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CBA-1000

"Could Be Anything"
Experimental Platform

NoobowSystems Original Design



  "Could Be Anything" Platform

先達の見た夢

    1999年に市内のOMさんから 1960年製の自作短波受信機 を譲り受けたとき、 あわせて当時の部品類もいただきました。 未使用のシャシーや中間周波トランス、 いくつかの未使用新品の部品。 OMさんは真空管ポケットラジオをつくろうと考えておられたのでしょう、 サブミニアチュア真空管や「超小型」バリコンなども含まれていました。

    シャシーは4つあって、 一番大きなのは「8球用 400円」という手書き文字がうっすらと残る大型のメーカー製加工済みシャシー。 ST管/GT管サイズの真空管ソケット用の穴が開いています。 MT管以前だとすると1950年代のもの。 ステレオアンプつきのAMラジオ用だったのでしょうか。 もうひとつのメーカー製加工済みシャシーは、 当初は5球スーパー用だと思っていたのですが、 穴の配置からしてST管の並4ラジオ用のように見えます。 これでST管 0-V-2 をつくったら楽しいかもね。

    あとの2つは未加工アルミシャシーで、 そのうちひとつは加工の下穴が開けられたもの。 作業しはじめて、何かの理由で途中で放り投げてしまったのでしょうね。 もうこれは鉄クズ屋行きかな・・・ でもそれもかわいそうで、これを使って何かつくってみたくなりました。 先代が見て、なぜか消失してしまった夢。 何かの形で命を吹き込んであげたいところです。

2022-11-21 先達譲り受けの加工途中アルミシャシー発掘





    いただいた部品類の中には電源トランスがふたつ。 ひとつは新品の山水の、たぶんステレオアンプ用。 もうひとつは中古の富士通信の、たぶん5球スーパー用。 加工途中のシャシーの電源トランス取付穴は、 この5球スーパー用トランスのサイズになっています。 このトランスを使おうとしたんだな。

    トランスは土汚れがありサビも出ており、 いかにも取り外し品の風情です。 1960年に廃棄品のおそらく5球スーパーから取り出したものだとすると、 トランスは1950年代初頭の製造なのでしょう。 70年前の製品、です。





    加工途中シャシーの電源トランス取付穴を開け、まずはトランスを仮組してみました。 トランスは外装を清掃し、取付ボルトもサビ落とし。 なんとかイケそうな気がしてきました。

    実をいうと私は子供のころから今まで、 新品のベアシャシーを自分で加工してなにかこしらえたことはなかったのです。 簡単なものを何回かトライしたけれどどうやら自分はこの手の加工作業がとにかくヘタクソで、 きれいに作れず、放り投げていたのでした。 いまそれに再チャレンジしてみようというわけです。 人に見せられるほどのきれいな仕上がりでなくていいから、 ちゃんと使いものになるレベルになるといいのだけれど。

    先達の下穴開けは、すべて1本のドリルで行われていました。 この径のドリル刃しか持ってなかったと見えます。 ポンチ穴を打つのも端折ったと見えて、穴位置はずれまくっています。

    ドリルやハンドニブラそしてヤスリを使い、とりあえず先達の当初の狙い通りに、 穴位置が酷くずれていたものは一回り大きな穴径で、 すこしずつシャシー加工を進めていきます。

2022-11-29 途中放棄アルミシャシーの加工作業を開始





    穴の配置からして、先達はこのシャシーで高1中2の通信型受信機をつくろうとしていたことはほぼ間違いがありません。 そしてそれはおそらく、 ナショナル・ラジオ・パーツを使った受信機。 でもなぜ途中で放棄したのだろう? 乱雑に開けられた下穴と格闘して穴を仕上げる作業をしている途中でその理由がわかりました。 部品配置の左右が逆だ・・・!

    シャシー下面の図を見ながら、シャシー上面に部品配置を計画していったのでしょう。 部品配置が鏡像反転していてもその受信機をつくることは可能ですが、 先達は取り返しがつかないミスをしたと思って放り投げたのでしょう。 シャシー背面の下穴加工を見ると、貫通していない穴がひとつだけあります。 先達はたぶん間違いなく、この穴をあけている途中でミスに気付き、 悲痛な叫び声を上げたに違いありません。

    しかしこれは、先達にとっては幸運なミスだったのかもしれません。 このシャシーのサイズでは高1中2受信機用にはちょっと小さすぎるし、 通信型受信機用としてはアルミシャシーでは強度が不足気味です。 それにこの5球スーパー用電源トランスでは、 真空管9本を駆動するにはあきらかに容量不足でしたから。

    気を取り直し、一回り大きなスチールシャシーと適切な電源トランスを使い、 努力の末に完成したのが CRV-1/HB だった、のでしょう。

2022-11-30 先代が途中放棄した理由に思い当たる





    ハンドニブラはいつ買ったものなのかもう覚えていませんが、新品。 いつかはシャシー加工にチャレンジしよう、と思っていたのでしょうね。 何年たったのか、いまそれに挑戦中。 真空管ソケットの穴はなかなか真円になってくれませんが、 作業を進めるうちにだんだんうまくなってきて、型をあてずともきれいな円にできるようになってきました。 この歳での手習い、でも確実に上達はするんですね。 作業がだんだん楽しくなってきました。

    実質的にはじめてのシャシー加工、としては上出来。 真空管ソケットやヒューズホルダやアンテナターミナルや、 在庫部品から使えそうなものを探し、試しに取り付けてみます。

2022-12-03 主要な穴の加工完了 部品選定組付開始





    電源トランスのある側面を下にして安定にシャシーが立つようにするため、 丈夫なL型ブラケットを両面テープで仮止め。 電源ケーブルと電源スイッチとヒューズホルダそれにネオンランプを配線し、 電源トランスが正常であることを確認しました (ダメだったらどうするつもりだったんだろうね?) 。 6.3Vヒータ巻線を6.3Vパイロットランプと3つの真空管ソケットに配線しました。 ついで、電源トランスからDC250VをつくるB電源回路を組み込み。 整流は真空管ではなくてシリコンダイオードブリッジ出力を使用。

