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UIR-2000

Homebrew AM Hi-Fi Tuner - Unknown Origin


   
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なーんだこれ

    閑古鳥 さんの望月移転後初のジャンク市で、これを買いました。 現品をぱっと見て、低周波出力段を省いたAM用スーパーヘテロダインラジオなのはすぐにわかりました。 SELECTORと書かれた大きなつまみはなんだろう、IF帯域切り替えかな? オーディオファンの方からの仕入れが多いこのショップ、 音楽番組受信を狙ったAMチューナなのでしょう。

    もちろんそういうキカイが欲しかったわけではなく、 部品取りのために。 シャシーがいい感じだったし電源トランスもついているし、 0-V-2でも作るのにちょうどよさそうです。

    それにしても、良く作られているなあ。 サイドの三角パネルなどは手作業の切り出し品には見えません。 当時はこういうシャシーキットが売られていたのかな。

2026-06-13 AM Hi-Fiチューナ ジャンク品 入手





    真空管が1本欠品しています。 本機には音声出力トランスがありませんから、 欠けているのは出力管ではなくて電源整流管でしょう。 年代の割にはシャシーの酸化は酷くありません。 保管状態は良かったようです。

    フロントパネルだけでなくリアエプロンにもパンチで文字が刻印されています。 きれいに整列されていないあたり素人臭は出ていますけれど、 本当の素人ならパンチなんか持ってなかったでしょうから、 どこかのショップの設備や工具を使わせてもらってたのかな。

    ところどころにプラスネジが使われています。 製作は1960年に入ってからなのでしょうか。





    マジックアイのステーの加工もきれい。 ホルダは市販されていたのでしょうけれど、 アルミのステーもひょっとしたら当時出来合いのものが売られていたのでしょうか。 アルミ板を切り出して曲げたにしては、 学生さんの手作業には見えません。

    総じて仕上げはていねいできれい、保存状態も悪くない。 部品取りにするにしても、 いちどは当初の機能性能に直してあげようかな。

    ・・・・ まあ、だいたいそんな感じで直してしまって、 元気になって調子よくなって、 分解しちゃうのが惜しくなるんだよね。 いつものことさ、わかってる。

    なお呼び名が「正体不明の自作AMチューナ」だといろいろ不便なので、 UnIdentified Receiver ということで本稿では本機を "UIR-2000"と呼ぶことにします。




観察調査しながら整備開始

    まずはシャシー内部の配線を眺め、 欠品している真空管を特定します。 やはりこれは整流管。 ヒータ電圧5Vの半波整流であることと、 ピンアサインメントから、5MK9に間違いありません。

    5MK8といえば日本ではラジオ工作の定番ですが、 でもラボには5MK9の在庫はありません。 5MK9を使うような機械は一台もなし。

    平滑キャパシタへの負担は大きくなってしまいそうですが、 ここはシリコンダイオードに替えちゃえばいいや。

    それにしても配線はていねいだなあ。 プロの手とは思えないのですが、 しかしまるきりの素人の作品でもなさそうです。

2026-06-29 作業開始





    本機には6AV6が使われていますからこれがAM検波・AGC・初段低周波増幅だと思っていたのですが、 よくみるとそうじゃないぞ・・・ AM検波には半導体ダイオードが使われていて、 6AV6のツイン2極管のプレートはどちらもグラウンドに落とされています。






電源投入

    5MK9の代わりに2A05シリコン整流ダイオードをつなぎ、 オーディオキャパシタ2個を新品交換したうえで電源投入。 じきにAMチューナは鳴りだしました。 うわーすげー高域が伸びてる。

    テスト音源はいつもの C-Claysさんのアルバム "幻想天舞" からトラック3、 「Keep On Loving You」(原曲: 「リーインカーネイション」)。


    ただし音はとても小さいです。 いま夢と時空の部屋ではTAPCO MIX60ミキサを使っていて、 モノラル入力チャネルにはレベル調整付きマイクプリアンプがあります。 音が小さければプリアンプゲインつまみをくるっと回せばOK。 とても便利。

