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Radar Electronic Fundamentals Radar Electronic Fundamentals

War Department Technical Manual TM11-466
War Department 30 DECEMBER 1943
一般配布を禁ず

    「合衆国に仕えている者、または紛う事のない忠誠心をもち政府の業務に協力している者にのみ提供される。 軍の広報部により許可を得た場合を除き、一般大衆または報道関係者に提供してはならない。」 ・・・・この本は戦時下の米国政府により刊行された、レーダー技術の入門書。 あくまでも基礎技術の教育用テキストなので、レーダーの全回路などの情報はなく、この本だけでレーダーを作ったりするのは無理。 最高機密に属するものではありませんが、これとて相手方に渡れば技術の優位性を失う可能性がありますから、 配布制限がかかっていて不思議ではありません。 それにしても、政府主導でこういったテキストを用意して若い技術者を着実に育てていたのですから、 技術を軽視し精神力だけに頼ろうとする指導者に支配されていた国が太刀打ちできるはずはなかったのだろうと思います。

    体裁はソフトカバーの無線綴じで、紙質は薄っぺらくて粗末。 全459ページありますが、紙が薄いので本は分厚くはありません。 表紙と裏表紙には部内回覧を示すスタンプと、回覧先のスタンプが押されています。 少なくとも7人の人に回覧されたようですが、表紙はかなり手垢で汚れており、真剣に読まれたことを物語っています。

    本書は、基礎的なエレクトロニクスの知識を有することを前提に、 レーダーを構成する基礎電子技術を以下の通りひととおりカバーしています。
私にとっては、レーダーそのもののはいじらないとしても、 表示用オシロスコープ回路の説明は真空管式オシロスコープの保守に有効に活用できるでしょう。 一方、実際に使用されているレーダー装置の送受信周波数や送信出力、パルス周期、 あるいは実際の測的の仕組みなどの情報は一切記載されていません。

Section 1 Introduction to radar
    レーダーの基本原理と開発の歴史
Section 2 Review of electrical fundamentals
    直流・交流回路、電磁気、インダクタンスとキャパシタンス、共振回路
Section 3 Transient and nonsinusoidal waves
    キャパシタの充放電、RC時定数 ノコギリ波・矩形波
Section 4 Vacuum tubes and applications
    真空管の動作原理と種類
Section 5 Amplifier and oscillator circuits
    増幅回路、ビデオアンプ、位相反転回路、発振回路
Section 6 Power-supply circuits
    整流回路、安定化電源回路
Section 7 Special circuits
    微分・積分回路、クリッピングとリミッタ回路、フリップフロップ、マルチバイブレータ、ブロッキング発振器、計数回路
Section 8 Cathode-ray tube
    CRTの原理
Section 9 Cathode-ray oscilloscope circuits
    オシロスコープ回路
Section 10 Transmission lines
    伝送線、進行波と反射波、分布定数回路、バラン
Section 11 Wave guiides and cavity resonators
    導波管と空洞共振器
Section 12 U-h-f generators
    ドアノブ管、バルクハウゼン発振器、速度変調管、クライストロン、マグネトロン
Section 13 Antennas
    ダイポールアンテナ、指向性、フェーズドアレイ、ホーンアンテナ

レーダー開発の歴史

    冒頭のレーダー開発の歴史の記述は以下の通りです。

Section 1: Introduction to radar     4. HISTORICAL DEVELOPMENT

    史上初めての「電波エコー」のいくつかの観測のうちのひとつが、 1922年に合衆国で、海軍研究所のアルバート・H・タイラー博士により行われました。 タイラー博士は、送信機と受信機との間を通過した船舶が電波を送信機に向けて反射してきたのを観測したのです。
    1922年から1930年にかけてのテストにより、 この現象には煙や霧、あるいは暗闇の中で船舶を検出することができるという軍事的な価値があることが証明されました。 この先の技術開発は慎重に軍事機密として保護されました。 これと同時期に、カーネギー研究所のブレイト博士とトゥブ博士は、 地球大気上層の電離した層でのパルス電波反射についてレポートを発表しました。 これが後に航空機を検出する原理として応用されることになりました。 他の国においても同様の実験がそれぞれ独立して、かつ厳重な機密管理の下で行われました。
    1936年には合衆国陸軍は海岸線に利用するためのレーダー警報システムの開発を行いました。 1936年から1940年にかけてはパルス送信システムが開発されました。 1940年末にはレーダー機器の大量生産体制が整いつつありました。 1940年9月には、英国のレーダー技術はほとんど自軍に被害がないまま非常に多くの敵機を撃墜できるほどになりました。 1941年の初頭には、英国と米国の協力により国連は世界でもっとも優れたレーダーを保有することとなりました。
    しかし一方でわれわれの敵もまたレーダー開発に多大な努力を払ってきています。この事実は、 ドイツの戦艦ビスマルクのレーダー測的砲火によって、 英国の巡洋艦フッドが2回目の一斉射撃を行えないうちに撃沈させられたことによって明らかになりました。

    本書の冒頭ではまた、「レーダーは科学技術のなかでも最大級の偉大な発明であり、 他の多くの技術と同様に必要に迫られて--- 先の大戦で出現した航空機という攻撃兵器に対抗する必要のために---開発されたものである。」 とはっきり述べています。 その技術が平和利用にも存分に生かされているのは幸せなことですね・・・。

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Sep. 11, 2004 Puiblished.