    で、いったいこのシャシーで私は何をつくっているのでしょうね? 実際のところこのシャシーと電源トランスを使うことが目的で、 何をつくるかは決めていなかったのです。 でもまあもちろんぜんぜんアイデアがなかったわけではなくて、 真空管回路の簡単な実験を行う際のテストベッドとして使えるものが欲しかったのでした。 仮配線用にユニバーサル基板を半田面を上にして取り付け、 真空管ソケットとユニバーサル基板をつなぐワイヤーを用意して、 B電源を取り出すターミナルを配置。

    これでとりあえず、与えられた目的を達成するために必要な機能をもつ装置になりました。 いつも思うのですが、部品を組み合わせると、 個々の部品が生来持つ機能よりも一段高い次元の新たな機能が生まれますね。 こんな簡単な工作ではありますが、新たな価値が創造されたわけです。 ならば生み出された価値を表すなにかの名前をつけてあげなければいけませんね。 さて、目の前にあるこれはなんなんだろう。 まだこれは特に何でもなく、 だけれど本機が有するポテンシャルの範囲内でこの先なんにでもなれるわけですから、 "Could Be Anything" です。 そうだね、 CBA-1000 と呼ぼう。

2022-12-11 実験用ブレッドボード取り付け テストベッドとして使用可能な状態になった






  Grid Emission Meter

グリッドエミッションメータ

    数日間アルミシャシーをヤスリでキコキコやってつくったCBA-1000、 そもそもはこの実験を行うテストベッドが欲しかったからでした - 真空管のグリッドエミッション測定器。 入力信号も出力信号もなく、 真空管1本に標準的な動作電圧を印加し、 グリッドに発生する電圧を測定する。 ただそれだけ。 単球ラジオよりも簡単ですね。

    ユニバーサル基板上にプレート抵抗とスクリーン抵抗とカソード抵抗をはんだ付けし、 真空管ソケットからの配線をつなぎ、 グリッドの電圧をデジタルマルチメータで測定できるようにして、できあがり。

    電源トランスのB巻線を両波整流してドロッピングレジスタで電圧を落とし電解キャパシタで平滑するだけのB電源回路では、 真空管をなにもつないでいない状態では負荷が全くないために電源ONとともに電圧が380Vまで上がってしまいます。 かつ、平滑キャパシタに充電されたDC380Vは放電されず、 電源スイッチを切っても10分以上充電されたまま。 電源スイッチを切れば安全などというわけにはいかない、危険な装置です。

    1本だけつないだ真空管のプレート電圧が280V程度になるように、 プレート抵抗とドロッピング抵抗を調整しました。 グリッドは100kΩでシャシーグラウンドに落としてあります。 これでテスト準備完了。

2022-12-12 グリッドエミッション測定回路組み立て





    コリンズ51S-1でRFメータのゼロ点変動を引き起こしていたリモートカットオフ5極管 6BA6のグリッドエミッションを測定してみました。 6BA6を新品に交換するとメータのゼロ点変動はなくなるので真空管の不良、 具体的にはグリッドエミッションが発生しているのであろうと診断しました。 でも本当にそうなのか?

    6BA6のグリッド電圧はCBA-1000上でゼロで、かつ時間が経ってもゼロのままのはず。 でも不良と判断された球では、電源投入後2分ほどからプラスの電圧が出始め、 10分ほどで最大値を示し、以降は時間とともに変動しながらも絶えずプラスの電圧を示しています。 これはグリッドからプレートに電子流が発生していることを示しており、 グリッドエミッションが起きていることが実証されました。

    Lafayette HA-230 (トリオ9R-59) で異常なAGC動作を引き起こしていた原因と推測された6BA6は、 CBA-1000で測定してみると51S-1の6BA6の倍の顕著なグリッドエミッションが観測され、 51S-1のPTO発振周波数不安定を引き起こしていた6136シャープカットオフ5極管も、 程度は少ないものの明らかなグリッドエミッションを起こしていました。

2022-12-15 51S-1 元V7 6BA6 のグリッドエミッション測定





    手持ちの簡易型真空管テスタ ではグリッドエミッションの測定はできないからCBA-1000をこしらえたわけですが、 グリッドエミッションの発生はさほどに稀な現象ではないみたいですね。 必要になった時にいつでもグリッドエミッションのチェックができる機能は、 ブレッドボードではなくて、CBA-1000の標準機能として本体側に組み込んでおきたいところです。

    グリッドエミッション測定専用にどれか真空管ソケットをひとつ割り当ててもいいのですが、 そうだ、それなら6AU6を初段に使ったオーディオアンプでもこしらえておけばいい。 そうすれば真空管を差し替えればいつでもグリッドエミッションを測れるもんね。 というわけでここからは 真空管ステレオアンプ機能追加 の作業に移ります。

―――――――――――

    ひとまずステレオアンプは完成したのでグリッドエミッションメータの作業に戻ります。 そうだ、デジタルパネルメータの新品在庫がいくつもあるから、 それを取り付けていつもグリッド電圧が測定できるようにしておけばいいんじゃん。

    でも残念、そう簡単ではないようです。 グリッドからの電子放出が生み出す起電力はわずかなものなのに デジタルパネルメータの入力インピーダンスは充分に高くはないと見えて、 デジタルの読み値はほぼゼロにしかなりません。 高入力インピーダンスで電圧ゲイン10倍ほどのDCプリアンプをこしらえるようだなあ。

