NoobowSystems Lab.

Go to Radio Restoration Projects

National Panasonic RQ-554

5 Band Radio Cassette Recorder

(197x)



ちょっとは気になっていたんだよね

    RQ-554は1970年代中盤の普通のラジカセ。 他の多くのモデルと違うのは、短波を1.6〜30MHzフルカバーしていることと、 短波チューニング操作がしやすいようにファインチューニングコントロールを持っていること。 当時大流行となった短波受信ブームに乗る形で世に出たモデルです。 クリーム色フェイスの大型横行きダイヤルが特徴的です。 当時の私はこのダイヤルになんともレトロな印象を受けたのですが、 ほかの方はどうだったのでしょうね。 モダンなデザインと感じた方もおられたのでしょうか。

    このラジカセ、雑誌記事で見たことはありましたが、 当時すでに RF-2200 を使っていたし、 受信機と録音機は別の機械であるべきとも思っていましたし、 なによりこのモデルは短波を聞くための基本性能が特段優秀というふうでもなかったので、 ほとんど興味はありませんでした。 でもこれを今年2024年にリユースショップの店頭で見かけたとき、 当時を懐かしんで楽しんでみてもいいかなという気になりました。 たぶん、やっぱりどこか、気になっていたんでしょうね。 50年もの間。

    RQ-554は、自分が中学入学のときに買ってもらった低価格FM/AMラジカセRQ-542と基本的に同じカセットメカニズムを持っています。 細部は改良されているようですが。 操作ボタンが懐かしいです。

    中学時代はRQ-542でNHKラジオの続基礎英語とラジオ英語会話を録音し、 キュー&レビュー機構を駆使して聴きまくりました。 あまりに酷使したのでヘッドを2回、モータを2回、ピンチローラーアセンブリを1回交換してもらいました。 有料の英会話スクールには通ったことはありませんが、 シリコンバレー駐在のお声がかかったのも、 その後の国際開発チームリードの職をどうにかこなせたのも、 National MAC RQ-542のおかげと思っています。ものすごく感謝。

    ということでACプラグを差し込んでテスト開始。 まずはラジオタイランドを聞いてみましょう。 ラジオは各バンドとも動作しています。 動作はしていますが、いろいろダメなので楽しめそうです。 帯域幅が広すぎるだけじゃなくてオシレータプルインが酷いように思えます。 この対策は、できたとしてもけっこう大変かも。

    またこのラジオ、短波帯では過大RF入力にとても弱いと見えます。 外部アンテナ端子は壊れている (取り除かれている) ので、 ロッドアンテナにクリップで外部アンテナをつなぐと、混変調しまくって使い物になりません。 ミキサのトランジスタが劣化しているということもあるかもしれませんね。

    テープトランスポートは動作していますが、 テープの音は出ないし、内蔵スピーカの音質もかなり悪いです。

    ダイヤルフェイスに白色LEDが組み込まれているところを見ると、 前オーナーは近年いろいろいじったのかもしれません。 そのへんを見るのも楽しみです。

2024-05-11 RQ-554 購入



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サービス開始

    RF-554のキャビネットを開けてサービスベンチに載せました。 作業開始。 まずはフレンドシップラジオで再度受信テスト。 いやーこれはひどいな、 番組を楽しむような感じではありません。







局発がヘン

    RQ-554で短波10.000MHzを受信すれば局部発振器の発振周波数は10.455MHzになるので、 それをFRG-7 USBモードで受信してみましょう。 ピーという音が聞こえるはずで、その周波数が多少ふらつくのはまあ予想できます。 しかし聞こえてきたのはあまりにも奇妙な信号。 局発波形がこれだけひどいのであれば、短波が聞こえていること自体が奇跡と思えます。

    RQ-554に短波は3バンドありますが、 SW2 (3.9MHz〜12MHz) で ダイヤルを高くしていくと7MHzあたりから局発の発振波形が乱れはじめます。 12MHzあたりではもうめちゃくちゃ。 これはSW2バンドに固有の問題ということではなくて、RF入力の強さに関係しているようです。 SW3バンドで22MHzにセットしているとき、RFに22MHzの強信号を入れると同じ現象が起きます。 つまり 局発がRF入力に激しくプルインしているのですね。 局発の信号が本来あるべき単一スペクトラムではなく、 周波数ドメインでスペクトルが広がってしまうので、 受信機としては見かけ上の選択度が広がってしまい、つまり近接周波数の混信が入ってきてしまうわけです。 復調音質がひどいのも説明がつきます。

2024-06-09 局発波形が乱れていることに気がつく



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局発の高調波で周波数変換している?

