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Echophone Commercial EC-1

General Coverage
Shortwave Communications Receiver
(1941)


When it first appeared in early 1941 with its sensational $19.95 price tag, the EC-1 was a general purpose shortwave receiver everyone could afford. In late 1941, EC-1 advertisement on QST changed to the famous "Hoggarth" series; EC-1 started to serve as military entertainment. Then in the next month a phrase "National Emergency" was replaced by a word "War".


Echophone EC-1 Front View

He bought an Echophone EC-1!

    おそらくどこかの軍隊のキャンプ。 差し迫った戦闘の可能性がないか、あるいは訓練であるとみえて、テントがずらりと並ぶそのキャンプはどこかリラックスした雰囲気。 ひとりの兵士が、「やつはエコーフォンEC-1を買ったぞ!」 と叫ぶと、そのテントめがけてまわりから兵士がみんな駆け寄ってくる・・・・。

    QST誌に掲載されたエコーフォン コマーシャル EC-1の広告は、そういうひとコマのマンガがページ全面にあるだけ。 商品のイラストや写真はなく、どこのメーカーであるとも、どんな商品であるのかも、また価格がいくらであるとも、全く記述がありません。 ただ「やつはエコーフォンを買ったぞ!」

    1941年初頭、しだいに忍び寄る不安のなか、EC-1は思い切った低価格の短波ラジオとして発売されました。 普通のラジオ番組ばかりではなく外国のニュースや音楽、アマチュア無線や航空無線も聴け、モールス信号練習機としても利用できる・・・ EC-1は誰にでも手が届く短波ラジオでした。 しかしその頃から 戦争の影がますます濃くなり、電子部品や機材の生産は軍用が最優先されるようになります。 民生用の短波受信機やアマチュア無線機の生産ラインは停止に近い状況となってバックオーダ状態となりました。 無線機メーカー各社の広告はどれも、重大事に対処するため全力で軍用機器の生産にあたっているのでハムの皆さんにはぜひご理解をいただくよう・・・と書かれています。

    1941年11月号のQST誌では自作用の部品の入手もますます困難になってきたことが言及されていて、 真空管の寿命を最大限に活用するための運用法が掲載されています。 この月からEC-1の広告は有名なHoggarthシリーズになり、この第一作が上に書いた「やつはエコーフォンを買ったぞ!」。

    この時からEC-1は明らかに軍の娯楽用ラジオとしてプロモートされ始めます。 そしてその翌月、"National Emergency"の言葉はとうとう"War"という単語に置き換えられました。 アマチュアの送信は規制され、QST誌は非常用電源装置やローカル・コミュニティ緊急通信用の220MHz帯機器の製作記事、 また国防のために技術のあるアマチュアが力を発揮するよう啓蒙する広告で占められるようになります。

    戦時中は通信機器の生産はほとんど軍事用に向けられましたが、 そういった中でエコーフォン コマーシャル EC-1は、戦時中生産が続けられた唯一の市販短波受信機と言われています。 軍のモラール・ラジオ目的であったことはその理由のひとつなのでしょう。





Echophone Commercial EC-1

    エコーフォン コマーシャル EC-1は、ハリクラフターズ社の設計・製造になる低価格ブランド、エコーフォン シリーズの第一作です。 GT管とメタル管による6球のシングルスーパーヘテロダインで、3バンド切り替えにより中波帯から30MHzまでをカバー。 CWを受信するためのBFOと微調のためのバンドスプレッド チューニングを持ちます。 電源トランスを持たないAC-DC電源方式。 バンドスプレッド バリコンはメインバリコンと一体になっており、バンドスプレッドダイヤルは左右に動く横行きスケールです。

    周波数変換はペンタグリッド コンバータではなく、 特殊な構造をした3極・6極複合管の12K8 が使用されています。

    EC-1はかなりの台数が生産されたと思われますが、低価格機であったたため、 あるいはおそらく軍のモラールラジオとして使われたためか、現在では程度の良い個体は少ないようです。

    ラボの個体ではフロントパネル上部にECHOPHONEのデザインロゴがシルク印刷されていますが、 現存するEC-1の多くはデザインロゴではなく、操作つまみ機能名表示のレタリングと同じ大きさのタイプセットが使われています。 QST誌のエコーフォンの広告にデザインロゴが登場するのは1945年1月号。 それと同時期から製品にもロゴが使われ始めたのだとすると、 ラボの個体は1945年製造の、ほぼ最終型だといえそうです。

    EC-1は大戦の終了とともにEC-1Aとして再設計されます。 より低コスト化するためにバンドスプレッド ダイヤルが分度器二つスタイルとされ、 周波数変換はより高性能で安定なペンタグリッド コンバータ管に改められます。






Project Preview

    入手した個体は、フロントパネルや内部に致命的な傷みはないものの、全体的にガラクタの雰囲気になってしまっています。 以前に行われた修理あるいは改造の痕が見られます。 真空管のうち整流管35Z5は欠品。 キャビネットに妙な抵抗がついています。 何かのドロッピング レジスタとして使用していたのでしょうか?