てことでここはいったん休止して、先に 非線形境界検波器 のコンセプト実証実験へ。

2022-12-19 デジタルパネルメータ仮取り付け
2022-12-23 ゲイン10倍 非反転増幅回路ブレッドボード試作 作業いったん休止






  Vacuum Tube Stereo Amplifier

真空管ステレオアンプ

    出発点はグリッドエミッションメータの本体内蔵化です。 グリッド電圧測定のために5極管を配線しておくなら、入出力をつけて増幅回路にしておこう。 増幅管があるならさらに出力管をつけてオーディオアンプにしよう、 そこまでやるなら2チャンネル用意してステレオアンプとしても使えるようにしよう、 という流れ。 あくまでも「ステレオオーディオアンプ機能付きのグリッドエミッションメータ」が目標です。

    自分がそういう世代ではないということもあって、 オーディオ機器もいくつかいじっている割には弊ラボには真空管ステレオアンプというものは1台もありませんし、 憧れることもありません。 とはいえ、子供のころからたくさんの真空管アンプの製作記事を目にして、 そのうちひとつくらいは自分でも試してみたいなあと思い続けていたのも事実。 CBA-1000のシャシーを見ていて、ミニパワーのステレオアンプくらいなら組み込めそうです。 リモートオフィス勤務時のBGM機としてもいいし、 CBA-1000上でいろいろテストするときのテストアンプとしても手軽に使えるでしょう。

    組み込むのは、 真空管を鳴らすためにそこまでするか? 的な現代の回路設計によるものではなくて、 1930年代のごくシンプルかつスタンダードな回路。 MT管のシングルA級パワーアンプで、出力は2Wも出ればよいでしょう。





    真空管を含め基本的にすべてラボの在庫部品でつくります。 出力管は・・・ 6AR5や6AQ5ではちょっとパワー不足でしょうから、 6BQ5がいいかなあ。 在庫はたくさんありますが、調べてみるとヒータ電流が多め。 使っている5球スーパー用電源トランスの6.3Vヒータ巻線は2Aまでしか取れないので、 避けた方がよさそう。 もうすこしヒータ電力が少なくて済む6CL6なら在庫もありますし、 ほかにそれを使っている受信機はラボにないので、 アンプでも作る以外には使い道がないタマです。 これにしよう。

    ドライバは6AU6で決まり。 ピン配置が同じ6BA6に差し替えてグリッド電圧を測ればそのままグリッドエミッションメータになる、 というのがそもそもの狙いですから。

    アウトプット管もドライバ管も5極管ですが、いずれも3極管接続で行きます。 パワーは低下してしまいますが、静かな部屋で聞くのが目的ですので、 音質優先にします。

    真空管よりも大切と言える出力トランスは、 いつぞやどこかのハムフェストで買った新品のノーブランドA級用小型出力トランス。 2個で1000円でした。 なんだかんだ言って、いつかはステレオアンプつくろうと思って買っておいたわけね。 1次側インピーダンスは7kΩであってほしいところですが5kΩと10kΩしかないので、 10kΩタップを使います。

    電源回路用のチョークコイルは在庫がなく、 平滑用の400Vクラスの電解キャパシタの在庫も最後の1個だったので、 電源回路は暫定の簡素なもの。 6CL6を配線すると、幸いなことにハムは少なく、 充分な音量で鳴りはじめました。

2022-12-17 ステレオパワーアンプ機能実装





    半日休暇をもらった午後、 6AU6初段増幅を実装。 真空管4本が動作するようになったので B電源電圧が下がりました。 電源トランスのB巻線は50mAしかとれないので全電流を気にかけながらドロッピングレジスタを変更、 出力トランス2次側からNFBを6AU6のカソードにかけ、 6AU6と6CL6のグリッドバイアスを取り直し、 6AU6の電圧ゲインを取り直し。 程よいところに収まりました。 フロントパネルに入力ジャックを配置し、 ボリュームコントロールを配線し、完成。 音量を上げるとベースが歪み始めますが、 音量を控えめにしておけばジャズアレンジがいい感じで響きます。

    ハムは皆無ではなく、スピーカに近づくと明らか。 これはどこから出ているのか未調査。 電源回路は暫定のものだからB電源リップル由来かもしれないし、 6AU6のヒータはAC点火しているのでDC点火化で改善するのかもしれないし。 ハム音の主成分が100Hzではなくて50Hzであることを考えると、どこかほかのところからの誘導とかかも。

    回路図も描かずにつくったステレオアンプが期待以上のいい音で鳴りだしたので、 大切にとっておいた推しサークルさんのジャズアレンジ新譜CDの封を切り、 ひとしきりすばらしいプレイを楽しみました。

2022-12-17 ステレオパワーアンプ機能 サービス開始






  Gated Beam Tube Product Detector

非線形境界検波器

    Lafayette HE-80 (トリオJR-60) のプロダクト検波回路に周波数変換用7極管 6BE6 が使われているものの、 IF入力とBFO入力が通常とは逆の接続になっていることに疑問をもち、 それがFM受信モード時にはクワドラチャ検波管として動作させるのが設計意図だったことに気がつきました。 いっぽうで Searwood S-2100 FMステレオチューナ のサービスをしているときに、 テレビFM音声のクワドラチャ検波専用として6BN6という特殊な真空管が開発されていたことを知りました。

    他には全く例を見ない特殊な構造と動作をもつ「ゲーテッドビーム管」である6BN6の動作を調べているうちに、 FM検波用以外にはまったく用途がなさそうなこの特殊管を、 短波受信機のSSB/CW受信用プロダクト検波に用いている製作記事を見つけました。

The Retro Mk II by Dr Andrew Smith, G4OEP

さらには6BN6使用例のオリジナルと思われるQST誌の記事:

QST 1960 May Issue, "Some new ideas in a ham-band receiver"