    アンテナ入力を弱めれば局発信号の乱れも弱まるので、 室内ホイップアンテナのみでラジオタイランドを受信してみました。 とりあえず番組は了解できますが、 当然 室内のいろいろな機材からの輻射ノイズを拾ってしまいます。

    SW3の局発が普通の半分の周波数で発振していることを現認しました。 RQ-554はSW1とSW2ではよくある普通のアッパーサイドインジェクションの455kHzシングルスーパーと見えますが、 SW3ではダイヤル位置12MHzで局発周波数約6.2MHz、ダイヤル24MHzで局発周波数は約12MHzが出ています。 SW3では局発の2倍高調波でコンバージョン動作していて、ダイヤル指示どおりに13MHzバンドの放送局が聞こえます。 もしかしてこういう方式だったりすることなんてあるのかなあ? ないよね? どこかおかしいんだよねコレ?? 機序の説明ができないけれどシロート修理として局発トランジスタ交換してみようかねえ?

    前オーナーによるダイヤルパネルLED照明追加改造が電源を取り出しているのは、 FINE TUNINGキャパシタへの配線です。 これが原因か? と最初は思ったのですが、そうではなかったらしいです。 LED配線を切り離しても局発の不思議な動作は変わりません。

2024-06-10 SW3では局発周波数が期待値の半分しかないことを追確認


    右の画像はFine Tuningに使われている小型のトリマキャパシタ。 ストッパなしで360度フリーにくるくる回ります。 もちろん効果があるのは180度の範囲だけ。 このトリマキャパシタは局発バリコンに単に並列に入っていて局発周波数をわずかに上下させるだけです。 RF-1150 / クーガ115と全く同じ、とてもチープな方法。

    トリマが取り付けられているブラケットは光沢のある銅色で、 まさか銅の削り出し? と思いましたがそんなことはなく、 樹脂製の部品を塗料にじゃぶ漬けして色が付けられています。 ひょっとしたらシールド性能ほを狙った導電性の塗料かも?






回路レイアウトを調査

    今夜はわずかばかりアンテナRF入力を強めたので、 ラジオタイランドを聞いてもビートも混信もひどいです。 それに、なんで日本語が混信してるの?? 近接周波数に日本語放送局なんかありませんよ? FRG-7でおなじ9.385MHzを聞くと、 もちろんこんなビートも混信もありません。

    今日は基板を眺めて回路レイアウトの調査を行います。 どれがAM局発なのかの推測ができました。 たぶんTR9 2SC1359がそれです。 このトランジスタはFM受信時には動作停止することも確認できました。 さらに、MW/SW1/SW2/SW3の局発コイルとトリマキャパシタが特定できました。

    現時点での故障個所の推定。

1) 局発トランジスタVccの電源デカップリング電解キャパシタの容量抜け。

オーディオ出力に応じてトランジスタ電圧が変化して発振周波数が変動する。 これは可能性は低いですね。 なぜなら局発の乱れ具合はボリューム位置=オーディオ出力のレベルにほとんど依存していないから。

2) 局発トランジスタ2SC1359劣化

これはありえそうです。

3) AM混合トランジスタ劣化

これもありえそうです。 現時点ではどれがAMミキサなのかまだ特定できていません。 FM中間周波増幅第一段と兼用なのかもしれません。

    このRQ-554、短波の感度はかなり良いです。 調子が良くなれば、海外放送がホイップアンテナだけで十分に聞こえるなかなかの実力機なのかもしれません。

2024-06-11






局発の調査続行

    今夜もRQ-554で9.385MHzのラジオタイランドを聞きます。 受信音に不安定なピー音が混じっていますが、 これは局発信号の強度が4〜5kHzほどで強弱を繰り返しているため。 局発がRF入力に激しく影響を受けてしまっています。 ラジオタイランドそのものは混信もなく良く聞こえているのですが。 冒頭部分で最近この局定番のキャリア途絶。

