NoobowSystems Lab.

Radio Restoration Projects

General 6S-10 Tabletop Radio Receiver
General 6S-10
Tabletop Superheterodyne Receiver
<1953>

<English Page>: UNDER CONSTRUCTION




純和風ラジオ

    鳴らないのだがもし直るのなら直して欲しい、と依頼されたこのラジオはゼネラルブランド、八歐無線の6S-10型6球スーパーヘテロダイン。 年代相応のキズはあるものの、端正なデザインと良質な仕上げの、程度の良い国産真空管ラジオです。 1953年(昭和28年)の発売で、定価は15200円。デザインも中身も純和風のこのラジオの修理にトライしてみます。

    純和風のラジオということを考え、NoobowSystems Lab.の他のページと異なりこのページでは「キャパシタ」の代わりに「コンデンサ」の用語を使用しています。

観察

    まずは外観を観察しましょう。 天然木のキャビネットの横幅は46.5cm。あれっ、この寸法はアメリカ製の通信型受信機、 ハリクラフターズS-20R(1939)や SX-96(1955)と全く同じです。 キャビネット寸法の標準規格でもあるのかな。

    大切に使われ保管されていたと思われるこのラジオのダイヤルは、キズもなく非常にきれいです。 ダイヤルカバーは上質に成型された透明プラスチックで、やや黄ばんでいますが曇りは全くありません。 日本各地の主要都市のNHKの周波数が入れられた目盛は奥側2枚目のやはり成型透明プラスチックの裏側に印刷されており、 これも程度は非常に良好。内部に埃が見られないので、おそらく近年分解清掃されたものと思われます。

    3つのつまみは左から電源スイッチ兼用3段階トーンコントロール、電蓄ポジション付き音量調整、そしてチューニングです。 チューニングつまみ、あるいは当時にならって呼ぶなら同調つまみの動きは大変スムースで、機構的に問題はありません。
スピーカ クロスにも破れや汚れはなく良好。ダイヤル枠やマジックアイの飾り窓は金色めっきですが、これは多少痛みかかっています。 外観上の最大の欠点は中央のつまみがおそらくノーマル品ではないこと。


    内部もこれまたきれい。やはり近年分解清掃されたのでしょう。 シャーシ表面は年代相応の酸化がありますが、腐食はありません。木製ケースの状態も良好で、虫食いは見当たりません。
出力トランス付きのパーマネント ダイナミック型スピーカ、マジックアイのソケット、 真空管やシールド ケースそして筒型中間周波トランスなど、各部品の程度も少なくとも外観上はたいへん良好です。

    電源コードは短く、プラグは松下電器の一般品がついており、修理されています。

    キャビネット内側には回路図と出荷検査票が貼り付けられています。 破れや剥れがないことから見ても、温度や湿度の変化の少ない場所で保管されていたのでしょう。 出荷検査票の検印は褪色してしまっていて読むことができません。



回路構成

    本機の回路構成は、昭和20年代後半から30年ごろの典型的なST管マジックアイつき5球スーパーヘテロダインです。 高周波増幅回路はありません。 真空管構成は下表のとおりです。 真空管は松下製で、おそらくオリジナルではなく、交換されていると思われます。

−使用真空管−
記号 形式 真空管 機能
V1 6WC5 周波数変換用7極管 周波数変換
V2 6D6 5極管 中間周波増幅
V3 6Z-DH3A 2極−3極管 AVC、AM検波
V4 42 5極管 低周波出力
V5 80BK 2極管 整流
V6 6E5 マジックアイ 同調指示

動作チェック

    鳴らないんだけど、と持ち込まれたのですから最近電源を入れられたのは明らかです。 もし長年放置されていたラジオであれば電源投入の前に念入りなチェックを行うべきですが、 本機の場合はメインテナンスが入っているようでもあるし、電源を投入してみました。

    ダイヤル盤は上下からそれぞれ2個のパイロットランプで照らされるようになっていますが、下側の1個しか点灯せず。 やがて真空管のヒーターが灯りだしましたが、あれ、80BKだけ点灯しません。 なあんだ、単に整流管のヒーター断線。交換すればそれでOKでしょう。 残念ながらラボにST管の在庫はないので、どこかで手に入れることになりそうです。 整流管が動作していないのですからB電源も当然発生しません。ウンともスンとも言わないのは当然です。 ま、煙も匂いも無しですから取りあえずはいいでしょう。

    ところが・・・10分ほど眺めていたら、突然80BKに火が灯りました。 あれあれ、これは一体どうしたことだ? 80BKのヒーターが擬似断線状態になっているか、ソケットが接触不良になっているか、という可能性がまず思い浮かびます。 突然点灯したのは80BKだけではなくて、上側のダイヤルランプもいつのまにか2個のうち1個が点灯しています。 回路図では4個のパイロットランプは電源トランスの6.3V系巻線で点灯されるので、80BKのヒータとは関係ないはずですが。

    ともあれマジックアイを含めて全球のヒータは点灯しました。 これで動作しだすかと思ったのですが、何度かスピーカからザザッという音がした以外は無音。 マジックアイのターゲットも光りません。

    それではB電圧は出ているのだろうかと思い、出力トランス1次側ターミナルの電圧を測ってみました。 すると、驚異の490V! 通常はせいぜい260V程度のはずなのに。 電源平滑用ブロック電解コンデンサ(日本製ラジオなのでキャパシタではなくコンデンサと書きます)のピーク耐圧420Vをも超えています。 これはやばいかも。そのうち一度だけパチッという音も聞こえました。 ここの電圧が極端に高いのは、B電源が無負荷状態になっているのかも知れません。やはり、シャーシの裏側を見る必要があるようです。

    電源プラグを抜いた状態でスピーカをチェックしてみると、ビビリ音などはなく良い音で鳴ります。 木製キャビネットに10cmクラスのスピーカは現代のチープなラジオよりもいい音がしそうです。


シャーシを引き出す

    やはりシャーシの下を見る必要があるのは明白です。いよいよ作業開始。



まずは精密ドライバを使ってノブのネジをゆるめ、フロントパネルのつまみをとり外します。
真中の音量調整つまみは、別のラジオか何かのものを無理矢理接着剤で取り付けていたようです。 フロントパネルには多分そのときにつけられたと思われるキズがあります。



スピーカについている出力トランスとシャーシを結んでいるオーディオ出力ケーブルを取り外します。 ここでは配線の極性はありませんが、念のためもとの極性に戻せるよう片側に油性インクで黒くマークしておきました。 半田こてで半田付けをはずします。
マジックアイのソケットを外します。 これでシャーシとキャビネットの結合は底のネジだけになりました。



シャーシはキャビネット底面の4本のネジで固定されています。 これらを外せば、シャーシを取り出せます。おっと、ネジを外すときは水平な状態でやらないと。
ネジの頭は茶色く錆びていますが、錆びていない傷が残っています。 やはり最近開けられたみたいですね。食い込みワッシャの傷跡は、もう何回も開けられた事実を記録しています。



注意深くシャーシを引き出します。さあ、中身が姿を現しました。
この時代のラジオは壊れたら修理するのがあたりまえだったし、もともと構造もシンプルなので、あっという間に取り出せます。


シャーシを観察する



シャーシをじっくり見てみましょう。 電源トランスの上部にはヒューズ差し替え式の1次側巻線タップがあり、電源電圧が低くなったときにも対応できる(88V)ようになっています。 当時の電源事情では必要不可欠な機能でした。
ヒューズは100V側に新しいものが付けられています。 むむ、怪しい。 しかも良く見ると・・・なんと5Aのヒューズ!!! 切れるとしたら炎上するトランスの熱で切れるかもね。



パイロットランプのうちすくなくとも2つは交換されています。 合計4個のランプは並列接続され6.3Vヒータ巻線で点灯されます。 調べると、正常なのは1つだけで、1つが擬似断線(振動で点灯することがある)、残り2個はアウト。 6.3V 0.15Aのネジソケット電球4個を買い物リストに追加です。
2つある中間周波トランスと、ギャング バリコンのトリマは工場出荷時のゆるみ止めがそのまま残っています。


ここ、これはひどい・・・

    電源トランスが下側になるようにして横倒しにしました。 すると、ううう、これはひどい! 最初に電源を入れたとき煙も匂いもしませんでしたが・・・ 以前にすくなくとも1度、たぶん間違いなく合計2回燃えて、出力管のプレート回路をのぞく全ての回路への電源供給が途絶えていたのです! これによりB電源は無負荷状態となり、490Vもの高電圧になっていたのでしょう。



