NoobowSystems Lab.

Radio Restoration Projects

Sharp QT-C300
"SEGNO"

CD Radio Cassette Recorder
(1991)







ASTに惹かれて

    このラジカセは自分で新品で買ったものですが、実家への贈り物としてでした。 ごく普通にテープとラジオが聴ければよく、さりとて貧弱なものもなんだったので、 店頭陳列機で素性のよさそうな普及価格帯のもののなかから適当にチョイス。 AST - Active Servo Technologyの誇らしげなマークがついていたのが決定的な選択理由でした。 ASTには期待しましたが、しかし予想を超える迫力の重低音というわけではなく、 まあこんなものか、という感じ。 でもそれなりにバランスが取れていて、音楽を聴き込む用途でないなら十分でしょう。 購入後10年近くたってからはばあちゃんがカラオケテープの再生によく使っていたようですが、 その後テープが聞けなくなったとのこと。 ちょうど低価格なフツーのCDラジカセの中古機が手に入ったのでそちらにカラオケレッスンの座は譲り、QT-C300は引退。

    このラジカセは第3研究所の修理お楽しみネタにしようと思い、2010年12月の開設時に搬入、直後に分解まではしたのですが、その後長らくほったらかしでした。 で、3年8ヶ月たって作業再開。 作業ノートを取らずにここまで経つと、どういう状態だったか、取り外した部品はどこにしまっちゃったのか。 ベルトが切れていたのは明らかなんだけど。

    電源を入れて再確認すると、やはりテープはキャプスタンさえ回らず、 ラジオはAMもFMも不規則なガリガリ音がするだけ。 でも、あれ、CDは正常に動作します。 外されていたフロントパネルを仮組みして聞いてみると、 迫力の重低音とはいきませんが、結構いい音で鳴ってくれます。 ASTのご利益かな。 これはやはりテープドライブを直してやろう。

    最初はテープのPlayスイッチを入れてもまったく音がしないのでモータ不良かと思いましたが、 耳をメカに近づければ回転音がしていました。すごく静かなモータです。 モーターと左右のキャプスタンフライホイールをつなぐベルトはたぶん最初の分解時に除去したものとみえて取り付いていませんでした。 ベルトはもう一本使われていますが、こちらは張力は正常。このままで行きます。 フライホイールベルトは在庫品にちょうどいいものがありました。 掛けてみると、ヘッドユニットの持ち上げ動作やヘッドのリバース動作も含めて元気に動作するようになりました。 いいね。

    テープヘッド接続コネクタをつなぎ、テープを再生してみると、テープ速度はごく自然。 高音域はくぐもっていましたが、ヘッドをアルコールで清掃して回復。 ピンチローラーはひどく汚れていましたが、これもアルコールで綿棒を何本も使い清掃、きれいになりました。 右の写真は清掃途中での撮影。 これでテープは復活だな。

    ところが問題発生。 テープのA面再生が終わってB面にリバースすると、 ヘッドは正しく反転するものの、B面用キャプスタンとテイクアップリールの回転方向が反対なのです。 テープは2秒とたたずに巻き込まれ始め、うわあっ!! と叫んで停止ボタンを押しました。

    さてこれはどうしたものか。 モータの反転制御がうまく行っていないということなのか。 とすれば、制御ロジックからのモータ反転信号が出ていないとか、 モータ反転トランジスタ用のドライバトランジスタが故障しているとかかなあ? こりゃ難しそうだぞ。 で、今夜はここまで。

2014-09-08 キャプスタンベルト新品取り付け テープ動作開始 B面リバース動作が異常

    無力感を振り切って追い立てられるように一日仕事して、逃げるように帰ってきてほっと一息ついたら、ふわっとリバース動作異常の原因が思いつきました。 試してみると・・・一発で正常動作に!! なあんだ、制御ロジックやメカ状態検出センサやモータ駆動回路とかが悪かったわけではなくて、 単にフライホイール駆動ベルトの掛け方が間違っていただけでした。 このテープメカはモータから1本のベルトで左右のキャプスタンフライホイールを回しますが、それらがお互いに逆方向に回るように掛けなくてはならなかったのです。