には、6BN6を使ったプロダクト検波回路は 「いままでのどの方式よりも基本性能が優れている」的に書かれています。

    はたしてそれは本当なのか。 そもそもそんな特殊管で、SSB/CWの復調が本当にできるのか。 真空管の構造こそ特殊ですがいまや用途が全くないテレビ球ゆえ市場での価格はクズ球扱いで流通は豊富、 回路には特殊な部品は必要なくむしろ簡単。 これは試したくなってきた。 「ゲーテッドビーム管6BN6を使用したプロダクト検波回路の試作と運用」 というテーマで、思い付き研究を始めることにしました。

    実は、これを試すための実験用シャシーが欲しくて、だからCBA-1000の製作に着手したというところがあります。 CBA-1000製作の当初目標の一つ、なわけですね。

    6BN6ゲーテッドビーム管の構造と動作については Searwood S-2100のページ に書きましたので、まずはそちらをお読みください。






ゲーテッドビーム管式プロダクト検波回路のあらまし

    スーパーヘテロダイン受信機の周波数変換に用いられる6BE6は7極管で、 制御グリッドをふたつ持つ真空管だ、といえます。 1つめの制御グリッドに受信信号を、2つめの制御グリッドに局部発振周波数信号を入れ、 2つの周波数の差の成分を持つ信号をプレートから取り出します。 6BE6をCWやSSBの復調に用いる場合は、 1つめの制御グリッドにIF信号を、 2つめの制御グリッドにBFO信号を入れて、 2つの周波数の差の成分を取り出しています。 どちらも動作原理はおなじわけですね。 ふたつの入力信号をアナログ的に乗算演算し、そこで得られたふたつの周波数の差の周波数を取り出すわけです。 このためこの方式は乗積復調回路と呼ばれ、積 - product - を得て検波するのでプロダクト検波と呼ばれています。

    ゲーテッドビーム管6BN6も6BE6と同様に、ふたつの制御グリッドを持ちます。 6BN6は電極構造は6BE6とは全く違うものの、回路図的には6BE6とおなじ7極管の記号で描かれる場合が多く、 電極の機能もとても似ています。

    6BN6が特殊なのは、どちらの制御グリッドも、その伝達特性が極めて非線形だということ。 制御グリッドのポテンシャルが正のときだけ電子流が通過する、ON-OFFのはっきりした特性です。 ふたつある制御グリッドのどちらも正のポテンシャルのときだけ電子ビームがプレート (アノード) に到達してプレート電流が流れますが、 どちらか あるいはいずれも負のポテンシャルにあるときはプレート電流は流れません。 ちょうどこれは、デジタルロジックICのANDゲートのような動きです。





    6BN6では、ひとつめの制御グリッドはリミッタグリッドと呼ばれます。 すでに記したとおりリミッタグリッドの伝達特性は極めて非線形で、 (ふたつめの制御グリッドが正のときに) プレート電流が流れる・流れないの差がはっきりしています。 FM検波器として使うときはリミッタグリッドにIF信号を入れますが、 その入力振幅はじゅうぶんに大きくしておき、 ONとOFFがはっきりするようにして動作させます。 これにより、入力の信号振幅に変化がある、つまりAM成分があっても、 それを大きく排除して一定の振幅変化に切りそろえることができます。 このグリッドには振幅リミッタの機能があるわけなので、このグリッドがリミッタグリッドと呼ばれるわけです。

    実際の6BN6のリミッタグリッドの伝達特性図 (右図) を見ると、 プレート電流が遮断される領域 (OFF領域) と導通する領域 (ON領域) はデジタルロジックICほどに明確に分かれているわけではなく、 リミッタグリッド電位が -2.0V 〜 0.0V の範囲でリニアに遷移する領域があります。 FM検波器として使う場合は入力信号がこの遷移領域に入らないようにあらかじめ前段でじゅうぶんに増幅しておくわけですが、 SSB/CW用プロダクト検波器として使うときはIF信号をこの遷移領域の範囲内に入るようにします。 これにより、6BN6プレート電流はリミッタグリッド電圧に比例し、 かつ遷移領域での変化が急峻なため、とても大きなゲインを得ることができます。




    6BN6のふたつめの制御グリッドはクワドラチャグリッドと呼ばれます。 これも非常な非線形の伝達特性を示します(右図)。

    FM検波器として使うときは、クワドラチャグリッドにFM受信周波数の平均周波数に同調した共振回路をつないでおきます。 クワドラチャグリッドはスペースチャージを介した電子結合発振器として発振動作を始め、 結果としてプレート電流は入力信号とクワドラチャグリッド信号の位相差に比例することとなり、 FM信号が復調できます (詳細はS-2100のページ参照)。

    SSB/CW用プロダクト検波器として使うときはBFO周波数信号をクワドラチャグリッドに入れ、 電子ビームの通過・遮断をBFO信号の正・負で切り替えます。




    つまり、6BN6をプロダクト検波器として使う方法は、6BN6本来の設計意図とはまったく異なる使い方なわけです。 デュアルゲートのON-OFFスイッチング素子としてではなく、 ハイゲインのアナログアンプとON-OFFスイッチング素子として使おうというわけです。 IF入力信号をBFO周波数でON-OFFスイッチングするこの方法は、 結局のところは二つの信号の乗積演算を行っていることと同等であり、 その出力からAF成分を取り出せば、もとのSSB波の復調ができることになります。

    奇妙な真空管と、奇妙に思える回路動作。 でも理屈を説明されると、たしかに動作しそうです。

    極端に非線形な伝達特性を示す6BN6ゲーテッドビーム管の、 ON動作とOFF動作の境界を使ってプロダクト検波させようというものですから、 以降この回路を本稿では 非線形境界検波器 と呼びます。 まあ普通には ゲーテッドビーム管式プロダクト検波回路 と呼ぶべきですけれどね。 この呼び方ならば、1950年前後にお生まれの方 - すでに70歳を越えておられるはず - の中には、 ああそれなら若いころ試したよ、とおっしゃる大先輩もいらっしゃることでしょう。






境界検波回路を試す

    実際にCBA-1000で試作回路を組み立てて、テスト開始。 ラボの在庫に6BN6は数本ありましたが、 そのなかからZenithのロゴが入った球を選び、CBA-1000に取り付けます。 なにしろ6BN6はZenithが開発した真空管ですからね。 Zenith Radio Corporationと、 この管の開発チームを率いたDr. Robert Adlerに敬意を表しながら。

    グリッドに低周波の信号を入れて動作を確認しながらいろいろいじり、 動作しているように見えたので、 実際のIF信号の復調を模したセットアップで試してみました。 おおお! 狙い通りの挙動を示しているぞ!


