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Sony ICF-7600A

Portable Shortwave Receiver


   
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隠れるように

    奈良峠ツアーの途中で立ち寄ったショップの棚の奥で、 このポータブルが横を向いて隠れるようにしていました。 「通電せず」とのラベルが張られたソニーは薄汚れていて傷もあり、 だけれどダイヤルの動きはスムース、ロッドアンテナも破損なし。 なにかめそめそ泣いているふうでもあり、 かわいそうになって保護してきました。

    このラジオが発売されたほぼ同じ年に私は ICR-4800 を買いましたが、 すでに短波放送のアクティブリスナーではなくなっていたので、 本機ICF-7600Aというモデルの存在はこの個体を見つけるまで知りませんでした。 DOUBLE CONVERSIONって書かれているね。 うまく直れば、 ICR-4800をしのぐ性能のトランジスタポータブルが手に入るな。





    ありがちな話で電池カバーは欠品していました。 電池漏れはなく、これは朗報。 ロッドアンテナ先端のホルダ部分は破損。

    国際バンドラジオらしく、リアパネルにはタイムゾーン図が。 まあほとんど実用性はなかったのでしょうけれど・・・ 海外出張で現地ホテルに着いた後日本との時差を再確認するには便利だったかもですね。 インドとの3時間30分差は表現されていませんね。

    DC6Vアウターポジティブを安定化電源装置から与えて動作させると、 赤色LEDが点灯しました。 む? 「通電せず」なんてことはないよ、 動作しているみたい。 FMにして、MWにして、SWにして、ダイヤルを回してみると、 放送局のあるところでチューニングインジケータが明るく輝きます。 各バンドとも受信できている様子。 しかしいずれも無音で、ノイズも全く聞こえません。 イヤホンジャックも無音で、 REC OUTジャックも無音です。 これはパワーアンプICの故障だろうか?






トラブルシューティング

    リアカバーを開けました。 お、バリコンは2個あるんですね。 ギアで連結されています。 バックラッシュが発生しないよう、スプリング付きのダブルギア構成。 チューニングノブからの糸掛けで最初に回されるのが短波専用バリコンで、 ダブルギアを介して回されるのが中波AMとFM用のバリコン。 短波のほうがより精密なチューニングコントロールが必要ですから、 理にかなっています。

    ギアはわずかな経時変形がありますが、 作動は問題なし。

    サービスマニュアルを参照しながら、 FM/AMの検波出力の引き回しを確認します。





    中間周波増幅と検波を行うICの音声出力ピンをあたると、 きちんと音声信号が出ているのが観測されました。 ボリュームコントロールの上流ターミナルにも信号がきています。 しかしボリュームコントロールのブラシには信号が出ていません。 しかしポテンショメータのガリではなさそう。

    それではオーディオパワーアンプは正常なのだろうか? と見ると、残念、やはり故障しているようです。 パワーアンプの入力ピンに触れてもノイズは出ないし、 なによりパワーアンプICのピン電圧を測定してみるとあきらかに異常。 ブートストラップピンには6Vが出るはずですが、 ここが0V。

    ということで、故障個所はボリュームコントロール用ポテンショメータとパワーアンプIC。

    ボリュームコントロールポテンショメータの上流にワイヤをはんだ付けして信号を引き出して外部アンプとスピーカを鳴らすと、 ICF-7600AはFMも中派も短波も調子よく受信し始めました。 受信性能は良好・安定、とてもいい音がしています。



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メインボードを取り出す

    本機は、メインボードとすべてのコンポーネントがセンターシャシーに取り付けられており、 それをフロントパネルとリアパネルで挟む構造。 フロントパネルを取り外すと、 スピーカから茶色い粉がボロボロこぼれてきました。 コーンはかなり劣化していると見えます。 現状ではコーンエッジ破断には至っていませんが、 この様子ではスピーカを鳴らせばエッジ破談は時間の問題でしょう。

    メインボードを取り外すには、 ダイヤルコードの取り外し (= 組付け時にはコードかけ直し)と、 バーアンテナのリードワイヤのはんだ付け取り外しが必要。 どちらも注意深くやれば大丈夫と思いますが、 ゆはり度胸が必要だし、 神経を使う作業だから億劫です。

    「REC OUT出力も無音」と書きましたがこれは勘違いで、 REC OUT出力には抵抗が入っていて、録音機のマイクロホン入力に接続するのを想定しているみたいですね。 音が小さくて聞こえていないと思い込んでしまっただけでした。 外部アンプ接続時に使っているTAPCO MIX60ミキサの入力レベル調整のゲインをぐっと上げてやればOK。