    すべてのワックスコーティング ペーパーコンデンサはひどく汚れています。 こんな様子ではとても電圧をかける気にはなりません。

    適切な値の部品がなかったのでしょう、別のところでは3本の抵抗を組み合わせて1本の代わりをさせているものもあります。


    でも一番ひどいのは、B電源のドロッピング レジスタ。 完全に焼けています。 その周囲の部品はすすけています。

    見た目には大丈夫そうなのに、その周囲がすすだらけになっているのが周波数変換管と中間周波増幅管のスクリーン抵抗。 たぶん一度猛烈に燃えて、その後交換されたものと思われます。


    音量調整用ポテンショメータはガリが出たのでしょう、案の定交換されています。 しかし、スイッチつきポテンショなのにスイッチには配線されていません。 ということは、電蓄接続機能は殺されているということになります。

    電蓄のピックアップを接続する端子の配線はやはり切られたままになっています。

    こんなきれいなラジオを鳴らないままにしておくのはまちがいなく罪ですが、 こんなひどい状態の回路を応急修理でごまかすのも危険です。 故障の原因を、詳しく調べてみましょう。

焼けた平滑抵抗


    激しく燃えた形跡が残る抵抗は、B電源平滑回路の平滑抵抗でした。 実物の抵抗値を測定してみると、無限大。

    半波整流管80BKで整流され、最初の電解コンデンサで平滑されたB電源は、典型的なモデルではDC240V。 この電圧が出力トランスを通って出力管のプレートに印加されます。 残りの全ての回路の電源はここから2kΩの平滑抵抗を通り、二つめの電解コンデンサでさらに平滑された200Vが給電されます。
    本機ではこの平滑抵抗が焼け切れていたために、出力管のプレート回路以外の電源が供給されていませんでした。 したがって、この抵抗さえ交換すればラジオは動作し始めるはずです。

    しかし、この平滑抵抗がどうして焼けてしまうのでしょうか? 本当の原因が残ったままならば、交換した抵抗もまた燃え出してしまうでしょう。



    平滑抵抗が燃える理由は、言うまでもなくB電源の過電流です。 配線のどこかがショートすれば当然起きますが、その他に可能性はあるでしょうか? 回路図を読むと、真空管内部の電極間ショートが起きていないとすれば、設計値以上にB電流が増大する原因としては以下の可能性が挙げられます。
    実機で調べてみましょう。平滑抵抗の出力側(200V側)とシャーシの間の抵抗値を、マルチメータを高抵抗レンジにして測定してみます。 もちろん電源は入れておらず真空管の電極間には電流は流れませんから、抵抗値は原理的に無限大のはずです。
    実際には、正常であっても平滑コンデンサの充電電流がありますから若干の電流が流れます。 電解コンデンサはいずれにしろ無条件で代替品にする予定ですので、まずはこの配線をニッパで切り離しました。 しかし、抵抗値は無限大にはなりません。やはりどこかでリークしています。 上で挙げた項目をひとつひとつ、ニッパで回路を切り離しながら調べていきます。


    まず見つかったのは、6WC5のスクリーンバイパスに使われている0.05μFのワックスペーパーコンデンサのリーク。 マルチメータで1MΩを示します。 その他のコンデンサには明確なリークはありません(高電圧印加の場合は不明ですが)。
    もしこの0.05μFが顕著なリークを起こすと、まず6WC5と6D6のスクリーン抵抗がオーバーロードとなって燃え始めるはずです。 このスクリーン抵抗は標準的なものでは10kΩ2Wですが、実機ではずいぶん大きな電力容量の15kΩが付けられています。 で、なぜかその抵抗の周囲はどこも真っ黒。燃えたので取り替えました、といわんばかりです。 こんどは燃えないように大きめのものにしときましたよ、というセリフも聞こえてきそう。

    スクリーンバイパスを切り離しても、まだどこかリークしています。 IFT内部になると厄介だなあ と考えながら、低周波増幅管6Z-DH3Aのプレート抵抗を切り離してみると、なぜかリーク電流が消えました。 こりゃ変だ。この先、本来つながるはずの部品は真空管を含めて全部取り外したのに。 いじっているうちに、どうも6Z-DH3Aの真空管ソケット自体がシャーシにリークしていることがわかりました。 おそらく埃かごみ、あるいは汚れによるものでしょう。ソケットのピンをゆすっていたらリークは消えてしまいました。
    この6Z-DH3Aのプレート抵抗は、250kΩの抵抗3本が組み合わされてひとつの375kΩ抵抗として配線されています。 終戦直後の混乱期の製品ではないですからメーカー製造時のものとは考えにくいので、 いつの頃か一度焼けてオーナーか修理屋が手持ちの部品でやっつけ工作をしたものと考えてよいでしょう。 回路図によれば、本来は250kΩが取り付くはずなので、過電流を防ぐため高めの抵抗に変更したのかもしれません。




シナリオ

    これらの観察から、次のようなシナリオが浮かび上がってきます。
  1. 6WC5/6D6のスクリーン バイパスのペーパーコンデンサが劣化してリークし、過電流のためスクリーン抵抗が焼損。再発防止のため、大きな電力容量のものに交換された。コンデンサはそのままだったため、スクリーン抵抗に流れる電流はひきつづき大きい。
  2. 一方、6Z-DH3Aのソケットでのリークのため、プレート抵抗が焼損。これも交換されたが、原因は取り除かれず。
  3. 回路の全消費電流が増え、電源トランス1次側に入れられたヒューズがしばしばブローするようになる。持ち主はヒューズを大きめのもの(5A)にしてしまう。
  4. やがてB電源の負荷は増えつづけるが、もはやヒューズはブローしないので、平滑抵抗が過電流となり焼損。
  5. オーディオ出力管のプレート回路を除いて全回路に電源が供給されなくなった。B電源は無負荷のため電圧は異常に高くなり、電解コンデンサの第1ブロックに定格電圧350Vをはるかに超える電圧がかかり続ける。
金田一少年じゃあるまいしちょいと強引なスジかなとも思いますが、まあこういったところでしょう。 この最終状態がどの程度続いたのか定かではありません。 最後の発煙はけっこうハデだったでしょうから、ユーザは大慌てでスイッチを切ったはずで、二度とスイッチを入れようとはしなかったはず。 となると、このラジオを譲ってもらった人が試しに電源を入れてみた時間(私がラボで試した15分程度を含む)の間、 490Vもの高圧が平滑コンデンサと出力管42にかかり続けたことになります。
    平滑コンデンサはたとえ異常がなくても再利用はしませんが、長い間過負荷で働かせられた電源トランスと、過電圧を印加されたオーディオ出力管42の健康状態が気になります。 なぜなら42のカソード抵抗は断線していませんでしたから、42のプレート電流が正常に流れていたのなら490Vはあまりにも高すぎるからです。 42のソケットの接触不良、という答えであれば良いのですが、もし完全なエミッション不良であれば代わりの真空管を探さなくてはなりません。

    いずれにせよ結論として、焼けた平滑抵抗を交換するだけではどうにもならない、ということになります。 アンティークラジオ修理の鉄則「全てのペーパーコンデンサと電解コンデンサは新品に交換せよ」 はここにもあてはまります。 今回はシャーシ下の全ての部品を交換することにしましょう。 アンティークラジオファンの方の中には、部品の外観も当時の状態を維持するために 部品の内部 だけ交換される方もおられます。今回はごくまっとうに、入手可能な普通の部品で仕上げましょう。 さあ次は、キャビネット内側に貼り付けられていた回路図の調査を行いながらのシャーシ下分解と、主要部品のチェック。 そして、ちょっと時間がかかるでしょうが部品集めです。

主要部品のチェック


    傍熱型整流管80BKのヒーターはテスト開始直後は点灯しませんでしたので、擬似断線の疑いがありました。 安定化電源装置で5Vをヒーターに通電してみると、軽く叩いても途切れることなく約650mA流れ、暖かな光でヒーターが灯ります。 真空管を抜くときの手応えが妙に軽かったので、ソケットの受け金具がゆるくなっていたためと考えられます。
    局発コイルは導通あり。正常と思われます。
第1IFTは1次側巻線: B-P間導通あり、シャーシへの導通なし。 2次側巻線: E-G間導通あり、シャーシへの導通なし。正常と思われます。第2IFTも同様。
    電源トランスも、いままでの観測から正常と考えられます。 入手の困難なパーツがとりあえず正常そうなので朗報としておきましょう。




シャーシ下の分解と清掃


    キャビネット内の回路図と照らし合わせながら、シャーシ下の部品を全て外しました。 使用されている部品の多くは指で触るのも避けたいくらいに汚れています。 回路図には明記されていない、マジックアイ配線の色分けは以下の通り。
  • orange - 42 3pin (200V) screen
  • blue - 1M 42 2pin
  • green - agc
  • red - heater
  • gray - ground
また分解時に油性インクでマークしておいた出力トランス1次側の配線は次の通り。
  • black - 42 plate
  • non black - power VB+