[リミッタグリッド] IF信号を模した入力: 456kHz 200mVp-p
   ビデオ前半: 周波数を455〜458kHzでスイープ 振幅100%固定 -> 復調出力は正弦波 0Hz〜3kHzをスイープ
   ビデオ後半: 周波数456kHz固定で振幅を0%-100%バースト -> 復調出力は正弦波 1kHz 振幅が0%-100%

  • プレート負荷抵抗300kΩ
  • アクセラレータ電圧60V

  •     AF信号出力レベルは2.5Vp-pが得られています。 文献に書かれている通り、復調出力は低周波1段増幅したかのような高出力ですね。

    2022-12-24 ゲーテッドビーム管プロダクト検波回路試作 基本動作を確認





        ついでDSB信号での音声復調をテストします。 ほんとうはSSB音声でのテストをしたいのですが、 使っているシグナルジェネレータにはDSB変調機能はあるもののSSB変調機能は持っていないので。

        音声信号での外部変調のセットアップを行い、 リミッタグリッドのバイアスをすこしだけ負に設定して試すと、 うはは、ちゃんとうまく復調できてますね。 「ゲーテッドビーム管でプロダクト検波できる」 ことが実証できました。

    [クワドラチャグリッド] BFO信号を模した信号 : 455kHz 5.0Vp-p 矩形波 デューティ50% カソード基準でオフセットゼロ

    [リミッタグリッド] IF信号を模した入力: 455kHz 0.7Vp-p カソード基準でオフセット-0.5V DSB変調 変調深度100%

  • プレート負荷抵抗300kΩ
  • アクセラレータ電圧60V

  •     現状のセットアップでは、リミッタグリッドバイアスは-0.5Vにした時が最良でした。 リミッタグリッド振幅は1.0Vp-p程度まではさほどの歪みなく取り扱えているようです。 バラックの仮配索でノイズも多いしハムも混入していますが、 バラックでもこの程度まで動作しているのなら性能もよさそう。 ちなみに記事でも触れられていますが、 この動作モードだと6BN6はかなりのマイクロフォニックを示します。 復調音にハムが混じっているのも、 近くにある電源トランスからの漏れ磁束が6BN6管内の電子ビーム流に影響を与えている可能性もありそうです。

    2022-12-24 DSB音声信号の復調動作を確認





        シグナルジェネレータでのDSB波の復調に成功したので、 今度は本物のライブのSSB信号を復調してみます。

        コリンズ51S-1受信機 は、リアエプロンにIF信号を出力しているジャックがあります。 このジャックは本来、 AMでもCWでもSSBでもない特殊な変調方式を使う際に復調のための外部復調回路をつなぐための配慮です。 さすがに高度な受信機ですね。 いままで全く使ったことのなかったこのIF出力機能を使って、 IF信号を非線形境界検波回路に入れてみましょう。 51S-1の第3中間周波数は一般的な455kHzではなくて500kHzです。 クワドラチャグリッドには、 シグナルジェネレータで生成した500kHzの信号を入れます。

        51S-1のIF出力は6BN6のリミッタグリッド入力にはレベルが高すぎるのでトリマポテンショを基板の上に取り付けてレベルを落とせるようにし、 またカソード電圧をポテンショで分圧してリミッタグリッドバイアスをつくるようにしました。 これによりリミッタグリッドバイアスを調整できるようになりました。

        ハムが酷いなど動作にいろいろ細かな不満点はありますが、 ライブのFT8信号を受信できています! 「ゲーテッドビーム管で実用的なプロダクト検波回路がつくれる」 ことを追実証することができました。

    2022-12-26 ライブSSB信号の復調に成功






    いろいろと改善

        テストしている原理回路のままでは実用的にはいろいろ不都合があるので変更していきます。

  • テスト用回路ではIF入力信号もBFO信号もコモンは6BN6のカソードに接続していた。 このためCBA-1000のシャーシグラウンドとは電位が異なり、いろいろと不便。 なので6BN6のカソード抵抗にバイパスキャパシタを追加し、 外部信号のコモンをシャシーグラウンドにつなげるように変更。
  • 入力アッテネータVRの直流阻止キャパシタの入れ方が不適切で、 ゲインを最低に落とした時にリミッタグリッド電圧も落としてしまうようになっていたところを是正。 リミッタグリッドDCバイアス印加抵抗として910kΩ (適当に選んだ値) を使用。
  • クワドラチャグリッドは外部シグナルジェネレータからキャパシタカップリングで入れていたため直流的に浮いていた。 100kΩでグラウンドに落とした (後日続きあり)。

  • 2022-12-26 〜 27 回路細部変更


        音声出力にはハムがとても目立ちます。 CBA-1000での配線はつまりバラック配線なわけで、 真空管までのワイヤが長く、 ハイインピーダンスで敏感なリミッタグリッドに誘導ハムが乗ってしまっているのでしょう。 ボード上のリミッタグリッド周りの配線を引き直し、 リミッタグリッドDCバイアス印加抵抗を910kΩから100kΩに変更しました。 これによりハムは明らかに小さくなりました。

        リミッタグリッドバイアスの設定はけっこうクリティカルです。 ゲインが最大になるポイントが最良点と思われそうですが、 そこにセットするとカソード電流の変化でリミッタグリッドバイアスもそれにつられて変化し、 したがって検波器のゲインも明確に変化してしまいます。 ゲイン最大点よりもずらしておいた方が動作は安定するように思えます。