    それぞれの真空管ソケットには使用真空管の型番が刻み込まれています。 シャーシ中央部に見える2ピンのソケットは、ケース上面に取り付いているスピーカへの接続。 中間周波トランスは戦後主流となるL調整型ではなく、内部にトリマ キャパシタをもつC調整型です。

    シャーシ表面は汚れているだけではなくて酸化も進んでいますので、清掃だけではおそらくだめで、 シャーシ単品にしてサビ落としと塗装が必要に思えます。

    ダイヤルメカとバリコンは少なくとも見た目にはダメージがなく、これはグッドニュース。 フロントパネルは、ダイヤル盤の縁取りビニールがボロボロになっていますので、何か代わりの材料からこしらえる必要がありそうです。


EC-1 Interior View: Click here for larger image

    内部はご覧のとおりペーパーワックス キャパシタとカラーコード表示のソリッド抵抗が主体で、部品点数は少ないのに雑然としています。 耐湿性向上のため (多くのユニットは戦時中は太平洋に渡ったことでしょう)、不完全ながらワックス スプレー処理もされています。 汚らしく見えるのはそのせい。

    このラジオはAC/DCセット (日本で言うトランスレス方式) ですので、シャーシと外側のケースとは絶縁されていなくてはなりません。 そのためのラバー ブッシュなどはかなり痛んでいそうなので、代替品で作り直しが必要でしょう。

    真空管が欠品していることもあり、電源は入れていません。 真空管の在庫はありますが、全体的な程度を考えて修理ではなくリビルド作業になるでしょう。 WW2のベテランには、リフレッシュしてもう一度世界を聴いてもらいたいと思います。

2002-10-12 EC-1入手 外観内部観察


EC-1 Bottom View: Click here for larger image

(ここで21年間のブランク)


復活させよう

    長い間の課題だった エコーフォンEC-1Aの整備・リペイント作業が完了 したので、 これまた長い間の課題だったEC-1の復活作業を開始しようか・・・ そういえばEC-1はどこに行ったのだろう。

    探すこと小一時間。 課題リストの中で優先順位は低い方だったので、 キャビネットが分解されたままのEC-1は 夢と時空の部屋で一番奥まったところの段ボール箱にひっそりと眠っていました。 保管中のホコリの追加堆積は無し。 いかにもガラクタの様相は入手時そのままです。

    フロントパネルのスライドスイッチはすべてフロントパネルにリベットで固定されています。 なので、キャビネットからシャシーを取り出すためにはこれらのリベットをすべて破壊しなくてはなりません。 あるいはスイッチの配線をいったんすべて切り離すか。 入手時はこのラジオは修理ではなく完全分解してリビルドしようかと考えていましたが、 リベットの破壊は面倒なので、いつも通りの修理作業に方針を切り替えます。 予防保全の意味合いも込めてシャシー下面の素子は新品または新古品に交換、 シャシーとキャビネットは軽清掃にとどめて、 入手時の状況のまま、 トップパネルの塗装剥がれもタッチせず、にします。 ただし、ダイヤルベゼルは代替品を作ってあげるようですね。 きちんと鳴るようにしてあげよう、という方針。

2023-02-10 作業開始





    キャビネット内部に追加されている、 だけど使われていない緑色の長い巻線抵抗を最初見たときはなんともまあヘンテコな改造をされたものだなあと思いましたが、 シャシーから引き出されてる、途中で継ぎ足された電源ケーブルを見て気がつきました。 そうか、この巻線抵抗は・・・ AC230Vで動作させるためのドロッピングレジスタらしい。

    EC-1Aの広告には要望に応じてAC230V対応仕様が注文可能と書かれているものがありました。 ひょっとしてこの個体はAC230V仕様で、当初はヨーロッパACプラグがついていたのかもしれません。 だとするとこれは、ヨーロッパ戦線に赴き、ドイツの無条件降伏のニュースをリアルタイムで聴いたのでしょうか。 それともその直後に、終戦処理のために渡欧した軍人あるいは政府関係者が携行していったものなのかもしれません。

