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Radio Restoration Projects

Design GO KK-939B
Shortwave Receiver

[With brief English translation]

    Although I have no particular station or program I cannot miss, a pocket shortwave receiver is always my travel companion.
    One time I forgot to bring my ICR-4800 nor IC-T90, the nights only to zap the TV channels were boring. While waiting the international connecting flight at Zurich airport, I found this small, clean designed radio at low price, so I purchased as a souvenir for myself.

    I've been reluctant to buy a low-priced recent model for my primary portable, as the most of them has tasteless, cheap and flashy looking. This model, however, has a chic color and modern appearance. It has a digital readout and a built-in clock, so it would work as a morning alarm too. Should be a nice companion for traveling overseas, replacing my Sony ICR-4800.


旅の友

    とりたてて聴きたい番組があるわけではないものの、海外出張時はポケット短波ラジオをスーツケースに入れてゆきます。 あるときICR-4800もIC-T90も持たずにヨーロッパ出張に行ってみたら、なんとなく寂しい感じ。 帰りの乗り継ぎフライト待ちのチューリッヒ空港で、29ユーロで売られているこのラジオを見つけ、 自分へのお土産として買いました。

    最近のアジア諸国製低価格短波ラジオはどれも一見して安物とわかる物真似デザインで、 とても愛用したい代物ではありませんでした。 このモデルもオリジナルはそういったけばけばしく貧乏な色使いなのですが、 ヨーロッパの主要空港で売られているこのバージョンは上品な色使いです。 ちょっと厚めのほぼカセットサイズ、周波数カウンタ式のデジタルリードアウト、アラーム機能つきのデジタル時計内蔵、 もちろんFMも聞けるので、ICR-4800後継機としての要件を満たしています。

    ところがこのラジオとの2回目のヨーロッパ出張の初日、感度が突然低下する現象が発生しました。 ケースを指で押すと一瞬治ったりするので接触不良だと思われましたが、 最近の空港の保安の関係でツールらしきものを全く持っていなかったため、 残りのほぼ1週間はこのラジオを使うことができませんでした。

    帰国後すぐ時差ボケ調整のためにとった休日を使って、さっそく調べることにしました。 このラジオの背面には机の上で傾けて置くためのポップアップスタンドがあり、 その裏に出荷検査合格証の小さなシールが貼ってあります。 そのシールに隠されたネジを緩めて、ロッドアンテナ取り付けネジを緩め、側面のトーンコントロールスライドを外せば、 4箇所の爪でかみ合わされたリアカバーを開けることができます。



On the first day of the second trip to Europe for this radio, however, I found the radio's sensitivity dropped somewhat intermittently. Applying force to the rear cover by a finger sometimes brought the sensitivity back, so a mechanical problem such as a loose connection was suspected. Because of the recent airport security, I didn't have any tools whatsoever in my luggage. It was on the first night of the trip and the radio couldn't be used for the rest of the week.


たった2回目の出張で壊れた理由

    カバーを開けた状態で電池を入れ、ロッドアンテナへの配線を指で触ってみると、 ノイズは少なくて感度は低いまま。 そのままの状態でプラスチック調整棒を使って基板のあちこちをつついて力を入れてみると、 特定の場所でノイズ受信音が大きくなり、感度が復活することが分かりました。 じっとその部分を見てみると・・・基板のパターンが浮いています。 これだな。

    このラジオは現在(2005年06月)も製造・販売が続けられているようで、 今回もシャルル・ド・ゴールで売られているのを見ました。 製造元のウェブサイトには製品の特徴が掲載されていますが、 それによるとこのラジオは「先端のSMT技術を使っており信頼できる品質」とのこと。 しかし中身はどう見ても古典的な片面半田のリード実装。 たしかに真ん中にあるICは面実装のようですが、これを指してSMTと言っているのでしょうか? それとも・・・もしかしたらSMTとはSOLDERED MANUALLY and TAMPEREDとかの略かも!


Performing a wiggle test with a non-conductive tool, a location on the PCB with intermittent connection determinated. And pattern delaminations were visually confirmed.