トーン コントロール用のシャント コンデンサ3つ。見事な油汚れで、とても素手で触りたくありません。



    部品がなくなってシャーシ表面へ指が届きやすくなったので、お次はSaftyWashでの清掃作業。 何十本もの綿棒を使って、電気的に問題となりそうな汚れは除去できました。 ただし表面の仕上げはやはり痛みかかっているので、新品同様の輝きとは行きません。

    真空管ソケットがネジ止めならそれも外して完全にシャーシだけにして、 清掃した後に安直にスプレーをかけてごまかす手もありますが、 ソケットやラグ板はリベット止めです。清掃以上の作業は行わないことにしました。

    電源とトーン コントロールのロータリースイッチも、細部にわたって油汚れでベタベタです。 取り外してシンプルグリーン溶液を入れた超音波洗浄機で10分程度洗い、取り出してすぐにぬるめのヘアードライヤーで乾燥させました。 接点表面のわずかな残渣を柔らかなクロスでふき取り、完了。 シンプルな接点構成だったので楽でしたが、ロータリースイッチは同等品の入手が困難なので気を使います。

    シャーシ中央のラグ板はカシメがゆるくなってしまっていたので、カシメを外して新品に交換しました。 真空管ソケットの受け金具接触面もかなり油汚れがありますので無理をしない範囲で清掃しました。

    次はいよいよリビルドです。




パーツ リスト

    回路図と実機に実装されている部品からパーツリストを作成しました。 また、使用されていた各コンポーネントの抵抗値測定の結果も併記します。


Part ID Functionality Specification
Need Remarks
Vacuum tubes
V1 Converter 6WC5 National 0
V2 IF Amplifier 6D6 National 0
V3 Det/AVC/AF Amp 6Z-DH3A National 0
V4 Audio Output 42 National 0
V5 Rectifier 80BK National 0
V6 Tuniing Indicator 6E6
0
Power Supply
R12 Filter Resister 2k 2W 1 burnt out
C18 Filter Cap, Block #1 20uF 350WV 1 replace unconditionally
C10 RF bypass 0.005uF (250WV) 1 very dirty
C19 Filter Cap, Block #2 10uF 350WV 1 replace unconditionally
Audio Power Output
R10 Grid resister 500k 1/4W 1 478.8k very dirty
R11 Cathode resister 500 1W 1 OK 514
C11 Input coupling 0.01uF (250WV) 1 very dirty
C13 Cathode bypass 10uF 50WV 1 very leaky
C14 Tone Control, shunt #3 0.02uF (250WV) 1 too dirty to touch
C15 Tone Control, shunt #2 0.01uF (250WV) 1 too dirty to touch
C16 Tone Control, shunt #1 0.005uF (250WV) 1 too dirty to touch
DET/AVC/1st Audio
R5 Diode load 50k 1/4W 1 72.96k bad
R7 Grid resister 5M 1/4W 1 (2M was used, 2.180M)
R8 Plate resister 250k 1/2W 1 392k combined
R9 Plate resister 30k 1/2W 1 34.70k dirty
C7 RF filter 100pF (250WV) 1 OK but replace
C8 RF bypass 100pF (250WV) 1 OK but replace
C9 Audio coupling 0.01uF (50WV) 1 dirty
C10 Plate RF filter 100pF (250WV) 1 dirty
C12 Plate resister bypass 3uF 350WV 1 replace unconditionally
VR Audio Volume 500k w/SW 1 833.6k VR was used
IF Amp
C5 Grid bypass 0.05uF (250WV) 1 4M leaky
C6 Screen bypass 0.05uF (250WV) 1 1M leaky
R3 Cathode resister 300 1/4W 0 OK 307,2
R4 AVC coupling 1M 1/4W 1 2.047M bad
Converter
C1 Tuning Capacitor Air Variable ---- 0 ----
C2 Oscillator padding 50pF (50WV) 1 OK but replace
C3 Oscillator padding 420pF (50WV) 1 too deteriorated
C4 RF bypass 0.1uF (50WV) 1 too dirty to touch
R1 1st Grid resister 20k 1/4W 0 OK 20.28k
R2 Screen resister 15k 3W 0 OK 16.48k
Tuning Indicator
R13 Target resister 1M 3W 1 958k dirty
Miscellaneous
PL1-PL4 Pilot Lamp 6,3V 0.15A Screw mount 4 replace all

Rug 1L-4
1 replace
AC Cable AC Power cable with plug AC250V
1 replace



リビルド開始

    日本に帰ってきてすでに2年近く経つのに、秋葉原には一度も行っていなかったのです。 なぜって・・・値札を見ればハルテッドやオールトロ、あるいはフットヒルやリバモアが恋しくなるに違いないと恐れていたからです。 でも今回のこのラジオは修理依頼品だし、ジャンク箱のありあわせででっち上げるのはためらわれたので、新品あるいは新同パーツの買出しに出かけました。
    うん、秋葉原はやっぱり楽しい! 実に4年半ぶりに注文した角玉(ヨメは昔から全部入りがお好み)も美味かったし、古炉奈で一休みするとやはりホッとしますね。
    必要なパーツはすべて揃いました。 SBE SB-34 の送信部テスト用に以前から欲しいと考えていたダミーロードとパワー計もついでに購入。 あわてず少しずつ5球スーパーの製作にとりかかりましょう。

電源回路


    電源トランスで昇圧されたB電源用の高圧は、傍熱型半波整流用2極管 80BK で整流されます。 80BKは直熱型整流管KX12Fを傍熱型にしたものです。 傍熱型整流管ではカソードが暖まるまでに時間がかかりB電圧が発生し始めるのがそれだけ遅いので、 他の真空管が温まらないうちにB電圧を印加してしまってカソードに高圧がかかり痛めてしまうというトラブルを回避できます。

80BKの定格値は以下のようになっています。
  • ヒータ電圧: 5.0V
  • ヒータ電流: 0.5A
  • 最大出力電圧 : 300V
  • 最大直流出力の電流: 40mA

Power Supply Circuit Diagram

    80BKのヒータは5Vで、この点火には電源トランス2次側巻線のうち専用の5V巻線が利用されます。 80BKを除くすべての真空管のヒータと4個のパイロットランプは、電源トランス2次側巻線のなかの6.3V巻線でAC点火されます。
    6S-10に使用されている電源トランスはリード線取り出しタイプで、ハトメラグはついていません。 出力電圧や定格などの表示も一切ないので、 うっかりメモを取らずにリード線をすべて取り外してしまうとあとでどれがどれやら苦労することになりかねません。 すでに書いたように、このトランスの上部にはヒューズソケットが2つあり、 1次側の入力電圧を100Vもしくは85Vに切り替えることができます。2次側にはB電源用、6.3Vヒータ用および整流管の5Vヒータ用巻線があります。

    オリジナルの電解ブロックコンデンサ取り付けネジを利用してシャーシ内にラグ板を追加し、ここに耐圧350Vの電解コンデンサを3つ取り付けました。 パイロットランプは4つともすべて新品の6.3V 150mA品に交換し、6.3Vヒータ配線は黄色のビニール線で引きなおしました。 平滑抵抗前の高圧系配線には赤色ワイヤを、平滑抵抗後の高圧系はオレンジ色のワイヤを使います。 電源ケーブルも新品を使用。雰囲気を壊さないよう、茶色のACコードを選びました。 このコードはアメリカ流に片側のブレードがわずかに幅広になっているものなので、 0.005μFコンデンサを介してシャーシに接続される側が正しくニュートラルに接続されるように極性にも注意しました。グロメットも新品を使用します。

低周波出力回路


    低周波出力段には低周波出力用5極管 42 が用いられています。 42は1932年発表、実質的に6F6Gと同等です。 5極管接続としてプレート電圧250Vを印加しA級動作させた場合の最大出力は3.1Wで、家庭用ラジオとしては申し分ないパワーを得ることができます。 負荷抵抗は7kΩ。

    本機の出力トランスはスピーカに取り付けられているので、B電源はいったんシャーシから出てトランスを通り、 ふたたびシャーシ内に戻って42のプレートに供給されます。

    本機にはフロントパネルのスイッチによって3段階に切替が可能なトーン コントロールがあります。 これは出力トランス1次巻線の両端に入るシャント コンデンサの容量を切り替えるタイプです。 HIGHポジションでは0.005μFのコンデンサだけが入りますが、MIDポジションでは0.01μFも並列接続され、 LOWポジションではさらに0.02μFも並列接続されます。 この方式は簡便ですが、コンデンサにショート故障が起きるとどのようなことになるか、 ちょっと恐ろしい回路です。



    電源回路と低周波出力段の配線が完了したところで、いよいよ電源を入れてテストしてみましょう。 ヒューズは元からついていた5A品ではなく、1A品に交換してあります。 うっかり配線ミスをしてオリジナルのスピーカや出力トランスを壊すと大変だし、 そもそもキャビネットを並べておいておけるほどベンチは広くありません。 そこで、いつか自作短波受信機に使おうと思って買った新品の出力トランスと小型ブックシェルフ スピーカをつなぎます。

