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Toshiba RP-1500F "TRY X 1500"

Portable 3 Band Receiver

(1977?)



大切にされていたみたい

    リユースショップでのファインド。 コレクションを増やそうという気はありませんが、 いじって遊べればいいなと思ったし、 とくに変わったことのない当時のポータブル3バンドを気負わず楽しんでみたいとも思いました。 それに、このラジオ、前オーナーに大切にされていたみたいです。 どう鳴ってくれるかな?

2024-05-11 RP-1500F 購入



    9.385MHzのラジオタイランド日本語放送を調子よく受信しはじめました。 ダイヤル減速比は普通の3バンドポータブルのそれで、 短波重視機の操作のしやすさには叶いませんが、 バックラッシュはさほどには酷くなく、 イライラするほどのことはありません。

    感度はこのクラスとして良好、 すぐ下5kHzにいるFSKの混信は排除できず、 選択度は国際放送をいい音で聞く目的にちょうどいい塩梅ですね。 安定度も良し。

    ラウドネススイッチをONにすればポータルサイトラジオの小さいスピーカでも低音が程よく増強されていい感じ。 音質にも特段のひずみなどの異常は感じられません。

    となると、むう、どこも壊れているところはなさそうだ。 弊ラボは壊れているものを直して楽しむのが主題ですから、 ちょっと残念だな。

    と思いきや、どうやらトーンコントロールが全く動作していないようです。 よかった、ちゃんと修理ネタが入っていた。

2024-05-19 火入れ トーンコントロール動作せず



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作業開始

    トリオTS-820Sのデジタル周波数カウンタの修理 が一段落ついたので、 つぎはお手軽修理、 トライX 1500のトーンコントロールの修理をしましょう。 どうせ低価格機のシングルノブのトーンコントロール、 高域キャパシタシャント型だろうから、 キャパシタ容量抜けが原因でしょ。

    RP-1500Fはすべてのコンポーネントがメインシャシーに取り付けられ、 フロントパネルとリアパネルが取りつくスタイル。 比較的にサービスはしやすい構造ですね。 シャシーとパネルは4本の長いネジで留められていますが、 4本のうち1本のネジが失われていました。 よくあることですね。

    内部はホコリの堆積がほとんどなくてきれい。 前オーナーによる改造 ― ダイヤルに白色LED追加 ― がありますが、 すくなくともその作業時にていねいに内部清掃してもらったんでしょう。 その改造以外には、修理跡も改造跡も見受けられません。

2024-08-23 トーンコントロール修理開始




    まずはボリュームコントロールとトーンコントロールのポテンショメータが取り付けられた小さなプリント基板をシャシーから取りはずします。 このボードについているふたつの電解キャパシタを新品交換すれば修理完了だよね。

    ところが・・・ キャパシタを新品交換した後も、 トーンコントロールは全く効きません。 おりょ?

    トーンコントールのポテンショメータのワイパーの接触が完全にダメになっているのかな? しかし テスタ で測ってみるとポテンショメータは正常、 ガリも全く出ておらずとてもいい状態です。 じゃあ何が悪いんだろ?





    この小さいボードの回路図でも書き起こしてみようかなと思いつつ、信号の流れを追ってみます。 ふむ、どうやらトーンコントールポテンショの金属ボディを通じて、左の爪から右の爪に、 音声信号を流しているんだな。 このポテンショメータのホット側端子には音声信号が来ているはずだね?

    しかし、テスタをあててみると、じゅうぶんなパターン幅がありしっかりはんだ付けされているように見える部分に、 導通がないことがわかりました。 右図参照。





    よくよく見てみると、音声信号を伝えているパターンに直線状の傷が入っています。 まるで大きめのカッターでぐっさり切り込みを入れたような感じです。 これは不思議、どうしてこんなことが起こるのでしょう?

    意図的にパターンカットを入れるような部分でも機能でもないし、 意図的ならばもっとしっかり幅をもたせてカットするでしょう。 レジストも切れているからプリント基板生産時の不良ではないでしょうし。 機器製造時、もしくはサービス時に鋭い金属の何かがぶつかったのかなあ?





