ZENITH Model F510F Interior View |
ZENITH Model F510F
ごくありふれた真空管式テーブルトップAMラジオです。低価格・大量生産ラジオの見本みたいなものでしょう。
パステル・カラーのプラスティックボディとはめ込み式のボール紙製バックパネル、
減速機構なしのバリコン直結チューニング、
そしてテキストを見ているようなオールアメリカンMT管5球スーパーヘテロダイン構成。
それまでは我が家のガレージは単なるガレージだったのに、 フレア・マーケットでの売れ残りのこのラジオを1ドルで買ってからというもの昔のラジオ小僧が復活してしまいました。 ガレージにガラクタが増えていき、ガレージにいる時間のほうがリビングにいる時間よりも長くなるようになってしまいます。 さてこのラジオ、入手時は動作しませんでした。が、何のことはない電源ケーブルの断線。 手持ちのACケーブルを適当につなぎたして修理は完了。 シャーシをいったん取り出してプラスティック・ボディを洗剤で丸洗いし、 薄れてしまっていたペイント部分を簡単にシルバーの油性ペンでタッチアップしたらそれなりにきれいになりました。 これがガレージで唯一のラジオだったころ、 作業中はもっぱらこれでKCBSやKLIV(いずれもサンノゼローカルのニュース局)を聴いていました。 1年ほど使っていたら電源ハムが大きくなってしまったので、平滑用の電解コンを交換。 渡米直後は早くて聞き取れなかったニュースも、そのころにはかなり聞き取れるようになりました。 |
RCA Victor Model 56X : Front View RCA Victor Model 56X : Internal View |
RCA Victor Model 56X (1946)
リビングルームでヨメさん手作りクリスマスツリーに並んでいるのがRCA Victor Model 56X。
大戦直後のプラスチック ラジオの典型例といえます。
基本設計は木製ケースの大戦前のモデルと変わらず、
この時代に一般的であったメタル管とGT管構成のトランスレス・6球スーパーヘテロダインです。
周波数変換はペンタグリッド・コンバータではなく、局部発振が12J5GT、混合が12SG7で行われるセパレート構成。
電源スイッチ兼用ボリューム・コントロールつまみ、チューニングつまみ、それにもう一つのつまみは2段階のトーンコントロール。
落ち着いた色とデザインで、それゆえリビングルームにも置けます。
ケースやダイヤル盤には幸いにクラックなどはありませんが、表面はよく見ると曇りかけています。
ケース内側は非常にきれいなマーブル模様のままですので、適切な研磨剤で磨けばきれいになると思われます。
入手時は不動。 切れていた真空管を交換したところ、音量は小さいながらも鳴るようになりました。 回路図を書き起こしながらさらに調べてみると、初段低周波増幅管のプレート電圧が異常に低いことが判明。 原因は低周波バイパス用のマイカ・キャパシタがショート故障していたためでした。 交換すると、音量は実に豊かになりました。 ボリュームのガリがひどかったため後日これも新品に交換。 電源平滑の電解キャパシタは入手時すでに補修されていました。 トーンコントロールをソフトにセットすれば音は外観にふさわしく落ち着いたものになりますし、 ノーマルポジションならば高音もきれいです。 ただし、時折動作が発振気味になり感度が低下しますし、全体的な感度も今一つ。 周波数変換および中間周波増幅段の再チェックが必要なようです。 AGC回路のキャパシタ劣化によるフィードバック異常がもっとも怪しまれるところです。 |
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General Electric Model 408 AM-FM Radio
リビングルームに置いてあるもうひとつのプラスチックラジオがこれ。
初期のAM-FMラジオです。
初期、とはいっても現在と同じ周波数帯が使用されるようになってからのもの。
米国での本当の初期のFMはもっと低い周波数で放送されていました。
クラシカルな雰囲気の茶色のケースと、