2026-06-30 通電 動作開始



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    フロントパネルのパイロットランプは6.3VACのヒータ電源で点灯されますが切れていました。 在庫の新品に交換。





    フロントパネルのマジックアイは6M-E10。 蛍光体はかなり劣化していました。 弱々しい光です。

    パイロットランプが切れていたこととマジックアイの劣化が進んでいたことから、 この機械は「作ってみた、鳴った」で終わりにしたのではなく、 かなりの時間実用機として稼働していたのではないでしょうか。





音が小さい

    まずは音量が小さい原因を調べてみよう・・・ すると、おっと! 6AV6の3極管部は普通のカソード接地型アンプではなく、 カソードフォロワになっていました。

    このため本機のオーディオ出力信号の電圧レベルはダイオード検波の出力そのままです。 そりゃ音が小さいわけだね。





    中間周波増幅管のスクリーングリッドバイパス/カソードバイパスキャパシタを交換。 調子は少し良くなりましたが、 さらにAGCフィルタキャパシタも交換したら大幅改善! 1mVのRF入力でばっちり。 5球スーパーに期待される感度が得られました!

    テスト音源はOrange Coffeeさんのアルバム、 "The Lounge Map 2 - afternoon tea set"からトラック2 「Cookie watch」(原曲: 「ほおずきみたいに紅い魂」)。

2026-07-01



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    AGCフィルタキャパシタを交換して感度が大幅に改善されたら、 ダイヤル900kHz以下も聞こえるようになりましたが、感度は依然として悪いまま。 でも局発の発振レベルを見てみるとダイヤルの低い位置で発振振幅が低下しているというふうではありません。 やはりトラッキング不良のようです。

    いじってたらしだいにダイヤルが渋くなって、 ついには全く回らなくなってしまいました。 バーニアダイヤルを取り外してみると、 渋くなったのはバーニアダイヤル。 バリコンシャフトはスムースに回ります。

2026-07-01






感度が悪い原因を探る

    ダイヤルの低い側で感度が大幅に悪い原因を探ります。 トラッキング調整を試みましたが正常な応答が得られません。 これはどこかが異常。 配線をノートにとりながらいろいろ調べてみると、 どうやらアンテナコイルが断線してるっぽいですよ?

    サーキットテスタでチェックすると、アンテナコイル2次側に導通がありません。 これじゃトラッキング調整も効かないはずだ。 し、SGをアンテナワイヤにつなぐよりも6BE6の第3グリッドに直結したほうが感度がいいというのも裏付けになっています。

    アンテナコイルを取り外してチェックしてみると、 正常に導通があります。 おろ? なぜか取り外すときに直ったのでしょうか?

    アンテナコイル2次側グラウンド側配線は、 おそらくチョークコイル経由で中間周波増幅管のグリッドに落ちていました。 まずは問題を切り分けるために、 アンテナコイル2次側グラウンド側はシャシーグラウンドに落としました。 コイルにはしっかり導通があります。 なおこのため周波数変換管にはAGCはかかっていない状態になりました。

2026-07-02





    この状態で手短にトラッキング調整を行いました。 昨日まではうまく調整できませんでしたが、今回はしっかり反応があります。 結果、900kHz以下の感度が大幅に向上しました。

    もともとの配線ではアンテナコイル2次側グラウンド側はチョークコイルでAGCラインにつながっていたのですが、 セレクタつまみ4段階目の時にそのチョークをショートするようになっていました。 この意図が皆目見当がつきません。 それに、その状態だとアンテナコイル2次側グラウンド側は高周波的にはグラウンドに落ちません。 ここにキャパシタが要るんじゃないのかな? やはりこのキカイは当時のオーナーさんがいろいろいじって試していて、 改造の途中で放り出したのかな? それとも単なるミス? [後日正解が判明]