2014-09-09 ベルト掛け直し 動作正常化

    ヘッドのアジマスは再調整してもそれ以上良くはならず、 でも高音域はラジカセのカセットテープから期待されるレベルで良好に鳴っています。 ワウフラッタは実用上気にならず、テープ走行もヘッドタッチも安定しています。 トーンコントロールをフラットにしてテープを再生し、 ヘッドフォンジャックから サンスイAU-7700 につなぎ、 貧乏ミニアンプ そしてJBL 4305Hで聴くと、他に手もなくただひたすら這い回った一日の疲れを慰めてくれるのに十分な音で鳴ってくれます。 2晩ほど動作させてメカはすべて正常・良好に動作しているから、今夜はちょっといいテープでアルバムを1枚楽しんで、おやすみなさい。







ラジオのノイズ

    さて残るはラジオ。 AMでもFMでも、バリバリという不周期的なノイズが発生しています。 おおかたバンドセレクタスライドスイッチの接触不良だろうと思って接点洗浄剤を使って復活を試みるも、一向に回復しません。 これはスイッチではなさそうだ。

    ラジオ基板にアクセスするには、ほとんどの主要部品が取り付けられたシャーシを筐体から前方に引き出す必要があります。 CDデッキ部を取り外すなどひと手間必要ですが、そうら、出てきたぞ。 これでラジオ基板が取りついたサブシャーシも外すことができました。 ラジオ基板は部品面はリード部品、はんだ面にメルフが表面実装されています。 ちらっと見たら、一部分になにか異様なものがこびりついています。 電解キャパシタの液漏れかとも思いましたがそうでもなさそう。 虫か何かの残骸? ううむ、そうでもなさそうだし、一体なんだ。 ともかくアルコールとブラシで異物を除去しましたが、 症状は一向に変わらず。

    AMでもFMでもバリバリノイズは同じようだし、よく聞くと正常なAMあるいはFMの受信音がとても短く不規則なバーストとして聞こえているようです。 となると、AMとFMとで共通に使われている部分で、かつトーンアンプよりは以前の部分に問題があるようだ。 バンドスイッチはAMとFMの音声信号を切り替えるタイプではなくて、 ダイオードを使ってバンド切り替え制御信号を出している仕組みのようです。 もしかしたらこの制御信号を受けて動作するアナログスイッチ部が異常なのかな。 切り分けのためにはまず、ラジオ基板では正常な受信音を出しているのかを調べるようでしょう。 ラジオ基板は3つのシングルインラインパッケージのICで構成されています。 これらから回路構成を探ってみます。

2014-09-14 ラジオ故障調査開始



    まずは付着物で汚れていた部位の近くにある、Rohm BA1332。 これはFMステレオデモジュレータICであり、 AM受信時には無関係。 故障の症状はAMでも発生しているので、 このIC自体ならびに周辺回路は今回の症状には関与していないはずです。

    次は、セラミックフィルタが近くにあるジグザグインラインパッケージのICで、これはRohm BA4237L。 FM/AM IFシステムICです。 このICにはAMの周波数変換・中間周波増幅・エンベロープ検波・低周波増幅回路と、FMの中間周波増幅・クワドラチャ検波・低周波増幅回路、そしてAGCを内蔵しています。 ここはAMとFMとで共用している部分が多いので怪しいところです。

    3つめのICはシングルインライン、TA7378P。 FMフロントエンドICです。 FM用の高周波増幅、局部発振、局発緩衝増幅、周波数混合までを受け持ち、得られた中間周波数信号はBA4237Lに送られます。 このICはFMのみに関与していてAM受信には関係がないので、 今回の症状には関与していないはずです。



    となるとやはり、BA4237Lを調べていくのが筋でしょう。 データシートでIC内部のブロックダイヤグラムと各ブロックの等価回路をしばらく読んで、 トレーシングの手順を考えます。 出力から上流に遡る方法で調べることにすると、最初は11ピン、 AF OUTにどういう音声信号が出ているのかを見るのが最初。 もしここですでにバリバリノイズだったなら、BA4237Lの内部故障ということになります。 11ピンから信号を取り出してオーディオアンプにつなぎ聞いてみると、 ここですでにAMもFMもバリバリと不規則な音です。 うわ、ICの故障か。

    つぎに16ピンのAM AF INピン。 ここはICに内蔵されているAM用低周波アンプの入力です。 AMモードにしてAU-7700で聞いてみると、増幅する前なので信号レベルは小さいですが、ここもバリバリ。 よってこのアンプは正常だし、そもそもこのアンプだけが故障しているのならFMでは正常なはずなので、当然ではあります。