    このときRQ-554の局発信号 (ラジオタイランド 9.385MHz プラス455kHzで9.840MHz) をFRG-7で受信してみると、 AMモードにしておいてもRQ-554と同じピー音が聞こえます。 ひどいねえ。 現状、このRQ-554で短波を聞くには、 目的の放送局が聞こえる最低限までアンテナの感度を落とすのがコツです。 どこかおかしいのは明らか。

    依然として本体購入価格より高いお金を払ってサービスマニュアルを買うべきか悩んでいます。 基板の観察だけでなんとかいけないかな。

    局発段からの白いワイヤが入っているところ。 どうやらここがAM混合段への局発入力であると思えます。 ここをオシロで見ると、 MW/SW1にくらべSW2では局発信号振幅が1/5ほどしかありません。 SW3は振幅はMW/SW1と同等ですが、周波数が期待の半分しかありません。 やはり局発がおかしいなあ。 さらに、SW2のダイヤル4.5MHzあたりで局発が発振停止してしまうことに気がつきました。

    局発の電源デカップリングキャパシタを交換してみましたが、変化なし。

2024-06-12 短波SW2/SW3の局発動作が期待と異なる






トランジスタを交換してみる

    局発トランジスタを2SC2669Yに交換してみました。 さらに周囲の電解キャパシタもいくつか新品交換。 状況にほとんど変化なし。

2024-06-13 局発トランジスタを交換 変化なし


    ついで混合トランジスタを2SC2669Yに変えても目立った変化はありません。 トランジスタ劣化ではなかったということですね。

    局発には関係ないとわかりつつ、 なんかもう理屈なしで片っ端から電解キャパシタを新品交換してしまいました。 おそらく録音系のキャパシタ一つを残して全交換。 これはもう知性の敗北ですね。 結果としてオーディオ出力の音質は間違いなくよくなったので、 完全な無駄ではありません。

2024-06-14 AM混合トランジスタを交換 ほぼすべての電解キャパシタを交換


    AM混合トランジスタの直近にもうひとつトランジスタがあります。 ひょっとしてAMミキサはバランスト型の回路なのでしょうか? ありえなさそうだなあと思いつつ、 でも念のためにトランジスタを新品交換してみましたが、 状況変わらず。

    局発の純度低下は、アンテナが短ければ発生しません。 現状このラジオはロッドアンテナよりも長いアンテナをつなぐととたんに調子が悪くなります。 ラインオフ時からこういうものだった、という話なのでしょうか。

    いったん調査の手を休め、 AMとFMの中間周波トランスを調整。 うまくピークが取れました。



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SW3の局発周波数を考える

    17.880MHzのCRIポルトガル語番組をRQ-554で聞きます。 この番組、ポルトガル語プログラムのはずなのですが、 ニュースもトークもなく、 ずっと音楽を掛けています。 朝の0800JSTからと0900JSTからは同じ内容で、 さらには今年の4月からずーっとおんなじ番組を毎日繰り返しています。 番組編成の予算が底をついたのでしょうか。 でもそのなかにとても素敵な ― 風神録道中曲ですって言われたら信じてしまいそうな ― 曲があって、はてこれは何という曲なのだろう。

    17.880MHzを受信するときは、 普通のラジオなら局発周波数は18.335MHzのはずです。 FRG-7でRQ-554の局発の漏れを受信してみると、たしかに18.335MHzの信号が受信できます。 しかしこのとき局発はやっぱり9.167.5MHzを発振しています。 やはりAMミキサは局発信号の2倍高調波周波数で周波数変換しています。

    これはRQ-554の設計の狙いなのでしょうか? 松下製の短波トランジスタラジオでほかにもこういう例ってあったりするのでしょうか? 局発の周波数ドリフトを低減するため、 SW3では本来の局発周波数の半分の周波数を発生させておき、 混合段直前で周波数ダブラで周波数を倍にしているとか? まさかね?