    2022-12-28 リミッタグリッドDCバイアス印加抵抗定数変更


        オーディオ出力取り出し用のRCAピンジャックをボード上に設置。 クワドラチャグリッドは100kΩ抵抗でグラウンドに落としていたけれど、 これは間違いでした。 これだとクワドラチャグリッドはカソードに対してマイナス2V程度のバイアスがかかってしまうし、 カソード電流の変化に応じて動作点が動いてしまいます。 なのでクワドラチャグリッドとカソードを100kΩでつなぐように変更しました。 回路の動作は安定しました。

    2022-12-29 クワドラチャグリッド抵抗接続間違い修正






    ヒータをDC点火する

        アーティクルには、6BN6のヒータをDC点火するとハムは大幅に減ると書かれていますから、 試してみました。 CBA-1000のヒータ配線を電源トランスから外し、 ケンウッド PWR18-2TP でつくった6.3Vで点火させてみると・・・ ちっとも動作しません。 う、これは・・・うかつだった。 ヒータ電流の合計が2Aをおおきく上回っている。 このケンウッドの安定化電源装置、立派に見えるしずっしりと重いのだけれど、 最大でも2Aしか取れないんです。

        もういちどCBA-1000のヒータ電流を計算してみると、 6AU6が 0.3A、 6CL6が 0.65A、 これがステレオ2chで合計1.9A。 ここに#47のパイロットランプ0.15Aを加えて2.05A。 5球スーパー電源トランスの定格2Aで点火できると思ったのですが、 CBA-1000実機ではヒータ電圧はAC5.8Vまでしか上がっていませんでした。 ここに6BN6とグリッドエミッション測定テスト球の6BA6を入れていたので、推して知るべし。 6BN6のテストをしていて、この真空管はずいぶんウォームアップに時間がかかるなあと思っていたのですが、 要するにヒータ電圧が低かったんですよ。

        CBA-1000の内蔵電源ではステレオオーディオアンプを動作させるのが精いっぱい。 6BN6やその他のテストのときは、ヒータは外部電源供給するようにしましょう。 それに、そうすればテスト球は任意のヒータ電圧の球が使えるでしょ (体のいい理由)。

        ということで6BN6のヒータは外部電源からDC点火させるようにセットアップしてみると、 お、ハムがとても少なくなった。よしよし。

    2023-01-03 6BN6ヒータをDC点火にしてハム大幅低減





    音質不良の原因は

        ニューイヤーパーティの7MHz電信で運用している2023年度世界ラジオスポーツチーム選手権プロモート局8N1WRTCを受信していて、 キークリックがやけに耳障りでした。 いやでも、これはこの局だけではなくて、信号の強い局はみな同じようにクリックのような、 引っかかるような、不快な音がします。 これはなんだろう。

        いろいろいじっているうちに、 この復調音質不良はクワドラチャグリッドに与えているBFO信号に依存することがわかりました。 いままでは6BN6に明確なON-OFF動作をさせるためにクワドラチャグリッドは矩形波駆動にしていましたが、 これだと2Vp-pで最大音量が得られるものの、復調音声にはひずみが含まれます。 振幅を7Vp-pまで上げるとひずみは実用上許容範囲にまで小さくなります。

        これに対してクワドラチャグリッドを正弦波駆動したときは、 2Vp-p以下では音量が小さく、振幅を上げていくと音量は上がりますが4Vp-p程度で頭打ちになり、 4Vp-pあたりから復調音のひずみが出始めます。 総じて正弦波駆動のほうがひずみは少ないです。

        結果クワドラチャグリッドへのBFO信号は、 3Vp-pの正弦波が最適。 これであれば電信も音声も、歪はほとんど気になりません。

        QST誌のアーティクルでは、 クワドラチャグリッドはチョークコイルを使って直流的な低抵抗でグラウンドに落とするのが良い、 とされています。 これはBFO信号のスイングが0〜10Vとかの範囲だから、 みたいな理由なのかな?

    2023-01-03 クワドラチャグリッドBFO波形とひずみの関係を調査





    リミッタグリッドを固定バイアスで動作させてみよう

        いままでの実験では、 リミッタグリッドバイアスはカソード抵抗で発生した約1.6〜2.0Vの電圧をポテンショメータで分圧したものを100kΩを介して与えていました。 この方法であればなんらかの理由で管内電子流が増えたとき、 リミッタグリッドバイアスはより負となって管内電子流を抑える方向に働くので、 回路の安定動作に寄与するはずです。

        いっぽうでこの方法だと、 電源電圧の変化などでカソード電流が変わるとそれにつられてリミッタグリッドバイアスも変わってしまうはず。 0.2Vかそこらの精度でバイアス設定を狙うには確実とはいえません。 むしろリミッタグリッドには、 安定化した固定電圧を与えるべきなのではないだろうか。

    2023-01-02 リミッタグリッドを固定バイアスとするアイデア

        Maxitronix 500-in-One を使ってすごく簡単な回路を用意。 乾電池3本で赤色LED2本の直列接続を点灯させ、LED両端の電圧をポテンショメータで分圧します。 これで0〜約3.6Vの、安定した可変電圧が得られます (流せる電流はごくわずか)。 これを6BN6のリミッタグリッドとカソードにつなぎ、 バイアス電圧を0Vから-3V以下まで下げてみました。 右ビデオ参照。

        0V では復調感度はほぼゼロ、-3Vでもほぼゼロ。 6BN6データシートの伝達特性図からも読めるように、 「境界」はこの間にあるわけですね。 現状のCBA-1000実機回路では、バイアス電圧が約-1.5Vのあたりにゲインの極大点があります (出力が大きすぎて復調音が歪んでいる)。 このほかにも、-1.2Vあたりに特異点 (歪が多い) がありそうですね。 ゲインはやや下がりますが、 安定した動作を求めるのならば-0.8〜-1.0Vあたりを狙うのがよさそうです。

        まだ24時間程度しかテストしていないので確実なことは言えませんが、 カソード電圧方式に比べて固定バイアス方式のほうが動作が安定しているように思えます。 このアプローチで実用化を進めてみましょう。 オリジナルのQSTのアーティクルもDr. Andrew SmithのThe Retro Mk.IIも、 リミッタグリッドバイアスはカソード電圧方式でした。 となると、6BN6を使ったプロダクト検波回路でリミッタグリッドを固定バイアスで動作させる方法に触れたアーティクルは現時点ネット上には存在していない・・・ のかな?

