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Apollo
Apollo 11
The NASA Mission Reports Volume 1
ISBN 1-896522-53-X

Apollo 13
The NASA Mission Reports
ISBN 1-896522-55-6


Compiled from the NASA archives; Edited by Robert Godwin
Apogee Books

A Giant Leap for Mankind

    その時私はすでに生まれていたし、その頃には少年画報誌の付録の月着陸船模型を組み立てるだけの知能もあったのに、 なぜかその瞬間のこと、その日のことを全く覚えていないのです。 今になってそのときのことをもっと知りたいと感じるようになり、本やビデオを買ったり、関連ウェブサイトをうろついたりしているのです。 莫大な経費と数多くの人々の努力、最先端のテクノロジーが投入されているとはいえ、 いまだ誰もなしえていないチャレンジ、確かに存在する死の可能性、それに打ち克つ勇気・・・アポロ計画は本当に人類の偉業であると強く感じます。

    この2冊は、よくあるアポロ計画のドキュメンタリーや関連した人々の手記ではなく、 NASAが作成したプレス・リリースやミッション・レポートの内容をそのままの形で掲載したものです。 いずれもソフトカバーですが、ページ数は250以上もあり、書体も小さなものでぎっしり書かれているので、情報量はかなりのものがあります。 いずれの本にもCD-ROMが付属しており、これにはNASAから発表されているビデオや写真などのデータがぎっしりと詰まっています。 出版社のApogee Books社からは、このシリーズの本がぞくぞくと発売されており、いずれも興味をそそるものです。

    この本を見ると、アポロ計画というプロジェクトの巨大さ・複雑さが良くわかります。 轟音とともにリフトオフするサターン・ロケットや月面着陸の瞬間、司令船カプセルの着水などはよく目にするところですが、 それらは極めて精密なプランニングによって実現したことを痛感させられます。 さまざまな場面において緊急事態が発生した場合の対処、月面活動の手順、着水地点の選定と回収船の配置、 回収後の生化学的汚染防止措置の設備と手順などなど。 すぐに回収船が到着できない海域に着水した場合に備え、司令船には日よけシートつき救命ボートやビーコン送信機、 海水から飲料水を作るキットそれにサバイバルナイフも装備されていたことがわかります。

    アポロ11号は予定通りに月面着陸を果たし帰還しましたが、宇宙船のシステムには数々のマイナーなトラブルが発生していたこともわかります。 最も知られているのは、月着陸船(LEM)<イーグル>の月面降下中、 ガイダンス・コンピュータがプログラム・アラーム1201というエラーコードを表示して2度にわたって停止・オートリブートしたこと。 これはランデブー・レーダーのスイッチ設定が適切でなかったためにコンピュータの負荷が増大し、 割り込み処理を割り込みサイクル以内に完了できなくなったことが原因でした。 このトラブルについては本書Apollo11ではほとんど触れられていません。Vol.2に書かれているのかな。


Main bus B Undervolt

    アポロ13号では、最近の映画でほぼ正確に再現されていたように、<オデッセイ>サービス モジュール(SM)の第2液体酸素タンクが爆発を起こし、 3人の乗組員の生命が危機的状況に陥りました。 彼らの命を救ったのは、彼ら自身の勇気と忍耐、 ジーン・クランツに率いられたミッション・コントロールをはじめとする地上サポートの知恵と努力、 それに安定でありつづけた無線通信回線のおかげであったといえます。

    本書Apollo13では、この爆発事故の調査報告にかなりのスペースが割かれています。 報告書のなかでも<マーフィーの法則>に言及されているように、いくつもの原因が積み重なった事故でした。

    システム電源電圧が28Vから65Vに設計変更されたにもかかわらず液体酸素タンク内ヒータのサーモスタットは28V仕様のままであったため、 接点が溶着して連続通電状態になってしまったこと。 タンク内の部品は完成後の目視検査ができない構造であったこと。 発射前のテストでタンクから液体酸素がうまく抜けず、対策としてヒータを長時間連続して通電する措置がとられたこと。 これらのためにヒータは異常過熱し、ヒータ付近にあった攪拌ファン用配線のテフロン被覆が痛んで電線導体が露出してしまいました。 ミッション開始後約56時間経過した時点でタンク内攪拌ファンのスイッチを入れたとき、ファン配線にスパークが飛びます。 純粋酸素雰囲気中ではテフロンは可燃性となり、スパークによってテフロンは燃え拡がり、タンク内圧は急激に上昇して爆発してしまいます。 この爆発によって<オデッセイ> サービス モジュールの外壁パネルが吹き飛ばされたほか、 近くにあった第1液体酸素タンクの配管も損傷して短時間のうちに<オデッセイ>はすべての酸素を失ってしまうこととなりました。

    結果として<オデッセイ>は3基すべての燃料電池が動作しなくなり電源を失ったほか、 呼吸用の酸素も機器冷却用の水も生成できなくなってしまいました。 以降はよく知られているように、水と電源を温存するためほとんどのシステムをシャットダウンし、 月着陸船<アクエリアス>を救命ボートとして用いることになります。 <アクエリアス>の月面動力降下用エンジンを地球帰還のための噴射に用いたり、<アクエリアス>の電源で<オデッセイ>のバッテリーを充電するなど、 それまで考慮されていなかったさまざまな緊急手順がとられます。 が、これらも実行前には地上で可能な限りの検討とシミュレーションが行われたのであって、 単に思いついたアイデアをその場で実行していたわけではないことに感銘します。

    スペースシャトルが定常的に飛び立つようになったとはいえ、結局は地球を周回する低軌道から離れてはいないわけで、 家庭のテレビがまだ白黒だった時代に月に降り立ち、その後誰も月に戻っていないのは考えてみれば驚くべきことです。 冷戦という巨大な力が推し進めた宇宙開発競争であったわけですが、いつの日にか再び月を、 そして火星を人類が訪れる日を待つことにしましょう。

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