    B電圧が異常に高い現象が見られていましたから、最悪の場合取り付けたばかりの電解コンデンサが破裂する可能性があります。 そこで、B電圧をデジタル マルチメータで測定しながら注意深く電源を投入してみました。 すると、80BKのヒータが暖まると80BKの出力電圧は315V程度まで上がりました。 80BKと42以外の真空管は差し込んでいませんから高めの電圧になるのも当然ですが、315Vとはちょっと高すぎにも感じます。 とりあえず電解コンデンサの耐圧以内だし、このまま使ってみましょう。 テスト開始の時点で490Vにも達していたのは、おそらく42のソケットの接触不良でトランスの負荷が全くない状態になっていたのでしょう。

    42のカソード抵抗は500Ωで、カソードの電圧は実測約22V。 したがってカソード電流は44mA流れていることになります。 RCA RECEIVING TUBE MANUALの6F6Gのスペックでは、プレート電圧285V時のカソード電圧は20Vで、プレート電流は38mA、またスクリーン電流は7.0mA。 したがって本機の実測結果はほぼスペック通りということができます。 当初懸念されていた、42のエミッション低下の可能性はなくなりました。

    42のグリッドにラジカセのヘッドフォン出力信号を注入してみると、すんなりと42は鳴り出しました。 ハムは気になるレベルではなく、回路図どおりの平滑コンデンサ容量で問題はないでしょう。 まずはパワーアンプ部は作業完了です。

低周波増幅回路と検波回路


    次は6Z-DH3Aの配線を行います。 この管は2極・3極複合管で、2極管部で検波動作、3極管部で初段低周波増幅を行います。 まずは低周波増幅部だけ配線しました。
    36kΩと250kΩで減圧された6Z-DH3Aのプレート電圧は113.5V。 グリッドに音声信号を入れると、スピーカからはバランスの取れたいい音が聞こえてきました。 オーディオ段はゲインもパワーも十分で、アパートでは明らかにお隣りさんの迷惑になるほどの音量が得られます。 周波数特性も問題なく、シンバルやハイハットの音も自然です。 AMラジオとして使う限りは10kHz以上が伸びていてもたいしてありがたみはありませんが、 PU入力端子を使用してCDプレーヤでもつなぐのであれば、やはりバランスの良いオーディオ段は歓迎されます。

    トーン コントロールをMIDにすると高音はかなり抑えられて落ち着いた感じになり、LOWポジションでは通信型受信機なみに中高音が減衰します。 ラジオ放送を楽しむのならLOWポジションはちょっと抑えすぎ、といった感じです。 ここはオリジナルのスピーカとトランスでもう一度試す必要があります。
    4時間ほど連続してCD音楽を楽しみましたが、動作は安定しています。ここまでのところはすべて順調。

    検波回路は6Z-DH3Aの2極管部を用いたダイオード検波です。 中間周波信号から音声成分を取り出すとともに、信号強度に応じた負の直流電圧を生成してAGC電圧とします。

    検波段の配線が完了したので、中間周波増幅段の作業にとりかかります。



中間周波増幅回路


    本機の中間周波数は455kHzです。 中間周波増幅は1段構成で、6D6 が使用されています。 6D6は相互コンダクタンス1600マイクロモーのリモート カットオフ5極管で、 アメリカでは1930年代の半ば頃、初期の民生用スーパーヘテロダイン機に多く採用されました。 1930年代後半頃にはより使いやすく性能の良いメタル管、6SK7 (2350マイクロモー)に置き換えられ、 1940年代にはほぼ使われなくなっています。日本ではそれから20年たってもスーパーヘテロダイン用として現役でした。

    6D6はグリッド バイアスを変化させることによって増幅率を変えることのできる、いわゆるバリμ管です。 検波回路で発生した信号強度に比例した負の直流電圧をグリッド バイアスとして印加することにより、 強い信号のときは増幅率を下げ、弱い信号のときは増幅率を上げるようにできます。 これにより信号の強弱にかかわらず一定の音量が得られるようになリます。 この回路がAutomatic Gain Control、AGCです。 日本では戦後の1950年代になっても戦前の古い言い方であるAVC、Automatic Volume Controlと呼ばれていました。

    検波段と中間周波増幅段の配線が完了しました。 6D6を差し込み、入力側中間周波トランスから出ている線を6D6の頭部のグリッド キャップにつなぎます。 この線はトランス下側のG端子にも出ています。 目黒MSG-2161シグナル ジェネレータ の出力周波数を455kHzにセットし、400Hz 50%の変調をかけます。 信号を中間周波トランスのG端子に印加して出力レベルを70dBμまで上げてラジオの電源を入れると、スピーカから音が出てきました。

    各部の信号を オシロスコープ でチェックします。問題なし。 シグナル ジェネレータを外部変調に切替えて音楽信号を入れてみると、かなりいい音で鳴ります。
    真空管ラジオの感度を向上させる簡単な改造のひとつは、中間周波増幅管のカソード抵抗の変更。 通常は300Ω程度が使われていますが、これを100Ω程度までに下げることにより増幅管のゲインを高めることができます。 が、中間周波トランスの作りや配置・配線によっては発振してしまう場合もあります。 本機でも試しに150Ωにしてみました。 発振などの異常動作は起こらず、たしかにゲインはアップしますが、 AGC電圧をメータで見なければ気がつかない程度の向上でしかありません。 今回はオリジナルの300Ωのままにします。




    本機の中間周波数は455kHzです。 標準的なスーパーヘテロダイン式ラジオ受信機では中周波増幅段の前後に455kHzに同調した二つの中間周波トランスがあり、 ここで455kHz以外の信号は阻止されて目的の信号だけが通過します。 これにより、それ以前のストレート式ラジオでは得られなかった優れた選択度を得られるようになりました。
    中間周波トランスの通過帯域特性は、受信機の性格によって広帯域と狭帯域のものとが使い分けられます。 狭帯域トランスは優れた選択度を得ることができ通信型受信機に向いていますが、 反面再生音の高域もカットされていまい、音楽を楽しむためのラジオには不向きです。 近距離の放送局を良い音で楽しむためには、広帯域なトランスが好まれます。

    簡単に選択特性を測定してみます。 現在は入力側中間周波トランスの2次側にシグナル ジェネレータの信号を注入しているので、 選択度に寄与しているのは出力側の中間周波トランスだけです。 シグナル ジェネレータの出力周波数を変化させてみて、AGC電圧の読み値を測ってみました。 ジェネレータの出力は70dBμです。

    すると、最大出力が得られる周波数は本来の455kHzではなくて、459kHz付近にあります。 そこで、出力側の中間周波トランスの調整を行ってみました。 シグナル ジェネレータを455.0kHzにセットし、AGC電圧が最大となるように中間周波トランスの上下の調整ネジを回してみます。

    下側ネジの調整は効果があり、うまくピークを455kHzに持ってくることができました。 上側ネジの調整はあまり変化なし。 言い換えればトランスの1次側と2次側とでピークがずれていたわけで、調整後はピークでのゲインが目に見えて向上しました。

    455kHz注入の状態で数時間CD音楽を聴いてみましたが、動作は完全に安定しています。 これで中間周波増幅段まで完成しました。 ラジオの動作に必要な5本の真空管のうち現時点で4本までが正常に動作しており、また家庭用ラジオとして十分に満足の行く性能を示しています。



レコード プレーヤ接続機能の変更

    本機の背面パネルにはレコード プレーヤを接続するためのPU端子があります。 ボリューム コントロールを反時計方向一杯にまわすとカチリとスイッチが切れ、レコード プレーヤ演奏モードに切り替わります。 このスイッチは2回路のスイッチで、回路的には検波回路がグラウンドから切り離されて、また中間周波増幅管6D6のカソード抵抗がオープンとなります。 これによりラジオの音は聞こえなくなり、PU端子からの信号が直接低周波増幅管のグリッドに印加されるようになります。 言い換えれば、レコード プレーヤ演奏モードのときは音量調整は効きません。
    本機のボリューム コントロールはすでに交換されており、スイッチはついているものの1回路でしかなく、オリジナルの配線を行うことができません。 実際に今後クリスタル型ピックアップを持ったレコード プレーヤを接続して使うことはないでしょうから、すこし簡略化して配線しておくことにします。 まず、PU入力端子は低周波増幅管6Z-DH3Aのグリッドに0.1μFのコンデンサを介して接続します。 これにより、ダイヤルを放送局のないところに合わせておけば、PU端子につないだCDプレーヤ等の機器の音声をスピーカで聞くことができます。 このときPU端子からの信号に対してはボリューム コントロールは効きませんが、 ポータブルCDプレーヤのヘッドフォン端子から接続するのであればプレーヤ側で音量調整ができるでしょう。
    さらに、本機のボリューム コントロールのスイッチは、中間周波増幅管6D6のカソード回路に入れておきます。 これにより、 ボリューム コントロールを反時計いっぱいに回すと、カソードがオープンになってスタンバイ状態になり、ラジオの受信動作が停止します。 夜間などダイヤルのどこでも放送局やノイズかが聞こえてしまう場合などに便利だと思われます。

