夜遅く成田の安ホテルに着き、さあ缶ビールでも飲んで寝ようとベッドに寝転んでテレビをつけたら、
青空に伸びていく白く輝く飛行機雲。
ああ、きれいだなあ・・・それにしても太くて明るい飛行機雲だ、と思ったとたん、
その飛行機雲は突然いくつかに分かれました。
その直後、「スペースシャトル通信途絶える」のテロップが・・・。
まさか!!
本当に自分がそう叫んだか定かではありません・・・。それは明らかに飛行機雲ではありませんでした。
途絶したダウンリンク信号、他の地点からも寄せられ始めたいくつもに分かれた輝く飛行体の映像・・・
起きてしまったことはあまりにも明らかでした。
しかし一般市民が撮影したテキサス上空の映像がテレビで流され始めても、
ヒューストンではオービターに何が起きたかを正確には把握できていませんでした。
途絶した通信を回復するため、
そろそろフロリダ地上追跡センターのUHF通信範囲に入るはずのオービターを繰り返し呼び出し続けるCAPCOMの声があまりにも悲痛でした。
気がつくと、缶ビールはすっかりぬるくなってしまっていました。
アメリカ東部標準時間2003年02月01日08時59分32秒、STS-107オービター OV-102<コロンビア> からのテレメトリ信号が途絶。
09時16分の着陸予定時刻をすぎてまもなく、
NASAはスペースシャトル異常事態 ("Shuttle Contingency")を宣言。
チャレンジャー爆発事故後に制定された異常事態対策計画が発動され、10時30分、
あらかじめ決められていた手続きに基づき、
「国際宇宙ステーション・スペースシャトル事故調査委員会」が設置されました。
同日夕刻のテレカンファレンスで委員会は「コロンビア事故調査委員会」と改名することが提案され、
翌02月02日に正式発足しました。
この本は、コロンビア事故調査委員会がまとめた
最終報告書
を本の形にしたもの。
報告書は
委員会の公式ウェブサイト
で関連する資料を含めすべて無料で一般公開されていますので、
実はわざわざお金を出してこの本を買う必要はありません。
でもpdfよりもやはり本のほうが「読む」のにはいいし、
何よりこの報告書は一冊の本にするのがふさわしい内容です。
すなわち、単なる事実の羅列ではなく、シャトルの歴史、事故の事実列挙、事故の解析と直接原因の特定、
組織とプロセスで起きていたこと、最悪の事態を防げたかもしれなかったいくつかのチャンスがどのようにして失われていたか、
今後どうあるべきか・・・が、豊富な写真・図とともに明確に書かれています。
しかしなによりも感じるのは、この報告書が、ミスや失敗あるいは罪を犯した者や組織をただ責めるものではなく、
常に未来に前向きな姿勢が感じられるということ。
フライトをより安全なものにするためにどうすればいいのか、
7つの尊い命の犠牲を無駄にすることなく人類がさらなる未知への開拓を続けていくためにどうすればいいのか、
という壮大なテーマに挑んだ記録なのです。