    バリコンとダイヤルメカニズムは幸いに損傷はなく、軽清掃で使用可能です。





    入手直後は本機には改造が入っていると考えましたが、 電源ケーブルのつなぎ直し以外はほとんどノーマルに見えます。 電源平滑電解キャパシタが交換されていないところを見ると、 このラジオは1960年代以降は全く使われずに納屋で保管されていたのでしょう。

    シャシーの内部は、直前まで作業していたEC-1Aとほとんど変わりません。 使われている配線材はビニール被覆電線ではなくて絹巻電線。 使われている部品もほとんど一緒。 どのコンポーネントがどんな機能なのか、 すぐに理解できます。

    よく見るともちろん違いもあって、 まず気がつくのはアンテナコイルと局部周波数発振コイルのシャシー内配置角が違いますね。 EC-1のほうがシャシーに対して整列していて端正な配置ですが、 EC-1Aは見た目の端正さよりもバンドセレクタロータリースイッチとの配線がより短くなるように工夫された、 ということでしょう。

    ひとつだけある大きめの青色の抵抗、 これは電源ドロッピングだと思うけれど、 EC-1Aとは違っているなあ。






真空管を点検

    まず最初に周波数変換用の 12K8 3極6極複合特殊管 のヒータを点検します。 ラボには12K8の在庫はないので、 もしこれが切れていたら代替品が入手できるまで作業は保留となってしまいます。 安定化電源でヒータ電圧を加えると、 データシート記載の定格通りのヒータ電流が流れます。 よかった、切れていない。

    しかし12K8、上市が1938年で、この球は遅くても1944年末頃生産でまだ戦時中のはずなのだけれど、 緑色のシルク印刷が鮮やかですね。 戦時中生産、なんですよ?

    他の球も点検しましたがすべてOKでした。





    入手時には電源整流管35Z5GTが失われていました。 きっとほかのラジオの35Z5GTが切れたので部品取りにされたのでしょうね。 35Z5GTなら在庫が何本かありますので探してみると、 最初に見つかった球はヒータが断線していました。 2個めの球は正常。 これを使おう。 ただしこの球はガラスエンベロープとベースの接着が外れかかっていたので、 隙間に接着剤を流し込んで処置。

2023-02-11 35Z5GT 在庫球を使用






電源ケーブルを交換する

    電源ケーブルはおそらく230V用ドロッピングレジスタに接続されていたものを切り離して継ぎ足されていましたし、 なにしろビニール被覆も劣化が進んでいましたので、 無条件で交換します。

    EC-1はトランスレス機ですから、AC電源アウトレットのニュートラル側が確実にシャシー側につながるようにするため、 2本のチップの幅が異なっていてニュートラル側に白線が入っているアメリカ仕様の電源ケーブルを使うべきです。 と思いながら在庫部品を探すと、 まんまズバリの新品在庫が。

    シャシーの電源ケーブル引き出し穴にはラバーグロメットはありませんが、 かわりに真鍮材で作られたインレイが入っていて、 ケーブルが痛まないようにしています。 今回はさらにラバーグロメットを追加しました。

    検電ドライバーでシャシーの電位を確認しながら、電源オン。 煙も炎も出ず、かわりにブーンと大きなハム音が出ましたので、大成功です。

2023-02-11 AC電源ケーブル交換






電源平滑キャパシタ交換

    電源平滑のブロック電解キャパシタは無条件交換です。 これが交換されていないのだから、 1965年あたり以降は一度もこのラジオは使われなかったのでしょう。 ブロック電解キャパシタはメタル製のバンドがシャシーにリベット止めされていました。 リベットを破壊するのは面倒だったので、 メタルバンドをぐねぐね繰り返し曲げて金属疲労で切断し取り外しました。

    さすが戦前戦中機、ブロック電解キャパシタには古い表現の「コンデンサ」という言葉が見えます。 ブロック電解キャパシタは3セクション。 40uF・30uFと、20uFは出力管のカソードバイパスですね。 ということは、あれ? EC-1ではB電源平滑は2段しかないんですね。





    ユニバーサル基板を小さく切り出してペテットを使い、 47uF 400Vの電解キャパシタ2個をシャシー内に取り付け。 その手前にあったシャシーとキャビネットをつなぐキャパシタも在庫部品に交換。