周波数変換回路


    いよいよ最後の周波数変換回路、スーパーヘテロダインの心臓部に取り組みます。 本機の周波数変換回路もまたごく標準的な国産ST管5球スーパーヘテロダイン式のものです。 使われている真空管は6WC5。 アメリカで1930年代後半に開発され1950年代まで使われつづけたペンタグリッド コンバータ 6SA7をモデルにして日本で設計された、純国産の周波数変換管です。

    自励式の局部発振回路はギャング バリコンの片側と、シャーシ下面に取り付けられた局部発振コイルにより構成されており、 局発コイルのタップが6WC5のカソードに接続されます。 6WC5の第2・第4グリッド、つまりスクリーン グリッドは局部発振回路のプレートとしての動作を行います。 局部発振回路は、受信しようとする周波数に対して455kHzだけ高い周波数を発振します。
    いっぽう、アンテナから入った高周波信号はギャング バリコンの片側とシャーシ上の同調コイルとで構成された同調回路で目的周波数だけが選択され、 6WC5の第3グリッドに印加されます。第3グリッドには直流的には同調コイルを通じてAGC電圧が印加されています。 つまり、6WC5のゲインはAGC制御されています。
    6WC5の内部の電子流は局部発振周波数で振動していますから、 第3グリッドから入力された高周波信号は増幅されるとともに局部発振周波数で変調されることになります。 これにより、6WC5のプレートには2つの信号の和と差の周波数、 つまり局部発振周波数+入力信号周波数、および局部発振周波数-入力信号周波数の2つの周波数が現れます。 ここで局部発振周波数は入力周波数よりもつねに455kHzだけ高くなるように工夫されているので、差の周波数はいつも455kHzになります。 6WC5のプレート回路には中間周波トランスが接続されており、ここで455kHzの周波数成分だけが取り出されて次段に導かれます。 このしくみにより、アンテナからの信号は455kHzの中間周波数に変換されます。





    局部発振回路の配線を完了し、目視チェックを済ませて6WC5を差し込んで電源を入れました。 近くにトランジスタラジオを置いて1455kHzにダイヤルを合わせておき、本機のダイヤルを1000kHz近辺で回すと、 サーッという音とともにトランジスタラジオのチューニングメータが強く振れました。 これで局部発振回路の動作が確認できました。
    ふたたび電源を切り、アンテナ回路の配線を行います。 作業完了して電源を入れ、1000kHzにセットしたシグナル ジェネレータの信号を同調コイルのアンテナ側ターミナルに接続すると、 本機のダイヤルの1100kHz程度で信号が受信できました。 周波数変換動作が確認できたわけで、いよいよラジオ受信機として動作しはじめた瞬間です。

    ベランダに張ったワイヤーアンテナに切り替えてみると、ラジオはいよいよラジオとして動作し、NHK東京を受信しだしました。 関東平野からはずれた鉄筋アパートでの中波放送受信環境は本当に劣悪でコンピュータ ノイズをかぶってしまいますが、 ラジオ深夜便の再生音は実にクリアです。 すっきりと伸びた高音は通信型受信機では味わえないものです。


調整


    局部発振用バリコンに直列接続されるパディング コンデンサは局発周波数を受信周波数よりも高くするためのものですが、 回路図どおりの容量(420pF)のものがなく、400pFを取り付けました。 シグナル ジェネレータを使って簡単にトラッキング調整を試みると、 局発コイルのコアをちょっと回すだけで受信周波数をダイヤル目盛にほぼ正確に合わせこむことができました。
    ダイヤルを回してみると、周波数の高いほうの感度がかなり低下しています。 バリコンのトリマは赤い樹脂で固定されていますが、これを取り除いて再調整を試みます。
    細いドライバなどを使って赤い樹脂を取り除くと、トリマ コンデンサとその調整ネジが現れました。 一度ネジを取り外して、精密ドライバで樹脂の残りを念入りに取り除きました。 このトリマには雲母板が2枚使われていますが、局発側の雲母板が一枚割れてしまいました。 このトリマを使うのをやめてシャーシ下に安定度の良い新品のトリマを取り付けることも考えましたが、 とりあえず仮調整してみたところ使用可能な範囲だったのでこのままでいきます。
    局発コイルのコア、局発バリコンのトリマ、そして同調バリコンのトリマを繰り返し調整し、 おおむね満足の行く性能とダイヤル精度が得られました。感度は鳴りはじめの時に比べれば大幅アップ。 シグナル ジェネレータを使った簡単なテストでは800kHz近辺に感度の落ち込みがあります。 短いビニール線をつないで実際に電波を受信してみると、 ダイヤルの低い側に比べ高い側ではやや感度が低下してしまいます。 このあたりは廉価なアンテナコイル回路の設計に起因するものではないかと思われます。

Sensitivity Variation after Tracking
FREQUENCY Minimum Recognizable Input
600kHz 25dBμ
800kHz 40dBμ
1000kHz 25dBμ
1400kHz 25dBμ
1600kHz 30dBμ





    ここで周波数変換段と中間周波増幅段との間の中間周波トランスの調整を行います。 6WC5の第3グリッドに455kHzを注入し、AGC電圧を測定しながら下側および上側ネジを回します。 やはりセンターは455kHzからややずれていたようで、感度はアップしました。

    不思議なのは、上側ネジをかなりねじ込んでも感度が上がりつづけることです。 トランス内の同調コンデンサの容量がかなり変化してしまっているのかもしれません。 現状でもほぼ左右対称な選択度特性が得られていますので今回は分解して内部を調べるところまでは手を出さないでおきますが、 もう少し性能向上を狙えるでしょう。

    強力な隣接局の場合は2チャンネル分、つまり18kHz離れていても混変調を受けますが、 通常の信号強度の局なら1チャンネル 9kHzだけ離れればほぼ分離できます。




    入力信号強度とAGC電圧の関係を調べてみました。 実際に放送音楽を楽しむのであれば、60dBu程度の入力信号があれば十分なS/N比とパワーが得られます。

    家庭用ラジオなので気を配る必要はほとんどありませんが、AGCの応答速度は適切なもので良好に反応します。 AGCラインに音声信号はほとんど重畳しておらず、したがって不要なフィードバックもありません。 ただしAGCの効き自体はそう強くなく、-0.5Vと-6Vではかなりの音量差があります。

INPUT SIGNAL STRENGTH and AGC VOLTAGE
(Reception Frequency: 1000kHz)
INPUT SIGNAL AGC VOLTAGE
20dBμ -0.264V
40dBμ -0.275V
60dBμ -0.598V
70dBμ -1.590V
80dBμ -3.156V
90dBμ -5.017V
99dBμ -6.601V


各部の電圧をチェック

    シャーシ上の5本の真空管が動作しはじめたので、各部の電圧を再確認します。 最終的にはマジックアイが接続されるのでさらに低くなるはずですが、まあそう大きな変化ではないはずです。

測定部位 測定結果 備考
整流管80BK直後のB電圧 292V 平滑抵抗消費電力1.25W (2W抵抗器使用)
出力管42 プレート電圧 286V
出力管42 スクリーン電圧 243V
出力管42 カソード電圧 16.6V カソード抵抗消費電力 0.552W (1W抵抗器使用)
出力管42 グリッド電圧 0.0V
低周波増幅管6Z-DH3A プレート電圧 98.5V プレート抵抗消費電力0.068W (1/2W抵抗器使用)
低周波増幅管6Z-DH3A プレート抵抗B電源側電圧 228V
低周波増幅管6Z-DH3A カソード電圧 0V
低周波増幅管6Z-DH3A グリッド電圧 -0.6V
中間周波増幅管6D6 プレート電圧 240V
中間周波増幅管6D6 スクリーン電圧 95.2V スクリーン抵抗消費電力 1.4W (3W抵抗器使用)
中間周波増幅管6D6 カソード電圧 2.4V カソード抵抗消費電力 0.02W (1/4W抵抗器使用)
中間周波増幅管6D6 グリッド電圧 0V-7V(AGC) 受信信号強度によって変化
周波数変換管6WC5 プレート電圧 239V
周波数変換管6WC5 スクリーン電圧 95.2V
周波数変換管6WC5 カソード電圧 -0.02V 局発信号 0.12Vp-p
周波数変換管6WC5 第1グリッド電圧 -2V - -7V 局発信号 5 - 7Vp-p
周波数変換管6WC5 第3グリッド電圧 0V-7V(AGC) 受信信号強度によって変化