    テストRF信号は生のJOAKと、 シグナルジェネレータで作った630kHz。 テスト音源はACCORD ON CODESさんのアルバム "Live 2023" からトラック3、 「Midnight quietness」(原曲:「亡き王女のためのセプテット」)。

2026-07-02



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    バーニアダイヤルはどこで手に入れたものなのか在庫の中古品が別メーカーながら寸分違わず! いったん分解して清掃しダイヤル目盛盤を入れ替えたうえで交換。

2026-07-03






Hi-Fi AMの世界にようこそ

    もともとついていたSELECTORつまみは明らかに1960年代の意匠のもので、 大きすぎることもあってフロントパネルの意匠バランスを崩してしまっていました。 なので、オリジナルのビルダーさんの想いとは異なってしまうかもしれませんが、 在庫の黒いつまみと交換。 年代は不明ですが、いいバランスになりました。

    トラッキング調整を再度実施。 ダイヤル目盛ぴったりには合わせこめなかったけれど、 受信感度はベストにかなり近いところまで持ってこれました。

    テスト音源は狐の工作室さんのアルバム "喫茶白玉楼" からトラック6、 「あしたも抹茶色」(原曲:「さくらさくら ~ Japanize Dream...」)。

    ハイの伸びもすごいまま。ウインドチャイムの音色を聴いてみて!

2026-07-03



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    IFT各帯域での聞こえ方の違い。

    テスト音源は主旋律を琴やチャイムで奏でるパートをもちシンバルの刻みが明確なソースとして、 舞風さんのアルバム "東方幽靜響" からトラック4、 「夜桜街道 ~instrumental~」(原曲:「死霊の夜桜 / ゴーストリード」)。

2026-07-03



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    高域の具合をスペクトルで見てみます。

    テスト音源は舞風さんのアルバム "東方幽靜響" からトラック2、 「夜桜街道」(原曲:「死霊の夜桜 / ゴーストリード」)。

    IFT帯域はMIDにセットしてあります。 6kHzを越えてようやく落ちはじめますが、 10kHz超え成分もばっちり入っているのがわかります。

2026-07-03



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Hi-Fi AMの時代

    FM放送の開始が遅れていた日本。 レコードはそうそう頻繁に買えるものではなかったから、 音楽を楽しむためにAMラジオの音質をよくしたい、 となるのは自然な流れだったでしょうね。 AMラジオ放送の広帯域Hi-Fi受信の試みは1955年のころだったらしいです。 この自作AMチューナもその頃に作られたのかなあ。 自分が生まれるよりも前の時代。

    AMではいくらがんばっても音質面ではFMには足元にも及びません。 FM放送が始まったとたんにこんな手作りAMチューナは用無しになって捨てられてしまいそうですが、 でもこのキカイは大切に保管されていたのでしょうね。

2026-07-03





    広帯域の中間周波トランスを使い、 最新のゲルマニウムダイオードを使い、 高域フィルタを一切使わず、 カソードフォロワで出力する。 がんばって高域が伸びたf特の良いラジオが欲しかったのでしょうけれど、 高域を落とさないことが裏目に出て、このチューナはコンバータノイズがとても大きいです。

    周波数変換段で発生するコンバータノイズはスーパーヘテロダイン方式のラジオの宿命ですが、 高周波増幅段を入れてミキサ入力を高く保てば、 コンバータノイズは相対的に小さくできます。 このチューナは強電界地域で使われたからさほどには気にならなった、とかでしょうか?

