NoobowSystems Lab.

Radio Restoration Projects

Collins 51S-1
General Coverage Shortwave Receiver
(Serial: 581)


Reward Radio

    サンフランシスコ・ベイエリアから東に約2時間、 レイク・タホにあと2時間程度のあたりの一帯はマザー・ロード(Mother Lode)と呼ばれる山々。 ゴールド・ラッシュに沸き、多くの人々が一攫千金を夢見た金鉱の町の名残りが数多くあります。 このエリアの小さな町を訪ねるのが好きで、特に何もない週末はよくドライブしました。
    安モーテルに宿をとって、近くのレストランで食事をしたときのことです。 テーブルの上に置かれたメニューにはゴールド・ラッシュ時からのそのレストランの由緒が書かれていて、 コース料理のひとつが ”リワード・ステーキ”。 いわく、「その時代、人々は苦しくつらい重労働の日々をおくっており、毎日の生活も大変貧しいものでした。 でも ごくたまには大奮発して、上等なステーキを食べたのです。毎日毎日、苦労してきた自分へのご褒美として。 これがリワード・ステーキです。」

    コリンズ51S-1は、私にとってのリワード・ステーキ。 本来ならば自分には不釣り合いなのでしょうが、 文字どおり寝食忘れて仕事しまくった日々を思えばバチは当たらないように思えました。

The dream has come true

    届いた51S-1を念入りなパッキングから取り出し、ラボのベンチの上に置いてみると、 まさにラジオ小僧の夢が現実のものになったと感じました。 名機と呼ばれる理由を、これから自分でじっくり確かめられるでしょう。 受信機は正常に動作するとのことでしたから、さっそく電源を・・・と思いきや電源ケーブルは付属していませんでした。 すでに サープラス・セールス・オブ・ネブラスカ で買っておいたオペレーション・マニュアルを参照してみると、 AC電源は背面の9ピンコネクタに接続されるようになっています。 さあ、これに合うコネクタなんてあるかなあ。 でジャンク箱を探してみると、実にズバリそのもののコネクタがあるではありませんか。 以前にリバモアでGT管のソケットと勘違いしていくつか買い込んでいたコネクタです。 これは幸い。 ACケーブルを半田付けして、念入りに再確認していよいよ電源を投入。 受信機はすぐに、はるかヨーロッパからの電波を受信しだしました。

    いままで使っていた真空管式受信機との違いのひとつはすぐにわかりました。 安定している・・・! まさにロック・ソリッドという言葉がふさわしい安定度です。 一度ダイヤルを合わせてしまえば、 放送が終了するか伝播状況が悪化してノイズに埋もれてしまって違う局を探すまで、 何も操作する必要がありません。 翌日電源を入れたら、昨晩聴いていた局がいきなりゼロインしています。 音も聴きやすく、長時間のリスニングも疲れません。 その音の良さからラボのメイン・ラジオとして3年間君臨していた エコーフォンEC-1A はこの夜、その座を51S-1にあっさり明け渡しました。

Collins 51S-1

    51S-1は0.2MHzから30MHzまでをカバーするAM/SSB/CW受信機で、 17球+トランジスタ1石およびダイオードにより構成されています。 量産開始は1959年、軍用として使用されたこともあってその後1975年まで生産されていました。 標準モデルの他に、航空機や車載用のDC28Vで動作するモデル、ラックマウントタイプ、 アメリカ軍標準コネクタセット用アダプタ付きなどのバリエーションがありました。 コリンズ社のロゴマークの変遷に伴いフロントパネルのエンブレムもウイング型やミートボール型などがあるようで、 コリンズ・コレクター諸氏はそういった細部にも大変こだわっておられるとのこと。

    51S-1は 0.2MHzから7MHzまではトリプルスーパーヘテロダイン、 7MHzから30MHzまではダブルスーパーヘテロダインとして動作します。 受信周波数は1MHzずつの30バンドに分割されており、バンドはMEGACYCLEつまみで切り替えます。 MEGACYCLEつまみの設定位置はダイヤル上部にオドメータ方式の数字で示されます。
    0.2MHzから2MHzまでの信号を受信する場合、 入力信号は中波用アップコンバータにより28MHzから30MHzに変換され、 内部的には28MHz帯および29MHz帯のバンドが利用されます。 したがって内部的には28バンド構成であるといえます。 この中波受信機能はあくまでオマケとして考えられており、 マニュアルには「中波受信は近距離放送局の受信およびラボでの実験用である」 と明記されています。