    局発を逓倍している例としたら、 弊ラボの機器の中では Sideband Engineers SB-34 の第3周波数変換があります。 第3局発の原発振は456kHzの水晶ですが、 USBモードの時はダブラ―とトリプラーで6倍の2738.2kHzをつくり、 LSBモードの時はダブラ―2段で4倍の1825.5kHzをつくっています。 結果、第3中間周波段ではUSBもLSBもサイドバンドは同じ向きになるので、 1つのコリンズ メカニカルフィルタでUSBもLSBも対応できるという工夫。

    追確認しておきましょう。 RQ-544のSW3バンドで24.000MHz AM信号を受信します。 このときの局発周波数は ユニバーサルカウンタ での実測値は12.227.5MHzです。 この倍の24.455MHzと入力信号24.000MHzの差分に変換されて455kHz中間周波が得られています。

    動画中で使っているテスト音源は、 OrangeCoffeeさんのアルバム "The Lounge Map 1 - morning coffee set" からトラック6、 「NJG」(原曲:「サニールチルフレクション」)。

    現時点での結論は、 「RQ-554のSW3はそういうもの」。 でもこのために、SW3では局発基本波周波数±455kHzの信号も弱いながら聞こえてしまうので、 SW3バンドでは、ほかの受信機では聞こえない信号がいっぱい聞こえます。

    このラジカセは、当時の販売価格を見ると、RF-2200よりも6000円も高かったのです。 カセットがあるから単体ラジオよりも高くなるのは当然だとはは思いますが、 それにしてもRF-2200よりも高いのにこの性能だなんて、 もしこの個体の現状が出荷時の性能だとするならば、 強烈に残念なお買い物ということになってしまいます。 やはりちょっと考えにくいですね・・・



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ひきつづきプリント基板パターンを追う

    RQ-554メインボードの半田面には、 多くの部品が手付けで追加されています。 量産試作基板で問題が見つかったものの、 日本国内の短波ブームが続いているうちの市場投入日程を優先するあまり、 基板変更する時間的余裕がなくてそのまま量産開始されたのではないでしょうか。 回路の動作性能的に多少不本意な部分があっても、 抜本的な対策がなされずに目をつぶって量産Goをかけてしまったのかもしれません。

    ぶつぶついいながら、短波SW2バンドの局部発振回路とAM混合回路を中心に基板パターンを追い続けます。 このモデルの基板は部品面に厚膜抵抗がプリントされた両面パターンなので、 回路を追いかけるのはけっこう大変です。 それで・・・これは? ほう・・・NSBとな?・・・ふむふむ。





    こ・・・これか? 試してみます。 アンテナRF入力: 9.385MHz AM 90% mod S9+20dB相当、 混合段への局発入力レベル: 400mVp-p。

    いままでとは大違いの局発出力レベル、 60dBμ相当の強信号でも破綻せずにしっかり聞こえているぞ!

    テスト音源はSJV-SCさんのアルバム "DIVIT" からトラック5、 「ブクレシュティの人形師」(原曲: 「ブクレシュティの人形師」。

2024-06-15 SW2不調の原因に気づく



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自分の理解不足でした!!

    判明!! SW2の局発レベルが明らかに低く不安定だったのは、 結局自分の理解不足でした。

    このラジオにはNSBクリスタ用ジャックがあるのですが、 キャビネットからメインボードを取り出すときにジャック配線は切り離していました。 しかしこのジャックは、NSBクリスタを使わないときはジャック内でショートされるようになっていたのです。 その代替ショート処理を行わずにテストしていたのが原因でした。

    NSBクリスタはSW2の局発発振コイル2次側のローサイドに挿入されます。 クリスタを使わないときは、コイル2次側ローサイドが0.01uFのキャパシタを介してグラウンドに落ちます。 クリスタ配線がオープンになった場合であっても、 2次側ローサイドは1kΩでGNDに落ちているので、 発振が止まることはありませんでした。 しかし発振出力が大きく低下していたのです。

    だから回復方法は簡単で、NSBクリスタジャック配線をつなげば正常になります。 しかしもうNSBクリスタなんて使うことはないし (持ってもいませんし)、 局発発振コイルの配線が筐体内で長く引き回されているのは不安定動作の原因になるかもしれません。 そこで本機ではNSBクリスタジャックは廃止し、 SW2局発発振コイルL4の2次側ローサイドは、SW1やSW3の発振コイルと同様に最短距離でGNDに落とすことにしました。

2024-06-16 SW2局発波形異常はNSBクリスタジャックをオープン状態で使っていたためと判明 作業ミス



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DX-LOCALスイッチ

    アンテナ同調と局発回路はRQ-554のメインボードの面積の40%近くを占めています。 そのなかでもAM局発トランジスタは取り付け位置がとても離れていて、 エミッタとコレクタがバンドセレクタスイッチまでビニール線で6cmも引き回されていますし、 局発コイル配線のパターンも長いです。 改善の余地は大に思えますね。 このプリント基板を眺めていると、 ブームの火が消えないうちにとにかく市場投入しろ! という営業からの怒鳴り声が聞こえてくるように気さえします。