    ローノイズを求めるならば、 同じスーパーヘテロダインにするにしても、 コンバータノイズが特に大きいペンタグリッド管を使わず、 他励での3極管ミキサを使うアプローチもあったはずです。 当時はそこまで達していなかったのかな。

2026-07-03





    放送局に近くて信号が強く、他局からの近接混信妨害がすくない良い環境ならば、 スーパーヘテロダインではなくてストレートTRF構成にしてもよかったのかもしれません。

    右の画像は1955年4月の雑誌記事で紹介されている「最新の」Hi-Fi AMチューナ。 スーパーヘテロダインではなく、高周波2段 + 2極管検波 + 低周波1段増幅の構成です。 TRF受信機では再生回路を用いて同調回路のQを高めて選択度を確保しますが、 このチューナではQマルチプライヤは使わず、 4連の同調回路で選択度を確保しています。バリコンも4連!! 受信機のアーキテクチャとしては、1920年代末期のブレッドボードラジオの時代までさかのぼった、 古代文明の再来ともいえます。

    復調音声の高域を減衰させないということと近接周波数の混信を排除するというのはまったく相反すること。 このチューナはひとつのアプローチを突き詰めた結果のプロダクトということになりますが、 このチューナをいい音で鳴らすにはかなり恵まれた受信環境に住んでいる人だけ、 ということだったはずですね。

    なお右図のチューナにおいてAM検波・低周波増幅に使われている6AT6は、6AV6とピン互換。 プレート電圧250Vでの3極管部相互コンダクタンスは6AT6が1200マイクロモー、 6AV6が1600マイクロモー。 6AV6のほうがひとまわり高増幅度です。 幣ラボでは コリンズ75S-1 のAM検波・AGC電圧発生・初段低周波増幅に6AT6が使われています。




    このAMチューナに使われてるAM検波用ダイオードは OA79。 FM検波用に開発されたゲルマニウムダイオードで、上市は1956年とのこと。 マーキングが不鮮明ですが、下段の文字は "National" のように見えます。 このダイオードが国産品で松下電器製だとすれば、 同社のゲルマニウムダイオード生産開始は1957年とのことですので、 このチューナが作られたのはそれ以降。 1958年頃に作られたのだとしても、 当時最新鋭の (そしておそらく高価な) デバイスを使ったということになります。

    1957年末に日本でもFM試験放送が開始され、 1958年にはメーカー製FMチューナが日本国内で発売されています。 これ以降はAMのHi-Fi化の熱は冷めていったはずです。

    しかし東京でFM試験放送が始まっても出力は1kWに過ぎませんでした。 地方都市では受信できなかったろうから、 1960年に入っても地方のオーディオファンはAMのHi-Fi受信にひきつづきチャレンジしていたのかもしれません。 そして地方都市ではAM電波も強くはないから、 受信部はスーパーヘテロダイン一択だったのでしょう。

    本機に使われている部品や配線材料などは、 1961~1963年ころのもののようにも見えます。 「すでにFM放送は始まっていたが地方ゆえに受信できず、 悔しい思いをしながらAMのHi-Fi受信にひきつづきチャレンジしていた」 時代の作品なのかもしれません。

2026-07-04





    ということで本機の回路図を書き起こしました。 オリジナル機に対して、オイルキャパシタを全数フィルムキャパシタに新品交換、 整流管5MK9の代わりにシリコンレクチファイヤを使用、 アンテナコイル2次グラウンド側をシャシー直結に変更。

    本機はオーディオパワーアンプを内蔵していないということもあり、 電源平滑は2段でシンプル。 電源平滑電解キャパシタは当時モノをそのまま使っていますが、 ハムは全く出ておらず。 優秀なキャパシタです。






3段帯域切り替え

    このAM Hi-Fiチューナの要といえるのが富士製作所 「スター」S-15型中間周波トランス。 3段帯域切り替え式です。 入手時に推測したとおり、 フロントパネルの "SELECTOR" つまみはこのIFTの帯域切り替えを行います。 ロータリースイッチは4ポジションのものが使われていますが、 3段目と4段目は同じ。

