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Transistor Audio Pre Booster
For Mitsubishi Delica D:5 and Toshiba X01T

爆裂ハイウェイラジオ

    奮発して装備した DELICA D:5 のロックフォード・フォズゲート プレミアムサウンドシステムはいい音で大満足なのですが、 細かな不満がないわけではありません。 走行中は音楽ではなくて Toshiba X01T Windows Mobile 6 Professional Planetary Radio [外部リンク] を聞くことが多いのですが、ここで問題。 X01Tのヘッドフォン出力をセンター コンソール背面に用意されているAV入力につなぎますが、 X01Tの音量を最大にしてもライン入力レベルには不足で、 ロックフォード・フォズゲートのボリュームを最大近くまで上げてやる必要があるのです。 そうすると、走行中に交通情報を聞こうとしてうっかりそのままモードを切り替えると、 総合出力860Wのキチ※イパワーで車内にハイウェイラジオが炸裂してしまうのです。 また、X01Tのヘッドフォン端子は ジャックセンシング を行っており、 アンプの入力端子につないだだけではヘッドフォンがつながれたとは判定されず、内蔵スピーカからの音が切れません。

    そこで今回、上記2点の問題を解決するプリ ブースター アンプをつくることにしました。 入力端子直後が10kΩ程度の抵抗でシャントされていて、10倍程度の電圧利得を持ってラインレベルを出し、 実用に耐える音質のヘッドアンプ。 X01TとAV入力端子の間に入れて使うのです。 電源は車両のDC12V。 小ぶりの基板一枚でつくれば、AV接続パネルの裏側、センターコンソールボックスの中に仕込めて、 外からは見えないようにできるでしょう。




Our Mitsubishi Delica D:5 has a Rockford Fosgate Premium Sound System which provides very nice sound. However the sensitivity of its AUX audio input is too low; when the Toshiba X01T Windows Mobile 6 Professional phone is connected, the volume of the Rockford Fosgate must be turned well up. I sometimes carelessly change the mode to, say, traffic info radio, then I would be blasted with its crazy 860 watts of power.

オーディオ プリ ブースター

    回路はEL500で事前実験してあった トランジスタ オーディオ プリブースター 小型DC9V安定化電源回路 を足したもの。 ベンチテストは完了済み。

    もういちど書いておくならば、これは要するにとてもオーソドックスなトランジスタ1石のエミッタ共通低周波増幅回路です。 低周波増幅トランジスタQ1のエミッタに抵抗R7を入れた電流帰還型バイアス方式。 何らかの原因でコレクタ電流が増えたとすると、エミッタ電流も同じ分増えるため、 エミッタ抵抗両端の電圧が高まります。 するとベース - エミッタ間の電位差はその分小さくなり、ベース電流が減って、コレクタ電流が元に戻ります。 このしくみによって、トランジスタの個体ばらつきや温度の影響を減らすことができ、 回路が安定して動作するようになります。
    トランジスタのアイドル時コレクタ電流はおよそ1mAを狙い、エミッタ抵抗R7を2kΩに選んでエミッタ電圧を2V程度においています。 電源電圧は9Vなので、コレクタ電圧は中間の5.5Vを狙います。 まあこれは精密である必要はないので、5〜6V程度であれば全く問題ないはず。
    エミッタ抵抗R7は音声信号に対しても抵抗になってしまうので、 エミッタバイパスキャパシタC2を入れて音声信号はエミッタ抵抗R7をバイパスできるようにしています。 ただしこの回路ではバイパスキャパシタに抵抗R8を直列に入れてあります。 抵抗R8は、エミッタ抵抗R7と同じように音声信号に対してネガティブフィードバックとして働きますので、 回路のゲインは小さくなりますが、そのぶん周波数特性と歪率が大幅に改善されます。 このアンプは目的からしてゲインはさほど要求されません。 電圧で10倍も増幅すれば用途は満たせます。 20倍でも大きすぎることはないでしょうが、50倍では行き過ぎ。 この回路の交流増幅度は基本的には コレクタ抵抗 ÷ エミッタ抵抗 で計算でき、20倍をすこし下回る程度のゲインとしています。