    14ピンのAM DET OUTは16ピンのさらに前段でAM専用の部分だから調べるまでもないのですが、やはりバリバリ言っています。

    FM検波出力すぐのオーディオ信号はIC外部には出ていないのですが、代わりに外付けフェーズシフトコイルがつながる10ピンのFM QUADピンを調べてみると、 ここでも同じようにバリバリが出ています。 FM復調回路の等価回路図を見てみると、さらに前段の中間周波増幅段ですでにバリバリノイズになっているはずだ、と思えます。

    2ピンのAM VccピンはAM/FMのモードを切り替えるためのピンです。 モード切替信号が暴れていてICがAM-FMをせわしなく切り替えているのではとも思いましたが、 受信音の具合からしてそんなことはないはずで、 実際ここはモードに応じて安定した電圧です。

    13ピンのMUTEピンは安定してローレベル。 バリバリ音が発生しているときもこのピンの電圧は安定しています。 不規則にMUTEがかかったり解除されたりする、という故障ではないってことです。

    15ピンのAGCピンはというと、AMではAGC電圧が出ていて、しかしバリバリ音が発生しているときは電圧がすうっと下がります。 FMモード時は電圧が低く、バリバリ音発生時は電圧がすうっと上がります。 さてそうなると、ICに内蔵されたFM/AM IF AMPつまり中間周波増幅段の動作が不安定で、不規則にごく一瞬だけ動作する・・・を繰り返しているように見えます。 ますますICの中だなあ、こりゃあ。

    ここで困ったことが。 ティーディのハザードポジションコントローラ の設計試作を行った時以来久しぶりに電源を入れたデジタルオシロスコープが、 電源断・再起動を繰り返すのです。 ありゃりゃ、オシロ壊れちゃったよ。 また修理仕掛り品が増えた。

2014-09-17 BA4237Lのピン信号状態をトレース






ラジオはあきらめます

    BA4237Lを新品に交換してみるというのが次の手として妥当ですが、 ちょっと調べても1個で売ってくれるお店はなさそうだし、 あったとしても送料込みで1000円超えるなら何もそこまでしなくても、という気がします。 今後立ち寄った部品屋さんでたまたま売られていたら買うことにして、 あるいは同じICを使っているジャンクが手に入ったら部品入れ替えを試すということにして、 今は筐体を閉じてテープとCDを楽しむことにしましょう。 ケースを開けたまま3か月、ずいぶん中にホコリが入り込んでしまいました。 あれっ、ケース固定ネジとボリュームつまみはどこにやってしまったかな。

    ASTの恩恵としっかりした筐体設計のおかげで小音量でも小口径フルレンジスピーカとは思えない豊かな低音が楽しめるQT-C300でテープを聴きながら、 あれっ、IC内部の中間周波数段の故障というにはまだ早いかな? 局発の動作がインターミッテントになっているという可能性があるじゃないか。

    でももうすこし考えればこの可能性は排除できます。 このラジオではAMの局部周波数発振回路はBA4237Lの中にありますが、 FMの局発はFMフロントエンドIC TA7378Pが受け持ちます。 2つの別のICが全く同じ不良モードになるとは思えませんから、 局部発振回路の発振が間欠的になっているとしたらAMかFMのどちらかは正常なはずですよね。

    ともあれ実機検証。 78MHzに合わせたポケットラジオを近くにおいておくと、 QT-C300のダイヤルを88.7MHzにしたときにポケットラジオでQT-C300の局発の漏れが受信できます。 QT-C300の受信音は相変わらず間欠的ですが、ポケットラジオに入ってくる局発の漏れは安定した信号レベル。 AMで試しても同じ結果で、AMもFMも局部周波数発振回路はちゃんと動作しているという証です。

    なおこのテストを始めようとしてQT-C300の電源スイッチを入れたら、最初の1分間程度の間だけラジオは正常動作しました。 このときは1月下旬の帰宅直後で、室温は8℃。 チップが冷えているときは正常に動作する、ということでしょう。 そうか、であれば、強力なペルチェ素子あるいは小型の液体窒素ボンベを組み込んでBA4237Lを0℃近くに冷やすという解決策もあるな。 そりゃ楽しそうだ。

2015-01-29 局発の正常動作を確認



ひとまず完了。


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Aug. 28, 2014 Page created.
Jan. 29, 2015 Updated and published.