    今回このジャンク品をすぐにバラさずにまずは直してみようと思ったのは、 このIFTを聞いてみたいというところが多分にあります。

    帯域切り替えを持つのは周波数変換段直後、前段のIFTで、 これは "S-15 A"と型番が入っています。 中間周波増幅管出力、後段のIFTは "S-15 B"で、 こちらは帯域切り替え機能はなく、調整用ネジがIFT下面にしかありません。 おそらくかなりの広帯域結合なのだろうと思います。





    現時点ではこのスターS-15型IFTのデータシートが入手できていないので、 どのような特性を持つのか、 さらには現状この機械でのつなぎ方が正しいのかどうかがわかりません。

    でもまあ、このIFTの帯域切り替えを楽しんでみましょう。 フロントパネルのロータリースイッチで、帯域幅をNARROW / MIDDLE / WIDEの3段に切り替えられます。 オーディオ出力をWaveSpectraで観察したものが右図。

    NARROWではピーク比-20dBとなるのは9kHzのあたり。 MIDDLEでは15kHzまで伸びてようやく-20dB、 WIDEでは20kHzになっても-20dBは落ちません。

    なお帯域ポジションによって中心周波数は数kHzほどずれるようで、 帯域を切り替えたらチューニング取り直しが必要です。

    聴感的には、NARROWポジションはふつうの家庭用5球スーパーと同等かすこし広い感じ、 MIDDLEで普通の5球スーパーではありえないほどに高域が伸びます。 WIDEにすると高域が伸びるというより低域が細くなって、 相対的にすごくハイ寄りになります。 音楽を聴くならWIDEはやりすぎという感じ。

2026-07-04





    3つの周波数特性図を重ねてみました。 帯域切り替えで変化するのは4kHz以上であり、 4kHz以下は全く変わらない、という感じです。 実際には、ハイが強くなれば相対的にローは細く聞こえるようになります。

    広帯域IFTを使えば4kHzを超える高域が濾過されず出てくるというのは読めますが、 低域はなだらかに落ちています。 実際、このチューナ出力をそのままアンプに入れて聞くとものすごくハイ寄りになってしまいます。 この理由はなんだろう。 AM検波段以降のカップリングキャパシタによるものなのかな?

    いずれにしても、 「どうです、すごい高域が出てるでしょう!」 と自慢することはできますが、 音楽を楽しむためとなるとあまりにもハイに寄りすぎ。 心地よく聞くためにはオーディオ出力をトーンコントロールなりイコライザなりで調整する必要があります。 ずっと使いつづける実用機とするなら、 周波数特性補正回路を組み込んであげたいです。

2026-07-04






そういうことだったのか

    帯域切り替えIFTを使ったHi-Fiラジオの製作記事を見ていて、 アンテナコイル2次側グラウンドに抵抗を入れているケースを見つけました。 しかも帯域切り替えポジションに応じて抵抗両端をショートしています。

    そうか! これは広帯域受信のための工夫なんだ。 通過帯域をワイドにセットしたとき、 アンテナコイルに直列に抵抗を入れてコイルのQを落とし、 選択度を意図的に悪化させて受信音の高域が伸びるようにしているのです。 通過帯域をノーマルにセットしたときはQダンプ抵抗両端をショートし、 アンテナ同調回路が本来の選択度を発揮できるようにしています。

    別の記事ではこの抵抗を替えてトライしたことが述べられていて、 「20Ωが最適、 それより大きいと選択度が悪くなりすぎて混信が増えてしまう」 とありました。 もちろんそれはその著者のご自宅がどこにあったのかで状況は大きく変わってくるのでしょうけれども。

2026-07-07




    ともかくも、入手時には不明だったアンテナコイルのつなぎ方、 そしてSELECTORロータリースイッチについていた謎の部品の狙いがわかりました。 すべては設計者の意図通りに組み立てられていたのです。 本機が不調だったのは、 回路設計の不備や製作者の誤配線などではなく、 どういうわけかアンテナコイル2次側の導通がなくなっていたためでした。 コイルを取り外して取りつけ戻す過程でコイル導通不良が直って本調子を取り戻した、ということ。