    ともかくパターンが断裂しているところにはんだを盛ったら、 トーンコントロールは正常に効くようになりました。 断裂している部分の延長線上にも亀裂が入っているように見受けられたので同様にはんだ盛り。





    調子いいようなのでケースを組み戻すときにパターン断裂の原因がわかりました。 おそらく前回 (か どこかの時点で) ケースを開けようとしたときに、 トーンコントールのつまみを引き抜こうとして、 簡単には抜けなかったのでしょう。 本機のトーンコントロールのポテンショメータはフロントパネルやシャシーには固定されておらず、 つまみを引き抜こうとする力はそのままプリント基板を強く曲げる力となります。 プリント基板は数か所で爪で固定されているのみで、 トーンコントロールのポテンショメータシャフトを強く引き抜こうとすればそのときのプリント基板の撓みは・・・ ちょうど今回パターン断裂が起きた場所で曲げモーメントが集中するはず。

    想像するに前オーナーさんがダイヤルにLED照明を取りつける作業を行ったときに、 トーンコントールつまみを抜こうとしてパキッ! とやってしまったのでしょう。 LED取り付け作業を終えた前オーナーさんは、 トーンコントールが効かなくなっていることに気がついていたのでしょうか?






ここは贅沢してもいいかな?

    RP-1500Fはごくスタンダードなローコスト設計の3バンドポータブルトランジスタラジオなわけですが、 バンドセレクタインジケータはちょっと奢っていますね。 セレクタレバー回転をギアで取り出してバンド表示ドラムを回しています。 このおかげでフロントパネルに現在のバンドが表示されるわけですが、 AFCスイッチは省いてもここは欲しかったのでしょうか。

    ドラム駆動コードはやはり摺動曲げになっていますね。 ここは精密な動きも必要ないのだからまあ構わないですが、 中身を見るとちょっとなんだかなあって思ってしまいます。






チューニングホイールはねじ止め

    RP-1600F ではチューニングホイールはバリコンシャフトにはめ込み式でしたが、 1500Fではネジで固定されていますね。 バックラッシュは大きくなく、短波のチューニングもさほどにはイラつきません。 ひょっとして1600Fでも出荷時はねじ止めだったのかな?






局発の安定性

    9.385kHzのラジオタイランドを受信中に、 RP-1500Fの局発の漏れ信号 9.840MHz をIC-706MkIIGMで受信し、 WSJT-Xでスペクトログラム表示させてみました。

    平均周波数はきれいに安定していますが、 アンテナ入力信号のフェージングに応じて小刻みに150Hzほど変化していることがわかります。 AM国際放送を聴くなら問題になりませんし、 翌日電源スイッチを入れたら昨晩聞いていた周波数ぴったりだったりするので、 実用上とても快適。

    局発と同じ周波数に入力信号がある場合のひょろひょろビートは実用上さほど気になりませんし、 そういう意味でも素性のよいラジオですね。






メインワークステーション用に配置

    ということで手軽に聞ける3バンドポータブル機として、 メインワークベンチに置きました。 1mほどのワイヤーアンテナだけでラジオタイランドを良好に受信できます。 停電時にも即使えるよう、乾電池動作。 いい感じで楽しめます。

2024-08-24 作業完了 実働配備






残課題

    入手時にほぼ完調だったこともあり今回はトーンコントロール修理だけで完了にしましたが、 短波ダイヤルはちょっとずれていますね。 右の写真は9.975MHzのKTWR フレンドシップラジオ受信時。 ダイヤル指示は9.800MHzあたりでしょうか。 次回気が向いたら、短波ダイヤルアライメントを取りましょう。

2024-08-24 残課題 短波ダイヤルアライメント






> 次の作業・・・ Sideband Engineers SB-34 HFトランシーバ


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2024-08-25 File created. [Noobow9100F @ L1]
2024-09-15 Updated and published. [Noobow9100F @ L1]