    カソードバイパスキャパシタは出力管ソケット直近に追加。 電解キャパシタは70年の間にずいぶん小さくなりましたね。

    電源投入。 大きなハム音は消えて、低周波段が動作しはじめました。 音質も音量も正常に思えるレベルです。 よしよし。

2023-02-12 電源平滑キャパシタ交換取り付け 出力管カソードバイパスキャパシタ交換






原因不明

    ・・・と、ここまでは予期された定番の作業で順調だったものの、 問題にぶち当たりました。 低周波段ではハムは発生していないのですが、 AM検波出力に大きくハムが乗っています。 とても聞けたものではないほどの大きなハム。

    中間周波増幅段にシグナルジェネレータで信号を入れてみるとかろうじてAM検波されているのですが、 ハムが大きすぎてかき消されています。 中間周波増幅段出力側の中間周波トランスの調整は大きく狂っていて、 おそらく468kHzあたりにピークがありました。 とりあえずこれを455kHzに調整を取りましたが、 ハムがひどすぎてその先の作業には進めません。

    どれかのキャパシタがパンクしていたりするのかな。 検波段と中間周波増幅段の各キャパシタをチェックしてみようと思いよく見ると、 その近辺の部品はほとんどすべて一度ニッパで切断され、 はんだ付けでつなぎ直されていました。 どうやら先人は、 このハム発生故障を直すべくいろいろ調べたみたいです。

    検波段のマイカキャパシタの接続もユーザによって手が入っていますし、 オリジナルの回路と接続が異なっています。 BFO注入がツイストワイヤによるものではなくて直接検波ダイオードに接続されていたり、 これはひょっとしたらユーザの改造によってトラブルが起きている可能性もあります。 マイカキャパシタはオリジナル回路に戻し、BFOの直接接続も外してみましたが、 状況は変わらず。

    さらにいろいろ仮説を立てながらどこが悪いのかあちこち調べましたが、原因不明。 中間周波トランス2次側コイルが断線して、 ハイインピーダンス開放になってしまい、 そこで誘導ハムを拾っているのでしょうか? でもテスターで当たってみるとコイルはきちんと導通があります。 むー、これはわからん。

    まあね、こういうときはいったんほっぽり出すのも手のうちなんだよね。 カッカしていじり壊してしまうこともあったりするから、 大急ぎで修理する必要がないのなら、いったん手を止めてアタマを冷やした方がいい。 そのうちひょんなことで原因が突然わかったりするものですよ。






ソリッド抵抗交換作業を進める

    使われているソリッド抵抗は、EC-1AやS-20Rなどと同じく、 ほとんどのものが10%〜20%程度の抵抗値上昇を示しています。 抵抗値変化が10%を超えるものは交換してしまいましょう。 抵抗値の20%程度の変化で大きなハムが出るとは思えませんが、 なかには内部ショートしたりオープン故障しているものもあるかもしれませんし。 のんびり抵抗交換の作業を進めます。

    中間周波増幅管のカソード抵抗をデジボルで測ってみたら、 カラーコードは390Ωなのに10Ω以下を示していました。 これは酷いな。 でもまあ、機器から切り離さず測っているので、ほかの接続で抵抗値が低めに出ているのでしょう。 中間周波増幅管カソードは、フロントパネルのSTANDBYスイッチで切り離されます。 STANDBYスイッチを操作してみると、抵抗値は426Ω程度と出ました。 抵抗値上昇は10%ほどで、予想される程度です。 やっぱりほかの接続で低く出ていたんだね。

    回路図を見て、STANDBYスイッチがONのときカソード抵抗両端で10Ω程度になる接続経路を探してみると、 む、カソードバイパスキャパシタだ。 これがリークないしショート故障しているんでしょうね。 カソードバイパスキャパシタもまた、いちどニッパで切り離されてはんだ付けでつなぎ戻されていました。 はんだこてを軽く当ててキャパシタを切り離してみると、 あれえ? 抵抗値の読みは変わらない。






これだ!!

    回路図をもう一度読みますが、 カソードバイパスキャパシタが切り離されているならば、 カソード抵抗の両端が10Ωとかを示すような接続経路はどこにもありません。 つながっているのは、STANDBYスイッチと、その反対側は真空管のカソードだけ。 つながっているのは真空管だけ?

    もしやと思って中間周増幅管12SK7を抜いてみると、 抵抗値は426Ω。 真空管を刺し戻すと、10数Ω。 真空管が?

    テスタで12SK7の各ピン間の導通をチェックしてみると・・・ 見つけた!! カソードとヒータの間で絶縁破壊が起きている!!