    なので、アンテナコイルのグラウンド側接続を入手時の状態に復旧しました。 問題なく鳴っています。

2026-07-07




    ここが、入手時いその意味が分からず、 製作者の配線間違い、あるいは改造途中で放棄だと思い込んでいた部分。 いまは意図が理解でき、そして製作者の狙い通りに動作しています。

    黒い部品が高周波用の30Ω抵抗。 この部品をLCRメータでインダクタンスを測ったら20μHと表示されたため、 高周波チョークなのだろうか? そうであればアンテナコイル2次側グラウンド側はRF的に浮いちゃってるぞ? と思い込んでしまっていたのでした。

2026-07-07





    というわけで回路図を修正しました。

    アンテナコイル2次巻線グラウンド側に30Ωの高周波用抵抗を入れて同調回路のQを下げ、 選択度を広くし、音質改善を狙う。 ただしこのとき受信感度はごくわずかに悪化する。 選択度切り替えスイッチをNARROWにしたときにはこのQダンプ抵抗両端はショートし、 通常のスーパーヘテロダインAMラジオの感度と選択度を得る。

    ふう。 謎が解けました。 ラジオは感度・選択度・安定度が命、 まさかわざわざ選択度を悪化させる方法を取っていただなんてねえ。 短波ラジオ少年にとって驚きの発見でした。

   





AMトランスミッタでHi-Fi AMを

    AM Hi-Fiチューナは本来の性能を取り戻しました。 FM放送開始以前は現代ではとても許されないような帯域幅で「Hi-Fi放送」を行っていたこともあったそうで、 そんなときにこのチューナは真価を発揮したでしょう。 けれど、9kHzセパレーションの現代のAMラジオ放送では送信側でしっかり帯域制限をかけています。 受信側でいくら広帯域にしたところで素晴らしい高音域が楽しめるなどということはありません。 いまは帯域が制限されている条件下でいい音で聴いてもらうため、 聴感補正の処理が行われているとのこと。 なんにしても、 現代の実際のAM放送を受信する限り、 このチューナの持つ広帯域特性は何の役にも立ちません。

    シグナルジェネレータを使えば帯域幅制限などお構いなくHi-Fi AM信号を作ることができます。 ですが、ラボのシグナルジェネレータ SIGLENT SDG2122Xのは外部信号AM変調は、 どうやらアナログ音声信号をデジタルサンプルして変調を掛けていると見えて、 変調音にデジタル歪がけっこうはっきり出てしまいます。 とくに静かなピアノソロではほぼ致命的な音の悪さ。 なので、AM受信機の音質評価には向きません。

    PLL故障中で戦力外になってる目黒測器MSG-2161はアナログ変調なのですが、 AMでは変調度50%までしか上げられず、 かつ入力信号に帯域フィルタを掛けてしまうため、これもHi-Fi AMは楽しめません。

2026-07-03





    というわけで、怪しい中華製のAMトランスミッタを買いました。 低価格品は見るからにトイレベルのものだったので、 ひとまわり真面目に作っているように見える製品を注文。 価格4500円。 ジャンク市チューナの倍以上の値段だぞ。

    届いたAMトランスミッタをテスト。 キャリア発振はLC、 同調はポリバリコン、 変調もアナログ。 ですが回路構成は Ramsey AM-1 などよりははるかに高級です。

    セットアップして試すと、 おお! じゅうぶんにいい音でAMが出てる! ピアノソロの、音が静かに消えていく部分もとてもきれい。 これは嬉しいなあ。

    テスト音源は As/Hi Pianoさんのアルバム "七夕坂夢幻能の主題による小曲集" からトラック8、 「第1番 前奏曲 変ロ短調」 (原曲:「七夕坂に朝が来る」)。

2026-07-07 中華AMトランスミッタを使用



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    AMラジオでキラキラした音がとてもキレイな曲を楽しみましょう。 チューナ帯域はMIDDLE。

