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Das Tefifon Das Tefifon

Herbert Jüttermann
Verlog Historischer Technikliteratur
FREUNDLIEB

ISBN 3-931651-00-2 (1995)

ケルンの休日

    ケルン大聖堂の前のオープンテラス カフェで観光地価格のアイスコーヒーを飲みながらこの本をめくっていたら、 たぶん小学校の見学旅行の生徒と思われる男の子がきて、なにやら言ってきました。 ドイツ語は全然わかんないけど、たぶんていねいな言い回しで「この椅子を借りてもいいですか」と言っている様子。 いいよ、と手振りで示すと、男の子は椅子を運んで数人のグループで隣りのテーブルにつきました。

    聡明そうな彼はその後、私のテーブルに置いてあるデジタルカメラが気になったらしく、またなにか聞いてきました。 「ごめん、ドイツ語わかんないんだ。」と英語で言うと、彼はすぐさま英語で「それはビデオカメラなんですか」と尋ねてきました。 ありゃ、高等教育を受けたドイツ人だけが英語を話すと思っていたのに。 「いいや、これはデジタルカメラだよ。スチール写真だけのね。フロッピィ・ディスクに記録する、結構古いモデルなんだ。でかいだろう?」 でも彼にはうまく伝わらなかったのか、「すごいや、ドイツじゃそんなの見たことないよ。僕の住んでる町あたりじゃみんな普通のカメラしか持ってません。」 どうやら最新鋭のハイテクモデルだと思われたようです。 「ぼくたちの写真を撮ってみてよ。」と、彼のグループの子供たちがみんな寄ってきました。
Koeln Dom

    やれやれ。でも今日は、久しぶりに手に入れたヨーロッパでの、一人だけの休日。こんなひとときもいいもんです。 「そうだ、君の家か学校にはコンピュータはあるかい?」 「学校にコンピュータがあります」 「じゃあ、別のフロッピィにしよう。君たちの写真を撮ったら、ディスクを君にあげるよ。」 「本当?」

    データの入っていないディスケットをバッグから取り出してカメラに入れ、 「そら、みんないい顔してな。大聖堂をバックに入れよう。」 あれあれ、結局20人近くの集合写真を撮る羽目になってしまいました。 撮り終わったすぐ後にカメラをムーピーモードにして、10秒ちょっとの小さなMPEGムービーも入れておきました。 「うわあ、本当だ、写ってる」 「じゃ、これを君にあげる。」 そういって私は、NetWare4.0のシステム インストレーション ディスクのラベルが貼ってある使い古しのフロッピィを彼に渡しました。 「ありがとう」 少ししたら引率の先生が呼びにきて、彼らは大聖堂近くの歴史博物館に入っていきました。

    2001年のいまどき (わずか4年しか経っていないものの) こんなフロッピィ カメラを使いつづけている人は少ないのかもしれませんが、私はもうしばらく買い換えるつもりはありません。 撮った写真はおよそすべてのパーソナル・コンピュータですぐに見ることができるし、 カフェで出会ったドイツの田舎町の少年にその場で写真をあげるなんてのはこのカメラならでは。 でも、なによりも私は、パーソナル・コンピュータのメイン メモリが128キロバイトしかなかった時代のメディアであるフロッピィ・ディスクにフルカラーの写真、 音声、さらには短い時間とはいえ動画を記録するという技術に感銘し賞賛しつづけているのです。


Das Tefifon

    エジソンが発明した蝋管蓄音機はその後の私たちの文化を極めて豊かなものにしてくれました。 蝋管はすぐに平らな円盤に変わり、私たちはレコードといえば丸くて黒いディスクを想起します。 ので、 ヴォイス・ミュージアム でテープ式のレコード プレーヤを見たとき私はたいそう驚きました。

    針式レコードにおいて、ディスクの代わりにテープを使うとどうなるでしょう? カセットに入れることによりかけかえは容易になり、ピックアップの構造の工夫で振動に強くポータプルなものができます。 テープをメビウスの輪のようにすることによってテープには表も裏もなくなるし、カセットの工夫でエンドレス再生も可能になります。 たしかにそうなのですが、波形を刻み込んだ溝を針でなぞるレコードの主流はやはり円盤で、テープというメディアは磁気記録方式を得てから花開いた、といえます。

Tefifonのカセット式テープ レコード カセット内部の構造

Radio with Tefifon

Tefifonつきラジオ。
    ケルン市立博物館で買ったこの本は、ケルン市内にあった音響機器メーカー Tefifon社の歴史と製品、 およびその技術をまとめた本です。 英語流に直せばTapePhoneというずばりそのままの社名をもつTefifon社は、さまざまなテープ式レコード プレーヤを製造しました。 本はドイツ語で書かれているので私は残念ながら読むことができませんが、 業務機や小型のポータブル モデルのほかに家庭用の豪華なコンソール タイプ、円盤型レコード兼用機などの写真や構造図も豊富で、 見ているだけでもそのユニークなアイデアと設計を楽しむことができます。 Tefifon社は他の多くの家電音響メーカーと同様に、ごく普通の真空管ラジオやテレビも製造しました。 テープ レコード プレーヤー内蔵のラジオやテレビは同社ならでは。 いままでドイツの工業製品というのは合理的で品質も良く優秀だけれど、 極端に保守的で妙に理屈っぽくて冒険をせず、およそ面白みに欠けるものばかりだ・・・・と思っていましたが、 なかにはTefifonのように独創的なチャレンジもあることを発見し、すこし救われた気がします。

    オーディオ機器にしてもビデオ機器にしても、テープ メディアはいずれもディスク メディアに取って代わられようとしています。 あれほど普及していたオーディオ カセットもすでに消えつつあり、ビデオ カセットもやがては消え去るのでしょう。 今のパーソナル・コンピュータ・ユーザにしてみれば、昔はプログラムやデータをテープに記録していたなどとは信じられないのも当然かもしれません。 だれかカンサスシティ・スタンダードを覚えているかい?Tefifonを知っているか? 彼女との初めてのドライブでとっておきの曲ばかりあつめたオリジナルテープが安物カーステレオに巻き込まれちゃったときの気持ちがわかるかい?


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Aug. 21, 2001 Created.
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