修理完了

    これはたぶんトランジスタでしょう、パターンが浮いているのはひとつの部品から出ている3本の足すべてです。 この基板には手半田があちこちあります (すぐ脇のチップ抵抗など) が、この部分は半田槽で半田付けされた様子です。 すると、半田付け後にこのトランジスタの頭を結構強い力で押したためにパターン浮きとなったものと思われます。 工程品質は30年前の日本の3流下請け町工場並み、というところでしょうか。

    基板の部品面は見ていないのでこの部分がどのような機能なのか分かりませんが、 ロッドアンテナのすぐ近くで、もしかしたら高周波増幅段かもしれません。 高周波増幅段だとすると全く入力に同調回路がないので回路が安直すぎます。 一方で故障が発生しているときの感度の落ち方からして、 アンテナ直後の増幅段が一段動作しなくなっていたという説明は現象とよく符合します。

    ともあれ、2箇所のパターンを細いワイヤでジャンプしました。 写真に撮って見ると、私の手作業もみっともないですが、 基板のあちこちに残ったフラックスや半田カスが目立ちますね。 ロッドアンテナをつなぎ、ケースを閉じて修理は完了。 本来の高感度が戻りました。


Applying jump wires to the loose connections solved the problem. The sensitivity is revived, the radio operated solidly.

次のお出かけにも

    空港での販売価格が29ユーロという低価格機ですから、 短波受信機としての本格的な性能を求めるのは酷というものでしょう。 国際放送帯を8つのバンドでスプレッドしてはいるものの、同調はバリコン直結であり、 ごくわずかなダイヤルの動きでも周波数は10kHz近く動きます。 信号強度による局発の変動もあるようだし、選択度はなんとか使用に耐える、といった程度。 機械的には安定していますが、筐体上面のバンド切り替えスライドスイッチに触ると周波数が5kHz近く変動してしまいます。

    それでもデジタルリードアウトは使いやすいし、ホイップアンテナだけで感度は十分。 小さなスピーカなので豊かな低音は無理ですが、音量はたっぷりで、 高音をカットできるトーン切り替えもあいまってニュース番組なら文句なし。 電池の持ちも良好だし、電源が切れていても使えるダイヤル照明は時差ボケで目が覚めてしまった深夜に時間を見るのにも便利。
    欲を言わせてもらえば、30分ほどで切れるスリープタイマーと、ラジオ受信音に加えてもっと大きい音で鳴るアラーム音がほしいところ。 さらに日本でも使えるようにFMが78MHzから受信できれば日本国内お出かけ時の価値も増します。

    ICR-4800の後継機にはいいものを買いたいと思い続けてはおり、ICF-SW100Sがいちばん理想に近いのですが、 電池がわずか9時間しか持たない点など、いまひとつ決断できていません。 型番に含まれる余計で腹立たしい"SW"の文字がなければひょっとして買っちゃうかも知れないのですが・・・。 ソニーがもう一度イノベーティブなモデルを出すまで、 次のお出かけもこのラジオと行くことになりそうです。


No reduction mechanism in the dial - it requires very careful tuning, but the digital readout helps to tune in. High stability or selectivity cannot be expected in this low priced set, however, the performance is quite satisfying for listening a news program on shortwave in a hotel room. If it has a sleep timer and buzzer alarm, it will be more convenient for a jet-lagged traveller. Wider FM coverage of 76-108MHz will be necessary to be used in Japan.
Anyhow the fixing is completed, this radio will again be my travel companion.

再修理

    最近ドイチェヴェレがよく聞こえますよ、とドイツ語レッスンを受けていた職場の人にこのラジオを長期に貸しました。 ドイチェヴェレを聴いていたかはともかく、山奥の別荘のような住まいのその人はAMラジオはよく入らず、 それなりに短波放送を聴いていたようではあります。 で、ごめん、鳴らなくなっちゃった、ということで5年ぶりにKK-939Bが戻ってきました。 時計の表示は出るのだけれど電源スイッチを上げてもラジオが入らない、 最初はちょっと力を入れると鳴ることもあったけど最近はぜんぜんダメ、とのこと。 申し訳ないから新しいのを買って返すよ、と申し出られましたが、 いやいや、ポケット短波ラジオなら最近になって2台も追加で買っているので必要ありません、 むしろ研究ネタができたので歓迎ですよ。

    2013年正月休み終盤はラボでのんびり。 昨日100円ショップで買ってきた老眼用オーバーグラスの具合を見るために、 そうだ、Design Goを直そう。

    このページ前述の記述を参照してケースを開け、 電源スイッチのつくりを見ます。 乾電池コンパートメントのプラス側リード線はメインのプリント基板に入っています。 メインの基板とフロントパネル基板とは5芯のフラットケーブルと、2本の赤・黄のビニール線でつながっています。 メイン基板を外し、フロントパネル基板も外してさらに様子を見ます。 赤と黄色のビニール線は、メイン基板のAM用とFM用の局発コイル近くから取り出されていますから、 周波数カウンタが局発周波数を取り込むためのもののようです。
    電池からの線はメイン基板上でそのままフラットケーブルの真ん中の線に入り、フロントパネル基板に送られます。 電源電圧はフロントパネル基板に取り付けられたラジオ電源用スライドスイッチを通って、 フラットケーブルの5芯のうち1本でメイン基板に戻り、ラジオ電源として給電されます。 最初はスライドスイッチの接触不良だろうと思ったのですが、 ラジオ電源スイッチがONの状態でスライドスイッチの端子にはON時に電池電圧が出ています。 しかしフラットケーブルの真ん中以外の線には電圧は出ていません。 問題はフロントパネル側にありそうです。