    短波13メーターバンドを受信中。 右の写真のポインタ位置での実際の受信周波数は21.665MHz。 35kHzほどダイヤルがずれているようですね。 7つある第1局発の水晶発振子は、 いずれもしっかり安定して発振してくれていますし、 17MHz帯/21MHz帯の感度も良好です。





    REC OUT / EARPHONEそしてDC6V INのジャックを持つジャックボードの取り外しには手こずりました。 サービスマニュアルには取り外し手順の記載がありません。 実は電池ボックスの接続スプリングの針金が2本、ジャックボードに直接はんだ付けされているのです。 試行錯誤して、どうにかメインボードを取り外すことができました。

    短波第1局発用の水晶発振子が並んでいるのが見えますね。 短波各バンド用に、合計で7つあります。

    部品は手挿入のように見受けられます。 時代ですねえ・・・この基板、生産コストは安くはなかったはずです。




    さあてオーディオパワーアンプIC μPC1212Cは・・・と見ると、 うわあああ。

    エポキシパッケージが割れて、中身がむき出しになっていました。 ははあ、これはきっと電源を逆接したな? ともかくこれでは音が出るはずはありません。





    破損したエポキシパッケージの欠片はボード上に残っていました。






ポテンショメータは

    ボリュームコントロールのポテンショメータは、 上流側の抵抗体とターミナルピンを固定しているカシメ部の接触不良でした。

    これはどうやって修復しよう? いろいろ試すうちに抵抗体基材がどんどん痛んできてしまい、 うまく修理することができませんでした。 うう、悔しい。 オーディオパワーアンプICはすでに部品発注しましたが、 このポテンショメータは代替品が新品で手に入るとは思えません。 どうしよう。






μPC1212C代替を検討する

    電子部品ショップのウェブサイトには在庫ありとなっていたのに、 いざ発注してみたら在庫がなかったとのこと。 一緒に頼んだいろいろな部品は届いたものの、 肝心かなめのμOC1212Cは入手できず。 他には売っているお店は見つからず、 これはいつかオークションサイトに出回ることを期待して気長に待つしかなさそうです。

    でもまあ、こんなものは単なるパワーアンプだよね。 同じDIP 8ピンのLM386N-3に置き換えちゃえばいいじゃないか。 386N-3では最大パワーが減ってしまいますが、 短波ポータブルなら500mWあればじゅうぶんです。

    でも、μPC1212CとLM386のピン配は全く違います。 置き換えるとしたらプリント基板のパターンカットとジャンパ配線が必要ですね。 7600Aの基板を眺め、データシートを眺め、どう置き換えるかを考えます。

    単なるアンプといっても、1212Cには内部でフィードバック抵抗がすでに入っているとか、 7600Aの特徴の一つである3段階トーンコントロールの機能を殺さずに入れ替えるとなると、 簡単にポンとはいきそうにありません。





    基板のパターンカットは行わず、 LM386をどこか別の場所に取り付け、 ジャンプワイヤーで配線を伸ばしてつなぐという方法はどうだろう。 その方法ならいつかμPC1212Cが入手できたときにはオリジナルに復旧することができます。

    LM386といくつかの周辺コンポーネントなら納められそうな場所がスピーカの上のあたりにあります。 ここに取りつけるのがよさそうだ。






LM386で鳴らす

    7600Aのボードからワイヤを引き出して小さなブレッドボードにつなぎ、 LM386N-3を試してみます。 LM386の最小構成 - 外付け部品なしのゲイン20倍構成 - で実用になりそうです。

    トーン切り替えのうちトレブル切り替えはアンプ入力のキャパシタシャント式なので、 アンプICが変わっても問題なく動作します。 でもバス切り替えはアンプのNFBを切り替える方式なので、 LM386では動作の程度が違ってくるはず。 ですが、まあまあ効いている感じで動作しています。 なにしろ追加部品ゼロでつなげられるのは助かります。 これでいいや。

    中央研究所にお兄ちゃんが来たと聞いて、 ICR-4800が第3研究所から帰ってきました。 けれどお兄ちゃんは分解され、 中身むき出しでテストを受けているところ。 4800は心配そうに見守っています。


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ボリュームコントロール修復を再度試みる

    ボリュームコントロール、 幣ラボ初の工法を試みました。 導電接着剤つき銅箔テープ。 そこそこ、といった程度にはボリューム調整機能は復活しましたが、 やはり完ぺきとはいきませんでした。 うう。

