Benmar Navigator 555A
Radio Direction Finder
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これは船舶用の方向探知器です。
もうすこし簡単にいうと、目盛りのついたバーアンテナが回転できるようになっているAMラジオです。
さらにいえば、一時代を築いたナショナル・クーガの親分です。 AMラジオ受信用のバーアンテナは8の字型の指向性を持っており、 アンテナの軸線が送信アンテナの方向に一致したとき感度が最低になります。 ので、送信アンテナの位置がわかっていればそちらへの方向がわかります。 さらに、違う場所にある送信アンテナからの電波を受信すれば地図上に2本の線を引くことができ、 その交点にあなたがいることになるわけです。 アイデア自体はとても古く、ハリクラフターズ社でも1940年にこの目的専用のラジオS-30を発売しています。 当時のラジオ少年にとってはナショナル・クーガ シリーズのジャイロアンテナがすぐ思い起こされるでしょう。 私にとって初の本格的ラジオであった クーガ№7 には、購入時に各地の放送局の位置と周波数が詳しく載った大きな日本地図がついてきました。 ジャイロアンテナをまわすと、私の家はどうやら群馬県と埼玉県の県境近くにあるらしいことが判明しました (^^;)。 こんなもので得られる位置の精度など、言うまでもなくたかが知れています。 し、大洋の真っ只中で使えるわけでもないでしょう。 が、GPSなど言葉すらもなく、 ロランやデッカの受信機なぞには高くて手が出せないような沿岸航海のヨットやレジャーボート程度であれば、 大体どちらへ進めば港に帰れるかが簡単にわかるだけで大歓迎であったはずです。 |
100ドル以下で位置精度100m以内のGPSレシーバが買える1999年の現在、
こんなものをあえて使う船乗りもいないでしょうし、アンティーク電子機器というにはちと新しすぎます。
だからフットヒルのフレア・マーケットでも二束三文状態。 対候性パッケージでもないので海で使えば潮風で相当痛みそうなものですが、さほど使われなかったか、 あるいはキャビンの中で使われていたとみえて、 汚れてはいるものの痛みはそれほどひどくありませんでした。 が、電池コンパートメントに液漏れの跡。 電池ケースには町の部品屋で市販されているようなものが使われており、これがひどく痛んでいたので、手持ちの新品に交換。 ついでにケースをあけ、ダイヤル板やつまみ類を清掃。 それなりにきれいになりました。 曲がっていたダイヤル指針も修正。 短波と気象放送受信用のロッドアンテナは折れてしまったとみえて、代わりのものが取り付けられていました。 スイッチを入れて放送局を受信してみると、ときおり音が途切れます。 調べたら底面に取り付けられているスピーカのボイスコイルが切れかかっているようです。 代わりに手持ちの小型ダクト入りスピーカを両面テープで取り付け、修理完了。 |
といっても、方向探知器としてではなくてラジオとしてです。
驚いたのが、中波の受信感度のすばらしいこと。ダイヤル盤にぎっしりいろいろな放送局が。
サンノゼローカル局は強すぎてゲインコントロールを絞らないと歪んでしまいますし、
家庭用の他のラジオではまったく聞えない、30マイルほど離れたフリーモントのコミュニティラジオも聞こえます。 選択度は特筆するものではありませんし、ダイヤル操作もバックラッシュが気になります。 が、中波DXを考えるのであればこのラジオは我がラボでピカイチです。 近接局を簡単にヌルにできるのは回転式アンテナの威力。 長波バンドでは比べられるラジオがないので何ともいえませんが、確かにビーコンが何局か聞えます。 中短波帯は人工ノイズだらけですが、感度はやはりよさそう。 80メーターバンドのアマチュア局は強力に入感します。 ピッチコントロール付きのBFOスイッチをONしてみると、あれあれ、BFOの動作はとても不安定で、 とてもSSBを聴けたものではありません。 AGCの時定数はとても小さく、Sメータの針はフェーディングに敏感に反応します。 方向探知器として考慮された設計なのか、はたまた平滑コンデンサの容量抜けなのかは不明ですが。 ともかくリラックスして放送を聴く類のものではありません。 おそらく追加設計によるものと思われる気象放送受信機能は、実際のところオマケ程度の性能。 クリスタルは実装されていないので、ポテンショメータによるチューニングを試します。 すると確かにモントレー・ベイのウェザーラジオが聞えます。 が、選択度が極端に悪く、かなり周波数が離れているはずのもう一局が分離できません。 まあ、この程度でよかったのかも。 中をいじって、ウェザーバンドを144MHz帯アマチュアバンド受信用に改造するのはどうかなあ。 選択度向上の工夫が必要でしょうけれど。 |