    フラットケーブルのほかの線はすくなくともひとつはコモングラウンド。 あとの2本は、推測ですが、グラウンドに落とすと局発が動作を開始するとかいったタイプのバンド切り替え線でしょう。 このラジオはAM/FMの切り替えはフロントパネル基板に取り付けられたタクトスイッチで行っていますので。



KK-939B again experienced a problem - the radio did not power up even when the power switch was turned on. Examining the wiring and checking the voltages with circuit tester, the power switch itself was found to be okay; the connection somewhere on the front panel PCB was suspected.
    新しく買ってきたオーバーグラスタイプの100円老眼鏡は、ハヅキルーペより大きく見えるけれど、ピントが合う深度が狭くて、 頻繁にフリップアップしなくてはなりません。 まあ、こんなのでパーフェクトだったら70倍もの値段がするハヅキルーペが泣くもんな。 ハヅキルーペと100円オーバーグラスを交互に使って使い心地の違いを楽しみながら、 電源スイッチ周辺を観察します。

    フロントパネル基板もまた雑な製造で、SMT部品も手半田。 スライドスイッチのすぐ近くに米粒より小さなトランジスタ、Y2がひとつあります。 Y2はPNPタイプで、小さいながらコレクタ電流を1.5Aも流せます。 フロントパネル基板のコントローラがめざましアラームONでラジオを動作させるためのものでしょう。 トランジスタが導通すると、スライドスイッチをONしたのと同じになる仕組みです。
    なおこのラジオにはLCDパネル照明ボタンがあり、豆電球(LEDではない)を点灯させますが、 このランプは電源直結。 ラジオがOFFのときでもボタンを押せば点灯します。 夜にふと目が覚めたときに時間を見るのには便利ですね。

    フラックスなのか何なのか、フロントパネル基板表面にも付着物が多くて、なんとも汚らしい仕上がり。 無水アルコールと真鍮精密ブラシで汚れを取りながらさらに観察すると、うん、きっとこれだ。 スライドスイッチON側ターミナルの基板銅箔のデラミネーションが確認できました。 電源スイッチを操作する応力に耐え切れず剥離したのでしょう。 やはりこのラジオのプリント基板の品質はそうとう悪いようです。



Closer look using head-on magnifier discovered a PCB pattern delamination at the power switch. Again the delamination --- seems like the quality of the PCB used in this radio is just marginal.

    修理はまたまたジャンプワイヤ。 電子部品リードのきれっぱしでジャンプして、ラジオが動作開始。 よおし、直ったぞ。 2013年最初のラジオ修理はみごとに成功。 今回の修理はハヅキルーペもしくは100円オーバーグラス老眼鏡の助けなしにはできなかったでしょうね。

    このラジオのスピーカグリルは、職場の人に貸す前からわずかにへこんでいました。 当時はどうしてへこんだのだろう、大切に扱っているのに・・・と不思議だったのですが、 今回その理由がわかりました。 バリコン直結のダイヤルで短波のチューニングを取るときは非常にデリケートにチューニングつまみをまわさなくてはならず、 気づかぬうちにラジオ本体を持っている左手の親指に力が入ってしまいます。 で、その親指でグリルを押してしまう、というわけ。 ま、この先バリコン直結のアナログ短波ラジオなんてものは買わないだろうね。

    私が最初に渡米した頃はインターネット商用開放からそう経っておらず、ニュースビデオなど夢のまた夢、 ワールドワイドウェブで日本語ニュースを読むことすらままならぬ時代でした。 から、短波ラジオで聞くラジオ・ジャパンは本当にありがたかったです。 でも今はモバイルデバイスで国際ローミングサービスを受けながら、 いつでもどこでもニュースも電子メールも音楽もビデオも楽しめるようになりました。 ほとんどの観光客やビジネストラベラーにとってはもはや短波ラジオの必要性は完全になくなってしまいました。 SONYの新型を長い間期待し続けていますが、 もはや出てきそうにないなあ。 残念だ。


Adding a jump wire revived the radio.


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Copyright (C) NoobowSystems Lab. Tomioka, Japan 2005, 2013

Jul. 13, 2005 Created.
Jan. 06, 2013 Updated. PCB delamination at the power switch caused the radio not working. Fixed.
Mar. 05, 2013 Corrected an error.