    2023-01-03 リミッタグリッド固定バイアスをテスト









    アクセラレータのキャパシタ

        いけね、アクセラレータにパスコン入れ忘れてた。 0.01μF 400Vのフィルムキャパシタでアクセラレータをグラウンドに落としてみると、 おお、凄く違う!

        リミッタグリッドバイアスは乾電池を使った外部C電源で可変できるようにしていますが、 試してみると-1Vでゲイン最大、 そこから0Vに向けてあげていっても-2Vに向けて落としていってもスムースにゲインが落ちていきます。 途中で異常にゲインが高まったり歪が増えたりすることはなく、 変化傾向はとてもスムース。 安心してバイアスを-1.0Vに ― データシートの伝達特性図から読める狙い値に ― セットできます。

        バイアス点が変化する途中で極端なゲインの増大/歪の増大を示すポイントがなくなったので、 電源をONして真空管のヒータが暖まってゆく過程で短時間音が大きくなったり歪がひどくなったりすることもなくなりました。 とても自然な挙動。

        違いはそれだけではなくて、 クワドラチャグリッドに印加するBFO信号がサイン波であってもスクエア波であっても大差なくなりました。 目だった歪はなく、 サイン波でもスクエア波であってもBFO信号振幅は3Vp-p以上あればオーケー。 それ以上でもゲインは増えず、歪もさして増えず。 3Vp-pを下回るとゲインは下がっていきます。 これも自然な挙動です。

        さらに、いままでよりリミッタグリッドへのIF入力レベルを上げても復調音の歪が出なくなりました。 IF入力は0.1Vp-p程度まで上げられます。 通常時は0.06Vp-p程度がよさそう。 これにより相対的に100Hzのハムが小さくなりました。

        というわけで、いままで出ていた不都合がすっきり消え、あるいは改善しました。 アクセラレータのキャパシタ、とても大切。

    2023-01-09 アクセラレータキャパシタ入れ忘れに気がつく






    マイクロフォニックとハム

        アーティクルにも書かれているように、 プロダクト検波管として使うと6BN6はとてもマイクロフォニックです。 ガラスエンベロープを爪ではじくと顕著にその音がスピーカから聞こえてきます。 まあこれはこういうものなので仕方ないのですが、 不思議なのは、シャシーを指で叩くとボンボンという音が出ること。

        これも6BN6のマイクロフォニックなのは確かなのですが、 アクセラレータにオシロをつないで見てみると、 ボンボンいう音に合わせてアクセラレータ電圧が変動し、 その周波数がちょうど50Hzなのです。

        6BN6管内の機械構造の共振点が50Hzぴったりにあるとは考えにくいなあ。 どこかで何らかの機序で、商用電源周波数と共振しているとかなにかの理由があるはずなのです。

        スピーカから音を出しているのはCBA-1000の6CL6シングルステレオパワーアンプなので、 スピーカから音が出るとB電源電圧が変化 -> 6BN6の動作に影響が出て復調出力が変化 -> それをアンプが増幅して音を出す といったような、 電源デカップリング不足の症状だったりするのかな? でもCBA-1000内蔵パワーアンプのボリュームを絞っても復調出力にボンボン音が含まれるので、 その可能性はなさそうですね。

        さらに不可解なのは、このボンボン音、 出る時と出ないときとがあるのです。 ほんとなんでだろう。 そのうち理由がわかるかな? しばらくボンボン音の原因を探ってみます。

    2023-01-10 50Hzのマイクロフォニックの原因さがし






    DDSを試す

        テスト開始時からBFOはSIGLENT SDG2122Xシグナルジェネレータを使っていますが、 CBA-1000上にBFOユニットを用意してあげたいですね。 FT8の安定な復調にはやはり推奨発振回路が必要でしょう。 でも手持ちに455kHzも500kHzも水晶発振子はないからなあ。 4MHzを8分周して、というのもちょっと手間ですね。 と、そうだ、だいぶ昔に秋月のDDSキットを組み立てたことがあったな。 あれはどこにしまったっけ。

        2003年の当時AMトランスミッタを作ろうとしていて、 安定なキャリア発振回路を試したかったのです。 数日して発掘された秋月DDSは、AMトランスミッタ回路を実装できるようなユニバーサル基板に取り付けられて、 5V電源回路も用意されて、 でもそこで作業放棄されていたのでした。 DC12Vを与えるとDDSはすぐに動き出して、 1560kHzを発振し始めました。





        ディップスイッチを操作して発振周波数を500.000kHzにセット。 発振出力は、しかし、1Vp-pほどしかありません。 それでもと非線形境界検波器につなぐと、 音声出力は小さいながらきちんと動作しています。 1Vp-pを3Vp-pまで増強するアンプがほしいですね。 トランジスタ1石でこしらえるか、 それともオペアンプ1つでこしらえるか。

    2023-01-12 秋月DDSをBFOとして使ってみる






    自己バイアス方式にロールバック

        いろいろ出ていた不自然な動作は、 加速電極のバイパスキャパシタを追加したことで収まりました。 リミッタグリッドバイアスの与え方についても、 当初の自己バイアス方式の時に見られた不安定さは直っているのかもしれません。 そこでカソード抵抗の抵抗値を下げてカソード電圧が1.0Vになるようにし、 リミッタグリッドバイアスを自己バイアスに戻してみました。