    今までに燃えたと思われる抵抗器が消費している電力を計算してみましょう。

平滑抵抗

平滑抵抗両端の電位差は292V-243Vで約50V。抵抗値は2kΩなので電流は25mA。 したがって消費電力は1.25W。使用しているのは2Wの抵抗器なので電力容量には余裕があります。

6Z-DH3Aプレート抵抗

プレート抵抗両端の電位差は228V-98V=130V。抵抗値は250kΩなので電流は0.52mA。 したがって消費電力は 0.068Wとなります。使用しているのは1/2W抵抗器なので、電力容量に全く問題はありません。

6WC5/6D6スクリーン抵抗

6WC5/6D6のスクリーン抵抗両端の電位差は239V-95.2Vで約145V。抵抗値は15kΩなので電流は約9.7mA。 したがって消費電力は1.4Wとなります。使用しているのは3Wの抵抗器なので電力容量は十分です。

    リビルド後の各大型抵抗器の消費電力は抵抗器の定格値を下回っていますので、異常発熱の可能性はありません。 ヒューズは1Aのものにしてありますが、ブローする様子はありません。


ちょこっと変更


    平滑用電解コンデンサを取り付けたラグ板に平滑抵抗も取り付けていましたが、 そのすぐ近くにマジックアイへのケーブルをはわせる必要があり、熱を出す抵抗とケーブルが接触してしまいます。 ので、平滑抵抗の場所を変更しました。 今まで使っていた2Wの1%品は足を短く切ってしまっていたので、もうひとつ買っておいた3W品を使うことにしました。 電力容量に余裕が出る方向ですから良いでしょう。 マジックアイのターゲット抵抗も取り付けたし、あとはキャビネットへの組み込みを残すのみ。

    使用した部品はどれも昔のものに比べると小型になっているので、完成したシャーシ下側は前よりもずっとあっさりしています。 配線も色分けしたので、ススと油汚れで真っ黒だったリビルド前にくらべるとずっとカラフルになってしまいました。 が、特にコンデンサの類は当時のものよりずっと特性がよくなっていますので、5球スーパーの本来の性能を引き出せているはずです。

    ここまで性能が出せれば、木造家屋なら夜は数多くの放送局が聞こえるのでしょうが・・・ ラボでは聞こえるのはNHKだけ。 まあ聞こえたとしても、民放のくだらないトークショーでは幻滅です。聴くべき番組がないというのは実に残念。 ので、シグナル ジェネレータでCD音楽を楽しむことにします。 ラジオ受信機として復活してからすでに10時間近く動作させていますが、動作は完全に安定しており、 1970年代の"AM GOLD"オールディズをいい音で聴かせてくれています。



気がかり


    調子よく鳴っているので、キャビネットに組み込んでマジックアイが光るかどうか早く見てみたいものです。 が、ひとつ納得できないことがあります。 どうして周波数変換段直後の中間周波トランスの上側ネジの調整が取れなかったのか。
    このまま組み込んでも依頼主には満足してもらえるだろうし、多少感度が悪くても、古いラジオのことだから、とがめられはしないでしょう。 でも・・・・。

    すっきりしないままでいるのもいやだなあと思い、その中間周波トランスを取り外してみることにしました。

    配線を外し、グリッド キャップを外し、シャーシに固定するための2つののM6ナットをゆるめます。 中間周波トランスの取り付けネジは円筒形アルミケース側についており、 クリップ ピンを外すだけでなんら乱暴なこともせずに簡単にシールド ケースを開けられました。 ベースは良質の黒色プラスチックで、それにエボナイトのようなパイプが植えられており、そこにコイルが2組巻かれています。 上側コイルは出力側巻線、つまり中間周波増幅段の入力コイルです。各コイルには、250pFのチタコンがパラに半田付けされています。





    調整できなかった方のチタコンの足を外し、抵抗値を測定してみました。 が、マルチメータの指示は無限大。 リークしているかもしれないという推定は外れていました。 ともかく、2つの250pFはその表面コーティング膜が割れかかっていたので、ディップドマイカに交換します。 250pFジャストのものは手持ちにはないので、270pF品を取り付けました。

    ベース プラスチックの表面はシャーシ内部と同様に真っ黒で(もともと真っ黒ですけど)、 綿棒でかるくなでただけで油ほこりがたっぷり取れます。 ベース周辺とコイル表面の汚れを綿棒でていねいに落とし、シールド ケースをシンプルグリーン原液とお湯で洗いました。

    この中間周波トランスは例の6WC5と6D6のスクリーン抵抗の真上にあり、 使用中は絶えずスクリーン抵抗で熱せられた空気の対流が油ほこりをベースの隙間から内部に持ち込んでいたのでしょう。

    再組み立ては実に簡単。配線をもどし、電源を投入します。 同調コンデンサを250pFから270pFにしたのですから当然再調整が必要です。 シグナル ジェネレータからの455kHzを6WC5の第3グリッドに注入して、 AGCライン電圧をマルチメータとオシロスコープで観測しつつ、調整ネジを回します。



本来の性能に


    下側ネジは、数回転程度回した位置できれいにピークが取れました。 上側調整ネジは分解組み立て直後なので、コアはコイルから最も離れた位置にあり、 ここからネジを締めこんでいってダストコアをコイルに近づけていきます。 するとAGC電圧はぐんぐん下がり、たちまちオシロのラスターは管面の下に飛び出してしまいました。

    シグナル ジェネレータの出力を落とし、ボリュームを絞り、オシロスコープの入力レンジも上げてひきつづきネジを回します。 AGC電圧はますます下がり、やっとピークに達したときには見違えるような性能が出ています! やはり今までの性能は本来の姿ではなかったのです。

    気をよくして、もうひとつの中間周波トランスについても同様のメンテとコンデンサの交換を行いました。 こちらは100pFのコンデンサが使われており、最初のものほどひどくはありませんが、やはりかなり汚れていました。 100pFのマイカに交換し、清掃して組み付け、再調整を行いました。 予想通り、こちらは性能的に大きく変わりませんでした。

    IFT内部手入れ前にはAGC電圧が-0.6Vとなるためにはシグナルジェネレータの出力は60dBμ必要でしたが、 今では36dBμしか必要としません。実に24dBもの感度向上がみとめられます。

入力信号強度とAGC電圧
入力信号強度 IFT内部メンテ前の
AGC電圧
IFT内部メンテ後の
AGC電圧
20dBu -0.264V -0.290V
40dBu -0.275V -0.848V
60dBu -0.598V -3.343V
70dBu -1.590V -5.230V
80dBu -3.156V -6.837V
90dBu -5.017V -8.440V
99dBu -6.601V -9.918V
受信周波数:1000kHz


    信号が判別可能な入力レベルも、かなりアップしているはずです。 しかし現状では、ジェネレータからの同軸ケーブルをみの虫クリップのついたジャンパーコードでアンテナコイルにつないでおり、 ここで近くのコンピュータ ノイズを拾ってしまいます。 もし外部雑音が減れば、右の表の最小入力レベルはもっと小さい値になるはずです。

    これでシャーシのリビルド作業は完了。 長時間にわたってのテストでも動作は安定しています。 次はキャビネットへの組み込みです。 キャビネット底面に近い部品の温度も高くはなく、問題はないでしょう。

追記: 今回は中間周波トランスをすべて所定の中間周波数に正しく調整しましたが、 放送用受信機の場合は故意にトランスのセンター周波数をずらし、 広帯域にすることによって音質向上を狙ったものがあったようです。 本機の場合、完成後にヘテロダイン ホイッスルが発生しましたが、 調整をずらして結合を疎にすれば収まったのかもしれません。


受信周波数 IFT内部メンテ前の
判別可能
最小入力レベル
IFT内部メンテ後の
判別可能
最小力レベル
600kHz 25dBμ 20dBμ
800kHz 40dBμ 15dBμ
1000kHz 25dBμ 12dBμ
1400kHz 25dBμ 20dBμ
1600kHz 30dBμ 25dBμ


キャビネットに組み込む

    マジックアイ接続ケーブルも取り付け、スピーカ接続用ワイヤーも新品で作り直し、 上面も再度簡単にやわらかいブラシで清掃しました。 シャーシからケーブルが出る部分のグロメットは3つとも新品に交換してあります。 アンテナワイヤーは青色のビニール線を用いています。
    日本の電灯線プラグなどの配線機器はニュートラル側とホット側とで同一のブレード形状をしているものがいまだに多く、 2極のどちらがニュートラルなのかあてになりません。 事実、ベランダの物干し竿と本機のアンテナ線との間でAC電位が出ていることがありました。 アンテナ線とACコードの間にはアンテナコイルとコンデンサが2つ入っているので事故にはなりませんが、 より安全を期すためにアンテナコイル接続部に100pFのセラミック コンデンサを入れました。

    シャーシは作業完了。いよいよキャビネットにもどします。

    出力トランスの線を半田付けし、マジックアイのソケットをさしこみ、電源ON。 オリジナルのスピーカからは元気な音が。 テストに使っていた小型ブックシェルフ スピーカよりも低音がよく出るので、電源ハム音がはっきりと聞こえます。 普通にラジオ番組を聞くなら問題ないレベルだし、この時代のラジオはハム音が出るのがあたりまえでした。 なにしろこの時代のラジオ修理の本の故障診断早見表には、「スイッチを入れたのにハム音が聞こえない」という項目があるのですから。

    ボリュームを上げると、簡単に近所からのクレームがつくレベルの音が出ます。 キャビネットからのビビリ音はあまりありませんが、ちょっと試した限りではスピーカがアンプのパワーに負けている感じがあります。 取り外していないので確認はしていませんが、スピーカのコーン エッジも老朽化が進んでいるでしょうから、フルパワーを試すのはためらわれます。 し、大音量ではスピーカ直前のサラン ネットも目に見えて振動します。 やりすぎると触ったりしなくてもサランネットが破れてしまうかもしれません。 スピーカを新しいフルレンジのしっかりしたものに変え、新品のスピーカ クロスに張り替えれば、 安心してフルパワーで楽しめるのではないかと思います。

目玉が光らない!