    テスト音源はOrangeCoffeeさんのアルバム "The Lounge Map Extra - night latte macchiato set" からトラック4、 「Sailing Night」(原曲:「幽霊客船の時空を超えた旅」。

    正直、ハイが伸びすぎているので、 気持ちよく聴くためにはトーンコントロールの助けが必要ですね。



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    もう一曲、ウインドチャイムのしゃら~ん☆がとてもきれいな曲を。 スペアナで見ると8kHz以上が主成分で、 10kHz以上をカットされてしまうAMラジオでは通常楽しめない音です。 チューナの帯域はWIDEにしています。

    テスト音源はOrangeCoffeeさんのアルバム "The Lounge Map 2 - afternoon tea set" からトラック7、 「open the square box」(原曲:「少女秘封倶楽部」)。

2026-07-09 AM Hi-Fiを楽しむ



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忘れられた夢

    フォロワーさんがスターS-15型IFTのデータシートを探し出して画像を送ってきてくださいました。 ありがたい! 公称特性がわかっただけでなく、 つなぎ方が正しいことも確認できましたし、 なにより参考回路図ではアンテナコイル2次グラウンド側に30Ωが入っていて、 NARROW時にはショートするというのも幣ラボ現品とおなじ、 さらにはその30Ωのつなぎ方は実体配線図で示されているものと全くいっしょ。 本機は明らかに、スターS-15中間周波トランスのデータシートを見ながら製作されたと思われます。

    いったんFM放送が普及してしまえば理由も必然性もなくなるAMのHi-Fi化。 もはやこのキカイが本領を発揮するシーンはまったくありません。 完全に忘れ去られた夢。

    顧みられることのなくなった楽園ですが、 いったん気づいてしまうとすごく奥深い世界ですね。 送出側で帯域制限しないで済み、近接周波数局の混信がないとすれば、 受信機側でも帯域を広げることにより復調音声の周波数特性の高域は伸ばすことができて、 音質ははるかに良くなります。 現代のFMでも音声周波数上限は15kHzどまりですから、 FMと同等にすることはじゅうぶんに可能。

    しかしこのIFTの特性図からもわかるとおり、 通過帯域内の損失は周波数依存性があります。 復調音の周波数特性に影響を及ぼし、 それが好ましい傾向かそうでないかはあるにせよ、 音に色がついてしまうはず。

    完全に近い帯域フィルタあるいは上手に影響をキャンセルできたとして、 それでもやはり「AMラジオの音」というのはありそうです。 周波数帯域はじゅうぶんに広くてFMラジオと変わらなくできても、 なにが「AMっぽい音」を生み出しているのでしょう?

    これを考え始めると、 ラジオ技術界隈でも普段あまり話題に上らないところにさまざまなファクターがあって、 昔それに取り組んだ先人の知られざる努力であったり、 なぜかいままで見過ごされてきた何かが隠れているっぽいことに気がつき始めたりします。





夢の在処

    今回は、閑古鳥さんのジャンク市で見つけた得体の知れない自作ラジオから、 期せずして1950年中盤~1960年代初頭のAM Hi-Fiの世界を覗いてみることとなりました。 いやー楽しい世界だった。

    チューナ出力をいい感じで聴けるトーンコントロールのセッティングが見つかって・・・ 気がついたらこのチューナのセットアップで1週間以上、 音楽を楽しんでいます。 ステレオではないということを除けば、 カジュアルリスニングにじゅうぶんな音質。

    というわけで予想された通り・・・ このチューナを分解して部品取りにするのはちょっと保留にしましょう。 1958年のAM Hi-Fiの夢をいつでも楽しめるようにしておくことにします。

2026-07-11 修復作業完了






> 次の作業・・・

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2026-07-10 Page created. [Noobow9100G @ L1]
2026-07-12 Updated and published. [Noobow9100G @ L1]
2026-07-13 Corrected typo. [Noobow9100G @ L1]