Allied A-2515A
General Coverage Shortwave Communications Receiver (1970) |
はじめにお断りしておきますが
(って単なる自己満足で書いてるページだからお断りも何もないんだけれど)
、これは
Restoration Project
ではありません。 この1970年製
Allied A-2515A
は何しろ
新品
なのですから!!!!
で、よくよく考えてみたら、ひょっとすると、うーん、これが私にとって初めての、
新品で買った通信型受信機ということになります・・・・
もし科学教材社のプラグインコイル式0-V-2キットが通信型受信機とは呼べないのだとすれば。 |
1950年代後半から60年代、日本製の低価格なトランジスタポケットラジオは米国で大ブームとなりました。
当初は性能も良くなかったトランジスタも、1960年代後半には本格的な通信機器にも全面的に利用され始め、
真空管を使わない新しい機器が相次いでデビューします。
低価格な輸入製品に押され、ハマーランドやハリクラフターズのような真空管式通信型受信機メーカーの凋落は不可避になっていました。 トリオ9R-59が発売された1960年代初頭、米国のアマチュア無線機器はすでにアマチュアバンド専用のSSB機器が主流でしたので、 Lafayette HE-30/KT-320/ HA-230 /KT-340という形態で米国デビューした9R-59は低価格を売り物にノービス向けの手ごろな短波受信機として人気を得ました。 |
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1960年代後半から70年前半は日本製の低価格トランジスタ機が広く出回ります。
どうにか短波も聞けるといった程度のお粗末なものも多かった中、
Radio Shack/Reallistic DX-150 (ゼネラル・リサーチ・オブ・エレクトロニックス社製)
などは本格的な設計と強力な販売網で短波リスナー向けに高い人気を得ます。
それではトリオ9R-59をそのスタイルとコンセプトを保ったままフルトランジスタ化し、改良を進めたらどうなっていたか?
ここに答えがあります。 アライドA-2515Aは、1970年製のゼネラルカバレージ通信型短波受信機です。 初期型A-2515は1969年。末尾にAがつくこのモデルは後期型改良モデルです。 写真からわかるように、Lafayette HA-230とほとんど変わらないデザイン スキームとダイヤルレイアウトをもちますが、 内部はフルソリッドステート化されています。 低価格機としてはじめてデュアルゲートMOS FETを採用し、またメカニカル フィルタを採用しています。 A-2515Aの初期型、A-2515はQST誌1969年02月号49ページのRecent Equipmentコーナーで 「日本から輸入された低価格の受信機」として紹介されています。 Allied ElectronicsはLafayette Radioと同じ電子部品・機器カタログ通販会社で、 アマチュア無線家・エレクトロニクス ホビイストの間でたいへんポピュラーでした。 A-2515Aの基本的なデザインはHA-230などのLafayette機と変わりませんが、 Lafayette Blueと呼ばれる緑がかった暗いブルーの替わりに、 Alliedではシックなダークグレーのケースとフロントパネルのグラフィックスになっています。 個人的には、9R-59ファミリの中で最もモダンでセンスがよく、高級感のあるルックスだと思います。 |
アンテナ回路と高周波増幅段 シャーシ背面のアンテナ端子はネジ式ターミナルです。 トランジスタを使ったフロントエンドは真空管と異なり過大入力で損傷する可能性があるため、 アンテナ端子の直後にゲルマニウム ダイオード2本による保護回路が入っています。 QST誌のA-2515のレビュー記事では、近くに大電力の放送局があるためにこのダイオードが導通状態となり、 ひどい混変調を起こした、とあります。 QSTラボではゲルマニウム ダイオードをシリコンダイオードに置き換えて問題を解決していました。 RF GAINは増幅段のゲイン コントロールではなく、アンテナ端子直後の簡単なアッテネータとして実装されています。 アンテナからの信号はコイル パックのアンテナ セクションで同調選択されたあとデュアルゲートMOS FET 40603で高周波増幅されます。 初期型A-2515ではMOS FETにTA-7150が使用されていました。QSTには「MOS FETを使用した最初の低価格機である」と書かれています。 入力ゲートとドレインに低い抵抗を入れておくことによって寄生発振を予防しています。 アンテナ回路にはアンテナ トリマがあり、広範囲のアンテナ負荷に対応できます。 QST誌には「A-2515の局発はいつも受信周波数より高い設定なので、 イメージ混信を低減するためにはアンテナ トリマはいつもハイキャパシタンス側にセットすべきだ」 と書かれています。 周波数変換段 ロータリー スイッチによる5バンド切替のコイル パックには、RFセクション、MIXセクションそれにOSCセクションを持ちます。 この部分のコンセプトは9R-59と変わらず。 局部発振は2SC381Rによって行われます。 周波数混合はデュアルゲートMOS FET 40603で、 2つのゲートのそれぞれに入力信号そして局部発振周波数が注入されます。 QST誌のレビューでは、「低価格機は局発の高調波によるスプリアス妨害がひどいことがあるが、A-2515ではそのようなことはない」 と書かれています。たしかに ソニー スカイセンサー5800 は局発の高調波による幽霊だらけでした。 高周波増幅段と周波数変換段はひとつのプリント基板にまとめられています。 混合出力はこのRFボードから出てIFボードに入ります。 |