    組みあがったラジオは音量も感度も選択度も十分ですが、しかし、あれぇ、マジックアイは光りません。 いや、実は緑色に光っているものの、部屋を暗くしないと見えないくらい光が弱いのです。

    配線を間違えたのだろうかと思い、ソケット部で電圧をチェック。しかし、配線は正しいはず。 こんどはマジックアイ本体をキャビネットから取り外してみます。 このマジックアイはトーヨー製のEZ-6E5で、管自体は埃でひどく汚れていました。 汚れで表示がよく見えなかったのかとも思いましたが、 軽く水ぶきしてから再度電源を入れてもやはりターゲットの発光は弱々しく、かつ不均一です。 おそらく長い間日光にさらされ、蛍光材料が劣化してしまったのでしょう。残念、交換の必要があります。

    じっくりと6E5を観察していて、ターゲットのすぐ内側のグリッドがなんだかちぢれたように変形していることを見つけました。 これは? グリッドが機械的に痛んでいて、それでうまく発光しないのでしょうか。 試しに6E5の頭部を指先で軽くはじいてみたら、うわわっ、パチッと青白い火花が6E5の中で飛び、ラジオの音が消えてしまいました! あわてて電源OFF。

    6E5を外して電源を入れると、ラジオは鳴り出しました。ああよかった、シャーシは無事です。 おそらく切れたグリッドがカソードに触れてしまい、 6CW5と6D6のグリッド回路が接地されてしまったために聞こえなくなってしまったのでしょう。 仮にこの切れたグリッド線がカソードとターゲットとをショートさせてしまったら、 B電源回路の過電流焼損につながります。が、現品を観察する限りそういったことはなさそうです。 ともかく、オリジナルの6E5は完全に使用できない状態になってしまいました。 指先で弾かなければしばらくは問題を起こさなかったでしょうが、 いずれそのうちキャビネットを軽く叩いた程度で同じことが起きたでしょう。 納品前に気がついてよかったといえます。

    この6E5はほぼ間違いなく工場出荷時についていたオリジナル球と思われますが、 それには"28.3"とマーキングが入っています。 たぶん昭和28年3月製造を意味しているものと推測されます。 であれば、このラジオの製造はおそらく1953年だろうということになります。





マジックアイについて



    通称マジックアイは電圧変化を目で見るために用いられる表示管です。 代表的なマジックアイである6E5は1935年発表。 管の頭部にターゲットと呼ばれる円錐形の金属部品があり、 ここにプラスの高電圧(200V-250V程度)を印加しておきます。 中央に配置されたカソードから飛び出した電子はプラス電圧にひきつけられてターゲットにぶつかります。 ターゲットの表面には蛍光物質が塗布されており、電子がぶつかると光を出します。
    カソードの近くには電子線制御用電極が置かれています。 ここにターゲットより低い電圧をかけると、電子は制御用電極を避けるように流れるので、 制御用電極の後ろのターゲットには電子がぶつからず、影ができます。 制御用電極の電圧が変わると、影の大きさが変化します。 ラジオ受信機では、AGC電圧をマジックアイにつなぐことによって受信信号強度を表示でき、 便利なチューニング インジケータになります。

    マジックアイはメーターよりも安く作れたし、回路への負荷が少なくてすむので、 米国では1936年頃から数年間はRCAやハリクラフターズなどの通信型受信機にも使用されました。 が、通信型受信機ではやはり読み取り精度のよい機械式のSメーターのほうが好まれ、 1930年代終盤以降では使用例はほとんどありません。 米国の家庭用ラジオでは木製キャビネットの大型コンソール ラジオではよく使われましたが、 1930年代の後半以降は家庭用ラジオの主流はすでにプラスチックケースの低価格モデルになっており、 それらのモデルの大半はマジックアイを持っていません。

    マジックアイにはその動作パターンでいろいろなタイプがあり、 緑色や青などの光で1960年代頃までラジオやオーディオ機器の顔を美しく演出しました。 マジックアイの蛍光材料は長い時間の間に劣化して暗くなってしまい良好な状態のものは少なくなっており、 したがって現在では貴重品です。


6U5を使ってみる


    ラボのストックパーツを調べたら、6U5マジックアイの中古品がありました。 6E5と6U5は同一形状・同一ピン配置なので、そのまま置き換えができます。 6U5をソケットにつないで電源を入れてみると、6U5は暗いながらも均一に発光し、また 影の大きさは受信信号の強度によってきちんと変化します 。 6E5および6U5は内部に3極管を内蔵しており、これが入力電圧を増幅して制御電極の電圧を変化させます。

    6E5はこの特性がシャープカットオフで、入力電圧とシャドウ アングル(影の開き具合)はリニアな特性です。 発光部は入力約-8.0Vでシャドウ アングルが0゜になります。 このため、たいへん強力な信号を受信した場合には扇型の両端がオーバーラップしてしまうケースが発生し、好ましくありません。


Click here to watch how it works!
6U5動作状態ムービー (348KB MPG 17sec)



        いっぽう6U5はリモート カットオフ特性になっており、入力電圧が強まるにつれ変化量が小さくなり、 -22Vにならないとシャドウ アングルは0゜にはなりません。 それゆえ、微弱な信号から強力な信号まで幅広く対応することができます。 実際にこの6U5では、AGC電圧が-10Vとなるような強力な信号の場合でもシャドウ アングルは30゜ほど残っています。 1950年代の日本製スーパーでは6E5は大人気でしたが、 Radio Designer Handbookには上記の理由により "主流は6U5あるいは6G5で、6E5は計測用に使われる程度である" と書かれています。 大電力の放送局が多かったためでしょうか。

    とりあえずこの中古6U5を使うことにしますが、さすがに中古球なので発光は薄ぼんやりしています。 やはり蛍光体の状態のよい6E5が欲しいところです。 マジックアイの交換はマイナスドライバー1本あれば簡単にできますから、後日どこかで入手できたらそのときに交換することにしましょう。

    それにしても右の写真はなんでだか怖いよね。 このページを見せたらヨメが「悪い夢見そうだ〜っ!!!」と逃げ出してしまいました。実物はそんなにホラー映画していないのに。

    シャーシをキャビネットにネジで固定し、つまみを取り付けて、八歐無線6S-10スーパーラジオの修理は完了です。



完成したと思ったのに

    何時間も連続テストして安定しているのでこれで完成だと思ったのですが、 翌日ベランダでワイヤーアンテナでテストしてみると様子が変です。 どうも発振ぎみになっていて、ちょうど軽くBFOをかけているようにダイヤルを回して信号が入るたびにピューッといった音が出てしまうのです。 ヘテロダイン ホイッスルと呼ばれる状態です。
アンテナワイヤーの取り回しに問題があるのかなと思いましたが、妙なのは、6D6をちょっとゆすったら発振音が止まりました。 はて。でもまた、なにかの拍子に発振が再発してしまいます。 これでは安心して番組を楽しめません。出荷検査不合格。再びシャーシをキャビネットから取り出してベンチに載せました。
    異常発振の現象は以下のようです。

ともかく異常発振が始まるメカニズムがわかっていないので、発振しなくなるか、あるいはなにかヒントが見つかることを期待していろいろなことを試してみました。 しかしヘテロダイン ホイッスルの発生状況には変化がなく、逆にいうと上記の各項目の素子定数変化に対しては回路の動作は安定しているともいえます。 アンテナ コイルの取り外し清掃はそれなりに時間がかかったので、作業後電源を入れてしばらくして発振が起こってしまうと、なんともがっかりさせられます。