    メイン・チューニングつまみはMEGACYCLEつまみで設定された1MHzの中をチューニングします。 現在受信中の周波数の100kHz台はオドメータ式の数字でダイヤル上部に表示され、 さらにダイヤル目盛りで1kHzまで読むことができます。 減速比は大きく、SSBやCWの同調操作も楽です。 そのかわり、たとえば9.950MHzを受信していて10.100MHzに変えたい場合、 MEGACYCLEつまみを1段階上げた後にメイン・チューニングをぐるぐる950から100まで戻さなければなりません。 このため、メイン・チューニングつまみにはフィンガー・ホールが欠かせません。

    ダイヤル目盛りの細い赤ラインはZERO SETつまみで左右に動かすことができます。 内蔵のクリスタル・キャリブレータを使ってこの赤ラインをあわせておけば、 正確に受信周波数を読むことができるわけです。

    オーディオ段はスピーカまたはヘッドフォンを駆動するためのローカル系と、 他の機器に接続するためのライン系の2系統を持っています。 受信機を無人施設のラックに多数並べ、遠隔地でモニタを行うための設計です。 受信信号の強度を知るためのRFメータ (デシベル表示だけでS目盛りはなく、Sメータとは呼ばれません) は、スイッチ切り替えでオーディオ出力のレベルを計れるようになっています。

    資料によれば初期型のメータは白色の文字盤で、後期型は茶色の文字盤が使われているとのこと。
    51S-1は近接周波数混信への対策としてQマルチプライヤによるノッチ・フィルターを持っており、 フロント・パネルのREJECTION TUNINGつまみでコントロールできます。 すくなくとも40dBのノッチ・デプスをもつこのフィルターは実際極めて有効で、 混信により不快なビート音がある場合もほぼ完全に除去することができます。


51S-1に使用されている真空管とトランジスタ

DESIGNATION TUBE TYPE FUNCTION
V1 6DC6 RF Amplifier
V2 6EA8 1st Mixer / HF Oscillator
V3 6EA8 2nd Mixer / 17.5MHz Oscillator
V4 6EA8 3rd Mixer / Remote gain gate
V5 6BA6 IF Amplifier
V6 12AX7 Q-mutiplier
V7 6BA6 IF Amplifier
V8 6BA6 IF Amplifier
V9 6BA6 AGC Amplifier
V10 6EA8 LF Mixer / IF crystal oscillator
V11 5670 IF cathode follower / AGC cathode follower
V12 6BF5 2nd local AF amplifier
V13 6AK6 2nd line AF amplifier
V14 12AX7 1st line AF amplifier / 1st local AF amplifier
V15 7543 VFO
V16 6EA8 LF mixer / Calibration Oscillator
V17 7543 BFO
Q1 2N222 SSB Preamplifier

In Search of the Main Tuning Knob

    このページをご覧になっている皆さんの中には、 上の写真に見えるフロントパネルがノーマルと異なってることにお気づきの方もいらっしゃるでしょう。 そう、メイン・チューニングのノブが純正品ではありません。 この受信機を手に入れたとき、 メイン・チューニングつまみとして総アルミニウム削り出しの黒色染め仕上げの計測器用のものがついていました。 さらに外装ケースもなし。 この2点のために、この51S-1は相場よりもずっと安く買うことができました。

    最初はケースもノブもどこかで見つかるだろうと軽く考えていたのですが、ちょっと甘すぎたようです。 確かにノブはサープラス・セールス・オブ・ネブラスカのカタログに載っていました。 が、その値段はノブ、シルバーの化粧プレートそれにフランジリングを入れると完動状態のラファイエット製受信機が簡単に買えてしまう金額です。 それでも手に入るだけラッキーだと思い注文しましたが、残念なことに売り切れ。

    私の 75S-1 はノブもケースも完全ですが、いずれも51S-1とは非互換です。 指を入れて回すための穴の有無を除けば同じように見える両者のノブですが、 75S-1のチューニング・シャフトは半月形のもので、ノブもそれ用のシャフト受けの形状をしています。 これに対し51S-1のシャフトには切り欠きがありません。 したがって75S-1のノブを51S-1のシャフトに取り付けることはできません(少なくとも追加工なしには)。 75S-1のケースは51S-1よりも短いため、これまた使用できません。