1950年代のアメ車的なダイキャスト製リムを持つ大型ダイヤルの組み合わせが一風変わっています。
ダイヤルは大きなランプで照らされ、
暗めの室内ではとてもきらびやか
です。
ダイキャスト・リムで隠されているものの、
大きなランプの熱のためダイヤルの透明プラスティックの一部は融けてしまっています。
フレア・マーケットでの値札は20ドル、不動。 外観に大きな問題はないので、まあいいでしょう。 調べてみると、使われている 7本の真空管 のうち3本はすでにヒータ断線。 トランスレス方式ですから、3本同時に切れることはまずありえません。 正常な真空管が抜かれて転用され、切れた真空管を差し込んでおいたのでしょう。 ハルテッド・スペシャルティ とインターネットでみつけたショップで真空管を手に入れて使ってみると、ラジオは正常に動作し始めました。 電源ケーブルは風化がひどかったため、新品に交換。 ただしオリジナル品は3線タイプで、3本目の線がFM受信用のリードアンテナとして用いられていました。 FMの受信感度はさすがに今一つで、1メートル程度のワイヤーアンテナでは数局程度しか聞こえません。 が、動作自体は安定しています。音質もAMよりすぐれていますが、高音はかなり押さえられた感じです。 底面の型番シールは肝心な部分が破れていて形式不詳だったのですが、何回か回路図を頼んだことのある Radio Relics社のDennis氏 に写真を送って調べてもらったらGeneral Electric Model 408 と判明、回路図も手に入りました。 使用真空管は次のとおりです。電源整流は放熱板を持つセレン整流器を使用しています。 セレン整流器は古くなると劣化がかなりあるようですが、このラジオでは現在のところ大丈夫そう。
日本と米国ではFM放送の周波数帯が異なるので、日本でこのラジオが使えないのはとても残念。 仕方ないので、小型FM送信機を併用することにしましょう。 |
内部写真 キャビネット底面に残っているラベル |
大森製作所 國民二號受信機A型
親父が若い頃組み立てたという真空管ラジオ。
ブーンという音と、真空管の薄緑色のグローの神秘的な光に見入るうちに、子供の私はエレクトロニクスの世界に入っていったのでした。
そのラジオは、おそらく他の大勢の子供がしたように、バラバラに分解してしまってもうありません。
ここにある国民2号受信機は、今から30年以上前に町の粗大ゴミ収集所から拾ってきたものです。 大森製作所によるメーカー完成機ですが、親父のラジオとほぼ似た構成。そのとき通電テストし、かすかにNHK第2が聞こえました。 修理が必要なのは明らかでしたが、小学生の当時どうしたら良いかもわからず、 そのうちきちんと直せるだけの技術を身につけたら手を出そうとそのまま保管しておいたのです。 小中学生の頃の機材やパーツのほとんどは家を離れている間に捨てられてしまいましたが、 なぜかこの古ラジオだけは小屋の隅で埃まみれになりつつも残っていました。 本機は真空管を4本使った、いわゆる並4ラジオの典型です。 真空管構成は6C6-6D6-6ZP1-KX12F。 感度と分離を向上させるための再生検波で、 戦後GHQからスーパーヘテロダイン式への転換のため製造中止命令が出されるまで広く利用されていました。 木製キャビネットとマグネチック・スピーカ、ST型真空管のラジオは当時の日本の工業水準を如実に示すものであり、 1930年代にはプラスティック・キャビネットとスーパーヘテロダインの低価格大量生産時代になっていたアメリカにくらべて その差はあまりにも大きなものです。 30年前にチェックしたときの故障がそのままの状態であれば、 原因はおおかたペーパーキャパシタのパンクかなにかだろうと思われます。 回路は簡単ですから、聞こえるようにするだけならどうでもなるでしょう。 レストアとしては、失われているつまみとダイヤル目盛り盤をどうするかが問題。 で、結局このラジオは自分では手を入れず、この時代のラジオのコレクターである鈴木氏にゆずることにしました。 鈴木氏は1999年夏、この時代のラジオを多数あつめた展示を群馬県下仁田町で開かれました。 木工が専門の同氏なら、ほぼ原形を保っているキャビネットもきれいに仕上げ直してもらえるでしょう。 |