    あーそれでか! RQ-554、メインボード上のDC6V電源入力マイナス側ピン/カセットトランスポートグラウンドを基準にすると、 ラジオ回路のグラウンドの電位はDC4Vになっています。 だからシグナルジェネレータのグラウンドをラジオ回路のグラウンドにつなぐと奇妙なことが起きるんだ。 このラジオには外部アンテナ端子がありますが、 外部アンテナ端子のGND側とラジオ回路グラウンドとの間にキャパシタが入っているのはそういうわけなんですね。

2024-06-16


    SW2の局発はおそらく本来性能で動作していますが、 信号強度が強すぎると局発信号純度起因のピューピュービートが出てしまう現象は引き続き残っています。 アンテナを短くして回避できますが、 このラジオに一番必要なアクサセリは外付けアンテナアッテネータですね。 でもまあ、子供のころ使っていた短波つきラジカセなんてこんなもんでしたかね。 よく不安定なピューピュー音が聞こえていたように思います。

    対策としてAM混合段のゲインを落としてみたらどうだろう。 DXを狙うわけじゃないし、安定にきれいに聞こえる方がありがたいです。 本機には中波AM受信時に感度を落とせるDX-LOCALスイッチがありますが、 これを短波受信時にも使えないでしょうかね。 なんなら中波での機能はつぶして、短波用DX-LOCALアッテネータにしてしまってもいいかなと思い始めました。

    MW DX-LOCAL切り替えは2極双投のスイッチが使われています。 ひとつめはLOCAL時に中波バーアンテナの端子一つをRF GNDにキャパシタを介して落とします。 でももうひとつの回路の仕組みが不明。 たぶんAM混合トランジスタの近くのトランジスタがRFシャントになっていて、 それを動作させてるのだと思うのですが、 MWのときだけ動作する仕組みが分かっていません。

2024-06-19






大衆向けの設計?

    相変わらずAM混合の隣のトランジスタのはたらきがわかっていませんが、 でもまあ短波国際放送は聞けているし。 もうこのあたりでいったん終わりにしましょうかね。

    本機の回路はラジオ回路も回路電圧は電源グラウンド電位基準で設計されているようなのですが、 ラジオ部のPCBグラウンドパターンもシールドケースもIFTキャンもバリコンのコモンも電源グラウンドに対して4Vになっている動機がわかりません。 ラジオ回路グラウンドの電位を高い側にするメリットってなんなんだろう? これも理解できていないまま。

    くすんだダイヤルグラスをプラスチッククリーナーで磨き上げ。 すっきりクリアになりました。 組み立てるとクリーム色のダイヤル盤のために変化はほとんど気がつきませんけれど。

    本機には楕円型スピーカが使われており、 スピーカヨークはプレススチールのカバーで覆われています。 音声信号に応じて変化するスピーカの磁界が、 すぐ下にあるAM局部発振コイルや中間周波トランスに影響しないようにするための工夫なのだろうと思います。 逆に言えば局発も中間周波段もスピーカヨークにとても近いわけで、 受信機のレイアウトとしては大きな疑問符がありますね。 楕円スピーカは、使いたくて使ったのではなく、 大型横行ダイヤル盤のために大型の円形スピーカを取り付けられなくなってしまったためだと思います。 テープはノーマルテープだけだし、商品企画の当初から高音質はさほどには求められなかったのでしょう。

    本機ではバンドセレクタの5連プッシュスイッチが基板のかなりの面積を占めています。 結果として局発や中間周波増幅段が追いやられています。 RF実装設計担当者は、5連プッシュスイッチを要求した商品企画の人間を夜ごと罵っていたのかもしれません。 いっぽう5連プッシュスイッチは接触不良はほぼ気になりません。 ここは美点ですね。

    おそらく本機は、商品企画として最初に大型横行ダイヤルとすることが決まり、 チューニングを容易にするためにバリコンホイールはなるべく大径にしたいと考え、 その結果バリコンを基板のかなり下に配置することになって・・・ というストーリーだったのかもしれません。 外観操作系のレイアウトがまず決定され、メカレイアウトが決定され、そのあとで苦労して回路を実装したのかも。

2024-06-26






SW3の局発のミステリー

    あれえ? SW3バンド、19.225MHzで 9.385MHzのラジオタイランド日本語放送が聞こえるんだけど?

