マルコーニからポケットラジオまで それにしてもこの本はなにかの雑誌の付録のよう。 小さめのサイズでホチキス綴じ、わずか全32ページはすべてモノクロ。 でもこういった薄いけれど貴重な本があるのはうらやましくもあります。 日本の本は立派すぎるよね。 でもこの本の定価を調べると£2.95。 むむ、こりゃ高いなあ! で、これは英国のラジオの歴史を解説した本。 なにしろマルコーニは研究できる地を求めて英国に渡り、無線技術はそこで花開いたのですから、イギリス人がそれを誇りに思わないはずはありません。 著者のJonathan Hillはマルコーニの技術開発から1960年代までを10年ずつの章に分け、 技術開発、受信機のトレンドおよびラジオ放送とを足早に解説しています。 すべてのページにはその時代の代表的な受信機の写真が掲載されており、 そのデザインにはやはり英国の薫りが感じられます。 たいていはアメリカ製に比べ地味で落ち着いたデザインですが、1934年のEkcoの円形モデルなどは実に優美かつ機能的に思えます。 ラジオ放送はというと、BBCが独占状態にあった英国は内容的にはやはり保守的だったようです。 多くの受信機に長波受信機能があるのがヨーロッパの特徴でもあります。 英国のラジオ生産は日本製トランジスタモデルの襲来により1960年代にほぼ壊滅したようです。 今ではSonyもPanasonicももはや日本製ではないとはいえ、 日本でデザインされたラジオが世界中で使われている、というのは日本人として実に誇るべきことでしょう。 しかし日常生活に溶け込んだアートとしてラジオ受信機を見るとき、 各国のお国柄やムードが失われてしまったことは残念です。 今の日本のAV機器のデザインは、何10年たったあとも世界の人々から評価され続けるものでありうるでしょうか? |