    入力端子直後のR1 10kΩは、 Toshiba X01T Windows Mobile 6 Professionalのヘッドセットジャックにつないだときにジャックセンシングを効かせて内蔵スピーカからの音を消すためのもの。

    電源は車両のIGNラインからとりますから、DC12〜15V。 オルタネータノイズを含めて電源電圧の変動があります。 これをシリーズ・パス型安定化電源回路で安定化し、DC9Vを生成します。 負荷はわずかトランジスタ2石とLEDだけなので、シリーズ・パス トランジスタQ3は小信号トランジスタ2N2222を使い、 応答ゲインを上げるためにQ2とQ3の2石をダーリントン接続してあります。 2N2222の最大コレクタ電流は800mA。 十分に余裕があります。 基準電圧は正体不明、実測ツェナー電圧5.0Vのツェナー・ダイオードで生成し、 出力電圧をR11とR12とで分圧した電圧とトランジスタQ4で比較することによりシリーズ・パス トランジスタをフィードバック制御しています。 キャパシタC5は変化が速い負荷に対してフィードバック制御の速度を維持して動作を安定にするためのもの。

    いうまでもなく、アンプ機能はオペアンプICを使えば少ない部品点数で簡単に実現可能だし、 電源回路は3端子レギュレータ1個とノイズ吸収用キャパシタ1個で済みます。 そこをわざわざトランジスタ5石とツェナーダイオードのフルディスクリートでつくっているのは、 今回のプロジェクトは実用面の不都合を解消するという実利的な意義に加え、 自分の再勉強のための課題でもあるからなのです。




To solve the problem I designed this simple and straight 1 transistor audio preamplifier. It has an approx. x18 of voltage gain, and has shunt resistors so that the X01T's internal speaker could be turned off by its jack sensing function.
Voltage regulator is discrete constructed. This project is not only to solve the practical problem, but also to be my self study material.

基板実装

    第2研究所界隈ではインフルエンザが猛威を振るっているから近づくなとの警告もあったし、 今日はポゴとママが朝からバレンタインデーのチョコレートつくりを始めています。 ので、パパはプリブースターの基板実装に着手。

    今回も全てラボの在庫部品でつくりました。 使用しているトランジスタは小信号実験回路の定番2N2222で、 小売りでも1個30セントとかで買えるもの。 特にオーディオ用とかローノイズとかいった高級なものではありません。 抵抗やキャパシタもしかり。 ただしEL500では270Ωを使っていた交流負帰還用抵抗は、 ラボには270Ωがなかったので300Ωを使っています。

    いつもどおりに電源には逆電圧保護用ダイオードを入れてあります。 ラボ在庫品から適当に選んだもので、1N5818。 データシートでの主要なスペックは以下の通り。 ちょうどいいでしょう。

1N5818 Shottkey Rectifier

  • Maximum Repetitive Reverse Voltage: 30V
  • Average Rectified Forward Current at TA=90 deg C: 1.0A
  • Forward Voltage at Forward Current=100mA: 0.38V

  • また電源回路入力側には470μFの電解キャパシタを入れて、電源ノイズの低減を願っています。

        いつものごとく事前設計を行わず出たとこ勝負のレイアウトですが、 今回は基板裏面にB線を1本飛ばしただけで済みました。 基板サイズはちょうど良く、いい感じでレイアウトできました。 各部品はしっかりと取り付けられましたが、エミッタパイパスの10μF電解キャパシタは車両の振動で揺れ、 リード線の金属疲労で脱落しそう。 車両組付時には接着剤で足元を固めておかないと。

        ユニバーサルボードへの実装作業を終え、安定化電源からDC12.0V電源を印加してみると、 LEDが点灯しました。 安定化電源回路の出力は狙い通りぴったり9.0V。 こりゃいいぞ。

