.1μFのセラミックがパラに入っています。 この10μFチューブラ型ケミコンはリークがかなりあったのでSpragueの未使用品(でもかなり古い)にしてみました。

    この定数で動作させ第1グリッドにオシロをあてると、グリッド電圧の平均値は-11.5V、BFO振幅は17Vp-p程度です。 また第3グリッドをオシロで見ると、455kHzのBFO信号が2Vp-p程度出てしまっています。 6BE6のスクリーン電圧は68V程度で音声信号が5Vp-p程度重畳しており、 またプレート電圧は55V程度をベースに復調信号とBFO信号が上乗せされた形になっています。 カソード電圧は0.83Vで、カソード抵抗は100Ωですから カソード電流は約8.3mA。
    この状態での動作結果は・・・ドラマチックな改善ではありません。 BFO周波数が中間周波数とほぼ同じになっている状態での感度と了解度は明らかに向上しましたし、 したがってBFOピッチコントロールでの調整もずっとやりやすくなっています。 復調音質もかなり改善されていますが、オーバーロードによる歪が明確です。 これはRFゲインを落とせば改善されます(中間周波段でのオーバーロードの可能性も残っています)。
    SSB受信時には10kHzを超えるようなヒス音がかなり耳につきます。 ので、お手軽に低周波段の入力部に0.022μFをバイパスとして追加し、高域をすこし減衰させました。

BFOのシールド

    プロダクト検波管6BE6を抜いておいても、BFOピッチコントロールをセンターにしたときにSメータが大きく振れます。 第2中間周波増幅管6BA6のプレート信号を見てみると、ここですでにBFOの455kHzが重畳していることがわかりました。 BFO信号は6BE6の第1グリッドから第3グリッドへ抜けてAM検波ダイオードへ戻るほかにも、 おそらく中間周波段に直接飛び込んでいるようです。 このため、BFOピッチをセンターにするとAGCがかかって受信機全体のゲインが低下してしまうのです。
    さあて、どうすれば回り込みを低減できるかなあ? いろいろとSSB受信機の製作例をしらべてみると、あれれ、 プロダクト検波回路を持つ受信機はほぼ例外なくBFOは専用のシールド ケース内に収納されてサブシャーシとして実装されています。 BFO出力はシールド線でプロダクト検波管まで導かれているほか、なかにはB電源などのワイヤの出入り口に貫通キャパシタを使っている例もあります。 どれも回り込みを嫌ってのことのようです。 つまり、HE-80の改善は大改造が必要ということに。ああ。
    BFOをしっかりシールドするのは、BFO出力の中間周波段への飛び込みを減らすほか、発振した455kHzの高調波が高周波段に飛び込むのも防止します。 HE-80とほぼ同じ構成を持つ後継機HA-225ではBFOはやはり6AQ8で低周波増幅と兼用ですが、 6AQ8とBFOコイルはしっかりサブシャーシ上に取り付けられています。 結局、HE-80はSSB受信機としては研究不足、発展途上のモデルだったといえます。

課題
    残念、現状ではAM復調音質不良問題が解決できておらず、国際放送を楽しむことができません。 感度は素晴らしいのに。他のHE-80/JR-60でもやはり音質は悪いのでしょうか、それともこの個体に特有の故障? もう少し勉強してから再トライすることにします。

問題点 状況と対策案
バックグラウンド ノイズ大 現状が実力値? トライオード ミキサへの変更が必要?
AM音質不良 現状が実力値? 回路変更トライが必要か?
SSB/CW受信性能 現状が実力値? 回路変更トライが必要か?
FM受信機能 未テスト。
クリスタル キャリブレータ 水晶実装されていないためテストできず。水晶の入手が望まれる。

つづく・・・


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Apr. 20, 2001 Created. The radio arrived, package opened.
Apr. 21, 2001 First powerup. Initial diagnosis. Front panel disassembled.
Apr. 22, 2001 Audio stage tested and fixed. Added NFB, now sounding strongly and much better.
Apr. 29, 2001 IFT alignment performed, sensitivity greatly improved.
Oct. 01, 2001 Added a description of rectifier circuit.
Jul. 27, 2002 Revised links.
Jan. 08, 2005 Reformatted.
Nov. 01, 2005 Unified storage location. Reformatted.
Dec. 11, 2006 Reformatted.