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Avro Arrow

The Story of the Avro Arrow - From Its Evolution To Its Extinction

Revised Edition, 1992 Reprinted 1997
Richard Organ, Ron Page, Don Watson, Les Wilkinson

The Boston Mills Press

ISBN: 1-55046-0471

    北極を越えて飛来してくるであろう長距離爆撃機から自分の国を守るため、カナダが総力を結集して開発した超音速迎撃機CF-105アロー。 この本は全180ページ。 アローの開発からテスト、そして悲劇のブラック・フライデーにいたる歴史を、豊富な写真と詳細な技術資料と共に解説しています。

    大型の機体に2基の強力なイカロス・エンジン、 超音速迎撃を重視した極めて薄いデルタ・ウイング、 すばやく兵装を交換できるキャリッジ式のウエポン・ベイに格納された8発のファルコン・ミサイル、 兵装システムとも連動したフライ・バイ・ワイヤーシステム・・・ アローの設計はまさに最先端、少なくとも他の航空機より20年は進んでいるものでした。

    カナダ国民の熱い期待を背負って、CF-105アロー1号機RL201 は1958年3月25日に初飛行に成功します。 最先端ならではの技術的問題を克服しながら、開発は進みます。 しかしその先進性ゆえ開発費は当初の予定を大幅に上回り、もはや天文学的な予算を必要とするようになってしまいました。 プロジェクトはすでに暴走とも呼べる状態になっていたのです。

    アロー5号機も初飛行に成功、量産に向けてAVROのトロント工場に40機近くの部品が揃って組み立てを待ち、 6号機もまもなく完成という段階まで来ていた1959年2月20日、 カナダ政府はついにアロー・プロジェクトの中止を決定しました。この日は後にブラック・フライデーと呼ばれることになります。

    工場内にスピーカで放送されたあまりにも電撃的な中止決定のニュースに、作業中の誰しもが愕然としたのはいうまでもありません。 すべての計画は完全にキャンセル。設計図、資料、部品や関連機材のすべてが廃棄処分になり、 新型エンジンを持ち完成目前の6号機を含めたすべての機体がスクラップ処分。 そして1万4千人の工場勤務者が突然の解雇。 最終的に高度10万フィート・最高速度マッハ3を目指し、 世界の注目を浴びていたカナダの最先端航空機はここに夢と消えます。

    数多くいたであろう、開発に全身全霊をささげていたエンジニアたちのその日の心中を察するに同じエンジニアとして胸が痛みます。 もう飛べないにしても、せめて一機でもいいから、雨ざらしでもいいから、残しておきたかった・・・ しかし今ではオタワの博物館にわずかに機首が残るのみ。

    それでも、CF-105アローは40年経った今でもカナダ国民の誇り。 たまたま赤信号で止まらなければ見過ごしていたであろうブリティッシュ・コロンビアの町外れの小さな航空博物館・・・ 地元のボランティアが細々と古い飛行機のレストアをしているハンガーの壁の真ん中にひときわ大きく飾ってある写真は、 アフターバーナーを点火して澄み切った大空へ上昇するアロー。 彼らの心の中ではアローは今なお飛んでいるのです。


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Feb. 11, 1999 Created.
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Jun. 17, 2005 Reformatted.