    固定抵抗を1つ追加し、 無音に絞ることはできないけれど接触不良の影響を受けにくく確実に音が出るようにしました。 フロントパネルのボリューム調整スライダが全く効かないのよりはずっとマシです。






AIチャットのアドバイス

    μPC1212Cの代替検討をAIチャットに訪ねてみたところ、 類似品としてμPC1213Cというのがあって使えるはずだから検討してみてはと言ってきました。 データシートをみて見ると1212Cの動作電圧違い品のようで、 ピン配は同一。 おお、これはありがたいアドバイス。

    1213Cは別の電子部品ショップに在庫がありました。 当初買おうとした1212Cの8倍近いプレミア価格がついていましたが、 入手できるだけ幸せと思い発注。

    1213Cは翌々日に届きました。





    基板にパターンカットを入れずにおいてよかった! 仮配線を撤去し、1213Cを取りつけ。 ICF-7600Aは自分自身のパワーアンプでスピーカを鳴らせるようになりました。

    動画中のテスト音源はxi-on~彩音~さんのアルバム"Eyes"からトラック9 「封じられた妖怪 ~ Lost Place」(原曲:「封じられた妖怪 ~ Lost Place」)。



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イヤホンジャックを改造

    ICF-7600Aのイヤホンジャックには47Ωが入っているので、 スピーカをつなぐと小さな音しか出ません。 自分がこのラジオを使うときはたいてい外部スピーカを使うだろうから、 ジャックボード上でR70 47Ωをはんだショートして外部スピーカをつなげられるようにしました。

    もしイヤホンを使うことがあるならボリュームを絞ればOK・・・ じゃないや、ボリュームコントロールはいまや音をあまり小さくは絞れなくなっちゃってるんだった。 気に食わないならはんだジャンプを取り除いてね、自分。

2026-04-14 イヤホンジャック改造






IFアライメント

    ICF-7600AのFM 10.7MHz中間周波とAM 455kHz中間周波のアライメントは、 メインボードが単独で取り出されている状態でないと実施できません。 なので、調整を行いました。

    AM455kHzはよく調整が取れていて変更不要。 FM10.7MHzはIFT F-2がずれていました。 シグナルジェネレータから10.7MHzを入れて、 中間周波増幅・検波ICのFM周波数弁別器出力電圧がサービスマニュアルの指示どおり1.75Vになるように調整しました。






ダイヤルアライメント

    メインボードをセンターシャシーに組み戻しました。 心配だったバーアンテナの配線復旧とダブルギアの取付もどうにかうまくいきました。 取り外し時にダイヤルコードが外れないようにマスキングテープで固定しておいたので、 ダイヤルコードかけ直しはせずに済みました。

    さあて、短波ダイヤルの調整をしようか。





    短波各バンドでのダイヤル指示と実際の受信周波数を調べてみると、 どのバンドでもほぼ30kHz、ダイヤル指示よりも実際の受信周波数のほうが低くなっています。 ということは、ダイヤル位置で決定される第2局部発振器の調整を取り直せばいいわけですね。

    ICF-7600Aの第2周波数変換はロワーサイド・インジェクション方式。 第2局発周波数が下がると受信周波数は高くなります。

    ダイヤル指針位置がいちばん低いときに約10.46MHzを、 ダイヤル指針位置がいちばん高いときに約10.07MHzを発振します。





    調整は、ダイヤル上端での周波数を局発コイルL19で調整し、 ダイヤル下端での周波数ををバリコン内蔵トリマで合わせます。 この作業を行うためには、ダイヤル盤を取り外し、 バンドインジケータシリンダを取り外す必要があります。 一度やり方のコツを掴んでしまえば簡単、 だけれどダイヤル盤もインジケータシリンダも壊れやすい部品なので、 緊張しながら慎重に作業を行います。

    第2局発の漏れをピックアップワイヤで拾い、 IC-706Mk2GMで受信して周波数を測りながら、 全体的に30kHzほど下げる調整をしました。





    結果、各バンドでダイヤル下端での周波数読みはほぼドンピシャ、 ダイヤル上端では目盛よりも実際の受信周波数が10kHz低くなるあたりに調整できました。

    これは15.460MHzのReach Beyondを確実に受信できるようにするための意図的な調整。 調整後、19mbでのダイヤル上端受信周波数は15.468kHzです。