RFボード。 ゆったりしたレイアウトで、組み立ても修理も改造もコピーさえも容易です。 |
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中間周波増幅・検波・BFO 中間周波数増幅・BFOそして検波段は1枚のIFボードに実装されています。 RFボードからの混合出力はIFボードに入り、最初のメカニカル フィルタで455kHz中間周波数が取り出され、 ついで2SC454(B)で2段増幅されます。 1段目と2段目の間には2つめのメカニカル フィルタが中間周波トランスの代わりに使用されています。 2段目の出力は中間周波トランスを介して検波段に伝えられます。 使われているメカニカル フィルタは中間周波トランスと同一の形状をした小さいもので、 いわゆる簡易型メカフィルと呼ばれているものです。 初期型A-2515では、中間周波増幅は3段構成で、メカニカル フィルタが4個使用されていました。 A-2515Aではなぜか2番目の中間周波増幅段が実装されておらず、2段構成になっています。 Sメータは第1中間周波増幅トランジスタのエミッタ電圧の変化を読むように配置されています。 Sメータのゼロ点はシャーシ背面のポテンショメータで調整できます。 BFOは独立した2SC454(B)で発振されます。フロントパネルのBFOミゼットバリコンで発振周波数を微調することができます。 BFOトランジスタへの電源は安定化された9Vで、ファンクション セレクタ スイッチをCW-SSBポジションにしたときのみ供給されます。 SSBの検波にはAM検波とは独立した、ダイオード2個を使った平衡検波回路が利用されます。 |
IFボード。 中間周波3段構成のパターンが用意されていますが、A-2515Aでは2段目に部品は実装されていません。 |
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低周波増幅と出力 低周波回路は1枚のプリント基板にまとめられています。 音量調整ポテンショメータからのオーディオ信号は2SC281トランジスタで2段増幅された後、低周波出力段をドライブします。 パワーアンプは入出力にトランスをもつプッシュプル方式で、出力トランスの2次側には8Ωと4Ωの出力があり、 シャーシ背面のネジどめスピーカ端子に接続されています。 フロントパネルのヘッドフォン ジャックは8Ωのスピーカ端子につながっており、プラグを差し込むと8Ωスピーカの音が切れます。 このとき4Ωスピーカ端子は切れません。 出力トランスの2次側からはドライバのエミッタ回路にNFBがかけられています。 AGC 9R-59に比べてフロントパネルが少し寂しく見える理由の一つが、AVC-MVCスイッチがないこと。 A-2515Aでは、AGCはAM受信時はもちろん、SSB/CW受信時にも動作するのです。なんといっても欲しかった機能です。 電源回路 AC115Vの電源は電源トランスで降圧されたあと半導体ダイオードで整流される、簡単で一般的な電源回路になっています。 電圧の安定性が要求される局部発振、BFOおよびSメータの基準電圧回路には、ツエナー ダイオードで安定化された9Vが供給されます。 動作中、ダイヤル盤は16V 0.15Aの豆電球2個で照らされます。 AC電源使用時は電源トランスの専用14V巻線が使われ、DC動作時は電源直結で点灯されます。 バッテリー使用時にはランプを切って節電したいのではと思いますが、そのしくみは用意されていません。 |
AFボードと電源ボード。 AFボードはまるでトランジスタ式プッシュプル低周波アンプの学習教材のようなわかり易い構成です。 シャーシの下面も写真に撮ろうかと思いましたが、コイル パックのほかにはほとんど何もなく、単に配線だけ。 |
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バリコン バリコンとダイヤル メカニズムの基本は9R-59と同じで、大小の3連バリコンをパラにつないでいます。 二つのバリコンはブラケットでまず機械的に結合され、このブラケットがシャーシに対してラバーマウントされています。 なるほど、この方法ならシャーシにかかった外力でバリコン間の相対位置がごくわずかに変化して周波数が狂う、というトラブルを回避できます。 メイン バリコンの手前側セクションはバンド スプレッド バリコンの真中のセクションに、 またメイン バリコンの真中のセクションはバンド スプレッド バリコンの手前のセクションに接続されています。 いかにも意味がありそうな結線です。 バンドスプレッド バリコンの各セクションには容量違いの2種の組がありますが、容量の小さな組だけが使われています。 この組は周波数直線型、またはそれに近いロータの形をしています。 推測するに、AM/FMラジオ用のバリコンのFM用の部分だけを使っているのではないかと思います。 |
