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Radio Restoration Projects

Yupiteru 50-H5
Hands-Free Communicator



これってアマチュア無線機?

    新婚旅行は箱根の温泉。 そして新婚旅行第2弾として、ヤマハの主催するオーストラリア ツーリング企画に参加しました。 マシンもホテルも手配すみで荷物は伴走する四輪が運んでくれるという超お気軽ツアーです。 ヨメは一生のお荷物としてタンデムシートに乗せることにします。

    このツアーの準備のために川越のデパートで買い物をしていて、この小型トランシーバを見つけました。 ヘッドセットはヘルメットに簡単に取り付けられるよう工夫されているし、 VOX機能もあるし、ハンドルグリップから操作できるリモートPTTスイッチも付属しています。 このトランシーバがあれば、ブリスベンからシドニーまでの3日間はいっそう楽しいものになるでしょう。 でも待てよ、免許はどうする?

    しかし送信出力10mWで短いホイップアンテナというこのトランシーバは、周波数帯こそアマチュアバンドですが、 どう考えても微小電力のワイヤレスマイクにしか思えません。 なにしろ受信時のほうが送信時よりも消費電力が大きいのですから!
   
Hands-Free Communicator

    本機はまさにHands-Free Communicatorという呼び方がぴったりきます。 この時代にはすでに十分に小さい430MHz帯FMトランシーバがありましたから、 50-H5はその機能からしてとりたてて小さく軽いというわけではありません。 単3電池4本が収容される本体にはスピーカやマイクはなく、 腰ベルトに装着されることを前提に考えられています。

    ケーブル直出しの専用ヘッドセットは片耳レシーバとブームマイク、それにピアノ線製のホイップ アンテナがついています。 本体のコントロールは、OFF/PTT/VOXのモードスイッチ、5チャネル切り替えのロータリースイッチ、 受信音量ボリュームとVOX感度ボリューム、それにPTTスイッチです。 専用の外部PTTスイッチ接続用コネクタと、ニッカド電池を使用した際に使える充電ジャックつき。 無線機の使用経験がなくとも、1分間のレクチャーだけで操作できるようになるでしょう。

    最初は古典的に5個のクリスタルを切り替えているのだろうと思いましたが、 そうではなくてれっきとしたPLLシンセサイザを使っています。 もっとも周波数設定は簡易化されていると見えて、表に示したように 53.500MHz以外の4チャネルのセンター周波数は半端なものです。


CHANNEL FREQUENCY
CH. A 53.4678MHz
CH. B 53.4839MHz
CH. C 53.5000MHz
CH. D 53.5161MHz
CH. E 53.5322MHz

受信機能障害

    このトランシーバはその後エンデューロレースやエコノパワー燃費競技などのモータースポーツ参加時にインターコムとして活躍しました。 もっとも通信可能距離はせいぜい500メートルで、出力を25mWのエクストラ ローに絞ったアイコムIC-T31にさえ遠く及ばないものでした。 お互いが離れすぎて通信できなくなったものの大きく腕を振った身振りで意思が通じたことさえあり、 大声を出すよりは便利、といったシロモノです。

    でもなにかにつけ便利に使え、シリコンバレー時代も帰国後も車に積みっぱなしでいつでも使えるようにしてありました。 が、2003年にテストしたときうまく通信できないことがわかり、修理仕掛かり品として第2研究所送りになっていました。

    2005年のJARL群馬支部大会のフレアマーケットで同一モデル50-H5のペアが安く売られていましたので、 少なくとも部品取りには使えるだろうと思い買っておきました。 ヘッドセット ケーブルに梱包材の発泡スチロールが付着するなど外観は私のユニットより劣りますが、 テストしてみると2台とも正常に動作。

    TS-600 の修理が完了して全機能正常となったので、 6mつながりということで今度は調子の悪い50-H5のペアを第2研究所から引っ張り出して調べてみました。 すると、一台のユニット、シリアルナンバー5004648の受信機能が時たま不能になる、ということがわかりました。 ショックを与えると回復することがあるので、接触不良の可能性が大です。 シリアル5004642の動作は正常でした。



内部構造

    最初はケースの開け方がわからず、ケースを壊す覚悟でいましたが、 実は背面のベルトクリップの下にネジが隠れているだけで、これに気づけばケースは簡単に開けられます。

    本機のすべてのコントロールとコンポーネントは一枚の片面基板に実装されています。 基板外への接続は、電池ボックスとアンテナつきヘッドセットのみ。 出力10mWとはいえ水晶PLL制御で、部品点数も少なくなく、 さすがにおもちゃのトランシーバとは一線を画す作り。 まあAM-FMトランジスタラジオと大差ない、とも言えますが。 ちなみに製造国は韓国です。

    もしみすぼらしい筐体の50-H5があったら、 小さなパワーアンプやSメータを追加して小型のデスクトップQRPモデルに仕立て上げると楽しいかもしれません。 もしそうしたら、次は51.000MHzのFMコールチャネルも使えるようにしたいと思いだすかも。 なにしろこのトランシーバは、知らない人からの電波を受信したことがただの一度もないのです。 そんなんじゃやっぱりアマチュア無線機とは呼べないよ・・・。



ウィグル・テスト

    この手の不調には、まずはいわゆるウィグル・テスト、 つまり内部部品をぐねぐね揺すったり、基板の一部に力を入れたりして様子を見るのが一番です。
    するとさほど経たずに、基板中央部の素子を揺すったり力を入れたりすると故障が発生したり回復したりすることがわかりました。 基板をよく見ると、半田が外れかかっている部分がみつかりました。

    接触不良箇所はこの一点だけではなさそうだったので、この近辺の半田付けポイントに一通り半田こてをあててみました。 結果、受信動作は完全に安定しました。 回路の動作原理など一切理解することなく、修理は完了。
    いったん直ってしまうとそれ以上回路を調べる元気が薄れてしまいます。 あーあ、せっかくPLL回路を学べるチャンスだと思ったのに。 いまや50-H5は手元に4台もあるんだから、どれか1つ壊れてくれないかなあ。




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Sep. 05, 2005 Solder crack discovered and fixed.
Sep. 12, 2005 Page created.
Oct. 09, 2005 Published.