チャープテスト

    ICF-7600AはBFOは持っていないし国際放送バンドしか受信できませんから、 SSB/CWあるいはファクシミリやFT8を受信する性能がなくても全く困りませんけれど、 安定性のよさそうな第2局発がどの程度安定しているのか確認してみます。

    右の動画はICF-7600Aの第2局部発信周波数の漏れ信号を外部のSSB受信機 (実際にはIC-706Mk2GM) で受信して、 局発周波数の変化を受信音のピッチとして見られるようにしてみたもの。 アンテナ信号なし と 強信号入力とで、 第2局発の周波数は30Hzほど変化しています。

    これなら国際短波放送を受信するには全く問題になりません。 CWやFT8を受信するならもうひとまわり安定してほしいところですが、 発信周波数の不安定な変化もなく、 安定性はICF-5900よりも良い、といえそうです。

    ICF-7600Aの第2局発はハートレー発振回路で、 バッファは持っていません。 第2混合はFETを使用したソースLO注入型。 ICF-7600Aには安定化電源回路は内蔵されておらずバッファも持っていないことを考えると、 シンプルなのにも関わらずとても良好な成績を出せているといえます。

2026-04-16 チャープテスト



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7600A復活

    組み戻し作業。 ダイヤル盤を取り付けてからバンドインジケータシリンダを組み戻そうとして・・・ あ、シリンダを先に組付けないとダメみたい。 もう一度やり直し。 バンドインジケータシリンダを正しい回転角に取りつけるのはコツが必要で 何べんもトライしましたが、 どうにかうまく組付けられました。

    スピーカグリルのパーフォレーションを通して白茶けて退色したコーンが見える状態ったので、 黒色スプレーを吹いておきました。 スピーカコーンエッジの補強は、いまはいいや、どうせこの先内蔵スピーカで鳴らす時間は長くないだろうから。 スピーカの塗料が乾燥するのを待って、フロントパネルとリアパネルを組付け。





    「通電せず」とタグが貼られてショップの棚の奥で隠れるようにめそめそ泣いていたICF-7600Aが復活しました! 各バンドとも動作は安定、感度・選択度・安定性・音質すべて良好です。

    ボリュームコントロールは完全には修理できず音量を無音まで絞ることができません。 いつの日にか代替部品が入手あるいは代替手段が思いつくといいなあ。

    テスト音源は彩音~xi-on~さんのアルバム "Groovy Moon"からトラック1、 「宇宙巫女現る」(原曲:「宇宙巫女現る」)。



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    今回実機をショップのジャンクコーナーで手にするまでICF-7600Aのことは知らなかったわけですが、 発売年は1982年とのこと。 私が 初の北海道ツアー に向けて秋葉原で ICR-4800 を買ったとき、 店頭で4800と7600Aは並んでいたのでしょう。 野宿ツーリングに適した小型機を探していたのでひとまわり大きな7600Aは気にも留めなかったのだと思います。

    復活したICF-7600Aと、1982年以来44年連れ添ってくれたICR-4800とで共演。 あれ? 2台でスピーカの位相が反対になってるな。 並べて聞くと音場がワイドに拡がって、短波の国際放送を不思議なプレゼンスで聴くことができます。

2026-04-17 ICF-7600A 修理完了






忘れてた

    後片付けしていて、あ! これを付け戻すのを忘れていた。 μPC1212Cの1ピンと2ピンの間に入れられた小さなセラミックキャパシタ。

    このキャパシタはICのピンに共刺しになっています。 この実装ができるように、 プリント基板のピン1とピン2のドリルホールはほかのピンよりも一回り大きな穴があけられています。 プリント基板の出図後に追加の必要性に気がついたのか、 可能な限り配線長を短くしたかったのか、 実装密度を少しでも上げたかったのか、 それとも狭い基板面積に回路を押し込むためにとった策なのか。

    電気的には最良の実装かもしれませんが、 秋田・小坂の人々は苦労させられたでしょうね。 オーディオパワーアンプ部はバンドセレクタスイッチの裏にあり、 部品実装高さ制約が厳しいところ。 この部分、電解キャパシタはリードを長く取り、隙間に収まるように無理矢理押し込められています。 明らかに実装は手作業で、 このラジオの製造コストは安くはなかったのだろうと思います。 当時のソニーらしい面です。





    μPC1212Cの2ピンは入力位相補償で、このキャパシタはそのためのもの。 これがなくても動作しますし、 μPC1212Cのデータシートの参考回路ではピン2はオープンのまま使われています。 実際にICF-7600A実機では何の問題も感じられません。 普通の使用では問題ないけれど特殊な動作環境で問題になってくる何かがあるかな? たとえばEMI耐性が不足するとか。