    中間周波信号が検波段でじゅうぶんに排除されず、低周波増幅段でも増幅されてアンテナ回路に帰還するというトラブルもあります。 が、異常発振の状態はボリュームコントロールの位置によらず安定しているため、低周波段ではないだろうと思われます。
    発振が起こっているのは周波数変換段なのか中間周波増幅段なのか、というのは重要なポイントです。 これをチェックするには、たとえば中間周波増幅管6D6を抜いてしまい、かわりに別のラジオの中間周波段に注入してみること。 もし発振状態で聞こえつづけるのなら、周波数変換段に問題ありと判断がつきます。 現在のところこの方法は試していませんが、おそらく周波数変換段のほうが怪しいと思われます。

    シグナル ジェネレータ接続では問題が出ないので、アンテナの負荷によって発振の状態が影響を受ける、 ということから、局部発振回路よりもアンテナ回路のほうに何かがありそうです。 たとえばいいかげんな配線による浮遊容量で帰還している、とか。 現象が起こっているときにベランダ アンテナからシグナル ジェネレータにつなぎなおすと、発振は止まります。 すぐにベランダ アンテナに戻すと、あれ不思議、発振は止まっています。
シャーシに力を入れてわずかに変形させてみると、非常に顕著な発振が起こることがわかりました。これか? いろいろ試してみて、どうも周波数変換管のソケット部の接触不良があるようです。 6WC5を挿しなおすと、シャーシに力を入れても顕著な発振は起こらなくなりました。 これがヘテロダイン ホイッスルの原因であればよかったのですが・・・・ 以前よりだいぶ弱くなったものの、ヘテロダイン ホイッスルはしばらく使っていると発生し、そのうち自然回復します。

さらに、使用中に時折ザーッといったノイズが数秒間発生することがあります。これについても原因は特定できず。 あちこちつついたり、シャーシに力を入れてみるといったウィグル・テストでも変化がありません。 こうなると、半分ギブアップして「真空管の劣化が原因だ」としたくなります。 真空度低下による不定期な内部放電とか、グリッド・エミッションとか。 実際にそうなのかもしれないと思い始めていますが、なにしろ6WC5や6D6のスペア管は手元にないのでテストできません。

もうひとつ気になっている点は、中間周波トランスの調整。 再調整したとき、2つあるトランスのそれぞれの下側調整ネジ、つまり1次側コイルの同調点は455kHzぴったりではなく459kHz程度にありました。 2次側コイルの同調点は、最初のトランスについては調整不能、2つめのトランスについては455kHz程度に調整されていました。 今回は調整不能だった部分を修理清掃し、各コイルを455kHzに正確に再調整したわけです。 しかし、ひょっとすると1次側コイルは意図的に459kHz程度に調整されていたのではないかという疑問が出てきます。 たとえばあえて調整をずらすことによって選択度を落として音質向上を狙うとか、あるいは意図的に感度を落として発振を防ぐとか。 推測の域を出ませんが・・・・。

完成

    ホイッスルの発生は完全に消えたわけではありませんが、実用上許容できるレベルです。 パーフェクトな性能を得られなかったのが残念ですが、ここでタオルを投げ入れてもらってひとまず完成とさせてもらいましょう。 今回の作業はシャーシ内の完全リビルドで、いわば5球スーパー キットを組み立てたのも同然。大変楽しい時間を過ごすことができました。

    1955年前後の日本のラジオ技術には本当に面白いものがあります。 ほぼ当時の標準といえるこの6球スーパーを見ていると、技術的には1937年頃のアメリカのものでしかありません。 実に20年近い隔たりがあったわけですが、一方でサブミニアチュア管を使ったポケットラジオが大人気で、 テレビは一家一台に向けて躍進中、トランジスタラジオも現実味を帯び始めています。 戦争の痛手を乗り越え、勢いがつき始めた日本の電子工業の様子をうかがい知ることができます。 このラジオはずいぶん長い間戦後の日本と世界を私たちに伝え続けてきたし、これからもそうしてくれることでしょう。

再度出荷保留!

    持ち主に完成しましたとメールを書いて2時間後、またまたトラブル発生! そんなにこのラボが気に入ったのでしょうか。 それまでNHKラジオは安定していい音で聞こえていましたが、 番組がいま一つ面白くなかったので、ヘッドフォンカセットプレーヤをつないで小さな音量で音楽を聴いていたのです。 音楽が止んだのでテープが終わったなと思いましたが、いや、そうじゃない、マジックアイが光っていません。 中古マジックアイのヒータ断線? でも覗きこむとヒータは点灯しています。 では蛍光体の劣化? いやいや、いくら中古でもそんなに急に蛍光体が劣化するはずはありません。 するとB電源の故障。確かに、そう言われればハム音も聞こえません。 ということは・・・回転式作業テーブルをくるっと回して背面を見ると、やはり・・・80BKのヒータが点灯していません。 ああ、このラジオを預かって最初の症状と全く同じだ!再度出荷保留。

    可能性としては電源トランス5V巻線の断線、真空管ソケットの接触不良、真空管のヒータの断線。 電源トランスだとすればこれはゆゆしき問題です。 シャーシを再度取り出して80BKを取り外し、テスタで真空管ソケットのターミナル部で5V巻線の電圧を測定してみると、 きちんと電圧が出ています。80BKのヒータも導通あり。 では、ソケットの接触不良でしょう。 すでに接触面は軽く清掃してありましたが、あらためてヤスリで表面の酸化を落とし、軽く曲げを加えてしっかりとピンを噛むようにしました。 真空管を挿すとヒータは点灯しました。やれやれ。

    しかし、シャーシをキャビネットにもどして1時間程度したら、またまた80BKが消えてしまったのです。 まだソケットが不完全なようです。 確かに80BKの挿入は、ピンが3本しかないこともありますがかなり軽めです。 新品のソケットに交換するのがいちばんでしょうが、どうせ交換するならと接触面に薄く半田めっきを施し、真空管のピンも金属磨きでピカピカにしました。 今度はバッチリのはず。 しかし、シャーシをキャビネットに組み込んで2時間しないうちに、また80BKのヒータは消えてしまいました。 どうなってるの?

    キャビネットからシャーシを取り出すと直ってしまうのかもしれません。 作業するときはシャーシを横倒しにしますので、それが何か影響しているのかも。 次の日電源を入れてみると、症状は続いています。 今度はゆっくり静かに80BKを抜き、垂直な状態を保ったままヒータのピンにテスタを当ててみました。針は振れません。 そういうことだったのか。 テスタ ピンの当て方が悪いのかもしれないので何回か試すと、そのうち針が振れました。

    真空管のピンとテスタ ピンをクリップ リードでつないで試すと、真空管を横倒しにしたり垂直にしたり姿勢を変えてやると抵抗値が変化しています。 ちょうど出来の悪い傾斜センサになったように。 そのうち抵抗値は低い値で安定しましたが、どうも真空管のピンと内部リードの半田付け不良のようです。 一見ピン先端部の半田付けは正常なようですが、半田ごてをあててみました。 製造時の半田の量はかなり少なかったようで、吸い取りポンプを使うまでもなくピンの口が開き、内部のリード線が見えました。 半田づけをし直してテスタをつないでみると、先ほどよりも明らかに低い抵抗値で安定した値を示しています。
    真空管をソケットに戻し電源を入れてみると、きちんとヒータが点灯したばかりでなく、以前に比べてはっきりと明るくなっています。 し、その後数日間、80BKは安定して動作しています。 直ったと判断してよいでしょう。

    40日間の作業は完了。すっかり元気になったんだから今度こそ持ち主のもとに戻れるよね!?

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Feb. 10, 2001 Created. Chassis pulled out. Failure mode analysis completed.
Feb. 15, 2001 Disassembling and cleaning completed.
Mar. 02, 2001 Rebuilding completed.
Mar. 03, 2001 Original 6E5 blown up, replaced with a 6U5.
Mar. 04, 2001 Final test failed due to the unstable oscillation. Work continues.
Mar. 09, 2001 Added production year and price information. My appreciation to Mr.Uchio on Radio Mailing List.
Mar. 16, 2001 Poor soldering of 80BK pins corrected. Now the radio is working fine,
except intermittent slight heterodyne whistle which I was unable to find out the cause.
Jan. 03, 2002 Added a link to English page.
Jul. 21, 2002 Revised links.
Jul. 27, 2002 Revised links.
Aug. 11, 2002 Reformatted with Netscape 6.2.
Aug. 11, 2002 Reformatted with Netscape 6.3.
Aug. 13, 2002 Reformatted with Mozilla 1.0 as well as manually. Improved browser compatibility.
Aug. 18, 2002 Reformatted. Improved compatibility among browsers.
Nov. 07, 2005 Reformatted started: Concatinated subpages.
Nov. 19, 2005 Reformatted completed.