    瞬間的に説明もつきました。 中間周波増幅管カソードにヒータ電位が加われば、 トランスレス機でもありますし、カソードはAC50Hzで大きく振られます。 当然中間周波増幅段出力も大きく50Hzで振られ、 AM検波出力に大きな50Hzハムが出るわけです。

    どうやら1960年とかそれ以前にこの故障が起きて、 前オーナーさんはあちこちの部品を切り離してトラブルシューティングを試みたものの真空管の内部不良にまでは思い至らず、 修理が断念されたのでしょう。 それから60年以上経った今、故障の原因が判明したということになります。

2023-02-12 12SK7管内カソード-ヒータ間絶縁破壊を発見






復活!!

    在庫の12SK7から1本を選び取り付けてみると、 EC-1はいきなり受信動作を開始しました。 中間周波増幅管カソード抵抗は390Ωのところ426Ωに増大していたのでこれを330Ωに交換。 中間周波トランスの調整を行ってみると感度はすくなくとも30倍以上にアップ。 そして周波数変換段は正常に動作しているようす。 77歳のラジオは元気いっぱいに復活しました!

2023-02-13 12SK7交換 中間周波増幅段カソード抵抗交換 IFT調整






BFOを調整する

    BFOは発振周波数が680kHzまで上がっていました。 この原因は不明です。 シャシー背面から調整可能な調整トリマを回しても550kHz程度までしか下げられなかったので、 調整トリマに並列に120pFのセラミックキャパシタを抱かせたところ 455kHzに合わせ込めました。 あわせBFO出力ワイヤを交換し、検波段へのツイストカップリングを整えました。 BFOは発振しているものの、 局発周波数安定度も良くないしBFOもドリフトが明らかだし、 現時点では原因不明の復調品質問題 - 低域での音の濁りが顕著 - があるので、CW/SSBの復調性能は期待できません。

    ほかにも部品交換と整備をのんびりと進めます。 ほとんどすべてのキャパシタは新品交換し終えました。 出力管カソード抵抗を新品交換し、引き回しも修正しました。

    高音シャントキャパシタは回路図では0.001uFが使われていますが、 実機では0.02uFが装着されていました。 EC-1にはLIMITERスイッチはないので、EC-1Aで行ったようなトーン切り替えスイッチ改造はできません。 トーン切り替え無しで音楽番組もトーク番組もリラックスして聴けるようなバランスを探したら、 自分の好みではシャントキャパシタは0.033uFが最適ということになりました。

2023-02-14 BFO調整 キャパシタ交換 高域シャントチューニング






低域歪の原因

    シグナルジェネレータにオーディオ信号を入れてつくった18MHz AMで小音量で一日ジャズアレンジBGM機として楽しみました。 一日動作させての周波数ドリフトは27kHz。 かなりの変動ですが、 1時間ウォームアップすればその後の変化はAM受信であればまあなんとか実用になるレベルです。 し、動作そのものは安定していて、 不安定なノイズの発生や不規則な周波数ホップはないしゲインは安定しているので、 ラジオを聴く楽しみをスポイルするようなものではありません。

    が・・・曲によって低域の音が濁ります。 EC-1Aよりも明らかに音が悪い。 600Hzあたりより低い成分が強い楽曲を聴いた時に音の濁りが顕著です。

    小音量で発生していますから、 オーディオ信号レベルが低周波段のグリッドバイアスを超えたためのクリッピング歪ではありません。 EC-1はノイズリミッタ回路は持っていませんからそのせいではないし、 ノイズリミッタがない分AM検波段のAC負荷は軽く、 音質的には有利なはず。 だし、AM変調を浅くした信号でも低域の濁りは発生しています。 検波段でもなさそうです。 はて、なんだろうね。

    オシロスコープ であちこち見てみると、 歪は周波数変換段で発生していることがわかりました。 12K8のスクリーングリッドの電源平滑が不十分で50Hzのリップルが乗っており、 このリップルに合わせてミキサのゲインが変化してしまっていると見えて、 ミキサ出力の455kHz中間周波信号に50Hzで振幅変調がかかってしまっています。 あるいは、12K8の3極管プレート電源も同様に平滑不足で局発信号レベルが50Hzで変化していて、 そのために455kHz出力に50HzのAMがかかっているのかもしれません。 どちらにせよ結果として音声信号の低域成分にこの50Hzが重畳し、 音が濁ってしまうのでしょう。 ふむ、AMラジオの音質劣化は周波数変換段でも発生するんですね。

2023-02-15 低域ひずみの原因は周波数変換段


    ところで右の写真、下側の50Hz波形のトレースが太いのは、 このオシロ - テクトロニクス2230 の問題。 内部インバータ電源回路の平滑が劣化してきていて、 どの入力レンジにしても同じくらいの20kHzのリップルが見えてしまっています。 この傾向は次第にひどくなってきていて、 電源投入して内部が暖まってくるまではとくに大きくなってしまっています。 あらたな修理ネタ。