    理由を考えてみましょう。 ダイヤル位置19225kHzのとき、本来ならば局部発振周波数は455kHz高い19680kHzであるべきです。 でもこのRQ-554では局発周波数がSW3バンドではなぜか半分なので、局発は9840kHzで発振しています。 局発の9840kHzとラジオタイランドの9385kHzはちょうど455kHz離れているので、 ラジオタイランドの信号も455kHzに変換されてしまい、聞こえてしまうわけですね。

    もちろんトップの同調回路で19MHz台が選らび出されているわけですが、 同調回路1段では9MHz台も弱くなるとはいえ通過してしまうわけです。 これが非常に強力な中国国際放送とかだと、それはもうガンガン聞こえてしまいます。

    SW3で局発が本来の周波数の半分で発振している状況、 いまだに理由がわかりません。 これが設計意図なのかも知れません。 しかしRQ-554をいじった人のブログ等を拝見しても、テープドライブのベルトを変えたとか、 ダイヤルにLED組み込んだとか、電解キャパシタを全交換したとか記事しかありません。 どなたかRQ-554をお持ちの方、SW3の局発周波数は本来期待される周波数を発振しているのか、 それとも本来期待値の半分なのか、 調べていただけないでしょうか。

    これが設計意図あるいは素子劣化による故障ではないとしたら、なぜこのような状況になっているのでしょう。 いろいろ想像してみましょうかね。

製造時の調整ミス

生産時のSW3用局発コイルの調整ミスかと思ったのですが、 SW3局発コイルのコアを目いっぱい回しても周波数は倍には高くなりません。 この可能性はなさそうです。

製造時のSW3 OSCコイル誤組 - SW2用を取り付けた

うちのRQ-554実機を見ると、SW2用発振コイルとSW3用発振コイルは見た目が全く一緒。 識別マーキングなどはなく、 製造時にSW3用局発コイルのところにSW2用のものを取り付けてしまったのではないでしょうか。 たぶんこの時代この製品は部品は手差しだったでしょうから (部品挿入後にフローはんだ+半田面リードカッター)、 パートのお母さんの作業ミスってのはありえない話じゃないと思います。

製造時のSW3 OSCコイル誤組 - 海外モデルのSW2用を取り付けた

輸出仕様のRQ-554LDSのラジオ部は5バンドですが、 FM・中波AMのほか長波と、短波は2バンド構成。 このSW2が7MHz〜22MHzとなっていて、 これ用の局発発振コイルを間違って取り付けてしまったのでは? ありえないとはいえなさそうです。

製造時のSW3 OSCコイル一時的欠品のための生産継続策

エキセントリックな想像ですが、 量産時に一時的にSW3用OSCコイルが欠品してしまい、 しかし製造ラインは止められないので、 代替対応策を求められた設計部がSW2用OSCコイルを使って高調波で周波数変換することを提案した・・・ というのはどうでしょう。 SW3バンド全域にかなりひどいイメージ混信が出てしまうのは承知の上で、 イメージ排除性能は入門者向け短波ラジオのユースケース上許容できると判断された (「どうせ子供には気づかれまい」)、という想像。 昭和ですよ、ありえたかもしれませんね。 いえいえ、天下の松下電器がそんなことするもんですか。 はてさて。

    ラボの個体のSW2用とSW3用の局発コイルを取り外して調べてみれば何かわかるかもしれませんが、 そこまでする元気もなく。 いまはこのまま、RQ-554のミステリーとしておきましょう。






外部アンテナ端子を改造する

    RQ-554は本体背面に外部アンテナ端子を持ちますが、この端子がなかなかに奇妙。 当時よく使われていたねじ止めターミナルではなく、 単線ワイヤをちいさな穴に差し込むタイプになっています。 はてこの理由は? ちいさいマイナスドライバーさえ使えないユーザ層を狙っていたのでしょうか?