    現在の使い方では必要性が感じられない小さな部品を取りつけるためにまたケース開けてメインボード取り外してμPC1212Cを取り付けなおすだなんてめんどくさすぎるよなあ。 もうこのままでいいよ。

    けどまって。 基板の半田面に付ければいいんじゃん。 それなら簡単、リアカバーを開けて、ちょちょいっと。 これでよし。

    まあこれで、ソニーらしい見どころが一つなくなってしまいましたね。

2026-04-18 位相補償キャパシタ取り付け






興味深い進化

    本機の入手直後にサービスマニュアルが手に入りましたので、 今回も例によって回路図の写経をしながら作業を行いました。 む、なかなかに興味深い受信機です。

    第1局発が水晶発振、第1中間周波は帯域フィルタ、 第2局発がVFOで第2中間周波で選択度確保というのがコリンズ式ダブルスーパーヘテロダインだとすれば、 ICF-7600Aはコリンズ式といえますね。 いっぽうでコリンズ式は第2中間周波段でメインダイヤルに連動した同調回路を配置して、 第1中間周波帯域の近接信号を除去しようとします。 ところがICF-7600Aでは、ICF-5900と同様に、 第2中間周波の同調回路を潔く放棄してしまっています。 第1中間周波帯域中の強烈な信号で第2変換が飽和してしまうというICF-5900の欠点はそのまま引き継いでいます。

    スカイセンサー5900は短波高周波増幅段を持っていませんでしたが7600Aではカスコード高周波増幅段を持っています。 しかしそこには同調回路はなく、各バンド用の簡単なフィルタがあるだけ。 高周波増幅の出力はこれまた同調回路なしに第1混合に入ります。

    ICF-7600Aの第1周波数変換はアッパーサイドインジェクションで、 受信しようとするバンドの中心周波数よりも10.7MHz高い周波数を水晶発振しています。

    25メーターバンド受信時の第1局発周波数は22.537MHz。 12.000MHzにダイヤルを合わせているとき、33.076MHzの信号がイメージとして受信されてしまいます。 けれどそのあたりには強い信号はないので実用上問題になりません。

    結局ICF-7600Aの短波受信回路には同調回路はどこにもない、 ということになります。 帯域外信号除去と選択度はすべて第1・第2中間周波数のフィルタに頼っています。

    つまり短波ではダイヤルは単に第2局発の周波数を変化させているだけ。 バリコンは単連で使われています。 あまりにもシンプルな構成! でもそのおかげで、バンド切り替え機構はとてもシンプル。 第1局発の水晶発振子とアンテナ入力のフィルタを切り替えているだけです。





    ICF-7600A内部には電源バスとして 共通 / AMのみ / FMのみ / MWのみ / SWのみの5系統があります。 フロントパネルのSW-MW-FMのスイッチは、これら電源バスのON-OFFを切り替えています。 例外的にSWのときだけオーディオゲインを高める接点がありますが、 信号ラインや高周波回路の切り替えは一切行っていません。

    この構成のため、バンドセレクタスイッチの接点数は少なく、 接点には数mAの電流が流れて自己クリーニング効果が期待できますし、 低インピーダンス回路なので接触不良の影響も小さく、 配線もシンプルだし、ワイヤリング経路に気を使わなくてもよくなります。

    この構成なら動作も安定になるし装置をコンパクトにできます。 カタログの宣伝文句にはならない改善ですが、 70年代のマルチバンドポータブルに比べるとものすごい進化だと思います。

    これらはすべて、 国際派ビジネスマンのためにICF-5900の受信性能を気軽にスーツケースに放り込めるようにするためだと見れば、 ICF-7600Aはとても合理的に考えられたトラベルレシーバだと言えるのではないでしょうか。

    旅行先で短波の国際放送を聴きたいという願いをトランクサイズに実現したのがゼニスのトランスオーシャニック、 そのコンセプトをフォローしたソニー・ワールドゾーン、 ワールドゾーンをよりコンパクトなショルダーポータブルにしたスカイセンサー、 スカイセンサ―をスーツケースに放り込めるサイズにしたのが7600シリーズ、 ということなのでしょう。

    私はICR-4800を携えてあちこちの国に行きましたが、 このICF-7600Aはどうだったのでしょう。 いろんな国を飛び回ったのかな?

2026-04-19 ICF-7600A 整備完了






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