第3平滑段を追加

    このあたりEC-1Aではどうしているのだろうと思い回路図を見てみると、 EC-1AではB電源の平滑は3段あって、 3段目から取り出したB電圧で初段低周波増幅管12SQ7のプレートと周波数変換管12SA7の第2・第4グリッドに給電しています。 初段低周波増幅はいちばんハムに敏感ですからここはできるだけリップルの少ない電源を使いたいわけだし、 12SA7の第2グリッドは局発発振管のプレートとして動作し、第4グリッドは混合管のスクリーングリッドとして動作するわけですから、 これらを安定化することが望ましい、ということでしょう。 周波数変換に12K8を使っているEC-1の場合は、 12K8の3極管プレートと6極管スクリーングリッドに第3平滑のB電源を使うべきということになります。 EC-1はB電源平滑は2段しかありませんが、第3平滑を追加して、 EC-1Aと同等のB電源を与えてみることにします。

    ラグ板をひとつ使って、電解キャパシタとドロッピングレジスタ1個を追加し、配線変更。 違いは明らかで、低域の濁りは感じられません。 翌日1日、同じ条件でBGM機として使いましたが、音質に違和感はゼロ。 定量的な測定はしませんでしたが、効果あり、対策成功。

    第3平滑の省略はブロック電解キャパシタのコストダウンのためだったのでしょうし、 第2次世界大戦中期の音楽ソースにはたいして低音成分は含まれていなかったから大きな問題にならなかった、 というあたりでしょう。 LPレコードの登場は1948年。当時の音楽ソースはSPレコードの時代でしたし、 日本ではまだマグネチックスピーカが使われていたほどですから。

2023-02-15 第3平滑段を追加 12K8局発プレートと混合スクリーンB電源のリップル低減 低音域濁り問題解決






シャシー上面清掃

    軽くシャシー上面を清掃。 シャシーをキャビネットから外さず、ダイヤル機構も分解しなかったので細部には指が届きませんが、 まあこんな程度、という感じで仕上がりました。

2023-02-16 シャシー上面を清掃






ベゼルを新調する

    オリジナルのベゼルは透明プラスチック板をおそらくヒートプレスでベゼル部の形をつくり、黒く塗ったもの。 黄変が明らかだったしベゼル部がバキバキだったので、 さあてこれをどう作り直そうかなあ。 夢と時空の部屋のワークベンチを見回すと、 右手を右に伸ばしてすぐの本棚に、 両面にフィルムが貼られた新品の透明プラスチック板が1枚ありました。 厚さもサイズもちょうどいい感じ。 何に使おうとした材料だったのか全く記憶がありませんが、 あたかもこれに使うために狙っておいたかのようです。 これで行こう。

    カッターで切り出してサイズを出し、エッジを落とし、 ベゼル形状にフィルムを落として、つやなし黒色スプレーをシュッと。 ベゼル黒色部の裏側に両面スポンジテープを貼って、 フロントパネルに装着。

    まあ素人のヘタクソ細工がアリアリですが、 ダイヤル盤部がすっきり透明になったのでいい感じですね。

    フロントパネルは軽く水拭き。 シンプルグリーンやアルコール類を使うとムラが出たりしてよけいみっともなくなりそうだったので。 そういえばこのラジオ、この時代の他のラジオと比べてタバコのにおいやヤニ汚れはほとんどありませんでした。 むかし水拭き掃除されたことがあったのかな。 入手時に自分で清掃したのかもしれないね。 ぜんぜん覚えていませんが。

2023-02-16 ダイヤルベゼル新調






スピーカ交換

    シャシーとキャビネットの軽清掃が完了してダイヤルベゼルも見られるものになったし、 シャシー内部の作業もほとんど完了しているので、 キャビネットを組み立てました。 けれど・・・ 音が出ない。

    入手時にとりついていたスピーカはボイスコイルが断線していました。 残念。 フレームの状態などはとても良好なのですけれどねえ。

2023-02-16 スピーカはボイスコイル断線していた





    このスピーカ、マグネットの形状が風変わり・・・というか、 今までこの形式は見たことがありませんでした。 ほかの方のEC-1の写真をウェブで拝見すると同じ形のものが使われているのが見受けられたので、 オリジナル品なのでしょう。

    1945年〜1960年頃の間に切れたのか、 それともその後の60年間長期保管中の温湿度サイクルで劣化して断線したのかは不明。 スピーカ取り付けネジが緩んでいて1本欠品だったことからすると、 当時断線して修理が試みられ、 でも結局外部スピーカにつなぐことで対策とした・・・あたりだったのでしょうかね。