        ついでトランジスタの端子電圧をチェック。 でも、チャネルA、電源回路から離れているほうですが、 設計狙い値に対してトランジスタのコレクタ電圧が高く、エミッタ電圧とベース電圧が低いです。 オーディオ信号を入力してみると、チャネルBは期待通りの動作、 しかしチャネルAはゲインが低くて歪が明らかです。 うむ、きっとどこかで配線ミスをしているんだろう。 ところがいろいろ調べてみてもおかしいところは見つかりません。
        これはもうトランジスタそのもの以外に考えられないな。 部品在庫から新品を選んだつもりだったのですが、 足がかなり短いものだったのでもしかしたら中古の取り出し品かな。 で、トランジスタを別の新品に交換したら電圧は正常になり、 またゲイン・音質ともに左右の差がなくなりました。 朝食後の作業開始から12時間。 休日の工作が完成!!






    13年後のたかが1石アンプ

        完成したアンプの各部動作電圧は右表のとおり。 コレクタ電流はおよそ0.85mA流れています。 ゲインは正確には測定していませんが、 オシロスコープで見ると20倍を下回る程度、たぶん16〜17倍くらいのようです。 この回路の交流増幅度は基本的には コレクタ抵抗 ÷ エミッタ抵抗 で計算でき、
      4.7kΩ / (2200 // 300Ω)
      = 4700 / 264
      = 17.8
    ですから、実測値と合っています。

        1998年、 SBE SB-34 の修理にトライしたときはトランジスタ増幅回路の基本すらわかっておらず、 闇雲にいじっていました。 が、今回の回路の製作でようやくエミッタ共通小信号トランジスタ増幅回路をマスターできた気がします。 とはいっても、これは最初の一歩でしかありません。 それに13年もかかったなんて・・・自作SSBトランシーバでオンエアの夢はまったく先の長い話だなあ。
    Vcc 12.01V
    VREG 9.00V
    Channel A EE 1.88V
    EB 2.49V
    EC 4.93V
    Channel B EE 1.80V
    EB 2.43V
    EC 5.17V

    センターコンソールに組み込み

        1週間のあいだ第3研究所で、Sharp Linux Zaurus SL-C860でエンドレス再生したスムースジャズをプリブースタに通して音楽を楽しみました。 動作は快調。 で、週末に中央研究所に戻り、ターゲット車両への組み込みを開始します。


        サブバッテリシステム取り付けのときにセンターコンソールの内部構造は見ていたので、 取り付けの構想は事前にできていました。 基板は後席用カップホルダの底のさらに下に、部品面を下にして取り付けられている格好です。 ここのさらに下には後席足元ヒーターダクトアウトレットがあるので多少の温度上昇がありますが、夏場はヒーターは使わないわけだし、 大丈夫でしょう。 センターコンソール下にはESP用のX軸Y軸低G&ヨーレートセンサがあります。 もちろん今回の回路はノイズは出しませんので心配は無用。
        でも実際にきれいに取り付けるとなると・・・取り外したセンターコンソールを眺め回し、あれこれ考えながら作業。 結局、X01Tとの接続はセンターコンソールフロント側にφ3.5mmのステレオミニジャックを取り付け、 リアの純正AV入力コネクタに入れることにしました。 これだと、AV入力コネクタに接続した機器のオーディオ信号にとってはプリブースタの出力インピーダンスが負荷になってしまうので、 理想的とは行きません。が、実用上は問題にならないでしょう。 のんびり作業して実質1日、センターコンソールへのアンプの組み込み、入出力の接続はすっきりきれいにできました。 組み込み後の外観の相違は、目立たないところに金メッキ仕上げの小ぶりなミニジャックがひとつ増えただけ。