    ケースはともかく、真っ黒のノブはコリンズSラインの印象をずいぶん変えてしまいます。 なんとかならないかなあ、と日本帰国の直前の最後のフットヒルを歩いていたら、ちょうど使えそうなノブが。 オリジナルとはずいぶん違いますが、ちょうどKWM-380や651S-1に使われているようなスタイルで、 シルバーのプレートつきで切り欠きなしシャフト用。 これを最後のフレア・マーケットの買い物にしよう。 さようなら、フットヒル。 家に戻り、ノブをすでに準備の整っているスーツケースに放り込み、 航空便で発送しました。 51S-1は一足先に太平洋を日本に向けて航海しています。



    日本のアパートに届いた船便引っ越し荷物の中から 51S-1を引っ張り出してすぐに、 スーツケースから取り出した651S-1風ノブを取り付けてみました。 が、フランジがないとどうにも不格好です。 最初ついていたノブはフランジと別体で、小ネジで組み付けられていました。 ので、フランジを取り外して、651S-1風ノブに瞬間接着剤で貼り付けます。 ・・・っと、ちょっとセンターがずれてしまいました。 ともあれシルバー仕上げのプレートを持つスピナー付きノブは当初の真っ黒金属ノブに比べればずっと全体の雰囲気にマッチします。
    それでも、やはり純正ノブとケースが欲しいところです。

Minor Problems

    この受信機は今のところメイン・チューニング・ノブやケースといったコスメティックな問題の他には大きなトラブルはありません。 ボリュームのガリも皆無です。 マイナーな問題点としては、しかしながら、以下のものが挙げられます。

    いずれもシリアスなものとは思われません。ちょっとした調整と手入れで修正できるでしょう。 一番の問題は、いまや四畳半にすべてを詰め込んだ我がラボにはまったくメインテナンス作業を行うスペースがないことです。 何とかしなければ・・・。

Kitchen Radio

    4年半前に渡米したとき、ラジオを聴いてもテレビも見ても当然英語ばっかりで、 それはずいぶんつらい思いをしました。 サンフランシスコ・ベイエリアでは時間限定ながら日本語テレビを見ることができたのが大変救いでした。 ところがいざ帰国してみると、それまでずっと聴いていた英語ニュースが聴けなくなったのが非常に寂しく思えます。 ヨメはヨメでやはりずっとCNNをかけっぱなしにしていたので同じようなことをいいます。 それではFENでも聴こう、と思ったのですが、関東平野から外れた鉄筋建てのアパートの中までFENは届かないのです。 屋外に2メートル程度のビニール線を垂らしてみて51S-1で短波を聞いてみると・・・ テレビとコンピュータの強烈なノイズ!いまや我がラボは最低の受信環境の中にありました。

    幸い15MHz以上の周波数ではノイズはあまりひどくなく、VOAかBBCがたいていの時間良好に聞こえています。 そこで良好に受信できる英語ニュース局の周波数をメモしておいて、ヨメに51S-1の使い方を教えました。 ラボとキッチンは3歩しか離れていないので、51S-1をキッチン・ラジオとして使ってしまおうという失礼な企みです。 メガサイクルつまみとメイン・チューニングつまみで1kHzまで直読できる51S-1のダイヤルを合わせるのはヨメにも簡単にできます。 そういえば、我がラボにはデジタル表示で周波数が読めるラジオは一台もない、という事実に改めて気がつきました。

    ともあれこの劣悪な受信環境は、スペース不足とあいまって深刻な問題です。 この先、10ドルで買ったポンコツ短波ラジオを直して楽しむためには・・・うん千万円払って家を建てるしかないのでしょうか・・・?

RF Meter Circuit

    メータをRFポジション、すなわちSメータとして使うとき、 メータのゼロ点がマイナス側振り切れになる問題が発生しました。 手に入れた直後は正常だったのに。 どこかの部品が最近の連続使用で劣化し始めたのかもしれません。 通常の使用には問題はありませんが、気にしだすと気になってしまうものです。

