Receiver Design
Some self study notes in the radio receiver design and potential improvements
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スーパーヘテロダイン機の周波数変換管の定番として6BE6が定着するまでにもいろいろな形式の周波数変換管がありました。 |
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Outer-Grid Oscillator Injection / アウターグリッド・オシレータ・インジェクション マルチグリッド管をミキサとして使うとき、外側のグリッドに局部発振周波数を注入する方法です。 アウターグリッド・インジェクションでは例外なく発振セクションは混合セクションとは別(あるいは別の管)になっており、 そのために発振周波数の安定性が比較的良好で、 信号グリッドと発振回路の相互作用が少ないというメリットがあります。 信号グリッドと発振グリッドの間の望ましくない結合が少ないという利点を生かして、 短波帯では入力信号よりも局部発振周波数を高くとることによって感度の向上を図ることができます。 |
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Inner-Grid Oscillator Injection / インナーグリッド・オシレータ・インジェクション マルチグリッド管の内側のグリッドに局部発振周波数を注入する方式です。 6K8を除けば、コンバータ管は発振部と混合部でカソード電子ストリームを共有する形になっています。 一般的にインナーグリッド・インジェクションはアウターグリッド・インジェクションに比べて発振周波数の安定性に劣り、 信号グリッドと発振グリッドの不要な結合が大きくなります。 ただし新型管ではかなり改善されています。 ゲインが最大となる条件では信号グリッドの負荷は負ですが、信号グリッドのバイアスを増やすにつれてこの傾向は弱まり、 最終的には正になります。 中和を行わずに短波帯で最大のゲインを稼ぐためには、局部発振周波数は信号周波数よりも低い側に設定するべきです。 |
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6A8 6A8は周波数変換用の7極管、いわゆるペンタグリッド・コンバータです。 第1グリッドが発振グリッドで、インナーグリッド・インジェクションで動作します。 第1グリッドの外側に発振アノードがありますが、これはグリッド巻線を持たない単なる2本の棒です。 6A8にはサプレッサグリッドがありません。 このため6A8のプレート抵抗は典型的な動作条件のときに0.36MΩと低くなっていますが、 変換相互トランスコンダクタンスは550マイクロモーあり、実用性のある変換ゲインが得られます。 6A8-Gを高インピーダンスの中間周波トランスで使うと、中波帯の低い周波数において、 比較的大きなグリッド-プレート間容量 (0.26μμF)を通じてプレートからグリッドへのフィードバックが発生し、 グリッドの負荷が高まります。 この現象は通常はあまり気になりませんが、 6AG8-Gをバリコンの信号セクションに隣り合わせに配置すると、 6A8のプレートとバリコンのステータ間の容量のために現象が強まります。 この現象はアンテナコイルのゲインが低いかのように見えるだけなので、真の問題点に気づかないことがあります。 この問題は何も6A8に限ったことではないのですが、最初からグリッド-プレート間容量が大きな6A8では特に発生しやすくなっています。 この問題は真空管にシールドを被せることによって低減することができます、 第2グリッド (発振アノード) に流れる電流の一部は、グリッド1と3を通り過ぎたもののグリッド4によって弾き返され、 第3グリッドを通って第2グリッドまで戻ってきたものです、 この特性により、6A8の発振部の動作は第2・第3・第4グリッドの電圧に大きく影響されます。 また6A8では短波帯に使用するときはAGCをかけることは禁物です。 6A8の第2グリッド(発振アノード)の電圧はでカップリングを十分に行い、他と共用せずに整流回路から直接取り、 専用の電解キャパシタを入れる等の工夫が必要です。 また安定動作させるためには第2グリッド(発振アノード)の電圧はスクリーン電圧よりも高くしておく必要があります、 中和を行わずに短波帯で最大のゲインを稼ぐためには、局部発振周波数は信号周波数よりも低い側に設定するべきです。 |
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6L7 6L7は1935年(*)に上市されたトップグリッドのメタル管で、ミキサ専用の7極管です。 この管は信号グリッドと発振グリッドのアイソレーションを高めることを第一義に開発されました。 高周波入力信号は第1グリッドに、 別の管で発振した局部発振周波を第3グリッドに入れ、 アウターグリッド・インジェクションで使用します。 第2グリッド(スクリーングリッド)をキャパシタで高周波的に接地することにより、 発振グリッドと信号グリッドの不要結合を効果的に遮断することができます。 6L7はサプレッサグリッドを持っており、 これらの電極配置のため6L7の動作は5極管のそれに近くなっています。 6L7は信号と局発の相互作用とロックイン傾向が無視できるほど小さくなっています。 このためデビュー直後は短波用の混号管として広く使われていました。 その後真空管1本で済むコンバータ管の性能が向上してきたために、別に発振管を必要とする6L7は消えていきました。 * 1936年に上市と記載された資料がありますが、QST誌の1935年11月号ではすでに6L7を使った製作記事が掲載されています。 |