    夢と時空の部屋のスピーカ在庫をみたら、ちょうどよさそうな松下電器製のスピーカがひとつ。 え? こんなの持ってたっけ? 何かから取り外したのか、どこかのジャンク市で買ったのか、 はたまた貰い物なのか。 全く記憶がありません。

    で、このスピーカ、なんとなんと取付穴ピッチがEC-1オリジナルと寸分違わずまったく一緒です。 なんということ! まるでEC-1に使われることを予期していたかのようです。 オリジナルの取り付けネジは外して、 新品のM3なべ小ネジで取り付けました。 もちろんきちんといい音で鳴ります。

    EC-1のキャビネットはがっちりした板厚のスチールパネルなので、 ペラペラスチール薄板プレスのS-38Cキャビネットよりもずっといい音で鳴ります。 それでも外部スピーカにはかないませんけれど。

2023-02-16 スピーカを在庫品に交換






外部スピーカジャックを増設

    バンド3で15MHz以上を受信するとき、 バンドスプレッドを70以上の位置にしておくと内蔵スピーカでのハウリングが起きます。 バンドスプレッドダイヤルは0位置でバリコン容量最小、 100位置でバリコン容量最大なので、 バンドスプレッドバリコンのロータの振動がハウリングを引き起こしているわけですね。 バリコンはシャシーに対してラバーグロメットで取り付けられていて振動を吸収する配慮がなされていますが、 このラバーが経時変化で硬化してしまっているというのが最大の原因ですけれども。 とりあえずはバンドスプレッドを70以下にしてロータを深く入れないようにしておけばハウリング問題を回避できます。

    もちろん外部スピーカを使うのがハウリング対策には一番効果的だし、 内蔵スピーカでは音質も良くないので、簡単に外部スピーカをつなげられるように外部スピーカジャックを取り付けました。 プラグを差し込むと内蔵スピーカの音が切れます。 既存シャシーには加工なしにしたかったので簡便な取り付け方法ですが、 目的用途には十分。

    フロントパネルのヘッドフォンスイッチとリアパネルのヘッドフォンジャックはオリジナルのままにしてありますが、 ハイインピーダンスヘッドフォンが必要なので実用性は今や全くありませんね。

    CW受信音の濁りは依然気になります。 電源リップルの影響を受けて局発周波数あるいはBFO周波数が振られてしまっているような感じ。 EC-1A以降S-38シリーズまでB電源は3段平滑されていますが、EC-1では平滑は2段しかありません。 EC-1Aでは初段低周波増幅管プレートとペンタグリッドミキサのスクリーンを第3平滑から取っています。 ラボのEC-1では第3平滑を追加しましたので、 12K8混合部プレートとBFO電源を第3平滑からの取り出しに変更しました。 改善は見られましたが、実用とするにはまだまだのひどい音です。

2023-02-17 外部スピーカジャックを増設 混合部プレートとBFO電源を第3平滑からの取り出しに変更






CW/SSBの復調性能改善を試みる

    12K8の局発プレートと混合スクリーンのB電圧を第3平滑でリップル低減してAM復調の低域音質は改善できましたが、 CW/SSBの復調はいまだに難ありです。 周波数ドリフトが大きいのはまだいいとしても、 CW/SSBの復調ピッチはおそらく50Hzで振られており、ひどい音。

    なので、12K8混合部のプレートと12J6GTによるBFOのプレートも、第3平滑から取るように変更しました。 結果、たしかに改善はしたのですが、 おそらく局発周波数の50Hz変動ははっきり残っています。 いまだに実用となるには厳しすぎる復調品質。

    これはひょっとすると12K8や12J6GTのヒータ電圧50Hz変動がカソードに影響を及ぼしているのかもしれませんね。 トランスレス機がもつ本質的な弱点。 もしそうであるならば、 AC100VではなくてDC100Vで動作させれば改善するのかな?