    本機の外部アンテナターミナルは、 アンテナ側の受け金具が内部で変形してしまっていました。 前オーナーはアンテナ線を差し込んでも満足な接触が得られていなかったのだろうと思います。 前オーナーはケースを開けて内部を清掃しダイヤルにLED照明を追加するところまではやっていたけれど、 キャビネットから中身をすべて取り出してアンテナ端子を修復するというところまでは手を出していなかったものと見受けられます。 もちろんこのアンテナ端子は、 ホイップアンテナに外部アンテナをつなぐのと大差がありませんから、 さして困らなかったのかもしれませんが。
    外部アンテナ入力を受ける側のプリント基板にはサージアレスタとトラップコイルが設けられています。 誘導雷による故障への配慮はされていたのですね。

    このアンテナ端子は使いにくいし、 いっぽうで背面パネルにあるNSBクリスタジャックは切り離してしまいましたから、 このNSBクリスタジャックを外部アンテナ端子として使うように改造してしまいましょう。 とても簡単な改造ですが、使い勝手は大幅アップ。




内蔵電源ユニット

    RQ-554内蔵AC100V電源ユニットの平滑キャパシタを交換しておきます。 現時点でAC電源ハムは皆無ですから必要は出ていませんけれど。

    本体内蔵のAC電源ユニットのプリント基板は複数の海外仕向けに共通に作られていますが、 "LAMP"と書かれた出力ランドが用意されています。 商品企画の初期段階ではダイヤルランプも装備予定だったけれど、 コスト低減のために省かれた、のでしょうか。






テープトランスポート修理を試みる

    テープトランスポートは正常に動作し始めましたが、 スローなピアノは鬼門です。 フラッタがひどくて、音楽を楽しめたものではありません。 テスト音源は ついったー東方部さんのアルバム "Further Current" からトラック3 「幽霊楽団 〜 Phantom Ensemble」。

    おそらくベルトは前オーナーによって交換されているものと思います。 すこし緩すぎるのでしょうか。 モータ接続コネクタが除去されて直接はんだ付けされているところを見ると、 モータは他機種からの移植かもしれません。

    ヘッドは予期される程度に摩耗していましたが、 アジマス調整を行って高域はすこし改善されました。 現状ではオートストップ機構は効きません。 それにしてもこのカセットドア、テープが全然見えませんね。 これはかなり不便なはず。

    モータープーリーにゴムがひどくこびりついていたので、 これがフラッタの原因かと思いました。 しかし残念、清掃してもほとんど変わりませんでした。

    ベルトを自由長Φ80mmの新品に交換してみましたが、 きつすぎてモータが回り始めないことがあります。 入手時に使われていたベルトはΦ90mmほどと思いますが、 それではちょっとテンションが低すぎます。 すると本来のベルトはΦ85mmなのでしょうか?

    いろいろいじってはみましたが、 フラッタの原因はどうやらキャプスタン軸受けのガタのようです。 これは直せませんねえ。 カセット部の完全復調は今回断念。 将来いつの日にか再挑戦したいです。

2024-06-30 カセットテープトランスポートの回復は断念



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トラッキング調整

    最終組付け前に再度トラッキング調整を実施しました。 調整はスムースで、短波ダイヤルは各バンドともぴったり合わせ込めました。

2024-06-30 トラッキング調整






奇妙な実験を楽しむ

    RQ-554、屋外ロングワイヤーとアンテナチューナでは入力過大でひどい混変調、 かといって室内ホイップアンテナでは室内のノイズに負け気味。 そこでひとつ奇妙な実験をしてみましょう。 外部アンテナを使い、RQ-554のアンテナ端子の手前にポテンショメータを入れて可変アッテネータにする作戦。 在庫部品で適当なものを探したら、 このハムバランサがちょうどよい具合です。 ハムバランサって・・・ご記憶の方いらっしゃいますか?





    結果はなかなかに意外。 ポテンショメータの設定位置を変えると、アンテナからの信号が強まったり弱まったりするだけでなくて、 アンテナチューナ内部のコイルと受信機アンテナコイルとの結合の度合いが変わるのでしょうね、 隣の周波数が強く聞こえてきたり、あるいは目的の信号だけがすっと浮かび上がったりします。 なんだか理屈が良くわからないものの、 いろいろいじってうまいセッティングが見つかれば、 内蔵ホイップアンテナでは無理だった快適なリスニングができます。