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6K8 6K8はトップグリッドのメタル管であり、特殊構造を持った周波数変換用の3極・6極複合管です。 先行するペンタグリッドコンバータ管6A8に対して短波帯の安定性の改善を狙ったものとして開発されました。 6K8のデビューはQST誌1938年04月号p098の"New Receiving Tube"でアマチュアに紹介されています。 QST誌1938年08月号では6K8を使った3球のポータブルスーパーヘテロダイン受信機の製作記事が紹介されており、 製作者のW1DFは周波数変換段に6K8を選んだ理由について「それまでの管に比べて大幅に改善しているから」と述べられています。 6K8は発振部の相互コンダクタンスが高められており、 また低い発振振幅で動作します。 プレート抵抗は0.6MΩと高いのにもかかわらず 変換相互コンダクタンスは350マイクロモーと低く、6A8-Gに比べて変換ゲインは落ちます。 6K8の電極配置の模式図を右に示します。 カソードは3極管部・6極管部に共通ですが、プレートは独立しています。 図においてカソードから左側が3極管として、カソードから右側が6極管として動作します。 6K8では、3極管部で局部発振回路を構成し、 6極管部で周波数混合動作を行います。 このとき局部発振管のグリッドは周波数混号管の第1グリッドでもあるので、 カソードから右側に放出された電子流は左側に向かうものと同じ局部発振周波数で変動します。 この周期的に変化する電子流をさらに第3グリッドの入力信号で変調することにより、 右側のプレートからは局部発振周波数と入力信号周波数が混合された信号が得られます。 つまり混合側はインナーグリッド・インジェクションとして動作しています。 グラウンド電位に置かれた静電シールドの働きにより発振グリッドと信号グリッドの間の静電容量はほぼなく、 また発振グリッドと信号グリッドの間にはスクリーングリッドが入っているため、発振グリッドと信号グリッド間の不要な結合が低減されています。 6K8にはサプレッサグリッドはないので、混合側プレートからの2次電子放出による悪影響を避けるため、スクリーン電圧は低く抑えておかねばなりません。 6K8ではカソードから左側の局部周波数発振回路の電子流は信号グリッドの影響を受けないため信号グリッドに加えたAGC電圧に対する局部発振周波数変動が低減でき、 短波帯でもAGCを使えるようになりました。 ただし短波帯でのAGCに対する周波数安定性はいまだ満足できるものではありません。 6K8のベースピン配置はすでに普及していた6A8ペンタグリッドコンバータ管と同じにされており、6A8用に設計された受信機に改造不要で差し替えて使うことができます。 わがラボの受信機では、 Hallicrafters S-20R (1939) に6K8が、 Echophone EC-1 (1941) にヒータ12V仕様の12K8が使われています。 S-20Rでは短波帯での周波数安定性を維持するために6K8はAGC制御なしで使われています。 |
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フラッタ
周波数変換段の動作不安定により発生するフラッタの原因には、つぎの二つがあります。 オーディオ出力に応じてコンバータのB電圧が変化し、局部発振周波数が変動してしまうため。 局部発振周波数がB電圧に敏感に反応してしまう場合に起きます。 信号が受信されてオーディオ出力が高まると、受信機の消費電力が増えて電源回路の負荷が高まり、したがってB電源電圧が低下します。 B電源電圧が変化して局部発振周波数が変化すると、受信音が小さくなり、B電源電圧が元に戻り、局発周波数か元に戻り…を繰り返します。 この問題は、オーディオ出力管のB電源取り出しとは異なる部分から局部発振器のB電源を取り出すことによって解消される可能性があります。 整流管のフィラメントまたはカソードから取り出して、20kΩと8μFからなるデカップリングフィルタを用いれば、十分なアイソレーションが確保できます。 AGC電圧に応じて局部発振周波数が変動してしまうため。 信号が受信されるとAGC電圧が変化し、それによって局部発振周波数が変化してしまい、受信強度が下がり、AGC電圧が元に戻り…を繰り返します。 この問題の解決は、RF信号入力グリッドへのAGC電圧印加をやめて、固定バイアスにすることがもっとも簡単です。 Translated and digested from "Electronic Fundamentals, Theory Lesson 31, 31-7 Converter Troubles" |
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受信機の音質というと低周波段と検波段にのみ注意しがちですが、中間周波段によって復調音声に高調波歪が発生するということも知っておくべきです。
gm-eg特性がカーブを描く真空管が使われている電圧増幅段に変調された搬送波電圧が加えられた場合、
変調度は増します。
このモジュレーション・ライズは音声周波数帯域での高調波歪(非直線歪)、主として2次の高調波歪をもたらします。
ほとんどのモジュレーション・ライズは最終の中間周波増幅段で発生し、
20%のモジュレーション・ライズはおよそ5%の2次高調波歪に相当します。
リモートカットオフ管が使われる場合であっても固定バイアスで使われていればモジュレーション・ライズはとても小さいのですが、
それでもシャープカットオフ管を使う効果はみられます。
AGC電圧の一部だけを中間周波増幅段にかけるようにすればモジュレーション・ライズを低減することができますが、
受信のコストアップをもたらします。
別の方法として、B電圧からシリーズ・ドロップ抵抗を介してスクリーン電圧を供給することによってかなりの改善が得られます。 この方法は高周波1段・中間周波1段の受信機の場合に推奨されます。 モジュレーション・ライズは 最終の中間周波増幅管のグリッドからAVCダイオードまでのゲインを増大させることによって低減できる場合があります。 前段のスクリーン電圧を落としてAGCに対する応答性を改善する(より低い電圧でカットオフするようになる)ことによってモジュレーション・ライズの低減を助けることができますが、 反面近くに大電力局があるといった場合の混変調特性の劣化を招いてしまう可能性が高まります。 [Translated from Radiotron Designers Handbook 4th Edition, Chapter 27 Section 3 (ix) Modulation Rise] ラボにある受信機で中間周波増幅段を複数持つものについて、AGC制御対象段がどうなっているかを調べてみると、
最終の中間周波増幅段はAGCを掛けない、というのは必ずしも定番にはなっていないようすです。 HA-230で最終の中間周波増幅段を固定バイアスにしているのは、 その管のカソード電圧を基準にして前段管のカソード電圧との差を測るというSメータ回路のためだ、とも言えそうですし。 ともあれオーバーロードを防ぐためにも最終の中間周波増幅管のバイアスの深さと信号レベルの関係は留意しておくべきで、 モジュレーション・ライズは音質改善のために気に留めておくべき設計ポイントであることは間違いないでしょう。 |
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