ラバーマウント自体はまだゴム質を維持しています。 |
さっそくアンテナとスピーカをつなぎ、電源を入れてみましょう。
受信機は完璧な動作状態にあります。各スイッチやポテンショメータには接触不良やガリはなく、
全くの新品の状態です。ただし、背面パネルにあるSメータのゼロ調整ポテンショには多少のガリがあります。
日曜日の午後、コンテストとラグチューで混む7MHzのアマチュアバンドを聴いてみました。ファンクション
スイッチをCW-SSBにセットし、BFOピッチをやや左側のLSBにセットします。と、すぐさまJA各地の信号が聞こえてきました。 ボリューム調整やRFゲインの操作は受信周波数に全く影響を与えませんし、逆側のサイドバンドは聞こえません。 Sメータもきちんと、かつ好ましく動きますし、強力な局を受信する時も弱い局のときもボリュームを調整しなおす必要はありません。 ファンクション スイッチをSENDにしてから戻しても、受信ピッチは完全にもとのまま。 CWの受信音は大変クリスプだし、筐体をゆすってもピッチは変化せず、電源電圧の変動も意に介さず、 ウォーム アップ後の周波数ドリフトも皆無ではないとはいえ問題になりません。すべてあっけなく、「かくあるべく」動作します。 プッシュプル出力アンプで駆動される受信音は低音から高音までバランスが取れていて、受信状態の良好な国際放送ならたいへん聞きやすく好感が持てます。 オーディオ出力も余裕たっぷり。選択度は国際放送受信にはベストですが、 7MHzのSSBを受信する時は不足、CWの受信には広すぎ。CWの実戦使用には外付けのオーディオ フィルタが欲しくなります。 感度も十分で、アンテナを外したときの残留ノイズもよく抑えられています。 ただしアンテナをつないで実際に受信するとなかなかフル・クワイエットな状態にはなりません。混変調特性の問題なのかもしれません。 |
イメージ混信はというと、やはりシングルスーパー機の宿命でしょう、14MHz以上ではどれが本物なのか判別しにくくなり、
ダイヤルのあちこちで強力な国際放送のイメージが聞こえてしまいます。 7MHz受信時のメイン ダイヤルは指針の移動量にして2mm程度、100kHzほどのズレがありますが、これは無理のない実力値でしょう。 本機にはクリスタル キャリブレータはありませんが、 7MHz帯用のバンド スプレッドの目盛りは7.00から7.145の範囲でふられており、 外部キャリブレータを使っていったんメイン ダイヤルを合わせておけば1kHzまでの確度で周波数を読むことができます。 14MHz帯ではキャリブレーションをとったとしてもバンド スプレッドから読み取れるのはせいぜい10kHz。 15MHzの国際放送バンドの幅はメインダイヤルの移動量は3mm程度でしかありませんし、 バンド スプレッドには目盛りがありません。 外部キャリブレータと、あらかじめロギング スケールと受信周波数との対照表を作成しておく必要があるでしょう。 |
周波数の単位表示がMEGAHERTZになっていることにお気づきですか? なおダイヤルにはCDマークは入っていません。 |
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9R-59と同様にチューニングつまみにはフライホイールが取り付けられていますが、シャフトにはガタがあり、
また糸掛け機構に典型的な、糸の伸びによるバックラッシュがあります。
困るほどではありませんが、9R-59から10年も経っているのに減速機構に改善が見られないのはちょっと残念。 ダイヤルスケールはHA-230と同様のガラス板ですが、シルク印刷の材料が変わっているようです。 白色のスケールはパイロットランプに照らされてわずかに黄緑色を帯び、非常にコントラストに優れていて読みやすいものです。 小ぶりですぐに割れてしまっていた9R-59のアンテナ トリマ ノブは、A-2515Aではアルミの削りだし品に変更されています。 |
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総合するに、Allied A-2515Aは 「完成された9R-59」だといえるでしょう。
HA-230で痛感した欠点の多くが解決されています。
これ以上を望むなら、9R-59の基本要素 - 横行きバンドスプレッドダイヤルを持つゼネラルカバレージのシングルスーパーヘテロダイン -
から脱却する以外にありません。
それはつまり、ゼネラル カバレージ機がアマチュア無線のメイン受信機として活躍した時代の終わりを意味し、
より高度なアマチュアバンド専用トランシーバの時代に移っていきます。 |