        センターコンソールの内部構造は知っていたものの、事前検討は十分ではありませんでした。 電源が当初の目論見どおりには行きません。 センターコンソールリア側には青色LEDによる足元照明 --- リラックスルームイルミネーションと呼ばれる一連の演出照明のひとつ --- があり、プリブースタはほとんど電力を必要としないのでここからとればいいやと考えたのですが、 この青色LEDはETACS ECUによって制御されています。 その明るさつまり供給電圧はオーバーヘッドコンソールのスイッチで消灯を含む4段階に切り替えられてしまうし、 メインキーがOFF状態であってもドアを開ければ点灯してしまうし、 なにしろサブバッテリでMMCSとオーディオアンプを動作させているときは点灯しません。 ありゃ。 最初は組み込み作業の範囲をセンターコンソール内部だけで済まそうと思ったのですが、 ダメでした。

        ので、電源はすぐ右の運転席シート下に設置されているオーディオアンプからとることにします。

        D席シートを取り外し、オーディオアンプのD-17番コネクタから電源を取り出そうとして配線の被服を剥いたら・・・ あれっ、メインキーOFFでサブバッテリもOFFなのにここにはDC12Vが来ている! 回路図をみてみると、オーディオアンプ電源は途中にスイッチは入っておらず、バッテリ直結なのです。あちゃ、こりゃダメだ。
        MMCSからオーディオアンプとリヤモニタ(私の個体には装備されていませんが)に直接つながる線があり、 これが電源制御線かなと思いましたが、これもキーポジションによらずDC12V、どうやらデジタル制御線のようです。 テスタで見ながらIGNを入れると一瞬ぐっと電圧が落ちますので、LINかな。 この線1本でMMCSがアンプのすべての機能をコントロールしているのでしょう。 いずれにせよこれも目的にはそぐわず。

        結局D席シートの取り外しとオーディオアンプワイヤ2ヵ所の被覆を剥がしたのは全部無駄でした。



    The circuit board was installed inside of the center console box. The output of the preamplifier is directly connected into the AUX IN connector.
        こんどはサブバッテリユニットからACインバータにつながっているON信号線からとることにしました。 これならP席シートの座面裏、手の届きやすいところにあります。

        ACインバータはP席シート下のフロア上に設置されていて、 その電源はメインバッテリまたはサブバッテリからサブバッテリユニットの15Aヒューズを通って供給されますが、 それとは別にON信号があります。 これはサブバッテリユニットの3Aヒューズを通って灰色のワイヤでACインバータに与えられるDC12Vであり、 メインキーがACCかONのとき、あるいはサブバッテリ動作のときにDC12Vが出てきます。 このラインはセンターコンソール下およびリヤクォーターパネルのシガーソケットに行くのと同じ系統。 もしプリブースタのヘボな配線が電源ショートしたら、 サブバッテリユニットのINV 3AヒューズがブローしてACインバータが動作しなくなりますが、 その他のサブシステムには影響は及びません。 ACインバータからプリアンプの電源をとるとなるとインバータノイズが回り込んでしまうのが不安ですが、 取り出しているのはACインバータの電力動作電源からではないのがやや救われているところ。

    2012-02-19 車両組み込み



    稼動開始


        ようやく組み込み完了。 音量・音質とも良好、X01Tの内蔵スピーカは切れるし、 他のソースと音量がほとんど同じになりました。 当初の目的は達成。 ただしX01Tの再生が終わると、気になるほどではないですがごくわずかに電源ノイズが音に混じってしまいます。 この辺は電源回路よりもむしろX01Tを含んだグラウンドの這い回しのいい加減さによるものと思います。

        さあて、お手製プリアンプで何を聴きながら走ろう。 でもそういえば、最近1人で長距離ドライブってのはずいぶんご無沙汰しているなあ。






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    Feb. 12, 2012 Created. Circuit board built, plays as expected.
    Feb. 13, 2012 Updated.
    Feb. 17, 2012 Started the vehicle integration. Center console removed from the target vehicle.
    Feb. 18, 2012 Board installed into the center console.
    Feb. 19, 2012 Power cabling done and the center console reinstalled. Vehicle integration completed.
    Mar. 04, 2012 Updated.