    トランスレス受信機はアメリカではAC/DCセットと呼ばれます。 昔は商用電力が交流ではなくて直流で送電されている地域が残っていたとのこと (エジソン対テスラのお話ですね)で、 電源トランス式ラジオはエジソンの直流送電地域では使えず、 でもAC/DCセットなら交流直流どちらでも使えるというメリットがありました。

    まあそれはともかく、DC100V電源装置でも作って試してみようかな・・・ いまのところは、EC-1はAM専用機だと思ってしまった方が気が楽ですかね。

2023-02-17 12K8混合部プレートとBFOも第3平滑からB電源を取るように変更






バンドスプレッド

    EC-1Aの横行きリニアスケールのバンドスプレッドダイヤルは、 いちばん左が0で基準点、 ここにあるときにバンドスプレッドバリコンはフルオープン。 右に回していくとバリコン容量が増えて、受信周波数は下がっていきます。

    シャシー上面清掃時に力を入れ過ぎたのか、 バンドスプレッドスケール70以上でバンドスプレッドロータ - ステータ間のショートが発生してしまいましたので、 ロータを慎重に曲げて修正。

    このバンドスプレッドの構造では、 メインダイヤルの位置で効き具合が大きく変わってくるのは当然で、致し方ないこと。 バンドスプレッドダイヤルで周波数が読みたければ、 希望の周波数帯でバンドスプレッドスケール較正表を自分でこしらえなくてはなりません。

    まあ今では任意の周波数を正確に発振できるシグナルジェネレータがあるので、 受信中の周波数を知ることも、放送開始前からダイヤルを合わせておくことも正確に行えます。 けどね、当時を懐かしんで較正表を書いてみましょうかね。

    ・・・と、作業を始めて気がつきました。 このバンドスプレッドダイヤル、 ダイヤル位置と周波数の関係が極端に非線形だ。 もはや対数目盛であるといってもいいほど。 バンドスプレッドダイヤル0〜20のあたりでは周波数変化はとても緩やかで、 CW局のチューニングも楽です。 が、ダイヤル60以上ではほんのわずかなダイヤル操作で周波数は大きく動きます。 ほとんどメインダイヤルと変わらないんじゃないか。

    7MHz帯はバンド2の一番高いところにあるので、 バンドスプレッドの目盛りもとても混んできます。 バンドスプレッドで楽に同調を取り、かつその周波数も10kHzオーダーで知りたいとなると、 メインダイヤルは100kHzごとにセットする必要があります。 クリスタルマーカをつくってダイヤル較正を行うとしたら、 1MHzクリスタルマーカではまるきり不足。 100kHzマーカが必要です。 でも100kHzマーカではとなりの100kHzと間違わずにメインダイヤルをセットするのは至難の業。 周波数既知の局に合わせてそこから±50kHzの範囲で目的局を探す、というのも難しいです。

    結局のところは、バンドスプレッドは30あたりにしておいてメインダイヤルを慎重に回して目的局を探り、 バンドスプレッドはファインチューニングに用いる、といったところでしょう。 戦前戦中の民生用低価格機です、その程度だったということですね。 さあ、難しい理屈を考えるのはやめて、 耳と指先に全神経を集中して、短波を探ろう。

2023-02-20 バンドスプレッドダイヤルの非直線性に驚く






自力でのFT8受信は不可能

    現状EC-1単体では局発とBFOの安定度が足らず、FT8の復調はうまくいきません。 「FT8? そんなもんワシゃ知らん」とでも言っているかのようです。 なので、RFキャリア注入のヘテロダイン法で7.074MHzのFT8を受信してみます。 6球スーパーは一晩でどのくらいコピーできるでしょうかね。

2023-02-20 1345UTC FT8受信開始


    アンティークショップ閑古鳥さんのジャンク市でDDSシグナルジェネレータを手に入れました。 試してみると調子よく動作しているので、 今度はこれで7.074MHzのキャリアを発進させてEC-1でのFT8受信を続けます。 このジェネレータは出力をいちばん絞っても0.02Vも出てしまうので、 100kオームを介してアンテナ端子につなぎました。

2023-02-26 ワンコインDDSジェネレータ動作開始





    さすがにロングワイヤーアンテナと6球スーパー、 しかもAGCのために受信機感度が大きく下がってしまうRFキャリア注入法だと、 東南アジア・オセアニアよりも遠い局はなかなか聞こえません。 それでもWSJT-Xのログを見返してみると、南米アルゼンチンの局がデコードできていることがわかりました。 WSJT-Xのログを読んでデコードできたグリッドロケータを表示するプログラムを書いてみたら、 北米・南米・ヨーロッパも聞こえていますね。 アフリカとカリブはダメみたい。 でも、けっこういい線いっていると思いませんか?

2023-02-28 南米が聞こえていた

    今回はこれで作業終了。 まるっきりのガラクタ状態だったベテランラジオはみごとに世界中あちこちを受信しています。 きちんとしたアンテナを用意して、世界五大陸制覇にチャレンジしたくなりました。

2023-03-01 作業完了






> 次の作業・・・ コリンズ51S-1 キャビネット装着


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