2024-07-01



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忘れられた妖怪の世界

    小学生の私が初めて聞き始めた頃の短波は、 摩訶不思議なことばかりでした。 奇妙な音があちこちで聞こえるだけでなく、 ピューピューと音の高さが変化するビート音がよく聞こえていたし、 あるラジオで放送局が聞こえる周波数でほかのラジオでは全く聞こえなかったり、 聞こえるはずのないものが聞こえてくることも多かったです。 まるで妖怪にからかわれているかのような感覚でした。

    あれから50年が経ち、すこしは理屈がわかってきたら、 あの頃の不思議が説明できるようになってきました。 説明できるようになってしまうと、 それらはもはや怖い妖怪でも幽霊でもなくなってしまいました。 あのころぼくをからかって遊んでいた妖怪たちは、もうここにはいない。 不思議は不思議のままにしておいたほうが良かったのかもしれません。

    今夜の妖怪。

RQ-554のダイヤルを9.195MHzに合わせる -> 何も聞こえません。
つぎに、
シグナルジェネレータで9.195MHzの無変調キャリアをアンテナに入れる -> なぜか9.650MHzの朝鮮中央放送が聞こえます。

    AM混合段に入ってきた9.195MHzのキャリアと9.650MHzの朝鮮中央放送がミックスされ、 差の周波数455kHzが中間周波段に出ていくわけですね。



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    いま9.385MHzを受信しようとすると、局部発振器の発振周波数は455kHz高い約9.840MHzになります。 このとき9.840MHzに強い局がいてアンテナから混合段に入ってくると、 強い局の9.840MHzと局部発振器の約9.840MHzがミックスされて、 この2波の差の周波数がビート音として聞こえます。 この手のトランジスタラジオでは入力信号の強度変化(=AGC電圧の変化)に応じて局部発振器の発振周波数は多少ふらつきます。 このため、Sメータの動きに合わせてピューピュー音程が変わるビート音になります。

    実験してみましょう。 9.385MHzのラジオタイランド日本語番組を受信しているときに、 アンテナ端子にシグナルジェネレータでつくった9.843MHzを注入します。 分かりやすいように、9.843MHzの信号は3秒ON 3秒OFFのバースト信号としてみました。 結果は右の動画。 3秒おきに3kHzのビート音が、不安定なピッチで聞こえています。

    ということで、RQ-554でラジオタイランド 9.385MHzを聞こうとするときは、 9.840MHzのベトナムの声がビート発生の原因になります。 幸いにA24の番組プランではこの2局は同時には放送されませんが、 もし9.840MHzでベトナムの声が同時に強力に届いていたら、 RQ-554はこの2局を同時に聞けるよくばりラジオになるかもしれません。

    これはつまり、アンテナ回路から混合段に入ってきた信号のうち、 差の周波数が455kHzの関係にある2波はすべて聞こえてしまうということです。 いまや夜の9MHz帯は9.3〜10.1の広い範囲で強力な局がたくさんいますから、 RQ-554にとって現代の短波はかなり厳しいということになります。

2024-07-02



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RQ-554のAMラジオはいい音ですよ

    とまあ、現状でこのRQ-554は短波ラジオとしてはいくつもの問題を抱えていて、 常用機とするにはいささか厳しいものがあります。 これらはRQ-554がラインオフしたときから抱えている弱点なのかもしれないし、 あるいはこの個体のどこかに劣化故障がある可能性は残っていますね。 基板部品面に形成された厚膜抵抗が破損しかかっているとか、 スルーホールのビアが切れかかっているとか。 SW3の局発が普通の半分なのはなぜかという疑問と並んで、 ひょっとしたら、です。

    でも大入力による混変調や周波数関係でのビートやイメージ妨害がない条件であれば、 このラジオはいい音で番組を楽しめます。 右のムービーではシグナルジェネレータから4.800MHz 4mV 100%AMを入力、 外部アンプ+外部スピーカ使用。

    テスト音源は 舞風さんのアルバム"東方幽靜響"からトラック4、 「夜桜街道 〜instrumental〜」 (原曲: 「死霊の夜桜」 「ゴーストリード」) 涙を誘う美しいアレンジです。

    これで今回のRQ-554作業は完了とします。 リユースショップでの購入金額分はたっぷり楽しむことができました。 昔懐かしい妖怪が跋扈する短波の世界に戻りたかったら、RQ-554のスイッチを入れることにします。

2024-07-04 作業完了



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