        結果、当初みられていたような不安定さはなくなっていて、 電源投入時の動作開始の具合もスムース。

        カソード電圧は温度や電源電圧変動などによって絶えずわずかに - 最大で±0.1Vほど - 変動しますし、クワドラチャグリッドに与えるBFO信号が正弦波か矩形波か、 あるいはその振幅によってもわずかに変化し、 その変化がそのままリミッタグリッドバイアスの変化となり、 復調ゲインに影響します。 しかし実際に数日間試してみたところ、 ゲインの変動はほとんど気づかず、 実用的に問題はありません。 クワドラチャグリッド信号は正弦波4.0Vp-pほどがよさそう。

        リミッタグリッドバイアスは安定化した1.0Vを固定バイアスとして与えるほうが良い結果が得られそうですが、 その差はさほどに明らかではなく、 シンプルな自己バイアス方式でも十分に実用できる、と判断しました。

    2023-01-15 リミッタグリッドバイアスを自己バイアスにロールバック






    ヒータトランスを増設する

        しばらく6BN6とグリッドエミッション測定管のヒータは外部電源装置で点火してきましたが、 やはりシャシー内にDCヒータ点火電源回路を組み込みたいね。 でも6.3V 1A級のヒータ度ランスの在庫はありません。

        そんな時、クルマで30分のところで開かれたジャンク市で運よく6.3V 1Aのヒータトランスが安く手に入りました。 ので、さっそくCBA-1000に組み込み。 シリコンダイオード4個と電解キャパシタを合わせ、 6BN6とグリッドエミッション測定対象管ヒータをDC点火できるようにします。

        なんか1年前に比べてこういう作業が遅くなったなあ、齢のせいかなあとか思いつつ、 電源ON。 しかし、あれえ、プロダクト検波のオーディオ出力がとても弱い。 というより、ほとんど音が出ません。 パワーアンプは正常に動作しているし、 6BN6のヒータは点灯しているし、 6BN6の電極電圧も正常。 オーディオケーブルも、音声信号を最初に受けているサンスイG-E700グラフィックイコライザも正常。 原因がわからず、負け気分で、今日は寝よう。

        翌日、なんだかグリッドエミッション測定サンプル管6BA6のヒータが点灯していないようだったので抜いてみると、 少したってプロダクト検波回路が動作し始めました。 もしやと思いテスタで測ってみると、 ああお粗末。 ヒータ電源を整流するために使った型番不明の整流ダイオード4本、 順方向電圧降下が大きすぎて、 ヒータ電圧は4V程度しかかかっていませんでした。 そりゃ感度でないよね。

        電圧降下の小さなデバイスに変えるのが本筋ですが、 面倒になって、 このヒータトランスでは6BN6だけを点火して、ほかの管とパイロットランプは外しました。 それでもヒータ電圧はDC5.8V。 トランス2次巻線両端はAC7Vもあるのにね。 とりあえずこれでプロダクト検波は元通りに働き始めました。

    2023-01-22 ヒータトランス入手 1個300円 x 2個
    2023-01-22 6BN6用ヒータ電源回路組み込み
    2023-01-23 6BN6専用内蔵ヒータ電源回路で動作開始






    ハムの原因判明

        リミッタグリッドの固定バイアスと自己バイアスの比較をしていたときに、 なんだか100Hzのハムが大きくなったように感じられました。 いろいろ試すうちに、ハムは51S-1のIF出力にすでに含まれていることが判明しました。 さらに奇妙なことに・・・ 51S-1をUSBモードとCWモードにしているときはハムが明確に出るのですが、 LSBモードとAMモードではほとんど気にならないレベルであることがわかりました。

        はて、これは奇妙だな。 51S-1ではUSBとLSBはそれぞれ専用の中心通過周波数を持った2個のメカニカルフィルタのどちらを使うか切り替える方式で、 そのほかの回路は何も切り替わりません。 USBとLSBとでハムの出方が違うはずはないのです。 考えられるとしたら、メカニカルフィルタの調整が狂っていて、 USB時のフィルタでは100Hzが通過帯域内に入っていて、 LSBのフィルタでは低音域はカットされている・・・ いや、でも、それでも説明がつきそうにありません。 いったいなんなんだろう。

    2023-01-15 51S-1のIF出力に100Hzのハムが含まれていることを確認


        7MHzのFT8を受信するとき、51S-1をLSBモードにしておいて、 プロダクト検波へのBFO周波数を3kHz低い497kHzにセットすれば復調できるはずですね。 試してみると、そのとおりに調子よく復調できました。 このとき100Hzのハムは気にならないレベルです。 しかしWSJT-Xのスペクトログラムを見ると、 こんどは3100Hzに強い信号があります。 ん? 3100Hz?

        そうか・・・わかった。 USB時に目立つ100Hzのハムは、 50HzのAC電源を両波整流してできる100Hzハムではなくて、 51S-1の内蔵BFOのリークに違いない。 それが証拠に、非線形境界検波器へのBFO周波数を動かすと、USB時の100Hzも、LSB時の3100Hzも、 ほうら、周波数が変わる。 内蔵BFOの周波数が、500kHzぴったりではなくて、500.1kHzになっているのでしょう。

        51S-1のIF出力は、中間周波第2増幅段出力からIF信号を分岐して、 カソードフォロワを通し、AGCアンプで500kHz帯域増幅した信号が出ています。 プロダクト検波管でミックスされた内蔵BFO信号が逆流しているとはちょっと考えにくいですね。 となると、500kHz中間周波第1増幅段あたりでごくわずかに内蔵BFOの輻射を拾っているのかな。 ともかく非線形境界検波器側の問題ではないことが分かったので、 調査は打ち切り。

    2023-01-23 100Hzハムは51S-1のBFO周波数の混入と判明





    つづく・・・

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