    メータ周りの簡略化した回路図を左に示します。 メータスイッチをRFポジションにしたとき、 メータは6BA6で構成された第2中間周波数増幅段に接続され、 スクリーン・グリッドとカソードの間の電位差が検出されるようになっています。 51S-1のB電源の整流は半導体ダイオード・ブリッジで行われており、 したがってスクリーン・グリッドの電圧は電源投入後ただちに上がります。 これに対しヒータが加熱されてカソードに電流が流れだすまで、カソードはグラウンド電位です。 このため、電源投入直後はメータはプラス側に振り切れ、真空管が動作を開始すると指針は正常な位置に戻ります。
    メータが切れるほどの電圧ではないのでしょうが、ちょっと精神的に不安。 電源投入前にメータ・スイッチをオーディオレベルのポジションにしておけばこれは回避できますが、 多くの人がこの点は気になると見えて、定番の改善策があるようです。

51S-1 RF Meter Circuit: Click here for larger image

    メータのゼロ点の調整はシャーシ上、メータのすぐ近くのトリマ・ポテンショメータ R37 で行います。 で、ドライバで回してみたところ正しくゼロを示すようになりました。 が、調整中はトリマの回転に対してメータがスムースに動きません。 しばらく使っていると今度はわずかにプラス側に振れるようになったり、元に戻ったりします。 トリマにガリがあるのではないかと思われます。

    よくよく観察してみると、RFメータのゼロ点は単に狂っているのではなくて、 電源投入からの経過時間にしたがって徐々に下がっていっていることがわかりました。 入手直後は単に気がつかなかっただけのようです。 室温約25℃で、電源投入からの時間経過とメータの振れの関係をプロットしてみました。 電源投入直後はプラス側に振れていますが、約30分間かけて0まで戻ります。 今回の測定では、その後再び針はプラスを指し始めました。 変化の主要因はやはり温度のようです。 変化のようすはスムースですから、原因はトリマの接触不良ではないでしょう。
    となれば、原因は第2中間増幅管6BA6の球自体かその周辺素子、あるいはAGC電圧そのものが変動している、 ということになります。 次のステップはAGCラインの電圧とメータの振れの相関関係を調べることでしょう。 HA-230 と同じような、グリッド・エミッションが起きているのかもしれません。


スピナーノブ

    念願のスピナーノブが手に入りました。 レプリカ品ですが、51S-1はしかるべき顔つきに戻りました。 やはりこうでなくては。残るはケースです。

    それにしても、古いラジオのつまみというのはどうしてよく紛失してしまうのでしょうか。 ボートアンカーのニュースグループなどを読んでいると、 「求む、ABC-123のつまみ」の類がよく見かけられます。 たしかにハリクラフターズSX-28などは実に特徴のあるノブを持っているので、 これがオリジナルでないとまったくサマになりません。
    この51S-1にはブレーキレバーは当初からついていないようです。


コリンズ萌え

    ポインタノブの固定スプリングが折れ、電源スイッチとEMISSIONスイッチのノブが取れてしまいました。 とりあえず別のノブをつけておけばよいのですがそうもせず、 スイッチを入れるのが億劫になりしばらく使わないままになってしまいました。

    もっと簡単に手の届くところに置いて聞いてやろうと思い、 配置を換えて久しぶりに電源を入れると、受信動作をしません。 オーディオ段は動作しているようですが、 感度が極端に落ちてほとんど何も聞こえないでいるようです。 やはり機械はほったらかしにしちゃうと機嫌を悪くしちゃうんだなあ。

    コリンズといえども所詮は真空管ラジオ、 壊れる場所はそうそう違わないよな・・・と思いつつ、ベンチに乗せ、 底面を見てみます。

    問題は周波数変換段とかターレット式バンド切り替え辺りにありそうな気がしたので、 ターレットカバーを外して観察しながら電源を入れてみると・・・ うわわわわっ!!!


    トラブルシューティングのためにはターレットの分解を必要としそうな予感。 とてもいまの状況 - 作業場所と割り当て可能な時間の少なさ - では対応しきれません。 ので、残念ながら、じっくり作業できる状況になるまで戦線離脱させることにします。 そのうち必ず直してあげるから待っててね。

つづく・・・


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Apr. 19, 1999 Created.
May. 02, 1999 Revised and published.
May. 08, 1999 Revised.
May. 17, 1999 Revised.
Jun. 28, 1999 Corrected typo.
Nov. 11, 1999 Spinner knob replacement.
Jul. 21, 2002 Revised links.
Sep. 06, 2003 Reformatted.
Feb. 23, 2007 Reformatted, corrected some typos and fixed 404.
Jan. 12, 2008 Updated. Resister burnt, the receiver is now in the repair waiting queue.